ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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オムニバス編です。


第六百二十八話「様々な状況」

――M粒子の存在はレーダーによる索敵網とミサイルの存在感に打撃を与えた。結局、戦艦の装甲はミサイルでは『焼けても、壊せはしない』ことが示された上、戦艦の装甲が未来技術で強化されたことが決定打となり、戦艦の運用は続いた。巡洋艦級の艦砲では、怪異には効果がないからだ。とはいえ、地球連邦軍の新型戦艦のレーダーは何万光年先の敵艦を探知可能な性能を誇っており、それが載せられた事により、扶桑はほぼ完璧と言える索敵網を手に入れた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――電子戦機も23世紀水準のそれが配備されてしまった結果、魔女の世界の実験段階であった電子装置の尽くは時代遅れと化した。ダイ・アナザー・デイ後半以後、それらの提供で扶桑連合艦隊は軍事的に圧倒的優位にあった。敵を超遠距離で探知できる上、宇宙戦艦用の射撃指揮システムと駆動機構により、照準補正も楽にできるからだ。とはいえ、絶対数の少なさは戦術的優位は確約しているが、戦略的優位には繋がらなかった。それは『扶桑の戦艦の数は旧式艦の退役がM動乱後に行われた都合上、史実の日本連合艦隊と大差なくなっている』からだ。八八艦隊世代以前の戦艦が『時代遅れ』とされ、その後継の保有枠の維持が議論された結果、大和型戦艦を基礎とする『重戦艦』と巡洋戦艦に保有枠が分かれ、後者に超甲巡が充てがわれることになった。超甲巡は大きさ的に『戦艦』と見なされたからである。結局、水雷戦隊旗艦はデモイン級重巡洋艦対抗のミサイル装備重巡の新規開発で賄う事になり、超甲巡は巡洋戦艦として使われる事になっていく――

 

 

 

 

――結局、重巡は装甲の厚さをデモイン級重巡洋艦以上に引き上げた新型が新規に開発される事になった。戦後日本は(戦中の教訓から)防御偏重の思考であったからだ。1930年代当時の最新であった利根型や最上型でなく、それより古い高雄型がベースになったのは『最初から一等巡洋艦として設計されたから』という理由で、扶桑の造船官を嘆かせた。とはいえ、未来世界の技術で砲塔の数を絞りつつも、速射と対空射撃の両立が可能となり、水雷装備を(対潜魚雷などの使用のため)持ちつつ、大型化で居住性も改善するのは良いことであった。機関部も技術革新で遥かに省スペース化された。装甲も伊吹以前の艦とは比較にならない。日本連邦は1949年以降、このような新型艦艇の設計と建造を盛んに行う。そのどれもが一定の装甲を有しているが、これは人的損害を叩かれやすい戦後日本の政治的都合が主因であった――

 

 

 

 

 

 

 

――戦車はM動乱とダイ・アナザー・デイの教訓で、重装備重視派が抗争に勝利を収めた。ダイ・アナザー・デイでは、既にM4中戦車も相対的に型落ちであったが、リベリオン陸軍の管理本部の方針で大量に投入された。これに泡を食ったのが、扶桑の陸軍機甲本部。四式や五式のような大型車両は少数生産に抑えたかったはずが、扶桑基準の軽車両が使い物にならない現実が突きつけられた。それをセンセーショナルに報じられ、完全に立つ瀬がなくなったわけだ。新式の設計は完了したが、運用に必要なインフラが本土にないなどの問題があった。それはドラえもんの協力ですぐに解決した事から、四式と五式の増産が決まったが、75ミリ砲から90ミリ砲への変更という設計現場の判断での変更などもあり、主流にはならなかった。その救世主がセンチュリオンであった。その大量配備は日本の軍需産業や国産閥の不況を買ったが、敵車両がM26やM46などにに強化され、苦戦する現場の強い要請もあり、沈静化した。これ以後、扶桑陸軍は重装甲と重火力の信奉者になり、センチュリオンの後継のチーフテンも採用する事になった――

