――結局、魔女の世界の戦艦は日本連邦が超大和型戦艦を作った事により、建艦競争がむしろ終わってしまった。建艦業界の常識としての『運用コストや被弾面積の軽減のため、戦艦の船体は小さいほど良し』とされてきた事が、史実の大和型の最期で(色んな意味で)否定されたためで、戦艦は逆に『近代武装を積むため』に巨大化してしまう顛末となったからだ。日本連邦はミサイル兵装を積むには、大和型の大きさでは『小さすぎる』といい、船体の拡大を提言した。超大和型戦艦は『近代化を最初から済ませつつ、戦闘用に最適化された艦内配置を持つ』というゲッタードラゴン的な経緯で開発された。量産を考慮しつつも、『350m級』の船体は『51cm砲を三連装で12門持たせるために余裕を持たせた』数値。ダイ・アナザー・デイで初陣を飾ると、以後は強大なリベリオン艦隊に対抗するための力として君臨した。結局、艦政本部はこのショックもあり、以後に設計される艦艇は軒並み大型になっていく。この『スーパーヤマトショック』に追従できない国は多かった。なにせ、列車砲としても大口径に入ろうかという『51cm砲』を艦載砲として積んでしまった上、それに耐えられる装甲を実現し、30ノット以上の船足を誇るというのは、普通に超がつくほどの高性能であり、1940年代の造船技術では同等の性能は不可能である。主砲からして、砲身命数の面で実用性が無いからである――
――戦艦という乗り物は乗務員が多くいるため、沈めば、1500~3000人は海の藻屑になる。それも戦艦の衰退の理由だが、戦後の大型空母は下手をすれば、6500人くらいの人数が乗っているため、逆に小国にとっての空母に魅力が無くなる事態となり、日本連邦は(空母の高額化で)戦艦を持ち続ける事になった。その一方で、戦闘機の性能での優位性を持ち続けたい日本はVFの存在を把握。そもそもは戦闘機+アルファの設計思想であるので、戦闘機の保有枠に入れるべきという議論が出たが、動力が動力(オーバーテクノロジーでの熱核反応タービン)なので、結局は扶桑に管理を一任する事にした。オーバーテクノロジーは自分たちでは手がつけようがないし、宇宙空間も飛べるのは、大いなる魅力であるからだ。その有用性から、64F以外にも回すようにと通達が出されたが、VF-1EXの時点で『23世紀の技術満載』であり、他部隊の整備員の手に負えない事、扶桑の航空部隊の半数は九六\九七式戦闘機でさえ『つい最近の機材』であるという認識であった(この時期、九九式艦上戦闘機は史実通りの『九六式艦上戦闘機』に名称が変更・統一された。零式も実機は『旋風』という名称が用意されていたことは(政治的都合で)抹殺された)。未来機材すら難なく扱える64Fの整備班はとんでもイレギュラーであり、それを増やそうとしても、経験則も含むものであるので、64Fの整備班長に講習させ、実地訓練をさせなくてはならないという手間がかかるのである――
――扶桑はその内情もあり、ジョージ・パットンの行う事を黙認している。パットンは名声がある(史実の勝利側にいた)ので、ある程度の人事部を抱え込んでの裏工作は自分の裁量で行える。それがパットンが裏工作に奔走している事情であった――
――ティアナに新しい軍籍が与えられたのは、パットンの奔走の恩恵であり、連合軍も時空管理局に配慮する必要がある(魔法の体系化で協力関係にあるので)からである。執務官に任ぜられたため、顔出しで戦うのは不味いという申し出が管理局からあったからだ――
――そんな上層部のやりとりの末、ティアナは『鴇羽舞衣』という前世の名と姿を使う事になった。のぞみと違い、能力と記憶は覚醒したが、容姿は変化しなかったので、空中元素固定能力を習得し、それで容姿を変化させる(黒江と同じ手法)方法を取った。得た能力は充分に強力であったものの、念には念を入れ、仮面ライダー達に特訓させ、精度を高めさせた――
