ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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四百五十四話の続きです。


第四百五十九話「留守部隊のパニックとブライアンの奮戦」

――扶桑皇国はカールスラントよりはマシであったが、社会的混乱は避けられなかった。その結果、魔女はMATという選択肢を得たが、社会的には白眼視されるため、今度はそれを代替役として認めさせる運動が興る。日本は扶桑の内政問題に介入しようとする内部勢力を罰していったが、対応が追いつかない状況が続き、一大スキャンダルとなる『プリキュア問題の発覚』は文科省に粛清の嵐を起こした。扶桑軍は魔女の入隊人数の減少を鑑み、兵科の解消をいよいよ検討し始める。昭和天皇の迫害の懸念により先延ばしになったが、一般的な魔女の特権は『ダイ・アナザー・デイのサボタージュ』の結果、徐々に廃止され始めており、1949年時には、同戦役を戦い抜いた64Fに属する者のみが恩恵に預かっていた――

 

 

 

 

――扶桑軍は連合艦隊の士官らに仲裁役の義務を負わせる、カウンセラーの乗艦を進めるなど、明治期以来の慣習にメスを入れていった。また、不燃家具の普及(戦艦武蔵の居住区に家具がない事が大問題になったため)が緊急で進められた。新式艦艇の建造が増加したのは、既存艦艇では『水雷装備の再装備で居住性と航続力が低下する』という問題が起こったからである。防空システムも戦後式に刷新されるに及び、既存艦艇では搭載スペースがないという問題によるものでもあった。M動乱では『水雷装備の有無で大揉めになった』ため、水雷装備(その後継の位置づけのミサイル装備)が装備された都合、史実通りの居住性能に回帰する艦艇が多かったのである。M動乱で『水雷装備を除いていたために、大恥を晒した』ためだ――

 

 

――怪異対策への特化をやめた扶桑軍は水雷装備の近代化を進め、未来型の追尾魚雷の装備に至った。砲戦は軽巡以上の艦艇にやらせるという役割分担も明確にされたが、軽巡は(防御力の都合で)阿賀野型を最後に建造されなくなり、重巡が軽巡の任務を吸収し、超甲巡が旧式戦艦の代わりとして重視されるようになった。その関係上、31cm砲では『帯に短し襷に長し』と政治的に判断され、第三期建造タイプは実質的に『36cm砲搭載戦艦』に準ずる規格で船体構造が強化される見通しとなった。戦艦は旧式や巡洋戦艦が淘汰され、完全に大和型戦艦以降の『高速重戦艦』が主流となる。空母機動部隊で『量』の勝負が不可能となったため、打撃艦隊や潜水艦で勝負せねばならないあたり、予想される『航空消耗戦』を空軍にやらせる気なのが見え見えな施策であった――

 

 

 

 

 

――第二世代宮藤理論式はカールスラントの研究していたジェットストライカーの欠点を改善したが、一つの技術的問題がある。それは『高速で飛行するジェット機に致命傷を負わせるための火器は『魔女の身体能力強化で持ちきれるものではない』こと。故に、武装ユニット式となったが。格闘術を尊ぶ扶桑の古参などに不評であった。その欠点の改良はやがて『パワードスーツにすりゃいい』という発想に発展するのである。当時、既にコンバットスーツやISによって『有用性の実証』は済んでいたが、既存技術理論の限界などの理由で『重装甲脚を小型軽量化する』方向性で開発が進められていた。扶桑は装甲脚の技術が遅れていた都合もあり、九七式や一式から飛躍する新式の自主開発に苦戦していた。運悪く、クーデター後に通常兵器や軍インフラ整備に予算が割かれたため、開発は停滞。ブリタニア製の『センチュリオン』とカールスラントの放出した『ケーニッヒティーガー』&『パンター』の購入で場凌ぎが行われている。航空ストライカーよりは『太平洋戦争でも、既存ストライカーの活躍の余地があった』ため、機甲部隊の半数近くは機械化装甲歩兵(陸戦魔女)の部隊が占めていた。長距離移動手段として『装甲兵員輸送車』と『歩兵戦闘車』が必要になるとはいえ、普通の歩兵よりは強い事から、太平洋戦争での花形となっていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

――それらはあっちこっちに引っ張りだこな上、北方戦線の将兵が手放さない部隊も多かったため、64Fに要請が下った。ダイ・アナザー・デイで試験していた事が公式化された瞬間であった――

 

 

――遠征軍――

 

遠征軍にも陸戦ストライカー装備の部隊はいる。歴代プリキュアや仮面ライダーほど華々しい活躍はないが、『縁の下の力持ち』ポジションで奮戦している――

 

