――『プリキュア5の世界に遠征中の連合地上軍』の立て直しは急ピッチであった。とはいえ、74式は避弾経始を考慮しない場合の素の装甲厚は薄い部類なので、その点は不評であった。ダイ・アナザー・デイでは、対多数戦であったため、意外に多くが擱座に追い込まれていたからだ。これは戦車本来の『運動戦』に不向きな設計であるからだった。元々が日本本土での待ち伏せを前提にしていたため、派兵に使われるのは予想外であったからだ。だが、国産戦車を推す派閥は『大戦型の英国戦車を使うより、国産戦車を使うべし』と強行に主張した。その主張が軍需産業からもなされたため、扶桑向けに74式は卸されるようになった。とはいえ、扶桑の宮菱重工業が独自に装甲厚を変更して(多少)分厚くしており、生存性は上がっていた。当時はM4中戦車が多数残っていた上、徹甲弾の技術も史実より遅れ気味であったので、74式を(多少)改善すれば、充分に防御力を得られたのである――
――Gフォース地上軍の主力は74式戦車だが、ごく僅かに、10式戦車も存在していた。それらがMSを補助する形であった。MSはジェガン系の他、ガンダムタイプも投入されており、それらがヒーローらの活動を補助する形であった。そんな中、ティアナ・ランスターはひょんなことから、前世で持っていた『乙HIME』と『HIME』の双方の能力が融合した能力を持ってしまい、自由に空を飛べるようになったわけだが、元々、彼女は魔導師としては『空戦適性なし』かつ、士官学校で落第するなどの挫折を味わっていたので、それが嘘のような活躍ぶりであった。ただし、彼女が空戦でエースとなったことは『時空管理局の教育関連部署の面子に関わる』ため、前世由来の能力で戦う場合は『ティアナ・ランスター』の名義と姿は使わず、前世での『鴇羽舞衣』の名義と容姿を使っていた――
「雑魚散らしで鍛えろ、か。とはいえ、HIMEと乙式の双方が融合したようなもんだから、怪人と戦えるんだけど」
乙式高次物質化能力の長所である『ナノマテリアルによる戦闘用スーツ』、その元になった高次物質化能力の双方の長所が融合したため、その気になれば、前世で使役していた『チャイルド』カグツチも呼び出せるほどのハイスペックだが、幹部層はそれ以上の力を普通に奮えるので、相対的に見劣りする形になってしまっている。また、のぞみが草薙流古武術を扱えるので、炎の力が相対的に劣ってしまうのも要因であった。とはいえ、通常の魔女よりは遥かに強力な力であるのには変わりはなかった。
「ウチの幹部たちはどうなってんのよ。この力で太刀打ちできないなんて」
と、愚痴る。黒江達は光速を見切れるので、ティアナの高次物質化能力由来の速度も普通に見切れる事になるからだ。無論、それはプリキュア達も同様だが。
「でも、昔の制服と私服……ケイさん、どこから調達したのよ。いくら、日本にコスプレ文化があるからって」
と、前世で通っていた学校(高校)の制服と私服を圭子が用意してきた事に閉口気味のティアナ。とはいえ、扶桑陸軍航空隊の有していた既存機種(爆撃機)では戦略爆撃は不可能であったため、彼女の力は大いに助けとなっている。
「ウチの爆撃機、重爆名乗ってて、搭載量がねぇ。だから、日本が連山と富嶽で統一したがるのよね」
日本陸軍系の爆撃機は大陸での反復爆撃が前提であったので、米国の爆撃機のような圧倒的な絨毯爆撃は望むべくもない。それが政治家と官僚に問題視されたため、結局は連山や富嶽で開発されていた『雷撃装備』を排除し、通常爆撃に特化させる方向で落ち着いたが、今度は戦術爆撃機が不足する有様であった。それで、しばらくはレシプロ戦闘機に爆撃装備を施す『戦闘爆撃機』運用が行われた。これはジェット戦闘機の航続距離と搭載量が満足の行くレベルに届いていないからであった。
