ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第四百八十五話「状況説明 3」

――ダイ・アナザー・デイで浮き彫りになった『魔女の任務不服従』。ダイ・アナザー・デイ作戦当時、64Fの援護のつもりで配置した魔女の部隊がサボタージュで『任務を放棄』したのだ。更に、その魔女の部隊の上級指揮官(カールスラント、扶桑の両国出身)が『不協力』の方針を徹底させていたことが判明し、連合軍は早くも窮地に陥った。だが、64Fは黒江らのツテで地球連邦軍その他の強力な支援を獲得し、装備の刷新に成功。プリキュアらの参戦もあり、文字通りに単独で戦線の維持に成功した。大佐~少将級の指揮官が周りの魔女の航空部隊に不協力を徹底させていたことはロンメルの抜き打ち査察で発覚。直ちに彼は彼女らを罷免し、指揮権を剥奪。部隊を自分の指揮下に入れた。次に、全滅の可能性を承知の上で、敵の主力艦隊への攻撃をさせた。敵の主力艦はVT信管無しでも『正確無比かつ、空を覆う』対空砲火を誇っており、状況の変化を思い知らせるための『尊い犠牲』とした。連合軍は欧州が陥落すれば、有名無実化は確実である。『政治ごっこ』は許されないという事を示すための『計算された犠牲』である。武子は罷免された佐官級の魔女から『司令級や教官の魔女を好き勝手に引き抜いたりしているのを黙認する訳にいかなかったんだ!!』という批判を浴びたが、欧州が落ちれば、そんなことは言ってられなくなる。通常、エース級の魔女は中尉~大佐までが大半であり、扶桑のように、下士官のほうが多いのは異端であるし、武子は元々、育成に定評があったので、64Fのような『精鋭部隊の指揮は面白みがない』と述べていた通り、やむなく引き受けたという認識であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイは結果として、連合軍は魔女の統制を強く行うのを避けていたという政治的事情を露呈させ、銃後からの上層部への非難を起こした。魔女は通常の部隊より現場裁量権が大きかったが、ダイ・アナザー・デイの出来事を期に、『大きな現場裁量権』は64F及び、司令部直轄の部隊のみの権利に改められた。同時に、『一般兵士が必死に戦っているのに、魔女は物見遊山をしていた』という批判が起こる事になった。最前線で戦い続けた64Fが『模範的』と高く評価される一方、一般の魔女達は『戦っていたのはごく一部』であった事の発覚により、世間的にバッシングを浴びた。魔女達は『人同士の戦争に加担しない』という暗黙のルールがあると宣ったが、それはナポレオン戦争の後で生まれた、各国の魔女たちの慣習にすぎないため、世界情勢の急変の中では、主張の正当性を損ねた。さらに言えば、ティターンズの超人達の前にプリキュア達も一敗地に塗れることがままあり、歴代のヒーロー達に救われる事があったので、プリキュア達に『現役時代の技能だけでは、この先は立ち行かなくなる』という危機意識を抱かせたのも事実であった。同時に、黒江たちが聖闘士である事も判明したため、それはそれで、日本で大きなセンセーションを巻き起こした――

 

 

 

 

 

 

――のぞみはプリキュアの代表格扱いになっていたため、転職活動にまつわる事件の後は多額の補償金などが舞い込む事になった。1947年に『予てより婚約していた』コージと結婚し、翌年には南洋で造成中の住宅街に居を構えた。少佐に任官された後は収入が更に増加した。日本でちょうど『プリキュア5』の人気が再燃し、『本人』という事で、顔出しも増えたからである。教師にはなれなかったが、軍人としては『無条件で大佐まで約束された(将官の道も拓けている)』状態で佐官となった。その代わりに後方任務は無く、常に前線勤務となった。扶桑の世論は軍学校を軽んじるためである。仕方がないが、日本系国家の常であった。事件後は正式に黒江の配下として扱われ、実質的に黒田と同等のポジションとなるなど、中島錦の転じた存在という対外的な説明はなされていても、実質的には『夢原のぞみとしての個を確立』させた扱いである。なお、戸籍は錦のそれを流用したために、1949年の段階では『二十代に入っている』(肉体年齢は15歳前後で固定だが)――

