――扶桑は結局、内部のゴタゴタを理由に、若手士官の多くを追放された。魔女であっても、だ。志賀のような昔気質の人物は多く、それが海軍航空隊の政治的立場を悪化させた。ダイ・アナザー・デイの激戦を知らぬ『国内勤務組』が事態を悪化させたため、事変後第一世代の魔女は特に疎んじられた。太平洋戦線では懲罰的に戦線に投入され、多くが戦陣に散っていった。折しも、軍備が近代化していく嵐の時代に突入した事もあり、ダイ・アナザー・デイ以前に国内勤務であった魔女たちは近代兵器の洗礼を浴び、次々と戦死。その副作用で、その世代に確認されていた秘伝の多くが失伝。その代替の扱いがプリキュア達の活用であった――
――陸海の若手~働き盛りの年齢の軍人の多くが左遷させられたため、今度は現場の練度低下が顕著に表れ、任務の多くを義勇兵に頼るという問題が発生。魔女兵科ではそれが特に強く発現した。1945年次に中佐~大尉であった若手~働き盛りの年齢層の魔女たちが左遷、あるいは軍籍剥奪をされた結果、残った魔女の少なからずが『戦いに向いてない特性の魔女である』事もあり、魔女の飛行隊であった部隊が通常兵器の飛行隊に改組される事例も続発。需要の低下で在籍人数自体が減ったため、飛行学校の教諭であった魔女が前線配置になるケースが当たり前となった。育成に熟練者のリソースを割くよりも、最前線にリソースをつぎ込む。国力の劣る国がしがちな選択だが、熟練者を櫛の歯が欠けるように失った経験を持つ日本は扶桑の分散配置を批判。集中配置による『安定した戦果』を志向し、新人育成を大きく縮小させた。これは魔女が政治に興味を持つことを防ぎ、政権へのクーデターをさせないための施策でもあったが、今度は部隊間の交流が乏しくなるという実務上の問題が発生し、思うような結果にならない有様。日本連邦の軍部と政府による64F頼りの状態の解消の試みは結局、現場の陸海軍時代の縄張り意識の継続で挫折する事になった。結局、『お互いに横のつながりがある程度はないと、何もかも回らない』ことを証明するだけに終わった。これが『司令部直轄の精鋭部隊』の増設に繋がり、軍に残留する精鋭の大半はこの時期、最前線で戦う事が自らの存在意義の証明代わりとなっていた――
――ティアナ・ランスターの覚醒に伴い、発現した『高次物質化能力』は強力だが、本来は多くのデメリットがあり、元の世界では古くから確認されていたらしく、対抗手段も確立されていたという。だが、ティアナの持ったそれは変質を経たためか、アルター能力に近くなっており、のび太の知る『デメリット』の多くが消失していた――
「でも、ティアさん。その姿で戦うと、名誉挽回になりますよ?」
「まぁ、出番少なかったしねぇ。でも、普通にHIMEより強そうな人、ごまんといるじゃないの」
「そりゃ、東方不敗マスターアジアしかり、その弟子のドモン・カッシュしかり、竜馬さん、隼人さんしかり。生身での戦闘力が人外の域に達してる人たちからすれば、多少の異能なんて、誤差の範囲ですよ」
「そう考えると、前世での学園で『乙HIME』になれただけで喜んでた子らがかわいそうになってくるわ」
「レナ・セイヤーズがそうだったように、かつてのHIMEの直系子孫は基本的に、乙HIMEとしても強力な力を得られますから。それに乙式はオリジナルには及ばない」
「『ミコト』のことでしょ?あの子、あの時代でも、オリジナルの高次物質化能力持ってたのよね…」
「そうです。ですが、今のあなたなら、カグツチをその姿で呼べると思いますよ」
「……チートって言われない?」
「なーに、ドモン・カッシュさんみたいに、鉄筋コンクリート造のビルを丸ごと蹴り出せたりするのに比べれば、チャイルドなんて……。それに、のぞみちゃんは草薙流古武術を使えるんですよ?」