「それにしても、地球にいた頃は軍用機のことなんて門外漢だったのに、今はそれに密接に関係する商売してんのよね、あたし……。でも、前世の『マイスターローブ』が再現できたからって、姿まで変える必要ある?」
「仕方あるまい。君は時空管理局の士官学校を落第して、適性なしと判定されていたんだ。それが前世の記憶を思い出しただけで、超高速で飛べて、空戦をこなせるとなれば、奴さんの面子に関わる」
「そういうもんですかね……?」
「そうだ。当時の試験官の体面にも関わるし、管理局の適性判断が節穴という事になるからね」
スカイライダーと共に敵爆撃機の撃墜を担当する。相手はドイツ空軍の誇った『JU87』は1945年時点で旧世代化していた機種だが、戦車にとっては重大な脅威ではある。
「…!!ほんと、ドイツ軍は急降下爆撃に命かけてたってのは…!」
如何にマイスターローブを纏う状態とはいえ、90度を超える急降下爆撃を可能とした同機を同じ土俵で追うには苦労が伴った。如何に引き起こし時に無力になると言っても、だ。
「はぁぁっ!!」
俗に言うライダーキックであるが、引き起こしを行われ、軌道を変えられては意味はない。それまでに当てるのが吉である。そのため、キックを当てた後の軌道変更も難しい。スカイライダーは重力低減装置で軽くなし得るが、ティアナにとっては難度の高い芸当であった。
「……ふう。なんとかできた。蹴った反動を使うというけど、いうほどたやすくないわね」
「反転キックなんて技を先輩達は持つが、意外に難度高いんだ。俺はあまりしてないな。先輩達と違って、格闘技は極めてないからね」
「うそだぁ。99も技持ってるじゃないですか」
「それは使える技のバリエーションであって、形自体はそんなにないさ。」
「そうなんですか?」
「ああ。沖の方が俺より格闘では上だよ。あいつはプロだし」
スカイライダーは改造時の年齢が自分よりも高いスーパー1は『後輩』であるので、彼を『沖』と呼んでいるらしい。スカイライダーはZXまでのライダーで、改造時の年齢が一番若い22歳。他は平均で23~26歳。それを塗り替えたのが南光太郎であった。
「問題は連合軍にまともな野戦での対空兵器がないことだな」
「ええ。扶桑は対空戦車を作っていたけれど、自衛隊式装備に置き換えられちゃったし」
「戦後のは高価だしなぁ。かと言って、戦中型みたいな『銃手がむき出し』なのは日本じゃ、政治家受けが良くないし」
扶桑は対空戦車の開発に積極的であったが、結局は戦後型で淘汰する事になった。だが、官僚が『87式自走高射機関砲を消耗品とされても……』と難色を強く示したため、結局は『急場凌ぎ』で一番マシな性能であった『対空戦車 ソキ』を改良して配備する事にしたというグダグダぶりを露呈した日本連邦。航空機の数が揃えられない軍隊では必須なはずの対空戦車でさえも、この有様であった。日本側は高価な戦後型兵器を抑止力に用いるつもりであったが、扶桑軍は実戦型の軍隊であった。その齟齬が兵器行政の混乱として現れたわけである。更に言えば、怪異相手に抑止力云々は通用しないため、結局はその高価な兵器の代わりに『出来損ない』と侮蔑した戦中型兵器を改良して量産する羽目になる光景が繰り返し起こっている。
「で、最後はグダグダになる。日本のお役所仕事おなじみの光景さ」
「日本って、なんで無知な官僚が口出しするんですか?」
「俺の時代もそうだったが、連中は自分たちに災難が降りかからないと、本気で勉強しないし、自分たちだけがエリートだと思ってるのさ。戦後も温存されたしな、官僚機構は」
この問題は地球連邦の時代にも引き継がれてしまう事になるが、地球連邦はまだマシ(危機感がある)である。日本特有の官僚の高慢は太平洋戦争後も官僚機構は完全には解体されなかった事に由来するので、質が地球連邦よりも悪かったりする。