 

 

 

――のぞみの話題は日本の世論を扶桑に好意的に傾かせるための施策でもある。この頃は日本側も『国力に劣るなら、短期決戦で光明を見出すほかない』という(史実日本軍と同様の)戦争遂行の結論を見出しており、前線の人材を短期的に充実させてでも、太平洋戦争を早期に終わらせるしかビジョンを見いだせないのが、日本系国家の悲劇であった。そんな政治的現実をよそに、聖闘士の実在はセンセーショナルであった。黒江たちが『聖闘士』であり、黄金聖衣を持つということは、仕える神がいることを意味するからである。更に、黒江たちが黄金聖衣を持つということは『聖戦が終わった後の世代交代』を済ませた後であるということをも意味する――

 

 

 

「夢原女史、よろしいのですか?このような報道は」

 

「先輩が聖闘士なのを発表するのは、あたしの事件を受けた『聖上』(昭和天皇)のご意思だよ。隠してきたことでの弊害のほうが大きかったからね」

 

のぞみはエアグルーヴにそう明言する。昭和天皇の意志であると。昭和天皇は『君らが隠したことで大問題が立て続けに起こった。私は何を信じれば良いのだね』と軍の高官らを前にして述べ、彼らを青くさせた。ミーナや志賀の起こした不祥事からというものの、自分の存在を先方にちらつかせないと、まともに取り合ってもくれないという問題に苦言を呈した。それは日本の官僚の高慢、ミーナの無知、志賀の頑固さが原因であったのだが、自分の存在をちらつかせた途端に、相手方が平謝りになった二例(ミーナの一件やのぞみの事件)は昭和天皇に歯がゆさを抱かせた。そのため、彼は日本への訪問を強く望んだ。側近たちも『自分の忠勇なる味方が理不尽な目にあった』と悩む昭和天皇の姿に心を痛め、日本側に会談を申し込んだ。日本側はこれに思いっきり困惑した。『国家元首としての昭和天皇が日本の地に足を踏み入れる』。それはいろんな意味でセンセーションを巻き起こすからだ。野党もこれに口は挟めなかった。扶桑の昭和天皇は自分達の知る彼と『似て非なる存在である』からで、皇室軍人(魔女)である内親王が何人も皇太子(令和の世での上皇陛下)の姉として存在しているなど、史実より子沢山である。

 

「えーと。扶桑の昭和天皇陛下は去る四月2x日、日本訪問を表明。訪問にあたっては、海路では戦艦大和に座乗すると……あたしの事が効いたな。聖上も大げさだなぁ、大和で乗り付けるんだ」

 

「日本の新聞の反応はどうですか」

 

「何分、日本じゃとうに死人の皇族が、とうに海の藻屑になってていいはずの軍艦に乗ってくるからね。日本側も応対が大変だよ。王族クラスなら、相応の出迎えが必要だし、大和に見劣りしない船で先導しないといけなくなる」

 

「戦艦大和に見劣りしない船が自衛隊にありますか?」

 

「いずも級を持ってくるだろうね。もっとも、こっちでの大和、艦尾延長とかの改造で大きくなってるから、いずもでも小さく見えるだろうけど」

 

扶桑の戦艦大和はM動乱~クーデターまでの期間にFARMを受けているので、諸元は史実よりすべての点で拡大しており、全長は290m、全幅も40mを超えている。これは主砲の換装による威力増大に伴う安定性確保のためである。外観も『宇宙戦艦ヤマトの上部構造物を戦艦大和に備え付けた』と表現されるほどに変化し、煙突は偽装機能付きのVLS(要は煙突ミサイル)化されている。それは日本側への扶桑の示威に効果抜群であった。扶桑のバックについている『もう一つの勢力』が『宇宙戦艦ヤマトを造れる存在』である事を示しているからだ。

