ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第四百七十七話「留守番組の状況 3」

――扶桑軍は1945年から内乱続きであったが、カールスラント寄りの世論が萎む効果を産んだ。代わりにアメリカ(リベリオン)、ブリタニア(英国)寄りの論調が主流となった。だが、自由リベリオン、ブリタニアは共に軍事面での寄与は期待できない有様。ブリタニアの数少ない空母は『攻撃空母化』の改装のため、大半が太平洋戦争に寄与出来ない現状。自由リベリオンは訓練途上であった。旧・国際連盟軍(国際連盟の軍隊)は地域大国の寄り合い所帯感が強かったが、国際連合軍は(史実と違い)理事国の軍隊を基幹にした部隊の体裁が強く、参加を拒む小国も多かった。だが、太平洋戦争の結果如何で、その後の世界での自国の立ち位置や利害関係に関わる事から、日本連邦側に『形だけでも』加担することを選ぶ国が増加していた、日本連邦のダイ・アナザー・デイでの奇跡は小国を狂喜させたが、そこまでの人材など得られないことをわかっていたため、軍の魔女からは『バケモノと比べないでくれ』というボヤキも多かった――

 

 

 

 

――日本連邦では『空戦の指揮官は率先垂範たるべし』という風潮が他国よりも遥かに強く、『将官であろうと、パイロットなら戦うべし』という考えを世間は持っていた。黒江たちが昇進し、将官となっても、前線で飛び回る事が許されているのは『その方が日本連邦の銃後を納得させられるから』であるのと、裏の理由として、『転生者はどこに置いても反発される。前線で戦わせれば、他の魔女の反発を買わないから』という実務上の都合があった。これは501の事例が重く見られてのことで、ダイ・アナザー・デイの作戦計画中の段階では『一時的な処置』とされた64Fの再結成が『転生者の数の増加、ミーナの行為による教官派遣計画の破綻』で恒久的な編成に切り替えられ、扶桑の有能な人材の多くが集中配置された。志賀はこれらの裏事情を知らず、第343海軍航空隊の資産を64Fの再結成に流用する事に激しく反発してからの流れで隊を離れたが、その代償として、坂本が『出戻る』羽目になる、クーデターの際の試作機材の焼失の責任を取らされる事になり、踏んだり蹴ったりであった。彼女は『横須賀航空隊の伝統を絶やしてしまった』、『学校の先輩である坂本に十字架を背負わせた』という二重の十字架を精神的な意味で背負う事になった。教育部隊での任務を率先して行うのは、それらの行為と結果への贖罪であった――

 

 

 

 

 

 

 

――調は別世界の自分らに対し、自分達の世界での『事の顛末』を教えた。響はイレギュラーの介入で歴史が大きく変わったことで出来事の中心から外れていき、その代わりの役目を調の立場を演じた人物が担った形になり、フロンティア事変で『異世界の異能』と『真の神々が生み出した宝具』の存在が明らかになり、自分が帰った後、それを知らされた事、その人物に『自分が帰る時のための居場所を用意させた』ことで喧嘩になり、別の世界に出奔した事を――

 

「どうして、そんな真似をしたの?」

 

「10年以上も別世界で生きて、戦ってきたところに、元鞘に収まれると言われても、そのまま収まれるわけないですよ。それまでに『代わりをしてた人』がしてきた事の結果であって、自分で築き上げたわけじゃないから」

 

響の『善意』はベルカから帰ったばかりだった自分には受け入れがたかった事、別世界で騎士をしていたための倫理観の変化などがあったため、おめおめと以前の暮らしに戻っていいのかという負い目があった、売り言葉に買い言葉で喧嘩になった(後に第三者の仲裁で和解)などの理由で出奔し、また別の世界で20年ほどを過ごしたことを話す。更に。

 

「シンフォギアでどうにもできない敵が現れて、それを異世界の完全聖遺物持ちの人たちが倒した。本当の神様の加護で」

 

「本当の神……だとッ!?」

 

