――日本の左派は結局、扶桑の体制を引っ掻き回すだけ回しといて、公な形の謝罪は軽い形でお詫びを表明するのみであった。日本国民も『扶桑は過去の日本帝国ではない』事を理解する者たちと『日本帝国と同じだから、一度、完全に滅亡させたほうがいい』とする層が対立し、現地を苦しめるなど、政府は統制に苦しんだ。更に、軍事的に無知な官僚や政治家がシビリアンコントロールの名目で、扶桑軍の行政に強く介入した結果、現地の空母機動部隊が張子の虎と化してしまう結果となった。内務省も解体の声があったが、日本的な理由(21世紀日本も省庁間の対立で行政機能が上手く動いてるとは言い難い状態なので)でその解体が保留になるなど、グダグダであった。更に自由リベリオン、特に空軍は史実の行為での非難やリンチの対象となりえたが、結局、アメリカ合衆国が『戦時中にできなかったことを異世界の同位体にぶつけるのは、日本国民の自己満足に過ぎない』と非難したことで沙汰済みになった事例がとどめとなり、日本は扶桑の戦争に協力する選択を取った。ティターンズやジオン残党の暴虐ぶりが明らかになり、更に怪異の脅威が自分たちにふりかかる可能性が示唆されたからだ。残党の無差別破壊や、怪異には自衛隊の通常部隊では対処しきれないためだ。更に、有事の際の避難など、戦後は議論すらタブーにされていたためにジオン残党の襲撃で多大な被害が出る有様であった。自衛隊は非難を受けたが、モビルスーツには奇策を以て臨むしか手がないので、結局はGフォースの結成と増強でお茶が濁された。また、旧軍時代の秘密兵器が21世紀でも通用する性能だというのが判明したので、日本はその確保に躍起になっていた――
――結局、日本の左派は話し合いが不可能な相手がいることが示された扶桑から防衛手段を奪うことが不可能であると示されたことから、災害派遣を主任務にするように圧力をかけていった。日本のような『防衛を他者に委ねる』選択が出来ないのなら、シビリアンコントロールの明確化と災害派遣を主任務と明言するべきだと。災害派遣に関しては各軍の自主的な判断で行ってきた扶桑の現場は明文化に反対であったが、日本側がそれを望んだために仕方がなく明文化した。クーデター後に『政治と軍を切り離すためには、災害派遣を主任務にするしかない』と力説されたためであったが、交換条件として『軍隊の意見表明の場は持たせる』、『天皇から内閣に指揮権を委譲されている』事の日本国民への啓蒙を提示し、彼らも呑んだ。扶桑への内政干渉をしてきた自覚があるために、自衛隊でどうにも出来ないレベルで巨大な軍事力が自分たちに向けられることを恐れていたためだ。ジオン残党への対応力には自衛隊単独では限界があることもあり、妥協したのである――
――在日米軍に必ずしも頼れないことが判明した上、学園都市の暗部が明らかになったことで戦争の火種が巻かれた(暗部の者の市民権を剥奪したため)ことを自覚した日本はジオン残党の襲撃を大義名分に、自衛隊の戦力の増強を決議した。ジオン残党はザンジバル級や往還機、ネオ・ジオン世代の艦艇で空挺降下をどこにでも仕掛けられるが、自衛隊は政府の指示が出なければ、戦闘行為が出来ない。そのデメリットを突かれたのだ。宇宙戦艦は21世紀中の航空兵器では撃墜できないというのも問題であった。対艦ミサイルでも致命打を与えるのは容易ではない上、日本の備蓄量では、すぐに在庫が尽きる。そもそも、総力戦前提の準備などはタブーだったのだ。日本はジオン残党の襲撃で有事の現実性を認識せざるを得なくなり、Gフォースの結成、扶桑から弾薬を融通してもらうなどの方策で次第に『近い将来の有事』への準備を進める。世間的には『汚れ仕事』扱いであったが、Gフォースは自衛隊史上初の真の意味での実戦部隊である。日本連邦評議会の直轄であるので、日本政府に指揮権はない。日本連邦の組織全体を守るための組織である。