――ミッドチルダはM動乱により、その権威が失墜はしたが、なりふり構わぬ共闘で組織の存続には成功した。『聖王のゆりかご』の正体が『漂流してしまった宇宙戦艦ヤマトの試作艦の一つに外殻を幾重にもかぶせ、魔導炉で武装や補助エンジンを動かしていた代物』と判明した事は時空管理局にショックを与えた。最高評議会の正体がナチス・ドイツの将校だったという事実も、時空管理局が地球連邦に実質的に組み入れられる上での大義名分として機能した――
――ミッドチルダは独自の暦を採用していた。地球連邦の実質的な植民地になった後も、一応の自治権を保持した関係で使用が継続されていた。M動乱で、強い規制で業績も芳しくない次元世界の多くの軍需産業がバダン派につく事が多く、体制側であったはずの時空管理局はアナハイム・エレクトロニクスやサナリィなどの『地球の軍需産業』に泣きつくしか、組織の生き残りの手段はなかった。結局、有力な魔導師の多くはバダンにつき、時空管理局はなのはやフェイトらを戦力の中心とせざるを得なかった。なのはがダイ・アナザー・デイ作戦での失態にも関わらず、教導隊を除名処分にならなかったのは、人手不足によるものである他、ティアナ・ランスターに『兄の名誉回復を行うから』という条件で復帰を懇願するなど、人手不足に由来する事例が頻発している。スバルは機動六課が立ち消えの状態になった後は原隊の救助隊に戻るはずであったが、救助隊の組織が武装隊から分離独立することになり、戻るに戻れない状況となったので、ガランドの秘書を暇つぶしにしていた――
「救助隊が武装隊から分離独立することになったから、戻るに戻れなくなってさ。今は書類上ははやてさんの預かり。まぁ、あたしも救助隊を離れた後は戦場にしか出てないしなぁ。再改造しちゃったようなもんだし」
スバルはこの世界線では、戦闘機人から『改造人間』にクラスチェンジしている。助命のためとはいえ、仮面ライダー達の技術で再改造されたからだ。再改造後はメンテナンスの必要はほぼなく、自己修復機能も備えている。姉のギンガも同様の再改造で救命されたため、二人は戦闘機人素体の『改造人間』となっていると言っていい。仮面ライダーらを生み出した『組織の技術』はあのジェイル・スカリエッティをも遥かに上回るものと、時空管理局が驚愕したのは言うまでもない。後天的に機械改造を埋め込んだのに関わらず、ほぼメンテナンスフリーなサイボーグを量産できるという技術力を持つからだ。
「仕方がないですよ。助命の手段がそれしかなかったんですから。むしろ、今までより楽ですよ?メンテナンスフリーに近いから、頻繁に機械部品の交換で入院する必要もないし、ライダーマンさんやスーパー1さんが重度の損傷もどうにかしてくれるし」
「そうなんだよね~。でも、おかーさんがあたしより若くなってたってのは堪えたよ」
「多少の外見年齢の差は数年くらいで埋まりますよ。あの外見からして、成長期のようですから」
クイント・ナカジマはガランドに引き取られた時には『10歳くらいの外見』だったが、この時期には、目測で14歳ほどに成長しており、娘たちにだいぶ近い外見に戻り始めている。時空管理局には戻れない(死亡扱いだったので)が、帝政カールスラント空軍の中尉であるので、収入がないわけではない。娘たちが片方づつを受け継いでいる『リボルバーナックル』は彼女が現役時代に使用していたものである。
「おかーさん、あたしらが子どもたちのコーチみたいなことをしてるって聞いたら、苦笑いしてさ。あたしだって、そりゃ成長はするもん」
「ドンマイですよ」
「うぅ。直に20代が見えてくる年頃だってのに……」
スバル・ナカジマも20代に片足を突っ込む年頃へなっていた。とはいえ、童顔気味であるので、概ねはそれより若く見られる。(再改造時点の年齢から『加齢しない』ので)それは『直に20代が見えてくる年頃』の少女としては、悔しいところがあるらしい。なお、趣味で16~17歳までにインターミドルの大会に出場し、いいところまではいったらしい。
「でも、あたし、元から格闘技してたから、自信あったんだけどなぁ」
「まぁ、大会は何があるか、分かったもんじゃないですって」
