――魔女の世界の八八艦隊計画は本来、十三号型までを作るはずであったが、計画スケジュールの長期化で計画そのものが変更され、大和型の試験建造に移行していた。この時点で八八艦隊計画は終了している。ところが、八八艦隊型の陳腐化により、大和型を範とする高速重戦艦が当たり前になったため、以前ほどの量産がはばかられるようになった。その分を質で補えという方針により、扶桑は二〇インチ(50cm)級の砲の搭載に行き着いた。怪異が十八インチ砲(46cm砲)への耐性をつけた場合を鑑みての対策であり、モンタナが砲を強化することを鑑みての対策でもあった。播磨型は量産のネガが自動生産で解決されたことで生まれたが、運用の過程で安定性の向上と内部容積の増大などが要望された。その回答が改播磨型たる『水戸型戦艦』であった――
――水戸型は1947年前後に『超モンタナ型の登場に備える』という目的で計画され、播磨型のさらなる改良として生み出された。戦艦の現状以上の進化はある意味、国力と目的のある者のみが成し得る境地であった。空母の大型化で少数精鋭化が進む現状、日本にとっての『失っても惜しくのない兵器』はカテゴリそのものが日本では死滅していた『戦艦』であったため、扶桑の心情はともあれ、戦艦を使いっぱしりとして酷使した。水戸は既存艦のメンテナンス期間における戦力減を補うため、緊急で工期が繰り上げられて就役した。なお、秋には二番艦『備後』、三番艦『周防』も就役する見込みであった――
――49年時点での連合艦隊は保有する戦艦の8割方が酷使による長期修理に入ってしまい、戦力減が懸念されていた。当時はクーデターの余波が続き、空母機動部隊はその稼働数の激減、作戦行動可能な練度への回復の遅れで戦力とならず、クーデターの影響を受けずにいた水上打撃艦隊が走り回っていたが、酷使が災いし、1949年度に多くが船体メンテナンスをしなければならないほど疲弊していた。そのために敵からの防波堤としての新造艦が必要とされ、水戸型は生まれていったわけだ。元々、51cm砲のさらなる長砲身化の予定であったが、大口径化で命中率向上が選ばれた。しかし、56cm砲を扱うには、350m級では不足していたため、間をとった53cm砲で落ち着いたわけだ――
――日本の防衛省では、扶桑の戦艦の発展の過程をまとめる作業が進められていた。扶桑では、伊勢型の後に八八艦隊型が実現していたため、長門型の後も戦艦建造が続いている。加賀と土佐が不具合を続発したため、時代の変化で天城型は空母に変更されたが、代わりのワークホースとしての戦艦が用兵上の都合で必要になり、紀伊型が20年代後半~1930年代前半に整備された。この段階で戦艦の研究が進んだため、大和型が中止の十三号型の代わりになり、魔女閥と空母閥の圧力で二隻に減らされたが、金剛や扶桑の老朽化が予想以上だった事から、信濃と甲斐が成立した。これも空母化が決まりかけたが、呉軍港襲撃事件が勃発。モンタナ級が紀伊型を大衆の門前でノックアウトするというショッキングな光景により、大衆が空母よりも戦艦での復讐を望んだため、信濃らは戦艦のまま完成に至った。だが、その信濃もM動乱でヒンデンブルク号に叩きのめされたことで、扶桑はやむなく超大和型戦艦の計画を再検討。その成果たる三笠がヒンデンブルクを撃退し、以後は別ラインの量産タイプ『播磨型』が整備されつつあるとまとめた――
――防衛省――
「夢のある歴史だな」
「紀伊型は加賀と土佐が実戦に出せない代わりに生み出された妥協の産物で、登場時点で型落ち気味だ。所詮は改天城にすぎん。だから、大和が仮想敵のモンタナには勝てないのは当たり前さ。想定された砲弾の性能が段違いになってるんだからな」