「全知全能ってわけじゃない。オリンポスの神々だから、分業制に誓い。で、これと別に日本神話で最高神とされた存在がいるし、日本土着の神は別にいる。それもややこしいんですよ」

 

神という位のバーゲンセールのようだが、シンフォギアA世界は聖闘士の介入で決定的に流れが変わったのだ。調Aは見たわけではないが、自身がその後に聖闘士となったため、その力のほどを理解している。

 

「その配下の戦士がどうにかした。魔法少女事変の時点で。更に言えば、現代科学の延長線上にある存在が異端技術をねじ伏せられる事が分かったから、あなたはナーバスになってしまった。現代科学でも極限まで極めれば、異端技術との差が埋まる事が示されたから…でしょうね」

 

グレートマジンカイザーの超強力ぶりが皮肉なことに、キャロルとの最後の一戦で蚊帳の外に置かれた状態だった響の精神をかき乱し、事後に『こうなった』ことを受け入れられず、周囲に当たり散らすという『らしくない』行動に出てしまい、顰蹙を買った。その事は彼女が抱える闇を浮き彫りにした。

 

「どうして、そんなことをしたの?そっちの私」

 

「その戦士たちが『神の使い』であり、シンフォギアのエクスドライブとも比較にならないくらいの力を持っていた事、現代科学で作れるモノが異端技術をねじ伏せたって事実が怖かったんでしょうね。目撃者も多かったし、そのロボットは」

 

「ろ、ロボットですって!?」

 

「うん。こんなロボット」

 

シンフォギアA世界での常識を幾星霜の彼方へ吹き飛ばした『グレートマジンカイザー』。ZEROが絡まらない局面であれば、グレートマジンガーの上位機種らしい働きができるため、シンフォギア世界の脅威であろうと、その世界の摂理を明後日の方向に吹っ飛ばす強さを見せた。逆に、ZEROの『対マジンガー用マジンガー』の負の側面を極限まで煮詰めたような特性の判明により、マジンガーは陽子エネルギー(光子力を超えるエネルギー)を新たな主動力にし、光子力反応炉とゲッター線増幅炉を副動力兼スターターにする方向性が固まるため、Gカイザーが誕生時の性能で戦ったのは、その時が最初で最後であった。

 

「アニメみたいなロボだな?」

 

「威力は本物ですよ。超技術の塊だから、21世紀のどんな兵器もカス扱いの差がありますから」

 

『アニメのロボットを実際に作ろうとしたら、こうなった』と言うべき姿であるGカイザー。その見かけはハッタリではなく、現代のいかなる兵器とは比較にならない破壊力を発揮。『現代兵器などは無力に等しい』とされたノイズ(アルカ・ノイズ)の位相差障壁の存在をないかのように、一瞬で吹き飛ばす。

 

「異世界の超技術の産物とはいえ、現代科学の延長線上にあるものが、シンフォギア以上の力を見せた。それがこちらの響さんを情緒不安定にさせたんでしょうね。現代科学で造れるって事もあって」

 

「なんか、他人事みてぇじゃねぇか?」

 

「そこは勘弁してくださいよ、クリス先輩。その場にいなかったんですから、私は」

 

クリスDの指摘に、調は率直に答えた。その場にいなかったので、事後の推測が入るのだと。

 

「で、響さんと再会したのは、この世界での数年前の戦いですね。その時に色々と私もやらかしたりしまして。その時に、こちらの響さんにある因子があることも分かった。今はその力の訓練中ですね。それで、あなたが外を出歩いてもいい事になった」

 

「ああ、前に聞いた『プリキュア』だね。そっちの私はその力が変則的に目覚めたって……」

 

「ええ。ガングニールを使っている時の特性がプリキュアの力を変化させたんです。それで、その調査が続いてるんです」

 

立花響Aはキュアグレースに覚醒したが、その能力は現役時代と異なり、徒手空拳で戦えるようになり、必殺技も現役時代から大きく様変わりしている。また、キュアドリームの『クリスタルシュート』に似た技を撃てるようになっているなど、ダイ・アナザー・デイで見た彼女の勇姿への憧れが反映されている。

