ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第四百四十二話「ナリタブライアンの遠征2」

――1949年。扶桑は急激な変革を経て、本格的に議会制民主主義が根付き始めた。皇室の軍事的権限は(事変当時を知る高級軍人の要請もあり)大きく縮小されつつも、形式上は存続し、華族制度も(ウィッチの安定供給のために)一応は形として残り、議会も三院制で落ち着いた。これはカールスラントが無政府状態に陥ったのを鑑み、華族などの旧時代からの制度の存続の是非を現地に委ねる事を日本側が選んだためである。軍隊は陸海軍が割を食う形で空軍が巨大な組織として定着したが、内部は陸海の航空隊出身者の派閥抗争に明け暮れており、とても組織だっての行動は不可能。そのため、司令部直轄の部隊があれこれと孤軍奮闘せざるを得なかった。新鋭機も『司令部の統制が効いている』部隊に優先配備されたので、その部隊は連日の出動で疲労困憊であった。それは64Fも例外ではなく、地球連邦軍が任務を代行するに至るほどであった。地球連邦軍にしてみれば、自分らのデモンストレーションになるので、なるべくだが、比較的に新鋭機が任務に使用された――

 

 

 

 

 

 

――一方、遠征軍は両軍の暗黙の了解で映画撮影を装いつつも、相当なる事態の進展に、兵器の配備を急いだ。特に、二次大戦型の半自動小銃であるM1ガーランドから、戦後世代のM14/M16へ切り替え、その訓練を短時間で終えるのは無茶にすぎたため、プリキュア達がここ一週間は戦線を支えていた。だが、仮面ライダー三号の奇襲で負傷者が続出したため、ドリームが呼び戻されたのである。また、不動明/デビルマンが助力する事になった――

 

 

 

「明さん、久しぶりですね」

 

「おう。兜甲児から連絡があってな。お前達に協力してやるぜ」

 

甲児の計らいで、遠征軍の救援にやってきた不動明。この頃には既に高校は卒業しており、大学生になっている。相変わらずの風来坊ぶりである。デーモン族との戦いも続けている。甲児とは友人関係が続いているようで、電話一本で協力するほどだ。

 

「敵は各時代の独やロシア系兵器のオールスターですよ。こっちは訓練と補給の都合で、なかなか更新が……」

 

「仕方ねぇよ。20世紀後半以降の戦車や戦闘機は訓練に時間がかかるものになってるからな。おまけに、兵たちの多くはボルトアクション式の小銃で訓練を受けてきたのに、そこに自動小銃じゃ、覚えさせるのに、本当は数週間の訓練がいるぜ」

 

「米軍は日本の自衛隊と違って、兵器のライセンスはポンポンくれるんですが、今度は日本側にそれを認めさせるのが骨で」

 

「日本は財務省が強いからな。工廠がある分、まだ戦後の日本よりマシだろ、そっちは」

 

「ええ。問題はライセンス生産でいい閥と国産閥が喧嘩してるんすよ、飛行機分野で」

 

「そこはな。戦後の飛行機はアメリカのものをライセンス生産したのが主流な上、それを順番に作ればいいと思ってるのが役人だからな」

 

不動明でもわかるが、日本の役人の問題点は『自分達の辿った道以外の選択に対して頑なになる』ところで、扶桑でクーデターが起こった理由を理解しようとしないのも、日本連邦の内部からも批判されている。しかしながら、彼らにも言い分はある。『史実で存在しないか、史実で採用しなかった戦闘機を使われると、財務当局の予算承認を得にくい』というものだが、扶桑は戦後日本が長年にわたって持てなかった『空母機動部隊』を有している。そのため、当初よりの空母艦載機の採用は必然であり、既存の戦闘機を空母搭載可能なように改修するのは、ジェット時代では割が合わないのである。

 

「おまけに、自国産の機体を作りたい連中に任せても、ゲテモノが出てくる可能性があるから」

 

「それは言えてるな。昔から日本は『少ない予算でどうにかする』が、逆に言えば、完成されすぎてるから、伸びしろがないものを作ってくるのがお約束だからな。変なのを出してくるぞ」

 