「……私達は補欠にもなれないんですか…?」
「仕方がないわ。あなた達に、あの連中と戦えるだけの覚悟がある?仮面ライダー二号の事で自分を責めるのはわかるけれど、気負ってちゃ、自分の身も守れないわよ」
と、ティアナは無力感に打ちのめされているのぞみBを諭す。プリキュア戦士として、恐怖に支配され、ただ見ていることしか出来なかった事を恥じているのぞみB。Aもそうであったように、『プリキュアになったことで、自分に自信が持てた』ため、二号が自分をかばって重傷を負った事を恥と考えているようだ。その点は『戦士』であると明確に定義づけられていた第一世代プリキュアの業であった。
「君たちのような子供に、奴らのような者と戦えというのは酷な話ではあるよ」
「村雨さん……!あなたも?」
「三号に素で対抗できるのは、光太郎と俺、城さんしかいないからな」
姿を見せたのは村雨良。仮面ライダーZXである。
「あなたは……?」
「『君』とは初めてだな。俺は村雨良。仮面ライダー10号、ゼクロスだ」
「10号……。」
「あなたは大丈夫なんですか…?あいつと……?」
「なに、俺は脳以外の全てが機械に置き換えられている『パーフェクトサイボーグ』だ。奴らとは長い因縁があってな」
「脳以外の全部が……機械」
天然パーマの強面である村雨良。心根は好青年なのだが、下手な極道も怯えるほどの強面などが原因で、何かと損な役回りである。他人の空似に、特捜ロボジャンパーソンと戦った『ビルゴルディ\帯刀龍三郎』がいたことも不幸だったりするなど、強面が原因で損な目に合うのも多いが、機械改造式の究極であるため、実は幻術や忍術の類を寄せ付けないという利点がある。
「本郷さん(一号)に?」
「ああ。緊急で呼ばれてな。元の世界は沖さんたちに任せてある。今回は俺も参加する事になってな。本郷さんと一文字さんが離脱しているからな。三号に真っ向から対抗できるのが少なくては、話にもならんからな」
「三号って、そこまで強いんですか…?」
「君も見ただろう。二号ライダーの装甲をあっさりとパンチで貫くのを。奴は君たちのことはおそらく、そこらを這いつくばる虫も同然。つまり、敵として見ていない」
「最強形態の後輩の子たちが手も足も出なかったから、それはなんとなく……。手立てはあるんですか」
「俺の体は大首領の現世での体として作られている。三号に基礎スペックで対抗できるのは、俺と光太郎だけだ。城さんはダイナモを発動させんと無理だからな」
三号の性能は改造時期を考えれば、異常極まりない高性能である。大首領(ショッカーの首領)の器として製造されたはずのゼクロスや、擬似的な創世王といえるRXと対等のスペックを持つことは他のライダーの大半を凌ぐということでもある。二号の装甲をあっさりと貫くパンチが打てるということは、当たりどころによっては、殆どのライダーを一撃で瀕死に追い込めるという証明。B世界のプリキュア5が蚊帳の外であるのは、戦場の戦闘レベルが彼女らの発揮するそれを超越しているからだ。
「幸いな事は一つある。戦艦はこちらが勝っているが、おいそれと敵も主砲は撃てん」
「どういうことです?」
「君たちはピンとこないと思うが、こちらが持ち込んだ海底軍艦の主砲は51cm砲。戦艦大和より更に大口径だ。外した場合、甚大な被害を街にもたらす。おそらく、ミサイル主体で船足を止めて、擱座させるのが穏便だろう。ティアナちゃんのいる世界のイタリアが欲しがっていると連絡が来た」
「はぁ?」
ティアナは思わず聞き返す。何の冗談かと。
「仕方ない。連中はやっと改リットリオを完成させたのに、扶桑は超大和の時代だ。海底軍艦を持って、扶桑への抑止力が欲しいんだろうな」
「あいつら、弱ったヴェネチアの海軍力を手中に収めるだけで満足しないんですか?」