「だから、君の同僚の子に『子供だまし』だの『ジャリ番の主役』なんて言えるのさ。ああいう番組を見てた者を見下して、少年期を過ごしてた連中だろうし」
「それ、いつの時代ですか?テレビ局でも言わなくなった死語ですよ?」
「80年代まではあったというよ。まさか、2020年代近くに聞くとは思わんだ」
スカイライダーとティアナは流れ作業的に、スーツカ爆撃機を落としていく。その中で明らかになったのぞみへの官僚の罵倒の一端。
「胸糞悪い言葉ですね」
「官僚連中は悪意がないのがな」
「善意で言ったとでも?」
「彼らは下々の価値観を理解してないからな。彼らは娯楽作品よりも、広人苑や難解な作品を高尚だと思ってるんだと思う。10パー以下の評論家や専門家を唸らせるより、10人中8人が楽しめる作品のほうが、世の中の役に立ってると思うんだがね」
「語りますね」
「俺達は映画の料金が安かった時代に学生時代を過ごしたからな。親の世代が戦争の時に学生だった世代にあたるから、2020年代には70の大台に乗ってるよ」
「そういえば、スカイさんは……」
「1957年。本郷さんや一文字さんより10年は若いよ」
「え、あの二人、そんなにおジンなんですか」
「見かけは歳を取らなくても、精神的には加齢するもんだ。俺は比較的に現役時代と変わってないほうさ」
スカイライダーは比較的に明るいキャラで落ちついているが、2008年時点で50代後半にあたる世代(2020年代に70代近くとなる)となる。それ故に、本人も本来はオジンの自覚があるようだ。
「その気になれば、加齢の進んだ外見にできるが、手間がかかるんでね。スカァーイドリル!!」
スカイライダーは救命目的とはいえ、ネオショッカー最高の技術で改造されていた。その関係上、空中戦でほぼ無敵であった。スカイドリルはコンクリート壁破壊用の技だが、応用が効くので、ライダーパンチの強化系のように扱う。
「でも、元は救命目的なのに、そこまで戦闘能力があるんですか?」
「俺は志度という博士がネオショッカーの施設で改造した都合で、仮面ライダータイプに改造されたんでね。その博士も脱走に成功したから、同じ型の改造人間は作れなくなった。それが連中の最大の誤算さ」
ネオショッカーは世界線によるが、スカイライダーそのものの増産に成功した場合がある。ただし、それは希少なので、大抵はスカイライダーのスペックをカタログスペックで超える怪人は作れても、スカイライダーが自己強化でそれを更に超えたりしたので、結局はそのまま壊滅していった。なお、ネオショッカーはかなり大規模な組織であったのか、歴代ライダーが存在を知った1979年よりも数年前には日本に魔手を伸ばしており、おおよそ数年はライダーとの攻防に持ちこたえていたという。
「だが、バダンは仮面ライダータイプの増産に成功している。四号は脳改造されているから、さほどの脅威じゃないが……」
とはいえ、四号も元々の素質のため、脳改造によるデメリットを省いても、歴代ライダーと渡り合えるポテンシャルはある。つまり、ブライアンが葬れたのは、まったくの幸運であったのである。
「お、終わったようだ」
「あんなのどうするんです?」
「ドック艦が回収するそうだ。ロマーニャが欲しいんだって」
「あの国に扱えるんですかね…」
「それなりの大国とはいえ、どうだろうな」
