ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前々回の続きです。


第四百四十七話「ナリタブライアンの遠征 4」

――日本は扶桑の操縦を試み、戦後日本を模した国へしようとしたが、現地の都合で潰えた。また、史実と違い、ブリタニアと古くから同盟を結んでいたため、電子技術も史実よりはマシであった。だが、日本の大衆は(史実のトラウマで)自分たちと同等以上の水準を求めたため、気がついたら、駆逐艦などに至るまで、三次元レーダーと21世紀水準の戦闘指揮システム装備に至った。この革新により、旧来型の航空魔女の有用性は低下し、強襲揚陸艦の垂直離着陸機に近い扱いとなった。これは航空魔女の持てる武器の量はストライカーユニットの搭載量に依存するからで、ジェット戦闘機の急激な革新に航空ストライカーユニットの発展が逆に追いつかなくなった事の証と言える。陸戦ストライカーユニットがこれまでと違い、戦場の花形になり始めたため、そちらの開発が優先されていたためだ。ダイ・アナザー・デイで意外に奮戦した事が評価に繋がったのである――

 

 

 

 

 

――太平洋戦線が近いうちに始まる事は扶桑の人々は1945年の秋にはわかっていた。日本は南洋への今以上の移民を差止め、むしろ疎開させるべしと説いたが、扶桑軍は史実の日本軍が日ソ開戦時に直面したような衰弱しきった有り様ではなく、全盛期の精強な軍人と連合艦隊が健在である状態であるため、日本が扶桑軍を当てにしていないことが丸わかりであった。とはいえ、扶桑は日本が夢想していた『八八艦隊』の大半を完成させるだけの国力があったので、大日本帝国と比較しての余裕が見て取れた。『過去における軍艦の売却』が評議会で問題視されるとは思ってもみなかった扶桑だが、同時にカールスラントの面子が丸つぶれになった。扶桑に供与されたカールスラントの『軍艦のダメージコントロール術』は供与当時には既に旧態依然とした技術であった事が白日の下に晒されたからだ。その時期に建造された紀伊型戦艦はダイ・アナザー・デイまでに旧式化が露呈し、当初は長門と同様に『退役』が予定された。だが、艦齢が史実より10年若い事や『41cm砲は対地支援に有用』であるため、試験的に垂直離着陸機を使用しての航空戦艦化がなされ、それが最終形態になった。同期の加賀型戦艦は結局、土佐の機関不調が仇となり、戦艦としての投入はされぬままに『上陸支援艦』に艦種変更され、改装されていくため、戦艦は大和型以降の世代で統一される事になった。また、大和型も1949年年までに『55口径砲への換装と防御強化』が全艦に施されたため、他国の戦艦部隊はますます陳腐化した。この強化により、戦艦の長期的な保有をその場で放棄する国も続出するが、抑止力の観点から、保有を続ける大国も存在する。核兵器が普及しない世界では、戦艦が抑止力として存在し続ける事が証明されたのである。とはいえ、あまりに技術革新をしすぎると、今度はその普及と教育に時間がかかる。当たり前のことだ。ジェット戦闘機はレシプロ戦闘機を瞬く間に駆逐したが、その取り扱いの教育の難しさのみならず、機体の単価も飛躍的に高額化するように、電子工学のでの字のもない時代に小型軽量化された後のコンピュータを闇雲に与えても『猫に小判』である――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――大和型戦艦は本来、扶桑内部では『46cm砲と実用型の塔型艦橋の実験艦』という位置づけであり、実戦運用はあまり考慮していなかった。だが、紀伊型戦艦の陳腐化が衆目に示されてしまい、海軍の怠慢だと叩かれだしたため、大和型を『次期主力戦艦』とでっち上げ、扶桑海事変以来のプロパガンダを拡大した。だが、H級戦艦に対しての攻撃性能の不足が明らかとなり、超大和型へ至る。大和型は『小型に設計しすぎた』という批判が史実であり、扶桑もその批判は黒江などのルートで知ったため、超大和型は量産用の『播磨型』でも、350m以上の大きさを誇る。装甲板そのものも未来技術を用いてのものに刷新しており、攻防速ともに日本側の要求を充分に満たしている。51cm砲を三連装で四基備え、自動装填装置で発射速度も充分という触れ込みである。大和型を基本ベースにする事は扶桑内部で議論されたが、『日本側に予算を通しやすい』ということ、戦中の新規設計はリスクが高いため、既に改善点も判明している大和型をベースにした方が早かったのだ。その過渡期に建造されたのが信濃と甲斐であり、呉軍港への強襲で失われた旧式戦艦の代替という扱いであった。日本側は強襲で失われた船は21世紀型の護衛艦と潜水艦で代替できると提言したが、扶桑国民の意思は(民主主義国家の建前として)日本も無視できないため、戦艦の建造継続を認めた。(大和や武蔵から、改装の際に外された45口径や50口径の46cm砲は重要地域の要塞砲などに転用された)この際に、未来技術で量産ラインに載った大口径砲群は弾薬共々、ラ級の量産計画『ニューレインボープラン』にも転用されていたが、ブリタニア艦以外は同位国の妨害もあり、すんなりとは引き渡されなかった。ラ級戦艦の存在が21世紀世界に知れ渡ったのは、その時のことである。空を飛ぶ戦艦が存在し、1945年時点ではそれらを大破させられる兵器は原爆のみであるという事実も判明したため、更に改良が重ねられ、核兵器への耐久力を得た以上、21世紀時点でも超兵器であると言える。それの量産と普及に日本が(自分の都合で)ストップをかけたが、契約違反による違約金を避ける(自分たちがそうやって、カールスラントを無政府状態に追いやったので)ため、『平時になったら引き渡す』と『はぐらかす』事にし、一応は保管させる事にした。はぐらかす内に最強のラ級『フリードリヒ・デア・グロッセ』に対抗できる『改ラ號タイプ』をダース単位で保有し、それらへの抑止力を確保しようとした。日本としては、21世紀世界の仮想敵国にそれらが渡る事への懸念でのストップであったが、魔女世界の他国からクレームが来るのは目に見えていた。なんとかひねり出した言い訳が『戦時中なので、引き渡せない』であった。日本はラ級が普及することでの軍事的リスクを重視したわけだ。日本は『平時になったら、必ず引き渡す』という声明を日本連邦として出させ、その間に、それらへの抑止力となる『改ラ級戦艦』を生産させるのである――