「そうなんですよ。先手を打たないと、海軍は役人の判断で、ライノで甲板が埋められちまいますよ。合理的だとか言って。だから、トム猫を先手を打って、載せといたんす」

 

日本防衛省はF/A-18E/Fで扶桑の艦上戦闘機を統一する思惑があったが、先手を取られ、『高価な』F-14が史実と違う仕様で採用されているという通達に目を回した。とはいえ、純粋な戦闘機としては、F-14の方が優れている点が多いのも事実。現場の判断を尊重することにした。とはいえ、アメリカ軍でも調達が認められなかった『第二改良案』(スーパートムキャット21相当)はの機体は製造費の高騰が推察されたため、防衛省が薦める形で、F/A-18E/Fとのハイローミックス方式の採用が決まり、双方の機体が空軍で試験運用されている。第三世代以前より機動性に優れる『第四世代』の登場は扶桑空軍を『連合軍で最も先進的な装備を持つ空軍』へ飛躍させたのである。当時、連合軍の主要構成国はジェット戦闘機の運用の端緒についたレベルであり、第二位のキングス・ユニオンでさえ、戦後第一世代機の配備と運用の熟練で精一杯。20世紀末以降の水準の機体を支援装備込みで運用できる軍隊は『魔女の世界』では扶桑軍とリベリオン軍のみ。そうした事情もあり、21世紀の空海軍関係者の間では『扶桑軍に色々な機体を使わせてみれば、機体の真価を問える』と評判である。黒江たちの手で『史実では量産されていない機種』も含めて、いくつかはその真価を発揮し、扶桑軍で既に使用されている。ドラケン、クフィール、F-20は64Fの個人単位での使用で既に戦果が挙がっており、その三機種は個人単位での試験名目で、数人が64Fで使用している。クフィールに至っては、武子や赤松らが趣味で調達し、日の丸と自衛隊式の洋上迷彩カラーで運用し、開発元のイスラエルを驚愕させている。扶桑空軍では個人単位での機材調達は当たり前であるからだが、日本防衛省は『機種がバラバラじゃね?』と補給の観点から、頭を抱えることになった。

 

「敵は統合戦争のVFがチラホラ出てきて、一般用も20世紀後半レベルの飛行機になり始めてますからね。戦車は大戦中の改良型ですけど」

 

「戦車は砲弾の対策さえできれば、大戦中のものでも使えなくはないからな。皮肉なもんだぜ。ドイツが廃棄させたり、売っぱらったものがこうして、俺達の脅威になるなんざ」

 

「カールスラントは派生タイプは考えてなかったそうなんですよ。多分、移動砲台代わりにするから、駆逐戦車の類は必要なかったんでしょうね。上に仰角取れないし」

 

カールスラントはダイ・アナザー・デイで繰り出されるM26、M46などにパンターがたやすく破壊される有様に愕然となり、パンターそのものの改良を急いだ。その具現化がパンターⅡであったが、ドイツは『年式が戦後になる、レオパルトⅠを作った方がいい』と結論付け、生産中止を要請。だが、レオパルトは戦後のある時期の流行の思想で設計されているため、装甲厚そのものは大したものではない。それがカールスラント軍の現場に嫌われる原因であった。いくら避弾経始でどうにかなると言っても、カールスラント兵たちはティーガー以降は重装甲を好むためであった。似た問題は扶桑も直面したが、こちらはセンチュリオンやコンカラーとのハイローミックスで通っている。問題はカールスラントの戦車は戦中型では最高位に近かった故に、それに一部でも要目が劣るものを嫌ったのだ。

 

「まぁ、ダイ・アナザー・デイの戦訓で慌てて作ったようなんです。ドイツの横やりで中止にされて、それで内乱ですけど」

 

正確に言えば、突撃砲などの派生型の需要がなかったので、製造していなかったが、五式砲戦車の活躍に刺激されて製造を開始したら、ドイツの横槍が入ったのである。日本の場合は『戦中の国産車両が世界水準ではなかった』故に、更新が歓迎されたのである。

 

「まぁ、ドイツの連中は戦中の先祖たちを『馬鹿者共』って見下してるところあるからな。それを見透かされたんだろう」

 

「まぁ、俺達も日本軍と同一視されて、大変でしたけどね」

 

