ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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ウマ娘のナリタブライアンの精神的再起が主題です。


第四百六十三話「シャドーロールの誓い」

――扶桑の建艦計画は空母と巡洋艦で特に狂いを生じた。目玉の空母は『大鳳型』の増産の撤回、雲龍型の量産停止、小型空母の運用撤回などの混乱により、空母機動部隊は有名無実化してしまった。巡洋艦も、伊吹型にまつわる混乱、仮想敵が遥かに強大な巡洋艦を用意しているという情報により、結局、伊吹型よりも強力な『巡洋艦』を設計する必要に迫られた。超甲巡が『巡洋戦艦』と財務関係者に見なされたからだった。超甲巡は結局、日本側の指摘で『36cm砲搭載の戦艦』と化してしまった。日本特有の『貧乏性』による万能性の重視であり、予算対策の一環であった。また、水雷戦隊旗艦専用の船では無くなり、大型汎用艦とされたために、増産が却って必要になった。また、ゲルリッヒ砲への換装やさらなる長砲身化が提案されたが、日本側は『ゲルリッヒ砲など、重要資源の無駄使い』と発言した官僚がカールスラントの技官に猛抗議されるなど、締まらない有様であった。とはいえ、ゲルリッヒ砲は榴弾が使えないため、艦砲に使われる事はなかったし、戦車砲としても一時の流行で生まれた代物にすぎないのも事実。結局、軽量化した36cm砲(ショックカノン砲塔)への換装前提での建造で落ち着き、超甲巡は(外観も大和型と同仕様にされて)配備先も変更され、優先が空母機動部隊と第三戦隊とされた――

 

 

 

 

 

 

――第七戦隊は鈴谷や最上などが在籍する戦隊であったが、最上型重巡洋艦とその改良の伊吹型そのものが陳腐化してしまったため、解体も俎上に載せられていたが、日本型重巡そのものが陳腐化した影響により、宙に浮いた戦隊と化していた。プロパガンダ用の偽装艦隊に編入する案も出ていたが、不満を持つ乗員のクーデターを強く警戒する日本の意向で『超甲巡で戦って、華々しく散ってくれればいい』ということで、予定より遅延したが、超甲巡の配備で士気は高まった。これはゲリラ攻撃でハラスメント効果を期待した日本側と、超甲巡の有用性の証明がしたい扶桑の利害の一致によるものだった。とはいえ、超甲巡は(日本側の万能性重視により)旧世代の戦艦以上の全長を誇ることが幸いし、新世代の戦闘システムを難なく搭載可能な内部容積があった事から、大方の予想を覆して活躍した。旧世代の戦艦と同等の防御力があった事により、生存性が旧来の日本型巡洋艦の比ではないこと、ミサイル兵装が水偵運用設備の代わりに加わった事により、近代艦の条件を満たしていたからだ。ミサイルは重装甲の戦艦には有効でないが、それ以外には効くために『ゲリラ攻撃』にうってつけと見做され、中小型艦艇へのアウトレンジ攻撃に多用されている。当時の『魔女の世界』では、ミサイルを防げる装備など、何もないからだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑海軍は潜水艦と少数のエリート艦艇によるゲリラ攻撃を主な手段とするようになった。空母機動部隊による決戦が不可能であったからだ。当時、戦後型の潜水艦を探知できるソナーを備えた船は魔女の世界にはティターンズ以外には存在せず、リベリオン艦は史実ほどの活躍は出来ず、徒に損害を重ねていた。一歩間違えれば『失敗作』と謗られる超甲巡が(未来技術の効果で)活躍を見せる事は(日本側にとっても)予想外であった。水偵の代わりにミサイル装備とヘリコプターを積んだこと、未来装備による高度な電子戦能力がもたらした結果だった。超甲巡は分類が巡洋戦艦に変更されたが、逆にリベリオンにアラスカ級の量産を促すという結果を生んだ。日本は高速を誇るアイオワの増産を想定していたが、リベリオンは『大和と戦える』重戦艦を重視し、モンタナの系統を量産していたため、アラスカ級が逆に必要とされたのだ。そのため、デモイン級は史実と正反対に量産され、その対抗で扶桑が新型重巡を設計せざるを得なくなるなど、史実と似た方向性の出来事も起こった。これは条約型巡洋艦は怪異の強大化に対応できなくなりつつあったものの、怪異の出現自体が稀になったことで価値が蘇ったこと、(戦艦と空母、潜水艦を除き艦艇の)大型化に一定の歯止めがかかったからだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――陸上ストライカーもご多分に漏れず大型化していったが、火砲装備の小型化(戦後型戦車と同等の火力を実現可能になった)、物理装甲の増大などの措置により、次第にパワードスーツに近づいていった。この開発ノウハウが第三世代宮藤理論式の実用化に貢献するが、それは数十年後のこと。プリキュア達の後方支援に活躍したのは、その変革の端緒についた世代のストライカーで、史実で言う『戦後第一世代型戦車』に相当する存在であった。1949年当時では最新鋭のもので、新式徹甲弾の効果で、怪人にも効果を発揮した――

