ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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状況説明の回です。


第四百六十六話「Y委員会の動きと、遠征の状況」

――結局、扶桑海軍は撃墜王を認める事になり、エースパイロットの抜けた穴をどうにかして埋めなくてはならなくなった。これは軍全体の風潮でもあったため、事変の功労者だが、部隊戦果しか公表しなかった江藤は体の良い見せしめにされたのである。事変当時の佐官の魔女は、1940年代半ばには殆どが退役済みであったので、数少ない復帰組の江藤が見せしめの人身御供にされたわけだ。在郷軍人会もクーデター後は軍国主義の温床と見なされ、解散を命じられた事が『軍の立場低下』の表れとされた。代わりに隊友会が設立されたり、水交社と偕行社の活動拡大が決まった。こうして、扶桑軍人の立場は大きく変動していったわけだが、怪異という現実的な脅威の影響もあって、史実の戦後世界のように『軍歴保有者が激しく蔑まれること』はなかった。だが、『力がある者はすべからず、国家に奉仕すべし』という考えが強まり、扶桑の若い魔女たちはそれに反発し、軍以外の道を選んでいったので、軍での魔女の扱いは徐々に低下していった――

 

 

 

 

 

――そんな社会情勢もあり、魔女用装備の開発は徐々に停滞する。吾郎技師たちの努力で、第二世代理論の実用化にはこぎつけたものの、その量産に手間取る間に、根本的な進歩よりも『第二世代理論の熟成』が重視される時代に突入したためだ。第二世代陸戦ストライカーは飛躍的に戦闘能力が向上しており、空戦ストライカーより重要兵器と見做された。それも、熟成に労力が割かれた理由である。ダイ・アナザー・デイの時点で、空戦魔女は『ホバリングができて、装甲車程度の火力が携行できる』というメリットよりも『手間がかかる割に、普通の燃料補給では活動時間を延伸できない』、『魔女の力は燃料の貯蔵タンクのようなもの(個人差あり)』というデメリットが浮き彫りになってしまい、軍事的に扱いづらい事が強調されてしまったわけだ。上位互換の魔導師の存在もあり、余計に際立ってしまったのである。また、ダイ・アナザー・デイ~太平洋戦争までの間の事件、サボタージュの発覚などで、魔女全体が苦しい立場に置かれた事も、魔導理論の発展を阻害したといえる。

 

 

 

 

 

――扶桑国民も現金なもので、『軍へ入隊する上での社会的メリット』が薄れた途端に、志願数が大きく目減りする有様であった。徴兵が廃止され、魔女も普通の教育現場から完全に排除されそうになったが、扶桑側の巻き返しで『ウィッチ専門課程を設け、狩猟免許を取得できるようにする』風に落ち着いた。他の世界と違い、『恒久的に力を行使できるわけではない』事も巻き返しが出来た理由である。『黒江たちは百万人に一人単位の特異体質なのであって……』という説明も大義名分として機能した。戦争中ながら、のほほんとした空気があった扶桑本土だが、戦略爆撃機の『B47』やその前型である『B36』の情報が避難民、任務を終え、帰国した兵士から伝わると、防空態勢の万全さを問う声が上がり、軍は新型ジェット戦闘機の存在を矢継ぎ早に公表し、国民の動揺を抑えた。(魔女の求心力が下がっているのと、日本側が『宮藤芳佳に任せておけばいい』としているため、他の魔女の劣等感を煽ると懸念された)F-14は(日本にファンが多いので)目玉として公表され、扶桑海軍の虎の子の空母に着艦試験を行う様子が街頭テレビ(日本側の協力で設置)で流された――

 

 

 

 