「そういえば、なんで、竜馬さんは格闘技の大会に出ないの?」
「竜馬さんのは実戦本位の空手だから、大会向けじゃないんですよ。だって、あの人……爬虫人類を殴り殺せるんですよ、普通のパンチで」
「あ、あはは……」
流竜馬は空手道場を営む格闘家の顔を持つが、父親が殺人空手の使い手であったため、大会に出れるような空手は持ち合わせていない。(剣道やサッカーでは、浅間学園時代に出場の経験ありだが)そのため、演舞は弟子たちに披露はせど、試合には出場していない。哺乳類より遥かに頑強な体を持つはずの爬虫人類を普通に素手で殺せる拳を奮い、スバルや調が戦闘時と同様の格好でスパーリングしても、それらのハンデを苦にせず、二人を一瞬でノックアウトできるほど。本人曰く、『若い頃の一時期、ガンダムファイターの候補になっていた』との事。この発言から、彼の身体能力はドモン・カッシュと同等以上という事がわかる。
「あたし達の周りって、超人多いよねぇ」
「私達が言えたことでもないですって」
彼女達も普通に超人に近いのだが、上には上があるの論理の通り、人外レベルの基礎能力を素で備える人間が身近にいるので、霞んでしまうのである。
「でも、史実だと『ピンじゃ戦えなかった』んで、今の状態は受け入れてますよ。その気になれば、エクスカリバーも撃てますし」
「そういえば、調ちゃんは史実だと、あの子とセットが前提だったもんねぇ」
「ええ。まぁ、共依存みたいな形だったんで、その状態からの脱却ができたのは良かったと思ってます」
切歌への依存が色々な要因で強引に終わらされたためか、調は切歌に以前ほどは執着しなくなっている。自信がついたこともあるが、ベルカや野比家での暮らしで価値観が変わったためだ。
「でも、珍しいね。普通の軍服は」
「今日ははやてさんの付き添いで、管理局が艦艇を地球型に更新するにあたっての事前視察だったんです」
「あれ、管理局、自前の艦艇設計を辞めたの?」
「ヒンデンブルク号の艦砲で一撃死するような実体弾に脆弱な構造じゃ……ねぇ」
ヒンデンブルク号の主砲口径は53cm。これは史実の超大和型戦艦よりも大口径の砲である。大和型戦艦をもあわやという所に追い詰めるほどの貫通力を持つ徹甲弾は時空管理局の平均的な艦艇の船体をあっさりと貫通せしめた。あまりの呆気なさに、撃った側の司令官である『暗闇大使』でさえ、『奴らは木造の帆船かね?』と呆気にとられたという。仕方がないが、時空管理局の艦艇はエネルギー兵器などの類に特化した防御であった。高速回転運動をする弾丸の防御ノウハウはとうの昔に失われていたため、装甲の物理的な厚さは大したものではない。それが分厚い金属の固まりを穿つために作られた徹甲弾を防げないのは当然の事だった。はやてがM動乱の際、残存していた時空管理局の艦隊を動員せず、地球系の世界に救援を仰ぐことを決断したのも、ミッドチルダの軍事力の真の実力を知っていたからである。
「でも、時空管理局にはいい薬にはなったと思うね。思い上がりが正されたし」
「追い詰められてから目が醒めるってのは、時すでに遅しっていうんですよ、本当は。地球連邦は生き延びましたけど」
時空管理局は独力でバダンの侵略に対抗できなかった。その衝撃は次元世界全体でのミッドチルダによる統制が連鎖的に崩れていくこととして現実化。遂には、ミッドチルダそのものが地球の統制下での再建を選んだのである。
「地球連邦の軍備を買うだけじゃ、どうにもなりませんよ?」
「たぶん、当分は訓練とノウハウの構築に時間を費やすんじゃない?だから、黎明期の自衛隊みたいに、当分は沿岸警備隊同然の状態から立て直すと思う」
「詳しくなりましたね」
「まぁ、メカトピア戦役に従軍してたし」
忘れられがちだが、スバル・ナカジマはメカトピア戦役に従軍した経験があり、異なる時間軸のなのは達と共闘していた。
「そういえば、そうでしたね」
「だから、なのはさんを諌められるんだよ。史実どおりだったら、あたしは何も意見できなかったと思う」
史実より付き合いが長いため、なのはもスバルの言うことを聞く。メカトピア戦役当時のことを出されると、呑んべえとなったなのはも弱いのだ。