防衛省からすれば、ジオン残党のことを知った自衛官は厄介者であるので、Gフォースをその駆け込み寺と扱っていたが、ジオン残党が日本各地に現れ、自衛隊の各部隊の苦戦を報じられると、結局は即応部隊が必要となったというグダグダを露呈し、国民の失笑を買う有様であった。結局、メーサー殺獣光線車などの超兵器が一般部隊に配備されることが決定され、Gフォースは『モビルスーツと同等の兵器を持て』と通達された。黒江はそれを大義名分に、本当にモビルスーツや可変戦闘機を調達した。防衛省の担当者は『できれば、と言ったけど……本当に持ってこないでよ……』と泣いたという。『軍需産業へパイが分配出来ない』からだが、MSに対抗可能な兵器など、一年戦争当時に散々に地球連邦が難儀したのに、その更に過去の時代の日本にできるはずがない。それは防衛省も自覚していたので、そのまま認められた。第三者頼りでは、政治的メンツが潰れるからである――
――ジオン残党の攻撃は結局、日本の防衛体制の脆さを白日の下に晒す結果となった。単独では雑多な装備のテロリスト化した者達にも苦戦する。その字面のインパクトを恐れた者達は当初、事態の隠蔽を図ったが、ジオン残党が宇宙戦艦で降下し、艦砲射撃も辞さない彼らを迎え撃てる手段は自衛隊には少なく、結局は64Fが21世紀でも担当する流れになったが、防衛省のメンツ論になったので、21世紀では『Gフォースとして動く』ことで妥協された。その便宜を図るのが防衛省の仕事になった。ジオン残党の捕虜は21世紀の法律では裁けないため、地球連邦軍が国連軍の名目で連行し、旧ジオン公国と共和国の法律が裁くという手法を取っていた。日本は戦後は有事に巻き込まれる事自体が想定外であったため、そういった事柄に関しての法律は存在しない。そのため、ジオン残党の襲撃に関しての民間の損害補償にも難儀する有様であった。Gフォースの結成は『ゲッターロボアークやHi-νガンダムなどが来なければ、自衛隊はその方面の部隊を失っていた』という戦訓を重視した空自が主導して行った。地球連邦の軍籍も有する黒江が機材を調達したため、リゼル、ジェイブスなどの地球連邦の新鋭機を有するようになった。パイロットはメカゴジラやモゲラに搭乗を予定していた者たちであった。メカゴジラやモゲラの第三期増産が中止になった後、その予定人員をGフォースに吸収したわけである。元々、学園都市の反乱に備えての装備であった都合で、その可能性がなくなれば、用無しであったのだが、多額を費やしていたため、再利用先としては最適であった。それらの産物を扶桑への示威に利用したわけだ。メカゴジラの出自について調べていた黒江は調査資料を置いており、それをブライアンは出撃前に閲覧していた――
「ふむ。メカゴジラなんて、本当に作ったのか。プロトタイプの基礎骨格は放射能を浴びていれば、ゴジラになったであろう同族の残していた骨格を流用したのか」
「これが写真か。日付は?」
「1970年代の半ばだ。ゴジラザウルスの骨格流用だからか、初代のメカゴジラの姿だったのか」
ゴールドシップ(キュアビートの体を借りている)が写真に気づく。撮影日時は1970年代の半ば。松代大本営跡の格納庫で建造を終えた際の写真らしい。90年代以降に建造されたモデルはその後継機とのことである。
「現存するのか?」
「いや、1975年に試験が行われたらしいんだが、コンピュータが暴走した……骨格の記憶がメインコンピューターを支配したのか?と推測され、解体処分されている」
ゴジラザウルスの変異種が怪獣王ゴジラなのは周知の事実だが、骨格の持ち主は太平洋戦争で世話をしてくれた日本軍に懐いていたらしく、立ち合っていた在日米軍を殲滅してしまったという。また、同族かその親類かは不明だが、1998年にニューヨークを混乱に陥れた個体がおり、その死体、その赤子の剥製が残されている。少なくとも、怪獣王ゴジラの脅威は1990年代後半~2000年代前半期には差し迫った脅威であったが、2000年代の後半頃には早くも『終わった事』扱いされていたことが記されている。