――F-14は高機能だが、高コスト(1970年代当時の技術水準では)なので、『米国より財政事情の良くない日本連邦向けか?』という議論もあったが、21世紀のF-22戦闘機はF-14よりも遥かに維持費がかかり、当初の目論見の半分以下の機数で生産が終わっている。更に、ステルス機は(ステルス性のために)搭載量などが犠牲になっており、第二次世界大戦型の大規模空戦には向いていないこと、姿が高速型の怪異に似ていたために誤認が相次いだ戦訓もあり、『一部の性能でステルス機を凌ぐ』第四世代ジェット戦闘機は好ましいとされた。それが同機の量産促進に寄与した。だが、ハイコストであった事は既に有名であり、『ミッドウェイ級以前の空母では着艦不能である』と指摘があり、コストパフォマンス重視派の巻き返しでF/A-18E/Fも同時に採用されたため、F-14は高練度のパイロット用とされた。(歴史的には、この事例が後年の指揮官・エースパイロット専用機の奔りとされる)とはいえ、第四世代機はすべからず高コストであり、大規模生産が難しくなった世代であるので、それ以前の世代の戦闘機の生産も続行された。F-8はドッグファイターの巣窟である扶桑空・海軍には特に好まれ、新世代の運用が困難な大鳳以前の空母が現役にある間は現役の座を保つ。この発表に魔女の世界の各国は焦ったが、隔絶した科学力の差を見せつけられるだけであった。超音速機自体、自由リベリオンが自前の実験機で実証したばかり。日本連邦が加速度的に科学を発達させ、1949年に集積回路の自主製造にこぎつけるなど、史実より20年も早く進歩している。それを強調する事は『次の戦争への抑止力』を兼ねている。核兵器のような強大な力を持たない日本連邦が取った抑止力の手段は『他国が数十年かけても追いつけない科学を見せつける』事だった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1949年 7月 Y委員会――

 

この月、南洋本島でY委員会の会合が小規模で行われた。召集されたメンバーは陸海空軍の将軍/提督たち。64Fからはルーデルが代表で参加していた。

 

 

 

「大佐、戦線の状況はどうか?」

 

「全体的に小数の超兵器と、多数の鹵獲兵器で戦線は成り立っております。ご覧下さい」

 

戦線は全体的に兵器不足であり、小数の未来兵器、敵から鹵獲した戦車や火砲が大いに役立っていること、損失した四式中戦車の代替がM46であったり、M48だったりするなど、その場しのぎとはいえ、敵兵器の流用は(自由リベリオンと同規格なため)かなりの成果を挙げている。

 

「小銃に到るまで、鹵獲品が評判いいらしいね」

 

「ハッ。扶桑の弾薬備蓄量は少なめですから、好きなように使える鹵獲品は好評です」

 

この頃には敵味方を問わず、M1カービンやM14小銃などが多数使用されていた。扶桑は『人的資源に限りがある』ため、近代化改修は迅速に行われ、扶桑が戦時特例で採用するに至る。より後の世代の小銃も製造されてきているが、紅海戦線や北方戦線に持っていかれており、重要戦域なはずの太平洋戦線では『新旧の雑多な銃がごった煮状態』であった。日本側はこの有様に頭を抱えているが、国家同士の戦争は冷戦後の非対称戦と違い、あらゆる物資の消耗戦である。

 

「物量に劣る我々の取る道は『鹵獲品の積極使用』か。明治の元勲たちが聞いたら、さどかし嘆くことだろう」

 

「今は明治以前とは違いますよ、前田さん」

 

時の加賀前田家当主の『前田将軍』が残念がる素振りを見せる。彼自身は(かの前田家の継承者な事もあり)物分かりの良い人物で、かの東條英機とは陸士の同期だが、対立する関係にあった。(お互いに陸士の同期だが、東條は陸大は前田の四期遅れであるという)華族ながら、かの前田利家の子孫らしく、優秀である。

 

「それで、戦線への兵器供給はどうか?」

 

「ハッ。紅海や北方の戦線の要望で、そちらに表の工廠の生産力が割かれましたので、裏の生産量を来月からは引き上げる予定であります」

 

「よし。未来兵器の訓練はどうか?」

 

「ハッ。コンバットアーマーを新たに一個大隊ほどの戦力化に成功致しました。苦戦している領域へ投入する見込みです」

 

「よろしい」

 

未来兵器は大っぴらに投入されているが、日本側は自分たちの商機が消えると、ぶーたれている。仕方がないが、扶桑には扶桑の軍事的都合があるのだ。日本側は工廠の廃止と民間委託で『兵器の質を上げる』事を提言しているが、工廠を廃止し、民間委託を強めた場合の弊害もあるため、扶桑は色々な兼ね合いで工廠を維持している。日本は忘れがちだが、扶桑は(大企業には)工業規格の概念があるが、中小企業に至るまでの定着には至っていない。軍の工廠ならば、一定の在庫を常に備蓄できる上、(戦国時代が史実と違う結果になったので)一定の品質管理が可能な利点がある。アウトソーシング化を進めすぎた結果、軍需産業が衰退している日本の現状を鑑み、扶桑は工廠を維持する事になる。

 

