ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五百八十一話「幕間・フーベルタ・フォン・ボニン。そして……」

――カールスラントの混乱は予想以上に大きな混乱となり、民族存亡の危機にまで発展した。それはドイツが意図的に旧ナチスや東独の関係者にあたる者達を除こうとした事、カールスラントの支配層であった貴族などから特権を奪うことに邁進した結果であった。民主共和制への転換を強権で行おうとした結果、アイデンティティを奪われたカールスラント軍や国民は統制を失い、内戦に走った。この結果を責められたドイツ政府は言い訳に終止し、NATOからは白眼視された。グンドュラ・ラルが議長となった、カールスラント臨時政府はNATOの軍政を要請。NATOも条件付きで了承。NATOはこうして、魔女の世界に深く関与する事になった。その統治は(カールスラントに自力での統制回復能力がなかった事から)長期に及ぶ見通しであり、カールスラント軍は(統制が有名無実化していたため)各地に散っていた兵たちが現地軍の指揮下に入る形で存続した。その主力は実質的に日本連邦の指揮下にあった――

 

 

 

 

 

――カールスラントが軍事力を喪失したことの埋め合わせを迫られた日本連邦は否応なしに『強大な軍隊の維持』を課せられた。その過程で、警察系官僚らの画策した『戦時の精鋭を冷や飯食いに追い込む』施策は破棄され、戦場で使い潰すという施策を決議。戦時を理由に、危険視した将校は前線で戦わせ、政治的発言をさせる暇を与えないという施策が暗黙の了解となるものの、人材育成の観点からは悪手であった。64Fのように忠誠心が高い部隊はいざしらず、開戦以来の人材の消耗の連続に嫌気が差す部隊もあり、クーデターに賛同した将校はそれらの部隊所属の者であった。予想外であったのは、航空部隊の選良とされたはずの横須賀航空隊、陸軍飛行審査部からクーデターに賛同する者が多数生じたという事実であった。この思想調査の結果に、日本の大衆は激昂し、クーデター賛同者の市中引き回しと火炙りという、魔女狩りじみた処刑すら容認する声が多く出た。しかし、いくら『国家の意志に反した』からと、前近代的な処刑は近代国家としてあり得ないし、中国系国家のように『九族皆殺し』という連座式の処罰は魔女の秘伝が失われる危険が大きいし、それで明朝は滅んでいる。結局、クーデター賛同者の内、その才が惜しまれた者は『処刑された』と公表しつつ、別人として生きさせるという提案で生きながらえた。賛同者は少なからずが、純真な『世間知らずの田舎出身者』や『蝶よ花よの箱入り娘』が思想かぶれの上官に騙されていたケースだからだ。日本側に『銃殺刑に処した』と報告したもののおよそ6割超はそんなケースであった。史実の2.26や5.15のように、『思想かぶれの将校団が何も知らない部下たちを動員していた』のが史実より顕著に確認された故の判断であった――

 

 

 

 

 

――そんな混乱の埋め合わせとして重宝されたのが、義勇兵らであった。特にカールスラント出身者と日本からの義勇兵は質が高く、カールスラント出身者はすぐに教導部隊に取り立てられるほどであった。バルクホルンやエーリカも64Fの遠征への動員は差止められ、南洋航空団の教導任務につかされるなど、教導任務に耐えうる古参兵の不足が問題となった。教導部隊の刷新には時間を要する見込みではあったが、要員自体は前線からの徴用で揃えており、高等練習用の機材のみが不足する状況であった。エーリカは割とすぐに天才肌すぎるので、教導向きでないとされ、原隊復帰。一方のバルクホルンは精神状態が安定していればだが、教導向きであったため、バルクホルンのみが教導に深く携わる事になり、産休中の坂本の分も働く事になった(バルクホルンは機械オンチ気味だが、任務に関係さえしていれば、操作は覚えられる)。また、彼女が教導任務についたのと時を同じくして、フーベルタ・フォン・ボニンが正式に『マリーダ・クルスの転生体』と確認され、MSパイロットに戻った。転生後は強化人間ではないが、引き継ぎ要素として、前世以上のニュータイプ能力を持っていたため、ガンダムタイプの配備が望ましいとされた。奇しくも、前世では重要な敵と刷り込みがなされていたものの一つ『Zガンダム』の系統が回される事になる。

 

 

 

――南洋 『別の501メンバー』の宿泊するホテル――

 

 

「あなたがまさか、あんなものに……」

 

