――遠征軍とバダンの死闘は続いた。黒江は戦局の打開のため、グレートマジンカイザーの使用を決断。改修された姿では二度目の実戦となった。マジンカイザー+グレートマジンガーのような姿である同機、グレートマジンガーを進化させた個体なのだが、どこかの世界でマジンガーZEROに敗北した事により、ミネルバXからは『無意味な存在』とされたが、炎ジュンの願いにより、実戦に供された。マジンエンペラーGの影としてではなく、偉大な皇として――
――マジンガーZEROに負けたと言っても、それは『純粋なマジンガー』としてで、光子力をメイン動力に用いない『ハイブリッド動力機』であれば、マジンガーの定義に完全にはかからない。それが光子力研究所の答えであった。これはZEROに別個体がいることを前提にしてのもので、別次元のZEROが牙を抜くことを想定しての改造であった。陽子炉と光子力反応炉のメイン・サブの入れ替えはその一環であった。それに伴い、外観の変化があった。胸にあった『金のモールド』が無くなり、手足の色が青に変更されている他、パンチ系の武装はエンペラー同様の『グレートスマッシャーパンチ』に変更されている。陽子炉にメイン動力が変わったため、重要部の装甲は超合金GZ/NZα/合成鋼Gの複合装甲に換装されていた――
「サンダーボルトブレーカー!」
Gカイザーの武装は改修でマジンエンペラーGとの共通化が進められた。その方が補給の上で楽だからだ。
「ハイザックなんぞ、マジンガーの相手じゃねー!!」
三機を空中で空間ごと爆破する。ハイザック程度のMSでは、Gカイザー級のマシンには烏合の衆も同然なのだ。
「機動兵器は俺が引き受ける!兵士は任せる!」
連合軍はGカイザーの投入を以て、本格的な反撃の狼煙とした。機動兵器を安全にねじ伏せるには、同じ土俵に立つのが手っ取り早いからだ。
「司令部はしびれを切らしたんですか?」
「パットン親父は短期決戦を仕掛けるつもりだ。物資の搬入を待っていられないと言い出した。こうなると止められん。仕方ない。お前らもこのまま斬り込め」
「了解。急ですね」
「パットン親父の思いつきだ。ブライアンに伝えろ。ドリームの全スペックを使っていいと」
「分かりました」
と、キュアハートたちに連絡を入れる。ブライアンはそれを聞くと、姿はドリームの通常フォームながら、闘争心を燃やす。それは彼女が『強くなる』ために自らに課したマインドスイッチのようなものでもある。ドリームの姿であっても、鼻にテープを貼っているのは、ブライアンなりのルーティンであり、験担ぎであった。
「ダブルトマホォォク!!」
この場合はゲッタードラゴンと同型の片手斧タイプのダブルトマホークである。二刀流で振るい、敵兵と兵器を切り裂いていく。プリキュアの姿で持つには過激な武器だが、確実に息の根を止められる威力を持つ。オバケの類は苦手である(ホラー映画の類は幼少期から駄目らしい)が、タネが分かっている相手であれば、スプラッタにも動じない。それは奇しくも、のぞみと合致する特徴であった。テクニック型の戦法を取るのぞみに対し、ブライアンは(レースでの)走り方がそうであるように、どちらかというと、パワータイプの戦法を得意としている。それがサクラローレルを惚れさせたのは言うまでもない。それができなくなった(最盛期のパワーを出せなくなった)時がブライアンの落日の始まりであった。だが、その運命に抗うためには、精神を鍛え直さないとならない。彼女はそのためには『どんな事も厭わない』。怪我への怯えこそが『前世の自分』を悲運の三冠馬としてしまった事の記憶が蘇った事により、明確に『運命を超える』というビジョンを持つようになった。そのためには『どんな労苦も厭わない』。この決意こそが、彼女をキュアドリームとして戦わせる原動力であった。
「アトミックサンダーボルト!!」
