――ティアナ・ランスターは極僅かな休憩時間の際に、黒江に覚醒した前世の記憶を話したが、黒江は既にそれを知っていた。そして、時空管理局への配慮で、その時における名前を別名義で用いる事になった――
「なんで配慮するんですか?」
「時空管理局の教育局に恥の上塗りさせると、奴さんの予算がゼロになるんだと」
「なんですか、それ」
「なのはの事で問題になったからだ」
「あたしと関係ないような」
「あいつは教導隊だろ?それで、立花響のことで時空管理局も相当に責められてな。俺たちが責任取っておしまいって事ですまなくなった。加えて、お前が魔女の世界で撃墜王だろ」
黒江はティアナに別名義を取得させた理由を話す。ティアナが魔女の世界で空戦のエースになった事と、なのはの大ポカが時空管理局の教育局の担当者の責任問題になり、結局、メンツ論が勝ったと。
「時空管理局のメンツが立たないと?」
「そうだ。なのはは広告塔だったからな。そいつが大ポカやらかしたってのは、時空管理局の沽券に関わる」
「で、あたしが落第した試験の担当者は?」
「はやての采配で、辺境の世界の駐屯地に出向だ。片道切符のな」
「なのはさんの問題が長期化したのは?」
「俺たちが処分を受けた時、あいつ、よりによって映画の撮影中だったんだと。で、はやてが予定を変更したんで、後半は子供の姿にさせてたが、お前に対しての史実の事件の評判に落ち込んでな。それから酒飲みになってった」
「あーあ……」
「で、シェルブリットに覚醒したんで、ネットのおもちゃにされたのも効いたみたいだ。それでヤサグレた」
「変に子供っぽいんだから、あの人」
「あいつ、大人ぶるのは、自分を抑えてる節があったからな。ヴィヴィオ引き取って……。年齢に似合わないほどに大人ぶるのが嫌になったんだろうな」
「ヴィヴィオを史実通りに引き取ったのは?」
「懐いたからだ。M動乱の時のあいつは4、5歳相当だったから、親が必要な年頃だ。聖王のクローンなんて、政治的なあれで施設も嫌がるしな」
「聖王の記憶が濃くなったのは?」
「俺や調と会ってからだ。フラッシュバックで記憶が呼び覚まされた。その時は俺の姿をしてたから、説明が大変だったよ」
「あの子、それで格闘技を?」
「いや、フェイトの影響だ。あいつ、高校に入りたての頃にインターミドルを勝ってんだ。スバルは相当に苦笑いしてたぞ」
「でしょうねぇ」
フェイトは高校一年時に一度だけ、インターミドルに出ている。はやてに『箔をつけるために出ておいたら?』と促されたためである。フェイトは面倒くさかったので、開幕のライトニングプラズマで全勝するという手法で全勝した。試合時間は全部合わせても、たったの30秒ほど。なお、なのはも高校二年時に、御庭番衆式小太刀二刀流で出場(偽名と顔隠しで。その際には、自身のコピー体の名を拝借した)。これまた優勝している。
「で、なのはも高校の二年ん時に偽名で優勝してるんだが、それをあいつの親父さんに言ったら、泣かれたって。まぁ、家の流派は習ってないしな、あいつ」
「鍛えすぎですよ」
「お前だって、前世の高次物質化能力が合体した状態になってんだ。前世の連中が聞いたら、泣くぞ?たぶん、レナ・セイヤーズくらいしか戦えんはずだ。あ、ミユはノーカン」
「そこまで知ってるなんて…」
「若い頃、のび太がハマってたと言ったろ?舞-HIMEシリーズ」
「なんでなんでぇ!?」
「高校ん時は深夜アニメしか見れなかったんだよ、あいつ。それで、プリキュアの初期の二作は見れなかったんだ。おふくろさんが勉強一本槍でな」
「それで、咲がぶーたれてたんですね」
「見てないのは見てないしな。あ、正確には三作だ。初代は二年だし。なのはは見てたって言ってたな。その時期に闇の書事件だったし」
「9歳でニチアサ見てたんですね、なのはさん」