「そっちはまだいいだろう。東條英機とその一派を失脚させれば、だいたいの日本人は満足するんだから」

 

「ええ。代償はありましたけどね」

 

扶桑は日本からの介入に際し、陸軍は東條英機とその一派、海軍は嶋田繁太郎、豊田副武、大西瀧治郎らを『生贄』にする形で対処し、軍事指導面の介入を免れている。ウィッチ・クーデターという代償はあれど、軍の近代化の成功との天秤で『安いもの』とされた。これはナチスと違って、皇室を維持できれば良かったという経緯がある戦中の日本の事情によるものだ。不動明もそれはよく知っている。

 

「ただ、政治屋が『軍隊には、白米を食わせてればいいだろう』というのが」

 

「戦中の飢えへの仕返しのつもりだろうな。最も、日本軍も戦前はちゃんとした食事を出してたんだがな。昔に聞いた話だが、農村の連中が、なんで軍隊に進んで入ったのか?うまいメシが食えるからだろ。それもハイカラな」

 

「ええ。飯は士気の維持で重要ですからね。だから、最近は補給をアテにしないで、基地で自給自足する部隊が全軍で続出しちゃって。扶桑の商社から日本に文句が出て、大慌てだそうです」

 

「軍に食料品を卸してた商社や、軍にコックを送り込んでたレストランも多いはずだからな」

 

日本が困惑したのは、扶桑軍の支給する食事の支給内容を精査、指摘したら、扶桑の兵や将校たちが自主的に自給自足を始めてしまったことである。史実と異なり、扶桑軍の兵や士官の食事内容は洋食化が大正以前から進んでおり、自給自足体制を構築するための教育がされていたので、自主的にそれを始めてしまい、商社側が困惑したのである。日本は急遽、自衛隊用の戦闘糧食の提供を行い、扶桑に製造ノウハウを提供する事で損害の埋め合わせとした。とはいえ、遠征軍はリベリオン軍が主力である都合上、米軍式のレーションが主流であるので、Gフォースは独自に自衛隊式の戦闘糧食を調達している。その補助にドラえもんの道具が使われている。嗜好品などはそれで賄っていた。

 

「で、結局は自給自足も認める方向になったんで、俺たちはドラえもんの道具で半分は自給自足って感じに。俺たちの世界じゃ、中華料理は史実ほど発達しないうちに『大元』が絶えたんで、マイナーもマイナー。たいていの部隊は和・洋のローテーション。うちにいるプリキュアの連中はそれだとすぐに飽きるだろうってんで、ドラえもんに頼んだんす」

 

64Fが重宝している『畑のレストラン』。統合戦争で製造法が失われていたが、メカトピア戦役でのドラえもんの登場と、未来デパートの工場跡地で発見された製法で製造が再開。デザリアム戦役後に正式に食料問題の解決に使用されている。北米の穀倉地帯が壊滅したデラーズ紛争以降に問題視された『食糧自給率の激しい低下』はこうして、あっさりと解決した。ジオン系のスペースノイドはその事への制裁のため、デザリアム戦役後も再度の隕石落としを考えたが、メカトピア戦争での少女期しずかの演説以降、彼らの『スペースノイドの独立』という大義名分は薄れてきているのも事実。しずかは少女時代の時点で環境問題に関心を持っており、メカトピア戦役の終結記念パーティーでは、過去の人間でありながらも、代表で演説を行った。内容は過去の人間から見た『地球連邦政府の存在の大きさ、20世紀~21世紀の目から見てのスペースノイドの被害者意識の過剰さへの批判』であった。なんだかんだで、スペースノイドにしても、地球に望郷の念がある世代と、そうでない世代とでは地球という存在の捉え方が違うし、ジオンがした行為の数々は『同胞の虐殺』の連続だと、子供が見ても明らかだったが、親ジオンの風潮が強い空気では、それを言うだけで『地球至上主義のレイシスト』のレッテルを貼られるだけであり、知識層でさえ、議論の場でそれを話題にするのも避けていた現状があった。しずかはメカトピア戦役の時点で『歴史上の人物』であり、小学生の時点では『身近に未来の伴侶がいる事もつゆ知らぬ』いたいけな少女であった。故に、ジオンやティターンズが残していった禍根や爪痕に配慮することもなく、小学生なりの本音を言えたのである。実際に、メカトピア戦役の時点で既に、移民星の増加でスペースコロニーや月面都市出身者だけがスペースノイドではなくなって久しい。これ以上のテロ行為は未来の同胞へ害になるだけであると判断。以後はジオンであったというアイデンティティを保つ目的で反抗を次第に放棄してゆく。ギレン・ザビが統制する『オールズモビル』を除いて。デザリアム戦役が『ジオンへの公的な引導となった』とされるのは、メカトピア戦役でのしずかの演説でジオン主義への疑念が表面化し、更に内ゲバをしまくった事実が次々と明らかになったことで、急速に支持基盤の揺らいだ残党軍が『ヌーベルエゥーゴに利用される存在』に堕ちた事が白日の下に晒されたからだ。