「そりゃそうか。カグツチ呼ぶと、キャロのお株を奪う形になるから、ちょっと後ろめたいなぁ」
元・同僚のキャロ・ル・ルシエのことを思い出すティアナ。ミッドチルダ動乱の際にフェイトが原隊に復帰させ、戦闘に関わらせなかった事、動乱の後は完全に自然保護隊が別部署化したこともあり、ティアナはエリオとキャロには久しく会っていないらしい。
「まぁ、たとえヴォルテールをあの場でキャロちゃんが呼んだとしても、近代兵器の雨あられにねじ伏せられるのがオチのような気もするしなぁ」
「確かに」
「グフタフやドーラを撃たれたら、いくら召喚竜でも、ワンパンだしなぁ」
「あれを持ち出される展開だったら、キャロがショックに陥るのは間違いないだろうし、あれで良かったのかも……」
フェイトはエリオとキャロを予め、隊から離した状態でM動乱を迎え、以後、二人は戦いに関わっていない。スバルとティアナはそれぞれ別の道を辿ったが、戦いを続けている。エリオとキャロは苛烈な戦闘に『精神的に耐えられないだろう』という判断によるもので、機動六課が自然と解散状態となったためもあり、機動六課の主要メンバーのうち、比較的に年長であった二人は別の道を辿りつつも、同じ目的で動いているのである。
「あなたも今後は忙しくなりますよ?」
「それは覚悟してるわ。この状態でクロスミラージュは使えるのよね?」
「使えますよ。肉体の容姿が変わってるだけですからね」
「元々、なのはさんにマルチタスクを覚えろって言われてたから、助かるわ。でも、前世での友達と被るわね、属性」
「ああ、久我なつき(子孫はナツキ=クルーガー)さん」
「そそ。あの子、地球でも、エアルでも、どこかヌケてたから。見かけはカッコいい系だから、人気あったけど」
「本人が聞いたら、憤慨もんですよ?」
「戦友だったから、そこは許してくれるでしょ」
転生者は前世で持っていた技能と、転生先で覚えた技能を組み合わせる事で、戦術の幅が広いのが強みである。のぞみの場合はプリキュア化能力と草薙流古武術、空中元素固定、光子力、ゲッター線の制御技能。ティアナの場合は高次物質化能力(パワーアップ)と魔力になる。
「でも、敵の海底軍艦とどうドンパチすんの?」
「単純明快、空中で砲撃戦ですよ。最後はドリルで串刺しにして、ね。」
「敵がここに来るまでには、半日から一日くらいはあるでしょう。海保や自衛隊に見つかってくれれば、もうちょっと時間が稼げます。彼らに見つかるだろうから、多分、多少はダメージを負うでしょうし」
インペロはその通りに、海保と海自に追尾されていたが、海保は新鋭の船を損傷させられたことで面子にこだわったが、連絡を受けた他の船がついた時には、既にインペロの姿はなかった。空自が再度の捕捉に成功したが、戦艦大の物体が飛行するという『SFじみた光景』に困惑。手をこまねく間に、関東地方に侵入されるという失態を犯す。『旧イタリア王国海軍最強の戦艦が空を飛んでいます』という報告など、誰も信じないからだ。その猶予時間の間に、出撃準備を進める廻天号。
「しかし、扶桑もよく資材を確保したわね」
「陸奥以前の旧式を処分したり、記念艦として売っぱらったことで得られた資金で未来世界から資材を購入して作ったんですよ。上部構造物のデザインは大和型のそれを流用して、ね。その方が日本の当局も納得するし。魔女界隈がダイ・アナザー・デイで発言力下がった上、史実のあ号作戦の結果で、航空決戦閥もばつが悪い感じになってるから通ったと、山本提督は言ってますよ」