 

「ご苦労様です」

 

「状況はどうか」

 

「ハッ。西部で敵機甲部隊の進出がありましたが、陸戦魔女の奮戦で膠着状態に持ち込みました」

 

「よくやったと打電しとけ。金鵄勲章ものだ」

 

この日、黒江は珍しく、司令部に詰めていた。三号の襲撃による混乱を補うためだ。扶桑の陸戦魔女は装備の不足を気合で補う傾向が強かったため、近接戦闘術に長ける者が多い。それがプラスに働いたのである。

 

「仮面ライダー三号のせいで、司令部の立て直しが大変ですね」

 

「二号さんの再改造は三週間以上かかる見通しだからな。奴め、奇襲作戦とは…」

 

「この世界線ののぞみちゃんは相当に来てます。療養を指示しますか?」

 

「二号さんのことで相当に精神が不安定化しているからな。実戦に出したら、デザリアムんときのあいつの二の舞いだ。真美、しばらくはついてやってくれ」

 

「了解」

 

部下の稲垣真美にのぞみBのことを任せ、自分は戦略を考える。司令部が打撃を受けたため、その場で即断即決しなければならなくなったからだ。

 

「ナリタブライアンの様子はどうだ?」

 

「奮戦しています。思いの外、闘争本能の発露としては良好かと」

 

「臆病な性格の史実と違って、一匹狼の無頼漢らしいが…」

 

と、ブライアンの評判に触れる黒江であった。

 

 

 

 

――戦場――

 

ナリタブライアンはキュアドリームAの体と名を借りる形で戦場にいるが、三冠馬であったという過去生の誇りがそうさせるのか、史実での臆病な性格(キャリア後期の低迷の原因と囁かれている)が嘘のような大立ち回りを演じている。

 

『ダブルトマホォォク!』

 

ダブルトマホークでショッカー怪人『ナメクジラ』を三枚おろしにするブライアンの映像。ショッカー怪人も本格的に出てきたが、ブライアンはお構いなしに掻っ捌く。

 

『ダメ押しだ!!』

 

ダメ押しに膝からのギガントミサイルを撃ち、粉砕する。ブライアンは自分の姿で動けない事に不便さは感じつつも、闘争を楽しむ素振りすら見せ、ゴルシも思わず引く。

 

「お前、楽しんでるだろ」

 

「嘘ではないさ。因果律操作をしていない分、私のほうがカワイイぞ」

 

「ファイナルブレストノヴァやるなよ、不味い絵面だからよ」

 

「インフェルノブラスターならいいだろ?」

 

「お前、あれか?地獄の皇帝でも見たのか?」

 

「姉貴に聞いたら、DVDを送ってきてな」

 

「持ってんのかよ!?」

 

「サニーブライアンの奴の私物を借りたんだと」

 

「親戚だもんな、あいつ」

 

「前世での異母弟だから、今も繋がりがないわけでもないからな。ああいうの趣味なんだと、サニーの奴」

 

前世で異母弟であるサニーブライアンの事に触れ、ハヤヒデに喜々として渡す姿が目に浮かぶナリタブライアン。親類が多いのだが、マヤノトップガンも一応、前世で異母兄弟にあたるが、ウマ娘としては他人である。その一方で、タニノギムレットは同室かつ、重い中二病患者なので、扱いに困っているなど、前世での繋がりが無くなったわけでもない。

 

「さて……それじゃ、あたしも冷艶鋸でもっと……」

 

「関羽雲長の武器と伝えられている青竜刀か?どういう繋がりだ?」

 

「声帯の妖精さん……かな?」

 

キュアハートはというと、車内から青竜刀『冷艶鋸』を取り出す。デザリアム戦役の頃に発掘し、そのまま持っている私物の青竜刀だ。

 

「青竜刀は間合いが長いぞ?」

 

「なーに、どこかの世界で同位体が取った杵柄のなんとやらって奴。未来世界の中国でゲリラ戦してた時に発掘したんだ。多分、どこかの時代で作ったものだろうけど」

 

実際の三国志の時代に青龍偃月刀は存在しないし、当然ながら、関羽雲長が使うはずはないのだが、三国志演義の中でそうなっていたのと、水滸伝で『関羽雲長の子孫』とされる関勝が持っていたためか、王朝時代が終わるまでのどこかの頃に『記号』的に用いる目的で制作されたものかつ、文化大革命の混乱を乗り越えた物だろうと推測されている。とはいえ、当時の金持ちが贅を尽くして作らせた逸品なようで、ショッカー怪人は愚か、デザリアム人(彼らは機械化人である)にも致命傷を負わせられる斬れ味を誇っていた。

