ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は遠征編の序章になります。


第六百二十三話「のび太とのぞみの2023年、ブライアンの妙案の序章」

――パワーアップを重ねたのぞみAだが、それは戦闘でのみ発揮されるので、普段は『現役時代よりはマシ』という程度の暮らしであった。ダイ・アナザー・デイ戦後、転生先の実家には戻れないので、のび太の誘いで野比家に居候することになり、デザリアム戦役の後も続いていた。本来はその頃に南洋に邸宅を購入していたが、太平洋戦線の開戦で入居を控えろと、防空司令部から要請があった。不本意ながらも、それに従うしかなかったので、2023年も野比家で迎えていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――2023年。しずかは調査にまた赴いていったので、男世帯に戻った野比家。ノビスケは小学四年に上がる歳になる。この頃になると、ノビスケは落ち着きを身に着け始めたが、以前に増して、スポーツに入れ込むようになった。運動神経はしずかに似たらしく、スポーツ万能に成長した。かつてのジャイアンのような理不尽な暴君ではないが、その傾向は多少はある。ジャイアンに可愛がられてるためで、ジャイアンの実子『ヤサシ』がのび太(少年期)に似た気弱な性格であったので、ジャイアンのガキ大将精神的な意味での後継者は野比家の異端児であるノビスケであったと言える――

 

 

 

 

 

 

――のび太は政府からの依頼で、裏稼業を息子が寝ている間(夜十時~朝七時)に済ませることにし、息子を寝かしつけた九時半頃に家を出た――

 

 

 

「すまないね。君に手伝ってもらうことになって」

 

「今んとこ、こういうの手伝えるの、あたしくらいだしね」

 

「でも、警察に銃の種類をすぐに特定させないためとは言っても、九九式を持ち出したの?」

 

「こういう暗殺任務、普通は時代相応のライフルでするけど、デューク東郷なんて、アサルトライフルでやってのけてる。それに、アリサカ・ライフルの類なんて、半分は忘れ去られてるんだ。警察もすぐには特定できない」

 

九九式小銃は日本連邦時代になった後は狙撃銃に転用されてきているが、それは軍隊内での動きであり、警察は把握していない。更に、21世紀になると、アリサカ・ライフル(旧軍の小銃群を指す外国での通称)は過去の遺物として忘れ去られつつあり、サバイバルゲーム愛好家、自衛官、戦史研究者でもなければ、すぐには思い当たらない。

 

「君も扱えるんだろ?」

 

「うん。あたしは入隊した時に、三八式で訓練受けた最後の世代だから、実戦に出た時に使ってたよ」

 

「その姿で見られるのはあれだから、夜にしてもらったわけ。いくら東京と言っても、今は安全や防疫上の理由とかで人払いできるから。駆け出しの頃よりは楽になったよ」

 

のび太はのぞみ(遠征の前なので、滞在中であった)を乗せて、ミニ・クーパーを運転している。モデルはイギリス製造時の最盛期のもので、大叔父から相続した遺産の一つだ。

 

「でも、律儀に九九式?狙撃には、ドイツ製を使うかと」

 

「外国産は目立つからね。それに、すぐ特定されるって。近ごろはカールスラントから流れた銃器による犯罪が増えたからねぇ」

 

「カールスラントからは武器も?」

 

「ドイツが強引に軍縮させたろ?その時に大量に武器が流れたんだ。それを日本の極道とかが買い込んで、近ごろは重犯罪が増えてきてる。いくら大戦期のものとはいえ、対人には充分だしね。魔女の世界の銃器は貫通力が史実より高い傾向があるし」

 

カールスラント軍の銃器は多くが裏に流れてしまった。日本にもかなりが流失し、犯罪に使用されている。軽武装であった日本の一般警察官では、第二次世界大戦の水準とはいえ、完全武装の人間を止めるのは困難である(史実より貫通力があるので、普通に標準的なボディアーマーを貫通する)。

