――64F基地でハンドメイドされていたそれは時空管理局の魔導炉を積んでいた。時空管理局の魔導炉はある特定の条件で『無理な運転』を行うと、室内の酸素をすべて消してしまうという欠点があった。時空管理局はプレシア・テスタロッサの件以降、魔導炉の安全性向上に技術を注いでいたが、その原因が掴めず、試作段階の炉心は試運転もせずに放置されていた。はやてはそれが『次期小型艦用の試作品』だと気づき、みらいへ提供した。プリキュアに変身した状態ならば、いかなる状況でも大丈夫だったからだ――
「みらいちゃん、食事持ってきたよ」
「あー、ありがと、いちかちゃん。その辺の机に置いといて」
「変身してるのはなんで?」
「こいつに積んでる魔導炉心、試運転もしてないから、何が起こるかどうかわからないからね。時空管理局も試作段階で改良を何回かしたようなんだけど、根本の解決には至らなかったようだからね」
「よく積んだね?」
「はやてさんに押し付けられたんだよね。調達可能な魔導炉心があるって。ま、時空管理局も魔導炉心から地球製の科学技術の動力機関に切り替え始めてるから、在庫整理ってのはわかるけどね」
その炉心は小型快速の艦艇を稼働させるのを想定したもので、時空管理局が本来は『次期小型快速艦』に積む想定で開発していたものらしい。ましてや、地球産の動力機関とのマッチングテストも済んでいないともいい、かなり危なめな代物を回したらしい
「時空管理局もアコギな商売するなぁ」
「管理世界への建前があるからね、奴さん。地球の傘下に収まってますなんて、本当は公表したくないはずだから」
「で、どんなのが?」
「こっちでいう、フリゲート艦か水雷艇相当の小型の高速艇のを回された。本当の試作品でさ、計画が棚上げされて、眠ってたのをはやてさんが見つけたんだって」
「拾ったのを、そのまま?」
「な~に、初代マクロスに比べりゃ…。いちかちゃんも変身しといたほうがいいよ。プリキュアの姿なら、無酸素になっても平気だから」
「え~!なにそれぇ~!」
「時空管理局の技術の限界なんだって。滅多に起こんないようだけど、アリシアちゃんの史実の事故はそれが起こったらしいから」
「仕方がない。そういうことなら」
と、いちかもホイップに変身する。
「あれ、リコちゃんは?」
「食事に行ったよ。今日は新京で限定スイーツが出るんだって」
「ああ、新京百貨店の大食堂が出すとかゆー。わざわざ新京中心部に?」
「ここんところ、付き合いも多かったからね。モフルンについていってもらってる」
「あれ、みらいちゃん。昔は……」
「今は大人だしね。それにZEROにやられた時、本当は大学生だったんだ。リコもマホウ界で就職してたし。まぁ、『あの時』は月面のクレーターを5個くらい増やしたけど」
デザリアム戦役での大喧嘩は全体的に自分が押され気味であったが、魔法学校関係者が見れば、泡を吹くような高位の魔法を惜しげなく打ちまくった。だが、最強形態を以ても、魔神皇帝の力を手にしたキュアドリームには完全に力負けしていたと語る。
「魔神皇帝の力、のぞみちゃん使いまくってきたからなぁ。オーバー・ザ・レインボーでなきゃ、消し炭にされてたよ、ファイヤーブラスターでさ」
「必死な形相でバリア貼ってたね、そういえば」
「超合金Zが一瞬でドロドロに溶け落ちる温度の熱線だよ?最大パワーで防がないと、こっちがやられるからね。肝冷やしたよ、あのパワー」
ファイヤーブラスターの温度はZモード相当でさえ、ブレストバーンの数百倍に相当するため、太陽よりも高熱を放てる。のび太曰く、『超合金Zが一瞬でドロドロに溶ける』とのことで、喧嘩を見守るしかできない他のプリキュア達が青くなったほどだ。
