今回は『舞-HIME』及び『舞-乙HIME』、『スクライド』関連の単語が出てくるので、その点にご注意ください。
――プリキュアも数ある異能の一つということが周知され、デフォルトでプリキュアを上回る力を持つ者たちがおり、他の異能と組み合わせることでそれらに対抗する。そのことが認知されたのが、この遠征である。廻天の発進までには『半日とちょっと』はあったため、その時間を有効活用した一人がティアナ・ランスターであった――
「ティアさん、前世での名前を別名義にしたんですね」
「時空管理局への配慮で、容姿も前世のそれにする必要が出たから。この姿になるのは久しぶりなんだけどねぇ。本当は高校生でごまかせるから、前世で通ってた『風華学園』の高等部の制服を着たかったんだけど、日本じゃ、その時のブチギレが妙に有名みたいだからって、その次の生での戦闘服と言おうか……変身コスを使うことで落ち着いて。まぁ、ヒロイックだからいいんだけど」
「コテコテの日本名ですね。鴇羽舞衣なんて」
「前世で日本人だった時のあたしの名前。アホ毛もあるから、まさに00年代のヒロインって感じ」
「ある意味じゃ、良かったかもしれませんね」
「まぁ、普通に管理局にいたら、フェイトさんのお付き扱いだし、魔改造されたフェイトさんの思考回路、聖闘士化してるし」
「大変ですねぇ」
すっかり、キュアホイップ(宇佐美いちか)は愚痴を聞かされるバーのマスター的なポジションに落ち着いていた。戦闘向きのプリキュアではない&チームの全員が揃っていないのもあるが、下原や芳佳などの人員が軒並み休暇(産休含む)であるので、彼女が重宝されているのもある。
「で、どうですか?戦闘のカンは」
「前世の記憶も戻ったから、まぁ、史実のなのはさんには勝てる自信はあるわ。スピード型に弱いから、あの人」
『ドラえもんらの接触した世界の高町なのは』はダイ・アナザー・デイでのやらかしの後は飲んだくれ化してやさぐれたこともあり、人望は薄れており、なのはとの関わりが薄いティアナ・ランスターからは『ダメな人』と辛辣な評価をされていた。史実より関わった時間が短い上、その後の上官が『荒くれ者だが、仕事はきっちりこなす』圭子であり、(歴史改変前の)なのはの『将校としてのダメさ』が際立ってしまった形であるため、なのはの『いい子であろうと取り繕う』人間性も重なり、『個人教導向きの人ではない』という評価を下している。
「スバルは思い出補正もあって、今でも尊敬してるようだけど、あたしからするとね。もっと素の自分を出すべきだと思うわー」
「さすが、前世でブチギレで、物事を余計に悪化させただけのことありますね……」
「あ、あれは弟が死んだと思ったから…」
ホイップは痛いところを突く。ティアナ・ランスターの前世が『鴇羽舞衣』という人物であり、その人物がどんな生き様であったかは既に把握していたからだろう。
「だから、本人も史実より荒い口調にするとかの工夫はしてたみたいですよ。フェイトさんはアイオリアさんの魂に一時的に宿られてた影響もありますけど」
「で、あのダイ・アナザー・デイで、あの立花響って子に衝撃を与えすぎた。結果としては、プリキュアになるきっかけになったとはいえ…悪手だったわね」
「ええ。のぞみさんの覚醒がもう少し早ければ、彼女に任せていたとも、黒江さんは悔やんでました。とはいえ、あの時点じゃ、現役の教官であるなのはさんは『ベターな人選』でしたよ?」
「ベター…ねぇ。昔の戦友で、なのはさんに似た声して、教師やってた人がいたけど、その人はちゃんと教師できてたし、人望もあったわよ」
それは鴇羽舞衣としての戦友であり、自分のクラスの担任教諭でもあった『杉浦碧』のことである。その彼女の事を思い出したのか、なのはの教導の難点、なのはの本質が『誰かを導くものではなく、個人戦闘力の高いだけの一介の魔導師に過ぎない』事を第三者として認識しており、黒江の人選を悪手とし、キュアホイップの弁護にも冷ややかである。そこは師である圭子に似たのだろう。
「辛辣ですねぇ」
「ケイさんに似たって言われるわ。ま、のぞみなら、穏便にあの子に『力との向き合い方』を考えさせられたんでしょうけど、衝撃を与えるってやり方も一理あるのも事実よ。あの子は『天羽奏から受け継いだものじゃ無くなっていた』にも関わず、『私のガングニール』と言ってたようだし」