 

「しかし、自衛隊はあなたの国とどう付き合いを?」

 

「現場は良いんだけど官僚が主導権争いをしてるって感じ。現場は和気あいあいだよ。艦娘と会えるってんで、海自はウハウハだって」

 

「艦娘はどのような扱いで?」

 

「うーん。あたしらと似たような扱いかな。連合艦隊司令部直轄だしね。現れ始めたのが、1937年の事変の時で、お上が感激したって聞いてる。船の化身だし、奴さん」

 

「あ、問題が外国で起こったって、山口長官が言ってたな」

 

「問題?」

 

「ドイツだよ、ドイツ。連中、ああいう女性に擬人化された軍艦を嫌うのが多いそうで。ビスマルクさんも、実艦の艦長と折り合い悪いからってんで、ウチの国に移住したから」

 

ビスマルクは祖国で『エルンスト・リンデマン』大佐と折り合いが悪く、結局はカール・デーニッツが失脚前に移住を斡旋させたと、のぞみは言った。その後を追うように、プリンツ・オイゲン、グラーフ・ツェッペリンも移住。扶桑海軍も、カールスラント海軍に苦言を呈する事態だったという。カールスラント海軍も、リンデマン大佐をビスマルク艦長職から罷免させざるを得なくなったり、ビスマルクらの砲熕装備の製造設備を扶桑に無償提供せざるを得なかったなど、大変な手間がかかったからだ。

 

「いいのですか?」

 

「アメリカなんて、アイオワさんが来たら、横須賀の空母が乗員の歓声で揺れたそうだけど、お国柄だね」

 

「……」

 

艦娘「アイオワ」はビスマルクと対照的に、横須賀の原子力空母が歓声で揺れたというほどにフィーバー。戦艦艦娘一のパワー(アイオワの史実の韋駄天の反映か)を誇る(大和を逆に引きずり回せるほど)、大和に迫る火力はアメリカ海軍を歓喜の渦に巻き込んだ。大和を取っ組み合いなら、一方的に組み伏せられると豪語し、砲弾の殴り合いでも『やや互角』であるので、扶桑には心強い援軍であった。

 

「あなた達が競走馬の関係者に喜ばれたのと一緒だね。あなた達も『帰ってきた』ようなものだし」

 

「それはそうなのですが、ひ孫と言われても……」

 

「いいじゃない。子孫が立派にやってるんだし。ブライアンちゃんは直接の子孫は残ってない(サイアーライン断絶済み)から、寂しそうだったけどね」

 

「しかし、ブライアンは何を目指し始めたのです?本人から聞きましたが……」

 

「そうだね、史実超えかな。あの子は前世の全部の記憶が戻ってるようでね。それで、同期のサクラローレルちゃんの運命を変えたいみたい」

 

「ローレルの?」

 

「うん。凱旋門賞を走れないそうなんだ、その子。その前哨戦で競争能力喪失の大怪我を負う。ブライアンちゃん、本人に言おうとしたけど、ゴルシちゃんに止められててね」

 

「ブライアンはそれをいつ?」

 

「記憶が戻った時に、ネットで調べたみたい。それで、ね。ゴルシちゃんに止められてね。それで自分が王座に返り咲くことでしか、ローレルちゃんを救う手立てがないって考えたんだろうね」

 

「ブライアンめ、相談してくれればいいものを……!」

 

「できると思う?前世の記憶が戻ったなんて」

 

「そ、それは……」

 

エアグルーヴも流石にたじろぐ。自分も本気にしないことはわかるからだ。更に言えば、前世の記憶を得たことで、自分の下の妹達に待ち受ける運命(成功しない)をも知ってしまったことにもなるので、それでも、ブライアンは『下の妹達を学園に入れろうとした』。ブライアンは見かけは無頼だが、他人には意外に優しい。妹のビワタケヒデの入学の斡旋のことで(事業が傾いていた)父と大喧嘩になり、父に勘当を言い渡された事を、エアグルーヴに教える。