「あれでZモード相当だっていうんだから、神モードの状態なら、星も溶かせるんじゃない」
「すんごいパワー……」
「グレートブラスターはそれよりも高温だとか?目がくらむよ、そういうスペック聞くとさ」
「魔神皇帝って、マジンガーのなんなの?」
「一つの究極形だよ、マジンガーのね。のぞみちゃんはZEROを諌め、融合したことで、存在自体が人から『魔神』に近い存在に昇華したようなもんさ。魂魄レベルでの変化だから、生物学云々は通用しないよ。普通に病気になるからね」
融合後も肉体的には変わりないため、普通に風邪にかかるし、腹も壊す。だが、戦闘ポテンシャルは魔神皇帝の名に相応しいほどで、Zの派生体であった『ZERO』と融合した割には『正常進化の到達点』たる魔神皇帝色の濃い戦闘スタイルであり、武器も二大魔神皇帝のものを主に使う。(Z状態のものも使えるが、ドリルミサイルなどは媒介となるものがないと再現不能)これはのぞみの新たな戦闘スタイルの構築に影響を与えた黒江や智子が『ZEROへの反抗の意志』を示すため、『魔神を超えるために生み出された魔神の武器』(Zの後継機たちの力)を用いていた事による影響でもあり、のぞみが『マジンガーの存在を認識した』時には、兜甲児と剣鉄也の乗機が魔神皇帝に変遷していた故である。
「そういえば…、一ヶ月くらい前に、かき氷の食べすぎで腹壊して、三日くらい寝込んだ事あったっけ、のぞみちゃん」
「年食わないけど、生物学的には普通だからね。普通に体調は崩すって。そこが不思議なところ」
「なるほど~。でも、艦隊戦した経験がない世界でも、フリゲート艦みたいなのあるんだね。不思議だ~」
「基本的に、船は大きけりゃ強いからね。21世紀の駆逐艦なんて、大戦型の巡洋艦や日露戦争の戦艦くらいになってる。だから、扶桑が困ってる。怪異の攻撃で、どうせ一撃だからって、一等駆逐艦よりも二等駆逐艦を量産したら、日本に『屑鉄を増やすな』だよ?戦後型は戦中型より手間かかるんだけどね。魚雷も積み直す羽目になったし。海軍の艦政本部もヤケクソになってる。ここんとこ、戦艦と空母以外の水上艦艇でケチつけられまくったから」
「どんな感じ」
「『とにかくデカくすりゃいいんだろ!?』ってヤツ。小さく作ったら、平時の拡張性云々まで言われたからね。MSも一時は小さく作ることが流行ったけど、構造が複雑になりすぎて、また大型化しだしたから、どの機械も循環するかもね、発達は。その犠牲になった船は……阿賀野型軽巡洋艦だろうね」
それは超甲巡や松型駆逐艦の事である。松型に至っては、怪異の攻撃で秋月や陽炎型の損耗率が高いので、戦時に使い潰す前提で量産したら、日本側に『水雷攻撃に使えないだろ』と指摘されるなど、散々であった。『対空対潜に特化しつつ、構造を簡易化させ短期建造を可能にしたタイプ』であるのに、日本の官僚は粗悪品と決めつけ、建造中止を指令した。だが、多数が建造中であったので、船体のみが完成していたものは防波堤に転用され、完成状態であったものは払い下げが進められる有様であった。日本側は駆逐艦を『大型・万能型となった戦後型と戦後式フリゲート艦で統一する』意図があり、扶桑にそれらを持たせるのは、一等駆逐艦相当のフレッシャー級を米国が山のように建造していたことへの対抗心からであった。折しも、魚雷攻撃の需要がM動乱以降に急増し、魚雷装備を外して久しかった中小型艦艇が『役立たず』の烙印を押されたため、結局、魚雷装備を『自衛用』名目で積み直す羽目に陥った事から、扶桑の中小型の戦闘艦艇も(居住スペースと航続距離確保のために)大型化し始めた。大正期で国産魚雷の研究が途絶えていたため、中・小型艦を短期間に戦力にするため、M動乱当時に『緊急の場繋ぎ』で史実の酸素魚雷の設計図が日本側より提供され、緊急で量産配備がなされた。