 

 

「デラーズ紛争で失われた穀倉地帯を補う救世主がこの大根の山か?」

 

「ええ。ドラえもんの時代の技術で、大根を割ると、温かい食事が出てくる。地球連邦政府も工場跡地で製法を見つけて、日本地域から順に生産を開始してます」

 

連合軍の遠征軍秘密基地の食料品貯蔵庫の少なからずは、この『畑のレストラン』で占められている。ドラえもんの時代の遺産の中では最も早期に地球連邦政府に再発見され、優先しての再実用化がなされたものの一つ。64Fの管轄の倉庫には『フライドポテト』、『ハンバーガー』、『おにぎり』などが常備されている。空軍であるので、手っ取り早く食べられる食料品が必要なのだ。

 

「どうです、一個」

 

「ハンバーガーをもらうぞ」

 

不動明はハンバーガーの大根をパカッと開ける。オーソドックスなハンバーガーだが、魔女の世界では、かの『マクドナルド』も出現して間もない時期で、世界的にマイナーな部類に入っていた。だが、連合軍で相次いで採用され、1949年には『空軍の軍人であれば、容易に食べられる洋食』となった。扶桑では、空軍の制式食料品となったことで、史実より20年ほど早く、一般に普及していく事になった。

 

 

 

 

 

 

 

――こちらはナリタブライアン。キュアドリームの体を借り、自己の精神面の鍛錬を兼ね、秘密裏に従軍。彼女のした事は『のぞみのしたことになる』のだが、ブライアンらしく、そういう事にほぼ無頓着であり、敵の頭を握りつぶすなど、意外に残虐な攻撃にも躊躇はしなかった――

 

「おいおい、お前。意外に躊躇ないのな」

 

「戦いに礼儀が必要という場合でもなかろう?」

 

ブライアンは幼い頃の反動か、思い切った行動を取る。このこともそうなのだろう。

 

「ムゥン!」

 

ドリームがデザリアム戦役後に授かった『エクスカリバー』を手刀で発動し、敵兵を文字通りに真っふたつにして屠る。エクスカリバーは保有者の意思などで継承が可能なため、こういう形での使用も可能なのだ。ブライアンは元々、レースという形で闘志の発散と発露をしていたためか、闘志を上手く発露できるという点では歴代ウマ娘でも有数であったため、それを応用する技能を直にモノにしたようだ。

 

「お前、その体に慣れたようだな」

 

「まぁな。私の要求によく応えてくれる。軍人だから、鍛えていたんだろうな」

 

「まぁ、記憶が見れるからとはいえ、銃器も扱いを覚えたようだな?」

 

「元の世界だと、自衛隊や警察に入るか、サバゲーマーになるか、猟師になるか。それくらいでしか役に立たないがな」

 

「平和なことは良いことだよ。あたしらの思惑はたぶん、奴さんも気づいているだろうが、暗黙の了解で口にしない。会長は本音がお前の前でだから、漏らしたんだろうな」

 

「唐突だったから、すぐに咎めておいた。私たちも人のことはいえんが、ルドルフはテイオーを出汁にした形だからな」

 

「まぁ、会長としても、欲が出たんだろう。現役時代の悔いがな。前世の運命を繰り返したと分かれば、過去を改変しなくとも、選択肢はあるからな。とはいえ、会長はシリウスがオグリさんに抜かれる時、『お前の時代ではない』と言ったというだろ。その時はそう思った。そうでなきゃ、口にしねぇよ」

