――江藤敏子は過去の行為がきっかけで、昭和天皇直々の査問に遭う羽目となった。彼女は厳罰を覚悟したが、艦娘・陸奥がその場を執り成したことで難を逃れた。扶桑軍はそれ以後、全軍の航空部隊に『戦果の原則的公表』を課した。『沈黙は金』の格言が海外では通じない事を痛感したのだ。これに反対した者達はクーデターを理由に、中央から追放された。彼らはカールスラント軍に怒りをぶつけたので、そのカールスラント軍も、ミーナを事実上の生贄に捧げた。そのミーナの失脚に伴い、カールスラント軍内の空母機動部隊保有論は力を失う事となった。ドイツ軍が持たなかったので、カールスラント軍にも持たせまいとする論調があったからである。カールスラントは結局、地政学的都合で空母を持つことはできたが、空母機動部隊としての本格運用はできずに終わる事になる――
――連合国のパワーバランスがダイ・アナザー・デイで様変わりした結果、欧州諸国の軍事的影響力は大きく損なわれた。日本連邦の寛容性により、艦娘などの受け入れが進んだ結果であった。また、魔女兵科に許されていた『部隊ごとに異なる内規』は廃され、かつての統合戦闘飛行隊『アフリカ』を基準にした規範が採用された。それは魔女兵科の廃止が既に内々に決まっていた故の最後の親心であった。ダイ・アナザー・デイの戦闘は魔女兵科(航空)の価値を大きく低下させたわけだ。F6FやF4Uなどの既存機種にも、殆ど歯が立たなかったからである。魔女らの知る戦闘機は史実の1941年の水準。それより大きく性能が上がった『1945年』相応の戦闘機は彼女らの想像を超えたものであったのだ――
――ジェガンはMSとしては凡庸な機体であったが、兵器としては高い信頼性を持っていた。故に、扶桑軍は採用したのである。扶桑仕様は肩に扶桑と日本のラウンデルマークが描かれている他、カラーリングは陸空で異なる。ダイ・アナザー・デイで地球連邦軍の主力機として使われ、扶桑軍も太平洋戦争で使用し、相応の戦果を挙げていた。既に型落ちの兵器だが、ティターンズのさらなる旧式MSには優位に立てるからだ。それで対処不能なMSは『リゼル』や『リ・ガズィ』で、それも無理なら、64Fのガンダムタイプで…。というドクトリンである。ティターンズは旧ジオンを毛嫌いしていたが、実際はその研究を熱心に行っていたからである。その時に備えてのスーパーロボットの保有であった。グレートマジンカイザーはZERO対策で改修が進められていたが、ミネルバXにその用途では無意味であると断じられ、(妥協的に)実質的に64Fへ譲渡され、同部隊の切り札となった――
――インペロの擱座の後、地球連邦軍と連合軍は『国連軍』の名のもとに『現場検証』という名分で街を封鎖(ただし、救急車両などは通行を許可している)した。インペロは運良く、綺麗に着地していたが、街の被害も大きかった――
「こりゃ……移動にも時間かかるわね」
キュアルージュAが呟く。
「ドック艦が来るまでは動かせんからな。各国の衛星はM粒子で妨害してるから、衛星には映らんが……。街の人々には『映画撮影』で誤魔化しているから、街を元通りにして、証拠隠滅せねばならんし」
「うわぁ…。これが墜落した戦艦?」
「元はイタリア海軍が持っていたものだ。君はこの世界ののぞみちゃんだね」
「は、はい。あなたは?」
「俺はスカイライダー。8番目の仮面ライダーだ。よろしく」
ドリームキュアグレースになったのぞみBがやってきた。Aが『戦闘能力』に特化した進化を遂げたのとは対照的な『プリキュア本来の浄化能力』に重点が置かれた進化形態である。
「イタリア海軍の?」
「イタリア海軍が戦局を変えるために作っていた代物だよ。もっとも、ドイツ軍に接収されていたようだが」