 

「プリキュアの先輩……その人は私の働いている家の主人の息子さんのお嫁さんなんですけど……への憧れが多分に反映されたっぽくて、あなたがなったプリキュア戦士……現役時代と能力が変わってるんですよ」

 

「へ!?」

 

「ああ、あの夢原のぞみ女史か。彼女に憧れたのか、そちらの立花は」

 

「そういうことになりますね。のぞみさん、自覚はないんですけど、実は後輩にモテるんですって」

 

「だろうな」

 

のぞみは普段の私生活では料理できない系のダメ女子だが、戦いの場では『プリキュアの切り込み隊長』と称されるほどの凛々しさを見せる。そのギャップに萌える後輩は多い。輝木ほまれのいた世界での野乃はなも、その一人。戦闘での『頼りになる先輩』と私生活でのダメっぷりのギャップが同年代の女子の琴線に触れるわけである。翼D、クリスD、マリアDはそのことを察したようだ。

 

「前々からツッコんでいいのかわからないンデスけど、シンフォギアを普段着代わりにって……」

 

「今は半分、仕事着みたいなものだし。それに、コピーしたモノは貸し借りしてるからね?私のシュルシャガナはさっき言った人と、マリアと翼さんは異世界の同位体の人(篠ノ之箒、フェイト・T・ハラオウン)と貸し借りしてます。時たまだけどね」

 

「だーから!!貸し借りできるほうがおかしーーデス!!」

 

「私たちはRINKERを服用して、やっとなのに……」

 

切歌Dは半分、涙目。調Dも『ムスッ』としたふくれっ面だ。仕方がないが、調AはDとは違う道を辿った末に『聖闘士』にたどり着き、聖闘士になることで体質が根本的に変わっていったので、シンフォギアの恒常的な展開に際し、問題は無くなっている。シンフォギアが仕事着になっているのだ。

 

「うーん。体質が根本的に変わったからなぁ。ギアの機能を使わなくても、以前より戦えるんだよ」

 

「それが私とあなたの差なの…?」

 

「積み重ねた時間の差もあるから。過ごした時間は少なくても、あなたより一回り以上はあるから」

 

Aは『ドラえもん世界』、『未来世界』、『魔女の世界』、『古代ベルカ』で過ごした経験を得ているため、見かけは同じでも、経験値が大きいため、Dを子供扱いできる戦闘能力を持つ。扶桑軍や地球連邦軍で戦闘訓練を受け直したためもあり、普通に強い。

 

「時間だけで、そこまで差ができるはずない……何か特殊な……」

 

「まー、何よりも実戦の場数を踏んできたからね、いろんな世界で。それで差があるんだと思うよ?神様から剣はもらったのは本当だけど。エクスカリバーを、ね」

 

「聖剣のバーゲンセールじゃないんだぞ。いくら霊格を宿すったって…」

 

「いいんですよ。私は師匠の関係で、おこぼれに預かっただけですから」

 

エクスカリバーは意外に敷居が低いので、持つ人数も意外に多い。威力は個々の練度に比例するが、それでも、『衣服に影響を与えずに何かを切り裂ける』というのは大いなメリットだ。下手な包丁を買うより、自分の手刀のほうが切れるというのはシュールであるが。

 

「そちらの私は何をしてるのかしら」

 

「昨日、仕事の支度しようとして、ベットから落っこちて、足をくじいたよ。だから、別世界での同位体に当たる人が代わりに、イベントに出たよ。声色もほとんど同じだったし」

 

「……」

 

なんとも言えないが、マリアAは妹がプリキュアに転生し、記憶も引き継いでいた事の判明で精神的に安定した。精神的な安定と引き換えに『素が出る』ようになったか、意外にずっこけな側面が表に出るようになった。そのため、足をくじいて、歌手の仕事に穴を空ける(箒のおかげで免れたが)という事もやるようになった。

 

「セレナはそちらでも?」

 