史実より国力が小さいイタリア半島の国々にラ級は荷が重い事から、その要請は政治的判断で『保留』になるだろうと予測するスカイライダー。結局、ラ級の機密漏洩を懸念した日本側の判断で、その提供が『保留』で留め置かれる事になるのである。日本にとっては『21世紀の技術でもブラックボックスの多い動力を持つ』代物であったからだが、ラ級の拡散を政治家が異様に恐れたからであった。だが、英国とアメリカ相当の国々は『戦中に一隻は完成させていた』という記録と、扶桑の同盟国という理由で、すんなりと提供された。リベリオンには、ダイ・アナザー・デイで撃沈した『モンタナ』が回収・修繕された個体が提供された。ブリタニアは工事途中であった『クイーン・エリザベスⅡ世』級の一隻の改装という形の建造なので、やっつけ仕事感があった。とはいえ、日本が扶桑に譲歩して認めた提供の範囲が米英相当の国なあたり、21世紀の世界での日米英のパワーバランスの暗示でもあった。かくして、インペロは何年かの修繕工事を経た後にモスボール保存され、正式に同国へ引き渡されたのは、なんと半島統一後の21世紀であったという…。
――この遠征と前後して、地球連邦から扶桑軍に『マクロス・ツーサード級』が提供された。日本側にアンドロメダなどの存在を明らかにした際に、議員からツッコミが入ったからだ――
――空母はどうした??――
……と。宇宙戦艦は昔の区分で言うと『航空戦艦』と同義であるので、航空戦力の不足はないのだが、純然たる正規空母の不足が懸念されたので、ツーサード級が導入される手筈となった。当初はマクロスクォーター級の予定であったが、予想より予算の余裕があった事から、ツーサード級へ変更された。一般大衆には解放していない地下都市部(南洋)にその工廠と整備ドックがあり、核兵器や地中貫通爆弾に耐えられる『超合金ニューZ』と『ガンダニュウム合金』で覆われた外殻を三重で持つ。その内の最大規模のものが64F基地の地下部であった。
――遠征軍が各地で戦闘中の頃――
「これがあなた方のいう『秘匿物資』ですか……」
「ええ。宇宙艦隊ですよ」
基地の整備ドックには、改アンドロメダ級、D級、同改級戦闘空母と補給母艦、ラ級の予備艦とプランで建造されたモノが保管されていた。極秘で視察に訪れた防衛大臣はその威容に圧倒された。しかも、その全てが64Fの私物扱いなのだ。
「これだけの艦隊を一部隊に?」
「そのほうが貴方方の横槍が入らないもので」
「しかし、人員は?」
「Gフォースの人員や元の統合戦闘航空団のスタッフを訓練して乗せています。Gフォースが持つ『極秘物資』です」
「宇宙戦艦ヤマト級の軍艦をこんなに持つなら、他部隊にも……?」
「他の部隊はここまでのハイテクの産物を扱える頭脳も技能もありません。64FとGフォースのみがそれに値する練度を持つのです」
「前衛武装艦は特に専門性の高い乗員が必要で、最低で防大卒くらいの経歴が無ければ、配置に置けませんし…」
「かの波動砲も…ですか?」
「左様。拡散、拡大、プラズマ、ツインノヴァまで取り揃えております」
「ツインノヴァ…とは?」
「ヤマトの波動砲から何世代かを経た後に、波動エネルギーを超える出力を出せる『モノポール』が機関に採用されます。そのモノポールエネルギーと波動エネルギーを融合させた次世代型波動砲です」
「して、その威力は?」
「本気で撃ったら、一発で銀河の二、三個は宇宙の塵に消えるでしょうな」
「……何が相手なのです」
「少なくとも、自動惑星ゴルバやそれに匹敵する規模の移動要塞を一発で轟沈させるための発達でしょうな」
「途方もないエネルギー量でしょうな」
「ツァーリ・ボンバが線香花火に思えるほどの大きさの超エネルギーですよ」
史上最強の水素爆弾が線香花火扱いの超エネルギーを叩き出せるエンジンを人類が造れるというのは信じがたい防衛大臣。そのエネルギーに耐えられる伝導管や宇宙船用の超合金など、21世紀からみれば、SFの世界そのものだ。
「それに耐えられる金属など……どこで」
「宇宙文明である、かの世界なら容易な事ですよ」
「例の世界か…。よく、移民星が反抗を企てないですな」
