――扶桑海軍は怪異対策で水雷装備を撤廃していたが、M動乱で大恥をかいたため、結局は艦政本部は大慌てとなり、全面的な装備し直しになり、莫大な費用が却ってかかった。ドイツとの海戦では、水雷装備前提の設計であったため、装甲が薄い日本型の中・小型艦艇では砲撃戦で不利だったからだ。更に水雷装備の研究が1920年代で止まっており、扶桑の造船官は公然と罵倒される羽目となった。その遅れを取り戻すため、酸素魚雷が急速に普及し、瞬く間にそれが追尾魚雷に変わった。超甲巡にも魚雷が追尾で装備されるに至ったが、ミサイル装備がそこに更に加わったため、艦艇は旧来の大きさに収まらなくなり、駆逐艦が旧来の乙巡相当の排水量にまで大型化。巡洋艦も(最低でも)10000トンを超える排水量になってしまった。そのため、超甲巡は必然的に予算対策で『巡洋戦艦』と扱われていったわけだ。この革新はリベリオンと正面切って対峙する必要のある扶桑海軍のみが、1940年代のうちに遭遇する事になった――
――扶桑が攻勢に出れないのは、軍備の更新時期に入ったはいいが、それら新型艦の建造の手間が従来より遥かにかかるようになり、短時間で数を揃えることが困難になったことも大きい。それを聞いた竹井少将(竹井の祖父)は『昔とは別の理由で、フネを出し惜しむようになるとは』と嘆いたという。攻勢は『短期間かつ圧倒的なもの』が求められ、核兵器の報復というものを大義名分に用いることが裏で決議された。その過程で、西海岸の一時占領、太平洋艦隊の撃滅は考慮されるとした。防衛するだけでは戦争は終わらないのだ。そのため、64F並の練度を持つ部隊の増加が求められたが、64Fの存在自体が奇跡のようなものなため、同様の構成は不可能であった。64Fは最強であるが、所詮は一部隊。そう認識されていたからこそ、『似た構成の部隊』が複数求められたのだが、1949年当時の扶桑、いや、全世界からかき集めても、そんなことは不可能であった。すでに軍隊にはそんな練度の魔女が残っていないからだ。悩んだ連合軍は『敵主力の撃滅用の切り札として使い倒すのみ』という方針を定め、日本連邦に求め、了承された。正式に日本連邦全体の方針となったのだ。補給面の妨害は無くなった。ミーナの起こした不祥事は『上層部が期待した兵器が使われずに死蔵されている』ことも含まれており、事後は彼女が『反面教師』とされているためであった――
――VFの問題は有名だが、ストライカーユニットの焼却問題も大問題であった。坂本が激昂し、機材管理の責任者であった志賀を殴打したのだ。これに小園大佐も加勢したので、クーデター後の横須賀航空隊が悪者と扱われる原因となった。志賀にこの事の非はない。たまたま所用で出かけていたため、部下たちがクーデター鎮圧を嘆き、その場の勢いで焼却してしまっただけなのだ。問題はその中に『震電』、『秋水』、『梅花』、『桜花』、『閃電』といった扶桑期待の次世代ストライカーユニットの試作機が含まれていたことであり、それが坂本の逆鱗に触れたのだ。結局、横須賀航空隊は現場の嘆願で防空部門が存続したが、テスト部門は解体の憂き目に遭い、志賀も退役まで教育部隊を転々とする閑職に甘んじる事になった。機材面の代償は大きく、以後のストライカーユニットの主力はF-86などの自由リベリオン製のライセンス生産品が占める要因の一つとなり、戦前のストライカーユニットの血脈は辛うじて、震電の系譜が継ぐだけになる。また、花の名前がストライカーユニットにつけられることも禁止されたため、橘花と桜花は文字通りに徒花として散るなど、形を変えた悲運が巻き起こる。志賀は密かに震電の残骸を入手し、私有の格納庫に秘匿。修理を行う日々を過ごし、1950年代にレストアを達成する。このレストア機は平和を迎えた後、志賀が芳佳に送ったプレゼントとして記録される。1945年当時の設計では、芳佳の使用を前提にした仕様なので、他の魔女では始動不可能であったが、志賀はそこだけは再現できなかった。