 

 

 

――戦場――

 

「パワードスーツのようなモノを着ているのは、魔女の部隊か?」

 

「うん。通常兵器の発達で、空戦魔女は苦しくなったけど、陸戦は技術向上で活躍の裾が広がったからね。怪人相手でも、そこそこは戦えるし、重戦車相当のものも少数はあるから」

 

陸戦ストライカーはティーガーのような大がかりなものは一次の流行に終わるものの、大型の火砲を魔女に使わせるためのものと割り切る思想のもと、太平洋戦争までの時代には重宝されていた。これは魔導物質の精錬技術の向上で『歩兵が持てるサイズの火砲でも、実在の戦車と同等の火力を持たせる』までの過渡期にあったこと、1940年代の技術では『大型火砲をそのまま運用するほうが安上がり』であったからだ。

 

「本当はああいうものが主力になろうかって話もあったんだってさ。ところが、あれが必要な怪異が減ったこと、人との戦争だと、今度は小回りの良さが重視されるようになってね」

 

その相反する実状に答えようとした研究が第三世代宮藤理論の研究の始まりとなるのである。贅沢な要求だが、魔導師やプリキュアなどの異能の出現で相対的な見劣りが示されつつあった『魔女』達の生き残りのための研究としては必要であった。人同士の戦争にストライカーを使うには『汎用性』がいるのだ。

 

「ああいう大がかりなものは施設の経費もかかるからな。軍隊も、使える金は無限ではないということか」

 

「例えば、似た技術の銀河連邦のコンバットスーツはオーバーテクノロジーの塊だしさ。ビーム砲を内蔵できてるし」

 

「まぁ、ワープが普通にできる文明ならな」

 

装甲脚は未来世界でいうパワードスーツに属する技術だが、魔力を発揮させる媒介としての機能と両立させるため、アンダーパワーである場合が多い。時代が進めば、歩行脚と装甲脚の区分が(戦車がMBTに統一されたように)統合されるだろうが、1940年代末では、重装甲脚が一定のシェアを持っていた。

 

「私から見れば、わけがわからん変形をするスーパーロボットのほうがわからんがな……」

 

「あれは形状記憶合金の極限みたいなもんだから」

 

ゲッターロボは発展していくと、明らかにオカシイ変形合体をしていく。初代は展開するフレームを形状記憶合金の装甲が覆う過程がわかる程度だが、ゲッタードラゴンからは『??』な過程が増えていき、真ゲッターロボに至っては、モーフィング変形なんのそのである。コンバトラーVやダンクーガなどは、まだマシである。

 

「形状記憶合金と言っても、オカシイんだが……」

 

「ゲッターは強くなっていくと、物理法則を超えてくるから、ねぇ」

 

ゲッターロボは合体ロボの元祖だが、明らかにリアリティに欠ける変形合体を行う。いくら形状記憶合金でもおかしいとツッコむブライアン。間近で見てもオカシイからだろう。

 