「それで、あの播磨型は金剛~長門型までの代替が名目か」
「そうだろう。今後は戦艦自体も数が減るだろうからな。超大和型戦艦を持っておけば、当分は安泰ってことだ」
扶桑はアイオワ、モンタナ、ヒンデンブルクと言った大戦艦に対抗できる戦艦が大和型しかないことに戦々恐々(空母の高額化の判明も重なり)。大和型のさらなる強化に乗り出すしか選択肢が無くなり、超大和型戦艦に行き着いた。サイズも二十インチ級の艦砲の搭載のために巨大化しているため、1945年当時の軍港の能力では手に余るとされていた。大神工廠と室蘭工廠が完成していようとも、10万トン級の戦艦を作れる能力はない。日本はそう判定していた。だが、扶桑は地球連邦軍の力を借り、南洋に地下都市を作ることで実現に成功。ダイ・アナザー・デイに播磨型を数隻は間に合わせた。51cm砲を三連装で五基(後に、一基を削減するマイナーチェンジが施され、長砲身化されている後期型に移行するが、播磨と美濃(三番艦)は当初の砲装備が維持されたという)備えた威容は1945年時点では(ヒンデンブルクを除けば)最強無比であった。
「この播磨型だが、扶桑は南洋にほぼ全てを配備している。なんでだ」
「1940年代の日本本土に、10万トン以上もある船を整備できる港はない。大和でいっぱいいっぱいなんだから。横須賀などを整備しているようだが、それでも50年代までかかるな」
「民間船がせいぜい数万トンの時代だからな。だから、オーバーテクノロジーを取り入れた基地のある南洋を拠点にしているんだろう。本土は大和型で充分だしな」
扶桑はアイオワやモンタナを恐れたようで、狂ったように大戦艦を求めたと、日本の調査班はそう記録した。そのため、モンタナ級の評価が上がることになったが、他国の戦艦は『お呼びでない』と言わんばかりの有様であったも同然であった。しかし、欧州の平均が35~38cm砲であった現状、40cm砲を装備することも稀であったのも事実である。欧州艦とは既に説明しづらいほどに性能差が生まれていたのだ。
――一方のブリタニアは日本のアニメのような帝政ではなく、史実寄りの連邦制であったが、扶桑との同盟の主従関係がダイ・アナザー・デイ前の不祥事で逆転。王も交代したこともあり、連合国体制における欧州の盟主という地位で満足すること、英国からの支援でコモンウェルスの離反を防いだが、財政的には火の車であり、軍事力の縮小は必然の道となった。また、日本連邦の軍事力が自分たちの数倍の威力を持つようになることも冷静に受け入れた。これは一次大戦からの財政的疲弊により、ブリタニアの誰もが『いずれは超大国ではなくなる』ことを受け入れていたからである。ガリアと違い、彼らは元々が欧州の田舎の島国であったため、同じ島国の扶桑が超大国に登り詰める事に(軍人や王族の一部以外は)抵抗がなかったからだ。これは一次大戦で(史実には存在しない)王族の何人かが実際に戦死しているからだろう。老大国と揶揄されるような有り様であったブリタニアは『世界のリーダー』たる責務を日本連邦に譲り始めたが、軍はそれに反発し、新型戦艦『クイーンエリザベスⅡ』級の増産を決議する。これを主導するのが(史実にはいない)若い女性王族であったことから、日本連邦からはアニメに引っ掛けて、『ブリタニアの魔女』と揶揄されたという。このような反発も当時は当たり前であった。ブリタニア中心から、日本連邦中心に遷移してゆく世界は史実よりは英国系国家に優しいのだから、文句を言うべきではないが、国家の落日というのは突然に来るのだから、ある意味では哀れですらあった。――