搭載されていたマ43特(芳佳の魔力を前提にしての増幅装置付き)の設計図が紛失しており、通常の量産品を載せたが、彼女なりにエンジンのチューンナップはしており、できるだけの再現はしていた。その際のテストの際には、1945年当時に投入が叶っていれば、F6FやF4Uには優勢に立ち回れたであろうと、吾郎技師も推測するだけの性能はマークしており、たとえF8FやP-51Hには及ばないにしろ、雷電や紫電シリーズを代替しうるポテンシャルはあっただろうと記録した。故に『魔女の身勝手で、未来を奪われた箒』という悲運のストライカーユニットとして、後世に名声を轟かしたのである――
――魔女の書類確認の不徹底は1944年以前では珍しくもなかったが、ダイアナザーデイをきっかけに、幾重ものチェック体制が義務づけられた。黒江たちの一件が外交問題に発展したための教訓であった。魔女達は陸では、『旧来のストライカーユニットでも活躍できる』が、空戦では(魔女達がコックピットを撃てないのもあり)火力不足がクローズアップされるようになった。12.7ミリ銃では、重装甲で鳴らすアメリカ軍機には殆ど通じない(20ミリ砲に近い威力を実現していたが、米軍機はその20ミリ砲に耐える防御力を持つ)からだ。魔女から不評であった20ミリ砲だが、必要になった(B29の迎撃などに必須となった)事、補給の改善により、12.7ミリ銃は減っていった。敵機は(戦闘機であっても)重装甲で鳴らす機種であったからだ。怪異との戦いでの慣習にこだわった結果、F6F、F4U、P-47、P-51らに対し、一敗地に塗れる部隊が続出した。『軍隊にいても、人を殺す覚悟がない』者が多すぎたのだ。P-47は特筆すべき功績として『純鉄弾によるウィッチ・ハンティング』があり、ダイアナザーデイでは、短期間で多くのウィッチ部隊を壊滅させた。これは同機の(レシプロ最高級の)卓越した急降下速度によるものであった。同機の性能は既に通知されていたはずだが、実際には(戦闘機との空戦を軽視した)壊滅する部隊が後を絶たず、同機の性能を既に把握していた64Fで以て、封じ込めに成功したことにより、事後に問題になったわけである。芳佳のストライカーユニットが烈風改となったのも、この頃である。坂本はダイアナザーデイの激しくなった頃から、『震電をテスト未了でもいいから、うちの宮藤に回せ』と横須賀に催促していたのだが、同航空隊の鶴野大尉(テストパイロットを兼任)が猛反対し、結果的に震電を使わせる機会を逸した――
――その鶴野大尉は後に、クーデターでの震電の焼失後は失意の日々を送り、軍を辞すことを公言するものの、時勢の急転直下で残留。結果的に、震電改ジェットストライカーユニットのテストパイロットとなり、同機の熟成に貢献。1949年には、南洋防空の要である『50F』の一員となっていた。芳佳のストライカーユニットとなるはずであったものの改良モデルを自分が使う事になったため、因果を感じたとの事。志賀とは対照的に『震電のテストパイロット』という経歴が評価され、第二世代理論の実用化テストの担当となるなど、エリート街道を邁進。最終階級は技術大佐であったという。彼女が吾郎技師に渡したレポートが第二世代理論へのひらめきをもたらしたためか、実際には起動できなかったが、震電の育ての親とされ、後世に名を残したという――
――プリキュア達は目覚めた直後は現役時代のポテンシャルを発揮できない場合が多く、そこを仮面ライダーや黒江たちに救われることがお約束であった。その時に、黒江たちの力が魔女由来ではないことが知られるまでがテンプレというべき展開であった。キュアメロディの場合もそうで、ルッキーニを助けたはいいが、力が現在の肉体に馴染んでいないからか、技が現役時代通りの力を発揮せず、加勢したドリーム共々、却ってピンチになってしまう失態を犯したが、圭子がゲッターの使者としての能力を以て、怪異を撃滅するという出来事があった――