「なのは、兄弟とも歳が離れてたから、必然的に見てたんだと。プリキュア5に替わる頃に卒業したから、のぞみにはぶーたれられてたぞ」
「あ、あはは……」
とはいえ、別世界のなのは(9歳)はキュアドリームに目を輝かせていたので、自分たちの知るなのはも『プリキュアに憧れていた子供』であるのは確実であると、黒江はいう。それは別世界の子供なのはが大喜びであったからだが、そのプリキュアからも『魔法つかい』が輩出されるのはなんという偶然であろうか。
「別世界のなのははドリームが『次のプリキュア』だった頃だったから、ものすごく食いついてな。のぞみも上機嫌だった。最も、向こうの管理局は真ドラゴンに怯えてたがな」
「そりゃ、闇の書の闇が問答無用で消滅すればねぇ」
「向こうは多分、こっちよりは賢明な判断を下すよ。向こうは地球の事をよく調べていたからな。こっちは21世紀の後はろくに調べていなかったからな」
「え、200年も放置ですか?」
「いや、メカトピア戦争の前に調べた時期、ちょうどガミラスの遊星爆弾にやられてた時期だったんだと」
「あー…」
「地球は不死鳥だからな。文明自体を二回は再建してきた。だから、ジオンの機密文書が問題になったんだ」
「ああ、ラプラス戦役でタウ・リンにバラされたアレ」
「宇宙移民の独立を、意思を、それを体現したザビ家を受け入れぬ世界など消滅するがよい。そして人類は宇宙世紀をもう一度やり直すのだってのは、ジオンは同胞も皆殺しにする事を意味する。ガトーも愕然となったの見ただろ?」
宇宙時代のことを『宇宙世紀』と呼ぶこともある未来世界、キシリア・ザビはこのような文章を遺していた。タウ・リンはこの文章を白日の下に晒す事で、一年戦争時に属していたジオンという存在に復讐した。その衝撃は熱心なザビ派であったアナベル・ガトーをも愕然とさせるものであった。ラプラス戦役でジオンの命運が尽きたのは、タウ・リンがそのように仕向けたからである。
「奴は死期を悟っていたのか、最後に連邦とジオンの暗部をさらけ出し、俺たちに挑んだ。奴の意図は今なら、なんとなくわかる。時空管理局の存在も知っていたからな。こっちの時空管理局はM動乱がきっかけで地球の軍門に下ったが、その一因は地球が何度も滅びかけてるのに、不死鳥のごとく蘇ることへの畏怖だろう。タウ・リンも時空管理局のことは滅ぼす対象だったようだからな」
「で、今は地球の植民地も同然ですか」
「組織存続のためだ。戦国時代に逆戻りするなら、地球の足を舐めてでも、秩序を守る方が大事だったのさ」
とはいえ、地球も、ミッドチルダも実質は滅んだも同然の有様から再建してきたのである。ミッドチルダは体裁云々の以前の問題だったが、秩序の維持のために軍門に下った。地球は既に何度も地表が焼き払われている。地下に潜り続ける選択もあったという。だが、地表に文明を再建する道を選んだ。それを経ているため、23世紀の地球連邦軍は自己犠牲精神に溢れていた。
「大決戦の慰霊祭も近いからな。ここでの闘いは短期決戦に切り替える」
「大決戦の時の戦死者、意外に多いですもんね」
「特に空間騎兵隊に多いからな。プリキュアたちを行かせるために、デーモン族の超能力で石にされた隊員もいたくらいだ。まるで、里見八犬伝の映画みたいだったよ」
空間騎兵隊は大決戦にも参戦した。その際には、プリキュアたちをデーモン族の攻撃からかばう形で、多くの隊員が戦死している。隊員らの壮絶な死に様は、参戦したプリキュア達の心に強烈なものを刻みつけた。無数の槍に串刺しにされつつも、立ち往生した者、プリキュア達を庇い、石柱化しつつも、『自分らの屍を超えていけ!』と発破をかけた者、キュアブライトとブロッサムを守るために百鬼帝国兵の機関銃の前に身を晒し、蜂の巣にされつつも、敵を道連れに自爆した者。その時の彼らの姿が目に焼き付いていた故に、のぞみAを助けに行くことを決めていたのが、かれんとこまちであり、咲と舞であった。空間騎兵隊の献身は巡り巡って、プリキュア達が集合するきっかけを作ったのである。