ダブルトマホークを持ちながら、アトミックサンダーボルトを放つ。ドリームがその時点で会得していた技能は『すべて使える』状態であるため、プリキュア本来の技も撃てるのだが、ドリーム本来の技は改造人間や強化人間などに『威力不足』である。『個々の技は幹部級には通じない』程度の威力であったのは聞いているため、ブライアンもそれに応じた戦法を取っている。
「いけっ!!」
ダブルトマホークブーメランをし、飛んでいるトマホークの刃を使い、後から放ったゲッタービームを反射させ、リフレクター・インコムのように、不意打ち的な射角からぶち込む手も用いる。この戦闘は『この世界の夢原のぞみ』も基地への中継映像で見ており、大いに引け目を感じていたりする。(もっとも、のぞみ自身、運動部であった経歴があるなぎさや咲と違い、部活追い出され王の帰宅部であった少女が二年ほどの戦闘経験で『歴代屈指の巧者』に登りつめるあたり、最終的な伸びしろはその二人を超える可能性がある)
――基地の食堂――
「あの子、何者~!!いくら別世界での一流のスポーツ選手だからって、私の体をあそこまで使いこなせるもんなの~!?」
「超がつくくらいに一流のアスリートですよ。武道もそれなりに噛んだそうな。まぁ、私達の知るのぞみさんはすごくパワーアップしてるから、なぎささんみたいなゴリ押しが効くんだけど」
「ホイップ、変身した状態で厨房に?」
「私らは本格戦闘向けのプリキュアじゃないんですよ。今はサポートが主なんで、厨房に立ってる方が多いですね。裏方も仕事ですよ?」
「あの子……そっちの私はどんなの食べてるの?軍隊で」
「肉類中心ですよ。訓練もそうだけど、敵が敵だから、一回の戦闘での消費カロリーが莫大なんです。大飯食らいになってますよ、こっちのあなたは」
「え~~!?だ、だけど、体型は変わんないように……」
「鍛えてるから、見かけによらずに筋肉質になってますよ?」
「えーーーー!?」
「転生した先の体になった子が職業軍人で、元から戦闘訓練を受けてたんですよ。その立場を継いだだけだったけど、転職が政治に潰されたから、そのまま骨を埋めることになった。政治家には、その方が都合が良かったんですって」
「なんでなんで!?」
「ほら、教員の組合があるじゃないですか。その人たちが裏で官僚に入れ知恵したって噂です。でも、国際問題になっちゃって、大慌て。結局は正規の教員にはさせられないし、どうせ有事に召集するんだろうと言われた。だから、軍にいてもらったほうが、お互いのためにも良かったんだそうな。みらいちゃんが怒ってました。官庁にあなたの代理で怒鳴り込んだ事あるんで」
日本と扶桑は結局、のぞみの一件は予備役軍人の転職や雇用問題の根幹に関わる事から、日本側が謝罪し、のぞみに『予備役願いの書類を提出しなかった』ことにしてもらい、問題がそもそも起きていないことにする方法で決着を目指したが、問題はやはり起こったために、のぞみに多額の補償金が支払われ、扶桑軍人で教諭への転職希望であった者には『軍学校の教諭資格を与え、一部は最前線で教官とする』とする緊急措置がなされた。のぞみが短期間に少佐になった理由はそこにある。
「大人の事情?」
「ええ。お互いのためにもってことで。その代わりに、好きに過ごしていいけど、戦果は挙げてくれって」
日本は『せっかく奇跡的に経済が上向いた中、些細なことで関係を壊したくない』ということで、のぞみに涙を呑んでもらう代わりに、軍の中で優遇措置を取るという方法を取った。最善ではないが、政治的に穏便な解決策であった。財務省には『魔女にわざわざ予算をかける必要は…。どうせ、宮藤芳佳以外は役に立たない』という声があったため、プリキュアであるのぞみは『多額の補償金を支払う価値がある』と見做されていたのである。実際、他の魔女は(501以外の統合戦闘航空団も含めて)戦局を動かす鍵にはなりきれず、世代交代で兵科全体の練度が5~6年ごとに下がってしまうし、政治的にもうるさい存在というデメリットが研究の進展と戦局の混迷でクローズアップされてしまった結果、多くの国が厚遇を止め始めている。魔女大国と言われたような国でも、だ。扶桑に全世界の熟練の魔女が集結していってる理由は『科学の発展に適応できるというところを見せなければ、コミュニティどころか、存在そのもの命運が暗転してしまう』ことをよく認識している士官たちが『世の中に認められ続けるための働き場』を太平洋戦線に求めたからである。