それが戦果を挙げたので、ダイ・アナザー・デイでも、より次世代の誘導魚雷とともに活躍した。そのため、水上艦の魚雷発射管は(対潜魚雷の開発もあり)史実同様にスタンダード化する事になる。ミサイル装備の発達と搭載標準化も起こったため、扶桑の戦闘艦艇は必然的に大型化。1949年の段階では、駆逐艦は3000トン~4000トン級に大型化。阿賀野型軽巡洋艦の存在意義が砲火力以外で希薄化したのは、扶桑は同艦級を『甲巡が乙巡の任務に降りてくるから、場繋ぎの旗艦任務程度でいい』という事で整備していたからだが、結局、超甲巡が実質的に『巡洋戦艦』扱いに落ち着いてしまった&駆逐艦の大型化で、巡洋艦としての存在意義が薄れた阿賀野型軽巡洋艦は『最後の艦隊型軽巡』としての数奇な生涯を辿る事になった。
「阿賀野型って、演習で見たあの船?」
「そそ。今となっちゃ、中途半端って言われてるけど、造形は人気あるよ。んじゃ、魔導炉を点火するよ」
二人は予め、プリキュアに変身した上で、魔導炉に火を入れる。アリシア・テスタロッサの史実の死因が『魔導炉の無理な実験により、室内の酸素が失われたための窒息死』なので、宇宙空間でも行動できるプリキュアの姿でいたほうが安全だからだ。
「酸素濃度……変化なし。補助動力に接続っと……」
外部の入力機器で、機体に火を入れるキュアミラクル。酸素濃度に変化がないことを確認し、安堵する。はやてが『一応、六回も改良されてある』と言ったのは確かであった。出力は地球の動力のジェネレータ出力換算で、7000kw台。ZZガンダムやV2ガンダムに劣らない。補助動力もF91級の出力を持つので、単純計算では、ラー・カイラム級の竣工時のメインエンジンに匹敵するほどの数値だという。しかしこれでも、スーパーロボットに比べれば『ちゃちな玩具』に等しいという。
「スーパーロボットに比べれば、戦艦一個分の出力なんてのは『チャチな玩具』さ。マジンカイザーやマジンエンペラーG、真ゲッターロボ、ゴッドマーズの途方もないパワーに比べれば……」
機動兵器としては、一年戦争時のMAをも超える出力を持つが、マジンカイザーやゴッドマーズなどに比べれば『大したものではない』と明言したキュアミラクル。上には上がいる。それが世界の真実であった。
――ダイ・アナザー・デイでは、M粒子を用いた撹乱で、リベリオン側の航空無線の精度が大きく低下。練度の問題で『サッチウィーブ』を満足にこなせないことが多く、そこを対策済みの無線電話を持つ扶桑軍(パイロットは旧日本軍出身の義勇兵)航空隊が襲いかかったので、無惨な有様に陥るリベリオン航空隊は続出した。特に史実の絶望的な空戦を経験した者たちの敢闘精神は凄まじく、いくつものリベリオン航空隊が部隊ごと空に散っていった。酷い例では、『爆弾を満載した急降下爆撃機が発艦作業中の空母に突っ込み、魔女を含めた航空要員が全滅した』こともザラにあり、ダイ・アナザー・デイで魔女至上主義派が主張した『魔女同士の戦闘』への懸念はそもそも、そういう状況が起こることそのものが『指で数えられるくらい』しかなかった事、そもそも、手練れしかいない64Fと戦闘しようとする『物好き』はいなかった。更に言えば、『人同士の戦闘に従事する魔女が敵味方関係無く、ごく少数』であった事も関係している。64Fは瞬く間に航空軍規模に膨れ上がっていったが、魔女の所属人数は歴代のプリキュアを除いた場合の生え抜きは30人ほど。偵察班を省いた場合は更に減る。事変時代に属していた経験を持つ最高幹部が過半を占める上、人員を引き継いだ『343空』から引き続き、64Fの幹部を務めたのは、菅野と雁淵(孝)、林の三名のみ。