 

「涅槃に送り返されたくなきゃ、道を開けな!!」

 

冷艶鋸を振るい、ザンブロンゾ、蝙蝠男をまとめて両断するキュアハート。現役時代は笑みを絶やさないプリキュアであったが、転生後は逸見エリカが素体なせいか、敵に情け容赦しない側面を持つようになった。同じチームのキュアロゼッタ(西住みほ)曰く、『エリカさんは荒っぽいから』との事。キュアハートは意識すれば、逸見エリカとしてのドスの効いた声に切り替えられるので、サンジェルマンとしての声と口調に切り替えたキュアダイヤモンド共々、尋問を担当していたりする。

 

「さて、あたしも仕事しなくちゃな。ドリルテンペスト!!」

 

ゴルシもなんだかんだで『キュアビート』の名と体を借りているが、武器はドリルアーム(槍)であった。その関係で『ドリルテンペスト』を放った。こちらは『偶々に相性のいいプリキュアの体を借りただけ』だが、キュアビートは猫の妖精が人間に転じた出自を持つので、ゴルシの無茶に応えられたわけだ。

 

「しかし、怪人を出してきたって事は……奴さんもしびれを切らしたか?」

 

「それはあるかもね。でも、三号には参ったね。相棒のキュアラブリーなんて、医務室でベットから動けないから」

 

「やられどころが悪かったのか?」

 

「膝蹴りで肋骨を三、四本。最強フォームで一瞬だったから、まだ落ち込んでる」

 

「しかたねーさ。あいつは大首領の器候補の一つの改造人間だ。お前さん達が俄仕込みの喧嘩殺法でかかったところで、大人と子供だ」

 

黒井響一郎はレーサーであったはずだが、改造の度合いが本郷や一文字以上であった事、現代より安全基準が緩い時代のカーレースを走ってきた猛者であるため、純粋に格闘技を極めたダブルライダーよりも反応速度で上回る。そこがダブルライダーを彼の世界線で『倒せた』理由だ。その優位点、大首領の器候補としてのハイスペックぶりで歴代ライダーも物ともせずに暴れまわった。プリキュアとして上位に君臨するはずのフォーエバーラブリーとパルテノンモードを一蹴し、その衝撃で変身もできずにその場に呆然と立ち尽くすのぞみBに攻撃を加えようとしたが、二号が身を挺して阻止した。

 

「あの時、この世界線ののぞみちゃん、青ざめてたもんなぁ。仮面ライダー二号が血を吐くレベルで体に大穴を開けられて、二号の小気味の良い台詞回しが余計に効いたみたい」

 

「二号は追い詰められてても、虚勢を張るの上手いからな。それが却って、な」

 

「仮面越しに血反吐吐くのは、ガキには耐えられんだろう。まして、自分は戦う意思すら消え失せた状態だったんだ。戦士として恥辱だろう?」

 

「だが、この世界線のキュアドリームは正真正銘の十四だ。そんな残酷な光景は直視できるのか?」

 

ブライアンもこのコメントだ。だが、のぞみBにとっては、二号が三号を止めてくれたことで『命拾いした』ことは相当なショックだったのだ。

 

「少なくとも、白色彗星帝国相手に、決死の覚悟で戦った宇宙戦艦ヤマトの初代クルーよりは希望があるだろ?」

 

ゴルシは意外に冷静なコメントだ。

 

「少なくとも、ジンメンの甲羅よりはマシな光景だろ?綾香の奴なんて、キュアドリームの姿であの甲羅を剥がしたんで、その場の空気が凍りついたそうだ」

 

デーモン『ジンメン』の悪名はウマ娘世界でも轟いている。そのため、黒江が大決戦の折、ジンメンを倒すために(人質の同意ありだが)甲羅を引き剥がし、キュアブラックが反発して、その場の空気が険悪になった出来事に同情しているようだ。

 

「あれはねぇ。ブラックが完全に怒気に圧されて、怯えてたからなぁ」

 