「空間騎兵隊の犠牲が、あの子達に決意を固めさせたんですかね」
「かれんとこまちはそうだと言ってる。あれは相当にショックだったからな。のぞみ自身はそれに加えて、台場大尉の『衝撃降下90°』が軍人で居続ける決意を固めた理由だと言ってる。彼がキ99で散華する時の敬礼と微笑みが目に焼き付いてるそうだ」
「のぞみ、あれを見たんですか」
「眼の前でだ。俺たちに敬礼しながら、台場大尉は逝った。満足した顔でな…。のぞみはあれで軍人で居続ける理由を見つけたんだ」
プリキュア達は何かに賭けた男たちの死に様を目の当たりにした事で、闘いの道を歩む事を決めた。かれんとこまち、咲と舞は空間騎兵隊の男たちの壮絶な死に様、のぞみは台場大尉の急降下での乗機共々の散華。のぞみは山越技師と錦時代に知り合いだったため、彼に涙ながらに、台場大尉の散華を報告。彼は『台場は夢を叶えたのさ…』と慰めたという。転職の失敗後に浮ついていた彼女に衝撃を与え、彼の死に様に応えようと決意し、軍人で居続ける事を選んだと、黒江はいう。見かたによっては台場の身勝手であるが、彼と山越の夢を叶えるための最後の手段であり、看取ってくれる者がいるだけでも良かったのだろうと、山越技師は述べている。
「じゃ、あの子が教師にならなかった本当の理由は」
「台場大尉の死に報いるためだろう。彼の散華した地点に慰霊碑まで建てたしな、あいつ」
それは本人のみぞ知ることだが、彼女は台場大尉が『わかっていて、急降下を敢行した』事に狼狽し、止めようとした。だが、台場は何かを言い残し、一同に敬礼しながら、死のダイブを敢行した。のぞみは『キ99』が空中分解する瞬間の台場の姿を目の当たりにした。それは揺るぎない事実だ。
「普通に生きたなら、あいつらとは縁がない世界だが、何かにすべてを賭けた者ってのは不思議な何かを放つ。前世のお前が想い人の存在を媒介に、カグツチを呼んでいたように」
「……」
「ブライアンもそれを求めた。運命を覆すための何かを得るために。それに足るものを、俺たちに見出したんだろう」
ナリタブライアンは前世の記憶の蘇りで、運命に抗う選択をした。オグリキャップらのように、過去を改変するのではなく、運命によらない未来を切り開くために。それは必然として、『ブライアンの世代の最終的な勝者はサクラローレルになる』ことに抗う道になる。『三冠を得ていながら、その存在が語られることが無くなっていった』悲劇を抱えつつも、現役時代はその名をもじったポニーがTV番組を賑わしていたこともある。ブライアンはたしかに三冠馬としての名誉を守り通すことはできなかったが、シンボリルドルフ以来の三冠を勝ち取るという名誉は成し得た。前世での現役晩年期の低迷を悔いにしている彼女が選んだ選択は何なのか。この闘いへの極秘裏の参戦が物語っている。
「直に出撃だ。仮面ライダー四号と確実にやる事になる。三号はわからんが、四号は確実に倒す。それはあいつにもいう」
四号は完全な脳改造を受けている。三号が脳改造を受けていないための措置か、完全な兵士を求めた結果なのかはわからない。更に、海底軍艦の鹵獲という難題を突きつけられた64Fは苦しい戦いを確実に強いられる事になったのである。
「是非がでも、四号だけでも地獄に叩き落す。そうでなきゃ、俺たちは誹りを受ける。奴さえ倒せば、一般怪人しか奴らには残らん」
「でも、どうやって」
「生半端な攻撃はヤツにエネルギーを与える。全力を以て叩きのめすしかない。ホッパータイプはタイフーンが回ってしまえば、ほとんど手出しできなくなる」
仮面ライダーと同型の改造人間は基本的に、風がタイフーンを回せば、その最大ポテンシャルを出せる。機械式の改造である仮面ライダー最大の利点だが、それは敵の同型も同じことである。