 

「昔、正木っていう警察の高官がこういう事件を想定した部署をバブル期に作ったけど、2000年代くらいに、野党が金食い虫だって喚いてね。それで廃止されちゃったんだ。で、今になって、当時の装備はどこだって喚き散らしてるんだ、連中」

 

「呆れた」

 

「連中はそういうもんさ。日本の警察の上は有事には無能だから」

 

「その装備は?」

 

「殆どはインターポールの管理してた武器庫に保管されてたよ。数百年経ったけど、良好な状態だったらしい。それで、一部はシャーリーさんが使ってたよ」

 

ギガストリーマーやパイルトルネードなどの装備は極秘裏にインターポールに譲渡され、保管された。だが、いつしか忘れ去られた。それが回収され、64Fの装備になったわけだ。日本警察はそれを知らされ、当時の管理責任者の責任を追求している。なんとも呆れた話である。ギガストリーマーは1991年の時点で、天才犯罪者にコピーされるくらいに構造が解析されていたので、パイルトルネードが開発されたわけだ。

 

「ああ、あのガトリング」

 

「残ってたのは、ヒーローユニオンに渡したよ。元は彼らのだからね。だから、警察がうるさいわけ」

 

「なるほど…」

 

「この車は?」

 

「大叔父から相続したモノさ。大叔父ののび四郎は道楽者でね。かわいがってた大甥のぼくに遺してくれた大物がこれ。オヤジ達は困ってたけどね。相続した時には大人だったから、スネ夫んちのディーラーにレストアしてもらったよ」

 

 

 

のび太は往年の名車をコレクションするのも、成人後の趣味にしている。その始まりは、このミニ・クーパーであった。

 

「大叔父は子供もいなかったし、僕に車を相続させたんだろう。オヤジも財産は宛にしていなかったし」

 

のび太の大叔父は(この頃には)没している事、その遺産はクラシックカーに片足を突っ込んでいるミニ・クーパーであったことを語る。

 

「のび太くん。どうして、日本連邦はオラーシャに無関心なの?」

 

「ロシアに何度も煮え湯を飲ませられたからね、日本は。それで信用しないのさ。まぁ、モスクワ大公国時代にまで逆戻りして、細々と暮らしてもらうしかないよ。ウクライナが独立しちゃったんだ。以前のオラーシャ帝国には戻れないから、当分は零落したほうが平和だよ」

 

とはいえ、旧・反統合同盟の地域が極秘裏に支援することで、オラーシャは反・日本連邦陣営として、再建が進むが、援助側は日本連邦を牽制できればよかったためか、史実ソビエトほどの兵力を与えようとはしなかった。オラーシャの当代皇帝が人間不信になり、国政も放り投げていた事もあり、オラーシャは地域大国にも戻れず、泥沼の領土紛争で心身ともに疲弊していくのである。

 

「サーニャが聞いたら、泣くよ?」

 

「ソビエトみたいに、自国民を千万単位で殺した引き換えに、たった数十年くらいしか持たない繁栄が欲しいとは思わないと思うよ?ソ連は1945年から1950年代の終わりまでが全盛期、あとは行き詰まってたんだ。経済的にね」

 

オラーシャ系の人々はウクライナとの領土紛争に心を痛め、それに与しない魔女もかなりであった。その筆頭がサーニャであった。公には、オラーシャの分裂と時を同じくして、大尉で退役。以後はピアニストになって、各地を転々としている。それが公にされているサーニャの消息だ。

 

「まさか、カールスラントの貴族の家名と爵位を与えられて、別人として生きてるなんて、誰も思わないよなぁ。エイラには詰め寄られたけど」

 

「なんて答えた?」

 

「本人が移住を望んだから、当局を紹介したって言ったら、キレられたよ。自分がそうしたかったみたいで」

 

「でも、君なら、エイラちゃんくらいは返り討ちだろ?」

 