「通常兵器はどうか」

 

「日本や国産派のご機嫌取りもそうですが、需要に比して供給が追いついておりません」

 

「国家総力戦は消耗戦だからな。連中は本で書かれていることしか知らん世代の連中だ。まだ、未来世界の方が話が通る」

 

前田将軍は華族出身なので、日本からは(史実で非業の最期を遂げたのと、加賀前田氏の当主であることから)『お殿様は後ろで構えていてほしい』と言われているが、(日本も噛んだ)(粛清人事の後では貴重な古参の)将軍クラスの軍人なため、(本来は予備役編入されている年齢ながらも)Y委員会の委員に名を連ねている。(ダイ・アナザー・デイ以降に勲功華族となった黒江たちの後ろ盾でもある)

 

「連中は自分達に合わせようとしています。ですが、リベリオンも苦労しているはずなのを考慮に入れていない」

 

「F-14とF/A-18があれば、敵の空母を先制攻撃できるはずだと」

 

「ばかな、少数の機体で奇襲できるはずは」

 

「ミサイルでできると思いこんでいます。M粒子の存在は知らせているのですがね」

 

「まぁ、レシプロ機やジェット黎明期の機体などは眼中にないのでしょう。ミサイル対策が進んだのは第二世代機以降のことですし、海戦で空母艦載機同士が激突したのは、マリアナ沖海戦の後は統合戦争までありません」

 

近代空母同士の激突は統合戦争の時代まで起きない。統合戦争が史上最後の『地域国家同士の戦争』であり、洋上空母最後の華であった。一年戦争後は海洋の軍事的価値の低下で、洋上空母が殆ど使用されなくなったので、扶桑へ既に五隻以上が払い下げされている。

 

「魔女はどうなのだ?」

 

「わが方の超人以外は『取るに足りん』と」

 

「……連中は魔女をなんだと思っとるのだ」

 

「黒江くん以下、一騎当千の強者はごく少数なのですがね。更にいえば、宮藤くんに任せておけばいいとも……」

 

「いくら、宮藤くんが多くの場合で『欧州の危機を三度救う』と言っても……」

 

「まぁ、他の統合戦闘航空団が年単位でも出来ないことを、彼女らは短期間でやってのけましたから、基本世界では。プリキュアは別枠ですからね。彼女が軍にいる事は賛否両論ですが、既に軍人である者がその過去性を持ち、その能力が覚醒めただけなのですが」

 

Y委員会の委員たちは一斉に嘆息した。日本では、ダイ・アナザー・デイ以来、プリキュア達の軍への所属への非難と擁護がぶつかりあい、喧々諤々の議論が続いていたが、のぞみの転職を失敗させてしまった事と、戦闘行為の法的な問題との兼ね合いで『軍にいてもらったほうが都合がいい』と結論づけた。一律で日本連邦軍に所属させたかったが、一部は国籍が米と仏であるため、64Fに『出向』という扱いで落ち着いた。(シャーリーは自由リベリオン国籍、アストルフォはガリア国籍である)

 

「凡百の魔女たちはダイ・アナザー・デイやクーデターの結果、前線勤務を望まなくなりましたからな。彼女らは周囲に多少のちやほやをされつつ、嫁入りするのが理想の人生だったようですので」

 

「やれやれ。人同士の戦争に移行したら、したで、魔女が軍事的に役立たずと認定されそうになる……か」

 

「仕方あるまい。怪異専門に教育されてきた子らに、人に銃口を向けろというのは酷だ。同胞同士の殺し合いを百年近くもしていなかったのだ。我々とて…」

 

「ああ。だからこそ、手を汚す事に抵抗を持たない彼女らに頼るしかないのだ。そうでなければ、オラーシャのような『魔女狩り』になる」

 

「大衆はある意味で無責任だからな……」

 

Y委員会の委員たちは大衆の無責任さを詰った。たやすく掌返しを行い、迫害した後に、何食わぬ顔で事後に『ああするしかなかった』と宣うのだから。

 

「だからこそ、彼女らの存在をプロパガンダする必要があるのだ。大衆にはわからんことだがな」

 

軍部は悪者にされがちであるが、魔女の社会的地位の保全と身の安全に寄与しているのも事実なのだ。学園都市の超能力者がそうであるように、社会的地位の保障が無くなれば、毛色の違う存在は迫害の後には消えていく。

 

「その気になれば、我らは日本を容易に制圧できる事は知っているのかね、日本は」

 