 

 

 

 

 

 

 

――カールスラントの無政府状態はクーデターで決定的になり、NATO軍による軍政がやむなく発足し、現地で長く存続する。カールスラント軍部はNATO軍の指揮下に置かれ、皇室親衛隊は軍事組織としては解体され、儀仗部隊として再編・縮小された。これは扶桑の近衛師団が『近衛連隊』に縮小改編されたのと似ているが、扶桑のそれは有事即応部隊の一面が(事変のクーデターの教訓で)残された点で異なる。カールスラント皇室は『統合の象徴』に徹する事を条件に、ドイツからも存続を許されたが、国家そのものが有名無実化したため、形式的なお墨付きに過ぎなかった。そのため、カールスラントの実際の再建は比較的に統制が残っていた軍部の関係者が主導する形になり、グンドュラ・ラルはその仕事のため、長期に渡って、空軍総監の座にあり続ける。実質的に軍事国家化していたが故の帰路であった。日本はこの過程を反面教師とし、現地の改革派を補助する形で、扶桑の国体を変えていったのである。(同時に、自らもそれなりに束縛されるが、扶桑の富と資源を使えるようにするための『手段』であった)軍隊を日陰に追いやる代わりに、技術開発を補助し、新たな技術立国に育てあげる。そうした思惑をお互いに利用しあう形で、日本連邦は技術革新を成し遂げていく。それなりの副作用はあったが、それでも余りある武器として、扶桑を飛躍させていく――

 

 

 