「そんなものが実在兵器と一緒に映っていいのか?」

 

「SF大作って誤魔化してるから、敵も味方も。そこはグルになってんだ」

 

「変な協力関係だな……」

 

ブライアンは呆れるが、MSやスーパーロボットは隠せないので、開き直って使われているのだと、キュアハートは解説する。ハイザックやジェガンなどが飛び交い、ハイザックはマシンガンの薬莢(ハイザックのザクマシンガンは無薬莢弾ではない)を撒き散らしているので、その回収も一仕事だ。ジム系は一年戦争から無薬莢弾(ジムライフルは戦後には無薬莢式へ移行した)を使うことが多いが、ハイザックはジオンの生産設備を使いまわしての武器製造を行う都合、一年戦争時のままだからだ。

 

「ま、MSの性能は上だから。向こうは横流しされたもの以外は連邦の内紛の時の機体が一番マシ、後は大戦中の機体さ。こっちは最低でも、ジェガンだし」

 

ジェガンはデザリアム戦役後も現役の座にある。流石に型式的には『連邦で最古参の旧型』になりつつあったが、実はグリプス戦役時の百式より高性能である。グリプス戦役時の高機動タイプより実は機動力がいいのが売りであった。最近は小型/中型機に押されているが、旧型のサラミスやマゼランでも(設備交換無しで)運用できるからか、退役予定が延ばされている。ゼク・アインでも、ジムⅢと同レベルの性能であるので、機体構造の頑強さを買われている(小型機より頑強である)のがわかる。コンピュータ技術や推進剤効率の改善、金属精錬技術の進歩で『無理に機体を小型にする必要が消えた』ため、今度は小型機が斜陽になり始めていた。ジェガンが現役にあるのはそんなことが理由であった。

 

「やれやれ。名機というのは、いつまでも使われるものを指すものでもないというがな…」

 

日本が過去に『ゼロ戦や隼を戦争の終わりまで使い続けた』こともあり、未来世界で『ジェガンが現役機である』事を叩く者も多い。だが、ゼロ戦も隼も、ジェガンも『運用がこなれた機種であるが故の信頼』というものがある。ゴルゴ13が『M16のシリーズを(新シリーズの実用化から10年ごとに)変えてきた』ようなものだ。兵器一つでも、エネルギー兵器の万能性がガミラス帝国との戦争で否定され、実弾兵器が復権したように、そんな事はいくらでも起こるのだ。

 

 

「ま、いいんじゃない?TVだって、ブラウン管から液晶になったのは、発明から60年以上も経った時代だよ。機械技術ってのは、新技術が旧来の技術を単純に駆逐するわけでもないんだ。あなた達の本業だって、走り方や鍛錬の仕方が時代ごとに変わっても、本質は変わらないでしょ?それと同じ」

 

「多少強引だが、理に適ってるな。それで、仮面ライダー達は何をしている?」

 

「負傷したメンバーの療養と、組織のポッパータイプに備えての特訓に入ったよ。三号一人に、何人も翻弄されたのは不味いからね」

 

「それで『こいつ』(キュアドリーム)が呼び戻されたわけか。しかし、他のプリキュアより優れた異能を得ただけで、そこまで評価されるものか?」

 

「正確に言えば、ドリームの存在自体が『戦闘向けのプリキュアで、一番に人々の信仰を集めている』事も入るね。他のプリキュアは……いいたかないけど、知名度は落ちるからね。初代を除いて」

 

それは長期シリーズになったヒーロー/ヒロインのシリーズでは『ありがち』なことであり、キュアドリームは『プリキュアシリーズ中興の祖たる存在』という事から、ある意味、仮面ライダーでいう『仮面ライダーV3』、ウルトラマンでいう『ウルトラセブン』のような地位と見られている。キュアハートはそのあたりの悲哀で多少の愚痴を入れている。

 

「仕方ねぇよ。長いシリーズものは二極化しがちだからな。受けるか、コケるか。あんたらには、後世に『コンパチ』って言われてるのもいたろ?」

 