人手不足なので、のぞみ、マナ、シャーリー(北条響)、めぐみら『戦闘能力が歴代でも上であるピンクプリキュア』達は即座に幹部扱いとして迎えられた。プリキュア達は自前の飛行能力を持つため、ダイ・アナザー・デイ当時には『触媒』の調達の遅れ、急激な世代交代によるライン切り替えの弊害で生産数が下がっていたストライカーユニットを調達する必要がないため、主計科も大歓迎(のぞみは錦から転じた都合上、プリキュアで唯一、ストライカーユニットを持っているが)であった――
――ダイ・アナザー・デイは『懸念されたことが起こらず、鋼鉄の嵐となった』ほど、通常兵器が主役であった。零戦と隼が主役であった緒戦、紫電改\烈風\陣風が主役となった中盤、戦後式ジェット機が登場した終盤戦への遷移は史実の兵器の進歩を凝縮したものであった。日本側は開始前、『1945年なのに、零式五二型もない』扶桑を猛批判したが、そもそも、扶桑は零式の発展性の限界を早期に見抜いており、零式の戦闘機としての小手先の性能向上(マイナーチェンジ)よりも『抜本的な次世代の新型機の開発』に力を入れていただけであった。だが、『貴様らはF4UやF6F以降の高性能機に、九六式や複葉機で挑めとでもいうのか!?死ねと言うようなものだ!!』と理不尽に怒鳴られ、新型機の生産が間に合わないという危機感を持った航空本部は結局、(『場繋ぎ』目的で)史実での後期の主力である『零式五X型系統』を緊急で開発し、既存型式からの改装含め、相当数を短期間で大規模に投入した。ただし、扶桑生え抜きのパイロットはそれらに触れる機会は殆どなく、大半が『日本からの義勇兵(実戦経験あり)』に回された。それは隼も同様で、史実の『水エタノール噴射装置』装備の三型が懸念された『エンジン寿命の短縮化』を承知の上で量産された。黒江の日本での釣り仲間であった老人らも『それらを駆る』形で『若き日の姿』で参戦しており、(史実と違い、稼働率を含めた全性能が向上している)全員が生還し、そのまま扶桑に移住。軍に残って教官をしている(齢90を超え、介護の問題で家族に疎んじられるよりも、若き日に戻って、戦闘機を動かしていたほうが幸せであるためもある)――
――ダイ・アナザー・デイに先立ち、当時の連合艦隊司令部はお忍びで、日本の海上自衛隊の護衛艦を見学しており、自衛隊側を困惑させた。当時の司令長官であった小沢治三郎曰く『儂らはとうに死人であるし、軍服姿で出歩くと、余計な事になりそうだ』との事であった。自衛隊側は『正式な申し出をしてくれれば、こちら側でなんとかしたのに』とぼやいたが、既にダイ・アナザー・デイの作戦計画策定で連合軍全体が不利益を被っていたので、やむなく『裏の手段』を取ったのだと、小沢治三郎は説明した。日本側はその後、ロマーニャとヒスパニア陸軍がいきなり主力を撃滅させられたという急報に狼狽。防衛作戦にこだわったら、友軍がいきなり壊滅させられていった事は日本の防衛当局と政治の議論を紛糾させたが、数カ国の軍隊がいきなり無力化させられる事態は想定しておらず、結局は緊急に現地派遣部隊の好きにさせる事にするなど、戦争指導の経験の無さによる不手際を露呈する結果で終わった。その後の扶桑のクーデターが鎮圧された後、憲法改正により、『皇室が軍と関係を持たなくなる』事に多数の古参軍人が反対したため、結局は英国式に『皇室から指揮権を内閣に委譲される』という文面となり、扶桑の世論に配慮した文面で落ち着いた。太平洋戦争前、小沢の辞任後の連合艦隊司令長官の人事も難航したが、航空閥かつ猛将の山口多聞が後任に収まった。