「伊達に、二作品の主役張ってないって。地上じゃ、軽い訓練しか積んでない代の連中と、百戦錬磨のあたしとじゃ、ね」

 

のぞみは覚醒による『経験値の増大』により、格闘センスは対人経験の不足さえ除けば、黒江達にほぼ比肩しうるレベルのものであった。その関係上、突っかかってきたエイラ・イルマタル・ユーティライネンを返り討ちにする事は『赤子の手をひねるようなもの』だ。

 

「あの子の代のスオムスはまだ訓練してたほうだってさ。それに引き換え、ブリタニアや扶桑は?」

 

「面目ない…ってのが、坂本先輩の談。『魔女は最短で三年くらいしか軍役につかないから、細かい軍事教育はしなくてよろしい』ってのが、ここ5年の主流だったんだ。やりたい奴にだけ、士官教育を……ってね。でも、ダイ・アナザー・デイを見る限り、魔女の界隈がある意味、怪異と馴れ合いしてたってのも的外れじゃない気がするね」

 

リーネや芳佳のような気質の魔女はダイ・アナザー・デイ後の世界情勢では、生きにくい世の中となってしまった。最も、その二人は別人になりきるか、人格が混ざり合うなどして、状況の変化した世界を生きようとしている。

 

「だろうね。この世界は生き残るために、マジンガーZをグレートマジンガーに、ゲッターロボをゲッターロボGに進化させたりしたが、魔女は体系だった魔法がほとんどない。せいぜい、魔法陣の違いだろ?」

 

「うん。スーパーロボットやリアルロボットみたいに『魔法体系』なんてのはなかった。せいぜい、『物好きな奴の家系がまとめた』類別が部内で言い伝えられてきただけ。本来は最長で10年しか使えない能力だったからね」

 

魔女の権威が急速に衰退したのは、体系だったものが存在していなかった故に、急激にネットワーク化される軍隊に不都合になった点も作用している。たとえば、『魔眼タイプには派生が複数ある』が、歴史上の記録にないタイプが突如として生まれる(史実の雁淵ひかりのように)場合もあるので、個人差は読めない。身内であろうとも差があるのだ。

 

「おまけに、先輩たちが言ってったけど、近代の魔女……日露戦争相当の時代以降だけど、人同士の戦争なんて、起きなくなってた。だから、ダイ・アナザー・デイの命令に従わなかった。それで、ロマーニャ陸軍はほぼ全滅だよ?あの後に責められるのは当然だよ」

 

「数十万の陸軍がその数倍以上の軍隊に捻り潰されたからね。航空支援の一つでもあれば、一矢報いられたろうに」

 

それは本当だが、陸上兵力に決定的格差があったのも事実だ。M26やM36といった『史実のドイツ軍重戦車想定』の車両がそれよりも格下の車両しかない国に襲いかかるのだから、二週間ほど持ったのは、むしろ敢闘賞ものだ。日本が慌てて『74式戦車や10式戦車』を送り込んだのは、『扶桑が16式機動戦闘車を機動戦に用いて、損害を被った』からでもある。(案の定、翌年度の調達数が大きく減らされたため。戦車の増産に踏み切ったのは、こうしたことへの対応も大きい)

 

 

「あの戦は本当、日本にも予想外の結果だったからね。ロマーニャ軍、史実より規模がちっさいのに、それがまるっきり全滅した。数十年はかかるよ?その穴埋め」

 

「M4にも、傷一つもつけられない機甲戦力しかなかったしね、奴さん。日本も、あんな有様は予想外だったみたいだ。もっと敢闘するかと思ってたんだそうで」

 

「はぁ?どこの部局?それ」

 

「防衛の背広組だね。額面上は数十万いたから、米軍相手でも、一ヶ月は持つだろうって思ってたらしい。ところが、戦闘車両の決定的格差、航空支援皆無の状況とかで、三週間にもいかないくらいで主力が全滅。地の利なんて、米軍の工作部隊にとっては、なんてことはないからね。航空支援がないんじゃ……」