「グレートマジンガーとゲッタードラゴンがある事は通達しています。連中は本気で怯えてます。まぁ、その両機種より遥かに上の機種があることを、政治家になる年代の者は知らんでしょう」

 

ゲッタードラゴンも、グレートマジンガーも『動く要塞』として、日本政府の要人らを恐れさせているのだが、その二つよりも遥かに強大な後継機種が既にあるのである。真ゲッターロボやマジンカイザーである。

 

「自衛隊の全戦力をぶつけても、グレートマジンガーで充分にお釣りがくるのはわかるでしょう。それよりも、異能を恐れているようです」

 

「一行通行のトラウマか?」

 

「おそらく。基本世界と違う経緯があったようで、2023年の時点で彼が存命かは定かではないようですが」

 

一行通行たちがなにかかしらのことを2010年代に行った後、公的の消息は不明になっているので、基本世界と違う『何かの戦いがあった』こと、御坂美琴達の消息も成人後は不明であるなどの記録が残されている事から、『何かにケリをつけて、隠者になった』事が推測されている。(グンドュラ・ラルの持つ過去生の記憶と差異が大きいため、推測の域を出ない)

 

「だから、プリキュアたちを公的機関で抱え込むのを?」

 

「自分達の身の安全を図りたいんでしょうね。ショッカーに計画を利用されたって記録があるから」

 

「いつのことかね」

 

「彼ら(仮面ライダー)が現役のヒーローであった時代とのことです」

 

日本政府は次期政策用に用意しようとしていたコンピュータをショッカーに利用された事があるという。その事から、ショッカーと(その後継組織含む)それ以降は敵対関係にあるという。

 

「大本営が無くなり、作戦参謀の多くが(史実の愚行を理由に)僻地に送られた煽りで、まともな作戦が立てられんと抗議が来ている。どう対処するのか」

 

「地球連邦軍に既に援助を乞いています。更に、自衛隊の統合幕僚監部からも幕僚を受け入れています。彼ら(日本)は史実の結果をもとにしての感情論で処罰し、当人へのメディアリンチも黙認しますから。メディアへ餌をやる必要があるのです」

 

「それが君らの存在の誇示かね?」

 

「ええ。人的資源がない国の軍隊には『英雄』は必要ですから」

 

ルーデルはダイ・アナザー・デイ当時、エース部隊の隊長に就任することを固辞しようとした武子を説得し、最終的に就任へと持っていった立役者である。英雄の存在が国民の士気維持に役立つ存在であるかを知っているルーデルは武子を説得し、64Fの隊長の座に収めた。武子は若き日の持論と相反する部隊の指揮は乗り気ではなかったが、結局は自らが祭り上げられ、今ではすっかり『加藤部隊』との愛称も根付いている。

 

「貴国の海軍航空隊の気風は古臭い。地球連邦軍もエースの存在を認めているというのに」

 

「言い訳しようもないな、それは」

 

ルーデルは扶桑海軍の名だたる高官たちへ『海軍航空隊の気風』の古さを批判する。

 

「元々は軍規の引き締めと、海軍リバウ三羽烏の引退を見越しての施策だったのだが……それが空軍の設立で障害になるとは。見通しの甘さを痛感する」

 

井上成美は『海軍の空軍化』が持論だったが故に、バツの悪い顔を見せる。空軍が独立した一つの軍隊になった影響で海軍にいられなくなり、空軍へ移ったのだが、その過程で、自らの施策の信奉者であった志賀少佐と黒江の衝突が起こり、海軍航空隊の頑迷さを世間に知らしめてしまい、彼女を『悪者』にしてしまったことは痛恨事であり、責任を感じているようである。

 

「井上閣下は撃墜王をお認めに?」

 

「私の責任だよ。国際協力でこうも問題になるとは思ってもみなかったのだ。戦闘詳報も日本に信用されていないとは……」

 

国際協力で問題になったことの責任を取る目的も、提督の地位を捨てた理由であると示唆する井上。日本は戦闘詳報も『嘘っぱち』と断じ、扶桑軍を批判した。海軍航空閥は(史実の連戦連敗を理由に)参謀や高官たちが片っ端から粛清人事の対象となり、現場の魔女やパイロットも多くが『政治に不満を持つ』のを理由に、僻地に根こそぎで飛ばされた。主力化していた基地航空隊が空軍に持っていかれたため、空母機動部隊に残された人材は二線級ばかり。その原因を作った責任に触れる。