大決戦はデーモンとの戦いでもあったため、相当にバイオレンスな光景が繰り広げられ、ハートキャッチの二人など、デーモンの顔を躊躇なく潰したり、ねじ切るキュアドリームに完全に怯えていたとも続け、黒江の狂奔の血が騒いだため、大いに誤解を招いたと、キュアハートは続けた。ジンメンの卑劣かつ残酷な行為にキレたわけで、この光景を覚えている者が他の『オールスターズの戦い』の際に出来事を話したので、余計に尾ひれがついてしまったというのが『世代ごとに、ドリームへの印象が違う』事の理由であった。当然、Aは『どーしてくれるんですか~!!』と涙目で猛抗議したが、後の祭り。その結果、キュアフローラやキュアソードからの聞き取りがすごいことになったのだ。更に言えば、第三世代以降のプリキュアは自己犠牲に懐疑的な者も多いが、キュアフローラはノブリス・オブリージュの精神を学んでいるため、大決戦で『地球連邦軍の艦艇が自分たちを庇って散っていった』事にも理解を示した。第三世代の者達が生きる時代は『2010年』以降。その差も大きい。

 

「あ、HUGっとの捜索だけど、留守部隊が見つけたそうだよ。エトワールが最初だよ」

 

「エールと聞いたが?」

 

「見つけた部隊の誤報だって。前の時もよく調べたら、キュアフローラだったし」

 

「現役時代からか?変身した状態だから」

 

「キュアマーメイドからの第一報だから、詳しい情報はまだ。多分、現役時代からかな。HUGっとは引退した後に能力を無くしてるようだし」

 

キュアマーメイド/海藤みなみは竹井醇子としての業務のために、新京を訪れていたが、現地の公園にプリキュアが倒れているとの通報で駆けつけた(公用車の運転はハルトマンに丸投げ)のだが、そこでキュアエトワールを発見。すぐに保護し、近くの軍病院に担ぎ込んだという。

 

「マーメイド、運転できないからって、エーリカに運転丸投げだもんなー。名家の令嬢に転生してたからって。あ、現役時代も似たようなもんだわ」

 

キュアハートはこれだ。仕方がないが、海藤みなみとしても、竹井醇子としても、名家の令嬢であった都合で、乗り物の運転はあまりできない。最近に車の免許は取ったのだが、若葉マークなので、部下に運転を頼む。先輩の水無月かれんとは得意分野が違うのがわかる。

 

「今頃、留守部隊はてんやわんやだな?」

 

「だと思う。エトワールが来たから、第三世代のピースは一つ埋まったけど。あ、キュアスカーレットからメールだ」

 

「写真付きか?」

 

「見て」

 

キュアハートはタブレットを取り出し、写メールを一同に見せる。スカーレットからのものだが、なかなかシュールな光景だった。何が何だかサッパリで、普段の冷静さはどこへやらのキュアエトワールと、状況説明に四苦八苦のキュアマーメイド、それを横目に『やれやれ』なポーズのハルトマンの構図の写真だ。ホテルの一室で撮られていたが、プリキュアは全員が変身した状態なので、ある種のシュールさを醸し出していた。

 

「変身した状態でホテルの部屋……しかも和室か?……いるのはシュールな感じだな」

 

ブライアンは素直な感想だ。

 

「で、なんて返事を書くんだ?」

 

「キュアムーンライトに話を伝えたそうだよ。あの人が転生したケースで年嵩の一番になるなぁ」

 

「なんでだ?」

 

「転生先が未来世界の『ガイア』の研究者だもの。しかもアラサー。まぁ、元から高校生だったけどさ」

 

「テイオーたちをカウンセリングしてくれた、インテリっぽい人か、もしかして」

 

「そ。転生した時点で、転生先での年齢が28で、しかも研究者だから、連れてくるのが大変でね。宇宙戦艦ヤマトに拉致ってもらった」

 

「その人に連絡したのか」

 

「多分、キュアムーンライトの姿で向かってると思う。普段の姿で会った記憶ないだろうし、あの代は」

 

「どうしてだ」

 

「オールスターズ戦が落ちついてきちゃったんだ、あのあたりで。あの代が辛うじてあるくらいかなぁ…?」

 

「曖昧だな」

 

「ずいぶん昔のことだもの」

 

と、かなりいい加減なところもあるキュアハート。逸見エリカとしてのガサツさが出ているともいえる。とはいえ、輝木ほまれ/キュアエトワールの登場は留守部隊をかなりパニックにさせたのは確かだろう。キュアスカーレット(その日はペリーヌ・クロステルマンとして、南洋のチャリティーイベントに出ていた)も駆けつけ、マーメイドを手助けしているが、あまりなっていなさそうだ。

 

「うーん。エトワールもパニクってるだろうし…。何より、変身が解けないってのは効くよ、羞恥心的意味で」

 

「原理はわからんのか?」

 