 

魔女の部隊を編成上の主力にする事のリスクが認識されたのも、ダイ・アナザー・デイの戦訓であった。この失態が魔女の立場を決定的に悪化させたのである。ロマーニャはこれ以後、魔女の部隊を続々と解体。通常兵器の部隊へ改変していく。怪異が以前ほどの脅威と見なされなくなったのと、魔女への不信が同国で渦巻いたためである。シャーリーが黒江に進言し、ルッキーニを『クロエ・フォン・アインツベルン』として、合法的に国外脱出をさせたのは、ダイ・アナザー・デイでの損害が大きすぎたロマーニャで魔女の排斥論が強まり、赤ズボン隊も存続が危うい状況となったことで『同国で革命が起きる』可能性が否定できなくなったからであった。それは杞憂ではあったが、赤ズボン隊は排斥論により、1946年に解散となった他、狂ったように通常軍備の再建に狂奔するロマーニャ軍は加速度的に魔女への予算を縮小するなど、排斥論の影響は大きかった。芳佳Aとシャーリーが主導し、ロマーニャの優秀な魔女の殆どを日本連邦に招聘し、日本連邦の魔女の育成に宛てさせた。日本連邦の手練達の多くは『戦士・個人として優秀であっても、教官としての素質はない』からである。

 

 

「あの時は長島が泣いてたよ?嚮導目的が思って聞いてたのに、純然たる戦闘機に直せって言われても!って」

 

「二式の三型が向こうのエンジン前提じゃね。エンジニアは正気か?って言われるって。しかも、ライセンス生産の前から機体を作るなんて。だから、年式の新しい疾風に切り替えさせたかったのさ。ところが、外観以外は隼や鍾馗と武装が同じだった。これは由々しき事態だったのさ。でも、五式を量産したほうがコストパフォマンスが良かった。それが疾風の悲劇さ。あっという間に、ジェット機の時代だもの」

 

疾風は史実通りの武装の型式が完成した時点でダイ・アナザー・デイの終局が見えてきていた事、義勇兵からの不評が原因で量産数は伸びず、史実の鍾馗と同様の運命を辿った。とはいえ、一定期間は迎撃戦主体の部隊に配備されており、飛行実績がないわけではない。だが、史実よりも戦績が無きに等しいため、紫電改に役回りを奪われたと言える(紫電改の元々の開発目的からすれば、皮肉だが)道筋は後世、同情を集めたという。史実では、ベテランとエースであれば『P-51に対抗できた』が、それ以外のパイロットでは『どだい無理な話』であった。その事が同機の運命を決めてしまったのである。史実の64戦隊が受領していないのも、その裏付けとされた。この事は宮部大佐が代理を務めていた際、上層部にしつこく問われる原因であった。

 

「そいや、それで宮部さんが愚痴ってたっけか…。自分に機種を決める権限はなかったのに、って」

 

「史実だと、彼女の同位体が隼のままにした逸話があるからさ。だけど、君等の世界じゃ、元の隊長が健在だし、綾香さんがそういうことの全権を握ってるんだ。彼女は単なる判子押しのための代理だった。そこは彼女のツキがなかったってことさ」

 

64Fは最精鋭部隊であるので、機材は常に最新鋭のものを供給される。宮部大佐は史実にいた同位体が機種転換で保守的な選択をした記録があったので、釘を刺されたのだが、彼女はあくまで『単なる判子押し』が代理としての業務であったので、本人としては、大いに不満な査問となったという。精鋭部隊に全てを注ぎ込むドクトリンは史実の343空と64Fの成功に由来するため、宮部大佐もそこは複雑な表情であったという。

 

「ほんと、ウチの隊は一騎当千を求められんのね」

 

「ロンド・ベルの源流だからね、歴史的には。日本の悪いところといいところのごちゃ混ぜさ」

 

「お、そろそろ任地だ」

 