 

 

 

 

 

 

 

――この問題を理由に、日本は保有車両枠に制限を加えようとしたが、扶桑が人型機動兵器で掻い潜った事は予想外であった。しかも、ジェガンやリゼルといった『比較的に新しい』モビルスーツを持ちつつ、ゲッターロボGやグレートマジンガーの派生機種をも有する事は完全に予想外であった。オーバーテクノロジーを部分的にしか使用していない『メカゴジラ』よりも強力だからだ。更に、コンバットアーマーも使われだしたからである。コンバットアーマーは純粋な陸戦兵器であったが、それでも、扶桑在来の装甲車や軽戦車より圧倒的に強大な存在である。魔女が軍事的に有用とは言い切れなくなった時代、扶桑は超兵器で安全保障を確固たるものとしたのである。更に、トップ級の魔女のほとんどが転生者であるという事実の判明も、凡百の魔女達の居場所の消える要因であった――

 

 

 

 

 

 

――坂本は彼女たちが現役でいれる時代は『ものの数十年』だと説き、新規育成枠の維持に努めた。いくら肉体的に不老になろうが、戸籍上の年齢は普通に加算されるからで、それは普通に考えつく。問題は黄金世代に続くエース世代の出現が起こる見込みのある時期は『1954年』以降である事。つまり、史実で日本が自衛隊を持った時期まで、高い素質の魔女は出現しないのは確定事項。坂本はそれまでの五年をどう乗り切るか。それに腐心することとなった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ウマ娘達は現役・引退組を問わず、史実を知った者はそれを知ったなりの身の振り方を考えていく。シリウスシンボリは引退後に領域に達した。既に引退して久しかった上、普通に高校相当の課程の単位は取得済み。大学部進学は規定事項であったため、からかい半分に野比家のあるススキヶ原へとやってきたのだが……――

 

「ここは本当に東京か?よくて平成初期の雰囲気するんだが?」

 

と、時代に似合わぬ古めかしさを感じるシリウス。

 

「シリウスじゃないか。君も来たのか?」

 

「ふん…。引退しても、その食いっぷりは健在のようだな。オグリ」

 

「相変わらず、威勢の良い事だ」

 

オグリはシリウスの後輩だが、実績が遥かに上であることや、現役時代に負かしたことがあるからか、タメ口であった。

 

「現役時代、お前には負けたが……海外じゃ、掲示板は外してないんだぞ?」

 

「それはそうだが……」

 

「クソッ、怪物サマは引退しても怪物ってか?」

 

「突っかかってくるな、今日は」

 

オグリは余裕の表情である。シリウスは現役時代にダービーに勝ったことが最大の勲章であったが、本命(ミホシンザン)不在の状況というマイナス要素がある。加えて、シリウスは現役時代の晩年期、領域を会得したサッカーボーイ(オグリと同時代に活躍したウマ娘)にぶっちぎられる、オグリに軽くひねられるなど、帰国後は成績が奮わないままであった。それ故か、オグリにあまり強く出れないのだ。

 

「引退した後で領域に至っても……虚しいんだっての、こっちは!!現役時代に至らきゃ……至らきゃ…!!」

 

領域の会得が遅すぎたことがよほど悔しかったらしく、普段の粗暴な口ぶりが嘘のように弱気な態度になる。

 

「仕方がない。君は同期と切磋琢磨するよりも、ルドルフが後を追ってくるのを信じて、海外に行った。だが、ルドルフは来れなかった。それが、君がルドルフに反感を抱く原因だろう?」

 

「なっ……!?テメェ、なんでそれを……」

 

「状況証拠からの推理だよ。もっとも、私でなくとも、察しのつくことさ」

 

「……」

 