シンフォギアA世界でも、マリア・カデンツァヴナ・イヴの持っていたガングニールを奪うイベントは起こっている。それが立花響のガングニールへの依存の歪さを強調する形になり、(なのはの『ハンドサインの解釈違い』や、ハンドサインの意味を子供時代に教えていたのもあって、楽観していた黒江の落ち度でもある)一連の出来事の事後の評価を難しくしている。
「ボタンの掛け違いによるすれ違いが、表現としちゃ合うわね。あたしも前世で『殺し合い』って形で経験したし、なのはさんとも経験したから言えるんだけど」
そこまで言ったところで、出された飲み物を飲み干すティアナ。
「とにかく、言えることはね。なのはさんは『教官』よりも『前線でブイブイいわせる』ほうが合うのに、優秀だからって、教導隊に配属された。それが不幸なのよ。優秀な人材の義務ってのは後付で、実際は前線で使ったほうが才能を出せる人材も多いんだけど」
イサム・ダイソンやアムロ・レイなど、教官向けでない『個人として最強クラス』の人材の事を念頭に置いた発言であった。さらに言えば,流竜馬や剣鉄也も『指揮官向けではない』。
「組織ってのは、エースの技能を周りに伝搬させようとするのだけど、固有技能とかだかは完全に無理。ジオンや連邦がそうだったけど、エースパイロットの技能は一般人には伝えにくいのよ」
それはエースパイロットになると、教官をさせようとする者が現れるが、それに向かない場合も多いのが現実であるからだ。エースパイロットのこなすことは凡人には理解し難い。ティアナは六課の中で『凡人』であった故に、なのはの教導技能の低さを実感したのだろう。
「なのはさんは天才だから、凡人の思考がわかんないこと多いんじゃないですか?私立に通ってたし、幼馴染も大金持ちの家の令嬢だし」
「それはあるわねぇ……」
時空管理局のトップエリート部隊にいて、その教導を受ける部隊も総じて『有力な部隊』だったことが、なのはの魔導師としての不幸である。そう考えるティアナ。彼女には扶桑軍人としての籍もあるが、時空管理局の籍が復活してしまった事により、時空管理局への配慮が働いてしまう事を懸念した圭子の策略と、ティアナの前世の記憶の覚醒が『鴇羽舞衣』という第二の名と姿を得る事に繋がった。
「でも、これからはあなたも大変ですよ?」
「まぁ、想い人いるわけでもないけど、高次物質化能力を取り戻したから。たぶん、召喚もできるだろうから、昔の相棒も。なかなかのチートだけど、前世での『公式チート』には及ばないんだよねぇ」
それはティアナの前世での一つ『惑星エアル』でのガルベローベ学園の歴代含めての全ての乙HIMEで最強と認定されていた『レナ・セイヤーズ』のことだ。彼女は乙HIMEとしては最強無比だが、乙の大本となった『HIME』との戦力比は不明であるのだが。
「ああ、レナ・セイヤーズさん」
「知ってるのね?」
「のび太さんから聞きました」
「憧れの大先輩。あたしより随分昔の期だったし。昔に一緒に戦った子がその人の娘さんな上、その前の生で知ってる子の末裔っぽいし。ややこしすぎなのよ~!!」
「いや、魔導師としてそこそこな上、乙HIMEとして『五柱』レベル、HIMEとしても最強クラスな時点で……あなたも大概ですって」
「それねー。でも、仮面ライダー達はそれより強いってどーいうこと?」
「彼らは戦闘用の改造人間ですよ?しかも、特訓で普通に強くなれるっていう……。おまけに、ゼクロスさんなんて『機械のボディに脳みそを入れただけ』に等しいんですから」
「脳みそ以外を機械にしたら、中枢が脳みそなだけのロボットじゃない?」
「いや、脳みそが人間のそれだと、ギリギリでサイボーグの定義に入るそうです。ミッドチルダとかの戦闘機人はまた違うし」
「ややこしいわー…」
戦闘機人はミッドチルダなどでは『サイボーグにありがちの拒絶反応や機械部分のメンテナンス』の問題を解決するために考えられたが、結局はナノマテリアルでそれらを解決した『改造人間』はそれを上回るため、戦闘機人は普及することはなかった。(技術進歩に応じての機械部分の刷新も行えるため、改造人間は戦闘機人を超えている)広義での改造人間は『機動刑事ジバン』も当てはまるので、地球はバブル全盛期の時点で、ミッドチルダを既に超えている事になる。