「なんとも、まぁ……大人の都合だね」
「大人の都合で転職もできないのかって議論が起こったけど、結局は日本特有の政治事情で潰れたようなものですからね。その代わりに、仕事で成果を挙げてくれってのも、日本的ですよ」
日本国としては、学園都市の廃止後に能力者の取り扱いに労苦を強いられた事から、異能を厄介物扱いする風潮があるのだが、軍事・治安維持に有用である事により、活用しようとしたが、既に多くは各地に散ったり、地下に潜ってしまった後であった。今度は各官庁の上層部にある、戦後直後の意識を引きずった『反戦意識』で事態が悪化したため、日本政府はこの案件の穏便な解決に血眼になった。のぞみにとっては、必ずしも喜べない結果であるが、双方の政府にとってはお互いのための妥協であった。
「その代わりに、どんなものを使ってもいいって通達が出たから、ゲッターロボとか乗ってますよ」
「ガンダム乗ってるとは聞いたけど、ゲッターロボにも?」
「ゲッターロボGは増産されたから、それですね。真ゲッターロボはバケモノですし」
ゲッターGは戦闘用ゲッターとしての性能と扱いやすさを両立している事から、戦闘用ゲッターロボの一つの指標となり、ゲッター線に一定の適性がある者用にゲッタードラゴンそのものが増産されている。ドラゴンほどのパワーがあれば、通常の戦闘は充分だからだ。
「二代目の主役メカは量産される傾向なんですよ。マジンガーにしても、ゲッターにしても、ガンダムも」
「へ?ガンダムも量産されたの?」
「ガンダムマークⅡですけど、量産されるガンダムの予定だったそうですよ」
「あれはのび太の話だと、その予定だったから、意図的に性能を抑えてたって説もあるそうだぞ」
「あれ、メロディ、今日は出てないんだ」
「機体が整備中だし、連勤で流石に疲れてんしな。あいつ一人で、並のプリキュアの5人分以上の戦力だから、今日は休みだ」
「や、休みって…。それに五人分の戦力って」
「見てりゃわかるさ。こっちのお前のおおよそのパワーがわかるからよ」
キュアメロディは食事をホイップに頼みながら言う。そして、映像はますますの破壊力を見せる。
「あ、ロケットが!!」
のぞみBは心配そうな声を上げるが、キュアドリームA(ブライアン)はなんと、次の瞬間にはロケットの飛行軌道よりも遥かに前方にいて、クナイのような武器で切り裂かれたかのように細切れになり、その場で爆発する。
「へ!?な、何したの!?」
「ヒュウ♪クロックアップまで使いこなしたのか」
「く、クロックアップ?」
「要は加速ですよ。この場合は物理法則を超えてますね」
「ああ。それを極めると、時間移動も自分でできるようになる。全時空の仮面ライダーの中でも、トップ級のチート能力だ。あのクナイはその能力を持つ仮面ライダーのそれをコピーしたものだよ」
トマホークをいつの間にか、仮面ライダーカブトの持っていた『カブトクナイガン』に持ち替え、クロックアップによる加速でロケットを細切れにしてみせる。原理はタキオン粒子をコントロールすることで、時空間の流れから『外れる』ものなので、昭和ライダーでも、多くはその動きを『視認』できない。だが、それも万能というわけでもない。同等の力があれば、同様の状態になって、その世界に『介入』できるからだ。ウマ娘の内、『時代を変える』とまで謳われた者達は魂に秘められた『前世における異名』をもとにした限界突破能力を持っている。ブライアンは怪我をする前と後では『異なる力』として表れたが、この時は全盛期のそれに近いものを発動させたようである。