シリウスは現役晩年の事もあり、オグリとタマモにあまり強くは出られない。その時点で実力に差がありすぎた故に、二人に大差をつけられた事があるからだ。また、ルドルフにその実力を早くから認められていたため、ルドルフを名前で呼べるという、ある種の特権をその世代のウマ娘で、ほぼ唯一持っているのである。

 

「君は海外遠征に挑戦した。それは褒められるべきことだが、君の時代では早すぎた。それだけのことだ。私も、この世界では、細々と血脈が続いてるにすぎないからな。そこはお互いさまだ」

 

「……。ナリタのガキはどうした?」

 

「ルドルフから聞いていないのか?からかいのネタにするなよ?」

 

シリウスは普段、ルドルフとあまり絡まない。親類だが、現役時代の出来事以来、シリウスが反発しているからである。普段は不良の番長のようなことをしているが、それは『現役時代にルドルフが約束を守れなかったこと』もかなり大きい。元から名家の令嬢かしらぬ粗野さがあったが、ルドルフが不可抗力とはいえ、怪我で海外遠征を断念せざるを得なくなった出来事が対立の姿勢をシリウスが取る理由の一つであった。(なお、彼女らの世界線では、ナリタブライアンはオグリの愛弟子の立ち位置であるので、シリウスも『ナリタ(一族の)ガキ』と呼び、予てから面識を持っている)

 

「なるほどな。戯れにしては、マジだな?」

 

「君とて、その気になれば、やれそうだが?」

 

「……ガキの頃だ、そんなのに憧れてたのは」

 

シンボリ一族は名家である。周囲とはある意味で違った環境で育ったが、帝王学を仕込もうとする者たちに反発した女性陣(ウマ娘含む)の意向で、ルドルフとシリウスはそれなりに世俗の空気を吸いながら育った。とはいえ、TVゲームなどには縁の薄い幼少期を過ごしたが、それはそれで昨今は問題(特にルドルフは堅物のイメージが強く、真面目なTV番組にしかお呼びがかからない)になっている。ビリヤードやチェスは『西洋かぶれか、元の華族に出自を持ち、財力を保った家柄の戯れ』という意見もあるくらいにはマイナー(ビリヤードが最後に日本で流行ったのは、バブル期の頃で、遠い昔のことだ)だ。

 

「ビリヤードやチェスは一般の人間には縁遠い世界だぞ、シリウス。将棋や囲碁もそうだ。昨今は野球でさえ、人気が下がっているし」

 

「それは、うるせぇ老人連中のせいだろ?公園でキャッチボールもできねぇなんぞ、イカれてやがる」

 

「してたんだな?」

 

「ガキの頃、親父とな」

 

 

シリウスは現役時代の出来事のせいで捻くれ者になったが、性根は優しいまま。テイオーやツヨシなど、ルドルフを慕う子供らの相手をなんだかんだでしてやったり、ナカヤマフェスタとなんだかんだで友人関係(ルームメイトでもある)であったり、ゴルシとつるんでいたりするからだ。

 

「この世界には、物見遊山できたわけではないだろう?」

 

「お前らの様子を見たかっただけだよ。とはいえ、お前がかわいがってるガキは珍妙な事をしてると聞いたぜ」

 

「ああ、メールを送ってきたが、こんな感じだ」

 

「……ハッ、あのガキ、ちゃっかり楽しんでやがる……!」

 

それは、入れ替わった先で『ズワルト・シャインスパーク』を放った時の第三者視点での空撮であった。ちゃんと『ゲッターロボG』と同じ『ゲッターシャイン』のポーズを取った上で放っている。

 

「あのガキ、無頼を気取っていやがる割に楽しんでないか?」

 

「あの子は案外、こういうのは好きらしい。子供の頃の反動だろうな」

 

「ルドルフはどうしてる?」

 

「いったんこっちに戻ってたが、最近流行ってる新型のウイルスにかかって、寝込んでる。ウマ娘でもかかるってんで、面会謝絶だよ」

 