山本五十六は空母重視派であったが、井上成美とは空軍化施策で対立していた。井上成美は基地航空隊の充実で空母を補えると考えていたが、日本連邦化後に『井上閣下、あなたは学者ですな』と言われ、史実のあ号作戦に至るまでの航空隊の失態を見せられ、顔色を失い、伊吹のような『艦として生まれることも許されなかった』存在が生じた事を突きつけられ、彼は提督としての面目を一夜で失った。既に中将であった事から、空軍へなし崩し的に移籍をする事になった。空母を懸命に作っても、基地航空隊を揃えても、圧倒的物量に潰された結末は海軍航空の面目丸つぶれも同然の結果だからだった。そのため、空軍独立後の海軍航空は空母航空隊のみが残されたが、人的に空洞化していたため、元・艦上機部隊に旧任務の継続を命ずるというグダグダぶりである。海底軍艦はその政争で旧来の軍閥が失墜した隙を突く形で建造されたと言っていい。
「扶桑は将来的に51cm砲をカールスラントの技術で作ろうとしてたけど、在来技術じゃ、砲身命数の問題が解決出来なかった。46cm砲の時点で200発だったから、51cm砲じゃ、もっと短くなるのは目に見えてますからね。だから、ショックカノン砲塔に飛びついた。怪異に対応できますからね、たとえ、デュアルコアであろうが、問答無用で撃ち抜けるし」
「それで、ショックカノンを輸入したのね」
廻天号の51cm砲は宇宙戦艦ヤマト(アース)の砲塔と同規格で造られたため、実体弾とエネルギー砲を兼用できる。装甲も硬化テクタイト板の改良タイプであるため、すこぶる頑丈である。怪異への切り札として。
「ところで、あたしの事は黒江さんに?」
「めっちゃ、乾いた笑いしてましたよ」
「でしょーね。アルター能力とかの類の『サンライズ系の異能』だもの」
「東映系が多かったから。まぁ、なのはちゃん、アルター能力持ちだから、これで二例目かな。いや、サムライトルーパー入れると、三つ目だな」
「黒江さんも相当に好きにしてない?」
「数年前の戦いの時は、ドリームの姿で試作のGアームライザーを纏って、ソードトマホークを振り回してましたから。まぁ、あの人は状況を楽しむタイプですからねぇ」
黒江は『終わりよければ全てよし』の思考であるので、状況がこんがらがる事に定評ができていた。現在取っている肉体の容姿も本来のものではないので、余計にややこしい。ただし、声については生来のものである。調と偶然にも、声が瓜二つな事がシンフォギア世界の騒動の原因であったが、本人曰く、『今の声色はガキの頃の声なんだよ、本当は。軍隊で喉潰したはずだからな』との事。黒江はプリキュアプロジェクトを立ち上げた張本人でもあるので、のぞみと入れ替わり、数回ほどは好き勝手に暴れ回り、その内の数回はキュアマリンとキュアフローラから伝えられ、のぞみ本人がずっこける羽目になっていた。また、それを聞いたウマ娘たちもその手を使うことで、通達の穴を突き、ススキヶ原を守っているので、入れかえロープはウマ娘たちと黒江が最も使用していた。
「あ、なのはさんには伝えてないんだけど」
「なんです?」
「なのはさんとスバルがあんたたちと一緒に戦った戦役…えーと、メカトピア戦役だっけ?のすぐ後くらいに起こった事件で生まれた、なのはさんのコピー体……どうも、あたしと同じ能力……多分、乙のついてないほうだと思う……にも目覚めたらしく、ミッドチルダに来るそうで」
「シュテル・ザ・デストラクターが?たしか、キュアアムールに覚醒したと聞いてたから……多分、杉浦碧さんの生まれ変わりでもあったのかも?」
「なのはさんはあまり関係ないアルター能力だしねぇ」
「心を読む能力じゃなくて良かったとは言ってますけどね」
「あ、碧ちゃんの生まれ変わりだとしたら……あのチャイルドを呼べるはずよ!」
「えーと、愕天王。漫画版の要素があるなら、人型になれますね。多分、なのはちゃん本人もその要素入ってきてたから、闇の書がそのところをコピーしたのが表れたかも」
「基本は、エアルでのテロ組織の首領としてのほうが近いかも?シュテルの性格の基本を考えると」