インペロの掲げている軍旗はイタリア王国とドイツ第三帝国のものであった。その事から、同艦はイタリア王国の解体後、残党の手でナチス残党に譲渡されたのがわかる。
「とりあえず、アスカ級で牽引を試みるそうです」
「わかりました」
兵士がスカイライダーに報告する。インペロは重量が10万トンを超えるため、波動エンジンの空母級以上の艦でなければ牽引が出来ないと判断されたようだ。(例として、艦娘・吹雪が艤装にダメージを負った大和の牽引を単独で試みた事があるが、機関の馬力とトルク不足でまったく動かせなかったように、駆逐艦級では役不足なのである)。
「この戦艦、どうするんですか?」
「こちらの君が住む世界のイタリア海軍が保有を希望してるそうだ。元はイタリア王国のものだからって理屈だそうだが、日本政府は割れてるそうな」
「なんでですか?」
「エンジン技術がオーバーテクノロジーだから、だそうだ。しかし、元から日本のものではない以上……」
「どうなるんですか?」
「エンジンにトラップを仕込むことで妥協されるだろう。無論、日本でしか理解できない『ブラックボックス』として。遠隔操作で炉心の強制停止と操縦権の剥奪くらいは仕込むだろうな。戦略兵器の扱いだからな、こいつは」
「でも、日本もたいがいですよ。戦艦大和の同型艦にドリルと宇宙用のエンジンつけるなんて」
「太平洋戦争に間に合っていえば、戦局をひっくり返していたと言われるくらいには強力だからね。あれ(廻天)はその更にコピー生産だけど」
「一ついいですか?そっちの私、何してるんですか?入れ替わってる先で」
「陸上競技みたいなので頑張ってるようだ。事情は後で、キュアハートか、その世界の子と入れ替わっている、キュアビートに聞いてくれ」
「エレンちゃんも協力してるんですか?」
「ああ。彼女、転生した先がややこしくてな。ある宇宙人が創造した『戦闘用の種族』の女性になっていたんだ。それで、プリキュアの記憶が戻った後に、君の知る姿に戻ったらしいんだ。だから、彼女は容姿が複数あるってことだ」
キュアビートは転生先が『クラン・クラン』であった都合上、連邦の軍籍を獲得済みであった。転生先がメルトランディであるので、以前より大きく戦闘能力は向上していた。ゴルシは彼女の体を隠れ蓑とする形で、ブライアンをサポートしていたのである。
「えーーーー!?」
「そうなんだ。で、おまけに、その彼女も体を別人に貸した上、入れ替えるのを持ちかけた子の分身を作らせて、矛盾が出ないようにするし、抜け目ないよ」
「元は猫の妖精だったんだけどなぁ、あの子」
黒川エレンは元・妖精かつ、元・敵、追加戦士という複数の属性を持っていた。転生先でも大学生であり、軍の士官であるという複雑な身分であった。本人は『黒川エレンの姿なら、ミドルティーンくらいの容姿になるから、大バンザイ!!』と大喜びである。また、キュアビートの姿であれば、言動に幼児性が出ない(クラン・クランの姿でのマイクローン化では幼児化してしまうので、言動に外見相応の幼児性が出てしまう事があるからだろう)のと、声にドスが効かせられるので、脅しができるという利点があった。
「君もこちらでは、言動が荒い事が多くなってるがね。環境の違いだろうけど。仕事柄、仕方がないけど」
「そっちの私、本当に軍人なんですか?」
「それもエリート将校だよ。転職が潰されたのもあって、居残るしか無くなったのが真相だが」
スカイライダーも、のぞみAの転職活動に協力していた(ネオショッカーに殺された実妹が教師志望だったという)事から、のぞみAの騒動が日本側に不利に働くように動いていた経緯からか、のぞみとは親しい友人のようである。