 

「結果的に、ルドルフはテイオーを騙してる事になるぞ?」

 

「会長としては『知らなければ、嘘を繕う必要はない』って奴なんだろう。やらない善より、やる偽善とはよく言ったもんだ。会長だって、人にいえない事の一つや二つはあるだろ。テイオーの頼みを尊重する事が、あの人なりの償いなんだろうな。虫が良すぎるだの言うだろうが、世の中、親子や兄弟だろうと、相続とかで『他人になる』事はいくらでもあるからな。それを考えれば、会長は聖人に等しいよ。今回のことでの打算はあっても、テイオーの願いを叶えてやってるんだからな」

 

ゴルシはルドルフのした事を否定はせず、むしろ『多少の打算はあれど、テイオーの思うような事に労苦を厭わない』点を差して『聖人』とさえ評した。ブライアンがその場で咎めたというあたり、思う事があったのは事実だ。

 

「かといって、生徒会室で『バコーン』と盛大に殴るわけにもいかんだろ?『若い頃』のシリウスでも、そこはやってないと聞いたが?」

 

「たりめーだ。あたしらのパワーで殴ったら、窓ガラスの一、二枚じゃすまねぇ。昭和後期の校内暴力が盛んだった時代じゃねぇんだし。ビンタでも、普通の人間なら数時間は昏倒するしな。あ、トレーナーの連中は鍛えてるからな?」

 

ゴルシは自分達の能力の高さをよく把握していた。トレーナーの資格には(特に男子)ウマ娘のビンタなどに耐えられる耐久力が近年は特に求められる。シンザンやマルゼンスキー、ルドルフの全盛期のように、突出した能力のウマ娘が他を引っ張る構図ではなく、群雄割拠の様相がタマモクロス、オグリキャップの時代以降は強まっているからだ。(かつての名トレーナー達がオグリやタマモクロスの引退とほぼ同時に、相次いで第一線を退いたのも大きい。カワカミプリンセスのように、ウマ娘基準で造られた建物を更に叩き壊せるウマ娘もいるが)

 

「確かに。……しかし、戦争映画まがいの光景だな。ナチス・ドイツの戦車や歩兵相手に戦うなんぞ」

 

「武装親衛隊が多めだがな。戦後にナチの武装親衛隊は南米に逃れた。そこでショッカー首領の力でナチズムと別の思想に転じつつも、世界征服の野望を持ち続けた。そこに正規軍も合流したのが、ショッカーの始まりだそうだ。つまり、仮面ライダーを生み出した組織の源流はナチスになる」

 

「ナチ残党の最大派閥がそのまま、ショッカーや他の組織に転じたのか?」

 

「そうだ。異世界を渡る技術も得て、今や大ショッカーを名乗ってるっていうぜ」

 

大ショッカーは未来世界のバダンを中核にし、平行世界の各時代の組織、ついには母体となったナチス・ドイツそのものを組み込んだ『国家規模の暗黒組織』である。そのため、M動乱などの大規模遠征も可能となっている。仮面ライダー達は一つの世界であらかたの組織を倒したが、バダンの中枢部は影武者を用いるなどして健在であり、その彼らが長年に渡る暗躍で、ジオンやティターンズなどの残党も併合し、反統合同盟の主要国の軍隊の残党もいる上、少数派だが、旧日本陸海軍の残党も併合している。大半がドイツ軍の系譜にある構成員であるため、装備も主流はドイツ系、東ドイツ時代に持っていたロシア系の系譜にあるものだ。

 

「大きく出たな……」

 

「おっ、来たぞ。パンターの改良型だ」

 

「あんな長い砲身、市街戦でどう使うんだ?」

 

「東部戦線用に用意してた奴を持ってきたんだろ。車体にも多少の改良はしてあるらしいな」

 

 