「それ、キュアブルームが聞いたら落ち込むよ?昔から気にしてたみたいだから」

 

「仕方ねぇさ。ソシャゲだって、衣装違いキャラを大量に出すだろ?それと同じような感じに見えちまうのさ、世間様には」

 

ゴルシがフォローするが、あまりなっていない。とはいえ、キュアビートの体を借りていても、『ゴルシらしさ』がわかるのは、さすがの存在感と言える。

 

「で、これからどうする」

 

「今日はここで野営だね。食料は中にあるから。コンビーフの缶詰だけど」

 

「ねぇよりはマシだな。入りゃ同じだし」

 

リベリオンや日本産のコンビーフの缶詰は『野営の際の食料』として多用されている。リベリオン産のものは『数の多さ』もあり、1949年には連合軍の全軍に普及していた。

 

「日が暮れるな。他の戦車の連中に見張りを任せて、あたしらはここで野営するよ。敵も機甲戦力をむやみに動かさないだろうから」

 

気がつけば、日が暮れていく時間となっていた。戦車隊は野営になり、空自から引っ張ってきた『炊事車』でチリコンカンが調理される。

 

「はーい。アメリカ式のチリコンカン~。腹はいっぱいになるよ~」

 

「あんた、料理できたのか」

 

「フランスの英霊の生まれ変わりったって、その生まれ変わりの内の一回は一国の王女とはいえ、日本で暮らしてたからね。ある程度はできるさ」

 

キュアミューズは『アストルフォとしての自我意識を持つ』が、調辺アコとしての記憶も持つし、ロボットガールズとしての能力も持つ。その関係で料理がこなせるのだ。

 

「簡単なものしかできないけど、野戦の最中としちゃゼータクさ」

 

アストルフォの生前からすれば、21世紀以降の戦闘糧食は天国のようなものだ。アルトリア・ペンドラゴンに至っては『生前の事を思えば、缶詰も贅沢というものです!』と述べており、似たような時代に存在したであろうアストルフォも同じような感想だ。

 

「僕やアルトリア……セイバーっていったほうが、日本じゃ通りがいいかな?……の時代には、野戦の食事に旨さを求めるほうが間違いだから、今の時代は恵まれてるよ。第二次大戦の日本軍の野戦での食事で用意できるのは汁物だったし、アメリカでさえ、缶詰をそのまま食ってたしね」

 

地球連邦軍も、野戦でのレーションについては、旧西側諸国の作っていたものの延長線に位置する携帯食が主だったりするので、プリキュア(……と入れ替わっているウマ娘たちを含む)達がチリコンカンを調理して食べるのはごく自然のことである。戦場の食事として『コンビーフとチリコンカン、乾パン、コーヒー』はかなりの贅沢。黒江らが若かった『扶桑海事変の当時』はこれよりもかなり劣悪な内容の野戦糧食であるので、1940年代の世界の連合軍では『最高レベルの野戦糧食』に入る内容である。

 

 

「乾パン、か。昔、実家の酒屋の防災食の期限切れ間近のヤツをおふくろに食わせられたな」

 

「これでも、1940年代の世界にいる軍隊では最高レベルさ。ひどいのだと、腹を膨らせる目的だけのやつが出回ってる国もあるからね?」

 

乾パンには色々と思い出があるらしく、愚痴混じりのブライアン。キュアミューズがブライアンを諫める。

 

「そうか?」

 

「扶桑だって、力を入れ始めたのは1937年だからね。野戦糧食に力を入れてるのは、歴史上、遠征が多かった国だよ。まぁ、ブリタニアの事は聞かないでやって」

 

「あんたんとこはワイン出てるだろ?」

 

「そりゃ、ナポレオンや第二次大戦以前の話!最近はアルコール出さないよ」

 