「ああ、あのウイルスはこちら(ウマ娘世界)でも流行ってるからな」

 

「しかし……この世界はどうなってる?」

 

「細かい事は気にしないほうがいい。君は遥か昔のダービー馬。それ以上でも、それ以下でもない」

 

「……そりゃそうか。ここは2024年。馬としての私がいた時代の遥か後だもんな」

 

 

21世紀も、間もなく四半世紀になる時代では、シリウスシンボリの名は遥か昔のダービーの勝利者として、人々の記憶に残っている。シリウスも、ゴルシやナカヤマフェスタ経由で、他の世界での自分の事は耳に挟んでいたようだ。

「ネオユニヴァースから聞いたのか?」

 

「あのガキじゃねぇよ、ゴルシとナカヤマだ。ネオユニヴァースはわけわからんからな……」

 

ネオユニヴァースはウマ娘として特異な特性を持つが、言うことが理解しづらいという難点がある事から、ゴルシに連絡を入れたというシリウス。

 

「ルドルフへの思いに決着はつけたのか?」

 

「あいつは公を尊ぶあまりに個を犠牲にしてきた。その事のツケを今、支払ってる。後継と見込んでたテイオーが二冠に留まった事で、身内贔屓って批判が出てるそうだ」

 

「ルドルフはテイオーを可愛がっているからな。だが、ルドルフの在任期間は長すぎた。テイオーはまだ若い。もっと言えば、気質がダーティーな仕事向きじゃない」

 

「だから、ナリタのガキにやらせてるのか?」

 

「エアグルーヴも、裏で糸を引くというタイプじゃないからな。かといって、他の子らもダーティーな仕事向きじゃない。ブライアンはそれを一手に引き受けるようになった」

 

ルドルフが生徒会を引退することで、トレセン学園の生徒による学園自治への寛容性が定価する恐れがある事は予てから言われており、結局はルドルフの院政が引かれることになった。テイオーがまだ若いためであった。ブライアンは自主的に生徒会のダーティーな側面を引き受けることにしており、入れ替わりを決意するまでの数週間で、協会の新会長であるシンザンを懐柔するという成果を挙げていた。

 

「あのガキ、自分の三冠の肩書を使ったのか」

 

「シンザン協会長は『神のウマ娘』と言われた人だ。ブライアンでなければ、腹芸ができない。エアグルーヴとテイオーは青い上、ダーティーな手段を使える身の上でもないからな」

 

「イメージ戦略ってか?」

 

「その点、ゴルシはいい。法に触れなければ、何をしようと、『ゴルシかぁ』で済ませられるんだから」

 

「あいつは反則だ」

 

テイオーとエアグルーヴは色々な理由で『ダーティーな手段』を行使できない身の上であるが、ブライアンは純粋に『実力で三冠を取った』身の上である(ナリタ=ビワ一族は、比較的に最近に台頭した一族である。そのため、メジロ家のような『一族のバックアップ』はない)。

 

「ブライアンはハヤヒデと最後の勝負をしたい。その対価として、三冠ウマ娘の肩書に相応しい成績に戻ることを求められたそうだ」

 

「……それで?」

 

「そうだ。のぞみに取引を持ちかけ、彼女が承諾してくれた例の事柄は『そのため』のものだ」

 

オグリも引退後は多少なりとも理知的になったらしく、ブライアンの師としての威厳を醸し出していた。

 

「そうか。姉貴が引退する前に、最後の勝負を…か。なかなかにセンチメンタルだな」

 

「ハヤヒデは下の妹達を食わせんとならん身の上だからな…。ブライアンが勘当された以上、家を継ぐしかないだろう」

 

「そうか。それで、家財道具一式を少しづつこっちに……」

 

「あの子もいずれ、高等部を卒業する日が来るからな。大学に入ったら、この世界にしばらく住むそうだ。入ったら、入ったで忙しくなるからな。ルドルフは大学を出れば、協会の理事職が用意されているそうだし」