「なに、ちょっとした奇縁でな。既に資格は取っている。別の世界では、501の隊長のままのようだな。ミーナ?」

 

「そちらでは更迭されたそうね?」

 

「詳しいことは閣下や坂本から聞いただろ?」

 

「ええ。でも、まさか……」

 

ミーナBは髪型を変え、メガネをかけた上で『流しの歌手』として日賃を稼ぐようになったようで、服装はプライベートでの私服だ。

 

表向き、旧503をむざむざ壊滅させたとのことで更迭され、救出後はただの一士官扱いで過ごしていたフーベルタ・フォン・ボニン。捕虜収容所にいた時期にマリーダ・クルスとしての記憶が蘇り、脱走を計画していたが、艦娘・川内、神通を要する救出部隊が空挺降下で収容所を襲撃。そのどさくさ紛れで救出された。彼女はジオン兵の過去生を自覚したが、最期が最期であったので、ジオンへの郷愁は失せており、『未来世界には同位体がいるだろうから、そちらにマリーダ・クルスとしての生は任す』と嘯いており、生前は刷り込みもあり、忌避していたであろうガンダムに敢えて乗ってみせていた。

 

「お前、楽しんでるだろ?この世界の存在ではないから、年を食わんし」

 

「ええ。私は1946年には減衰期に入るけれど、それまでに元の世界での戦争が終わる見込みはないもの。だから、この世界にいる内に、好きな事をしておこうと思ったのよ」

 

ミーナBはAの分も人生を楽しんでいるようで、買い物をしたのか、紙袋いっぱいに洋服やらが入っている。

 

「お前はいいが、子供たちは?」

 

「宮藤さんとリーネさんは結局、騒動の後、美緒に連れられて、お詫び行脚だったわ。この世界のあの三人がすごいからと、自分たちの世界の同一人物にまで同じことを強要するな。そう。すごい剣幕で美緒が怒って、宮藤さんと喧嘩になったのよ。あの子は……力を持っていたのに、何もしない……いえ、できないことは罪だと思ってるみたいでね」

 

「力ある者の高慢だな」

 

フーベルタは即座に切り捨てる。芳佳Bは『力がかつてあったのなら、それなりの事をすべき』だと考えており、『リーネちゃんのお姉さんもガリア復興に尽力してたのに、あなた達はホテルでぐーたらですか!昔はすごかったのなら……!』と強い怒気で迫り、智子Bを泣かせ、駆けつけた黒江Aに『このバカヤロウが!!』と殴られるなど、醜態を晒す有様であった。芳佳Bは智子Bの言い分を『だから、なんなんですか!!』と遮り、(ホテル暮らしを)糾弾するなど、ヒステリックに振る舞い、黒江Aには殴られ、産休前の坂本Aも『馬鹿者!!』と怒鳴りつける羽目となる大騒ぎであった。結局、事の最終的な仲裁には赤松の裁決を必要としたのだが、赤松の登場に、坂本Bは異常に怯え、黒江Aに『まっつぁんがきただけで、なんで、しょんべんちびりそうな顔すんだ?』と呆れられたという。

 

 

「赤松御大がきただけで、美緒がしょんべんでも漏らしそうにビビったそうだな?」

 

「あの人はなんなの?」

 

「扶桑一の豪傑だよ。黒江さんの育ての親のような存在であり、扶桑海軍出身者きっての古豪。年齢は……今年で30を超えてるはずだ」

 

赤松の戸籍年齢は30歳を超えている。圭子や北郷よりも更に年上であり、黒江と智子が新米だった時期に既に古参の下士官であり、尉官時代の北郷の従卒でもあった経歴がある。黒江の育ての親(A世界では)であり、A世界では魔女の二大権威の片割れである。

 

「さ、30!?」

 

「扶桑最強の豪傑だ。下士官出身だが、扶桑のあらゆる武術の有段者で、泳ぎも50キロは行けるそうだ」

 

「何よそのスペック……」

 

「あの方は我々と比べ物にならんよ」

 

と、30歳超えでありながらも、黒江達をも上回る身体スペックを有し、100機超えの撃墜王のはずのフーベルタが『あの方』と表現するなど、超人らの中で更に『人外扱い』されるなどのぶっ飛びぶりが匂わされる。

 

「さしもの宮藤軍曹も、あの方の前では赤子だよ」

 

「ええ。現れた瞬間、宮藤さんが戦闘態勢を取ったのよ、瞬間的に。あんなの初めてよ」

 

「本能的に危険を察したんだろう」

 

「どういう事」

 