「あれはあれで色々とまずいですからね。だから、地球の傘下に入る事で、そういう研究の資料を闇に葬ったんじゃないんですか」
「たぶん。次元世界にバレたら、威信の低下は免れないもの。まぁ、動乱でさんざ醜態を晒した上、持ってる戦闘車両のレベルが二次大戦中期の水準でしかないってバレたのも、地球連邦の傘下に入る決意を固めた理由だと思うわ」
ミッドチルダはなんと、漂流者が持ち込んだM4中戦車をコピーする程度で戦闘車両を据え置いていた。第二次世界大戦で既に能力不足と指摘されていたM4をそのまま使っていたという点はバダンに嘲笑され、扶桑陸軍にも失笑される有様であった。八神はやてが動乱後にミッドチルダの戦闘車両の近代化を急がせているが、通常兵器技術が枯れかけていたミッドチルダは『M26重戦車のコピーすらままならない』という醜態を晒した。地球連邦軍から武器を買いまくるのは、対外的には『動乱における魔導師の数の低下を補うための補助』として、内部事情は『魔導師は数が当てにならない上、残った主力は海にいるから、陸は通常兵器で武装したほうが手っ取り早い』という散々なもの。
「だからって、地球連邦の実質的な支局に落ちぶれてまで、組織を存続させたいんですか、時空管理局は?」
「次元世界の秩序が『戦乱期のように崩壊する』のを、管理局の提督や将軍達は恐れているのよ。それに、ミッドチルダやベルカのルーツが地球にあるのがわかった以上、地球に管理されたほうが楽だってわかった。まぁ、動乱の醜態を隠したいのよ、ミッドチルダは」
ミッドチルダのしょうもない内部事情は地球連邦政府も呆れ果てるほどに散々。M動乱は公には『武力テロ』と発表されている。首都がバダンの占領下にあることは『壊滅させられた』と発表するなど、はやてをして『大本営発表じゃない』と憤慨させるほどのものである。
「だからって、大本営発表をしますか?」
「提督や将軍たちは反発を恐れてんのよ。今まで居丈高に振る舞っていたのに、第二次世界大戦型の兵器が主体の軍隊に手も足も出ない有様だってバレた時、ミッドチルダは完全に面目を失うから。艦艇も、巡洋艦の実体弾に軽く撃ち抜かれる程度の物理的強度しかないし」
ミッドチルダは結局、俗に言う大本営発表を繰り返す事で自らの醜態を隠し、取り繕おうとしたが、避難民から実情が知れ渡りつつあったことから、『地球連邦と友好条約を結んだ』という発表(実際は地球連邦の傘下)を先手を打つ形で行い、ミッドチルダは地球の『政治的植民地』として復興を進めている。兵器も地球のもののライセンス生産に切り替わりつつある。
「通常兵器を慌てて導入してるけど、内部の人間の反発もあるわ。スバルも複雑だけど、魔力がない人間のほうが多くなった事情を鑑みて、割り切るしかないって言ってたわ」
「魔力がある人より、ない人のほうが圧倒的に多いですからね。それに、時空管理局は管理下の世界の治安組織を解体させて、自分達の部隊を置かせてた。それが不味いことがわかったのが、動乱の成果じゃ?」
「かもねぇ」
時空管理局は結局、M動乱で魔導師の多くを失う大ダメージを負った事で『管理世界に自分達の部隊をその世界の治安組織の代わりに置いて、管理世界の反乱を抑える』やり方の不味さを痛感したが、管理世界の多くは既に『治安組織の運営・運用能力を失っている』ために『管理世界の部隊を本国防衛に就かせられない』というジレンマに陥った。地球連邦軍の力無くば、体裁も取り繕えない。それが露呈した点はM動乱の出来事の功績であろう。
「これからは地球連邦の生存戦略にミッドチルダも組み込まれてくだろうけど、扶桑はどうするのか」
「地球連邦軍の力を借りて、リベリオンと冷戦ですかね?」
「50年近く続くでしょうから、歳食わなくなったあたしたちはともかく、1949年の大人達は見れない。それをわかった上で、戦争を戦う。割に割り切るのムズいわよ?」
