ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第四百七十三話「決戦の序曲 3」

――高次物質化能力。想念を物質化させる力であり、未来世界でも研究の端緒についたばかりの概念であり、能力。アルター能力の別種だと考えられている。本来のそれはかなりリスクが高い能力であり、人為的に危険性を軽減させたものもあるが、それもやはり相応にリスクがあったという。だが、それは転生に伴う変容により、アルター能力に近いものに変化したようで、ティアナ・ランスターの記憶にある『オリジナルの高次物質化能力と、それを人為的に制御した乙式』の双方の利点が融合したものとなっていた。ティアナ・ランスターの前世は『鴇羽舞衣』という人物であるが、その名を持つ人物が異なる時代に一人づつ存在していたと、のび太のコレクションで確認されている。一人は21世紀初めの日本の女子高生。もう一人はその末裔である日本系の宇宙移民(ただし、地球時代の記録は多くが失われていた)。その二回の生の記憶の目覚めで、その時々の異能が融合・変化した。そうとしか言えないと、のび太は結論づけた――

 

「時空管理局への気遣いもあるから、その姿で行動してください、ティアナさん」

 

「時空管理局の籍なんて、向こうから頼まれて戻しただけだから、今となっちゃ、気にする必要ないと思うんだけど」

 

「リンディ提督の意向なんですから、そこは。昔と違って、危ないリスクが消えてるから、無茶効きますし」

 

「そりゃそうだけど…。今となっちゃ、この格好は恥ずいって」

 

ティアナはミッドチルダ動乱から数年後の時期には、既に20代の大台に乗っている。肉体的には16歳程度を保てても、精神年齢の加齢により、気恥ずかしさができていた。彼女のマイスターローブは『最強クラスの高次物質化能力者であった』時の名残りを多分に残すもので、ヒロイックなデザイン(仮面ライダーのようなベルトまである)で、のび太曰く『初代主人公の特権ですって』との事。

 

「いいじゃないですか。初代だけ見ると、後半のブチギレしか覚えられてないし、乙だと、出番少ないじゃないですか。漫画版は多くで闇落ちしてたし」

 

「~~昔の事がメディアとして存在する世界ってヤツは~~!」

 

「ブラコンでしたし、あなた」

 

「仕方ないでしょ、両親はどっちの場合でも早くに死んじゃって、身寄りが弟一人だったんだから!しかも、両方で病弱だったし……。世界線によっては、あの子がラスボスだしさ……」

 

ティアナは顔を真赤にする。前世では弟、今生では『兄』と、何故かブラコン属性に縁がある。しかし、その兄も殉職済みであり、天涯孤独の身。故に、ミッドチルダに戻る気はなかったが、元・機動六課の局員である事により、リンディ・ハラオウンの意向が働き、籍が復活させられていた。これはティアナの望むところではなかったが、執務官資格を与え、実兄の名誉回復を公式に行うとの条件を提示され、『契約の履行が確認されれば、復帰する』と回答。リンディはそれを誠実に実行し、ティアナ・ランスターを引き戻す事に成功したが、流石に『空戦の才能無し』と判定されていたのが、扶桑の訓練で『才能が開花した』のは時空管理局の人材育成能力に疑問符をつけてしまうため、『マイスター乙HIME/鴇羽舞衣』として活動してくれと、時空管理局から通達が来たと、のび太は伝える。

 

「なのはさんの弟子だったのも不味いんでしょ。前世にいた『似た声の仲間の先生』のほうが気楽に付き合えたなぁ、こうなると」

 

「杉浦碧って人でしょ。まぁ、日本人だった時期は『子供の頃のなのはちゃんがそのまま大きくなったみたいに、ノリの良い人でしたからねぇ」

 

「なのはさん、仕事での関係をうまく築けてない節があったからなぁ。今となっちゃ、こっちがヨイショしてあげる必要のある上司だったって感じるわ。エアル(前世の一つである、宇宙移民時代における彼女の生きた移民星。世界線にもよるが、荒廃した後に偽りの歴史で事実を隠蔽した地球そのものだったりする)で生きてた頃は接点なかったけど、日本で生きてた頃の碧ちゃんは……面白い人だった。それは事実。やたらと17歳を強調してたから、おかしいとは思ってたけど、なのはさんと違って、接しやすい人だった。先生になったのは驚いたけどね」