ドイツ軍後期の主力戦車の『パンター』には、ペーパープランに『主砲の砲身を更に長くする』というマイナーチェンジの案があり、その完成形が姿を見せた。砲身がやたら長く(100口径)、市街戦には不向きであること請け合いな風体だ。火力は本物で、史実では遥かに後発のM48の車体を撃ち抜いている。複数が確認されている事から、ショッカーとなった時代に近代化改修され、テロで使用されたというべきだろう。そのパンターは数発の射撃を行ったところで、味方の援護射撃の砲弾が命中し、撃破されて擱座する。車体はさしたる改良はされていないのか、こうした光景は遠征ではよくあること。

 

「お、味方の砲兵が砲撃をしてる。密度が低いのはしょうがない。街をあまり壊せんからな」

 

連合軍はこの頃になると、戦後型の155mm自走榴弾砲の供与を受けており、遠距離砲撃で敵機甲兵器を擱座させて減らす戦法を取り始めた。映画撮影という体裁なため、すべてが終われば、タイムふろしきで市街の修復を行う手筈になっている。兵士たちが脱出し、逃げていくのが見える。

 

「映画撮影だからと、この街の連中を誤魔化してまですることか?」

 

「言えるかよ、『違う世界の戦争を、これまた違う世界でしてる』なんて。だから、水無月家(キュアアクア/水無月かれんの実家)のつてで、編集した映像を流す。ヒーロー達の版権交渉はキュアレモネードの本業でのマネージャーのツテでしてるそうな」

 

「そこは本気でするのか」

 

「仕方ないだろ。ヒーロー達がバッチリ見られてるんだから」

 

と、『プリキュア5の世界』にも当然ながら、ヒーロー達は『TV番組』として存在している。そのため、現れた仮面ライダーBLACK(RX)が本物であった時は、事情を知らぬプリキュア達を大いに驚かしている。超大作映画という触れ込みであるので、街まるごとを貸し切っているという事で通しているのは、敵味方全体で確認しあった交戦協定と化している。

 

「やれやれ。近いうちに、飛行機の訓練をしなくちゃな。それが『コイツ』の本業だろ?」

 

「F-14の改良型が普段遣いになりそうだってよ」

 

「マヤノに、後で詳しい話を聞いてみることにする。やたら早口になりそうだが」

 

「オタクは熱くなると、早口になりやすいんだよ。どのジャンルでも、な。F-14を飛ばすんじゃ、あいつ、興奮してまくし立てるな」

 

「……面倒だな」

 

マヤノトップガンはF-14が大好きである。名の由来からして、映画『トップガン』なのだから、当然といえば当然。うんちくをドヤ顔で喋りまくる彼女の姿が目に浮かんだか、ため息のブライアン。

 

「だけど、扶桑のは単座型だからな。あいつも驚くかもしんねーな」

 

「映画だと複座だろ?」

 

「扶桑のパイロット達が複座を嫌がったんだとさ」

 

扶桑型の同機は史実と違い、単座運用が主な用途に設定されている。史実より高度なアビオニクスを当初から積む関係もあるが、18系との互換性が意識された面もある。複座型も用意はされるが、扶桑の戦闘機乗りの半数は海軍出身であるので、単座を好むのである。マヤノトップガンも、聞けば驚きだろう。日本の有名な傭兵漫画でしていたような単座での運用を、扶桑は正規の運用で行うのだから。扶桑海軍のF-4嫌いも作用した要望なのは、素人でもわかる。

 

 

「オタクと言えば、デジタルは自制心が強い方だが、この間に顔出しで撃ち合いしやがった。証拠を消すのに、タキオンを徹夜させちまった」

 

「あれはな。帰り道で言っといたが、本人も後でエアグルーヴに絞られたとかいってたぞ」

 

「そりゃそうだ」

 

アグネスデジタルは、ゴルシ達が呼ばれる前日に派手に顔出しの撃ち合いをしてしまい、証拠隠滅にアグネスタキオン(寮の同室の関係らしい)が奔走し、エアグルーヴも補助に入ったという。迂闊と言えば迂闊だが、不幸中の幸いで、ハッキングによる工作で済んだのは、アグネスタキオンとエアグルーヴを安堵させた。そして、そんな二人の上空を三機の大型ゲットマシンが通過する。

 

「ん、ゲットマシン……ノワールタイプか」

 

「ノワール?」

 