「当時の写真、取っといてあるよ。色々とタイムパラドックスになるかなーってんで、隠してたけどね」
「でも、結果としては」
「うん。概ね史実どおり。記憶が戻ったの、M動乱の時。なのはさん、相当に恥ずかしがってたけどね」
「だから、ギリギリセーフのところなんですね」
「うん。それとあの動乱、錦ちゃんが従軍したのじゃ最後になったんだ。ダイ・アナザー・デイで覚醒したから」
「人間、何がきっかけになるかわかりませんからね」
M動乱は中島錦が活動した期間では最後の大規模戦になった。その後身になった形ののぞみにも記憶は受け継がれているので、スバルと知り合いである。とはいえ、のぞみがM動乱で覚醒していれば、戦況の好転がもうちょっと早かったのでは?という予想も出ている。
「でも、あの子がプリキュアかぁ。意外な感じ」
「歴代の中でもトップレベルの戦闘力持ちで、前世は教師だったそうです。その流れで、彼女は転職を希望してたんですけど、職業軍人上がりってだけで文科省の一部勢力が話を揉み潰したそうです」
「ひどいね。あたしらでいえば、局員上がりみたいなもんでしょ?」
「日本と扶桑で外交問題になりかけたんで、日本は『軍でスピード出世させるから、この事は黙っててくれ』としたんですが、ケイさんが週刊誌に流して、大騒ぎに。結局、扶桑への詫び代わりに、文科省の上の方が大臣と官僚のNo.3位の役職まで更迭されて、大臣はその前に、扶桑の昭和天皇に頭を下げる羽目になったそうで。プリキュアの夢を官庁が潰したって、センセーショナルに報じられたんで、日本政府も防衛省や文科省の引き締めとして、相当数の官僚が窓際族に追いやられたそうです。政権の足元を揺るがす事態でしたから、『一部の官僚達の暴走』ってことにして、事態の収拾を無理矢理につけたんです」
「管理局が『人手不足』を言い訳に、質量兵器を解禁したようなもんか」
時空管理局は武力の多くを少数の高ランク魔導師に依存していたのが仇になり、それらに離反されただけで組織基盤がガタガタになった。そのため、『質量兵器の解禁』がM動乱で進んだ。なのはやフェイトのような強大な魔導師は本来、『数十年に一人』出ればいいほうなのだ。
「地上本部と艦隊の不仲が世間に露呈して、赤っ恥な上、仮面ライダー達がいなければ、機動六課も地ならしで壊滅してたのは想像に難くないとなれば……」
「うん。20世紀前半のレシプロ戦闘機にも歯が立たない連中が大半だったからね、地上部隊の航空魔導師。艦隊の魔導師は多くが向こうについてたし、おまけに、最高評議会は向こうの将校だった。これじゃね」
「で、組織の内実があれすぎたから、地球連邦政府の傘下に?」
「うん。その方が次元世界も納得するからね。中心世界って考えも捨てたほうがいいから、ミッドチルダのある宇宙の探査も進めるって」
「当然ですね」
「地球連邦政府から武器を買うのは?」
「組織を維持するための妥協だって。他の世界も急に『自分で守れ』と言われても、そんな事は出来ないから」
時空管理局はこうして、地球連邦政府の枠組みに急速に組み込まれていった。救助隊や自然保護隊が武装隊から分離独立させられ、司法部門も別組織化し、三権独立の一歩となったが、現時点で執務官、あるいは補佐であった魔導師は従来の任務を継続するものとされた。現時点で時空管理局は致命的な人手不足であるからだ。はやてはM動乱の功績で、中将へ特進したが、艦隊指揮はまだ青二才だとし、辞退。組織運営の方面に進み、この頃には装備管理部の長となり、地球系の兵器の導入を推進している。
「はやてさん、地球系の兵器を60パーにしたいとか?」
「40パーをミッドチルダの軍需産業の取り分にするって?」
「ミッドチルダの軍需産業に地球系の技術を流しても、モノにするには少なくても、『5年から10年』の時間はいるでしょうし、内情が知れ渡れば、管理局は空中分解です。だから、表向きは評価試験って題目にしてます」
「評価試験…ねぇ。管理局標準の艦艇が第二次世界大戦レベルの戦艦にさえ落とされまくったのを報道管制して、成り立つ名目だよね」
「そうです。だから、はやてさんは旧式になったドレッドノートタイプの戦艦を大量に買おうとしてるんですよ。旧式だけど、XV級より優れてるから」