 

「元の母艦部隊に旧任務を命じるなど、混乱も続いている。故に、私は空軍に移ったのだよ」

 

井上は自信を持っていた基地航空隊が米国の巨大な生産力に裏づけられた空母機動部隊に逆にねじ伏せられたこと、防空装備の進歩と航空機(と、パイロット育成費)の高額化で自身が考えるような波状攻撃は逆に机上の空論になり、戦艦や大型巡洋艦クラスの防空力は科学の進歩で恐るべきものになった歴史的事実から、自嘲するような口ぶりであった。海軍にいられなくなったのは、自身の主張が裏目に出た結果、マリアナ沖海戦で国そのものの破局を決定づけたことへの罪悪感、空軍を『合同部隊』として認識していた点が批判された事、自身に将帥の才覚はない(教育者としては一級であったが)事が多世界で確認されたことで、政治的に立場を失った事による。

 

 

 

 

「空母機動部隊はおいそれ使える代物では無くなったが、基地航空隊はリベリオンの膨大な生産力に敵うものはないとなるとな。前線の将兵には苦労をかけた」

 

「日本はあ号作戦で空母機動部隊が、捷号作戦で戦艦部隊が壊滅する有様を見てきている。故に、数世代分の技術面での優位を欲するのだ、井上」

 

小沢治三郎は史実でのあ号作戦の当事者であるので、連合艦隊司令長官としての手腕にも疑義が持たれていた。だが、兵の質が伴えば『戦上手』である。ダイ・アナザー・デイでそれを証明し、山口多聞に後を託した。史実では隠者になり、急速に心身が衰えていった時期に相当する年齢だが、軍が1945年以降も存続した世界線では『提督であり続けている』せいか、史実での同時期より若々しい。

 

「それも考えものだがな。例のあれは地下に秘匿している。報復措置用としてな」

 

「向こうが原爆を使った場合にのみ使用しましょう。既にティターンズの示威で西海岸の二大都市が失われていますので、力による脅しは効きませんが、黙示録的な光景は十字教の信者には耐え難いはずです」

 

「その反応兵器も、未来世界では恐ろしくも、単なる爆弾でしかないのだから、驚きだよ」

 

未来世界では、波動砲やマクロスキャノンなどの更に上位の兵器がわんさかあるので、反応兵器(核兵器)は単なる『チャチな玩具』に成り下がっている。(更に上位の効果を持つ『惑星破壊プロトンミサイル』が発明されたからだ)

 

「未来世界での惑星破壊プロトンミサイルを知ったら、泡吹くだろうな。だが、それとて、ゲッターエンペラーの前には無意味だが」

 

「あれは因果律すら書き換えられる上、容易に望む結果を因果律兵器より強力に起こす『機械神』だ。宇宙全体より大きい敵と戦うための……」

 

ゲッターエンペラーは真なる神たる存在。扶桑の中枢を担う者たちはその存在を日本よりも理解しており、魔女の世界の人類を存続させるため、ゲッターに運命を委ね始めていた。

 

「向こうは早乙女博士の出現まで、ゲッターをアニメでしか知らないですからね」

 

「ゲッター線は意志を持つが、それを使う者次第で善にも悪にもなる。早乙女博士と兜十蔵博士はそれを知っていた。彼らが遺した偉大な遺産を活用せねばならん。この世界の人類を自滅させんためにも」

 

マジンカイザーや真ゲッタードラゴンなどの超兵器を以て、いずれは地球連邦を結成させなくては、『魔女の世界の人類』は食い合った挙句に自滅する。その危惧により、扶桑は次第に世界を統べることを志向していく。その端緒として、この戦争を利用する。それが山本五十六以下のY委員会の意向だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――64戦隊はそうした政治的思惑の実現も担わされることになり、ますます戦果が求められるようになる。Y委員会の政治的思惑と戦線の板挟みに遭う武子は心労を重ねており、長期休暇を検討していた。1949年の夏に妊娠が判明し、予てより婚約していた幼馴染との結婚を敢行。新婚旅行と長期休暇の準備に入っていた――

 

「よう、彼とそろそろだと思ったよ。前線の指揮は俺たちに任せろ。今回は五十六のおっちゃんが統合参謀本部を脅してんから、介入もない。俺たちの合議で運営しとくよ」

 

「頼んだわよ。で、報告があるわ。キュアムーンライトから、キュアエトワールを保護したと」

 