「なるほど。感覚が戻ってきた。これならば……!」
体の感覚と動きのズレが矯正されたのを肌で感じ、ブライアンは表情には出さないが、内心は喜びに打ち震えている。台頭してくる二人の『次代の英傑』(ディープインパクトとオルフェーヴル)に対抗する目処が立ったからだろう。既に自分の能力面での伸びしろは頭打ちになり、若い後輩らの台頭で全盛期のような『絶対王者』とは言えなくなった事は自覚している。その状況で復権を果たすには『能力の意識的な制御』を成し得、往年のタマモクロスやオグリキャップの如きポジションとなるしかない。
「あいつらかっ!」
ロケットを撃ったのが、旧ソ連製のカチューシャの一団であることを視認したブライアンは全盛期のそれに戻った脚力で瞬く間に接近する。キュアドリームの体はブライアンの要求によく応え、ブライアンの『本当の姿』と同様の『地面が陥没する』ほどのロケットスタートを見せる。
「な、何!?あの走り!?プリキュアになってたって、あんなスピード出せないよ!?」
のぞみBは固まるほどのショックを受ける。その走りはたとえ、プリキュアに変身していても不可能と断定できるほどの加速を伴っていたからだ。更に、目からは紫色の光がはっきりと瞬いている。ある意味、それこそがウマ娘が到達する極みの内の一つであり、それをブライアンが活用し始めた証であった。瞬く間にカチューシャ軍団の懐に入り込むと、パーフェクトゼクターを召喚し、各ゼクターが瞬時に装着されていく。
「持ち込んでおいて正解だった。痕跡を残さずに破壊できるからな」
――KABUTO POWER THEBEE POWER DRAKE POWER SASWORD POWER.All ZECTOR CONBINE.――
ブライアンはパーフェクトゼクター(…のコピー品)を気に入ったのか、遠征に持ち込んでいたのだ。プリキュアが持っていい類の武器ではないので、その映像を見るキュアメロディとキュアホイップは乾いた笑いを見せる。のぞみBは『明らかに番組が違う』武器を出されたのがわかったのか、飲んでいる麦茶を思いっきり吹き出し、むせてしまう。
ブライアンはパーフェクトゼクターの作動ボタンを押し、剣モードによる最大の一撃を放った。
――MAXIMUM HYPER TYPHOON.――
「はぁぁっ!!」
マキシマムハイパータイフーンの斬撃のパワーで、展開していたカチューシャの軍団を消し飛ばす。
「どんな道具にしろ、使う者次第で善にも悪にもなる……か。なら、切り開くだけだ。自分の未来をな…。」
技を決めた余韻に浸るブライアン。意外にも、彼女には幼少期、近所に住んでいた年上の男友達がおり、その子がヒーロー番組を見せてくれていたので、実はこうしたことに憧れていた時期がある。ブライアンは元々、父の事業が順調だった時期から、申し訳程度にしか家庭を顧みない父を嫌っており、成績不振は袂を分かつ決定打となった。(ブライアンの父は親類の資金援助で事業の立て直しには成功するが、次女の勘当という軽はずみな選択が心労を招き、長女が大学を卒業する年に大病で亡くなる。事業はビワハヤヒデが継いだとの事)
(どうせ、親父は私に家の敷居を跨がせんつもりだろう。親父の財産には興味ないが、亡くなった時の財産分与などは面倒だ。姉貴が上手くやると思うが……。相続税もかかるし、親父の財産などはいらんが、お袋は受け取れというだろう。だが、いらん。あいつらの学費に使ってほしいしな)
ブライアンはその後、父が亡くなった際、財産に関する権利は遺留分も含めて放棄する。妹達の学費なども考えたためだ。その頃には、競争ウマ娘としての復権を果たし、自前の財産をちゃんと築いていたので、親からの財産にこだわる理由が無いからであった。父親の失敗は『オグリキャップのような事例は二度と起きない』と考えていたことであり、自分の娘がそれを成し得てしまった事により、引っ込みがつかなくなってしまった(復権を目指す娘を否定してしまった)。それが悲劇を招いたのだ。
