――異世界への介入は地球連邦軍に『軍の象徴としてのガンダムタイプ』の必要性を認識させ、高級量産機共々、一時の封印が嘘のように、大規模に増産した。各戦域のトップエースのみに搭乗が許されるハイエンドモデルとしてだが、比較的にシンプルな構造で、機体の増産がしやすい『RX-93』(νガンダム)タイプが(サイコミュシステム周りを省いた上で)増産された。64Fは可変機が多い都合上、リ・ガズィ・カスタムの方を受領した。Z系の最終発展型の一つであるため、TMS(可変MS)乗りに好評なのだ。デザリアム戦役では、可変MSや、VFがゲリラ戦に多用されたため、戦後にそれらは増産された。だが、ごく初期に製造された個体は老朽化が進行していたため、リ・ガズィ・カスタムなどが増産されるに至った。扶桑軍は史実の空襲の被害を鑑み、重要拠点へのTMSなどの配備を強固に押し進めた。魔女の反対がものすごかったが、史実の被害を見せることで黙らせた。自由リベリオン軍の爆撃部隊の関係者に肩身の狭い思いをさせることとなったが、楽観的であった扶桑の本土の防空意識を変えるきっかけになった。地球連邦軍は増加した扶桑の防空への危機意識を利用し、大量に余剰兵器を売りさばいた。64F主力が遠征を行っている最中のことである。M粒子が21世紀型の極大規模集積回路の機能を阻害する事が判明したため、23世紀では、量子コンピュータなどのテクノロジーが盛衰を繰り返している。21世紀型の情報社会を嫌っていたサイド3が22世紀終盤にM粒子を軍事利用し、社会そのものを1980年代以前の水準へ退化させた。だが、逆に独裁者が政権を握りやすい状態になった事が顕になり、事の重大さを理解した技術者らは必死に情報化社会の復活を目指した。それがジオン系コミュニティの衰退の理由であった。ジオン系コミュニティは結局、支配層の派閥抗争が形を変えて残り、敗北の繰り返しで次第にまとまりを失っていったわけだが、星間文明を築いていた異星人との本格的な戦争により、単なる内輪もめに過ぎないジオン系のコミュニティの衰退の流れは決定的になった――
――連邦政府直轄の機関であるはずのサナリィだが、技術的な裏取引をクロスボーン・バンガードと交わしていた事が白日の下に晒され、政府の指令で技術の全開示を命じられた。同時に上層部の全員の罷免が検討されたが、幹部であったジョブ・ジョン(元・ホワイトベースのクルー)の政治への圧力により、社長とMS開発部門のトップ、財政部門トップの辞任、これまでのサナリィ・ガンダムに『ガンダムの機体コードを与える』ということで決着を見た。それに伴い、サナリィの技術は技術開発が停滞気味であったアナハイム・エレクトロニクスに流れ、同社の中興の礎となった。ただし、サナリィ独自のマルチプル・コンストラクション・アーマー技術は『補給部品の補充の効かないゲリラ戦に向かない』、『構造が高度になりすぎて、市井の機械部品で修理出来ない』という点がクローズアップされ、機械回路そのものの進歩で衰退に向かう。こうして、MS開発の主導権は(連邦政府の意向もあり)アナハイム・エレクトロニクスに立ち還る。サナリィには皮肉なことに、アナハイム・エレクトロニクスが月に拠点を集中させていたことでMS開発と生産能力に支障を来さず、デザリアム戦役では、パルチザンへ兵器を供給した。これ以後、サナリィも規模縮小とともに月や惑星エデンに拠点を移し、それまでと逆に、MS開発部門はアナハイム・エレクトロニクスの下請けのようなポジションに堕ちていく。それが『連邦政府による罰』であった。逆にアナハイム・エレクトロニクスは野比財団が新たな支配層となり、ビスト財団に取って代わった結果、それまでより政府寄りの姿勢に変わっていくのである。――