「真田さんは、転移に伴う力の不安定化と環境の変化による防衛反応だって言ってる。一時的だけど、長いと、数ヶ月は変身が解けないからね」

 

「状況を楽しめねぇのか?」

 

「お前やナカヤマじゃないんだぞ」

 

と、ゴルシにツッコミを入れるブライアン。

 

「ごめん。噂をすれば……ムーンライトからだ。……あたしです。エトワールは……はい。ウチの基地に運ぶ?列車は?……チャーターした?鉄道部隊に頼んだんですか?」

 

扶桑軍は装甲列車をまだ持っている都合上、鉄道部隊が存在する。彼らの郵便の郵送便を特別に回してもらったのだと、キュアムーンライトは説明する。

 

『鉄道部隊の隊長が圭子さんの後輩で、魔女出身だったのよ。名前出したら、二つ返事よ』

 

『ケイさん、若い頃はどんだけ鳴らしたんですかね?』

 

『扶桑陸軍の20半ば~30くらいの魔女出身者は名前聞いただけで、トチ狂ってる人っていうから、相当なものね、おそらく』

 

ため息交じりのムーンライト。圭子には『電光』というカッコいい渾名があるのだが、本人の素行不良により、後から生まれた『血まみれの処刑人』、『扶桑のイカレ野郎』、『ソードダンサー』などのありがたいとは言いがたい渾名のほうが有名だ。マルセイユは使い魔が死んだ時の救出劇の影響により、『ウチのケイはソードダンサーだ』と述べているので、本気でマルセイユからの尊敬を得たらしき素振りもある。

 

『とにかく、あと40分ほどでつく郵便に便乗させてもらうわ。こういう時に、基地の周りが開発されてないと不便ね』

 

『軍都計画がポシャった影響で、地下化されましたしね、工廠とか』

 

64Fの基地の周りには都市計画があったが、それが頓挫した影響で、基地の周辺は演習場代わりの殺風景な風景しか無く、南洋州の州知事を嘆かせているという。とはいえ、何十キロ単位の土地を遊ばせておくのは『猫に小判』であるため、代替の土地活用方法が検討され始めたという。

 

『軍都の代替で、民間の飛行場が中間地点に建設されるらしいわ。ジェット旅客機の離着陸を想定してのものだそうだけど、周りの開発はどうするのかしらね』

 

『自然に市街地はできますって。成田空港や関空もそうでしょ?』

 

『成田はむしろ、教訓ばかりじゃないの』

 

と、ツッコむキュアムーンライト。この計画は軍都の代替で認可された『南洋国際空港』の建設を第一陣にしての『都市計画』である。史実の空港建設と違い、自由に土地活用はできるのだが、日本人の移民もいないわけではないので、地下施設を前提にした商業圏になる計画として錬られ、貨物線のヤードも兼ねる大規模な複合施設が計画されていた。1949年は基地の地下部から空港予定地までの地下空間の拡充、工員の居住施設の建設で終わる予定だ。計画の完遂は1963年頃を予定しているので、かなりの長期スパンで建設され、64Fの基地から10キロ付近の港湾まで延伸の予定となる事も検討されているのは確かだろう。64Fの補給の内の船便はその港湾からであるが、大正期から使われだしたため、港湾設備はまだまだ建設途上。軍港として使用してはいるが、64Fの補給拠点としては手狭だ。元々、64F基地は戦略爆撃機の中継基地の予定地であったので、船便での物資輸送はあまり考慮に入れられていなかったが、64Fの駐屯で問題が表面化したわけだ。そのため、港湾設備の整備を地下都市を内包する再開発計画に組み込み、何カ年計画で街を作ろうという計画であった。

 

「かなりかかりますね」

 

『戦争に間に合わないのは承知の上だろうけど、せめて、A級とカイラム級の入るドックと空間騎兵規格の施設は作ってもらわないと。うち、空間騎兵に近いし』

 

「A級、かなり大きいですよ?」

 

『マクロス級規格のドックも欲しいって言っていたわ、隊長。フル規格じゃないにしろ、マクロス級買いたいって』

 

地下部のドックは既に『轟天号』などの収容で満杯に近い有様であったので、スペースを開けたいという思惑もあるのだろう。艦載機も増えたので、それらを格納できる容積がある『マクロス級』を欲しがっていると、ムーンライトはいった。ただし、フル規格のマクロス級はキロ単位の大きさなので、おそらくそのダウンサイジング版のどれかだろう。武子が都市開発に噛んだであろう事は容易に想像できるので、扶桑の現地業者への救済も兼ねているのだろう。何かと考えてしまう二人だった。

 

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