連合艦隊旗艦は『戦後の趨勢に従い、指揮専用艦にすべし』という声が日本の官僚からあったが、結局は扶桑の最新最強の戦艦と空母が(妥協的に)任に当たるとされた。これは怪異が突発的に襲うからで、連合艦隊の解体も現地の世論にダメ出しされ、(任務部隊化はリベリオンの模倣ではないかという意見が多数を占めた)妥協的に連合艦隊内の編成を流動的にする案もあったが、これも廃案。結局は空母機動部隊が主流になった時勢に則り、第三艦隊=空母機動部隊という図式となり、ジェット機の配備で『軽空母』は不要とされ、大型正規空母と強襲揚陸艦で需要を賄うとされた。戦艦部隊は第一艦隊にするか、第二艦隊にするかで揉めたが、扶桑国民の存続の要望で戦艦部隊は分割し、打撃艦隊として適宜、入れ替えるということで落ち着いた。対外的な見栄の問題もあり、第一艦隊と第二艦隊は防諜の観点から『艦隊番号は一定しないが、同一の艦隊』とされるようになる。また、三笠型のような要塞艦は国家存亡の危機でもない限りは出動しないはずであったが、実際は『移動司令部』代わりに運用され、実質はヒンデンブルク級相当の艦艇へのカウンターパートとされた――
――キュアドリームは転生組で、最も波乱万丈な数年を過ごしたプリキュアであった。中島錦を素体に転生したため、自動的に扶桑軍人と扱われたが、本人は『一仕事を終えたら、予備役になって、教職に転職するつもりであった。『いざとなったら戦うけど、普段は教師に戻りたい』とのことで、軍上層部の承諾も得ていたし、皇室も『手柄を立てた褒美』ということで裁可していた。だが、第三者である日本の官僚が独善的な理由で話を潰してしまい、扶桑と日本で外交問題になりかけた。予備役編入された軍人の転職の是非に関わるからである。日本側は火消しを急いだが、日本国内の反対論にも配慮しなければならなかったため、日本の当局は『夢原大尉の予備役編入願いはなかったことにしてくれないか』と言い出し、代理で交渉に当たっていた後輩の朝日奈みらいをして『ふざけているんですか?』と怒気を孕んだ言葉を発せさせるほどであったが、日本の当局は複数の大臣が土下座で『我々としては、大尉が出した届けをなかったことにすることでしか、事を収められないのだ。国内の反対を押し切れば、政権の前途が危うくなる』と述べ、『太平洋戦争の敗北の記憶がある我が国では、軍人上がりは嫌われ者なのだ…わかってくれ……』と懺悔。みらいはのぞみからの伝言を伝え、『こちらが届けを取り下げることはできますが、これは扶桑の陛下が裁可された事なのです。あなた方は一国家の元首を嘘つきにするつもりですか?』と告げた。大臣達は『必ず埋め合わせをする。軍内で叶うことは叶える。これは総理大臣の意向でもある。扶桑の陛下には我々が公式に謝罪し、その上で辞表を総理に提出する』とハッキリと明言した。かくして、この騒動は『夢を理不尽に葬られた』のぞみを慮る圭子の行動で、瞬く間に世間の知るところとなり、日本政府は大慌てとなった。世間はこのことに激昂し、官僚の無知と傲慢不遜を叩いた。当局は『件の彼は既に更迭し、依願退職しております。本人は『夢原大尉がプリキュアであることは本気にしていなかった』とのことです。扶桑の軍人の雇用制度を混乱させる意図は無く、軍を退役する者がすぐに教職になろうとする事を問題だと考えての事だったが、熱くなってしまった』と延べ、反省の弁を述べております。当局は扶桑外務省へ『扶桑の天皇陛下に直ちに深く謝罪をし、大臣も近く……』と記者会見で見解を述べた。こうして、のぞみは事件で負った損害の埋め合わせとして、『デザリアム戦役の戦功』を名目に少佐へ昇進。1950年の年明けを持って、中佐に昇進させる事が決定し、『プリキュアの事実上のリーダー格』であることもあり、危険手当は通常の魔女の倍以上の金額が事件以後は支払われ、教職志望であった事の埋め合わせか、軍学校の教諭資格も与えられた。