 

なのはは個人技で成り上がったので、指揮官としての才覚には乏しい。のび太が引き合いに出した『杉浦碧』という人物は『強さは中程度であるが、指示役として適任だった』。おそらくはなのはの同位体の一人だろう。その推測からか、『個人としての力は尊敬に値するが、部隊の上官にはしたくない』と、かつての上官であるなのはに辛辣な評価を述べた。半分くらいは本当なので、のび太も苦笑混じりだ。

 

「ケイさんはどうなの?」

 

「ちゃんと上層部と渡り合って、物資を確保してたもの。なのはさん、戦闘要員か、あたしらのシゴキ要員としては働いてたけど、上層部との折衝ははやてさん任せだったし、おまけに、自分の書類仕事は副隊長に押し付けてたの何回かあったし。うち(64F)みたいに、事務処理専門の要員が配置されてるわけでもなかったのに」

 

圭子は意外な事に、ガサツな戦闘狂で、銃狂いとなった『今生』でも、事務処理技能に衰えは無く、七勇士の中でも、トップ3に入る腕前である。口調や振る舞いを使い分けも可能であるため、物質の確保の手腕は1945年時点ではグンドュラ・ラルに次ぐ。(事変世代では、文句なしにトップ2に入る)また、腹心の部下として、金子という主計科の中尉がおり、彼が参謀本部の内情を知っていたため、その情報を活用していた。彼はその後、64Fの主計の責任者になり、中佐に特進。その彼の事務処理能力を見たせいか、なのはの難点が余計にわかるらしい。

 

「あの子は実家のケーキ屋も姉さんが継ぐから、気楽に育てられたってのもあるから、かもね。兄貴は父親の武道を継ぐし」

 

「そのせいかしら?何かのタガが外れると、突っ走るのは」

 

「忘れた頃に生まれた末っ子だから、周囲に可愛がられて育ったってのもあるかもね。気楽な立場だけど、親が死んだ時に相続で揉めやすいんだよな。二人以上の兄弟がいると。うちは長子相続の風習が残ってたから、そういうのなかったから。ぼくの代も兄弟がいないし。そういうの嫌って、ミッドチルダに越したんだろうけど」

 

なのははそれを見越して、生活地盤をミッドチルダに築いたが、生来の気質のせいで失敗し、今や窓際族である。元部下にも、『自業自得なところがある』と見られるあたり、一戦士としては素晴らしいが、集団の統率者には向いていないというのが、関係者の統一された見解であるのがわかる。

 

「で、どうなんです?訓練は」

 

「ローブで防御力上げてるったって、脳天割やら、電気ショックは勘弁よ。おまけに本気で来るから、平気でビルの二、三個はぶちぬいちゃうし」

 

「昭和ライダーは放電能力を多少なりとも持ってますからね。ある程度は耐性つけないと」

 

「持ってないのはRXくらいでしょ?」

 

「ゼクロスまでは全員が強弱があれど、内部のダイナモの電力を応用しての放電能力を持ってますからね」

 

「なにかある?」

 

「今日は真美さんが炊飯の担当なんで、おにぎりありますよ」

 

「真美さん、料理上手いのよねぇ」

 

稲垣真美は実家が森蘭丸の系譜に位置するため、れっきとした華族である(子爵)。そのため、ノーブルウィッチーズの候補者であった。(英語やイタリア語を元から解するため)。なお、彼女は長子ではないために、本来は家の継承権はなかったが、黒田家の一件以降は華族の間でのパニックもあり、『跡取り』と扱われている。(実際に、1950年代に実家を継ぐ)

 

「華族の連中、那佳さんちの一件からというものの、軍人になってる息女に継がせる事が増えてるのよね。あれって、どういう事?」

 

「華族は日本からは『旧支配階級の温存』って見做されてますから、血の献身をしてみせないとって怯えてるんです。元から反発される立場だったから、フランスみたいな事になるのを怖がってるんですよ」

 