ダイ・アナザー・デイ以降、扶桑がヴェネチア海軍をノックアウトした事により、同国は急激に衰退している。ロマーニャが鞍替えしたヴェネチアを実質的に養う形で統一海軍を樹立したが、タラント空襲やダイ・アナザー・デイの損害により、見る影もない有様。ミサイル兵装は怪異への決定打たり得ず、核兵器は割に合わない(再生能力のため)ため、必然的に戦艦にリソースを割かねばならない連合国。だが、敵はモンタナ級を順当に改良し続けており、欧州型の旧来型戦艦では対抗が困難に陥っている。ライオン級ですら戦力不足なので、ブリタニアは扶桑から得た46cm砲を以て『クイーン・エリザベスⅡ』級を建造したが、運用コストの増大を理由に、調達数が減り、戦艦そのものの同時運用数を7隻に絞るしか財政的に打つ手がなくなる有様。そのため、連合海軍の顔はブリタニア戦艦から扶桑戦艦に様変わりし、旭日旗が実質的に連合国のティターンズへの抵抗のシンボルマークとされるなど、戦艦の存続はブリタニアの衰勢をも象徴していた。
「ヴェネチアは数年前の戦いで主力を失っている。動ける戦艦は三隻のみで、しかも、リットリオと同スペックのもの。これでは、超大和の時代にはついていけんよ」
「どうして、同じ戦艦を別々に?」
「国家は分裂しているが、設計図は融通しあったんだろう。怪異の前では、いがみ合ってはいられんのも事実だ。だが、あれは大和以前の代物に過ぎんからな」
リットリオ級はヴェネチア公国も『同じ設計』で同様の物を用いたが、ダイ・アナザー・デイでは連合艦隊の戦力の前に悲惨な結末を迎え、陳腐化を証明してしまったりしている。また、史実通りに航続距離が問題になったため、ロマーニャ海軍が改装を施している。
「だが、戦艦同士の砲撃戦は市街地ではやれんよ。ビームであろうと、実体弾であろうとな。ミサイルで推進ノズルを破壊し、墜落させる手法が最善だ」
「やれますか?」
「煙突ミサイルの位置取りさえできれば、可能だろう。だが、その前に衝角などでダメージは与えておくのが必要だろうな」
村雨はこれから行われる事の概要を伝える。
「擱座させた後、俺たちや君たちで制圧する。三号がいれば、俺と城さんで抑える」
「綾香さんは雪辱に燃えてますけど」
「あの娘も力はつけたようだが、指揮官である以上は無理はさせられんよ。俺が呼ばれたのは、そのためもある。それと、君は艦の手伝いでもしてほしいが、りんちゃんから聞いたが、国宝級のドジだそうだね?」
「~~!そうなんですけど……そこまで言わなくてもぉ……」
「君自身が言ってるからねぇ。りんちゃんも『こっちののぞみもだけど、軍人してても、ドジはドジで』と言っているからな」
「人間、根本は変わらないってこと。大人になっても、ね。妖精たちを守ってって事。怪人はこっちで抑えるから」
「そっちの私と入れ替わってる子……昔の競馬にいた馬の生まれ変わりっていうけど」
「ナリタブライアンのことね。あの子も自分の目的があって、『あなた』の姿を借りてる。学園の人たちには説明もつくから、あなたとプリキュアは別人って事に確固たる証拠が手に入るわ」
「別々に存在している事になるからな」
村雨とティアナはのぞみBに『自分はプリキュアとは別人である』という証拠を提示できると説明する。彼女は戦士としての不完全燃焼、戦士として二号の恩に報いたいのか、不満がる。
「私は何の力にもなれないんですか?」
「君が出ていったところで、奴らには何もできん。逆にひねられて終わるよ。最強フォームになった後輩らが手も足も出ないんだ。君がいたところで、より酷い事になる。これは厳然として事実だ」
「……」
「だから、この場は俺たちに任せるんだ。奴らは俺たちとは因縁がある。特に、裏切り者である俺に執着しているからな」