「今回の任務は?」

 

「ティターンズやジオン残党の手引をしてた防衛省の中堅官僚達の抹殺。Gフォースが現場の処理をしてくれる」

 

「ストレートだねぇ」

 

「この時代の銃器は足がつくから、九九式狙撃銃を使う。警察のデータベースには『九九式の施条』は記録されていないからね」

 

「え?なんで?」

 

「国内に実働状態のアリサカ・ライフルは殆どないからね。ましてや原型通りの個体は」

 

「九九式は反動が強いけど?」

 

「今(現代)の自動小銃よりは楽さ。命中精度もいいからね、扶桑の個体は」

 

扶桑の九九式小銃は史実での粗製乱造された同小銃と違い、製造精度は格段に良かった。制式小銃の座を降ろされた後は狙撃銃に転用され、その中でも製造精度が特に良い個体を入手し、狙撃銃に改造している。

 

「プリキュアになってる状態なら、目もグンと良くなるのはわかってるけど、まさか、九九式を使うなんてね…」

 

「三八式よりはマシでしょ?」

 

「新兵の頃、士官学校の先輩から銃磨きのシゴキを受けた事あってさ…。魔女の界隈もあるんだよな、ああいうシゴキ」

 

「軍隊じゃ当たり前さ。もっとも、君の素体になった子の後からは無くなったようだね」

 

「戦時を理由に、粗製乱造が進んだからなぁ。リーネなんて、格闘訓練も受けてなかったし。それがああなるとはねぇ」

 

リネット・ビショップは思いっきりの良さは芳佳よりもいいところがあるので、ビショップの名を実質的に捨てることにも躊躇しなかった。芳佳がプリキュアとして『終わりなき戦い』に飛び込んだのを静観せず、自分もそれに飛び込んだ。ただし、美遊・エーデルフェルトとして。

 

「あの子は前世以前のあれこれもあった上、君の遥かな過去生では、君の想い人だった。芳佳ちゃんのためというのが表向きの理由だけど、君のためでもあると思うよ」

 

「お互いに、色々と立場変わったもんな。昔とは。おぼろげな記憶がある分、複雑だよ」

 

「過去とは別の人生だけど、友人としてお互いに接する。別人として転生した後も、過去生の記憶がある。だからこそ、そういう付き合い方もいいんじゃない?」

 

「かもね」

 

のぞみと美遊(リネット)はお互いの過去生の一つでは『結ばれた男女』として存在していた。そして、共に戦っていた。その記憶がおぼろげにだが残っていた故か、のぞみは美遊・エーデルフェルト(リネット・ビショップ)と親しい友人関係になっている。それと別に、リーネは元々、主義主張は曲げない気質であったので、同位体である『B』が問題を起こしたと聞いたときは嘆息であった。更に、引退後も精力的に活動する自身の長姉『ウィルマ』の存在もあり、智子と黒江のBを糾弾したのだから、事態はややこしいことになった。それから数年。

 

「でも、同位体の教育にはまいったね。あの二人、信念を曲げない質じゃん?」

 

「あの子の言葉が二人の精神を蝕んだ事は見せたかい?」

 

「うん。昔に強かった人ほど、引退後に喪失感に支配されやすい。あたしも世界線によってはそうだけどね。芳佳は特別な存在な上、軍や魔女のあれこれに無知。おまけに言うことは本心からの言葉だしね、あの子。だから、余計に来るんだよな、エクスウィッチには」

 

のぞみも芳佳Bには手を焼いたらしい。だが、智子Bが憔悴してしまい、黒江Bも無気力状態に陥らせる事態になった以上は『落とし前をつけさせる』しかなかったのである。芳佳Bはその償いと称し、ワーカホリックぶりが加速してしまっている。

 

「このままじゃ、連中を帰せないからね。先輩たちの同位体のカウンセリングに目処がつくまでは面倒見るってことになったよ」

 