「うーん。死んだんだけど、プリキュアの子に転生してたんだよね。記憶の引き継ぎありで。だから、今はどっちが姉だか」

 

「あー……」

 

マリアは身寄りが妹しかいなかったためか、A世界では過保護気味である。リコ(キュアマジカル)が妹の転生した姿である事で、マリアは複雑な心境に陥ったが、リコの気遣いもあり、精神的な空白を埋められたわけだ。この時点では、Aは他世界よりも『個人としての素』を多く出している。

 

「そちらでは、魔法少女事変の後の戦いは起こってないのだな?」

 

「ええ。異世界の神々の争いが持ち込まれて、魔法少女事変の時点で全部の騒乱が収まった世界ですから。月も改造された箇所は吹き飛んだし。それで、装者の行き場が問題になったんで。司令は装者たちが国連に都合のいい道具にされるのを危惧していたんで、異世界の聖遺物の調査の名目で、異世界に送り込んでるんです。全部の騒乱が収まったって事は、シンフォギアを脅威視する声も生まれますからね」

 

「で、そのうちに、こいつの中に眠ってた別の異能の因子が覚醒めたってわけか」

 

「はい。最初のうちは戸惑ってましたよ。シンフォギアを『異物』と判断したプリキュアのパワーがギアを排除しようとしたらしく、一時的に戦えなくなったりしましたから。今は響さんの特性で、お互いの能力の長所が融合したようなので、いいとこ取りですね」

 

「あたしらからすりゃ、普段からギアを使ってるお前のほうが信じらんねぇよ」

 

「元いた世界の法律に縛られてませんからね。それに、今は身体保護の目的が半分以上になりましたから。それと、自分が元来、装者であることを忘れないようにするため、かな?」

 

「どうして、そっちは私、そんなに荒れたの?」

 

「居場所を取られるのを恐れたんでしょう。シンフォギアは対ノイズに特化した装備だから、同等以上の装備がある相手だと、パンチ力不足なことが多いんですよ。それと、現代科学でも、異端技術をねじ伏せられるほどの機械の怪物を生み出せる事が分かったことの意味を悟って、自分たちが不要とされるのが怖くなったんでしょうね」

 

身につまされる思いの響D。自分の力が不要になる事は嬉しくもあるが、同時に自分の居場所を無くすのでは?とする恐れもあるからだ。年端も行かぬうちに人間の闇に晒された経験がそうさせるのか、天羽奏の犠牲で生き延びたという負い目からか、「わかりあえる」「だとしてもッ!」で何とかなると思ったが、人生、善意が仇となる事もある。別の自分は圧倒的な情報の暴力が襲ったことで、自分の立場や居場所を守りたいために、自然と保身を図ってしまったのではないか?そう考えた。

 

「そっちの私は圧倒的な情報の暴力に耐えられなかったんじゃ?それも、シンフォギアよりも格上の力や兵器が本物の神様相手に使われた上に、キャロルちゃんとの最後の戦いに関われなかったわけでしょう?」

 

「自分なら、キャロルに宿ってた邪神だけを倒せたって考えたんでしょう。でも、魂を食らう相手でしたし、私達の世界の摂理の範疇にない世界の神ですからね。それと、ガングニールをマガイモノと言われて、頭にきてたのも……」

 

「そうか。ガングニールは英語読みだが、本来はグングニルだからな。それに、本来は神殺しの槍というわけでもない」

 

「そこでしょうね」

 

シンフォギア世界でのガングニールはロンギヌスと同一のもの。十字教の『聖人』を殺した事で同一視されるうちに、その効用を持ってしまった。だが、それはシンフォギアが関係する世界のみの因果であり、シンフォギアの存在しない世界の神には通じない。故に、聖闘士とスーパーロボットの力が必要だったのだ。だが、キャロル・マールス・ディーンハイム本人は消えても、肉体に残された記憶はあるため、この時期には疑似人格として復活している。(史実とは経緯が違うが)

 