「ゲッター艦隊のゲッターの一つを再現してみた試作機らしい。パイロットが一人だけでも戦えるゲッターが大型ゲットマシンに変形して、もっと大型のゲッターに合体するんだそうだ」

 

「オジキが持ってるDVDの『光速電神アルベガス』みたいな仕組みだな?ロボがもっとデカいやつに合体するの」

 

「あれはどっかで『レゴブロックみたい』って言われてるくらいに没個性だろー?確か、それで『キワモノ』って揶揄されてもいるし」

 

ロボット同士が合体し、もっと巨大な機体に合体することはままある。ゲッターノワールはゲッター艦隊が使用していたゲッターの再現なため、ワイルドなデザインにアレンジされた初代ゲッターロボの各形態が真ゲッタードラゴンをブラックゲッター風にした巨大なゲッターとなるという複雑なシステムを取っている。初代ゲッター型が三機合体で原型機の後継機種である『G』の派生タイプとなる点でも、珍しい機能を持つゲッターロボだ。23世紀の技術だけではなく、ゲッターアークやゲッター號を解析して得られた技術も使って、再現目的で試作された。

 

『チェーーンジ・ノワールG!!スイッチオンッ!!』

 

ゲッターノワール各機がゲッタードラゴン同様のプロセスで合体していき、ゲッターノワールGとなる。全長は通常のゲッターより大きく、真ゲッターロボや真ゲッタードラゴンよりも数段は大柄である。常識的サイズのゲッターとしては最大級である。

 

「ん、ケイさんが1に乗ってんのか」

 

ゲッターは基本的に、頭部~胸部を構成するマシンのパイロットがメインになる。そのため、合体の掛け声はゲッターノワール1の圭子が行っていた。真ゲッタードラゴンに似通った『ゲッタードラゴンタイプ』のゲッターロボに合体したゲッターノワール・Gが『ゲッターバトルウイング』を展開し、真ゲッター宛らの幾何学的飛行を見せる。

 

「ウヒョ。さすがは……」

 

「ゲッターはみんなこうなのか?」

 

「あんなのができんのは、ある一定のラインを超えた炉心持ちの上位機種だけだ。二代目のゲッタードラゴンまでは普通の物理法則に則ってる。忘れられがちだけど、元々は宇宙開発用の名目で開発されてたんだしよ」

 

ゲッターロボ、とりわけプロトゲッターは宇宙開発用の機体であった。初代ゲッターも『障害物排除用のモジュール』として装備していたものが武器に転用されたにすぎない。きちんとした武装に変わったのはゲッタードラゴン以降のことだ。(初代ゲッターについても、敷島博士によるアップデートがなされている)

 

「おーい。話は聞いたから、乗りな~」

 

「タンクデサントか~。ソ連みたいだなぁ」

 

二人の前に、キュアミューズ、キュアハート、キュアミント、キュアジェラートの四人の乗る『M60戦車』がやってきた。護衛のM48もついてきている。

 

「あんた、怪我してるんじゃ?」

 

砲塔天蓋部の乗降ハッチからキュアハートが顔を出す。怪我が治りきってないためか、変身している時のコスチュームの上に、パンツァージャケットを羽織っていた。

 

「だから、戦車できたんだ。ステゴロはまだ無理」

 

「あんた、戦車を指揮できるのか?」

 

「転生先の世界で戦車を使った武道があって、その部活の部長だから、一応」

 

キュアハートは怪我が治りきってないと明言し、戦車部隊の指揮に留めると明言した。事情は既に通達されているようであった。

 

「この街だが、どうして、こんなに洋館が多いんだ?」

 

「元は華族の避暑地で、その時代の名残りが残ってるんだって。だいぶ再開発されてるけど、戦前の洋館が残ってる」

 

「街並みの一部が欧州っぽいのはそのためか?」

 

「うん。観光用に残したところも多いからね。あ、それとさ、首都圏の近郊らしいんだよね、この街。横浜や東京に日帰りで行けるから」

 