 

「なっ!?何故です、夢原女史!」

 

「ブライアンちゃんの実家の酒屋、不景気と投資の失敗で経営が思わしくなくてね。ブライアンちゃんの賞金をアテにしてた親父さんと揉めたんだって。それと、妹さんの今後のことで大喧嘩して、勘当されたんだ」

 

「か、勘当!?」

 

「その場の勢いで、親父さんも酒が入ってたそうで、ハヤヒデちゃんは『父の本心ではありません』って言ってるんだけど、ああ見えて、ブライアンちゃんはナイーブだから」

 

「奴がナイーブ…?」

 

「ああ見えて、意外に弱いところがあるんだ。父親と揉めた時、電話の声が泣き声になったんで、親父さんが言葉に詰まったと、ハヤヒデちゃんが言ってたよ」

 

ハヤヒデは父親を翻意させようと、必死に説得を続けている。ブライアンが泣くことは、家族であるハヤヒデであっても、十年は見ていないほどであったからである。

 

「ブライアンちゃん、父親に『復活を信じてもらえてなかった』のが堪えたらしくて、ゴルシちゃんにすがりついて泣いててね…。あたしもいたたまれなかったよ」

 

エアグルーヴも表情を暗くする。ブライアンが『誰かにすがりついて泣く』など想像もできないが、ブライアンの心痛の程はわかる。

 

「ブライアンはなんと……」

 

「オグリキャップちゃんが励ましてくれてたよ。なんでも、ブライアンちゃんが子供の頃に会ってたみたいでね」

 

のぞみは『ルドルフから聞いた話』ということで、エアグルーヴに教える。オグリキャップとタマモクロスが行った『歴史改変』に伴う『ウマ娘としてのバトンの引き継ぎ』があった事を。幼少期のブライアンは現在からは想像もできないほどに臆病で、引っ込み思案、人見知りな性格であった。父はそんな娘を見かね、その当時の国民的ウマ娘であった『オグリキャップ』の引退レースへ連れていった。史実での『1990年の有馬記念』にあたるレースであった。オグリキャップとタマモクロスはブライアンを認識しており、レースを終えた後に会ってやり、トレセン学園に行きたいというブライアンを激励し、オグリは幼少期のブライアンの頭をなでながら、『君なら、きっと……夢を叶えられるさ。どんな困難があろうと』という言葉をかけた。周囲はオグリの行動に驚いていたが、オグリはレース以外では温厚で、(自分が苦労人であったためか)一流のウマ娘となった後もファンサービスを欠かさず、周囲への気づかいも怠らないなど、飾らない人柄が人気の理由でもあった。

 

「オグリ先輩、ブライアンにそんな事を…」

 

「ブライアンちゃんはそれで、トレセン学園に行く決心がついたそうな。それもあって、ブライアンちゃんのことを気にかけてたって」

 

入学後のブライアンは同期かつ、姉御肌のヒシアマゾンになついた(なお、ヒシアマゾンはブライアンとは別の寮の寮長である)が、オグリキャップとの関係が切れたわけではなく、ちょくちょく会っていた。(同じ寮であるので)ブライアンはオグリの生き様(最後に輝きを残した)に憧れており、オグリもブライアンに目をかけ、応援した。この二人の繋がりにより、改変前と異なる道をブライアンは辿り、『チーム・リギル』にいるのは本意ではなく、『オグリキャップが在籍していたチームに移籍したい』という本心を言い出せぬままで、シニア級を迎えてしまった事になる。つまり、キングヘイローが起こした騒動はブライアンには『移籍の大義名分が得られる絶好の機会』だったという裏事情があった事になる。リギルに筋を通しつつも、『チーム・スピカ』へ移籍させる決定をすんなり受け入れた真の理由が。

 

「それで……。しかし、ブライアンは東条トレーナーの顔を立てたという事でしょうか?」

 

「彼女の指導で、チームの一員としての振る舞いができるようになったのは事実だからね。恩義を感じてるのは確かさ」

 