「異能がたんまりあるのに、神と対等に渡り合える機械も造れる上に、そいつは自己進化する……どうなってやがるんだ?」

 

「ゲッター線の意志でしょうかね」

 

次元世界の驚異である。そして、神殺しも普通に科学でなし得てしまう。異能も科学で追いつける証左だろうか。

 

「ところで、私の代理で仕事をした人って、声が似てたの?」

 

「マリアの平行世界での同位体にあたる人。日本人だけどね。声質もほとんど同じだったし、歌唱力もほぼ同じだったから、お鉢が回ってきたんだ。その人も故郷を離れてるんだけどね」

 

箒はIS世界に時たま戻り、姉の抑えをするようになった。束が監視をどうにかしようとしている事は知らされていたからで、姉が世界を強引に新発明でリセットしようとする事も想定されたため、先代黄金聖闘士達はその度に制裁を加えてきた。元々、『細胞単位で突然変異』と形容するほどの超人と自負していた篠ノ之束にとって、自分の及ばないパワーを持つ黄金聖闘士は目の上のたん瘤。その頭脳でどうにかしようとしているのは目に見えていた。だが、束とて、スペックがいくら良くても、存在は人間の範疇であるため、セブンセンシズ、あるいは阿頼耶識たるエイトセンシズの使い手である黄金聖闘士には歯が立たない。それ故に、ラボにカンヅメにされるのは大いに不満だが、どんな手段でも彼らからは逃れられないため、最近は箒と千冬が手綱を握る状態だ。

 

「でも、なんで、この世界の戦争に関わってるの?」

 

「私が普段住んでる世界の軍隊がこの世界のアメリカの政権を掌握して、この世界の日本に戦争を仕掛けているからですよ。それに、私は軍人ですからね。それが仕事です」

 

 

「この世界の日本は違う歴史を歩んだというが、それを?」

 

「ええ。史実と同じ道に矯正しようとする連中は多いんですよ。それと嫉妬かな。この世界の日本はこの大陸の領有のおかげで、資源大国ですから。それを全部捨てろってのは高慢ですよ。引き換えに得られるのは、たかだか数十年分の経済的繁栄ですから」

 

ドラえもん世界の日本国の国民には、扶桑の資源大国ぶりにも関わず、内地にあまり投資していないことを叩いたが、関東大震災が起きていないので、市街地を再構築する必要がなかった世界なので、的外れな批判であった。それでも、将来的なモータリゼーションの到来を見越した再開発が始まったのは事実である。

 

「だから、現地が史実の戦後日本を真似するにしても、脅威がある世界ですから、全部が同じになるとは限らない。いくら圧力をかけても、ね。敵は少なくとも、選民思想に取り憑かれた連中ですからね。そんなのがこの世界を支配したら……?宇宙時代になったら、思想が一周するのかはわからないですけど」

 

シンフォギアの力を持ったままで、一国の戦争に与する事を快く思わないD世界の装者達だが、マリアや翼は比較的に理解を示していた。独裁的な者たちがやろうとする事は何であるか。すべからく、答えは一つだからだ。

 

「民主政治はどこかで腐ります。ローマが、フランスがそうだったように。かといって、専制政治だって、暗愚な皇帝や国王が出れば、地獄になる事が多い。ですから、世の中、上手い話はない。民主政治が腐りきった後に、時代遅れのはずの帝政が取って代わるのは、ローマの頃からの恒例行事のようなものですからね」

 

「ナポレオンがそうだったものね。民主政治の英雄でいればよかったものを」

 

マリアDも同意する。人間、いつの時代も、似たようなことを試みる。民主政治が腐りきったからと、一人の独裁者(ギレン・ザビ)に期待する、貴族政治の復活を目論む(コスモ貴族主義)などの行為をするが、全てが大衆の大量虐殺の方便に堕ち、瓦解している。

 

「別世界の宇宙時代に、スペースコロニー群の一つの独裁者が地球全土を巻き込んだ戦争で数十億を軽く殺すわ、貴族趣味に走った資産家の一族がコロニー群を虐殺して、国家を作ろうとしたりした記録があるよ」