――魔女の世界での魔女は社会的影響力は衰えたが、課される責任はそれまでと同様である事から、軍への入隊を忌避する傾向が強まり、正式な軍組織ではない『MAT』が受け皿となり、1960年代に至るまで、人的な『全盛期』を謳歌する。1947年以前に10代以上であった人々はこの勃興に不快感を顕にしており、その想いが『MATを正式な代替役とする』ことを遅らせることになる。黄金世代の魔女は数割ほどは既に市井で生活し、軍に戻らないとした者もいる。だが、軍の人的資源の不足から、やむなく復帰した魔女も多い。江藤は七勇士であったことにより、やむなく復帰した一人である。親友の北郷はプリキュアとなり、魔女とは別の責務を負ったため、彼女が担うはずの魔女としての責務は彼女が事実上、代行することになった。その分、損な役回りであり、撃墜スコアの件では、若松に積尸気冥界波を浴びせられるわ、昭和天皇には顔面蒼白で釈明をする羽目になる、当面は参謀の任務をせざるを得なくなるなどの苦難を味わっている。言わば、扶桑海事変での佐官級の魔女を代表して『罰を受けた』ようなものであった――
――この事は事変世代や『海軍リバウ三羽烏』の引退後を見越して、軍全体で集団戦闘を前提にした教育を施した事そのものが派閥抗争のもとになったことの原因であることを世界に示しているような有様であったので、その申し子となった『事変後第一世代』の魔女たちは『将官への出世の道』を自動的に絶たれる事になった。そのため、志賀のように『上から睨まれたのを覚悟の上で軍に残り、後輩のために教育畑を歩む』者、贖罪のため、最前線で『死ぬまで戦う』者、軍と縁を切り、残りの生涯を隠者のように過ごす者などに分かれた。世間はそんな派閥抗争の姿の表面だけを見て、軍を避けるようになったため、上層部は黄金世代に魔女の命運を託す他、無くなった。黄金世代は戦争の様相の変化に伴い、『1945年に15歳以上だった』という事を理由に、今後、何十年と使い倒される事になる――
――そんな派閥抗争は軍上層部の頭痛の種であるため、各世代のトップが集まる64Fは自然と、その立場を盤石にしていった。軍の魔女の各世代のトップ5級の逸材を司令部の一存で動かせる上、通常兵器の増強に理解があるからだ(彼女達自身が通常兵器を乗り回す)。魔女の問題の一つは『通常兵器は自分達の引き立て役』と認識していることだが、通常兵器が急激に発展し、空戦魔女を封殺してしまう(ミサイルなどのスタンドオフ兵器が現れ、発艦前に甲板を攻撃され、死傷する事例がダイ・アナザー・デイでは頻発した)事例が多く報告され、あのルーデルでさえ、片足を失う事態に見舞われると、史実の戦闘機がそうであるように、『ミサイルからの自衛手段』が全世界で研究されだすのである。プリキュア達の多くは『ミサイルからの自衛手段が確立されるまで、空戦魔女に代わる『戦闘の主力として用いる』とされ、太平洋戦争の防戦の屋台骨とされた――
――史実の行いで誹謗中傷を受けたのは、魔女の世界の主要国の大半であった。それに伴い、21世紀世界と関わることを避ける国も多かった。カールスラントが無政府状態に陥り、21世紀になっても、戦前の地位に戻れるか怪しいほどの大打撃を被ったからだ。その一方で、妥協と忍耐で次代の超大国としての繁栄を約束された扶桑皇国の事例もある。日独の苛烈な軍民問わずの弾圧を潜り抜け、勝ち組となった者はその後にそれぞれの国で『社会のキャスティングボード』を握り、負け組となった者は『時代が進み、子や孫の代にならない限りは上流階級には登れない』という出自のハンデを背負う羽目となった。扶桑であっても、そのような状態なのだから、リベリオン、ブリタニアやガリア、カールスラントは余計に人的意味でガタガタになったと言える。同位体の発言や失態の記録で揚げ足を取られ、窮地に陥る人間は身分を問わず、数多く存在したからだ。ロンメルやモントゴメリーがその最たる例で、二人は史実での戦略ミス、パットンは色々な行動を咎められ、危うく失脚するところであった。山本五十六も『軍略の才能なし!』