――遠征軍の基地――
「あたしが転生したての頃、こういう出来事があったんだ。あの人達の力が、あたしらよりすげえことの証明みたいなものだった」
キュアメロディ(シャーリー)がのぞみBに語る圭子の力は『ゲッターの使者』としての凄まじいもので、ゲッタービームやサンダーボンバーを生身で使った。威力は本物と同等であり、完全に『人間ゲッターロボ』とでも形容すべきパワーであった。聖闘士ではないが、基本戦闘能力は(様々な補正を抜きにすれば)匹敵する。ゲッターの使者になった影響か、前の二回の生からはかけ離れ、好戦的な人物となっているが、それは本人が望んだことである。
「お前は素体の知識は受け継いでも、感覚としては使ったことがなかったから、三人のレクチャーを戦いの中で受けていった。肉体自体が変異してるから、改めて、技能を仕込むのが最善だった。プリキュアの力が馴染むにつれ、素体のままな箇所も減っていったからな。現役時代の技が通用しないことも多くて、武器も色々と借りてたぞ」
写真という形だが、のぞみAがプリキュアの姿で、メカメカしいガンダムの武器(ダウンサイジング版)を使うところを見せるキュアメロディ。
「現役時代のアイテムは呼び出せないとかの制限があったから、重宝してる。特にこの『G-バード』は」
「Gバード?」
「推進機付きのハイメガランチャーだ。戦艦も超える出力のビームを撃てる代物で、ダイアナザーデイじゃ、大活躍だった。あたしも、お前もよく使ってる」
Gバードはさらなるダウンサイジングでも基本的な構成は同じだが、扱いやすいように簡易的な変形機能を備えている。超高出力の小型核融合炉を備えているため、威力は原型と同等以上。プリキュア達はそれに自らのパワーを上乗せして放つ。その関係上、対多数戦であった『ダイアナザーデイ』と『デザリアム戦役』で大活躍をし、ネオガンダムの正式採用と『センチュリーガンダム』の開発に繋げた。連邦軍は財政と人材難であるため、オプション装備として増産が容易なGバードを採用し、敵対勢力との戦闘に使用した。悲しいが、一年戦争当時のザクとジムのような画一的な量産機の需要は無くなり、ジャベリンのような『尖った特徴』がある機体が尊ばれるあたり、戦乱に疲弊しきった連邦の現況を表しているといえる。
「で、プリキュア以外にも、地球を守ってるヒーローとかいたから、彼らの力も借りてる。彼らの力がなきゃ、あたしらはやられてた局面が多かった。変身前にしてるブレスもその贈り物だ」
秘密戦隊ゴレンジャー、宇宙刑事ギャバン、仮面ライダー達。その彼らの写真を見せる。
「彼らは自分達の力を形にする事に成功している。偶発的な産物らしいが」
それはレンジャーキーのことである。とある世界の2011年頃の戦い以降に出現したもので、歴代のヒーロー達の力が形となったもの。それを分析することで得た知見をプリキュア達のパワーに当てはめ、その力をブレスにこめることに成功した。プリキュア達はある一定までの世代のパワーソースは同じであるため、第1世代(スイートまでの世代)の変身を科学的に実現させる事に成功している。超獣戦隊ライブマンと高速戦隊ターボレンジャーの共同制作で、高速戦隊ターボレンジャーから渡されている。妖精、ないしは『かつてはそうであった者』は彼らのやってのけた事に驚愕した。プリキュアの力を形にし、それをブレスレットに収めるというのは、妖精達にもできない事であるからだ。
「彼らの力を借りられたのは、のび太がツテを持ってたからだ。あたしたちはオールスターズって言われてるが、その場にいた連中でどうにかしてきただけだし、妖精たちのつながりがなきゃ、お互いの事を知らないままだったからな」
それは事実だった。明確なネットワークがあるヒーロー達に比べ、自分達(プリキュア)は本来、学生同士の緩いつながりだったので、世界を守るというのは『友達同士で会うこと』の延長線上にある結果でしかないことも。