「RXは太陽、他のライダーは風だ。組織は双方がない空間に追い込む戦術を考えていたそうだが、実行されなかったそうだ。おそらく、屋内だと、怪人の能力が発揮できないデメリットのほうがデカかったんだろう」
「でも、四号は誰が変身してるんですか?」
「推測だが、平行世界で仮面ライダーエターナルになっていた男だと思う」
「仮面ライダーエターナル?」
「平成ライダーはようわからんが、ライダー同士で戦うのは当たり前だしな」
それは大道克己という男の事である。彼は仮面ライダーエターナルになる世界の他に、ショッカーの改造手術で昭和ライダーの派生に変身する世界があるのだが、未来世界は後者であった。脳改造の影響か、完全に極悪非道に染まっているため、和解の可能性を残す三号と違い、倒すべき対象でしかない。また、若かりし頃は仮面ライダーWの変身者の一人『フィリップ』と瓜二つであったとの情報もあるなど、謎が多い。仮面ライダーエターナルとなった世界線では『死人』であった彼だが、仮面ライダー四号となった世界では、機械式の改造で生き永らえたと見るべきか。
「平成ライダーは好かん奴も多いが、鎧武には感謝してるよ」
「平成ライダー、嫌いなんですか?」
「おりゃ、昭和の人間だしな」
『個』が強い平成ライダーの事は信頼しきれていない様子の黒江。とはいえ、昭和ライダーとはアプローチが違うだけで、世界を守ることに存在意義を見出した者も多いので、変身者が生きた時代が昭和ライダーとは違う故の相違であった。平成以降の仮面ライダーは信用ならない者も多いため、崇高な使命のもとに集う昭和ライダーの絶対的なヒーロー性とは相反する場合が多い。故に、平成/令和ライダーは『主役級以外は……』と考えているようだ。
「お前の事は今頃、まっつぁんが説明してるだろう。幹部級の一人や二人は地獄に送らんと、上層部から誹りを受けるぞ」
「世知辛いですね」
「転生で、異能者なんてしてると、万能の存在みたいに見られちまうからな。お前も舞-HIMEシリーズのヒロインかつ、なのはシリーズの重要人物の二重属性だから、後で管理局の役人に嫌味言われるぞ」
「えーー!面倒くさいなぁ」
「のぞみを見ろ。扶桑の名家出身ってだけで、日本にぞんざいに扱われたが、プリキュアと分かった途端に手のひら返しだ」
「なのはさんはどうなります?」
「今頃は、竜馬さんとこでひーこらしてるだろうよ。調からの連絡で、竜馬さんの道場に運んだそうだ。本人は大パニックだそうだ。まぁ、アル中を治すには荒療治が必要だ」
「しかし、お前が舞-HIMEシリーズの属性とはな。ひぐ◯しのなく頃によりはマシか?」
「心外です!これでも、トロピカル~ジュの世界の先代……」
「それ、カウントしていいのか?」
「さー……」
とはいえ、のび太曰く、舞HIMEを考慮に入れた場合、501の中のみならず、旧・機動六課にも転生の候補者がいるという。
「あ、智子の奴がこれが終わると、実家に帰省しなけりゃならんそうだ。嫌だから、ウマ娘の誰かに身代わりになってもらうか、のぞみと同じ手を使うかって悩んでたな」
「お見合いですか?」
「姉貴が自由人だからって、母親が諦めんそうだ。だがなぁ、俺たちくらいの手柄になると、たとえ、元の将軍家でも釣り合わんのだが…」
自分と圭子の場合は完全に諦められたが、智子の場合、姉が自由人で『結婚する気配無し』であったためか、次女ながら、容姿端麗の智子を結婚させようとしているのだと、黒江は説明した。世間的に『魔女と言えど、20代のうちに婚約を済ますのは当たり前』という認識がある。
「糸川博士とパートナーっていっちまえと言ってるが、本人は若い頃の出来事のせいで嫌がっててな。あいつも、お見合い結婚は本意じゃないからな」