だが、世界情勢はそんな日本のせめてもの心遣いをも不可能にした。扶桑側で太平洋戦争が勃発したからだ。こうなると、扶桑の国民の間では『前線に出征してこそ華』という意識が強まるため、のぞみを『軍学校へ出向させる』話は無くなった。上層部も『のぞみは前線に必要である』と判断を下したからである。そのため、のぞみとしては散々であったが、デザリアム戦役で周囲に迷惑をかけたのもあり、粛々とその決定を受け入れ、1949年に至るまで戦い続けている――
――デザリアム戦役では『迷惑をかけた』というように、独房入りも経験している。りんが入院していた軍病院が『爆破された』と聞き、半狂乱に陥ったためだ。頭に血が登り、黒江とも殴り合いもしている。しかしながら、ヌーベルエゥーゴのテロの被害者の生き残りの少女の述べた言葉をきっかけに『シャイニングドリーム』へのミラクルライト無しでの変身を、ZEROとの融合でエターニティドリームへ更にパワーアップを果たす、ネオ・ジオン、ヌーベルエゥーゴとの戦いの中で『ガンダムX』及び、その後継機『ガンダムダブルエックス』のパイロットになるなど、デザリアム戦役(と、それに内包されるラプラス戦役とムーンクライシス事件)の中心になるなど、プリキュアの事実上の代表格であった。その一方で、マジンガーと魂レベルで融合した事により、半ば『ロボットガールズ』とも化していた。そのため、朝日奈みらいとの喧嘩ではその力を奮い、オーバー・ザ・レインボー形態の朝日奈みらいを防戦一方に追い込むほどの力を見せている。また、マジンガーと融合していながら、ゲッターロボの属性も有している(魔神皇帝はゲッター線と関係があるため)。そのため、本人が覚醒後に『プリキュア5の世界』を訪れた際には『シャドームーンとも戦える』姿を見せ、現地世界の彼女自身を大いに僻ませてしまったりする。また、存在自体の変化により、『プリキュア・ブレス』(高速戦隊ターボレンジャーが開発した、プリキュア達の臨時の変身アイテム。固有の変身アイテムが機能不全に陥った際の代替となるもので、高速戦隊ターボレンジャーの面々が超獣戦隊ライブマンの面々と共に開発した)無しでも変身が可能となっている。ナリタブライアンはのぞみと入れ替わっている際には、この方法で変身をするようにしている。そのプロセスは奇しくも、乙HIME(オトメ)がローブを纏う際と似ていた――
――ブライアンはシンザンにも臆せずに質問を率直に行える胆力を持つが、その一方、内心で怪我の悪化を恐れると同時に、姉が自分との約束を果たさずに、ターフから去る事を酷く恐れてもいた。残酷にも、怪我はブライアンの全盛期を終わらせ、同期のサクラローレルはそれを乗り越え、『遅れてきた全盛期』を謳歌するに至っていたわけだが、未来世界とテイオー達が接触し、自身もその輪に加わったことで『前世(競争・種牡馬であった頃)』の記憶が宿り、サクラローレルに待ち受ける『残酷な未来』を思い出した。その出現の阻止には、自分の完全復活が不可欠と判断。精神を鍛え直すことと『怪我を完治させてくれたことへのお礼』を兼ね、のぞみに成り代わって、キュアドリームとして戦う(入れ替えローブを使用した上で)事を伝え、了承されたので、ブライアンはレースに必要な『不屈の闘志』を再び蘇らすため、のぞみとして戦場に立つ。戦友(記憶が宿った後はそう認識している)のサクラローレルを『残酷な未来』から救い、自身が前世では成し遂げられなかった『レースの場での復活』を果たすために――