――なぜ、パットンは急に決戦を急いでいるのか。理由の一つは『戦いが長引く事で、敵が三号クラスの改造人間を複数出す』ことを恐れたという点、自由リベリオンへの援助に疑義を呈するアメリカ人は多く、黙らせるために確固たる戦果を必要にした事、パットンは典型的な『1940年代の高官であるし、史実での『結果さえ出せば、上官からの非難叱責を無視しても問題ない』という若き日からの思考を問題視されており、史実の発言も併せて『パットンは早期に退役させるべき』という圧力がかかっていたのを知っていたからだ。魔女の世界では、史実のような異常行動はあまりなく、(前線指揮型であるので)兵たちから人望があるのだが、アメリカの政治家からは『戦争が終われば、ああいう手合は使い物にならない』と見做されており、名誉ある戦死を望まれていた(既に、彼の後継になる運命の子息がいたため)。それがパットンを戦場に駆り立てていた。だが、この行動で虚を突かれた形のバダンは(暗闇大使の人望の無さもあり)せっかく、三号が築いた優勢を活かせず、戦線を崩され始めていた――
――基地では、この機会を活かそうと、廻天号の出撃態勢が始められた。次々と51cm砲弾が運び込まれ、出撃に必要な物資が艦内に搬入されていく。――
「なんか、慌ただしくなったね」
「ドックのアレに出撃準備の指令が下ったんでしょう」
「アレを出すのか、親父は。敵の出方を見た方がいいと思うが」
「アレって、ドックで整備されてた、あのドリル戦艦?」
「そう。それだ。名前は廻天。海底軍艦轟天号の姉妹艦みてぇなもんだ。ベースも同じで、大和型だしな。ま、宇宙戦艦にしたけど」
海底軍艦は深海でも耐えられるよう、元から気密性などは完璧に近い。それを更に改良し、宇宙戦艦化したのである。
「あたしらが転生した世界じゃ、空母が史実みたいなポジションになってなくてな。戦艦が元気に働いてる。だから、宇宙移民ができた世界から流れた技術をああいう戦艦に使うんだ」
魔女の世界では、空母=魔女のコマンド母艦のような扱いが長らく続いていたため、史実のような艦上機での集中攻撃はブリタニアであっても、ほとんど想定していなかった。だが、ダイ・アナザー・デイでそれが逆に問題になると、魔女は一気に空母から外され、強襲揚陸艦に配置転換された。怪異と違い、魔力での装甲防御力の弱体化補正が働かない通常兵器相手では、火力不足が一気に露呈したからである。64Fは20ミリ砲や30ミリ砲も用いたので、(怪異相手と同様に)変わらぬ戦果を挙げられたが、他の部隊の多くは『携行弾数が減る』という理由で12.7ミリ銃を使い続けたが、そんな口径の銃では、重装甲で鳴らした米軍機を正面から落とすことは不可能に近く(乗員を殺傷する選択を取れる魔女は少数派だった)、結局、義勇兵の乗る航空機が決死の戦闘を行う最中に、物見遊山を決め込んだということで、魔女への世界的評価は一気に下落した。その状況の打開の手段を間違った時点で、魔女たちの公的な評価は決まったのである。陸戦魔女と空戦魔女の関係が逆転し、陸戦が花形となった時代を迎えたため、史実のような構成で空母機動部隊を編成する必要がある国は日本連邦とキングス・ユニオンのみになり、空母艦載機として第一級とされる性能水準が飛躍した事も重なり、1949年の時点では『金持ちの道楽』と見做されていたのだ。
「で、お前はその艦載機のパイロット。あたしもな。本式でパイロット訓練受けたのは、あたしとお前が最初だ。もっとも、もの好きって言われてるがな」
「ずいぶん、口調変わったね」
「環境が違うからな。アメリカの片田舎で育って、軍に入る前はレーサーだったんだ。音楽との縁はなかった。はっきり言って」