ティアナはそこを指摘する。実質的に未来に至るまで戦う宿命を背負わされた自分達はともかくも、1949年の時点で壮年以上を迎えている世代は史実での平成の時代を見れない公算のほうが大きい。
「この戦争は扶桑の生存権を守る目的ですからね。そのために攻めこむ必要があるってのは……」
「日本は戦争の常識の変化を知らないし、昔の軍隊の闇の部分を指摘して叩いてれば、気分が晴れるんだから、はた迷惑よ。もっとも、対人戦を戦うのを嫌がった魔女たちも魔女たちだけど」
「だから、私たちが重宝を?」
「そういうこと」
日本も魔女の世界の情勢を調査する内に、政府は扶桑への干渉を抑える方針になったが、個人単位の干渉は止まないため、扶桑の重要戦略は明かせなくなっている。しずかが多忙になった理由もこれだ。扶桑が『負けを知らないままで大国になっている』ことを高慢とし、『大負けからやり直せばいい』と考える者が多すぎるからだ。軍部や華族を上層から引きずり落とし、その後釜に自分たちの先祖の同位体を宛てたいという思想がありありであり、扶桑が特高の解体を反対したのもこれだが、結局は公安警察に衣替えさせられ、検閲を全面的に廃された。その転換に伴う内務官僚や憲兵隊の失職のカバーも扶桑を悩ませている。
「だから、有事即応の部署の設立が認められたんですね」
「通常編成の部隊を臨戦態勢にすると、日本のうるさ方が騒ぐのよ。だから、この戦争も本土にいる部隊から人員や機材を引き抜けなくて、前線の部隊がヒーヒー言ってんのよ。北海や紅海から引き抜くにしても、人的に限界だし。兵器が工場直送なんて、なんのジョークよ」
と、扶桑の陥っている窮状を愚痴る。日本も『扶桑の軍略は無理が多いから、アドバイスしているだけだ!』と上から目線の者が官僚のみならず、政治家にも多い。故に、扶桑連合艦隊からは『腐る艦隊が続出している』。流石に最近は連合艦隊の運用は多くなり始めているが、艦隊全体の近代化が済むまで『母港に引きこもるべき』という現存艦隊主義に固執する日本側と、『近代化を済ませた艦隊くらいは出動させるべき』という論調がぶつかりあい、まともな作戦行動も取れない有様であった。空軍は酷使され、64Fのカバーをする部隊の育成で現場と官僚が揉める有様。結局、64FはGフォースの中核として、あちらこちらの地に『火消し』に駆り出され、疲労が蓄積しているわけだ。日本はブリタニアを軍事的にまったくアテにしていない事から、『日本近海で艦隊決戦をして、太平洋艦隊を文字通りに海の藻屑にすれば、本土は安泰』と考えている。とはいえ、1940年代のイギリス海軍は世界有数の物量を誇っていたため、扶桑海軍の総数よりまだ多い(額面通りの戦力でないにしろ)。日本の知識層の多くはブリタニアの大艦巨砲主義的な陣容を辛辣に評価しているが、怪異の脅威への対応には戦艦が必須であるため、戦艦を多く有するだけである。扶桑はそれを補完する空母機動部隊の編成を行っていたが、扶桑がほぼ単独でリベリオンと対峙せざるを得なくなりつつある事、空母機動部隊の高額化により、結果として大艦巨砲主義じみた艦隊編成にせざるを得ない事情により、今度は個艦戦闘能力の万能化を進めるしかなくなり、この頃には、空軍の宇宙艦隊を酷使するという悪循環が起きている。前線の苦境を日本の官僚は座視しているのみというのも、彼らの事なかれ主義を象徴している。64F隊員の異能で全てを解決させるという方針でもあるのかと感くぐってしまいそうだと愚痴るティアナ。
「溜まってますねぇ」
「自分自身、前世での技能を使って戦えって言われるとね。いい思い出もあるけど、思い出したくないこともあるから、複雑なのよね」
それはのぞみとも共通するものである。とはいえ、魔導師としては『空戦の才覚無し』とされ、ミッドチルダの士官学校にも落第したティアナにとって、魔女の力や高次物質化能力は渡りに船であるのも事実である。
「でも、嬉しかったのは事実でしょ?」
「まーね。魔女になって、エリート扱いされるのは悪い気しなかったわ。ミッドチルダじゃ、試験に落第したのよ。だから、エースになってる事で『教育課の面子が潰れる』のを嫌がったんでしょう?古巣ながら、恥ずいわー」
「なんか、今日は愚痴りますね」