村雨はのぞみBを諫めるため、ずばり『戦いに参加することは不可能である』と突きつける。自分やRXと言った『神の現し世での肉体』、あるいは擬似的に神と同等になった存在と対等に渡り合える改造人間が相手では、『現役時代のプリキュア』などは有象無象でしかなく、能力が最大限引き出されたはずの最強形態かつ『現役引退後』のプリキュアであっても手も足も出ない。故に、最低でも、仮面ライダーストロンガー(チャージアップ)と同レベルの能力が必要であると。
「途方のない存在……プリキュアになっても……到底手が届かない。そんな相手がいるなんて」
「君には残酷だが、ミラクルライトの奇跡が望めない状況では、奴らに一矢報いることも無理だ。だから、如何に、別の君がパワーアップをしたか。そして、その力を初見で使いこなせるナリタブライアンちゃんの天才ぶり……」
のぞみBには残酷だが、それが事実である。そして、組織に対抗可能なパワーアップを遂げたのぞみAの肉体とその能力を存分に使いこなせるナリタブライアンの天才ぶりも明らかとされた。
「それと、言うべきか迷ったが、君がミラクルライトを介さないパワーアップをするには、あと15年もの年月を要する計算だ」
「じ、十五年ッ!?」
「相手方のプリキュアのデビューが2020年なのよ。だから、普通に行けば、あなたは30歳間近の年頃に……」
「な、長すぎ~~!今が14歳(2008年)だから……に、29くらいまで待たないと、ドリームキュアグレースになれないじゃん~~!!」
と、残酷な事実に打ちのめされ、シリアスとギャグの狭間のような表情で落ち込むのぞみBであった。2008年からすれば、2020年は遠い未来の話なのだ。
「2021年だと聞いているから、それまでに何代も代替わりするし、普通に加齢していれば、君はその時代のプリキュアらを学校で教えてもいい年齢になるよ。まぁ、時間の流れが違う世界同士なら、さほど……」
「29歳でプリキュアやってるのかなぁ……私ぃ…」
と、落ち込むのぞみBであった。
――ブライアンは元々、前世からして『一度は日本の競馬界を席巻した三冠馬』なのだが、ウマ娘に転生しても『神に愛されし者』であった。ウマ娘となった後は前世の因果もそうだが、本人の資質が物を言う。ブライアンは曲がりなりにも『三冠ウマ娘』の栄光を味わった経験を持つ、第一級のアスリートである。歴代の三冠ウマ娘の中で最も『暴力的な走り』とされ、本人も近代スポーツ理論とほぼ無縁な走法を自覚していた。それに惚れたのがサクラローレルである。だが、怪我をしてしまった後は『内なる恐れ』や感覚のズレが重なり、全盛期の能力を発揮できなくなり、精彩を欠く日々であった。トレーナーを『協会の前・幹部陣による解雇』により失い、自身も引退勧告間近と言われるほど追い詰められていたが、処置で全盛期の能力を取り戻し始めている。前途有望な若者(ディープインパクト、オルフェーヴル)が現れつつあるが、ブライアンは『運命を超える』事を選び、その一環の精神的修行と恩返しを兼ね、のぞみAに成り代わって従軍している。つまり、彼女のしたことは記録上、のぞみAのした事になるのだが、のび太達の図らいで『長期のCM契約金』という名目で、ブライアンに手当が支給される。野比財団と骨川コンツェルンを介しての恩賞である。実際に、骨川コンツェルンや野比財団の関連事業(慈善事業やファッション事業、食品事業など)の宣伝という形で撮影されており、エアグルーヴやマヤノトップガンがブライアンと入れ替わったのぞみAに演技指導を行っている――
――基地内 のぞみAに割り当てられている士官室――
「この体にもだいぶ慣れたな…。私の要求によく応えてくれる」
ブライアンは面倒なのか、自室で待機していても、キュアドリームの変身を解いていない。ドリームの姿で寝っ転がりながら『肉味のおつまみ』を食うなど、素を思いっきり出している姿を晒している。意外に私生活はズボラらしい。
「あとで、トプロの奴にも連絡を取るか。従姉妹の好だ」