メロディは『転生先の環境は生前と違うので、プリキュアに戻るまでは音楽に縁がなかった』と明言する。
「お前も、覚醒する前は、手練だけど、名が知られていない魔女だったんだ。覚醒してからは祭り上げられたけど」
「軍隊って、ハンバーガーなの?」
「パイロットはいつ出動かかるかわからんし、手っ取り早く食えんだろ?コンビニのおにぎりなんて、1940年代の日本にはねぇし」
「あ、そっか」
「うまいメシが食えるってのが、日本人が軍隊に入る理由の一つだったって話も残ってるしな。あたしらは特別に贅沢なほうさ。普通の部隊は洋食はあんま出ないぞ」
64Fの管理する食堂は(転生/転移者の多さで)和食よりも洋食が多めの構成である。(アラモードの面々が洋食やスイーツを得意とする関係もある)扶桑で最初にバイキング形式を導入した(宮藤芳佳が産休を取ったため)部隊でもある。国際色豊かな構成であるため、その方が都合が良かったのだ。更に言えば、中華料理が完成する事なく、潰えた世界であるため、中華料理が(我々の知る形で)食べられるため、実は料理でも、連合軍一にバリエーション豊かである。
「中国が途中で滅んだから、中華料理も他の部隊じゃ出ないぞ」
「あ、それ聞いた」
「だから、あたしらがいる世界の連中が軍・民問わず、見に来るんだよ。中華料理なんて、民族自体が日本やタイと一体化したのが多いから、殆どが忘れ去られたし、資料にも残ってない」
連合軍は64Fの食堂のメニュー構成を参考にして、食堂改革をしている。とはいえ、中華料理に馴染みがない世界であるので、反対が多い。
「で、戦艦の出撃準備が号令されたから、忙しくなってるわけだ。敵も戦艦を出してくりゃ、大バンザイってわけだ」
「そう、都合よくいく?」
「海底軍艦に対抗するにゃ、同じ海底軍艦が手っ取り早い。核兵器にも耐える作りだからな。普通の戦闘機の武器じゃ、傷もつかないぜ」
「ブライアン、そっちはどうだ?」
「問題はない。これから、陣地に殴り込みかけるところだ」
「お前の商売に関係する収穫はあったか?」
「あったよ。充分にな」
若干ながら、嬉しがってるようだ。元々が臆病な性格であり、虚勢で今の無頼ぶりを取り繕っている事は、ごく親しい人物にしか知られていない。内実は意外に引っ込み思案の少女なのだ。
「潰したら、こちらから連絡を入れる。それと、敵の海底軍艦のベース艦は確定したのか?」
「確定した。イタリアの造船部に問い合わせて聞いたぞ。改リットリオ級で間違いない。だが、主砲の口径が確定しなかった。戦前の書類によれば、二、三通りのプランがあったそうだ。だから、主砲塔の写真だけじゃ、口径がわからんと返された。40cm砲じゃないかって推測もある」
「そうか。だが、撃ち合いで勝てる自信はあるんだろう?」
「こっちは世界最強の大和型だぞ?イタ公の腐れ戦艦ごときに遅れを取るかよ」
「姉貴に今度、聞いてみるか…。また連絡する」
と、ブライアンとの会話で、イタリア製兵器(1940年代)に辛辣なキュアメロディ。総合的な造船技術においては、日本のほうが上だった(装甲の冶金技術が悪いとは言われているが)からである。扶桑にしてみれば、『艦艇の更新に合わせ、艦艇用の装甲板を用意していたのに、思いっきり余ってしまった』と、その再利用先に悩むことになったのは、未来技術による装甲板(鋼鉄より圧倒的な強度を持つ)が従来技術の装甲に取って代わってしまったからである。それは戦艦の本来の想定と相反する、『敵制空権の中で戦うことが前提条件になってしまった』からである。史実の特攻作戦を散々に批判され、造船の仕方も否定された造船官の少なからずは軍と縁を切ったが、『存在まで否定されたわけではない』とし、仕事を続けた造船官も多かった。播磨型以降の新型戦艦が過剰なほど大型化したのは、彼らが『せっかく、大和型を要求どおりに小さく作ったのに、部外者から散々に文句を言われた!!』とし、空母機動部隊に完璧に追従でき、なおかつ『近代化に対応できるように、内部に余裕のある作り』を目指したからであり、艦政本部なりの意地で大和型を再設計したのが窺える。そのため、播磨型以降の扶桑戦艦は(裏の目的もあって)350~800mまでと、サイズに幅が出ていく。