――魔女達も社会的影響力に陰りを見せるようになると、コミュニティ自体の衰退が恐れられるようになった。オラーシャの大衆の暴走による暴虐はその危惧を加速させ、日本連邦内部の派閥抗争への全世界の魔女の総意としての介入が行われた。これがY委員会が抗争に勝利する後押しとなったものの、生え抜きの魔女の育成を抑え、義勇兵で当座の需要を賄うとする軍備整備方針の大義名分に使われたのも事実であった。だが、日本連邦への参陣はダイ・アナザー・デイでのサボタージュという失点を取り返すまたとない機会なのも事実であり、魔女達が血で罪と失態を償う事が最善と判断されたわけだ。なお、ブリタニアには史実の英国にいない王族が何人かおり、その中での次子が魔女かつ前線指揮経験も豊富な女性将校となっているためか、それを知ったシャーリーは『コーネリアみたいなのがいるのかよ』と、前世の記憶由来の思い出から、思いっきり苦笑いするしかなかったという。扶桑にも、そのような『魔女であり、皇族にその由来がある士官』は意外といる。つまりは皇室軍人がお飾りではない事の証拠である――
――皇室なり、王族の人間が前線で戦うのは珍しくない。魔女の世界では、それが古来からの伝統だったからだ。扶桑では、皇室の魔女は陸軍に入隊するのが慣例となっている。これは航空魔女の損耗率が高いからだが、明治期までは魔女が活躍するのは騎兵隊というのが固定ポジションである。ところが、極秘に航空魔女向きの逸材がポンと生まれることもある。扶桑は戦国期には『天狗の高下駄』なるものがあったが、安土時代にはほぼ失伝している。森蘭丸の一族が現物を大切に保管しており、吾郎技師いわく、この古い発明をもとに、宮藤一郎は宮藤理論を組み上げたと認めていたという。また、黒江達と顔見知りになった皇女は『有栖川宮系の血筋』であり、クーデターと憲法改正後も軍人でいる珍しい人物だ。皇室と軍の縁が強引に切らせられる時代においても、昔気質な皇女であった――
――扶桑の皇室軍人は昔気質の者が多く、ある意味では常在戦場を是とする風土もある事から、最も義務を背負う立場であった。逆に言えば、立場に応じての義務の多さで皇室の権威を持たせている面がある。ブリタニア発祥ともされるが、実際には推古天皇がそうであったともされる。戦国時代の名残りが多いのは、江戸期に確立されていたであろう官僚型気質がないか、あってもごく僅かだったと思われる。武断派を傭兵として送り出していた歴史があるからだ。日本はそのような状況から、『史実の江戸文化がないのでは?』と懸念したが、どういうわけか、それは存在していた。日本にとってはそれが謎となった。また、服装の洋装化も史実よりだいぶ早くなっており、戦国武将たちはもちろん、織田時代の末期には洋装が一般に普及しつつあったりする。――
――そんな扶桑は七勇士の扱いに時代ごとに差があるが、それも時代の変遷を表す指標である。戦時になれば、過去の英雄譚は光を当てられる。普段は『蜘蛛の巣の張った本棚にしまいこまれた本』のような話でも。日本で戦時中に大昔の英雄譚や、誰かへの忠節を褒め称える話が持ち出されたように、扶桑のここ10年来は七勇士伝説が引き合いに出される。1940年代前半は集団戦闘を根付かせるために、軍の方針で過去の伝説にされたが、1945年にそのメンバーの多くが超人的活躍を実際にし、戦局すら動かしたため、1946年前後のクーデター以降は『心構え』として引き合いに出されるようになり、仮面ライダーやプリキュアと言った『次元を股にかける英雄たち』に引けを取らない存在と宣伝された。日本からは『軍人とヒロインを比べるな』という非難も出たが、軍の社会的地位が自衛隊とは比較にならないほどに高い扶桑では、国の苦境を救った軍人は英雄視されるから、当然の流れである。しかし、扶桑では10年未満の時間経過で、すぐに忘れ去られるのが常であった。それがカールスラントの悲劇に繋がったのも事実であるし、扶桑の世代間闘争になったのも事実である。だが、1945年当時の中堅層は事変世代が再度持ち上げられる事に強く反発していたため、コミュニティの存廃に悪影響を強く及ぼしていた。ダイ・アナザー・デイのサボタージュに参加したのは、主にその世代(1945年に15~17歳)の魔女であった――