華族は日本では『元の支配階級だったという名誉だけは残ったが、華族の身分と資産を奪われ、周囲に世間知らずと罵られる立場』であったため、戦前の立場に郷愁を覚え、扶桑での同位の一族に養ってもらうことで、扶桑で若き日の暮らしを取り戻そうとする元・華族が増加した。史実で絶家した家系も扶桑では存続しているためだ。日本では『扶桑の華族は存続を認めてやるが、門閥華族(公家と大名系)のみを華族とし、実権を伴わない名誉階級にするべし。それ以外の者達(軍人や財界の名士、技術者など)には叙爵以外の方法で名誉を与えるべきだ!』という意見が強いが、それは『内政干渉』であるし、扶桑では身分を問わず、『魔女として覚醒すれば、皇族であろうが、必ず戦陣に立つ』宿命であった事、叙爵が魔女出身の軍人とその一族へ与えられる最高名誉を兼ねている実情がある。つまり、魔女の軍への安定供給のための地盤だったのだ。それが知れ渡ると、日本の反扶桑華族論は塩を引くように萎んでいった。日本の華族と違い、血の献身が求められる側面を持っていた上、魔女という人種が世間から迫害されないための国家の与える箔であったからだ。とは言え、勲功華族は門閥華族から蔑まれる立場であるため、多くの場合は『国家に冠たる勲功を出した軍人、あるいは革命級の発明を出した科学者、国家財政を担うほどの財界の名士』が選ばれていた。日本との接触により、門閥出身者が逆に弑逆されるか、社会から排除される可能性が増したため、『開明的で、平民へ理解があり、名誉ある職についている』者が本家の嫡男(多くの場合は先祖代々の地位に泥酔する学者肌の人物だった)に代わり、次期当主となるケースが増大していた。那佳や真美のケースは、その流れを決定づけたと言える。

 

「だから、あの二人は人身御供のようなもんですよ。扶桑の華族制度の存続のための、ね」

 

「でも、内政干渉よ?」

 

「華族に反対してる人は、扶桑にも意外に多いですよ。だから、これからは軍人や赤十字の経験がそれなりにないと、家柄だけの無能ってレッテルを貼られると思いますよ、連中」

 

華族制度は近代以降の魔女の社会的名誉を担ってきた側面があったので、学園都市の能力者をモルモット扱いしていた『後ろめたい経緯』を持つ日本としては、『社会的庇護を失った魔女たちを人体実験の対象にしない』保障はできない状況にあった。従って、華族制度は(オラーシャでの虐殺もあり)魔女の社会的保護も兼ねている以上は制度の廃止の必要はない。魔女という異能の保護に関する華族制に代わる『代案』を日本は考えつかなかったからだ。とはいえ、平民を見下す者は古今東西の貴族出身者には多いので、それが顰蹙を買う根本的理由であった。のび太らの予測通りに、扶桑で新規の永代華族は(世間的な忌避感の増加もあり)減っていくが、一代華族は時代とともに逆に増加。外国でいう騎士爵位がこの時代以降の叙爵の主流になっていく。新規に永代華族となった例は黒江、穴拭、加東の三家へのそれが実質的に最後となった。

 

「あ、それと、パットン将軍が決戦を号令しました」

 

「はぁ!?まだ、全部の準備が整ってないってのに!?」

 

「政治が絡んでるんでしょうね。彼を更迭しようっていう声は多いですから、彼としても、手柄が欲しいんでしょう」

 

「アンタの手配した補給は?」

 

「機材の調整込みで、明日にはスネ夫が直接、届けに来ます。あなたにも参戦の指令が出てます。皆に事情は説明してあります」

 

「手際いいわね」

 

「大人になったら、そうでないと、おまんまの食い上げですからね」

 

のび太は青年期以降に手際の良さを見せるようになっていた。両親から受け継いだ美点が成長で開花したのだ。

 

「あなたの身分証明書は新しく作り直しました。諜報部の人間という事になります」

 

「いいの?」

 

「連合軍は諜報分野のノウハウが不足してますから、あなたのような人は大歓迎なんですよ。ケイさんも『レベッカ・リー』名義の軍籍を別に持ってるし」

 