「確かに」
「うーん…。お前がこうして目覚めた以上、これで終わりでもないな。下手したら、坂本がなるかもしれん」
「そう言えば、坂本さんの若い頃の声……昔の友だちに」
「ほらきた」
「可能性ってだけですからね?」
「のび太にもっと調べさせよう。まずはそれからだ。ただでさえ、プリベンターにプリキュアの事を調べてもらってるんだし」
「なつきや遥さんあたりは怪しいかなぁ。あたしと縁がありそうな……」
「のび太に伝えておく。まったく……ややこしくなったな」
後に、ティアナの前世の記憶がハッキリしていくにつれ、次の事が判明する。『地球で異能者でなくとも、その未来にあたる移民星での末裔は異能者である場合がある』こと、自分が過去に面倒を見ていた後輩の母親が歴代最強の呼び声高い乙HIME(オトメ)である事……。
――かくして、紆余曲折あれど、陣容が整った64Fは廻天の発進準備を進める。それに呼応し、インペロがこの世界の日本のレーダー網に捕捉される。その様子を傍受した64Fは時間稼ぎのため、自衛隊に匿名で情報を提供。意図的に自衛隊をインペロにぶつける。これは予想以上の効果となり、インペロに意外なダメージを与えた。主砲での砲撃戦が事実上のご法度になるため、ミサイル戦でインペロを擱座させるとの方針も決まる。補給物資が到着するのを待っての決戦となったが、ティアナのことはその間に取り急ぎで説明された――
「ティアナさん、デバイスはどうします?」
「クロス・ミラージュは整備に出すわ。ちょうど、オーバーホールの時期に来てるから。いちか、悪いけど、管理局行きの定期便に載せといて」
「分かりました」
「あんたも、ややこしいことになったなぁ」
「いいじゃない。前と違って、主役補正がつくんだからね」
「そこで張り合うのかよ」
と、キュアジェラートに呆れられるティアナ。実際、主役補正がつくのは事実である。
「それにね、あたしは2004年位のキャラなんだから、もうちょい敬意払いなさいよ」
「おおう、そこでマウント取りにきやがったな」
と、子供のような言い合いの二人。呆れる一同。
「オホン…、メタ発言はそこまでにせい」
咳払いをし、二人を諫める赤松。ティアナも意外に子供っぽいところがあるらしい。元からスバルにつっけんどんであったが、覚醒後は鴇羽舞衣としての記憶の覚醒に伴う変化か、転移以前よりとっつきやすさを感じさせる。
「適当なストレージデバイスを管理局に用意させてある。とっかえひっかえで使え」
「と、なると、ディバインバスターは一回っきりですね」
「量産品ではメカニズムが耐えられんからな」
ディバインバスターはデバイスに負担をかけるため、量産のストレージデバイス程度では、一回の戦闘でデバイスを潰すのを覚悟で撃つ必要がある。仕方ないが、高位の魔法を無理なく使うには、高性能のデバイスが必要なのだ。調がベルカ時代にワンオフで『エクスキャリバー』を作ってもらったように。
「まっつぁん、アームドデバイスは?それなら、次世代の試作品が回せると、フェイトの部下から連絡来てるよ」
「ティアナ、使えるか?」
「ステゴロがいいのなら」
「スバルとギンガが親から受け結いでいたものをリバースエンジニアリングして、ベルカ系の局員向けに生産予定のものの試作品だそうだ。乙HIMEの力と干渉しないから、拳の保護にいいだろう」
「そいや、あいつ、最近は一線退いてるんだった。ずいぶん会ってないなぁ」
「数年は会ってないよな」
「ええ。ここ最近は魔女の世界にいたし、あいつはミッドチルダで隠居中の閣下の秘書だし」