「今回の事件を移籍の理由付けにしたと?」

 

「恩義があると、言い出せないものだからね。今回のことは大義名分にしたと思うよ。チームの移籍ってのは、世の中の人が思うようには容易い事じゃないからね」

 

「ブライアンがオグリ先輩に懐いているのは、そういう事でしたか」

 

「オグリちゃんが歴史改変をした時の副産物的なものさ。オグリちゃんとタマちゃんが遭遇した偶然からの行動が歴史に影響がいい方向で出たんだよ。ブライアンちゃんの親父さんは『有馬記念の奇跡は、オグリだから出来た事』って考えてた。それが間違いのもとさ」

 

のぞみはそうまとめる。オグリの起こした奇跡を間近で見た故に、ブライアンはそれにすがった。だが、父親は『妹達を学園に行かせたいのなら、さっさと引退して、慰労金や年金を受け取れるようにしろ。復活にかけるよりも……』と競技者としての全盛期を終えた者は『晩節を汚さないうちに…』と考えていた。だが、オグリやテイオーが奇跡を起こしてしまったため、彼の思うような結果とはならず、次女との確執を産んでしまった。結局、彼は(次女の勘当で親類一同からの非難を浴びたせいもあり)大病を患い、本来はどこかへ嫁に行かせる気であった長女に家業を継がせる(廃業も考えたが、妻が(ハヤヒデに継がせる事を)ことを促した。ブライアンはこうして、野比家への引っ越しをゆっくりと準備し始める。のぞみはエアグルーヴに事情を説明する事で、ブライアンの傷心を知らせた。エアグルーヴも『ブライアンが実は無頼であると取り繕っているだけで、ナイーブな性格』である事を知った事により、ブライアンへの接し方を変えていき、オグリやタマモの力を借りる形で、ブライアンの復活に協力していくのである。オグリ、テイオーの二人が奇跡をなし得たことはブライアンの家庭に暗い影を落とすが、父の死後、家督を継いだハヤヒデの意志で勘当を解かれる(父のヒステリーで勘当されたようなもので、ブライアンに非はないため)。ブライアンはそんな家庭の事情に翻弄されつつも、自分の願いを叶えるために行動していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本は内部の論調を抑え込むこむ事に必死であった。日本政府としては、扶桑の富の力で久方ぶりの好景気が訪れかけていたので、数十年単位で不景気に喘いできた頃に戻りたくはないのは誰もが思う所。ところが、一般国民や政府組織の官僚に至るまでが扶桑を『大日本帝国』と同一視してしまい、扶桑を混乱させることが続いていた。織田信長が政権を握り、その時点で中華文化圏が崩壊し、アジア太平洋地域唯一の大国となったという時点で『異なる流れ』であったのを『自分達が近づけた』点で、日本はある種の罪を背負っていると認識している層は扶桑への損害補償を行うのを推進させる。左派は『扶桑を戦争に負かせて、巨大化した軍隊は掃海部門以外を解体させる。防衛の必要があるなら、必要最小限の能力を持つ組織を改めて設立させて、米軍式の武器を持たせればいい』という高慢と偏見に溢れた意識が支配的であり、『利敵行為』と取られても仕方がない有様であった。扶桑はその摘発を国内で行いつつ、新兵器の配備を急いだ。日本はその補助を行いつつ、扶桑の富と人手で経済を立て直していった。そのため、扶桑には『是非がでも勝ってもらわないと困る』のだ。扶桑の植民地に政治的に手が出せないからと、敵に協力して、敵に奪ってもらうという思考回路になっている時点で、もはや獅子身中の虫である。日本も公安警察を駆使して過激派を摘発し、扶桑の現況の啓蒙に努めている。『軍隊がある以外は戦後期に近い雰囲気を持つ』と。実際、扶桑は戦国期の終わった後は交易で国力を上げており、史実の日本帝国よりも遥かに豊かな暮らしを実現していたからだ。

 

 

 

 

 

 