――M動乱の海戦でUボートに散々に翻弄され、魚雷装備がないことで、艦隊戦に苦戦し、多数の駆逐艦を喪失してしまった扶桑海軍はそれまでと真逆の『積めるものはなんでも積む!!』というドクトリンへ変遷。その結果、既存艦艇は直ちに対潜・対艦装備の増強がなされたが、その代償に『居住性と航続距離』が犠牲にされた。M動乱では既存艦艇の多くが対潜・対艦装備を再装備せざるを得なくなり、ソナー手を実戦で育成せねばならないなどの不都合が生じた。その過程で、高雄型重巡は酷使されたため、事実上の後継艦として『伊吹型』が建造されていたが、計画が二転三転する内に『デモイン級重巡』が現れ、それを倒せる『超甲巡』の建造が優先されたのだが、そこで日本が軍備整備に介入。超甲巡の整備に待ったをかけてしまう。結局、伊吹型は巡洋艦として完成するも、登場時点で『軽巡』と見なされてしまい、デモイン対抗の『改高雄型』が別個に設計される事になった。そんなこんなで、高雄型は結局、1940年代後半まで現役で使い倒される羽目となり、超甲巡は『戦艦か、巡洋艦か』で日本と扶桑が大いに揉めてしまったため、建造再開は大正時代の建艦であった旧式の乙巡の耐用年数が限界に達する昭和23年にまでずれ込む。超甲巡は結局、『大和型と外観を共通化する』という指示が出され、マスト形状などの変更とミサイル兵装の増設、不要となった水上機運用装備の撤去が行われた。その設計での新造も行われ、扶桑皇国海軍水上打撃艦隊は次第に陣容の充実を見る。日本はこれを不満に思い、輸送艦と病院船、工作艦の建造を優先させたが、工作艦は二次大戦以前には用いられたが、戦後では『大規模海戦の消滅』や『浮きドックの普及』に伴い、ほぼ消滅している。とはいえ、魔女世界では必要な艦種であるため、コンピュータ装備の修理も可能な能力を与えられたものが数隻ほど試験的に建造された。これは浮きドックは自衛能力と自力航行能力のないものが多いことを扶桑皇国が不安がったための措置であった――

 

 

 

 

 

――日本人の気質は欧米人には理解しがたいものがあり、敵対したら『徹底的にぶちのめす。自分たちのどんな犠牲も厭わない』という姿勢は魔女世界の欧州諸国を震え上がらせた。カールスラントが衰退する直接的なきっかけは日本連邦との国際問題であったからだ。日本連邦がありとあらゆる手段で逆襲したため、カールスラントは結果的にドイツ連邦共和国と挟撃される格好になり、多くの優秀な人材を流出という形で失った。軍人は恩給の停止や名誉剥奪に失望し、優秀な人材ほど、日本連邦のヘッドハンティングに二つ返事で応じた。これに狼狽したカールスラントはドイツに抗議し、軍人恩給の復活などを認めさせたが、皇室親衛隊の隊員についての支給で揉めてしまい、結局はクーデターの根源の一つとなった。カールスラントの蓄積していた『物的資産』はこの時期に使い果たす形となり、以後は軍事的には小国に還った状態での立ち位置を探る事になった。扶桑はその埋め合わせのため、逆に軍事大国である事を求められたため、カールスラントと立場が逆転していくのである。そのため、有事編成を維持せねばならず、平時になろうと、軍事費を1948年当時の水準で据え置く羽目になる。扶桑の空母部隊の『財政的ストレッチ』が試みられたのも、1946年~1948年の間。その結果、大型空母と強襲揚陸艦で用途を賄う事になり、大戦型軽空母は一律で退役とされた。魔女専用のコマンド艦として『艦齢の若いもの』を使う案も出されたが、魔女専用に『瑞鳳』や『祥鳳』を使うには費用対効果が低いとされ、結局、貴重な大戦型軽空母という事で、数隻は日本へ買い取られ、博物館船に転用された。実戦での魔女の運用には新式の強襲揚陸艦が用いられる事になり、飛行甲板に魔術処理が施された。これはジェット戦闘機の艦載化に伴う措置で、大型空母はジェット戦闘機の運用に最適化し、魔女は強襲揚陸艦に載せて、運用を別に分けるほうが効率がいいと判断された。これは自前の飛行能力を持つ者以外の魔女は『ストライカーユニットの運用設備一つに付き、(機材の冷却などの都合で)最大で二人しか即応態勢が取れない』事が、ジェット化時代には不都合と見られたからだ――

 

 

 

 

――遠征軍では、デジタルとアナログの手段の双方が教導や啓発に使用されていた。戦車戦は史実の大戦中とあまり変わらない状態だが、M粒子の影響で『21世紀型電子機器』の多くが無用の長物になったためである。仮面ライダー三号の奇襲攻撃で複数のプリキュアが負傷した後、遠征軍はその二の舞いを恐れ、キュアドリームを呼び戻したのである――

 

 

 

――キュアドリームと入れ替わっているナリタブライアンは煮えたぎる闘志のはけ口を戦場に求めた。ドリーム本人と違い、炎を前面に押し出しており、躊躇なく『燃やし尽くしていた』――

 

「フッ!!」

 