「色々、なのはさん本人と関係ないところで属性盛々ねぇ」
「あなたのこと聞いたら、なのはちゃん、ひっくり返りますよ。泡吹きますって」
「否定はしないわ…。おまけに、はやてさんがこの胸のことを知ったら……」
「あの子、スキンシップはキャラ変わってもしてますからねぇ」
ティアナは容姿を前世での『鴇羽舞衣』としてのものに変えているので、神隼人の言葉を借りるなら、『とびっきりのボイン』である。その事は容易に想像がつく。
「はやてちゃん、近頃はあかいあくまだから、ヴィータちゃんが怖がってるって知ってます?」
「聞いてるわ。スバルが知らせてきたから。まぁ、機動六課のスターズ小隊のうち、エリオとキャロ、副隊長以外は基本世界とキャラ違うから、今更か」
ティアナ自身も本来の流れと違う道を辿った上、前世の記憶の覚醒で『捻くれてしまっていた』面が消え、割に大らかになっていた。HIME同士で殺し合いをしあった凄惨な記憶、乙HIMEとしての紆余曲折、転生後のアフリカ戦線を思えば、基本世界での出来事は些細なことだ。
「基本世界の事は?」
「あの事についてはなんとも。あたしにも非はあるし、なのはさんも口下手すぎたから。今となっちゃ、些細なことよ。キュアメロディは気にし過ぎなのよ。あの子、あんたに愚痴りまくってるそうじゃない?」
「前世でリフレイン(自白剤)を盛られそうになったり、信じてた友達に利用されたり、蚊帳の外にされた上、気がついたら、二度と会えなくなってましたから。聞いてやって、はけ口を用意してやるのも、一つの療法ですよ」
「あんた、精神科医でも目指してんの?」
「29くらいん時、カウンセラーの資格を取ったんですよ、カミさんに薦められて。のぞみちゃんやシャーリーさんは前世で相当に波乱万丈すぎた上、はけ口がなかったようだから。それに、ぼく自身、オヤジやおふくろにひどく叱られた時は、タイムマシンで『ばーさまの生きてた頃』にいってましたから」
のび太自身、親に理不尽に叱られた事も多く、耐えられない時はタイムマシンで『死んだ祖母(父方の祖母。のび太が生涯で最も慕った親類縁者である)に会いに行くという事も多かったので、シャーリーやのぞみが『引き継いでしまった闇』を理解し、吐き出させる役目を担っている。ことはや調との生活の経験で得られた知見であり、のび太は成人と共に、友人らにとっての『ドラえもんの立場』になっていたのだ。
「せがれには寂しい思いさせてるのはわかってますけど、世界の平和を守るのも、僕の仕事のうち。それが統合戦争で仮面ライダー達を守ったドラえもんへの手向けになるんじゃないかって思ってます」
のび太は裏の仕事をする理由を『ドラえもんへの手向け』としている。統合戦争で仮面ライダーらの眠る施設を守り、人知れず消えていった。セワシは生涯の大半を『タイムマシン技術の復興』に提げ、デザリアム戦役の最中に没した。ワンマンのビジネスマンと、子や孫に評されるような振る舞いをしていたが、根底には野比家の歴代の男児共有の人の良さがあったように、のび太は統合戦争でのドラえもんの運命を知ったことで、成人後も戦う道を選び、黒江達のために転生まで選んだのである。
「神とも、『契約』をしてあります。あなた達を見守っていくために、ドラえもんを迎えるためにね」
「まさか、あんた……!!」
「ええ。カミさんにも伝えてあります」
のび太はドラえもんを迎えるため、転生をする選択を取った。この頃には、公安警察で働く妻にも伝えたらしい。
「友達との約束は違えませんから、ね。それに、妹や娘を泣かせたくはないし」
のび太は優しい。それ故に、幾多の別れを経験し、二度と会えなくなった者も多い。自分を友と思う者を裏切らないため、仮面ライダー達の基地を命をかけて守ったドラえもんズに報いるため。それがのび太に転生の契約を決意させた。これはことはや調の今後を慮ってのことでもある、