「それがいいよ。君の世界は『魔女の世界』として見るなら、特異な世界線だし」

 

 

のぞみAは中島錦を素体に転生してから、魔女の世界を見てきたが、黒江達が転生者として大暴れしていたため、プリキュアである自分が霞んでしまうことに拗ねた事もあったが、転生した記憶があるのを承知で生きる黒江達を見て、前向きに生きることを選んだ。それ故、現役時代と違い、キュアドリームの姿で過ごすことが多くなった(正体を明かして活動する事のメリットのほうが大きくなったのもあるが)。

 

「元は魔女だけど、似て非なる力だしなぁ、あたしら第一世代のプリキュア。それを理解させるのもコトでさ」

 

「ご苦労さん。コーヒー牛乳、飲む?」

 

「ブラックじゃないんだ」

 

「親父はチェーンスモーカーだったけど、僕は下戸で、タバコ嫌い。で、今でもブラックはダメ。微糖が限界。カミさんは紅茶党だけど、僕は仕事の関係もあってね」

 

のび太は大人になり、子持ちになった2023年(35歳)の時点でも、缶コーヒーのブラックは苦くて飲めないと、自嘲気味にぶっちゃけた。2023年の時点では壮年にさしかかる年頃だが、精神の若さなどが理由で、ダイ・アナザー・デイ(28歳)から変化はほぼない(敢えていうなら、白髪が出始めたくらいか)外見を保っている。とても、9歳の子持ちには見えない。

 

「ところで、どこにいくの?」

 

「新宿さ。お膳立ては財団の連中にやらせてある。そこで標的を消す」

 

「新宿って……。漫画みたいな話だね」

 

「メガロポリス化した都市でも有数の繁華街と、裏世界が交錯する街だからね、実際。ある意味、この世界じゃ裏世界側が肥大化しちゃったんだ。学園都市がある時点で『無くなった』ことで。だから、裏稼業ったって、実際は政府公認の治安維持活動に近い事もしてるわけだよ」

 

「それじゃ、この世界の美琴たちの消息は?」

 

「婚后光子…‥いや、キュアダイヤモンドの菱川六花ちゃんに探してもらったけど、2010年代後半からはパタリ。表立って動ける身の上じゃないから、ひっそりと生きてるんだろうけど。昔の時点の彼女たちを呼ぶことならできるけど、グンドュラさんの事があるからね」

 

 

のび太は新宿方面へ車を走らせつつ、御坂美琴たちの消息を探っていたことを話した。2010年代後半にさしかかるタイミングで『何か』に決着がついたらしく、御坂美琴は以後の公な消息を完全に絶っている。生存している事は戸籍などから予測されており、順当に加齢した場合、20代の半ばくらいだろうと思われる。最も、同位体の転生であるグンドュラが『寝た子を起こすな』という趣旨で、調査の中断を要請した事、『美琴の代わりは自分がやる』という旨の発言をした事からか、グンドュラは実質、一人二役に近い状況を望んだことになる。

 

「グンドュラさんはなんで?」

 

「国家の首班にまで祭り上げられてたし、そのストレスもあるんだろうなぁ」

 

「本当はそういうタイプじゃないからなぁ、あの人」

 

と、グンドュラは転生者ながら、あまりに重い責任を背負わされた事から、合法的に統治をNATOに任せた後ははっちゃっけたか、転生前の『御坂美琴』に近いキャラになりつつある。そのことにエーリカなどは苦笑交じりだという。

 

 

「じきにウマ娘世界との交流も始まるから、君、彼女たちになにか頼まれるかもよ?」

 

「まっさか~。縁遠い商売だよ?」

 

この時は笑い飛ばしていたが、後日に本当にナリタブライアンに持ちかけられる形で、彼女は『ウマ娘』としての生活に入り、天皇賞・春を勝ってしまうのである。人間、どこでどうなるかわからないものだ。

 

 

 