 

「あのガキは海外にいきたがってたが、勘当じゃ、それどころでもねぇか」

 

ブライアンは全盛期の頃、インタビューで『海外遠征を現役のうちにしたい』と公言していた。だが、成績が低迷した事、下の妹『ビワタケヒデ』の学園の学費などで父親と対立、勘当されてしまった。そのため、ストリートレースでもなんでもいいから、生活費をいずれは確保しなければならないという切実な事情がある。衣食住の確保も重要事であったので、ゴルシの仲介で『野比財団』の運営する企業の仕事を引き受けることになり、新・野比家に大学入学後に転がりこむ手筈となった。そのことを教えるオグリ。

 

「テメェが野比財団とかいう、この世界で新興の財団の仕事を受けたと聞いて、なんだと思ったが……なるほどな。戯れに、私も受けてやるよ」

 

「本当か、シリウス」

 

「皇帝サマへの当てつてだよ。ヤツは広報業務でも、お高く止まりやがるからな。私がコマーシャルの仕事の手本を見せてやる」

 

と、なんだかんだで、ルドルフに自分を見てもらいたい(子供の頃の関係に戻りたい)願望を年齢相応の外聞と自分の立場による柵などで取り繕うシリウス。仕方がないが、この言動は、公には『水と油』とまで言われるほどに対立関係にある彼女の取れる『遠回しなルドルフへの愛憎入り交じった感情表現』と言えた。

 

 

 

 

 

――後日、シリウスシンボリは野比財団の出資している骨川コンツェルン傘下の食品会社の開発した『大人向けの清涼飲料』のCM(ビリヤード編)に出演。見事なキュー捌きで、玉をポケットに入れていく様はまさに『ハスラー』の風格。シリウスの『クールビューティー』を体現する、大人びた雰囲気、見かけに違わぬ美声(イケボ)もあり、その飲料は大ヒット。ビリヤードの人気も上昇気流に乗るなど、予想以上の成果となった。これに刺激を受けたウマ娘達は学園の意向もあり、広報業務の一環という形で、矢継ぎ早にCMに出演するようになっていく。ネイル関連のCMにはダイタクヘリオスとトーセンジョーダン、ファッション業関連のCMには、モデル兼業のゴールドシチー。スポーツ飲料のCMには、ウイニングチケットやナリタタイシンといった具合である。この成功はTV出演の拡大にも繋がり、オグリキャップはTV番組(フードファイト系)の企画で『艦娘・赤城』と『大食い競走』を繰り広げることになる。その際に使われた食材の量は『中央トレセン学園最大の食材貯蔵庫を三個満杯にする』ほどのもので、2024年度のギネスブックに掲載され、お茶の間に笑いと驚愕を提供するのだった――

 

 

 

――ウマ娘でもかかる『新型ウイルス』に罹患し、39度の高熱で唸っていたシンボリルドルフは、病床でシリウスシンボリからのメールの写真と動画に悶えた結果、更に体調が悪化。最終的には、二週間も寝込む羽目となったという。その間、学園の自治は有力なウマ娘(生徒会の現任・前任)の合議で行われる事になった。これがルドルフ個人のカリスマ性に依存していた時期からの脱却の始まりと、しばらく後の時期のトレセン学園の記録に刻まれるのである――

 

 

 

 

 