ブライアンの質問にキュアハートが答える。少なくとも、東京、あるいは神奈川のどこからしいが、正確な場所は知らないらしい。部分的に『旧華族が明治後期~昭和戦前期まで避暑地としていた土地柄』という情報が伝わっている事、日帰りで関東の二大都市に行けることから、二大都市にほど近いどこかだろうという。そこをゴルシ(姿はキュアビート)、ブライアン(姿はキュアドリーム)をタンクデサントさせて、M60とM48の混成戦車部隊は征く。M60は配備開始から間もないため、特に高練度の乗員に優先配備されている。更に大口径化しているので、自動装填装置の実装も要望されているなど、史実の米軍とは違う方向になりつつある。これは自由リベリオンの人的資源の少なさに由来するもので、扶桑も似た理由で自動装填装置を志向しているが、そちらは『1949年当時の扶桑人の体格では、継続的な大口径砲弾の装填が困難である』という切実な事情による。

 

「らしいとは?」

 

「あたしら、いつも横浜とかで集まってたから、プリキュア5の子達の詳しい居場所を知らないんだ。長いこと付き合ってるけど。関東圏内ってことしか」

 

「出先で戦ってたと聞いてるが、普段は会ってなかったのか?」

 

「会う時に限って、戦いになってたんだ。それが落ち着く頃には、お呼びがかかること自体が無くなってきてたからなぁ」

 

双眼鏡を片手に、身を乗り出して、敵を探しているキュアハート。ドイツ系の戦車は射程が他国のものより長いことから、アウトレンジしてくる可能性が高いからだ。

 

「そろそろ降りて。敵とぶつかるだろうし」

 

「戦車は市街じゃ弱いしな」

 

ゴルシとブライアンはキュアハートに言われ、降車。随伴歩兵として戦うのである。

 

「一応、武器はあるけど?」

 

「そうだな。さしあたって、小銃はあるか?」

 

「車内にあるM4カービンでいい?」

 

「そうだな。とっさの備えに持つだけだから、それでいいか」

 

戦車には乗員のサバイバル用に、車内に小銃などが積まれている。連合軍の戦車には、当然ながら、米軍のそれと同じような武器が積まれるようになっており、M4カービンも評価試験という名目で出回っている。元々、連合軍には先祖に当たる『M1カービン』があるので、その遠い後継ぎにあたる同銃の提供は当然の流れである。キュアハートは車内のリレーで同銃を受け取り、それを更に渡す。予備の弾倉込みで。

 

「まさか、こいつを実際に使って、実戦で戦うことになるとはな……」

 

「もしかして、サバゲーマー?」

 

「親類のナリタトップロードに誘われて、何回か経験がある。ゲーマーってほどでもない。親戚づきあいで、参加した経験があるだけだ」

 

ナリタトップロードがサバゲーマーであり、何回か、集まりで主催するゲームに参加した経験があるらしいブライアン。エアガンはかなり高額なホビーだが、ウマ娘のレースでの賞金を使えば、たやすく高グレードのものが手に入る。トップロードはそれを何丁か持っていて、ブライアンに貸した事があるという。プリキュアの体を使っているためか、エアガンよりも遥かに重い実銃をフル装備で持っても、重さを感じない。

 

「ん、戦車はそこそこ古い(M60なため)割に、銃は最新型なのか?」

 

「米軍が供与してくれたの。米軍からの供与って体だから、弾も撃ち放題なんだ」

 

「世知辛いなぁ」

 

連合軍はリベリオンの補給力を失った後は銃弾の供給にも一抹の不安がよぎる有様になり、扶桑と自由リベリオンの連合の遠征でさえ、隊によっては小銃での制圧射撃を禁ずる有様だった。不憫に思った米軍が銃器と弾薬を供与してきたので、その物資の優先使用権を持つ64Fの人員に関しては『銃器の使用制限』が解除されたのである。ゴルシが世知辛いといったのは、弾一つの紛失にも神経をとがらせる日本の軍隊特有のさもしい事情が、物資に優先権がある精鋭部隊のはずの64Fであろうと、強く反映されているからだ。

 

「どこの時代、どこの世界でも、日本の軍隊はこうなのか?」

 

「そうなんだよねぇ」

 

日本の軍事組織特有の貧乏性の発露といえる有様に、一同は懐が寒い思いがし、同意のあまりに頷き合ってしまうのだった。ゴルシは大和民族の貧乏性を自覚し、ブライアンも『財布を握られているってのは……』と呟いたのだった。

 

 

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