「あの方は聖闘士でもあらせられる。神に仕えし身だ。だから、いくら宮藤軍曹がヒステリーを起こそうと、彼女にとっては『子供の癇癪』にすぎん。それにしても、見たかったよ、美緒の怯えよう。こちらではありえんからな」

 

「そうなの?」

 

「こちらでは、古い付き合いだからな、あの二人。しかし、リネット曹長も同調していたのは?」

 

「お姉さんが軍を辞めた後、ガリアの復興に尽力していたらしいのよ。それで」

 

「……あの二人は『エクスウィッチ』の事情に寄り添えんのか?」

 

「そちらの美緒にも謝ったわ。私達の教育不足だと」

 

芳佳とリーネは気質的に『待機だけを命じられる日々』に耐えられなかった。それがトラブルの要因であった。事後、黒江Bと智子BはAの影武者としてのグラビア撮影の仕事が回されるようになり、心の傷を癒そうとしている。仕方がないが、お互いの差があまりに大きすぎるのだ。

 

「同一人物であっても、個別に違いは生ずる。それを教育しておけ。きりがないからな。リネット曹長も、宮藤軍曹も。中島中尉に至っては……プリキュア戦士だぞ」

 

「中島中尉は……別人じゃない」

 

「仕方がないだろう。素体は確かに彼女なのは揺らぎはせんのだから」

 

のぞみは『中島錦の肉体を乗っ取った』自覚がある。その罪滅ぼしのつもりで軍人をしていたと語るように、軍人をしていた最初の理由はそれであった。のぞみがこの問題に関わったのは、二人の過重任務のお目付け役を命じられてからであった。芳佳Bはのぞみにエクスウィッチ関連の教育をされ、リーネはAの影武者としての業務一般を課せられた。1947年のことだ。二年後には、芳佳は件の二人に深く謝罪し、二人の剣技を受け継ぐ事を禊としたいと述べ、リーネは正式にAの影武者となった。リーネAは別名義で戦いに赴いていたからで、むしろ、慣れたせいか、元より戦いに積極的になった節がある。また、リーネAはクラスカードを扱えるだけの高い魔力があるが、Bにはない。それが顕著な違いであった。

 

「しかし、こちら側は特殊能力が増えすぎて、研究が追いついておらんのだ。それを研究者共は苦々しく思っているそうだ」

 

「でしょうね」

 

「出る時は爆発的に生ずる。魔女でなくとも、怪異と戦う術も。だから、宮藤軍曹じゃないが、『自分たちの居場所が奪われる』と誤解する者が大勢出た。別の手段が増えただけだというのに」

 

「魔女の存在意義に関わるもの。それに、想像だにもできないじゃない。魔女を上回る力なんて」

 

「あるところにはあるものさ。魔女でありながら、それ以外の能力を持った者は大勢いる。グンドュラもな」

 

「あの子のあの電撃の力?」

 

「そうだ。別名義で扶桑名を名乗って、扶桑で普通に大学行ってるぞ」

 

「え!?あの子、臨時政府の首班でしょ!?」

 

「別のとこの軍政が引き継いだからって、大学生になりやがったんだよ」

 

グンドュラ・ラルはなんと、『御坂美琴』の名を(転生体という理由で)用い、扶桑で大学生になっていることが伝えられる。服装も普通に大学生としてのもので、転生前の御坂美琴との容姿の相似を利用し、普通にグンドュラ・ラルの姿で『御坂美琴』と名乗るという芸当をやってみせていた。これはドラえもん世界での2020年代以降、『本人の消息』が途絶えている(姿を消して、世界の何処かで隠棲しているのだろう)ために許されていることである。本人は日本語は(転生体になったことで)ネイティブになり、美琴の口癖も違和感なく口にできるようになっている。ただし、グンドュラ・ラルとしてのグラマーなボディはそのままなので、『黒子には会いたくない』と漏らしている。ただし、大人びた見かけの都合で、ファンシーグッズの列に並べなくなったことを死ぬほど嘆いており、エーリカを使いっぱしりにしている(空軍総監の権限で命じてくるので、エーリカからは相当に顰蹙を買っている)。グンドュラ・ラルとしての背中の傷は既に治してあるが、コルセットはしたままである。

 

「たしか、本人から渡された写真が……これだ」

 

「グンドュラが大学生……信じられないわ」

 

渡された写真には、普通の服装で大学生をしているグンドュラ・ラルの姿があった。軍服姿と違い、グラマーなボディが映える。

 