と言われ、憮然としたように、史実と異なる道を歩んだ者に、史実の失敗を囁いたり、暴露して、精神的に追い込む事は反軍・反戦運動の過激派が好む手法であった。彼らの失敗は『史実で現場にいた航空隊や戦車隊の軍人の少なからずは史実と性別が反転している』事、宮藤芳佳のように、同位体と全く異なる立ち位置と立場にある例もあったことだろう。芳佳のように、『魔女の世界の命運を左右する』運命を元から背負う上、前世が『プリキュアオールスターズだった』という二重の主人公属性持ちには手をつけられない。その代わりに社会制度などを攻撃したが、扶桑は大航海時代に海洋進出を行い、比較的に古くから『東洋の大国』であったため、史実の日本帝国のように『表面上は取り繕っていても、内実は列強では下位の国家』ではないため、教育制度の刷新、軍部の統制制度の完全近代化が彼らの及ぼした最大にして唯一の影響であり、華族の廃止、皇族の縮小、民主化に伴う国号の変更などは挫折したのであった――
――ただし、試みそのものは失敗したが、華族や皇族などには充分に精神的・政治的な圧力となったのも事実であり、ノブリス・オブリージュの精神の徹底がなされ、軍務、あるいは赤十字に従事せざるを得ない皇族や華族の当主は太平洋戦争期には数多く出現していた。黒田家はその最たる例で、大名華族であったためもあり、本来の継承者であった嫡男が『自身の娘を、魔女になれなかったというだけで邪険に扱った』という不祥事の露見で廃嫡され、末端の分家出身ながら、七勇士最年少として名を馳せていた黒田那佳が本家を継承した。このスキャンダルが華族身分の廃止運動の高まりに繋がることを恐れた軍部と天皇は、彼女を『華族の自己浄化作用の表れ』として宣伝した。(黒田の両親はこの決定に伴い、思い抱いていた『娘の未来』を諦めざるを得なくなったが、黒田本家の体面のために受け入れた)。この時の混乱で、永代華族になる事が社会的に忌避されるようになったが、魔女の安定供給のためにも『華族になれる』ことを残す必要があったため、黒田家の事例を『美談』とするしか『華族の存続に大義名分を与える』手立てはなかった。魔女の世界は『民主共和制の負の側面が噴出し、ド・ゴールでさえ、貴族の持つ権威に頼るしかなかった』経緯を持つため、民主共和制が栄える必然性は薄れていた事も華族身分の存続の助けとなった。ただし、奉仕義務は課され続けるため、表立った特権は廃止されていくものの、既に慣習化していたものについては、その後も続けられていく。皇族であっても、戦線に立つ事が古くからあったお国柄だったからで、ある意味、日本よりも(戦を通してだが)平等思想が根付いていたと言える――
――扶桑はこうして、日本帝国との歴史の差異を強調することで、社会変革の外圧を躱しつつ、内部改革の大義名分として活用した。太平洋戦線は『Y委員会がフィクサー組織に成長するための必要過程』と認識され、Y委員会の躍進のおかげで(形式上も含めて)名を変えて存続できた組織は多い。枢密院もその一つ。日本国は君主制の牙城と見なし、廃止を強く求めたが、扶桑での役割は『議会の事実上の第三院』であったため、新設の元老院に役目を譲る形で入れ替わりに廃止という形が取られた。科学技術振興については、デュアルユースの存在が明らかとなり、時代とともに民需と軍需の線引が曖昧になっていく事、扶桑への内政干渉という外交問題を孕んでいたが、一部の過激派が強引に介入し、引っかき回して回ったため、結局は扶桑軍が『有能だが、大学を追放された技術者を雇用する』羽目に陥り、余計な労力を割くことになるなどの迷惑をかけた。このような独善に忍耐し、日本に貸しを作ることで、日本は次第に内部の動きを抑え込むようになった。だが、それまでに受けた傷は小さくないのも事実であるため、次世代の生え抜き魔女を一から育てるよりも、プリキュアらを即戦力として雇い、戦局に寄与してもらう選択を選んだ。その選択こそが魔女への信頼の低下の表れだった――