「HUGっとからの第一陣か。説明が長くなるぞ」

 

「ええ。今、新京を郵便列車で出発したそうだから、あと五時間はかかるわね」

 

「他の連中に通達したか?」

 

「ブルームとイーグレットに伝えたわ。今、留守番組を集めての説明中。私は視察が終わったら休暇に入るから、後事を頼んだわよ」

 

「なーに、こういう事は慣れてる。安心しろ」

 

武子はこの前線視察が長期休暇(育休)前の最後の任務となった。妊娠の判明はこの数日前である。武子は直接の子孫を儲け、孫娘が軍人としての後継者になるわけだが、その始まりとなる出来事であった。

 

「あなたは子供を作らないの?」

 

「恋はした事あるが、柄でもなかったしな。子孫は兄貴たちに任すさ」

 

その言葉通り、黒江は直接の子孫は儲けない。だが、兄の一人の孫娘を養子にし、その子が後継者となるのである。

 

「それに、もう会ってんだろ?」

 

「不思議なものね、時間の流れは」

 

「本当なら、俺たちは後進に任せて、前線から退いている。それだけが魔女の運命でもないのにな」

 

ガランドのように、こっそりと出撃していたり、ルーデルのように『特異体質と気質により、ウォーモンガー化する』例もあるので、黒江は転生で『魔女の不文律』を打破できたことを嬉しがっていた。世間的に『魔女は二十で軍務を引退して、嫁入りする』風潮があることを元々、嫌っていたからである。

 

「私たちは神のいたずらでそれを超えた。だけど、いいのかしら」

 

「いずれ、ゲッター線にこの世界の人類が適応すりゃ、過去のものになるさ。それに、二十過ぎたって、引退しねぇヤツは引退してない。元からな」

 

自分達に起こった奇跡、その副作用で冥土に再び行くことは無くなったことをポジティブに捉えつつ、64F幹部らは他の部隊の士官より『気が長い』。性急な行動が破滅に繋がることを知っているからだ。黒江のように『終わり良ければ全て良し』な者もいるように、思考そのものが『大人のそれ』になっている。魔女は『一桁~19歳までのモラトリアム期までの奇跡』であったので、(魔女としては)芳佳は遅めの覚醒であった。

 

「トムキャットが使われるようになれば、他の連中も事の重大さをわかるのかしら」

 

「一昔前の双発爆撃機以上の巨体が超音速でかっ飛ぶんだ。それだけで充分だろ」

 

二人の言う通り、F-14の配備が完了すれば、頑迷な古株の海軍系の魔女は立場を失う。ジェット機を嫌う者は多いが、F-4やドラケンが『シュワルベが嘘のような小回りの良さ』を見せ、更にF-15/F-14/F-16の世代が更に機敏な動きをこなすため、徐々に減ってきている。ジェット嫌いで有名なハルトマンも(剣鉄也を慕うようになった影響で)『技術レベルが違うなら、小回り効くよね~』と言う風に発言し、史実と違い、ジェット嫌いで無くなったことを示唆している。史実と違い、(剣術の関係で)格闘とスピード重視になったことが大いに関係している。

 

「さて、問題は……どう説明するかだなぁ……キュアエトワールに。先輩と後輩たちの状況。坂本じゃ口下手だし、ムーンライトに任せっか?」

 

と、黒江も状況説明の難しさは否定しない。

 

「おまけに、のぞみは今、入れ替わってるしなぁ」

 

「ええ。まぁ、ラブの時代に『心が入れ替わってても、変身に支障ない』事はわかってるから、大丈夫だと思うけど」

 

「おまけに、単にプリキュア化しただけじゃ、俺たちの戦いにはついてこれんぞ。かなり鍛えんと」

 

「しばらくは、咲やゆり、みらいに任せましょう」

 

「それがいいか」

 

単純にプリキュア化しただけでは、組織との戦いには参加できない。また、複数の異能があっても、能力の発揮する破壊力が『改造人間を破壊するには足りない』場合がある。のぞみがパワーアップを重ねてでさえ、強敵に苦戦する事が多いのがその証拠である。(如何に未来世界が魔境であるかの証である)

 

「とはいえ、あの写真見たら、どんなプリキュアもおったまげるぞ?」

 

「それは想定内よ」

 