「いいの?カールスラント人が扶桑人と偽るなんて」

 

「カールスラント人とはわからんよ。扶桑語をネイティブで話し、クリスマスにチキンを食い、正月を祝うし、年賀状を出してくるんだから」

 

転生体に転じた後は精神が日本人化したため、21世紀時点で当たり前となっている文化をしないと『落ち着かない』と言うようになるなど、完全に日本人化していた。御坂美琴としての感情も引き継いだのか、以前より明朗快活な性格になり、声色も御坂美琴が高校~大学生に進学したら?という仮定を現実にしたような声色(グンドュラは元々、美琴に声色が似ている)になるなど、美琴本人ではないが、相当に似ているレベルのそっくりさを持った。これはのぞみの場合と違い、双方の個性が拮抗したためだろうと推測されている。のぞみの場合はお互いの『個性』に差があまりにあったため、肉体が主導権を握ったほうに合わせ、瞬時に変異を起こしたのだというのが、ドラえもんの推測だ。

 

「フーベルタ、あなたはどうなの?」

 

「前世は宇宙生まれだったが、今はその時に属していた国家に忠誠心はないよ。向こうの世界にある国家だが…。むろん、そっちには別の『自分』がいるだろうからな」

 

「そのあなたは?」

 

「向こうの人々に任すよ。平行時空の存在同士だし、煮て焼いて食おうが、好きにすればいい。向こうには向こうの人生がある」

 

「それじゃ、あなたは?」

 

「そうだな、向こうでのガンダムにでも乗るさ。それに、平行世界での姉には説明しづらくてな」

 

「お姉さん?」

 

「私の前世は、あるエースパイロットの少女の12番目のクローン人間なんだ。だから、向こうでは、いくらでも代わりがいる。機械的に作り出せるからな」

 

「そんな、人間をコピーできるなんて」

 

「技術があるレベルになれば、容易に実現するものだよ」

 

フーベルタは前世でのマリーダ・クルスとして語った。とはいえ、ジオンへの忠誠心はもはや失せている事、その仇敵たるガンダムに乗る事にも抵抗はないなど、心境の大きな変化があったことは匂わせる。

 

「その姉が存命している世界線が件の世界だが、外見上の差がでかくてな。姉はミドルティーンにも届いていない外見なんだよ」

 

「どうして?」

 

「生まれ変わったことでの逆転現象だろう」

 

未来世界では、エルピー・プルは存命したが、プルツー以下の妹達は、ほとんどが戦死していた。これはちょっとした出来事の差、カミーユ・ビダンがZガンダムに乗って復帰したなどの要素が重なったことで実現した出来事であった。更に言えば、マリーダ・クルス以外にも、ゲーマルクの攻撃から生き延びた姉妹がいるかもしれない世界線なのだ。

 

「姉は10歳で実戦に出た。私も前世では、そのくらいで駆り出され、18歳で戦死した。最期は味方に誤射されるような形だったよ」

 

マリーダ・クルスとしては、錯乱したリディ・マーセナスのバンシィ・ノルンのビームマグナムで宇宙の塵にされ、戦死を遂げた。その記憶があるため、それを客観的に話すので、ミーナBには引かれた。

 

「お前、あからさまにドン引きするなよ」

 

「あなた、そんな……冷静に死に様を話されても……」

 

「揺るぎない事実だからな、それが。だが、私はこの世界に転生した。記憶が戻ったのは最近のことだ。持った前世での技能を活かせる仕事をしようと考えてるところだよ」

 

「その割に、チェスは昔のように、下手のままね?」

 

「当たり前だ。こればかりはどうにもできんさ。マルセイユとグンドュラにチェスで負けこんで、借金があるくらいだ」

 

「フーベルタ、あなたねぇ…」

 

フーベルタはチェス好きだが、俗に言う『下手の横好き』というヤツで、同輩のグンドュラ、後輩のマルセイユのいいカモにされている。その二人も戦友の圭子のいいカモにされているので、ゲームでの上手い下手の差がよく表れている。

 

「どこの世界でも、下手の横好きなのね」

 

「そう思ってくれて構わんよ。自覚はある」

 

「それで、今日会った理由は?」

 

「閣下らの同位体の様子の確認だ。数年前の事件で宮藤軍曹のワーカーホリックぶりがわかったからな。それに、引退した者への配慮の無さもな。坂本の戦いぶりを引き合いに出して、彼女らを責めるのはな……」

 