――キュアドリームは転生の際に素体となった『中島錦』が軍人であった都合上、扶桑軍のプロパガンダに用いられるようになった。ドリームの戦闘能力が『歴代有数の実力者』であったという偶然も大きく作用した。だが、ダイ・アナザー・デイ~デザリアム戦役では苦闘の連続であり、味方側にも『格上』がいたため、意外にポジション的には低めであった。覚醒で飛躍的に能力を引き上げたことで、スペックは以前と比較にならないほどになったが、経験が足りないとされ、ドリームはデザリアム戦役の後には、変身後の姿でいる事が増えた。強化フォームが増えたのと、ZEROとの融合による変化を確認するためでもあった。ZEROの学習能力が反映された結果、技のラーニングの精度は飛躍的に上がっており、他のプリキュアの技が完全に使用可能になったり、それ以外の戦闘技術も格段に向上していた。
――『プリキュア5の世界の夢原のぞみ』は別の自分が桁違いの力を持つ事に、コンプレックスを感じていた。かれんとこまちの一件の際は必死に抵抗したのだが、逆に、連れて行こうとする側にねじ伏せられてしまう有様だった。事情を知り、なんとか納得した矢先にシャドームーンに襲われ、手も足も出ず、仮面ライダーBLACKに救われた事、そのBLACKの危機に力になれず、今度は『BLACKRX』に助けられる。彼女はそんな凄まじい事の流れに抗える力を持たずにいた――
――基地のとある一室――
「別の私は強い。だけど……私自身は……」
「お前には可能性がある。あいつとは違う可能性がな。あいつの真似じゃない、お前だけの力を目指せ」
「響ちゃん、その可能性って……なんなの?」
「お前がたどり着く一つの可能性……そうだな、教えてやる。ドリームキュアグレースだ」
「ドリームキュアグレース……?」
シャーリーはのぞみBにドリームキュアグレースの存在を教える。Aの戦闘スペックがあまりに高い事にコンプレックスがある事を察したためか、『同じ領域に立てる』希望をもたらすことで、『前向きになってほしい』と教えた。
「こっち側のお前だって、何度も膝をついた。敵に相手とみなされない屈辱も味わったし、自分じゃどうしようもない光景も見てきたし、現実の厳しさでおかしくなりかけた。それを乗り越えた結果が、『プリキュアを超えたプリキュア』としての強さだ。お前も『一皮むける』必要がある」
「一皮……」
「こっちのお前は言わば、『プリキュアオールスターズの一人』っていう柵から解き放たれたようなものだからな。なぎささんとほのかさんありきの存在みてぇなとこあるだろ?」
「確かに……」
「マジンガーと融合することを受け入れた時点で、あいつはただの『プリキュアオールスターズの一人』じゃなくなった。それと同時に『戦い続ける』宿命を背負ったからな。あたしらもそれに付き合っていく。お前たちの未来を切り開くためにな」
「私達の……未来?」
「ああ。奴らを撃退すれば、お前らの望んだ未来は自然とやってくる。その未来を守るのが、あたしらの仕事だ。お前も気負うな。あれはお前であって、お前じゃない」
映像の中のキュアドリームが使い分けている武器はプリキュア本来のものではない。ダブルトマホークに始まり、ショルダースライサー(片手剣。二刀流で扱うのが通例)に切り替えている。元々、クリスタルフルーレで剣術を見せた事があるドリームだが、映像越しの姿は荒々しさを全面的に押し出した、二刀流の剣士だ。これはブライアンの持つ『競技者としての荒々しさ』が反映されての剣戟であった。その一方で、ドリームAが習得していた『牙突』を披露するなど、二刀流一辺倒ではない巧みさも見せた。相手はサイボーグであったり、吸血鬼化したドイツ兵。既に公的には死人であるので、加減は無用である。
「で、でも、意識しちゃうよぉ。完全に上位互換だしさ……」