ティアナは執務官(後に、最後の執務官と呼ばれるようになる)に任ぜられた最後の局員であり、現状ではフェイトと並び、独自判断で調査ができる人員である。執務官の職務が廃されたので、それ以前に任ぜられていた者のみが職務を続けられるが、大半が内勤となっているため、この二人のみが従来の意味での執務官としての任務の遂行を実質的に認められているといっていい。

 

「やれやれ。史実みたいなスパイ合戦はしたことないんだったわね、魔女の世界」

 

「そういうこと。今更、マタ・ハリじゃないと、日米は思ってるけど、魔女の世界はそういう次元の話だから」

 

「古今東西のノウハウがある地球連邦が時空管理局を手中に収められたのも?」

 

「そう。そのノウハウのおかげ。M動乱で失態を見せたってのを、地球連邦は大いに活用した。管理局も下手に暴露されて、秩序の番人って建前を失いたくはなかった。だから、地球連邦の一部局になる事も表向きは伏せてるんです」

 

ティアナはのび太の少年期に面識があるため、成人後ののび太が『近しい関係』ながら、敬語で接する珍しい例となっていた。

 

「今、廻天の出撃準備も始まってます。今は弾薬の搬入中のはずですね」

 

「51cm砲弾は波動カートリッジ弾を?」

 

「コスモ三式弾と零式通常弾も積みますから、かなり大がかりな作業ですね。インペロと一戦交えるのは確実ですし」

 

「敵はどんなMSを?」

 

「ジオンやティターンズ、エグムの連中が持ち出したエゥーゴの奴ですね」

 

「エグム?」

 

「旧ジオン系のエゥーゴの構成員がテロリスト化した反連邦組織。旧ダイクン派の連中ですね。リックディアスやネモはそいつらが持ってきたものです。ハイザックよりよほど強いんで、こっちも現用機で対応してます」

 

「元は味方同士なのに、目的を違えたくらいで、同士討ちか……」

 

「いや、エグムの連中にとっては、元から、ティターンズを滅ぼした後は連邦そのものを倒して、ジオン共和国に地球を支配させる気だったかもしれません。ジオン残党と同じ穴の狢ですよ、連中は。だから、組織に与した」

 

反連邦組織の多くは既に、その多くが斜陽を迎えていた。明確に地球人類が一つの人種としてのアイデンティティを確立したからだろう。そのため、アイデンティティの維持のために、組織に与したのであろう。

 

「奴らはなんなの?」

 

「日本神話の神……そうですね。スサノオノミコトと呼ばれていた存在が作り出したものです。手足となる一国を作り出した上で。それがナチス・ドイツだった」

 

組織の大本はナチス・ドイツであり、それに与していた枢軸国軍の残党などを取り込んで生まれたのがバダンである。枢軸国軍の残党は次元世界各地に散らばり、そのうちの一派がベルカや時空管理局の大元を作った。そう考えれば、ミッドチルダやベルカが地球の言語を使っていたのか。その謎も自然と解ける。

 

「うーん。あたしも二、三回は闇落ちしたような記憶はあるけど、スケールがダンチね」

 

「まぁ、その姿は漫画版じゃ見せてませんからね。アニメ版寄りの世界からの転生って、よく分かりますよ」

 

「そっか…。漫画版だと、あたし(この場合は鴇羽舞衣のこと)は乙HIMEじゃない場合が多いのね」

 

「ええ。変わらないのは、あなたがカグツチを使役してた時代に、アリカ・ユメミヤやその母親のレナ・セイヤーズの祖先らしき人物が中等部にいたことくらいですかね」

 

「え!?」

 

「ええ。直接の祖先じゃなさそうですが。アリッサ・シアーズが祖らしいんで、レナ・セイヤーズの、ね」

 

「あの子が……レナさんの……アリカちゃんの……先祖?嘘……」

 

「深優・グリーア。いや。ミユというアンドロイドがレナ・セイヤーズやアリカ・ユメミヤの行く末を見守っていたのは、彼女らが主人の遠い子孫だからなんですよ」

 

「嘘でしょ!?地球の21世紀から……惑星エアルに移民の文明が根付いて、地球時代の記憶が薄れるくらいの年月ってったら……数千年の月日は最低でも……」

 

「ええ。ですが、彼女は同一の存在ですよ」

 

「どうやって!?アンドロイドったって……誰がメンテを…!?」

 