その写真とは、のぞみがデザリアム戦役の際に見せた『怒りと悲しみの感情が限界を超えた結果、力の殻(シャイニングドリーム)を破って、さらなる新形態(エターニティドリーム)に自力で覚醒した際のショットである。プリキュアはパワーソースが本来、外部(レインボージュエルなり、プリズムフラワー)に依存しているため、同等以上の力を持つもの(サイコフレームなど)に干渉されると、容易く無力になるという弱点がある。デザリアム戦役では、サイコフレームの干渉でパワーを封じられ、多くのプリキュアがタウ・リンに素手で叩きのめされた。エターニティ形態はその干渉をも跳ね除ける(仮面ライダーアマゾンがギギとガガの腕輪を合体させた状態になるような状態)力を持ち、なおかつ、身体能力を人工器官で強化したタイプの強化人間であるタウ・リンとも戦えるだけの力をもたらす。シャイニングを更に滑らかにしたような姿でありつつ、激情で変身したためか、電気を纏う黄金色のオーラを発しているなど、『どこかのバトル漫画で見た風な』ワンショットであった。

 

「漫画みたいだが、本当にあったからな。ケイがアナログ写真の名手で良かったよ」

 

「アナログなら、合成できないものね」

 

その写真は圭子がお得意のライカによる『居合撮り』で撮った事が明確にされる。

 

「しかし、あれだが……初代の二人を除けば、最強格じゃないか?」

 

「おそらくね。初代の子らは突出したパワーを持つというし」

 

初代の二人は後輩らより一段上の基礎パワーを持つため、80人近くの後輩が出来てなおも、戦闘力では『他より上』とされる。ただし、初代故か、のぞみの記憶によれば、ある時期に『プリキュアを率いる役目』を託したとの事なので、『何かの事情で、彼女たちが戦いから身を引いた』世界線であったらしい。

 

「彼女たちが身を引いた事が?」

 

「多分な。俺とのび太達の推測だが……。何か、のっぴきならない事情があったんだろうな、その世界線。それ以降に徐々にまとまりが無くなっていったと言っているし」

 

「精神的支柱が失われることで、まとまりが分解していく…か」

 

「プリキュアは仮面ライダーのような『明確なまとまり』のないグループだ。のぞみが前世で『壊れた』理由はおそらく……」

 

黒江は(のぞみのいた世界線で)初代チームが活動しなくなったことで、コミュニティが次第に空中分解していったのでは?と推測した。りんのいた世界線では『初代が大ショッカーにいの一番に立ち向かい、次いで、5チームが彼女たちの連絡で加勢した』とあるので、(のぞみのいた世界線では)『なぎさの代わりになろうとした』説が浮上している。

 

「ティアの訓練は?」

 

「仮面ライダー達に鍛えてもらっているが、しばらくは能力を馴染ませる必要があるから、実戦には出せんな。だが、なかなかのもんだ」

 

「炎使いも増えたわねぇ」

 

「同感だ。他国の連中が僻むのもわかるなぁ」

 

日本(扶桑)人に(魔力以外の強大な)異能が発現する傾向があるため、魔女の世界の他国の魔女からは僻みの声が出てきている。その他にも、服部静夏などの若い魔女(1949年には彼女も10代の終わりを迎えているが)からも引け目を感じる趣旨の発言がある。

 

「で、これはどうするの?」

 

「あー……ドラえもんにしてもらおう」

 

と、タブレットに録画されている『キュアドリームが「シャドーロールの誓い」を熱唱する』動画に困る二人。のぞみ本人は『音痴』である(絶対音感はあるが、歌は下手)である事は後輩の間でも周知の事実であるからだ。今回の出来事を『映画撮影と誤魔化すための一環の映像』なのだが、(中身がナリタブライアンであるので)普通にプロ級の歌唱力を発揮している。

 

「で、他にも撮るんでしょう?」

 

「ああ。ゴルシの奴はキュアビートの姿で『Can't Stop』だって。ゲッターの歌の」

 

「マニアックなチョイスね」

 

「まぁ、キュアフェリーチェに後で『Crystal Energy』を歌わせる予定だ」

 

「いいの?」

 

「この際だ。うららの芸能マネージャーの線で曲の使用許可は取っとく」

 

と、既存の曲の使用許可を広範囲に渡ってとっておき、この世界で映画として流す時に、目玉とする。そんな上層部の思惑があるらしいことを伝える黒江。のぞみBが僻みそうな話だが、音痴なのは事実であるので、その場で落ち込んだという。

 

 

 

 

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