――コズミック・イラ歴の世界では、地球連邦軍の力を背景に、世界統一への動きが強まった。当時は連合構成国の弱体化で独立運動が盛んになったが、20世紀以前の地域国家時代への逆戻りは誰も望んでいなかった。その兼ね合いか、大西洋連邦ら『旧来の大国』の没落で、相対的に軍備が健在であるオーブ首長国連邦の実質的な覇権を容認しつつあった。オーブ首長国連邦は構想としてだが、『地球圏全ての国家をまとめる連邦が必要』と痛感しており、オーブの国是と矛盾はするが、地球連邦を樹立させ、強引に一つにまとめなければ、遅かれ早かれ、コズミック・イラの文明は破綻する。コーディネイターにしても、あと数十年もすれば、種としての終わりが現実となる。その危機感がコズミック・イラの人々が地球連邦待望論を提唱する理由であった。これに反対を唱えたプラントだが、もはや、種としてのコーディネイターに未来はない上、散々に地球連邦軍の圧倒的科学力を目にしてきた経緯から、元のザラ派やその流れを汲む派閥は求心力を失いつつある。更に、クライン派も当のラクス・クラインが(そのように『調整』されても、当人の性質はどうしようもない)政治にさほどの興味を持たない(そのせいで、ミーア・キャンベルが死亡したが…)ため、なんとかして公職につける機会を窺っており、世界平和監視機構コンパスの設立はいい機会であった。ラクス・クラインも地球連邦軍から散々に『責任ある立場からは逃げられない』との忠告を受けており、それに反発していたことで『ミーア・キャンベルを死なせた』という負い目を持った事から、公職につくことを禊とした。未来世界で似た立場にあった『リリーナ・ドーリアン』が大統領を辞し、一官僚になっても、地球圏を動かせることを意識したのもある――

 

 

 

 

――コンパスの陣容は協議中であったが、生存が確認されたシン・アスカとルナマリア・ホークの二名が(前政権で重宝されていた故の厄介払いも兼ねて)配属になる見込みであった。なお、ミネルバの元の艦載機はまだ返還されていない。オトナプリキュア世界で使われているからだ。地球連邦軍からはのぞみが(年齢がシンたちに近いことと、新進気鋭の撃墜王であった事から)派遣されることが内定していた。これについては、のぞみAに代わり、大人のぞみが代行する事になっている。また、精神が(史実よりは軽減されていたが)疲弊しているキラ・ヤマトを案じたラクス・クラインの要望で、のぞみには『キラ・ヤマトの居場所を偽装するデコイ(囮)』の役目が期待された。プリキュアであるため、空間認識能力がコズミック・イラの通常の人間の比ではない故の『フリーダム系への適応』を目されたからである。ラクスが地球連邦軍を振り回した形だが、地球連邦軍はこれに厚意を以て応え、初代フリーダムのレプリカを地球連邦の技術で建造した。一種の試金石であったのだ。のぞみはその思惑を最良の形で叶えていた――

 

 

 

 

――台湾を解放した地球連邦軍は周辺の残敵を掃討しつつ、23世紀でも重要拠点扱いである故に、最も多くの兵力が送り込まれていたため、地球連邦軍の大半のMSと違い、一対多を設計段階で想定されているフリーダムには最適な戦場であった。外見はオリジナルと同じだが、武装は(コネクタなどがアナハイム・エレクトロニクス社のユニバーサル規格なので)地球連邦軍のMS武装のあらかたを使用可能である。そのため、大人のぞみは(フリーダムのオリジナルを模したライフルではなく)爆撃任務に最適である『Z系用のロングライフル』(Zガンダム同様のXBR-M-87系。オリジナルのそれを改良したもの)を持たせている。Zガンダムで採用された『ロングライフル』はビーム・スマートガンより取り回しが良いこと、ジム系の廉価版ショートライフルより貫通力が遥かにいいため、エースパイロットは好んで使用している。のぞみも例外ではない――

 

――オトナプリキュア世界――

 

「あれ、のぞみさん。装備、変えたんスか」

 

「元のライフルは貫通力に不安があるからね。こいつなら問題はないさ」

 

「ゲタ(ドダイ改)で移動って……。飛べるんスよ、フリーダムは」

 

「プロペラントの節約だよ。エンジンは地球連邦軍のもので、排熱系も強化されたけど、終わった後の冷却で、整備の連中の負担軽減のためだって」

 

「MSは戦闘の終わった後の排熱も問題ですからね。スーパーロボットはそれ気にしなくていいのに」

 