「ゲッターエンペラーが生まれた上、宇宙戦艦ヤマトのある世界の地球に、移民星が反抗を?エンペラーに立ち向かうだけで褒められるのですぞ?」
「反抗を認定されれば?」
「移民星は多くがガルマン・ガミラスとボラー連邦との国境に近いのです。シリウス星系は例外でしたが、ゲッターエンペラーの介入を受けています」
「シリウスが潰された以上、地球に反抗する移民星はないと?」
「ゲッターエンペラーは地球に仇なす者を許しはしません。見せしめに、シリウス星系の首都星を物理的に握り潰すほどに」
「SF小説のように、シリウスが地球を滅ぼし、その後の人類に忘れ去られる事はないと?」
「脱地球こそ、かの世界が嫌う、最たるものですよ」
「最も、ジオン船団に行ってもらう航路にはワーム・ホールがあります。彼らはいずれ、伴銀河のどこかに隔離でしょうな」
「いいのですか?」
「宇宙移民に遭難はつきものですよ。メガロード01のように」
ジオンは結果として、合法的な棄民に近いものの、移民船団の体裁を整えていた。移民希望者はズムシティを中心に多く、公国時代を経験した層が多い。とはいえ、ズムシティ以外のコロニーからは異論も多く、サイド3の全人口が移民するわけでもない。
「ジオンは度重なる敗北とテロの横行で移民星へ?」
「旧公国に郷愁を覚える者は多くはありませんし、かと言って、ハマーン時代の無法を覚えている者も多い。だから、シャア・アズナブルにすがりついているのです」
未来世界が21世紀世界の延長線上にある事は暗黙の了解であった。だが、その間の時間は大衆に発表されているものより遥かに短い。それは大臣・事務次官や外交部署のセクションのみが知ることとなっていた。未来世界は公には『万単位の時間を経た後の超文明』として公表されたが、たった100年とそこらの間の連続的ブレークスルーの結果、ポンと生まれたとは、普通は考えられない。更に言えば、アニメがその通りに実現し、本当に宇宙戦艦ヤマトがイスカンダルへ赴く世界など、漫画のようだろう。
「さながら、漫画のようですな。だから、文科省の連中には言ってやった(警告した)のですが)
「夢原少佐にサインはいただけましたかな?」
「孫娘が彼女のファンでしてね……。かの騒動の際には、そちらの聖上に上奏させて頂きました」
彼は騒動の際には陸上自衛隊の高官であり、その後すぐに定年で退官した。その後に政治家に転じ、時の政権に取り立てられたという。現役引退前の最後の仕事は、のぞみへの損害賠償を取り決めるために、野比財団と交渉する役目であり、扶桑の昭和天皇に拝謁する名誉に預かったという。上奏したという通り、自衛隊としての損害賠償の取り決めを昭和天皇に伝えたのは、2024年での防衛大臣(当時は陸将補)であったのである。自分の職権を使い、孫娘をのぞみに会わせるなど、若干の職権乱用をしてはいるが、それ以外は有能な防衛閥の政治家であった。また、Gフォースに陸自が噛めるようにしたのも、現役時代の彼である。現役時代は黒江に何らかの恩義があったらしい。
「そちらの黒江統括官には、現役時代に恩義があるのですよ、私は。私は同期の中で現場畑でしてね。それで政治屋に疎んじられまして……」
彼が防衛大臣になれたのも、陸将で退官できたのも、現役時代に黒江が後援してくれていたおかげ。そう考えていた。また、顔には現役時代の古傷が残っていた。
「私は現役の晩年期……ジオン残党が最初に衝撃した地方の司令級でして」
「ほう。すると、奮戦したという九州地方の?」
「ええ。そこが私の軍歴でもっとも痛快な時期でした」