――連合軍は地球連邦軍の力を借り、怪異から解放されたパリの地下で眠っていた『何か』の遺産』を1947年に発見した。その調査団に加わっていたキュアミューズ(アストルフォ)は『どこかで見たような』艦容に腰を抜かす羽目になった――

 

「に、Ν-ノーチラス号だーーーー!!これーーーー!!」

 

ガリアの地下で眠っていたその遺物は『ふしぎの海のナディア』のN-ノーチラス号に酷似していた。全長は宇宙戦艦ヤマトより多少大きく、ラー・カイラムよりは小ぶりであった。動力も地球連邦では使用を縮小し始めている『旧式の縮退炉』及び『対消滅エンジン』と同等の技術のもの。直ちに地球連邦軍最新鋭のドック艦と作業用のプロトゲッターが手配され、回収作業が行われた。これはガリア政府には通告されていない。ペリーヌ・クロステルマンの要請によるものである。

 

「地球系の文明がこの世界に置いていったのか、どこかの異世界から、次元事故で流れ着いたのか。アニメだとノーチラス号は失われてるから、それとは別の同型艦かな?」

 

当時のガリアの掘削技術では到達出来ない深度に存在したそれは回収され、装備その他の修復と置き換えが進められた後に、地球連邦軍の軍艦として編入される。アニメと違い、後部に主砲塔が存在する。

 

「なるほど。別世界のそれそのものか、作った連中が気まぐれに埋めていったのか。それはともかくも、回収して~」

 

「回収後は地球連邦の科学局に分析してもらいましょう。我々(連合軍)の手には負えませんからね」

 

「それがいいよ。ド・ゴールに知られたら、野心を持つからね」

 

それの同型艦はパリとロンドンの地下深くに埋まっており、二隻が発見された。知らせを受けた真田志郎は『どこかの誰かが危機から生き延びる術として、埋没させたんだろうが、長い年月の間に地殻変動などで深度がどんどん深くなり、やがて存在も忘れ去られ、伝説だけが残ったのだろう』との事。ノーチラスという名だけが伝わっていた事から、各世界で海底二万里という物語として伝わったのでは?という仮説を立てたという。

 

「どこの誰かはわかりませんが、こんな代物を置いていってくれたのは感謝するべきですかな」

 

「技術的には、第四世代相当の宇宙戦艦だからね。これは地球連邦軍に管理してもらおう」

 

「修復には何年を?」

 

「地球連邦軍の技術なら、数年で解析と修復を終えるはずだよ。より進んだ『第五世代』の宇宙戦艦を持ってるからね、奴さん」

 

かのヱクセリヲンと同等の技術で構成されたその艦は便宜上、『N-ノーチラス号』と呼ばれ、ロンドンにあった同型艦共々、地球連邦軍の管理する扶桑の地下区間で解析と修復作業が試みられ、折を見て、扶桑軍籍に登録される見通しである。つまり、『どこかの誰か』が何らかの理由で置いていったが、知られることがないまま、1940年代まで眠っていた遺失物である。地球はどうも、この手のものに縁があるらしい。かくして、それらは地球連邦軍の手で数年がかりの修復がなされ、内部の一部区画を地球連邦軍の規格に作り直す事も行われた。

 

 

 

 

 

―それから時と場所は移って――

 

 

――2023年の野比家の地下格納庫の船舶管理区――

 

仕事を終えたのぞみはエアグルーヴ、マルゼンスキーの二人を引き連れ、管理を新たに任された艦艇を見せる。

 

「これが、うちの世界で発見された、どこかの誰かが置いていった宇宙戦艦さ。修復が終わって、ここでしばらく預かる事になったんだ」

 

「N-ノーチラス号?ずいぶんとたいそれた代物ね」

 

「あなた達に見せたのは、いざとなったら、ここを避難場所に使うからだよ。日本政府からの要請が出てね」

 

「日本政府から?何故です?」

 