――ダイ・アナザー・デイ当時、現役世代が使い物にならない事に戸惑った司令部は64Fへの支援を公式に開始した。ミーナからの指揮権譲渡を名目に、加藤武子を着任させたが、その直後に次々とプリキュアが覚醒。事前に64Fから人員を引き上げていた国々は彼女たちの獅子奮迅ぶりに瞠目せざるを得なかった。幸いにも、シャーリー、ペリーヌなどの主要国出身者が覚醒したため、発言力の維持に成功した国は意外に多い。プリキュアでなくとも、異能に覚醒めた者は多く、64Fは『魔女たちがなんと言おうと、64Fは戦線の要である』という認識は連合国首脳の共通認識であった――
――ダイ・アナザー・デイ以後、黒江は本当の容姿には滅多に戻さなくなっていた。帰省や式典以外は調の容姿を主に通していた。防諜目的が半分、半分は元の容姿が日本で有名すぎるからだった。調との違いは瞳の色が金色(見分けるために、ダイ・アナザー・デイ以降は変えた)である事であり、シンフォギアもカモフラージュ目的で使っており、子供切歌からは思いっきり文句を言われていたりする――
――1949年 64F基地の黒江の執務室――
「先輩、調ちゃんの仕事のためって言ったって、シンフォギアまで使うんですか」
「あいつがいるって証拠が必要だからな。瞳の色の違いくらいはカラーコンタクトで誤魔化しが効く。まぁ、装者の連中からは文句言われてるけどな」
「何をさせてるんですか」
「今度、別のお前のいる世界に遠征が決まったろ?その間に敵を動けなくするための破壊工作をさせてる。大連やハイラルの補給線を寸断させるためのな。箒を保護者兼護衛につけているから、ティターンズの超人と出会わん限りは成功するだろう」
遠征の始まる直前の時期、黒江は事前の工作に調と箒を動員していた。そのため、二人は遠征に参加していないのである。
「あいつら、あの時(ダイ・アナザー・デイ)に下位の南斗聖拳の数人は倒したけど、上位の連中は先輩たちと互角でしたからね。差がありませんかね」
「仕方がない。南斗には明確に同じ系統でも、上位と下位があるからな。最上位はケンシロウと戦えるレベルの拳だが、下位はピンキリ。今なら、上位の連中とも互角に戦えるはずだぞ、お前」
「そりゃそうですけど。それと、この要請、本気なんですか、ナリタブライアンちゃんは?」
「らしい。お前に成り代わって、戦場に立つことでイップスを治したいんだそうだ。あいつはイップスのせいで、競走馬としての晩年は散々な成績だったからな」
ナリタブライアンからの手紙を読んだのぞみは、その内容の本気度を黒江に尋ねた。体を貸してほしいというからだ。
「あの子、見かけによらずに怖がりなんですか?」
「あいつは無頼のように振る舞っちゃいるが、本質は怖がりのままなんだと。ビワハヤヒデ君に聞いたがな。それで、お前に成り代わって戦うことで、イップスを治したいんじゃないかとのことだ」
「そういうことなら、力になれそうです。でも、向こうのあたしになんて言います?」
「かれんから説明させる。向こうのお前には悪いが、今度の戦じゃ戦力にならんからな」
黒江は偽装のためとはいえ、シンフォギア姿で執務を行っている。調Dには頼めない(ギアの使用条件や展開状態の時間制限の都合もある)ので、黒江がしているのである。