「日本は忘れるの早くね?革新派が政権を取ったの、2009年だろ?」
「喉元過ぎれば熱さを忘れるってやつだな。あいつが苦労したのもわかる。しかし、ゴジラの脅威があったのは現実で、メカゴジラの安定に20年以上を費やした。その別案がMOGERAだってことだろうさ」
「革新派に知らせなかったのは、学園都市に知られないようにしてたためだろうな。スーパーXにしても、20世紀後半の技術じゃ夢物語に近いからな」
「既存技術で作ったらしいがな、スーパーXは」
「日本はゴジラの存在を知っていた。だから、表向きは学園都市対策で、バイオ星やデンジ星、バード星の技術を使い始めていたんだろう。バトルフィーバーJを皮切りにな」
二人は自衛隊の秘匿していた兵器の根源がバード星などの遺失技術にあることを悟った。そして、鉄人28号の技術は一説によれば、巨獣特捜ジャスピオンの故郷の星が地球に残した技術が由来だともいう。
「戦中の日本は秘密兵器を実用化に持っていけなかったが、戦後に自衛隊が切り札として開発を続けさせたのか」
「多くはそうなるな。日本軍の起死回生の計画は戦後に完成している。ラ號は民間委託プロジェクトだったらしいが。まほろばは間にあったが、投入が坊ノ岬沖海戦じゃな」
日本軍の起死回生計画のうち、かろうじて間に合ったのが『戦艦まほろば』であったが、投入された戦いが坊ノ岬沖海戦であり、極秘の投入であったために軍令部も存在を把握したのは事後であったという。もし、坊ノ岬沖海戦で旗艦とされていれば、大和の比ではない性能で敵艦隊を蹂躙しただろう。だが、まほろばもデコイの一つという認識を神参謀は持っていたともいい、真の起死回生はラ號であったことを示唆している。
「しかし、海底軍艦を作るなら、普通の空母を増産したほうがよくね?」
「ボーキサイトとかの備蓄量も考えたんだろう。飛行機は軽金属が必要だが、艦艇は艦艇用の鉄さえあればいい」
ブライアンは飛行機と艦艇では、用いる金属が根本で異なることを知っていた。海底軍艦であれば、航空機、潜水艦、地底戦車の役目も一個で済ませられる。さらに言えば、重力炉の出力は第二次世界大戦のレベルであれば、必要十分なものだからだ。
「重力炉は20世紀中なら、初期の核融合炉よりも高出力を出せる分、有利だ。対消滅と同レベルだという。この上が縮退炉やフォールドエンジンだと」
日本軍は大戦末期には重力炉の万能性に気づいていた。惜しむべくは、本格研究の始まりがあ号作戦の後では、遅きに失していたことだろう。東條英機の失敗はその点でもあるだろう。
「東條英機がオーバーテクノロジーの有効性に気づいたのはマリアナ沖海戦の直後。これでは到底間に合わん。だから、現場は敗戦と同時に、地下に潜るのを前提に動いていたんだろうな、戦後の日本を守るために」
ファイルには、ラ號計画の現場責任者である神宮寺八郎大佐の在りし日の姿を写した写真が添えられていた。プロトタイプ、あるいは欺瞞用の『潜水艦と戦艦の間の子』的な姿をした船が1960年代には存在していたことも添えられている。それを経て、大和型の姿を持つ海底軍艦に至ったであろう開発の経緯、プロトタイプの素体は日本海軍最大の潜水空母『伊400型』であることが添えられている。
「大和型の姿を持つのが本命だとしても、わざわざ潜水空母ベースのドリル潜水艦を作っておくか?」
「多分、ぶっつけ本番で重力炉をダメにしたくはなかったんだろう。で、重力炉の稼働の安定を確かめた上で、大和型の船体に組み込んだんだろうな」
ラ號は地球連邦軍が正式に軍艦にするまでの時間が100年単位と長い。まほろばと同様に、有志が代々に渡って管理し続けていたのは想像に難くない。日本軍の遺産が巡り巡って、地球全体の守護のために使われ、それが地球連邦軍の象徴となるのは、旧日本軍を否定しようとする者達にとっては最上の皮肉だろう。
「ここにおられましたか」