このように、戦闘糧食も国や時代ごとに特色があるのである。日本軍は負けが込んだあたりの飢餓地獄が殊更に強調され、扶桑への批判材料にも使われているが、扶桑は遠征を多くしたお国柄である都合上、戦闘糧食の研究がかなり進んでいた。日本軍にしても、(負けが込んだ時期には出回なかったとはいえ)研究そのものには、かなりの予算を割いていた。連合軍のそれは(カールスラントの衰退に伴って)日米英のそれが中心となっている。この遠征では(司令官がリベリオンの将官であるので)アメリカ系のレーションが主体だ。

 

「コーラもあるよ。アイク(ドワイト・アイゼンハワー)の意向で、遠征にも持ち込まれてるし、この世界でも普通に買えるから」

 

「そりゃ当たり前か。アイゼンハワーって、コーラ好きだもんな」

 

自由リベリオンのドワイト・アイゼンハワーが連合軍の最高指揮官にあたる(最初期はバーナード・モントゴメリーであったが、不祥事で短期間に終わった)ため、彼の好んだコーラは(黒江らの愛飲飲料であったのも手伝って)連合軍に普及していった。この遠征は『人種の違いを超えて、兵隊が気軽に楽しめる炭酸飲料』としてのコーラが本格的に普及するきっかけの一つとなるわけだが、ゴルシは『アイゼンハワーのコーラ狂いっぷり』を知っているようだ。なお、彼は連合軍最高指揮官の立場ながら、意外に部下にフレンドリーに接するために人気がある。この遠征には参加していないが、ジョージ・パットンの手綱を握る人物の一人である。

 

「パットン親父は猪突猛進型だから、ブラッドレーも抑えが大変だろうな。あの親父、口は悪いけど、前線将兵に人望はあるし、自分が直接出ちゃうし」

 

ゴルシをして、そうまで言わしめるのがジョージ・パットンという将軍である。副官のブラッドレーも(史実で戦後に統合参謀本部議長に栄達した)逸材であるが、戦時の将軍の体裁が強いパットンの抑えは苦労のいる任務である。特に、パットンは『世が世なら、自分で突撃ラッパを吹いていた』と豪語している『騎兵の生き残り』将軍であるからだ。

 

「あの親父……近代の軍隊にいるのに、どうして、やることが時代錯誤に近いんだ?」

 

「パットン将軍は騎兵出身で、実家も独立戦争以来の軍人の家系。それもあって、今のこの時代は居心地いいんだって」

 

「俗に言う、平和な時代には用がない人種の親父か」

 

「そーいう事」

 

ジョージ・パットンは(史実の謎めいた最期もあって)『平和な時代を生きるのは苦痛だろう』と周囲に評されるような人物であり、キュアハートやキュアミューズからもそう見られるほどの振る舞いであった。とはいえ、史実よりは幾分か冷静な面を持っているため、自らの振る舞いは『兵を鼓舞するための演技』と述べるなど、史実より冷静な人物である事も窺わせている。

 

「まぁ、今の戦争が最後のご奉公なのは認識してると思うよ」

 

「まぁ、史実で言う『朝鮮戦争の時期』に入るそうだしな、魔女の世界は」

 

連合軍の(この時期の)将官の多くは1950年代には定年を迎える世代の軍人であるので、太平洋戦争が『軍歴の最後になる』者は多い。そのため、扶桑でも『定年の停止』扱いで作戦に従事する将官は多い。戦争中に将官クラスが大量に定年になる事は避けたいからである。

 

「ところで、あなた。ころばし屋と今回のことが片付いたら、どうするの?」

 

「レースに復帰するさ。同期に借りを返したい奴がいるんでな。それと上と下にも、戦いたい相手がたんまりいる」

 

同期のサクラローレル、先輩のサクラチトセオーなどの史実で自分が敗れた者達を『全盛期以上の豪脚でねじ伏せ、三冠ウマ娘としての復権を果たす』大望を口に出す。全盛期の感覚が戻り始めた事を肌で感じているためか、ブライアンにしては饒舌であった。

 

「タイシンの奴も言っていたが……のび太さんとこのボウズに、いいところを見せてやりたいんだ」

 