のぞみBはAが自分の上位互換である事を気にしている。当たり前だが、アイテム無しで『クリスタルシュート』が撃てる上、シューティングスターのような技の最高位であろう『シャインスパーク』を持つのが相当に堪えているようである。
「シャインスパークの事は気にすんなって。ありゃな、ゲッター線を制御しなけりゃな、撃てねぇ超大技だぜ」
プリキュア・シューティングスターは『腕をクロスさせて光をまとい、自ら敵に突進して貫く』というものだが、上位の敵には通じない場合が多い。シャドームーンには『シャドーフラッシュ』でエネルギーそのものをかき消され、不発にされた。これはAとBの共通体験である。Aはゲッターエネルギーを使う『シャインスパーク』の習得で解決した。シャインスパークは超高密度のエネルギーを敵にぶつける技であるために消耗が激しく、『切り札』として用いる。そのため、見かけはより派手に見える『ストナーサンシャイン』のほうが気軽に使える技になってしまうのである。
「まぁ、ストナーサンシャインのほうが撃ちやすいから、そっちのほうがすごく見えるのはわかるぜ。ゲッターロボでも、ストナーサンシャインは『気合を込めて、ボタンを押す』だけだしな、プロセス」
「な、なにそれ~!!」
ストナーサンシャインは実のところ、意外に簡便な仕組みである。とはいえ、気合を込めてボタンを押す事が必要であるので、意外にハードルの高い側面がある。
「だから、技を使う時は『羞恥心』なんてのは捨てることだ。昭和ライダーを見てみろ」
「た、たしかに」
「これからは彼らも戦いに加わる。二号さんの事は気にすんな。彼らは不死身だからな」
「不死身って……」
「体の殆どを機械に置き換えてんから、壊れた箇所は修理すればいい。改造人間ってのは、陽と陰。双方の要素があるのさ」
改造人間は体の殆どが人工物に置き換えられている一方で、ヒトの柔軟性を活かせる利点がある。昭和ライダーは再改造で『内部の機械を定期的に改造時の技術より新しい技術で造られたモノへ置き換える』事で基礎性能を上げられるが、特訓で人工筋肉などを鍛えることでも能力が上がる。平成以降のライダーの多くがアイテムを強力なものにしてゆくのと似たようなものだ。なお、昭和ライダーの体の保守技術はライダーマンが義肢技術に応用し、医療目的で提供している。ナノマシンによる再生医療に忌避感を持つ者は大勢いるため、義肢の需要が無くなったわけではない。(なお、真田志郎の少年時代には実用化されていなかったようであり、一年戦争の後に『細胞を用いた再生医療が本格的に実用段階に入った』事が判明している)
「中には、宇宙への夢を背負って生み出された仮面ライダーだっているんだ。それで気が楽になったと、皆さんは言っていたぜ」
「いるの、そんな人」
「仮面ライダースーパー1。九番目の仮面ライダーで、歴代の改造人間の仮面ライダーで唯一、平和目的の改造だった人だ。宇宙開発のために改造されたからな」
改造人間は時として、平和目的で生み出される。その最たる例が沖一也である。改造人間も全員が戦闘用ではない。Xライダーも元来は深海開発用であったのだ。とはいえ、一から平和目的で生み出された仮面ライダー型の改造人間はスーパー1のみだ。だが、宇宙移民と地球居住者の対立が『地域国家時代の対立に取って代わっただけ』な有り様には落胆しており、彼の存在がジオン系コミュニティの『政治的正当性』を大いに揺るがしたのは言うまでもない。
「理想と現実の乖離は辛いもんだ。彼が1980年頃に夢見た未来は無く、代わりにあるのは、地球を自分で痛めつける人類の醜悪な姿だったからな。こっちのお前も、前世で『教職の理想と現実の乖離』にさんざ苦しんだらしくてな。お前には『若い時の夢を忘れないでくれ』って伝言を預かってる」
「な、なんでそんなことを…」