「ミッドチルダの面子なんて知ったこたぁないわー!って叫びたい気分よ」
「まぁ、この世界ののぞみさんよりマシですって。黒江さんが入れ替わってた時に、デーモン族相手に大立ち回りしたとか、ハチマキ巻いて『スーパーイナズマキック』をかましたとか、斬艦刀で薩摩武士してたりとか聞かされた時の顔ったら……」
「だいたい想像できるわ」
黒江は大決戦の折に、キュアドリームの姿で大暴れした。そのことは語り継がれたようで、オールスターズ戦の時に後輩に怖がられたと愚痴っている。もっとも、のぞみAもプロフェッサー・ランドウの一味相手に大立ち回りを演じ、結果的にその評判に自分で華を添えてしまい、Bが僻んでしまう原因となっている。Bは仮面ライダー二号が自分を守るために重傷を負ってしまったこともあり、情緒不安定に陥ってしまっている。ドリームキュアグレースの事をのぞみBに明かしたのは、のぞみBへの慰めと発奮のためだ。
「あたしはこれからは『炎綬の紅玉』のマイスター乙HIME『鴇羽舞衣』ってことになるわ。だけど、正確には『乙式の姿を取れるけど、オリジナルのHIMEに入るのよね。……呼べそうなのよね、前世での相棒だった『カグツチ』。体を調べてもらったら、HiMEの痣ができてたし……。黒江さんはチートだなって言ったけど、あの人も大概よ」
「え、ええ…。…ん?カグツチって、たしか日本神話の」
「古事記だかに記述があるわ。前世で調べた事があって……。同僚のお株を奪っちゃうから、呼べても呼ばないつもりだったけれど、その子、別の部署に異動したから、今は呼べと言われたら、呼んでみるつもり。たぶん、その子の召喚竜より上だと思うわ。日本神話の神の名前を持ってるし」
高次物質化能力。俗に『HIME』と呼ばれた者は心象を具体化させる能力を持つ。そこはアルター能力に似るが、違うのは『チャイルド』という存在を使役できるという点である。ティアナ・ランスターの前世に当たる『鴇羽舞衣』は『カグツチ』というチャイルドを使役しており、その能力が蘇ったと思われるが、後の世の科学力で擬似的に高次物質化能力を持たせた乙式とオリジナルの高次物質化能力が混じり合って『変質している』と推測される状態なので、『呼べる』かは試していないという。最強クラスのチャイルドとされる『カグツチ』はおそらくであるが、機動六課の元同僚『キャロ・ル・ルシエ』の召喚可能な『フリードリヒ』と『ヴォルテール』の双方を更に凌駕する戦闘能力を持つのは容易に推測できる。
「いいんですか?」
「キャロとは、仕事で一緒になることはないと思うから。M動乱の時、はやてさんが原隊に復帰させたのよ。あの子のメンタルじゃ、血みどろの戦争には耐えられないし。ヴォルテールの制御を誤っちゃう可能性も大きかったから。それに、ヴォルテールでも倒される危険が大きいのはわかってたしね」
キャロ・ル・ルシエは結局、そんなわけで、M動乱には関わらなかった。エリオ・モンディアル共々、M動乱以降は平和な暮らしを謳歌しているわけだが、キャロ・ル・ルシエの本来担当するはずの『召喚』の役目を引き受ける事になりそうだとも述べる。
「上位互換ですね」
「ぶっちゃけいうとね。でも、昔とった杵柄、乙HIMEとしても当代最高位級の実力だったから、チャイルドを呼ぶのは本当に最後の最後よ」
乙HIMEとしても、当代最強格であると自負するティアナ・ランスター。鴇羽舞衣として生きていた頃、乙HIMEの存在自体の守護を掌っていた『五柱』に選ばれていた(実際は任命されていないが)ほどの実力であったからだろう。そこは転生しても、誇りにしているようだ。
「まぁ、これでなのはさんと戦っても、たぶん当たり負けしないわよ~?」
「でも、なのはさん、アルター能力がシェルブリットでしたよ」
「えーーーー!?嘘ぉ!?」
「いや、本当に」
いささかしまらないが、キュアホイップはいつの間にか『愚痴聞き』の名人となっていた。彼女は『転んでもただでは起きない』なのはの性分が反映されたか、なのはの目覚めたアルター能力が『シェルブリット』である事を伝える。不貞腐れたことで目覚めたかは定かではないが、『とんでもない』力であることは確か。ティアナは思わず、素っ頓狂な声をあげてずっこけるのだった。