――今抱いている願いが叶うのなら、私はなんだってやる。テイオーやエアグルーヴのできん『汚れ仕事』であろうが、シンザンの言う『古い世代を納得させるだけの戦績を残す事』だろうが……。前世で掴めなかった『太陽の輝き』つかめるのなら……!!――
ブライアンはそう独白し、夢原のぞみの姿から、一気にシャイニングドリームへ変身を敢行する。
『メタモルフォーゼ!!』
プリキュアになっている時にイヤリングがあるであろう箇所から純白の光が奔り、体全体を包む。変身した姿と変身前の姿が重なりあうようなビジョンが展開されるのだが、サナギから成熟した蝶に変態するかのような印象を受ける。そして、変身の完了と同時に、背中の白い翼を広げ、ポーズを決める。『本来とは異なる方法』での変身ながら、バッチリ決まっている。
『ショルダースライサー!!』
即座にショルダースライサーを二刀流で召喚、目の前に陣取る『バダンの兵士たち』に斬りかかる。レースで培った踏み込みのテクニックを応用しての斬り込みであった。元々、ブライアンはスピードとパワーを兼ね備えていたが、その特性は他人の体を使い、他人の異能を使っている状態でも健在であり、ブライアンは近代兵器で武装する兵士達を翻弄し、剣技で倒していく。そして、応戦しようとするトーチカや銃座を一掃し、廻天の出撃の露払いを行うべく……。
『塵一つ残さずに消滅させてやる!!』
シャイニングドリームのコスチュームのリボン(蝶形)が変形し、Vの字を象った形となる。そのリボンが更に二重にせり出し、超高熱を発し始める。
「露払いだ、地獄で閻魔への言い訳でも考えておくんだな!!」
そう言い放ち、リボンに宿る『熱エネルギー』が最大になったと同時に解放。超高熱線として放った。その名も。
『グレェェトブラスタァァァ!!』
マジンエンペラーGの必殺武器『グレートブラスター』。ファイヤーブラスターと同等以上の能力を誇る超高熱線。それを放ったのである。如何に重装甲のドイツ製の兵器といえど、これにかかっては『ドロドロに溶ける』のみ。直撃した場合は跡形もなく消滅。直撃を避けたとしても、余波だけで戦車の表面が赤熱化し、普通の人間では『戦闘車両の中に入っていても蒸し焼きになる』。ブライアンはこの技で自分に敵の注意を向けさせる。緊迫した状況でしか得られないもの。それをブライアンは求めている。同時に、世界を股にかけての巨悪と言っていい連中を見逃す道理はないという意志も持つ。
(正義か悪。こういう二元論は世の中で通用しないと思っていたが、仮面ライダーになった男たちの運命を狂わせ、時間も空間も超え、世界を股にかけての悪行を平然と行う。その存在を知った以上……黙ってはおれん!!)
仮面ライダーになった青年たち……例えば、本郷猛だが、城南大学始まって以来の秀才にして、スポーツ万能。真っ当な人生を送れていたのなら、青年期である1970年代の内に、五輪に一回は出場していただろうし、壮年期に入っても、城南大学にゼミを持つ『生化学教授』にでもなれていたのは想像に難くない。風見志郎にしても、体操選手としての輝しいキャリア、城茂はアメリカンフットボールで名を馳せていたはずである。そんな未来を奪い、『機械のバケモノ』同然の体にしてしまった『組織』の非人道性と無情性。ブライアンはそれらを知った故に、自身も『彼ら』の何かの役に立ちたかった。だが、自身は競争者・競技者として『守る必要のある柵』が多すぎる。故に、キュアドリームという他人の体を借り、その姿で戦う事を『選んだ』。無論、表向きは『自分はこの戦いに一切関わっていない』。その事を肝に銘じつつ、裏でキュアドリームとして戦うことで、平行世界を股にかける『組織』の非道に立ち向かう事を選んだ。それこそがブライアンなりのドラえもん達への『恩返し』だった。