「地球が長門型戦艦(ドレッドノートタイプの後継として開発された第2世代の主力戦艦級)に入れ替えを始めたところに漬け込んだってこと?」
「そういう事です。波動エンジン艦はパトロール隊には過ぎたものですし、ジオン残党に奪われたらコトですからね。旧式兵器を時空管理局に売っぱらって、国土復興の資金を稼ぎたい連邦、表向きは『協定を結んだ』って体裁で組織を維持してる管理局の利害が一致したんですよ」
組織間の利害の一致をはやては利用し、ドレッドノートタイプの戦艦(主力戦艦級)の購入にこぎつけた。地球連邦軍がその次の世代の戦艦に入れ替えを始めた時期を見計らっての打診であるあたり、強かな計算が見て取れる。また、魔導師不足への対応を名目に『ブラックタイガー』を主力戦闘機として、主力戦車として『61式戦車』を採用する、武装隊の規律を軍隊寄りにするなど、改革派は『反対者が動乱でいなくなった』のを良いことに、『組織の再編成』を大義名分にして押し進めている。ミッドチルダの大衆も『自分たちは統制者でもなんでもない』ことを前々から自覚しており、意外なほどに時空管理局の変容を受け入れていく。
「俺も地球で買った車やオートバイを家に置いてるから、はやての考えはわかる。地球の兵器は戦争の連続で洗練されている分、多少の訓練で動かせる。多くの魔導師をバダンに持っていかれた以上、なりふり構わないというわけだ」
「あれ、フェイトさん。今日は聖闘士としての顔見せだって」
「沙織さんが気を使ってくれて、存外に早く帰れたんだ。ヴィヴィオの奴が自転車を欲しがっていたから、店で買って来たところでな」
「そっか、そんな年頃だっけ」
いつの間にか、フェイトがやってきて、しれっと合流する。聖闘士世界からの帰りなようで、背中にパンドラボックス(聖衣を収納する箱)を背負いつつ、子供用の自転車を帰り道で買い、そのまま運んでいる。
「さすが聖闘士。背中にパンドラボックス、片腕に自転車の箱ですか」
「聖闘士の訓練生時代の特訓より圧倒的に楽だぞ?スバル」
「それはそうですけど」
フェイトは聖闘士になった後は力がついたようで、以前とさほど変わらぬ細めのボディラインは維持しているが、かなり筋肉質になっている。口調はアイオリアが以前に憑依していた名残りで変化したまま。風鳴翼と似た方向性(ただし、翼は『防人としての役割』を演ずることで自らを奮い立たせていたため、ショックな出来事に遭遇すると、ふとした拍子に『素に戻ってしまう』が、こちらは完全に変化している)の口調と評判だ。
「映画の撮影がやっと一段落したろ?それを待ってくれてたのでな」
「そうだったんですか」
「ああ。昔の自分の仕草を演ずるというのは、意外に恥ずかしいものだぞ?俺はまだいいが……なのははな」
「……あ~…」
なのはは成人後は(加齢もあって)『あたし』に一人称が変わったり、素の口調が(特に『事件後』は)荒くなっていたので、昔の天真爛漫な口調を演ずるのには、かなりの苦労があったと、フェイトは二人へ教える。二人はなんとなく察した顔をする。
「なのはは散々、品行方正ということで宣伝に使われてたから、あの事件の後の素行は管理世界じゃ口外できん。部内で知られていても、組織の外聞上の理由で『対外的』には隠さなくてはならんしな」
「仲間内じゃバレバレでも、マスコミには隠せって事ですね?」
「昔、日本でアイドルと持ち上げられつつも、醜聞が明らかになった途端に、表舞台から姿が消えた例があったろ?誰だかは忘れたが……そういう事をはやては警戒している」
「例え話にしても、古い例ですね。80年代くらいの芸能スキャンダルじゃないですか」
「とはいえ、的は射ているとは思うぞ。それに、清純派で売ってるアイドルも一皮剥けば……なんて話は古今東西、どこの世界にもある話だが、なのはは『管理外世界の出身者でも要職につける』最新の事例として、管理局の寛大さの証明写真のように扱われてきた。それが『組織間のハンドサインの解釈の違いで大事を起こした』のが知られ、本人が不貞腐れて呑んべえになってる事も知られてみろ。管理局の教育カリキュラムが根底から崩れる事態になりかねん。それは義母さんや義兄さんも望んではいない」