ナリタトップロード。史実では馬主が同じという程度の繋がりしかない後輩だが、ウマ娘としては親類になるため、偶に連絡を取る。彼女のことを思い出すが。そこでエアグルーヴから電話が入る。
「ん、エアグルーヴか」
「ブライアン、貴様。お行儀よくしているな?」
「できる範囲でな。まぁ、のぞみさんには悪いが、戦闘では好きにさせてもらっている」
「貴様というヤツは…」
「当分は帰れんぞ。これから決戦だからな。CMは彼女に当面の間、撮影の協力を頼んどけ」
「ハヤヒデに知らせておくか?」
「ゴルシの奴が知らせている。実家のこともあるからな」
「お前、どうするつもりだ。これから」
「受けた恩を返すだけだ。レースのことは終わってから考える」
と、ブライアンは当面の間は帰らないと伝える。エアグルーヴはのぞみAをサポートしなければならないが、のぞみAは生来のドジ(ただし、現役時代よりはだいぶ改善されているが)であるので、NGを当然ながら出してしまうが、現役時代よりドジが改善された事により、CM撮影は比較的に順調である。のぞみも声にドスを利かせる事を覚えたため、意外にエアグルーヴが聞いても、違和感はそれほど感じない。ただし、ブライアンも世界線によっては、『狼』とまで言われた無頼な雰囲気を持たず、むしろ単純に『クールな副会長』である。のぞみはどちらかというと、そちら寄りな演じ方だというが、ブライアンに惚れているサクラローレルから演技指導が入り、無頼にキャラが軌道修正が図られていると聞かされると。
「ローレルめ。限界オタクみたいな真似しやがって…。デジタルにやらせろよ」
「それはそうなんだが、ローレルに押し切られてな」
「どこから漏れた?」
「わからん。あいつはお前の事になると、地獄耳だからな」
「まったく。デジタルにローレルを抑えさせろ。私からの特命だと、デジタルには言っとけ。もし、そちらに来たら、マヤノと組ませておけ」
「分かった。武運を祈るぞ」
「フッ。お前にしては珍しいな?」
「いいのか?お前のしていることは夢原女史の手柄になるが」
「恩返しの一環だから、そんなことはどうでもいい。私は心の鍛錬ができればいいさ。たとえ、その場所が戦場だろうがな」
「しかし、ウマ娘でない体に魂が入っているというのに、すんなりと対応出来たな?」
「私は前世の記憶が目覚めているからな。人が電話をしたりするところは前世でも見てるし、だいいち、今だって、携帯電話の類はトレーナーたちが使いまくってるだろう。そもそも、ウマ娘は亜人に分類されるんだぞ?」
「それもそうか」
と、妙に説得力のある理屈である。
「では、そろそろ切るぞ。今のうちに休んでおきたい」
「こんな事を言うのはなんだが……勝てよ?」
「ああ。そのつもりだ」
と、ブライアンにしては優しい感じのする声に、ブライアンもずいぶん丸くなったと感じるエアグルーヴであった。
――プリキュア達はプリキュア達で大変であった。組織との戦いに参戦している者、そうでない者、特訓組に分かれていた。そんな中、プリキュアオールスターズの映画が久方ぶりに制作されるという報が届いたのだが……。
「なんで、はーちゃんがピンなのよー!」
「まぁまぁ。君たちはピンで変身出来ないじゃないか。キュアミューズなんて、ずいぶんとお呼びがかからないって愚痴ってたよ」
「それはそうだけど、私達、続編が控えてんのよ、続編!!宣伝のためにも……」
「プリアラなんて、ゆかりさんだけだよ、オファーかかったの」
「…うん。その……それは」
ドラえもんは補給物資の調達に扶桑に戻っていたが、スネ夫から『2023年秋のプリキュアオールスターズもの』の連絡を受けたらしく、リコにそれを教えた。ところが、声の出演のオファーのかかるプリキュアが少ないらしく、当のプリキュアたちを憤慨させていた。
「揃ってるチームにもかかんないのを考えなよ。いくら続編があるったって、メインは近年の世代だし…」