「それに……はーちゃんや調ちゃん、のぞみちゃんは今後、未来永劫を生きる運命を背負っている。せめて、誰かが見守ってやらないと、ね」
仮面ライダーと同様に『時代が望む限り、戦い続ける』という『呪いにも近い』宿命を背負わされた義妹と義娘のためにも、誰かが傍にいてやらないとという考えは、一見すると、阿呆の言う事かもしれない。だが、のび太は彼女らに『安らぎ』を与えたかった。
「あんたは優しすぎるわよ……。」
「優しさが人を救う事ってことはありますよ。人間、殺伐しすぎなんですよ」
のび太は親と違い、タバコは吸わない。親類の多くが喫煙者だったが、のび太本人は(しずかが結婚後すぐに懐妊したのもあり)タバコはやらない。その代わりなのか、コーラをよく飲んでいる。
「あんた、コーラ好きねぇ」
「結婚してすぐに、カミさんが懐妊したのもあって。それに、コーヒーは砂糖いれないと無理なんですよ。若い時からのモットーで、楽しい時間は永く楽しみたいですしね」
「アンタねぇ」
のび太は成人後は高身長のイケメンである。172cm(30代当時)、体重は65キロあまり。意外に重いが、これは裏稼業の関係上、筋肉をつけたためで、学生時代は45キロ~55キロだったという。
「今はカミさんの影響で、紅茶にハマってて」
「刑事ドラマみたいな入れ方すんの?」
「あんなの、ボクにはとても。スネ夫がよく買ってきまして。あいつはコーヒー党らしいんですけど、奥さんが紅茶党で」
二人はトレーニングルームからそのまま、基地の搬入庫にいく。スネ夫が予定を繰り上げて、マットアロー一号を納入してくると連絡があったからだ。
「でも、ウルトラメカをまんま量産なんて、骨川航空はあれでもキメてんの?」
「単に、スネ夫がSFメカ好きなだけですって」
骨川航空は製造部門、設計部門などでいくつかの会社があり、軍需分野は『骨川航空機』である。
「あ、来た来た。なぬ、あいつ、マットアローだけでなく、シルバーガルやスカイハイヤーも作ってきやがった!」
のび太は着陸してくる飛行機の編隊に驚く。予定より多い上、別のメカも用意してきたからだ。
「うちの会社に急がせて、採用見込みの機体をまとめて配送したよ」
「スネ夫、お前。操縦してきたのか」
「弟に無理言って、資金を調達してもらったから、ボク自身でテストしたんだよ。突貫工事だ」
スネ夫は地球連邦軍とGフォースに売り込んでいるようで、自分でテストするほどの入れ込みようである。
「スネ夫君、ヒゲ生やしたのね」
「ボクも30代で、二人の子持ちですからね。部下に廻天へ搬入させます。エルキュール・ポアロみたいでしょ?」
スネ夫はエルキュール・ポアロのような口ひげを生やしていた。ジャイアンのように、ちょび髭ではないのは、コンツェルンの総帥だからだろう。
「よく、あたしってわかったわね?」
「何、僕は雰囲気だけで誰か当てる名人なんですよ。それで妻と知り合って…」
「こいつ、昔から口が回るから」
と、談笑する三人。
「おー、サンキュ、スネ夫」
「弟に無理言って、資金を都合してもらいましたよ?あとで…」
「ああ。彼の欲しがってるゴルフ道具一式を送るよ」
「あ、黒江さん」
「武子が懐妊してたから、帰る事になってな。艦の指揮は次席の俺が執る。仮面ライダー達からの連絡で、インペロは今、空自&海自と交戦中だそうだ」
「やっぱりそうなりましたか」
「あんだけ目立つ上、海保の船に損傷与えれば、海自と空自が出てくるさ。時間稼ぎにはなる。空対空ミサイルじゃ、インペロには傷はつかんが…」
「悲観的ですね」