「ここのところ、ジオン残党がタイムパラドックスを承知の上で、襲撃してきてるでしょ?そんな事態に備えた地下避難所が欲しいんだって。ジオンの技術は、21世紀の頃の地下街なら簡単に壊せる。ラー・カイラム級や宇宙戦艦ヤマトの存在は通達したし、ゲッターアークも知られたから、こいつが増えたところで、大したことないさ」

 

「全長400mから500mもある宇宙戦艦を何隻も持っている事に、国連は?」

 

「ジオン残党の襲撃を各国は重く見てね。存在を容認したよ。ザンジバル級やサダラーン級を使われたら、この時代の空軍じゃ、もれなく壊滅するからね。ま、有り体に言えば『お前らでなんとかしろ!!』だけどさ」

 

「こいつをノアの方舟にしたいのね、日本政府は」

 

「まぁ、この時代なら、宇宙戦艦は絶対に安全な避難手段だからね。この時代の大陸間弾道弾くらいなら、びくともしない装甲を持つから」

 

「でも、ジオン残党は何を狙ってるの?」

 

「この時代の野比家の人間を殺すためさ。自分らに仇なす者は過去の人間であろうが、情け容赦しない。だから、自衛隊の重武装化にも抵抗が無くなってきたのさ。だけど、ジオン残党はザンジバルや往還機からの空挺降下で日本の国会を抑えようと思えば、いつでもできる。だから、移動シェルターを欲しがってるのさ」

 

スーパーX(初代)の頃からそうだが、日本政府は戦後の時代から『中枢部の制圧』を織り込み済みのような節があり、かの有名なスーパーXも初代の段階では『要人の移動シェルター』を目指しており、首都防衛は副次的な目的であったという。

 

「昔、バブルの頃に移動シェルターを『首都防衛戦闘機』って名目で作ってたくらいだからね。現存していないけど」

 

「現存していないとは?」

 

「1984年の試運転の時に、想定外に強い落雷で起こった操縦回路の故障で墜落して失われたんだそうな。口伝だから、当てにならない情報らしいんだけどね。で、その二代後の後継機は原子力事故の被害抑制のために開発されたんだけど、自衛隊が野党の追求を恐れて、松代大本営跡に隠したまんま、とうとう使う機会を二回も逃す結果になったんで、ウチの隊がこっそりこの艦に積んだわけ。1990年代後半の製造だから、官僚も気に留めないけど、中身はオーバーテクノロジーだらけだった。あの艦のようにね」

 

「オーバーテクノロジーの船に、オーバーテクノロジーの飛行機を載せたのね?」

 

「学園都市の反乱に備えて、自衛隊、裏で相当の兵器を蓄えてたみたいだからね。ジオン残党の初襲撃の時にも、裏で投入が検討されたみたいだけど、結局は現地部隊が勇み足で現有装備で立ち向かったんで、損害が出ちゃって。Gフォースはそれを体験した故に、官僚に危険視された隊員が集められてる。もっとも、今じゃ、全国に現れてるから、Gフォースが花形に祭り上げられて、避難手段はないかって聞いてくる。政治屋や官僚は現金なもんさ」

 

のぞみは愚痴る。実際、日本の政治家や官僚の多くは『実戦経験を持つ者』を危険視し、閑職に追い込みたがるが、実際には彼らだけでは『対策もクソもない』ため、しわ寄せが現場の自分達にかかってくるからだろう。ジオン残党は基本的に『MS偏重』の傾向が強いため、自衛隊も戦術次第で対抗できる。M粒子の使用が憚られるからである。また、地球連邦軍の一年戦争前の頃の兵器と違い、21世紀式の兵器はマニュアル操作の余地が大きかったのも、ジオン残党には想定外であった。過度の自動化が連邦軍で正されるのは、ガトランティス戦役、デザリアム戦役での犠牲を経なくてはならなかったが、機械の操作における過度の自動化を戒める予兆は21世紀中にあったのである。

 

「それで、この艦の存在を政府に明かしたのね」

 