 

「宇宙時代になると、やることが極端になるな……」

 

「地球全土を滅ぼすって発想じゃないだけ、マシですよ。中には自分の手で滅ぼした後、存在を忘却していった世界もありますから」

 

地球連邦政府は『地球統一政府』という名で存在し、腐敗しきった果てに滅んだ世界線がある事が知られた後、急速に地方自治を尊重する方向へ向かっていったが、異星人の襲来で逆に中央集権への回帰が始まる。また、シリウス星系の移民星のように、独自勢力の確立に動く者もいたが、地球を滅ぼす危険性を憂慮したゲッターエンペラーの介入で移民星を滅ぼされる結末を迎えた。以降、移民星は地球の政権の指揮下にありつつも、ある程度の自治レベルで満足するパターンが増える。惑星を壊したり、容易く直せるゲッターエンペラーの力に恐怖したからである。惑星は愚か、恒星以上の大きさを持ち、惑星破壊プロトンミサイルも無意味である。ゲッターエンペラーはシリウスを事実上は滅ぼした後、地球へ移民星が反旗を翻す、あるいは友好国が対決姿勢に移る度に、移民星のある星系と地球の友好国の首都星を情け容赦なく破壊していく。ウィンダミアの王室がゲッターエンペラーの存在を恐れたのは、地球に手出しをすれば、ゲッターエンペラーが星団の全てを消し飛ばす事が容易に想像できるからだ。エンペラーの前には、時間の違いなどは無意味なのだから。

 

「もっとも、地球には絶対的な守護神がいるんで、理性のある国家なら、手出しを控えるはずでしょう。ゲッターエンペラーという、ね」

 

「あの星より大きい三隻の戦艦?」

 

「あれ、合体ロボですよ」

 

「えーーーーー!?あの映像、合成じゃないの?」

 

「はい。合体したら、星系一個分より大きいサイズになります。本当に。地球、金星、火星を串団子にできるくらいの大きさです」

 

「なんだよそれぇ!?」

 

「一つの太陽系が『手足を持って動いてる』ようなものですよ、ゲッターエンペラーはね」

 

エンペラーの驚異である。全スーパーロボットの中でも、究極の力を持つ内の一体であるがためか、非現実的ですらあるが、悠久の月日を費やし、ゲッタードラゴンが三度の変異を遂げた存在である。ゲッタードラゴンが『聖なる龍』と後の世の記録にあるのは、ゲッターエンペラーに至る存在だからだ。

 

「おそらく、彼は地球に牙を抜く外敵にとっては重大な脅威のはずです。たとえ、同じ地球を祖に持つ移民星であろうと。ある意味、波動砲も霞む存在です」

 

「ひえええ……」

 

「あ、そうだ。別のあなたが参考にしたいと言ってたので、戦闘向けのプリキュアの戦闘記録をまとめた映像を用意したと伝えといてください。私、今日は仕事で出張にいかないといけないんで」

 

「この大陸の中心都市?」

 

「うん。史実の満州国でいう『新京』。日本は改名を提案したけど、扶桑は断った。史実の中国の地名は、南洋本島の地名として残ってるのがいくつかあるだけだし。満州国って言っても、この世界じゃ、その前提条件の一つだった清朝が成立しなかったから、まず通じないし」

 

日本側が戸惑ったのは、中国が明朝の頃に怪異に滅ぼされ、満州民族が清朝を開く事はなく、中華王朝の存在自体が半ば忘れ去られていた状況である。そのため、日本経由で伝えられた故事も多い。新京の名を忌避する論調では史実の戦後と故事に習い、『長春』へ改名することを提案する者が多かったが、内政干渉として否決されている。南洋の首都として発展を遂げる同市は本土再開発のテストケースとして活用され、再開発が急激に進行。南洋地域に展開する軍を統括・管理するための国防省の分所が設置されている地でもある。

 

「待て。お前の仕事ぶりを見せてくれないか?せっかく外出が許可されたのなら……」

 