芳佳Bは事件の後、自分がなぜ責められたかが理解できずに癇癪を起こし、模擬戦を挑み、技能の差を見せつけられた。その後は反省したようだが、結局、双方の精神にしこりを作ってしまう形になった。それを無くすために、二人が全盛期に用いていた戦法を自分が受け継ぐ。それが芳佳Bなりの二人への償いであった。

 

「それで、宮藤軍曹は?」

 

「課された仕事の合間にこっそりと飛んで、特訓をしているわ」

 

「なんだかんだで、美緒の弟子ということか」

 

「弟子は師に似るのね」

 

「だな。お前らの世界に戻ったら、それは強力な武器になるはずだ」

 

「欧州の軍人から時代錯誤だと言われそうよ?」

 

「だが、古今東西、剣で怪異を倒した事例はないわけではない。そうだろう?」

 

芳佳Bが何を償いにしようとしているのか?それは黒江や智子の全盛期における戦法を知る者なら、容易に推察可能であった。二人が食事をしているレストランの窓からは、その芳佳Bが贖罪のための特訓のために『紫電改ストライカー』で飛行する様子が飛行機雲で確認できた。坂本の顔に泥を塗ってしまったという罪悪感と無知への恥ずかしさ。自分の軽率さへの申し訳なさが芳佳Bを変えたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――芳佳Bのワーカーホリックさと対照的に、芳佳Aは産休を取っており、第一子の出産を控えていた。後に医療所を継ぐ事になる長女だ。この数年後に第二子の『剴子』を儲け、親の才能が二人の子に『分割されて』受け継がれる事になるのである。この1949年からは、64Fの主力メンバーが妊娠・出産ラッシュが起こっており、隊長の武子も例外ではなかった。それに縁がない幹部級は黒江と圭子の二人が中心であり、二人を周りが補佐する形で、穴を埋めていった。同時に、プリキュア達も相次いで妊娠が発覚し、順に産休に入っていったので、戦闘メンバーに若干の変動があり、キュアマーメイド/海藤みなみ、キュアマカロン/琴爪ゆかり、キュアマリン/来海えりかなどはこの時期からメディア露出が増え始め、戦闘に徐々に参加し始める。また、キュアエトワール/輝木ほまれが参戦したことで、懸念が一つ払拭され、キュアドリーム/夢原のぞみの戦闘能力に磨きがかかり、並のプリキュアでは追従が困難に陥る事になった(闇属性の強化がされ、変身形態が増えたのも大きい)――

 

 

 

 

――その闇属性フォームはキュアスカーレットに『ノワールフォーム』と名付けられた。コスチュームの色が黒くなっている他、コウモリ型の翼を展開でき、ハルバードを武器とする、幾何学的な空中機動を取れるなどの特徴を持つことから、真ゲッターロボ系統の力を宿したのでは?と推測される。ナリタブライアンが証明したように、シャインスパークの属性も『闇』である『ズワルト・シャインスパーク』、ストナーサンシャインも使えるなど、真ゲッター1の特徴が色濃く生じている。精神的にも荒々しくなり、のぞみが偶発的に初変身した際には、一人称が『俺』に変貌し、語尾も男言葉のそれになるなどの影響が生じた。その後は理性を保てるようになり、普段とさほど変わらなくなったが、初変身の際に浴びた高濃度ゲッター線の影響か、静かな口調で『全ては……繋がるんだ……』と呟くなど、ゲッター線に強く魅入られ始めた様子も見せている。そのフォームをどこで熟れさせたのか?それは機密事項とされているが、実はデザリアム戦役を終えた後、彼女はいくつかのオールスターズ戦と、後輩の映画の世界の戦いの起こった世界に単独で一時的に召喚されており、その戦いでパワーアップフォームを熟れさせていったわけだ。その戦いの流れでキュアグレースとの縁ができ、キュアエトワールと面識ができたわけである。また、大人のぞみが面識を持っていた『2022年のプリキュア』であるキュアプレシャス/和実ゆいが友人である、夢原のぞみの身に起こった事の謎を解くためか、騒乱後も地球連邦軍の戦線に参加する旨の発言をしており、ゆいの参戦は確定事項となった他、大人のぞみの教育実習生時代の教え子の一人に『2023年のプリキュア』の一人である『キュアバタフライ/聖あげは』がいたことが判明するなど、意外な繋がりが分かっていく。やがて、和実ゆいは自らの意思で(令和世代のプリキュアでは最初に)『次元世界を股にかける』戦いに、敢えて飛び込む事になっていくのである……――

 

 

 

 


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