「まぁ、まだ正式に軍艦としては登録してないけどね。あ、マルゼンちゃん、後で音楽のミュージック・クリップ撮るから、曲を覚えといて。この艦をバックにするから」

 

「すると、ふしぎの海のナディアの『ブルーウォーター』?」

 

「あなたなら歌えるっしょ?」

 

「一番は覚えてるんだけど、二番は覚えてないのよ。子供の頃、お母さんがよく聞いてたけど、一番をリピートしてたのよね。

 

「私はバックダンサーを?」

 

「いや、一緒にハモってもらいたいみたいだよ、上は」

 

「なぁ!?」

 

と、いきなりの事にうろたえるエアグルーヴ。

 

「まぁ、上からのメールだと、一週間後に撮影だそうだから、多少の時間はあるさ。とりあえず、念には念を入れて、もしもって時に一般人を避難させるための通路を確認するから、ついてきて」

 

この頃に、野比家の地下格納庫はジオン残党の『時を超えた襲来』に窮した日本政府の要請で『場所をぼかした』上で『政府の整備した避難所』として公表された。ジオン残党が艦砲やMAでの無差別破壊に出る場合に備えての避難所を日本政府が確保したがったためである。そのため、そのための区画を新規に設ける必要が生じ、ついでに艦艇収容用のドックも増設したため、地下空間はススキヶ原の全域どころか、その隣町にも広がりを見せ、地下都市の様相を呈し始めた。これが22世紀の統合戦争などの戦禍から人々を救う『地下都市』の雛形となったと記録される。地下都市は徐々に『宇宙戦争から人々を守る』という遠大な目標のもとに整備されだすが、日本以外は中途半端な規模で建設が止まってしまう。色々な兼ね合いによるものであったが、日本は代々の政権が全国津々浦々に建設させた事や、『遺産の保護のために、街ごと埋没させられるようにした』ことが後々の戦乱期の際の人的保護や『人類の至宝の保護』に寄与する。

 

「日本はジオン残党の何を恐れるのです?」

 

「質量弾攻撃だね。高高度からから数十mくらいの石を極超音速~亜光速で落とせば、街の一個は軽く消し飛ぶ。艦艇を持ち出されたら、21世紀の戦闘機じゃ大損害は必至。それに気づいたから、のび太君が持つっていう噂のあった超兵器に頼ったって感じ」

 

のぞみは新設の通路を二人と共に歩きつつ、避難経路を確認する。ススキヶ原に地下鉄駅はないが、地下街への入り口という体裁で通路の入り口が設けられている。駅周辺に通じる通路『Sルート』を三人は歩いていた。避難所目的で設けられた箇所は食料品や必要物資の備蓄倉庫があちらこちらにあり、少なくても、ススキヶ原の全住民が数ヶ月は食いはぐれないだけの食料品は備えられている。また、娯楽施設も新たに設置されている様子がわかる。

 

「たぶん、日本はここを避難所を兼ねたジオフロントの実験場にしたいんだよ。歴史の辻褄も合うし」

 

「言えてるわね。あ、ここが出口みたいね」

 

「地下街への入り口って事にしてあるからね」

 

駅の近くの出口の階段を上がり、外へ出る三人。『工事中につき、関係者以外の立ち入り禁止』の立て看板がかけられている出入り口。外から見ると、如何にもといった雰囲気の地下街への入り口である。

 

「しかし……工事中の地下街に偽装するとは」

 

「仕方がないさ。日本政府に知られた以上は、それっぽいように作ってる区画を置かないといけないし。仮説のドアの鍵をかけてっと」

 

のぞみたちはもののついでに、駅近くのコンビニなどで買い物をすることにする。このSルートは遠回りのルートだが、最短で外に出られるルートもある。表向きは東京都と練馬区の『ススキヶ原再開発』計画の一環だが、のび太が設けていた地下空間を公共化したい行政の思惑が多分に絡んでおり、野比財団はこの事業が(記録される中では最初期の)都市開発に携わり、表舞台に躍り出るきっかけになった例となった。

 

 

 

 

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