「教職は心を疲弊させる商売だからだ。夢に燃えてると、余計にやられる。こっちのお前もそうだったらしい。だから、どこかで折り合いをつけないと、やってられないってことだ。対応を誤れば、下手すりゃ、自主退職に持ってかれる。2010年代以降はこれだからな」
教職は世間のイメージほど優しい仕事ではない。それを知っているキュアメロディは、のぞみAが前世で精神バランスを崩した原因を明らかにする形で、Bに注意を促す。
「給料はいいけど、休日出勤当たり前、若いと、体育会系の部活を任せられちまうんだぜ?しかも、ヘマしたら保護者と教頭、校長から叩かれる。そんなことを毎日されてみろ。病んじまうからな。若いヤツは使い捨てと思ってる連中も多い。だから、こっちのお前は転生先の世界で、のんびりと教諭するつもりだったんだが……」
扶桑の学制に日本の官庁や組合が介入するのは内政干渉になる。のぞみAもそれを指摘したのだが、件の官僚からは『職業軍人風情が……』と嘲笑されたという。(結局、彼はそれらの発言が命取りになり、懲戒免職処分となったが)扶桑は師範学校の生徒の前途にも関わるとし、日本に猛抗議。日本政府が事の重大さを認識したのは、扶桑政府の猛抗議による。のぞみが『プリキュアのエース格』であった事により、文科省は追い詰められ、防衛省、外務省、厚生労働省も関わる大事となった。結局、のぞみAは『双方のために』教諭への転職を諦めるように要請され、多額の補償金、教官資格と階級の昇進と引き換えに条件を最終的に呑んだ。佐官への昇進は防衛省内部でも議論になったが、戦功を相応に立てている以上は『政治問題にしないいための必要経費』と見なした政府の判断で承認された。教官資格はそのついでで与えられた。実質はプリキュア勢の主席のような扱いである。
「だけど、色々な大人の都合で潰されて、軍隊に残った…」
「そういうことだ。つか、残らされたっていうほうが適当な表現だな。みらい、あたし、お前の三人で官僚連中と話し合いになった。連中、恐る恐ると、その案を出してきやがってな……で、なかった事にしてくれないかって言うんだぞ?ふざけてやがる」
扶桑の学校にも迷惑がかかる話だが、防衛省、厚生労働省、文部科学省、外務省の高官が頭を下げ、扶桑の学校側の事は自分達がどうにかすると明言し、のぞみの予備役編入願いは『出されなかった』ことになる代わりに、今後の人事で優遇することを約束した。その通りに、のぞみはその後すぐに少佐となった。
「あたしらを祭り上げる代わりに、最前線で戦ってくれだぞ?金は出すからってな。政治問題にしたくないからって土下座してくるんだからな、連中」
キュアメロディはドリームのその一件では、本当に堪忍袋の緒が切れそうになったらしく、段々と声色にドスが効いてきている。よほど腹に据えかねたらしい。
「お前はそんな事はないと思うが、モンペアが栄えてる時代に教職になろうってんだ。よほどの覚悟がいるぞ」
「それはわかってるよ。だけど、今くらいは夢を見させてよね」
「ああ。それはモラトリアム期の特権だからな」
キュアメロディは紅月カレンとしての経験からか、学生の内は夢を持てるが、大人になると、現実と向き合う時がやってくると明示する。のぞみBは不満気ながらも、今は夢を見たいのだと返す。来海えりか(ハートキャッチプリキュア)も世界線によっては、のぞみと似たような道を辿って教諭になるが、彼女の場合はのぞみと違い、底抜けの明るさと濃いキャラで周囲を圧倒し、教諭生活を満喫したという。のぞみAはえりかのような破天荒さを持たず、成人後は真面目に教諭生活を送っていたのだろう。故に、のぞみBのポジティブさを心配する。
――まっすぐすぎたから、純真すぎたから、お前は一つの世界で『壊れちまった』んだよ――
のぞみAの前世の顛末が悲劇的だった事を考えると、Bには同じ道を辿ってほしくない。そんな気持ちがにじみ出ているキュアメロディ。ホイップはそんな哀愁たっぷりの雰囲気のメロディにパフェを差し入れするのだった。