スバル・ナカジマ、ギンガ・ナカジマは体が戦闘機人とは言えなくなったりした影響もあり、ここ最近はガランドの秘書を仕事にしており、第一線からは退いている状況であった。これは管理局による定期メンテが必要なくなり、部品の多くも仮面ライダーらに使われる『地球の改造人間の規格品』に置き換えられていた事、それに伴う『体の加齢停止』などの副作用があったからである。戦闘機人は成長(老い)に伴う内部部品の取り換えなどが必要であったが、地球型の改造人間は肉体そのものの作り替えに近い。二人は戦闘で重傷を負った段階で地球に飛ばされ、仮面ライダーらに助けられたため、必然的に『見たことのある構造』へ作り替えがされる。組織の技術は二人を生んだ存在よりも高レベルであったためか、二人の体は『戦闘機人とは言えない』ほどに手が入れられていた。転移時に生命維持機能に損傷があったため、それを仮面ライダーらが自らの技術で置き換えたためである。
「管理局の技術じゃ、ナノマテリアルの管理はできないからな。元のままの部分はかなり減らすしかなかったそうだ」
ナノマテリアルは地球の技術力の象徴にもなっていた。テラフォーミングから医療目的にまで使われているからだ。(最も、DG細胞もナノマテリアルの一種だが)M動乱では、捕虜になったり、投降したナンバーズの治療にも使われている。ナンバーズの更生組もこの頃にはガランドの孫扱いであり、ガランドは20代後半にして、大勢の孫を持つことになった。
「でも、ナンバーズの子は再改造受けてるんですかね?」
「希望者のみだ。あの子達も再改造には抵抗があるからな。ノーヴェはしたな。姉妹と合わせたいからって」
「数の子は儂らにえらい目に遭わされたからと、逃げよるのが多い。けしからんことだ」
「いやぁ、鳳翼天翔で収監組焼き払ったでしよ、まっつぁん」
と、ナンバーズはM動乱で当時の黒江や仮面ライダーZXらと交戦。更生組はまだ天国だったが、収監組は積尸気冥界波やら、鳳翼天翔やら、六道輪廻を浴びせられ、正気を失った者もいたことが語られる。また、最も悲惨なのは、ZXのイナズマキックで倒されたトーレで、発見された時には、両腕が消失する重傷であったという。
「つか、雑に倒してましたよね?」
「ああ、ヴィヴィオのこともあったし、ナンバーズにかまける時間的余裕はなかったんだ。更生組はまだいいぞ?収監組なんて、精神崩壊の奴も出た」
「でも、フェイトさんの史実での見せ場取っちゃってましたよね?」
「あいつはあいつで、見せ場は別にあったから、いいんだよ。スカリエッティをライトニングフレイム(ライトニングプラズマの最高位)で焼き払ったついでに滅多打ちにしたんだから」
「よく生きてましたね」
「急所は外してたしな。むしろ、なのはのほうが方向性変わったぞ。ヴィヴィオを剣で斬る事で解放したから」
「え、どういう技で?」
「Vの字斬り」
「えーーーー!?」
「レリックが埋め込まれた場所が不味くてな、スターライトブレイカーだと、心臓ごと撃ち抜いちまちまうってわかってな」
なのははM動乱の折、剣を以て、ヴィヴィオを救った。その際の構えが記憶の中にあった『守護騎士』(調のこと)に酷似していた事から、ヴィヴィオは自分でもわからないうちに泣いていたという。記憶が呼び覚まされたためである。事後、黒江と調は交互に、自分の事情をヴィヴィオに教えなくてはならなくなったわけだが、ヴィヴィオは嬉しがり、初等科入学後に二人に懐いた。
「で、ヴィヴィオのヤツに教えるのが難儀だったんだ。お互いに入れ替わってたわけだし。遺跡からは、奴が置いてきたデバイスが出土するわ…」
調の専用デバイスは、M動乱直後の再調査で回収され、後に修復されて、本人の手元に戻っている。古代ベルカの粋が集められていたせいか、性能はヴォルケンリッターのそれにも劣らぬもの。なお、その際に、なのはは写真撮影の際に見せたものよりも強化された『天空剣』モードを見せているが、動乱中のメンテナンスの際にビックファルコンの支援で加えられたソードフォームの第二段階である。