「あなた達って、たしか……空軍でしょ?なんで、海軍の真似事なんて?」
「日本特有の政治事情でな。お役所の勘違いと独善で決められた枠組みがあるから、空軍が飛行機が絡む作戦の全部に絡むんだよ。おかげで、大混乱だぜ」
扶桑の高官達は空軍という存在を『陸海の航空隊の合同部隊』として見ていたため、軍種そのものを独立させる事自体が想定外であった。人員や機材もごっそり持っていかれた事(陸軍は暁部隊が、海軍は基地航空隊と陸戦隊が管轄から外された)で、海軍航空は空洞化。基地で訓練中の艦上機部隊もいたため、その扱いで更に混乱した上、機材が矢継ぎ早に更新されていくため、教育も追いつかない有様。陸海のこうした混乱を尻目に、空軍は緊急展開軍としての性格を強く帯びて整備されてきたので、人員の質は高い。
「日本のお役所連中に、ロボットの万能性が理解できるかっていうとなー。ドラえもんだって、タケコプターで飛んでるってのに。戦闘機を兼ねられるのだって、あんだがね」
キュアメロディは自身のナイトメアフレームについて、日本の財務省に嫌味を言われたらしく、相当に頭にきているようだ。ナイトメアフレームはMSより相当に小さいので、その戦闘力に疑義が呈されたが、紅蓮は最高峰のナイトメアフレームを更に改良(動力は代替物だが)した代物なので、戦闘力については、ジム系のMSを超越している。
「あれ、どういう原理?」
「反重力を応用してるから、普通の揚力は使ってないそうな。のび太曰く、2021年に試作ができて、そこから数年で出回るそうだが」
「んじゃ、あれは21世紀中の?」
「そうらしい」
タケコプターは実のところ、原理そのものは反重力理論の初期の応用例であるため、反重力の研究に端緒をつけたという、2020年代当時の技術で充分に生産できるため、ドラえもんの道具の中では、最も開発年度が古いうちの一つである。
「量産は2020年代の中頃で、21世紀中~技術後退が起きるまでの期間、広く使われるそうな」
「技術後退?」
「ドラえもんの世界は西洋諸国が技術的特異点を異常に恐れた結果、世界大戦が起こったんだ。それで、ツギハギみたいに歪な技術バランスになった事で、MSとかが使われる戦争に繋がったんだ。その裏で、ドラえもんは親友たちと一緒に、奴らと戦ったんだそうだ」
「え!?」
「仮面ライダー達が冷凍睡眠についている施設を守るためだ。それで最後は相打ちになって、時空間の狭間に消えたんだそうだ。だから、あたしらが接してるドラえもんは『それ以前のドラえもん』って事になる」
「そ、それじゃ…!?」
「お互いにそれは承知の上だ。仮面ライダー達がのび太やドラえもんにすんなり協力してくれたのは、そんな事情があるからだ。のび太もそのことで重大な選択を選んだからな……」
「それじゃ、そっちのあたしが戦い続ける選択をした理由の一つは……」
「それもそうだが、子どもたちの夢のためでもある。世の中、子供の夢を守る事は大事な事だろ?」
自分達は転生し、覚醒した時から『戦い続ける』宿命を背負わされた。それを強く示唆するキュアメロディ。
「あ、そうだ。転生して、色々な垣根を超えちまったから、お前の技を撃てるぞ、今のあたしなら」
「うぇ!?」
「お前も、私と奏のパッショナート・ハーモニーを撃てるようになってるぞ。あたしとお前で撃った事があってよ」
「なにそれーーーー!?」
と、思いっきり絶叫するのぞみB。プリキュア間の垣根を超えた合体技というのは考えていなかった上、後輩に自分の技を使われるという状況。まさに大混乱であった。