「うーん。翼さんとマリアとクリス先輩。代表でついてきてくれる?後の三人は色々な兼ね合いで、ね」

 

「えー!そんなぁ~」

 

「あなたはともかく、切ちゃんは大人の切ちゃんが働いてますし、私は狙われてる身の上だし」

 

「ギア自体の基本スペックは同じはずなのに……」

 

「敵は司令のような超人も多いから、ある程度の格闘の心得がないと、半殺しにされるのが関の山だって」

 

「嘘…でしょッ…!」

 

「本当なんだ、これが」

 

D世界の装者らはA世界とは違う経緯を辿ったので、A世界の装者らの持つシンフォギアとは細かいスペックの差異がある。だが、その程度の違いくらいでは、自分達の戦う相手には足しにならないことを示唆する調A。

 

「それに、三人の中でまともに格闘ができるの、響さんだけですし」

 

「ハ、ハハ…そう言われると……こそばゆいよ」

 

響Dは若干、赤面する。不満げな顔の年少組だが、調Dは『ギアのスペックに頼っている』自覚が強い分、自分が相手にならない強さを持つ『別の自分』が羨ましく思えるようだ。

 

「アタシは、イガリマのアタシはカウント外デスか!?」

 

「切ちゃんは鎌でしょ?手練の戦士とぶつかったら、まず歯が立たないよ。鎌の扱いは根本的に難しいし。この世界の剣技の手練って言われる人たちは日本刀で分厚い戦車用の鉄板を切れる腕前だよ」

 

「ぐぬぬぬ……!」

 

切歌Dは同じ年頃の頃のAより物分りがだいぶ良いようで、鎌の間合いの取り方や死角を心得ているようだった。故に、自分の対人戦での不利な要素を自覚しているのか、悔しそうにするが、同時に図星と言った感じだ。

 

「待っててください。基地に連絡して、車を手配してもらいますから」

 

調Aはギアの通信機能で基地に連絡を取り、近くの駐屯地から、車を回してもらうように手配する。自分一人だけなら、サイドカー付きのオートバイを使うつもりだったと話す。

 

「おいおい、その脚でバイクか?」

 

「乗る時は普通の形に変形させるんで」

 

「日本軍だから……陸王かしら?」

 

「陸王の軍用はその日本が買い取ったのも多いからね。ドイツから買ったBMW・R75が使われてるよ」

 

「ドイツのモノは質がいいと聞くが……」

 

「この時代の工業製品としちゃいいほうですよ。隊のみんなもちょっとした私用の時に使ってますね」

 

この時代、扶桑の自動車は軍用主体で、民生仕様も富裕層の玩具も同然の高嶺の花であるため、サイドカー付きのオートバイが各地で多用されていた。特に最前線では、ジープなどの軍用車両を用いるまでもない斥候や将校の私用としての普遍的な選択であった。調Aらがいるのは、新京の郊外となった新興の地区の軍施設で、中心部から数時間以内の開発中の地域であった。彼女の口から、64Fの隊員の多くはサイドカー付きのオートバイを『小うるさい申請書類を書かなくていい』ということで乗り回している事が示唆される。自身もオートバイ乗りである翼や、乗り物の運転技術を持つマリアは興味津々であった。

 

「シュルシャガナを使ってるのに、オートバイをわざわざ使うの?」

 

「色々な兼ね合いがあるんだよ。ギアのローラーだとさ、速さに限度あるし、かといって、技の応用だと、今度は小回りがね。それに、側車に荷物をある程度は載せられるしさ」

 

Dの質問に答えるA。ローラー機構や移動技を持つギアを使っているのに、わざわざ、オートバイを使う事の是非でもある。(緊急用に、新サイクロン号やハリケーン号の予備個体を借りているという事情もある。それと、有名な隊に在籍しているので、マスコミに『交通法規を守っている』と示す目的もあった)意外に仕事の事情が絡んでいることを聞かされ、調Dは大人の世界の難しさを知ったのであった。

 

 

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