「うぅ。歳食った感覚になるからやめて…」
落ち込むリコ。とはいえ、2023年の段階では、彼女らとて『7代前のプリキュア』になってしまう。さらに、メインの二人は単独変身が不可能な特性があるので、作劇上の都合もあり、制作側は(単独変身が可能な)フェリーチェに白羽の矢を立てたのだろう。
「それに、僕の世界だと、フェリーチェは有名だから」
キュアフェリーチェはドラえもんの世界では、2003年頃から目撃されており、実のところ、プリキュアと判明する前から話題になっていた。プリキュアと判明した後は『本人』がゲッターに魅入られていることが議論を呼ぶなど、プリキュア関連のゴシップをドリームと分け合っている。
「そそ、それよ!前から聞こうと思ってたのよ、なんで、あんなに魔改造しちゃったのよ!」
「あの子が望んだことだよ、リコちゃん。闘争本能の増大はゲッターを受け入れた者に例外なく起こる。のび太くんや僕を失いたくないからこそ、強さを求めるようになった。君らがやられたショックで夜な夜なうなされ、来て間もない頃は、のび太くんの布団に潜り込んでたことが結構あったよ。僕も調ちゃんも、もちろん、のび太くんも手を焼いた。かなり傷ついていたからね、心身が」
「モフルンのリボンを変えようとしなかったりしたとは聞いていたけど……」
「しずかちゃんが説得して、リボンを結び直したけど、思い出が消えちゃうって泣いてね。その時に、のび太くんが上手く諭してくれたんだ。それで『モフルンの意志を無駄にしないためにも』ってことで、仮面ライダー達のレクチャーや、竜馬さんの道場に通うようになった。で、ドリームが来た後は彼女と一緒に行くようになった。その関係で、新早乙女研究所の事故の当事者にもなった」
「それが?」
「ゲッターに見込まれたのはおそらく、ね。ゲッタードラゴンの暴走と進化に遭遇したこと、その時にゲッターの意志と遭遇したことも……」
「ゲッターの意志……」
「そう。ゲッターは言ったそうだよ。生物は強大な宇宙を求め、互いに食い合ってゆくと」
ドラえもんはリコに説明する。ことはとのぞみが新早乙女研究所の事故の際に遭遇した『ゲッタードラゴンを介して権現し、竜馬がゲッターに恐怖した原因たる『ゲッターの意志』のことを。
「はーちゃんとのぞみちゃんはその時に、竜馬さんと同じものを見た。竜馬さんすら恐怖した何かをね。それと向き合う事を選んだ。おそらくはゲッターエンペラーだと思うんだけど」
「だから、ゲッターの力を……?」
「だと思う。だけど、竜馬さんすら距離を置いたくらいの衝撃に耐えたのは、さすがだと思うよ、僕は」
ドラえもんは二人が垣間見たものが『ゲッターエンペラー』であり、その所業を目の当たりにしても『負けない』と抗った、それがゲッターの意志の眼鏡に適ったのではないかと。
「だから、大変だよ。シャインスパークとストナーサンシャインを使いこなせるようになったからね、二人共。だから、アニメの制作陣が困惑中だよ」
二人がゲッターの力を手にし、ストナーサンシャインとシャインスパークを使うようになったため、プリキュアの制作陣は困惑中であることは(ドラえもん世界の日本では)周知の事実。のぞみに至っては、実質のプリキュアオールスターズの中心的存在と言うこともあり、草薙流古武術の習得共々に大ニュースである。実際の本人がバリバリに武闘派に転じているのは凄まじい衝撃だからだ。更に極め技がプリキュア本来のものでは無くなり、『歴代のゲッターロボの最終兵器』を用いるのだから。
「でしょうねぇ」
ため息のリコ。プリキュアオールスターズの映画の出演のオファーが来ていないことにショックなようで、返事は上の空だ。しかし、このオファーはプリキュア本人たちにも堪える人選であったのか、このような叫びが木霊したという。
……『直近作はわかるけど、なんで、番組の主役の私(あたし)に来ないの~!?」と。