――ウマ娘世界とドラえもん世界との交流が始まる事から、トレセン学園生徒会は非公式に野比家周辺を合宿所に指定。時たま、ゴルシ主導で騒動を起こしつつも、概ねはススキヶ原は静養地であった。静養後に全盛期に戻ったように、能力値が持ち直す例が続出した事により、アグネスタキオンに濡れ衣が着せられていたが、学園の主要なウマ娘達は『波紋法』の存在を知り、現役・プロ組(ドリームトロフィー組)を問わずにそれが広がることとなる――

 

 

 

 

 

 

――のぞみはこの後、ナリタブライアンからの電話で『取引』を持ちかけられ、それに応じることになる。ブライアンは『荒行で精神を鍛えれば、無様な自分と完全に決別できるのでは?』と考えていた。また、彼女たちのイメージもあるので、のぞみは生徒会の面々やゴルシとも協議を重ねていく。その結実した結果が『入れ替わり』であった。キュアドリームとして戦うのと同時に、『ナリタブライアンがレースを走っていれば、何ら問題はない』わけだ。ブライアンなりに絞った知恵であった。現役時代と違って、運動神経抜群の体であったのも、承諾の決め手であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その頃のトレセン学園――

 

「あ、あんた……熱でもあんの?」

 

「私は本気だぞ、タイシン。だから、協力しろ。親類の好だろ」

 

「あんた、どうやって……」

 

「野比氏の持つ『とっかえバー』、あるいは『入れ替わりロープ』を使わしてもらうだけだ。私にもできたんだよ、変えたい運命とやらが」

 

「だからって、プリキュアと入れ替わるなんて」

 

「そうでもせんと、昔の自分には戻れん気がするんだ。年齢的にも、本来はピークアウトの時期にさしかかってきたからな」

 

ブライアンは精神を鍛えるためには、荒行も辞さないことをタイシンに告げる。二人とも、本来はピークアウトが起こり始める年齢になりつつあった事の自覚はある。

 

「運命を超えるには、王者に……怪物に戻る必要がある。それはあいつを救うことにもなる」

 

「まさか、あんた。サクラローレルの……」

 

「そうだ。だから、あいつを救うには、私が王座に返り咲く必要があるんだ」

 

「それって、あの子の海外遠征を引き延ばす事?あんたが勝つことで」

 

「そういう事だ」

 

ブライアンはローレルの史実での悲運を知り、『史実を超えるには、自分が今一度、玉座に戻るしかない』と結論づけていた。その報告だった。

 

「あんたはガキの頃から、そういう性格だったっけ。でも、どうすんのよ?入れ替わった方は」

 

「それを今から考えるんだよ」

 

「あんたねぇ……。一応は生徒会っしょーか」

 

「私は走りで抜擢されただけだ」

 

ブライアンは意外に基本的なことを考えていないようだった。呆れたタイシンは親類のよしみもあり、計画の立案に協力してやる。また、子供の頃、実際は何回か合っていたことを思い出したらしく、今までと違って、タイシンは乗り気であった。

 

「あ、シャカール?私だけど」

 

『アン?タイシンか?何の用だ?』

 

「うちの走りバカな従妹のデータ、取れる?」

 

『対価は安くはねーぞ?』

 

「今度のゲームのイベントのチームに呼ぶから。それでいい?」

 

『……乗った。今すぐ、副会長さましてる、お前の従妹の全盛期の頃の資料と、今回の騒動が起きる前の時点のデータを送れ。お前のトレーナーがメモリーに焼いてんだろ?』

 

「すぐに用意させる」

 

タイシンは意外なことに、テイオーと付き合う様になったものの、以前からエアシャカールとはゲーム仲間であった。その関係で、まずは新旧のデータ比較から始めようとしていた。ブライアンは意外そうな顔だが、タイシンは意外に面倒見がいいのだ。ブライアンの『入れ替わり作戦』の幕がこれから開かれるのだ。

 

 

 

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