「俺がこれを使うのは、別の世界の調に頼めないのもあった。史実の流れ通りの場合だと、ギアに使用制限時間があるからな、あいつは」
黒江は聖闘士である都合もあり、ギアの使用に制限がない。別世界の調は史実通りの状態なので、Aのような真似は色々な柵もあるので、不可能である。そこがネックであったと、のぞみに教える。
「別世界の調は単独での戦闘の訓練を積んでいないからな。写真での偽装工作は頼めるが、この世界での戦闘は危険すぎる」
恒常的にギアを使える状態のAでも、稀に大ピンチになることがあるのに、史実のステータスのままの状態では危険極まりないのが、次元世界なのだ。ギアを展開状態の立花響ですらも、生身で圧倒するような超人が大勢いるだから。
「立花響ちゃんでも、怪我してくるのが常でしたからねぇ、ここ四年は」
「ああ。元斗皇拳や北斗琉拳の使い手とエンカウントしていない分、まだ幸運だな。俺たちでも、連中を侮ったらやばいからな。肉体の再生が必要になるくらいの一撃は普通に食らうし」
黒江達も警戒しているのは『南斗より強大な暗殺拳である元斗皇拳や北斗琉拳の使い手と出会う』ことであるのがわかる。華山や泰山系は南斗聖拳と同レベルだが、それらは明確に南斗聖拳より強大だからだ。
「南斗聖拳もそうだが、極めると、英霊の宝具をガン無視して、気配を察知できるからな。モードレッドが泣いてた」
「鍛えた達人は英霊の宝具より強いんですかね」
「マスターアジアを考えてみろ。マスターガンダムに乗らなくても、普通に鉄筋コンクリート造のビルをまるごと蹴り出せただろ」
「ドモンさんに聞いた事ありますけど、現実とは思えなかったですよ」
と、この時点で充分に超人である二人をして、元斗皇拳や北斗琉拳は『侮れない敵』であると認識されている一幕であった。
「調も自分に文句を言われたそうだ」
「あ、やっぱり」
「ギアを日常で使う上、普通に響と戦えるレベルでタイマンできるからな。おまけに龍王破山剣やエクスカリバー・ブランベルク、磁光真空剣の写しを持ってるから、史実通りのあいつじゃ、相手になれんだろう」
調Aはベルカで聖王の守護騎士であった時期がある上、その技能を野比家での生活で更に磨いてきた。接近戦に持ち込まれたら、Dが如何に決戦機能を使おうと、それを上回る攻撃を加えられるのである。
「これがその時の写真だ。ドラえもんの道具で撮ってたから、音声とその時の様子が再生される」
『龍王破山剣!!逆鱗だぁぁ―――んッ!!』
写真は模擬戦の際、色々あって、調同士が戦った時の撮影である。龍王破山剣を持った調Aが決戦機能『アマルガム』を発動させたDに急降下で迫り、龍王破山剣・逆鱗断を放つ映像だ。龍王破山剣・逆鱗断は(調Aが宿す聖剣の効果もあって、威力が強化されていた)Dが自信を持っていた『アマルガム』の防御特化モード『コクーン』のバリアを正面から破り、アームドギアの盾をまっ二つに切り裂いたのである。その衝撃や凄まじく、Dは驚愕と恐怖が入り混じった声で『嘘……!?』としか言えず、Aは平静を保っているようだった。
「戦意喪失ですね」
「ああ。信じられないって顔で青くなってるだろ、向こうは」
写真はそこで再生が終わっているが、勝負に立ち合ったキュアスカーレットの証言によれば、Dは次第に力の差を理解したのか、倒れ込んでいるところから立ち上がろうとしても、足が自然と震えてしまい、立てなかったという。
「天魔降伏斬じゃ無い分、手加減はしてるだろう」
「そういう問題ですかね…?」
のぞみがツッコむ。勝負に手加減無用とはいえ、ある意味で無慈悲なほどの力の差がある事の証明である。