「だから、彼らと一緒に戦うってのに、難色を示すのは結構いたけど、立場的に大人でなきゃならない連中もいる。あたしもだが、学生時代と同じようにはいかない。それが大人の世界ってもんだ」
学生時代の理屈の通じない状況であること、ヒーロー達の戦いに参加することは『情け容赦のない戦い』になる事を意味する。大人の世界に身を置くというのは、自分達の思うように優しくはないのだ。
「お前も将来、大学を出る時に自覚すると思う。大人の世界の厳しさを」
「大学、か。なんだか遠い未来のように思えるけど、年を考えると、あと四年もないんだよねぇ」
「プリキュアで就職と成人済みのが出るのは、2023年のが初だしな。それ以前はゆりさんの高校生が最高齢。もっとも、ゆりさんはそれ以前にプリキュアになってたから、高校生になってから覚醒したのは、本当に数人だ。大人になると、親の年齢や資産の相続のことも考えておかねぇとならねぇから、モラトリアムの期間は幸せだって、誰かが言ってたよ」
キュアメロディ(シャーリー)は実家の両親が高齢になってきたので、そろそろ資産相続の事を考えないとならない上、自分の兄弟姉妹(シャーリーには兄弟と姉妹が数人いる)を食わせ、学校に行かせる必要もある。そのため、両親からも『レーサーに戻るよりも、軍人として、国家に奉仕してくれたほうが外聞がいいし、確実に大金がもらえる』と言われ、のぞみの気持ちを真に理解した。
「だから、今を楽しめ。学生時代を終えたら、途端に現実と向き合う事になるからな。お前のお袋さん、美容室をやってたろ?」
「う、うん」
「お前がおふくろさんの後を継がないとなると、店終いを考えないとならない。それが現実問題になる。相続の税金も馬鹿にならねぇし」
「なんか、大人になるのが怖くなるよ」
「それが大人になるってことだ。親は老いてくるし、自分も若くいられるわけでもないしな。それを何度か体験した身として忠告すんが、モラトリアム期を今のうちに堪能しろ。それがお前の夢に現実感を与えるだろう。それと、プリキュアになると、一定の年代に若返ると思うから、40を超えても若い姿になれるぞ」
「え!?」
「つぼみのばーさま、元・プリキュアだぞ?」
「えーーーーー!?」
キュアメロディはイェーガー家の長子である都合上、家督の相続が近いうちにあることから、大人になる上で向き合うべき事をのぞみBに教えた。同時に、プリキュアになれる年齢に広がりができることも示唆する。
「え、ここだと聞いてねぇの?」
「初耳だって!」
「そ、そっか…50すぎても、外見は20そこそこに戻れるの、その人で証明されんだ」
「本当?」
「お前の知ってるつぼみに聞いてみてくれ。あたしから聞いたとでも言っとけ」
と、サバサバ&コミカルな喋りに圧巻ののぞみB。女言葉がないのもあり、自分の知る北条響との『違い』を感じるのだった。
――ウマ娘たちの間では、オグリキャップとタマモクロスの両者がどういう風に歴史を変えたのか。改変前の記憶を有する者たちの間で検証が始まっていた。タマモクロスの現役期間が『三強』と同等にまで引き伸ばされている事、オグリは全盛期の能力をしても、ホーリックスには勝てなかった事、やはり晩年期は低迷に苦しみ、最後に輝きを取り戻した事、ナリタブライアンとはその時に出会い、それ以来の付き合いであること。その事がブライアンに悲劇をもたらしたことも――
「大まかな出来事は変わってないようね…」
「クリーク先輩は天皇賞の連覇の年が一年ほどズレたようですね」
「オグリちゃんが勝ってるための帳尻合わせだろうね。だから、タマモちゃんが現役を続けたのもあって、色々とずれ込んだんだよ、たぶん」
のぞみAはその作業に立ち会っていた。その最初の作業がスーパークリークのことである。競技者としての寿命が引き伸ばされたのは、オグリが歴史を変え、スーパークリークとの対決を『全盛期+α』の力で制した『ある年の天皇賞(秋)』。クリークは勝てるという確信があったのに、オグリに作戦を逆手に取られ、末脚対決に敗れ去った事のショックで体を痛めてしまい、翌年の半分以上を棒に振った事、それ故に、最盛期を過ぎた自覚ができた後も現役に留まった。それが改変後の歴史でスーパークリークの辿った遍歴である。それを考えると、オグリのG1勝利数が多くなっている代わりに、三強の時代が長く続いたことも示している。