青い炎で全てを灰にし、炎の闘士ぶりを発揮する。三冠馬というブランドの脆さを実感してもいるため、カツラギエースがドリームシリーズに出走するのを心待ちにしている。ルドルフとシービーをねじ伏せた経験を持つ唯一のウマ娘であるからだ。一方、そのブライアンの三冠馬としての後継ぎはゴルシの従兄弟である『オルフェーヴル』だ。オルフェーヴルはカレンチャン(姉御分)曰く『普段は大人しいが、レースでは荒れ狂う』らしい。

 

「オルフェーヴルが私のポジションの後継ぎらしいが、まさか……お前の従兄弟で、マックイーンの孫とはな」

 

「マックちゃんはじーさまとデキてたからな。じーさま、カフェと似た姿だから、カフェの友だちってのは……たぶん、じーさまだ」

 

「サンデーサイレンス、か」

 

「じーさま、もしかしたら、自分の血族がどうなってるの気になってるのかもなぁ。肉体を持たないで、カフェの周りにくっついてるのも……」

 

「カフェに言わなくていいのか?」

 

「野暮だろ、そういうのは。マックイーンは見えてるようだし」

 

「なぜだ」

 

「前世でデキてたからだろ」

 

「雄同士だろ……?」

 

「あるだろ、そういうの」

 

ゴルシは至極当然な返しで、マックイーンがマンハッタンカフェの『お友達』の正体に気づいている事に触れた。ブライアンは引いている。

 

「お前だって、ローレルの愛が……」

 

「やめろ。あいつの扱いに困っているんだぞ、こっちは」

 

ブライアンはサクラローレルが自分に執着があることに辟易している。それはサクラローレル自身、怪我で遅咲きになってしまい、憧れであったブライアンは『自分が万全を期せる』頃には『ピークを過ぎてしまった』事実からか、ブライアンが這い上がるのを望みつつ、それを超えることで『世代最強』となろうとしている故の『愛』であった。あまりの凄さに、ブライアン本人は『恐ろしすぎる』とボヤいており、ローレルとの付き合い方を考えているという。

 

「お前はどうすんだ?」

 

「あいつが史実通りに、私に引導を渡そうとするなら……それを更に上回るだけだ。一度は怪物と呼ばれた者の意地だよ。だから、こうして、その素地作りをしている」

 

「戦場でするってのも、お前らしいよ」

 

ブライアンはキュアドリームの『名を借りる』形で戦場に身を置いている。ブライアンは史実の記憶を宿した後は自身の『弱さ』を受け入れた上で、三冠馬であった存在としての意地を見せつけ、名実共に『怪物としてのオグリキャップの後継者』にならんとしていた。その精神的素地を作るために、過酷な状況に身を置く必要があったのである。

 

「どうだ?」

 

「敵もこっちに気づいた。砲兵が撃ってくる前に移動するよ」

 

ブライアンたちはM60戦車にタンクデサントし、護衛のM48戦車を引き連れて、場所を移動する。

 

「なぁ、聞いていいか?敵はなんで、映画撮影っていう大仰な嘘をついてまで、この街を封鎖している?」

 

「この世界のプリキュア5を連中が倒せば、『プリキュア5が負けた』っていう事実が生まれるからさ。そうすれば、別次元のマジンガーZEROとの戦いが万一にも起こったら、絶対的に不利になる。あなたが借りているドリーム以外のプリキュア5は『因果を超える』までには至ってないからね」

 

 

キュアハートはそう答える。マジンガーZEROが生まれた世界は一つではない。その内の一体とは和解ができたが、別個体のZEROが『物分かりの良い魔神』とは限らないからで、因果律兵器の効力を超えるには『運命を超える』事が必須なのである。

 

「ああ、のび太さんから伝言だけど。あなたのお姉さん、マヤノトップガンちゃんやナリタタイシンちゃんの説得で、引退をしばらく保留にするそうだよ」

 

「何っ!?本当か!?」

 

「うん。タイシンちゃんが一晩中、あなたのお姉さんを説得して、マヤノちゃんも入って、あーだこーだになったみたい。引退の意志自体は覆せなかったけれど。引退を先延ばしにはできた。引退レースに備えての療養って体裁は取れたから。それで一年か一年半くらいだけど、正式に引退を伸ばせた。多分、ここ二、三年は現役扱いでいられるって」

 

「……よしっ!」

 

「お前、何気によ、見えないとこじゃ『シスコン』だな」

 

ゴルシにツッコまれるが。

 

「うるさいっ!」

 