「うーん…。だから、窓際族にしてるんですか?」
「なのはを簡単に前線に出せるというメリットもあるにはある。だが、主な原因が精神的な事柄なら、長期的なカウンセリングが必要だ。教導隊も扱いに困っているそうでな…」
「個人よりも組織の都合が優先されるって事ですね?」
「当事者が組織のプロパガンダに使われていた者なら、尚更のことだ、調」
なのはは時空管理局が人事上の寛容さを示すための材料として『神輿にされていた』。それは特にメカトピア戦役からの帰還で顕著になった。ダイ・アナザー・デイで『やらかした』ため、時空管理局も厳罰として、教導隊からの除名処分を検討したが、なのはは『管理外世界の出身であった』事がネックであった。ミッドチルダ出身者以外で、教導隊に入隊した初の『管理外世界出身の魔導師』として盛んにプロパガンダに使っていた事も、M動乱後の時空管理局には頭痛の種であった。
「はやてさんがなのはさんに制服での勤務を禁じたのは?」
「次元世界のゴシップ誌のフォーカス防止のためだ。地球連邦の、それも一独立部隊のカスタマイズ軍服など、次元世界のゴシップ誌のカメラマンにはわかるまい。いざとなれば、はやては『しらを切る』し、会社を脅すしな」
「そんな権限あるんですね、あの人」
「義母さんが全艦隊の指揮権を持つ状態だからな。はやてはその補佐も任務に入る。管理局という盤面でチェスをしているようなものだよ、義母や義兄、それとはやては」
ダーティーな手段も講じ、はやてはなのはの犯した『不手際と醜聞』が管理世界に漏れないようにしている事、管理局は自分たちの『身内』が主導権を握ったが、管理局ほどの大組織の運営は『綺麗事で済まない』ことを教えるフェイト。局員は管理世界では『エリート』と見なされる立場故に『現地のマスコミ対策』にも気を使う立場だが、事件以降に自暴自棄になったなのはは、半ばそれに無頓着になってしまったところがあるので、友人たちは色々と厄介ごとを背負わされたも同然である事、はやては『戦乱で出世したものの、胃薬が手放せなくなっている』。
「なのはは突き放した方がいいと、ヴィヴィオとも話し合っている。なのはをしばらくどこかに預けたいんだが……」
「ショック療法で、竜馬さんの空手道場にいかせます?」
スバルの指摘に、フェイトと調はハッとなり、同時に叫ぶ。
『それだーーーーッ!!』
「ふ、ふぇ?」
戸惑うスバルだが、それからトントン拍子に話は進み、なのはの飲む酒に『睡眠薬』を仕込み、酔って眠らせた後に、23世紀の日本は浅間山の近辺に送り込み、流竜馬の空手道場に預かってもらうという急ごしらえ感の強い計画だ。
「スバル。なのはの休暇届を偽造するから、事務方を動かせ。調はリョウさんとハヤトさんに話を通せ。明後日の夜までに手筈を整えておけ」
「わ、分かりました。ヴィヴィオに言います?」
「協力してもらおう。なのはは麻酔が効きやすい体質だ。中程度の強さの睡眠薬を酒に混入すれば、丸二日は眠り込むはずだ。ミッドチルダで一番早い貨客船なら、半日で向こうの世界につくはずだ」
「えーと、なのはさんの登録してる旅行サイトのパスワードは分かりますか?」
「確か……」
矢継ぎ早に指示を飛ばすフェイト。即座に手持ちの端末でミッドチルダ内のネットワークにある旅行代理店のサイトにアクセスする調、戸惑いつつも、事務に連絡を取り、その場しのぎの話で『なのはが旅行に行くから、休暇届を申請したいそうな』という話をし、休暇届を発行、承認するように話を誘導するスバル。
「フェイトさん、なのはさんのサインはどうします?」
「俺が代筆しておく」
「偽造でしょうが」
「細かい事は気にするな」
端末を操作する調に呆れ半分でツッコまれるが、フェイトは意に介さない。こうして、フェイトの『極秘計画』が開始される。なのはの呑んべえぶりに手を焼いていた二人も加担する形で、なのはは浅間山近辺に送り込まれることになる。計画に巻き込まれた形の流竜馬は『お前ら、ウチの道場をなんだと思ってやがるんだ?』とボヤきつつも、ため息まじりに肩を落としたそうな……。