彼はなんと、現役晩年期に九州地方に在地していた頃、ジオン残党のテロに立ち向かった方面隊にいたらしい。その事から、Gフォースの陸軍部には、西部方面隊からの引き抜きと志願が多いという。当時の西部方面隊は既に74式戦車が用廃直前の有様であった他、10式戦車も配備途上であったが、ジオン残党相手に奮戦した。その事から、事後に疎んじられたが、黒江が擁護したことでそれを免れ、数年後に『陸将』で退官に至った。また、実戦経験者の受け皿としてのGフォースの結成時には恩返しとして、『陸自の総意として、結成への賛成の意を政府に伝えた』という。
「水陸両用戦闘団の結成と編成には、彼女の知恵を組織として拝借させて頂いた。まさか、彼女の配下に歴代のプリキュアが多いのは予想外でしたが」
Gフォースの誕生後、その一部隊として、水陸両用機動団の一部が出向し、戦闘団を結成したという。その彼らは『プリキュア5の世界』でジョージ・パットンとオマール・ブラッドレーという名将軍の指揮下にあり、ナチス残党と戦っている。
「まさか、ジョージ・パットン将軍に会えるとは……銀幕の世界でしかお目にかかれなかったのですが……」
「それは良かったですな」
Gフォースにもっとも人員を供出した方面隊の司令級の前任者でもあった都合上、ジョージ・パットンやオマール・ブラッドレーと会う機会に恵まれたという。史実通りに、ブラッドレーはパットンのお目付け役であった。いわく、防衛大臣としての視察時に、ケイを訪ねてきていたパットンにばったり会ったという。
「彼は大戦の英雄ですからな。この世界では未だにご健勝であられる」
彼の口ぶりから、パットンは史実では既に『この世の人ではない』事を悟る。日本軍の複数の高官も、史実では既に戦死している時代を生きている者が多いが、米内光政は既に世を去っている。その一方で、彼より更に年上の岡田啓介と鈴木貫太郎は未だにピンピンしているなど、ピンキリである。扶桑海軍の高官は艦娘を多くが秘書にしているが、山本五十六は特に人数が多く、長門型に大和は少なくとも、彼の秘書を持ち回りでしている。(武蔵が連合艦隊旗艦であった時期、もっとも多く座乗していたのは古賀峯一なため、武蔵は古賀峯一の秘書であった)
「しかし、統括官は今は誰を育てておられるので?」
「夢原少佐ですよ。彼女は士官学校の後輩であり、黒田少佐が軍務から距離を置いている今では、彼女が統括官の副官と秘書を兼任……」
「大丈夫ですかね」
「本人が聞いたら、憤慨しますよ」
のぞみAはなんと、黒田の実質的な離任の後は、その後任に抜擢される形で、黒江の世話役も兼任していることが伝えられる。現役時代が現役時代なので、彼は思わず心配するが、扶桑の参謀(少将級)がたしなめる。
「彼女も転生を経ていますし、今は所帯持ちですので、流石に」
「彼女の夫はどういう人物で?」
「サムライトルーパーの烈火を受け継ぐ青年……。そうとだけ申し上げましょう。それ以上は彼女のプライバシーに関わりますので」
「サムライトルーパー……」
のぞみAの夫については『プライバシーに関わる』ということで伏せられたが、実はサムライトルーパーの一人である。それは軍内でも暗黙の了解となっている。のぞみはこの世界の未来に『孫娘がいる』ので、『近いうち』に子を儲けるのは間違いなかった。それがいつかはわからないが、少なくとも、のぞみが前世で手に入れることが叶わなかった幸せは近いうちに待ち受けていることになる。『オトナ世界』で起こるはずの『本来の道筋』と違うのは、『プリキュアへの変身能力を持つままで家庭を持った』ことだろう。『オトナ~』世界のように『パルミエ王国の王妃』になるわけでもなかったが、のぞみにとっては『ココと一緒にいられる』事が一番の幸福であった。その一方で、世界を守る戦士としての使命を帯びたままな事は賛否両論だが、『誰かが望む限り、英雄は立ち上がるべきである』という論調もあり、彼女がプリキュアの力を持ったままで『法的に大人になる』事への理解も進んでいくのである。1949年のことであった。