「否定しないのかよ!」

 

こうして、ブライアンはタイシン、マヤノの尽力で、姉の引退を引き伸ばす事には成功した。ブライアンは姉に見えないところでは、姉への信頼を態度に出しており、周囲もそれを知っている。また、ハヤヒデはクラシックで台頭したばかりであり、シニア級では『ろくに走っていない』。そこを突いて説得したのは想像に難くない。タイシンとマヤノが共同戦線を張ったのは珍しいが、ハヤヒデも妹達へ負い目があるため、最終的には折れたのだろう。

 

「さて、あたしも仕事はせにゃならねぇからな。おい、たしか、護衛の連中は火器を持ってきてたな?」

 

「敷島博士の作った武器を積んできてるよ」

 

「ゲッターレーザーキャノンはあるか?」

 

「あると思う」

 

「使わせてもらうぞ」

 

敷島博士は歩兵の持てるサイズで『戦闘車両を破壊できる』火力を持つ武器の制作が得意である。ブライアンとゴルシも、彼のマッドサイエンティストぶりに『ジジイ』と引き気味に呼んでいる。これは彼に会う者のほぼ全てに共通することで、あの花海ことはでさえも、彼の事は『敷島のジジイ』と呼んでいる。

 

「あのジジイ、イカレポンチのくせに、腕は一流なんだから、始末に負えん」

 

「昔は反応兵器の開発も軍部にさせられていたそうだ。で、あまりにマッドサイエンティストなんで、公的機関に置けないってんで、追い出されたところを、友人だった早乙女博士に拾われた。今や、地球連邦の六大頭脳だとよ」

 

「兵器開発なら一流だしな…」

 

敷島博士はマッドサイエンティストであるが、作るものは素晴らしい出来であるため、何かと64Fとロンド・ベルに重宝されている。兵器技術者という分野は日陰者だが、ゲッター線理論を理解できる者の数少ない生き残りであるため、最近は早乙女博士に代わり、ゲッターロボの開発の書類上の責任者である。(なお、敷島博士曰く、戦中のドイツ戦車は『美しい』との事)

 

「敵だよ!」

 

「なに!?」

 

一同の乗る戦車の前方に砲弾が着弾する。敵戦車の先制攻撃だ。

 

「ふう。あぶないあぶない。……いた。今度は……珍しいな。ヘッツァーだ」

 

「あの有名なちっこい駆逐戦車か?主砲は75ミリだ、M60の装甲は抜けねぇだろ?」

 

「側面装甲なら抜けるよ。ただし、タングステンの硬芯弾でね」

 

第二次世界大戦中の戦車砲の中では比較的に高性能であった『7.5cm PaK39』のタングステン弾であれば、第2世代主力戦車の側面装甲は抜けると、キュアハートは明言した。未来の兵器が過去のものに万能というわけではないわけで、16式機動戦闘車がダイ・アナザー・デイで奮わない戦績で終わったのは、扶桑軍が運用を間違ったからだが、皮肉な事に、機動戦闘車というカテゴリに疑問が生ずることになったのは、M26やM4の不意打ちで撃破された車両が複数出たからだ。

 

「自衛隊の16式戦闘車みたいに、運用の齟齬で調達数の撤廃が議論されちゃうのもかわいそうだからね。それで自衛隊、神経過敏になってんだっていうし」

 

「財務は目先の結果しか見んからな。うちの学園も似たようなものだ。ルドルフの威光で、経理関係部署の文句は抑えられていたが、今後は私がその役目を引き継がないとならんな…」

 

「なんで?」

 

「テイオーは青二才だからな。経理担当を言う事聞かせられるほどの迫力はまだない。ルドルフは最初から期待されていたから、長期政権だったんだが、テイオーは言っちゃなんだが……怪我の連続で苦しんだ時間が長くてな」

 

テイオーはクラシック期の後半とシニア期の最初の一年を棒に振ってしまっているため、会長になっても、現役選手としてのキャリアを相当に積む必要がある。これは生徒会長になった者は当代最強か、それに近い実績を持つ者が選抜されてきたからで、テイオーは『ルドルフの愛弟子』ではあるが、現在の実績は近年の生徒会長経験者らに比すると『格落ち』は否めない。故に、テイオーは生徒会長となっても、当面は現役選手であり続ける必要があるのだ。

 

 