「どうした?」
「ハッ。そろそろ撮影のお時間です」
「おお、そうか。そんな時間か。今、行く」
兵士がブライアンに『MC(ミュージッククリップ)の撮影』の開始を知らせる。
「そうか、お前、一応、これも仕事だっけ」
「ああ。一曲は若手時代に歌ったきりだから、歌詞を覚えているか不安だが……」
これは連合軍の欺瞞、広報の双方を兼ねた撮影である。本来はキュアドリームがTV番組としての『プリキュア5』シリーズの主題歌をバックにダンスを披露するのみであったが、ブライアンが入れ替わったことで変更されたのである。
「トチったら、トレセン学園の沽券に関わる。きっちりやれよ」
「わかった」
ブライアンはさっそく、MCの撮影に入る。持ち歌を披露するので、気合たっぷりである。(キュアドリームの体を借りているが、歩き方などはナリタブライアンのそれである)ゴルシはキュアビートの体を借りつつも、やることはいつもと変わりないので、そこも連合軍兵士たちに好評であった。
――そのミュージッククリップは春日野うららの持ち歌の披露の後に撮影された。別の自分の体を借りている者の様子が気になったのか、恐る恐ると様子を見に来たのぞみBだが、凄まじい衝撃を受けることになった。(ブライアンが歴代のトレセン学園のウマ娘で屈指の歌唱力を誇っていたため)――
「♪孤独や涙さえもぉ~速さへと変える誓い~~何度不安に駆られても、止まりはしない!
どんな明日が待っていても~走り抜く意思は同じ――誰にも負けない!夢を掴んで……――」
ブライアンが若手であった頃に作曲され、オグリキャップの歴史改変後は彼女から『受け継いだ』とされた楽曲『シャドーロールの誓い』。最近は初心に還る意図もあって、歌う機会が増加している。のぞみの声で歌っているわけだが、音痴であったのぞみと違い、彼女はプロ級の歌唱力であった。
「嘘……これが……私……?」
あまりの衝撃に言葉を失うのぞみB。精神は入れ替わったとしても、肉体は自分自身のもの。つまりは『自分の声』のはずである。それが自分と正反対にプロ級の歌唱力を見せつけたのだから、凄まじい衝撃であった。しかも、ダンスも(のぞみBもラブ達との交流で、一定程度のダンス技量はあるが、正式に訓練されたものではない)『訓練されている』洗練された動き。
「これじゃ、私も霞んじゃいますよ……」
春日野うらら(キュアレモネード)もこれである。彼女は本職の芸能人(売出し中)であるので、自分も持ち歌を歌ったのだが、ブライアンの歌唱力は彼女を数段上回っていた。しかも、炎をバックに歌い上げていることもあって、ブライアンの高い歌唱力が強調されていた。
「あいつは歴代のトレセン学園の在籍者でも屈指の歌唱力を持つ。引退しても、歌手で食っていけるだろうよ」
「あ、えーと……」
「ゴールドシップ。あんたらの仲間の体を使わせてもらっている。多分、2012年以降なら、ウマとして走ってるだろうから、その時にわかるさ」
ゴルシはそう言って大笑する。キュアビートの体を使っているが、声のトーンは黒川エレン本人よりだいぶ低く、イメージ的には織斑千冬やクラン・クラン(巨人時)に近くなっている。ゴルシ本人の声色が低めであるためだろう。
「あれ、プリキュアの姿を普通に保ってるんですか?」
「いちいち、変身アイテムを使うのは億劫なんだよ。ブライアンの奴は、気合込めれば変身できんが、あたしが借りてる奴はそうじゃねーからな」
のぞみAはスペックの強化が大きいため、この時点では『変身アイテムを介さずとも、任意の形態に変身できるが、他のプリキュアは個人差がある。その点は苦笑交じりだ。
「あの、正体バレません?」
「心配ない。この世界にいるスイートプリキュアの連中のいる街とここは何十kmも離れてるし、今は2010年代以降みてぇに、SNS全盛の時代でもないしな」