「写真撮影の時は第一段階で撮ったが、実はな、天空剣と断空剣を使い分けできる第二段階があるんだよ」
「いわゆるトップシークレットですね」
「で、その後、あいつ、何したと思う?」
「??」
「超極細のSRBでな、目から脳を焼きやがったんだ。ダイヤモンドの針で眼球から脳を突き刺すのと同じくらいの処刑法だ。フェイトがドン引きしてたぜ」
なのはが行った処刑はフェイトをしてドン引きものの所業であり、頭に血が登っていたせいか、『目ん玉から、ダイヤモンドの針を脳に向けて刺すほうが良かった?』と言い放ち、味方をドン引きさせた。そのため、『冥王』と扶桑軍からあだ名されたのは言うまでもない。
「うわぁ……ヒロインのすることかよ」
「だろ?お前らから見ても、危ないだろ?」
「銀河帝国がしてそうな処刑じゃねーか!あの人、怒らせないようにしようっと…」
キュアジェラートは血の気が引いていた。他の一同も同様だ。
「あの娘っ子、とかくやることが極端にすぎてのぉ……管理局の教育が心配になるわい」
赤松もこれだ。とはいえ、M動乱までは万事うまく行っていた。その次のダイ・アナザー・デイでは、黒江たちも管理責任を取る形で、減俸と謹慎処分を事後に受けている。
「なんか、話がそれてません?」
「あまり言うことがないから。単純明快すぎて、説明時間が余るんだよ。インペロを擱座させて、連中をぶちのめす。数秒で終わっちまう」
作戦の説明よりも雑談が多いが、話すことがないからだと、黒江はいう。目的も、敵もハッキリしている場合、口での説明は不要になることもあるのだ。
「うむ。ゴチャゴチャした説明はいい。各部門の責任者は配置につけ。菓子の娘っ子らは補給物資の食料品の鮮度を見ておけ。この間、リベリオン軍の連中が食中毒起こしたからのぉ」
「腐ってたんじゃねーの、自由リベリオンの備蓄品」
「あいつらは大雑把だからのぉ」
「やれやれ。ゆかりさんは本国で忙しいからって、あたしらにやらせるのかよ」
「仕方ないって。あたし達は戦闘向けのプリキュアじゃないし」
プリキュアアラモードの二人は食料品管理の業務もやらされているため、最近は食料品部門の責任者扱いであった。とはいえ、キュアカスタードやキュアショコラなどが不在であるので、ホイップとジェラートで回すしかないのだ。
「あ、この任務終わったら、ライドアーマーの研修したいからさ、手続きの書類送ってくれる?」
「新京の国防省に書類を出しておけよ。向こうで研修だから」
キュアジェラートが言う。彼女は音楽が趣味であったが、最近は手続き無しで乗れる移動手段を探していたのだ。軍隊は資格取得所の側面があるので、軍隊で資格を取る者は多い。それは64Fの隊員でも例外ではない。
「んじゃ、一週間くらい休むから、予定入れといてくれ」
「あいよ。ホイップはどうだ?」
「あたしは日本のデザートコンクールに出たくて」
「プリキュア姿で出るか?」
「現役時代から5年もすぎてるから、大丈夫ですかね」
「向こうも喜んで出してくれるぞ。それに、2022年のプリキュアはご飯のプリキュアだぞ」
「えーーーーーーーー!?」
「あ、お前らは転移組だから、あれを知らんのか。本当だぞ」
「嘘ぉ!?」
「お前らでこれじゃ、なぎさとほのかが聞いたらどうなるんだ?」
と、突っ込む黒江。いちかはこの後、日本で開催予定のデザートコンクールに応募。宇佐美いちかの名前とその顔写真に、コンクールの選考担当者は目を疑ったとか。
「さー……」
何気に、幹部級の会議に参加しているため、二人はすっかり幹部扱いであるのがわかる。階級もそれ相応に高く、日本のファンがその高さに驚くのは日常茶飯事であった。特にキュアマカロンが『少将』であることには大いなるショックであったとは、後にファンは語ったという。こうして、作戦会議は終わってゆく。(当のマカロンはショコラの不在を寂しがっていたのであるが、それは別の話)