「あいつは足技主体の戦法も持つ。ベルカ時代に、先祖が日本の忍者っていう人から習ったらしいんだが、これが驚くことに、のび太の世界でのゲームのスーパーロボット『雷鳳』の技とそっくりだったんだ」
調Aはベルカにいた時間が10年単位だったため、そこで複数の人間から戦闘術を教わったのと、本人の不断の努力が実り、かなりのレベルの戦いが展開できる状態になっていた。それを更に野比家に来てから鍛え直したため、ギアの機能や形状と別の次元で強くなっていた。その一端が『龍王破山剣・逆鱗断』であった。
「負けたほうはなんて?」
「かなり大混乱で、半泣きだったらしい。お前もそうだったが」
「あたし自身の時は『やりすぎだ』って、ツッコんではおきましたけどね、後で」
「お前の場合は緊急を要してたからな。ハーロックとのび太がフォローしてくれたが……情け容赦しなかったからな、あいつら」
調Dと同じようなシチュエーションで、のぞみBはかれんとこまちを連れて行こうとする『別世界の後輩たち』に抵抗したが、ピーチにシャイニングフィンガー(照射)を浴びせられるわ、フェリーチェには『フリージングコフィン』を浴びせられ、それを強引に突破したところを『クラッシュイントルード』で叩き落されるなど、手も足も出ずじまい。ハーロックとのび太の説得で納得はしてくれたが、のぞみの場合は事前の説明に納得してくれなかったので、強硬手段を取るしかなかったが、皆が情け容赦しなかった(のぞみAがその時期は狂乱に走る寸前にまで精神的に追い詰められていたのも大きいが)ので、調Aはまだ優しいほうだ。
「ブライアンから電話だ。……俺だ。のぞみは了承してくれたが、いいのか?」
「私が往時の王者に立ち還るには、精神的な荒行がどうしても必要なんだ。それに、前世の記憶が蘇った以上、過去を変えるよりは、未来を切り開くほうを選びたいんだ。ゴルシには説明してある」
「分かった。遠征がある程度落ち着いたら、お前の頼みを実行する。礼金とかは野比財団や骨川コンツェルンとのCM契約金として処理して、お前の指定口座に振り込む」
「その代わり、私ものぞみさんの広報業務も肩代わりする。ゴルシも付き合ってくれるそうだから、誰か都合をつけてくれ」
「分かった。ここにのぞみ本人がいるけど、話すか?」
「頼む。かなり無茶な頼みなのは分かっている。だから、彼女に直接、礼が言いたい」
こうして、ブライアンはのぞみと入れかえロープで『入れ替わる』」機会を得た。実際に野比財団や骨川コンツェルンとCM契約を交わし、トレセン学園にもその旨を通知。こうして、ブライアンは(真の目的のカモフラージュとして)ウマ娘としては初めて、『ドラえもん世界』のTVCMに出演することになった。スポーツドリンク、運動靴、はたまた『正しい運動の仕方』の啓蒙のCMで、ウマ娘本来の『アスリートらしい』ジャンルのものが中心であった。これを皮切りに、存在が知れ渡ったウマ娘達には、CM出演の依頼が殺到するようになるが、ブライアンの次に依頼が来たのが、21世紀になっても、往時の人気ぶりがしばしば語られるオグリキャップであったため、三冠達成者ながら、現役時代の人気度がミスターシービーより低めであった事があるシンボリルドルフは現役時代、シービーへのヒール扱いもされた事もある自覚からか、依頼が来ないことをたいそう悔しがった(オグリの次が、史実で自身の産駒であったトウカイテイオーであったのもある)という。オグリキャップはその食いっぷりから、フードファイトや食べ歩き系の番組からも多くのオファーが舞い込んだため、オグリと対照的に(皇帝の異名があるがためか)堅めの番組やCMの依頼が多い様に、ガックリと落ち込むなど、本人の凛としたイメージとは裏腹のコミカルさを見せていくのであった。