「自衛隊の予算的に、派手にミサイルは使えんし、戦闘機の対空ミサイルは基本的に通じんからな。せめて、副砲の一つや二つは潰してほしいが」
インペロが自衛隊相手に戦闘になり、空自の戦闘機隊、海自の護衛隊を相手にしている事が伝えられる。黒江は悲観的であるが、予測と裏腹に、自衛隊諸氏は未知の空中戦艦相手に勇戦奮闘していたりする。全通甲板型の護衛艦の甲板に自走榴弾砲を載せ、射撃させることで意外に弾を当てており、できる範囲で奮闘していた。
「あ、スカイさんからメールだ。何、全通甲板型の自走榴弾砲を載っけて、不意打ちしただと!?この世界の自衛隊もやるなぁ。ん?待て、この世界は2008年だぞ。いずも型護衛艦はまだないはずだ。輸送艦か?」
プリキュア5の世界は2008年である。そのため、普通に考えれば、ひゅうが型護衛艦も建造中の頃であるので、実働の全通甲板型は輸送艦しかないはずだ。
「これがスイートの時代なら、ひゅうが型護衛艦なんだが……あの艦の甲板、自走榴弾砲の射撃に耐えられたかなぁ…」
黒江も流石に驚きのようだ。しかしながら、プリキュアの世界では、プリキュアが戦っている事は知れ渡っていたはずなので、おおすみ型輸送艦に自走榴弾砲を載せて射撃させる手法はテスト済みかもしれない。
「しかし、自走榴弾砲は155ミリの榴弾だ。バイタルパートは無理のはずだ…細かい装備の破壊か、艦底か?」
インペロは高射砲や副砲主体で戦っているようで、機銃を被弾したF-2支援戦闘機が離脱を試みる様子が動画になっていた。
「うーん。意外に頑張ってんな。創意工夫を自慢するのが自衛隊のやり方だが、この世界でも頑張ってんだな……」
「でも、よくF-2なんて出してきましたね?」
「防衛省もよく許可したな。虎の子だからな、バイパーゼロは」
プリキュア5の世界の自衛隊は意外な奮闘を見せていた。主砲さえ撃たれなけばいいという戦法はGフォースも見習うべきところがある。
「意外に時間稼ぎになる。今日一日は足止めだろう。見てる側としちゃ、『次の年の予算』を心配しちまうが」
大盤振る舞いと言えるほどの撃ちかたなためか、Gフォースの責任者としては『次の年の予算』を気にするらしい。統括官として、ドラえもんの世界の自衛隊で予算と睨めっこする事も多いからである。
「職業病ですね」
「財務の連中は金の事しか頭にねーからな。ダイ・アナザー・デイの時なんて……」
ダイ・アナザー・デイで、防衛省/防衛装備庁にF-2を出してもらえなかったのを根に持っているらしい黒江。ダイ・アナザー・デイの時の『ドラえもんの世界の自衛隊』の現場はデモンストレーションを兼ねての現用機の使用に乗り気であった。だが、横槍が入り、廃棄間近のF-4Ej改を押しつけられ、故障や不具合が頻発。代替機の調達に奔走したので、この映像は効くらしい。
「根に持ってますね」
「たりめーだ。あんときゃ……」
のび太、スネ夫、ティアナの三人に愚痴りだす黒江。ダイ・アナザー・デイで機材の不具合と故障の報告がひっきりなしに舞い込み、自分で防衛装備庁などに講義の電話をかけまくった思い出が蘇ったからだ。地球連邦軍は『良好な状態の機材を回してくれた』のに、21世紀の自衛隊は最古参の旧型の厄介払いなのかと。無論、大恥を晒す恰好なので、Gフォースに機材を回す担当の事務方は更迭されたが、F-2はとうとう回ってこなかった。(最も、100機未満の生産であるF-2を大戦型の戦場に出すことでの消耗を恐れる声が大きかったのも事実だが)能力を示す絶好の機会だというのに、だ。代替機の調達で苦労したからか、珍しく、愚痴っぽい。
「まぁまぁ、綾香さん。今日はこの辺で……」
うまくなだめようとするのび太とスネ夫。ダイ・アナザー・デイでの苦労話になると、黒江は長いのだ。宥めるのに手慣れている様子に、ティアナは関心するのだった。