「根幹の技術が違うから、そこはね」

 

地球連邦軍は飛行可能な機体でも(リアル系は)燃料節約のため、サブフライトシステムを使わせるのが通例である。また、連邦軍はサブフライトシステムを『ゲタ』という通称で呼称しており、シン達もその呼称に慣れたようである。また、MSは大気圏でも、戦闘終了後の排熱には気を使うことが示唆される。また、サブフライトシステムが地球連邦軍では成熟している事から、推進剤などの節約のため、サブフライトシステムに乗っての出撃は推奨されている。大人のぞみはそれを実行したわけだ。

 

「で、プロトタイプの刀まで使うんですか?」

 

「念のためだよ、念のため」

 

大人のぞみはキュアドリームの姿で操縦していた。その方が(下手なパイロットスーツより)Gへの耐久力が高いからだ。プリキュア化している事の恩恵の大きさがわかる。(現役時代に相田マナ(キュアハート)が乗り物酔いしていたが、これはパワーアップで三半規管が敏感になりすぎた事に慣れていない故で、乗り物に慣れている状態で覚醒した転生後での問題はない)

 

「今回はアメリカでしたっけ」

 

「そ、23世紀でも重要拠点扱いの西海岸。そこを奪還する。米軍も宇宙からの奇襲でズタボロだし」

 

オトナプリキュア世界の米軍は当然ながら、空襲で大打撃を受けていた。基地の一つでは、爆撃のせいで、入渠中に爆撃され、真っ二つに破壊された『アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦』が無惨な屍を晒していたりする。空軍もかなりの作戦機が失われたので、モスボール保存の旧型機を引っ張り出す有様であった。のぞみたちはその救援を行うのだ。流石の米軍も『数千単位で飛来する爆撃機』は対処できなかったのである。のぞみたちはその救援を行うのだ。陸軍も機甲兵力の多くを失っていたので、地球連邦軍がかなりの兵力をアメリカ奪還に割く必要が生じていた。

 

「アメリカ軍の残存兵力は?」

 

「行ってみないことにはね。西海岸の海兵隊は残ってないかもな。艦砲射撃されてるし」

 

「都市の二、三個は消えてるって事ですか」

 

「廃墟があれば御の字だな。ゼントラーディ軍の攻撃の時には、地下に避難する改造がされてない都市は地図から消えたっていうし」

 

どこかでの平行世界では、地球を壊滅させたシリウス星系軍が都市という都市を薙ぎ払った(その報いで、シリウスも統制を失い、瓦解したが)ので、皮肉にも、蛮族よりのメンタルなはずの白色彗星帝国はそれより理知的であることの証明となった。白色彗星帝国の攻撃で『それまでの暮らしを再開できる範囲の損害で済んだ』日本は極めて幸運であったと言える。アメリカなどの旧西側の大国は23世紀でも重要拠点がある国が多かったため、艦砲射撃も加えられた地点も多く、目も当てられない有様となった。そんな惨状は人々がプリキュアの再来を望む風潮を起こした。元の資格者には傍迷惑だが、真に滅亡の危機がやってきた以上は仕方がなかった。のぞみは人心を一つにまとめるための役目も期待されていた。この世界のパルミエ王国で、(オトナプリキュア世界の)ココがあまりの状況に右往左往しているのと同じ頃、のぞみは北米で白色彗星帝国と闘っていたのだ。

 

 

 

 

――太平洋の上空を飛行するフリーダム、インパルス、デスティニーの三機。元々は同じ軍で開発された機体(目的は違うが)が開発元の思惑と違う理由で轡を並べる事になるのは(特に、フリーダムの開発計画を指導したパトリック・ザラには)皮肉の効いた光景であった。また、元は敵対していた機体でもある。それが地球人類を文字通りに守るための戦いに使われるのも、プラントにはとびっきりの皮肉と言えた。

 

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