のぞみBの指摘に答えるゴルシ。2008年当時、スイートプリキュアのメンバーは小学生。パソコンに触っているかも怪しい年頃。キュアミューズに至っては、現役時代に11歳であるので、2008年の頃は小学校入学間もない頃だ。
「そう言えば、響ちゃんは2011年のプリキュアなんだっけ?」
「ええ。本当に会えるのは、あと三年後ですよ、のぞみさん」
「お前らが高校生になったあたりだよ。プリキュアだから、時間軸無視で会えるけどよ、ハピネスチャージプリキュアの連中なんて、2014年の住人だぞ?」
「えーーーーーー!!」
二人には驚愕の事実だ。ハピネスチャージプリキュアは2014年のプリキュア。のぞみは1993年の生まれなので、その頃には21歳になっている計算だからだ。
「お前ら、偶に会ってたから、気づいてないのかよ」
「は、はい……。うわぁ~~!そ、それじゃ……みらいちゃんは……?」
「2016年」
「のわあーーーーーー!!に、2016!?に、にせん…じゅうろく…」
「つまり、お前らが見てる幼稚園児が今のお前らくらいになった頃のプリキュアだよ、あいつは。はーちゃんは年齢ないけど」
「え?」
「いや、あいつ、大地母神」
「……ふ、ふぁ???神様??」
ゴルシは普通にネタバレするが、本来、のぞみ達は第二世代プリキュアとも世代間の相違が大きく、現役時代の姿での交流はできないのだ。いちかに至っては、みらいたちが本来、成人を迎えた後に出会っているので、本当は当人同士の認識より年齢に差がある。
「第三世代の連中に至っちゃ、お前らより一回り若いぞ」
「じゃ、はるかちゃんやはなちゃんたちは……?」
「2000年以降に生まれてる。この時代だと、幼稚園にも行ってるかどうか」
春野はるか(キュアフローラ)は2002年、野乃はなに至っては2004年。つまり、なぎさとほのかが戦い始めた頃に赤ん坊の世代。のぞみAが悩んだ『世代の違い』がここでも突きつけられる。
「それじゃ、私達の背中を見た子供がその後にプリキュアになっても……?」
うららが疑問をぶつける。
「普通にありえる。ここにいるキュアラブリーは子供の頃、キュアドリームのニュースを見て、憧れてたと言ってたし」
「えーーー!?」
「だから、参戦した理由も、お前に恩義があるからだって言ってる」
「めぐみちゃんが?私に??」
「落ち着けよ、お前のことじゃねぇし」
のぞみBは脳の情報処理が追いつかなくなり、目がグルグルになってしまう。
「年齢なんて関係ない、俺たちは信じてくれる仲間が、応援してくれる味方が、助けを求める人がいたら、それだけで生きていける。君たちもそうじゃないのか」
「風見さんか」
「年齢で言ったら、俺なんて、生まれが1950年だしな」
風見志郎(仮面ライダーV3)が姿を見せる。革ジャンとヘルメット姿だ。
「え!?どう見ても二十歳そこそこですよ!?」
「俺は改造人間だからな。外見の誤魔化しも効くが、基本的には改造された時の年齢のままだ」
風見志郎は改造人間。プリキュア達のような奇跡の出会いはないが、外見は変わらない。歴代仮面ライダーのうち、昭和の仮面ライダーは何かかしらの形での改造人間故に、普通に歳を取れないのだ。
「戸籍は誤魔化せないがな。だから、運転免許の更新の時は改造人間って申告してた。俺たちが現役の頃はいい加減だったから。一号と二号に至っては、ナノマシンで加齢した外見にして動く事がある。1948年生まれでは、この時代以降だと苦労するもんだ」
「昭和ライダーだもんな、あんたら」
「ああ。ゼクロスの奴までは大変だよ。実年齢と肉体の外見の乖離が大きくなる。そこは光太郎が羨ましいな」
「ああ、あの人以降は未来人だったな?」
「そうだ。改造人間だから、俺たちの直接の後輩になるが」
「君たちが羨ましいくらいだ。俺たちは実のところ、20世紀の後半から冷凍睡眠に入っていたからな」
「一号の意向だっけ?」
「先輩は自分達の力が必要とされない世界を願ったからな」