「うちの学園の理事長は代替わりして間もなくて、まだ『ガキ』の年頃でな。先代の時代からいる連中に抑えが効かない点もある。だから、ルドルフや理事長の秘書が色々と睨みを効かせていたんだが、今回の出来事でルドルフが退任したから、奴のしていた事の内、『ダーティな』側面を私が引き継ぐしかないんだよ。陽の仕事はもう一人の副会長(エアグルーヴ)にやらせるが、陰の面を引き継ぐ必要もあるしな」

 

ブライアンはテイオーに『ダーティーな』仕事はさせたくないという老婆心を見せた。また、そういう仕事の処理のために、ゴルシを生徒会に加えたとも。

 

「意外に優しいんだね」

 

「私とて、周りに気を配らんわけではないぞ。実家が接客業だから、気の使い方には、親たちに躾けられたんだよ。普段は面倒だがな…」

 

ぶっきらぼうなようだが、意外と礼儀正しいところがあるブライアン。『ブライアンは優しい子だ』とは、ビワハヤヒデの談。

 

「ヘッツァーは捕捉したか?」

 

「ここからだと、射線に購買部の建物が入っちゃう上に、敵と斜めに向かい合うことになるから、場所を移動するよ!いくら戦後型の徹甲弾でも、着弾した時の角度によっちゃ、跳弾するからね」

 

APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)は連合軍では普及しきっておらず、その前世代の『APDS(装弾筒付徹甲弾)』が主流である。敵と同じ『APCR』(硬芯徹甲弾)/高速徹甲弾(HVAP)も使用されている。そのため、二次大戦当時で既に『穴埋め』として見られていた『ヘッツァー』相手に新式のものを使うのは『もったいない』ため、標準装備となった『APDS(装弾筒付徹甲弾)』を装填させる。ヘッツァーは所詮、『旧式戦車の再利用』で生まれた駆逐戦車であり、多数で敵を蜂の巣にする戦法が設計時に想定されていた運用である。単騎で顔見せ程度に現れたというのは、威力偵察名目の『余り物の処分』としか思えない。

 

「そうか、建物を通すと、幾分か貫通力が減衰しちまうのか」

 

「そう。こういう場合は砲弾を当てる角度を考えないと、理論上は余裕で貫ける厚さの装甲を抜けない事がある。ドイツの戦車兵は『車体を相手の斜めに向ける』って教育されてるから。最も、駆逐戦車はそれに当てはまんないけどね」

 

キュアハートは跳弾による、周りへの二次被害を警戒し、敵を確実に貫ける位置を取ることに拘っていた。ヘッツァーの装甲は車体正面で傾斜ありの60mmほど。二次大戦中の時点でも心許ない厚さである。とはいえ、確実な撃破を狙い、側面の20mm装甲を狙わせるあたり、逸見エリカとしての経験(黒森峰はドイツ系の車両を使う都合上、同車両も持つ)を生かしている事がわかる。

 

「今だ!!」

 

その合図とともに、M60の『M68戦車砲』(ロイヤル・オードナンス L7の米軍採用版)が吠える。確実に敵の側面を貫くため、位置取りにこだわって放たれた一撃だ。ヘッツァーは発砲から数秒後には炎に包まれ、弾薬の誘爆で鉄屑と成り果てる。

 

「よしっ!ハァ~アハハハぁ~ッ!!見たか、ショッカー共め、そんな穴埋めで造られた奴を持ち出したところで、戦後型のこっちが足止めを食らうかっての!」

 

と、逸見エリカとしてのガサツさがここで顔を出す。相田マナとしての凛々しさと優しさが主体でありつつも、逸見エリカとしてのガサツさを持つのが、今のキュアハートである。その表れか、感情が昂ぶったりすると、意外にガサツな言葉づかいになる。そこを差して、戦車道部の先輩であった西住まほからは『逸見エリカと相田マナが混じり合ったと言うべきだな…』と評されている。(これは菱川六花とサンジェルマンが混じり合った人格となったキュアダイヤモンドにも言えるが)

 

「おめー、意外とガサツなんだな」

 

「あ、あなたには言われたくな~~い!」

 

しょうもない喧嘩を始めるキュアハートとゴルシ。呆れるブライアン。とはいえ、キュアハートの姿で『逸見エリカ』としての地を出すのも珍しいのは事実。ある意味では、逸見エリカががんばって、プリキュア業をしている』とも取れる場面なので、その模様を見れた護衛車両の車長であるGフォースの隊員らは心の中で小躍りしたい心境であった。

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