「引退後に種明かしされて、相当に拗ねたそうです」
「だろうねぇ。全部を知っていたからこそ、彼女の作戦を逆手に取れただろうし」
「三強の時代が続いたということは……」
「その分、割を食った者達がいる事になるわね」
「オサイチジョージ先輩らの世代ですね……」
「史実で言う、89年のクラシック世代だね」
オグリキャップらの時代が続いたということは、その直後の世代が割を食うことでもある。オサイチジョージらの属した世代は『谷間の世代』とされ、上には平成三強、下にはメジロマックイーンらを要する世代が控えているため、活躍どころではなかった世代と呼ばれている。三強が蹂躙し、更に下の世代が台頭してしまったため、同世代はトレセン学園には殆どが残留していない。代表のオサイチジョージが学園を去っている時点で、『察してください』というような有様である。
「すぐにマックイーン、テイオーらの世代が台頭し、百花繚乱の時代を迎えたからな…。あの世代は本当に……」
エアグルーヴもその世代の不遇ぶりは知っているため、オサイチジョージらの悲運は『史実』である事に心を痛める。
「でも、テイオーちゃんも史実だと、有馬が最後のレースになるからね。勝利と引き換えに選手生命を失う」
「だから、テイオーはあなた方を頼ったのですか、夢原女史」
「史実の記憶は……あなた達には受け入れられないことも含むからね。テイオーちゃんも、マックイーンちゃんも」
前世の記憶を持ったウマ娘はすべからく、『運命を覆すこと』を望む。テイオーも、マックイーンも。マックイーンの場合、自身とライアン、パーマーが引退した後のメジロはドーベルとブライトが最後の輝きとなる形で衰退していく歴史を知ってしまったため、現役を続ける事を決意している。皮肉な事に、マックイーン、ライアン、パーマーの三人が現れることで、21世紀世界の新聞記事に『メジロ』の名が載ることになった。マックイーンが中々戻ってこないので、パーマーとライアンが様子を見に来たわけだが、二人は困惑する事になった。
「マックイーンの代理で、パーマーを競馬場に行かせましたが、大丈夫でしょうか」
「うーん。今に残ってるマックイーンちゃんの血縁の代表がゴルシちゃんだもの。本人としちゃ、ショックで寝込むって。まぁ、同じメジロだし、うまくやってくれると思うよ」
マックイーンが『孫がゴルシとオルフェ』の衝撃を改めて実感したせいで寝込んだためか、エアグルーヴはメジロパーマーを競馬場のイベントに参加させたという。そのメジロパーマーはいざ頼まれて、仕事を引き受けたはいいが、大勢の観衆の前で何を喋ればいいのか。頭が真っ白であり、電車の中で一人、悶えていたりする。また、普段の振る舞いはメジロの同期の二人への劣等感と『家での居場所を得るための打算』が入り混じって生まれたもので、元来は全く異なる気質だったらしき経緯を持つ。そのため、友人のダイタクヘリオスの存在がとても大きく、電話でヘリオスに檄を飛ばされたにも関わず、頭が真っ白な有様である。のぞみの期待と裏腹に、パーマーは思いっきり緊張し、ガチガチであった。
「何を喋ればいいのさーーー!!マックイーンやライアンみたいに、それらしい事言うの苦手なんだよ~!雰囲気的に断れなかったけど……」
と、今更ながら、頭が真っ白な有様なパーマー。マックイーンのように歴史に名を刻めたのかという不安も大きかったが、本屋で買った『名馬図鑑』に視線を移す。ゴルシたちの話を聞くと…。恐る恐るとその本を開いてみると……。
「あ、あ……ッ!!」
思わず目頭を抑えるパーマー。その本に何が載っていたのか。迷いが吹っ切れたらしい表情から察するに……。