前世で知り合いであった人物が実は、『地球で女子高生であった頃に戦ったアンドロイド』と同一個体であり、その時の主人の一族を数千年は守っていたという事実はかなりの衝撃であるティアナ。深優・グリーア(ミユ)が数千年もの間、往時の記憶、体の中の機械部品をどうして維持していたのか?それは明らかではない。

 

「あなたが鴇羽舞衣としての記憶を取り戻した事はなにかが起こる前触れかもしれない。もしかしたら……」

 

「も、もしかしたらって……な、何よ!?はぐらかしてないで……!」

 

そこまでのび太がいいかけた時、基地の中へ急報を知らせる放送が響き渡った。

 

『インペロが出撃した!!繰り返す、インペロが出撃した!廻天の艤装作業員は作業を急げ!!』

 

「やはり来たな……」

 

「敵の海底軍艦ってこと!?」

 

「ええ。かつてのイタリア王国海軍の忘れ形見である改リットリオ級一番艦である海底軍艦。ついにその姿を見せるか……」

 

 

 

――プリキュア5の世界のどこかで、その海底軍艦が威風堂々たる威容を浮上させる。かつてのリットリオ級戦艦の姿をまさしく受け継いでおり、王制時代のイタリア海軍の軍艦旗が堂々と翻る。独自の妨害装置などでアメリカの衛星監視網や海自・海保の監視網にひっかかることはない(普通は)。だが、偶然にも、近くを飛行していた自衛隊の哨戒機の目視までは誤魔化せず、その彼らが防衛省(2008年当時は省への昇格から間もない時代である)へ通報。別の哨戒機も捕捉した事により、(関係省庁の意向もあり)付近を航行していた、海保のはてるま型巡視船(当時に最新鋭の巡視船)が臨検を試みようと、インペロに近づいたのだが……――

 

「大元帥、海保の巡視船が近づいて来ております」

 

「ふん。海保だと。この海底軍艦に近づこうとなど……愚かな。追い払え。至近弾の一発や二発程度も浴びれば、連中は萎縮する」

 

「ハッ」

 

インペロの威容はまさしく、往時の戦艦のそれであった。巡視船は(当然ながら)武装の数々が『本物』かどうかという考えがなかった。どこかの映画会社のこさえた『自走可能な映画撮影用のハリボテ船』だと考えていた。だが……。

 

「不審船が……は、発砲!!」

 

「発砲だと!?バカな、世界のどこにも、実働状態の戦艦クラスの大砲など…!?」

 

その直後、彼らは船ごと、もみくちゃにされる。至近に『50口径38.1cm三連装砲』の砲弾が着弾したからだ。あまりの衝撃で、1700トン(大戦中の駆逐艦クラスと同等)の排水量しかない、はてるま型巡視船(2008年当時は最新鋭の巡視船であった)は大きく揺さぶられ、更に55口径15.2cm三連装砲の一発がヘリコプター甲板に着弾。艦後部を大きく損傷し、航行が困難に陥る。巡視船は不審船事件以降には『耐弾性』を意識していたが、大戦中の軽巡洋艦クラスに相当する口径の艦砲の被弾は想定を超えていた。威嚇で放たれたものが偶然にも当たっただけだが、流石に『1936年型15.2cm(55口径)速射砲。軍艦でないにしろ、大戦中の駆逐艦相当の体躯を持つ巡視船に一発で航行不能に近い損傷を与えるだけの火力を有していた。

 

「海保の『小魚』は沈黙したか?」

 

「偶然、ヘリ甲板で副砲弾が炸裂した模様。連中には任務ご苦労といいたいですな」

 

インペロの艦橋で指揮を執るは、デルザー軍団のマシーン大元帥。彼は余裕の表情である。巡視船など、海底軍艦に比べれば、クジラとイワシのようなものだからだ。

 

「小うるさい空自が来る前に離水だ」

 

「ハッ」

 

号令とともにインペロの船体下部に設けられた姿勢制御用のスラスターが点火され、インペロの巨体を宙に浮かせる。そしてメインノズルに点火され、独特のエンジン音を轟かしながら、飛行に入る。それはまさしく、波動エンジンのエンジン音であった…。

 

 

 

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