風見志郎の言うとおり、仮面ライダー達は一号の意向で、ある時期から冷凍睡眠に入っていた。それを守っていたのが電撃戦隊チェンジマン以降のスーパー戦隊であり、宇宙刑事たちであった。そして、統合戦争で彼らの基地を守ったのが、ドラえもんズなのだ。
「だから、俺たちは彼……ドラえもん君に大恩がある。彼はその時間軸で……時空破断を自分達を犠牲にして阻止してくれた。俺たちがそれを聞かされたのは、23世紀に目覚めてからだった」
仮面ライダー達がドラえもんに協力する理由は、統合戦争の際に、自分達に代わって命を懸けてくれたことへの恩返し。それを教える。
「うん。それに……彼ははーちゃんの面倒を見てくれてたからね」
「キュアハート……」
「あたしらがのび太さんたちに協力してるのは、彼らがみらいちゃんたちを助けてくれたんからだよ。ツテを使って」
「彼が仮面ライダー鎧武とディケイドに事を伝えてくれなければ、キュアフェリーチェも、キュアミラクルたちと同じ目に遭っていた。鎧武とディケイドが彼の手引で、魔法つかいプリキュアを救ってくれなければ…」
仮面ライダーディケイドの言葉によれば、鎧武は自分が仮面ライダー四号たちを引き付けると告げ、壮烈な闘いに臨んでいったという。ことはは鎧武のその献身的な突撃を聞かされ、戦意を喪失していた自分を深く恥じた。その悔恨が彼女をしばらく、プリキュアの姿に固定させてしまったが。
「鎧武は?」
「わからん。彼も仮面ライダーだ。討ち死にはせんと思うが……」
鎧武がどうなったのか?それは今のところは不明だが、その献身的な突撃がことはの心に深い楔を打ち込み、彼女を強さへの渇望へ駆り立てたのは確実であった。
「はーちゃん、なんと言おうか、再会した時はさ、山伏みたいな格好だったから、開いた口が塞がらなかったよ」
キュアハートもそう教える。ことはは実のところ、野比家で暮らして、何年かした頃から、流竜馬が父の代に買っていた廃寺を改装して営む『烏竜館』という空手道場の門下生になっていた。それを聞いたのぞみAが心配し、これまた入門したので、流竜馬は『俺の道場は託児所じゃねぇ』と愚痴っていたりする。とはいえ、亡き妹の事を思い出したか、流竜馬も目をかけている。平行世界での実子である拓馬は『親父、意外に優しいんだな?』と感想を述べている。
「あたしとめぐみちゃんも、なんやかんやあって、はーちゃんの通ってる空手道場に入門してさ。道場主が隊の同僚だし」
「え、知り合い?」
「流竜馬さん。ゲッターチームのリーダーだけど、実家が空手道場なんだ」
流竜馬は空手道場を経営している。本人が経営に無頓着なために貧乏道場だが、空手自体は実戦空手であり、一般門下生らも普通に五輪で上位を取れる水準の腕前であった。スーパーロボットのパイロットと格闘家を兼任するのは意外にいるが、流竜馬の場合は偶然の一致であったりする。
「初夏の時期に合宿してるんだ。何回か参加したけど、かなりきついよ、変身してても」
「え、変身してていいの?」
「竜馬さん、普通に変身したあたしらと戦えるからねぇ」
「そうでなければ、ゲッターロボは乗りこなせんよ」
二人は流竜馬をそう評する。プリキュアに変身した自分達を普通に生身で圧倒するばかりか、ちゃんと攻撃を分析し、ダメ出しできる。彼の父『一岩』を反面教師にしたか、その点に抜かりはない。さらに言えば、実は高校時代はサッカー部のエースストライカーであった過去を持っているためだろう。のぞみBとうららは『変身した自分達の攻撃を生身でいなせ、更にゲッターロボを長年に渡って乗りこなしている』男がどんな男なのか。それが気になるようだ。
「あー……、お前ら。意外に若いぞ、彼」
二人の様子に、ゴルシがツッコむ。ゲッターロボの操縦者という属性はいたいけな女子に『どんな偉丈夫か』と想像させるらしいが、竜馬は普通にイケメンの部類に入る。そこは意外に優しいらしい。のぞみBはすっかりほだされたと考えていたが、気になるものは気になるのだ。そこは夢原のぞみとして、根は同じであると言える点であった。