ブライアンとタイシンは、ノビスケに『自分がレースで勝つところ』を見せたいという、ささやかながらも(史実では全盛期を過ぎているので)ウマ娘としての原点に帰った願いを抱くようになっていた。二人は『ねーちゃん』と自分らを慕うノビスケが可愛くなったらしく、柔らかい表情を見せることが増えていた。特にブライアンは(名を成した後は)身内以外の周囲が『無頼で、孤高な姿』を求めてくるため、その事に内心でうんざりしていた。低迷が続いた事もあり、三冠ウマ娘としての名誉を汚すなという誹謗中傷にも逢い、更に担当トレーナーが(ブライアンの低迷の責任を押し付けようとした協会の幹部の圧力で)自分の元から去ってしまったため、口や態度に出さなくとも、心の奥底では追い詰められていたのである。ノビスケとの暮らしは(虚勢を張るうちに疲弊していた)ブライアンに『ささやかな幸せ』をもたらした。たとえ、それが『かりそめ』であろうと、(妹達の進学の件で)父と疎遠になり、実家に帰りづらくなるなど、(怪我からこっち)不幸続きであったブライアンにとっては幸せな時間であった。

 

「この世界に行く前に……妹達の進学の件で、親父と揉めてな…。実家にはもう帰れん。売り言葉に買い言葉だったが、親父は勘当するつもりだろう。だから、姉貴に『下の妹達』の事を頼んである。かといって、一人暮らしは姉貴に止められているしな」

 

ブライアンは妹達をトレセン学園に進学させないと言い出した実父と大喧嘩になり、家を飛び出したと言う。当然ながら、行く宛もないので、卒業後は野比家に本格的に居着くつもりらしい。

 

「周りに相談した?」

 

「姉貴や寮長たちには止められているが、親父に学費を止められる可能性が大だからな。学費くらいは稼がんといかん。担当トレーナーも私のせいで、業界を去るしかなかった…。その復讐もしたいんだ」

 

ブライアンは担当トレーナーの一件が心の深い傷となっているようで、全盛期の輝きを失くした自分を責めたと続ける。

 

「だから……この話を受けた。神様がなんのために、前世の記憶を蘇らせたのかはわからんが……今一度のチャンスがあるのなら、誰かに『頑張ったな』と言われたいんだ。あのオグリキャップさんのように――……」

 

夜を迎え、空には星が輝いている。ブライアンは夜空の星を仰ぎ見ながら、本心を明かす。三冠ウマ娘としてでも、生徒会副会長としてでもない『一介のウマ娘』としての。かつて、小学生時代に観戦した『いつぞやの有馬記念』で有終の美を飾った『偉大な先輩』であるオグリキャップのようになりたいという競技者としての願い、『孤独になってしまった』故に、外聞を気にせずにすがれる『拠り所』を求めている『一人の少女としての弱さ』がそこにはあった。

 

「そして、誰かにすがりたいんだろうな……親と疎遠になって……寂しいってのが……どういうことかわかったよ」

 

ブライアンはどこか哀しげな表情であった。立場上、強くある事を求められ、それに応えられなくなったら掌返しをする周囲、三冠ウマ娘である故に、自分の本心を晒せなくなっての精神的疲弊……。それが強く表に出ている。

 

「私は…陰った太陽のように沈むべきなのか……?」

 

ブライアンはここで恥も外聞もなく、弱音を吐いた。心の奥底で『運命の鎖に抗えない自分と姉』に絶望しかけていたからだろう。

 

「大丈夫、陽はまた昇るから」

 

キュアハートは精一杯の言葉をかける。彼女も逸見エリカとして、二回も挫折を味わったが、その先にある光を見いだせたからだろう。プリキュアの姿であるせいか、不思議と説得力がある。

 

「……そうだな」

 

ブライアンはその励ましで勇気をもらったのか、キュアハートに微笑み返す。キュアドリームの姿を借りているが、その表情はテイオーやマヤノも見たことのないほどに『慈愛と安心に満ちた』柔らかいものであった。

 

 

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