――のぞみAの転職活動は諸要因で潰えたわけだが、扶桑の法制では、予備役の将校が教職につく事は合法であった。過去には東郷平八郎や乃木希典などの名だたる提督や将軍が学習院の要職を兼任した事例も存在する。つまり、日本の面談担当の官僚、彼の所属していた文科省、厚労省の無知と暴走が全ての原因であったのだ――
――騒動での日本側の対応は官僚が自慢気に同僚に『軍人上がりが教職になりたいって言ってきたから、俺が潰してやった。天皇の勅ったって、たかが一士官に出すわけがない』と語ったことで、上司の知るところとなった事から始まり、後手後手に回った。圭子達の動きは日本側の想像より遥かに迅速かつ、手際のいいものであった。扶桑の提督/将軍たちを電話一本で呼び出せるという凄さを知らなかったからだが、64Fの軍制上の指揮官が山下奉文将軍であった事も、文科省と厚労省の予想を超えていたのである。圭子が動いた翌日には、文科省に山下奉文将軍が正装で乗り付け、事務次官との面会を希望する事態になった。彼の後輩の今村均将軍も帯同しており、文科省と厚労省も無碍には出来なかったのである。大臣達が問題を把握し、青ざめた瞬間には、海軍の長老達が腰を上げる事態となっていた。山本五十六の報告を受け、彼らが動いたのである。その数週間後には、総理大臣に艦娘・飛龍が通告した通り、海軍長老の二人が戦艦大和で来訪し、昭和天皇の懸念を伝え、日本の総理大臣は顔面蒼白であった。勅は昭和天皇の直筆の書であったのだ。扶桑の皇室は戦前の日本の皇室以上に国民へ権威がある事は既に知られていたので、日本の総理大臣は二人に事態の収集を確約せざるを得なかった。二人は総理大臣の経験者であり、日露戦争の生き残りの世代だからだ――
「その騒動で日本が揺れた。なにせ、官僚の暴走だった上、戦前の権威が生きてる状態の皇室の侍従が見せた書状をそいつが侍従をアッパーカットでノックアウトした挙句に、反天皇論をわめきながら破いた上、燃やしたんだよ。独断で。それを同僚に自慢気に話してたってんだから。で、君も最大の侮辱を受けたんだ。軍隊しか知らない、歩兵上がりってね。実際はエリートパイロットだったのに」
官僚の暴走は圭子が週刊誌に流したため、すぐに週刊誌が文科省の大スキャンダルとして報じた。当初は(知らなかったため)報道を否定していた文部科学大臣もすぐに訂正の記者会見を開き、謝罪する羽目となった。厚労省もすぐに『厚労省は扶桑の予備役軍人の教職への転職活動を否定してはいない』とする声明文を出す羽目となった。だが、週刊誌の第二弾報道は内閣総理大臣が激怒する事態となった。
――厚労省と文科省、プリキュア戦士の転職活動を独断で潰す!!――
そんな見出しの記事が踊ったからで、時の総理大臣は顔を真っ赤にして、文部科学大臣と厚生労働大臣を怒鳴りまくった。大臣達は(本当に知らなかったので)弁明も出来なかったという。外務省もてんやわんやであった。真筆の昭和天皇の勅を一官僚が破り捨て、燃やした。しかも侍従の顎をかち割るアッパーカットをする暴挙であったからだ。当時は連合体制こそ書面上では発足していたが、戦時中である扶桑での処理が遅れ、正式には発足していなかったからである。
「まだ正式に連合ができたわけではないのに、君たちは内政干渉かね!?」
総理大臣はある日の閣議の開口一番にそうして怒鳴り、大臣達を震え上がらせた。既に国土交通省などが内務省の分割工作に動いていたからだ。扶桑で日本連邦体制が法的に有効とされたのは、1949年の8月中旬。全ての法的手続きに年単位の時間を要した上、是非を問う国民投票が1948年(日本側では、2016年の五月頃にあたる。日本側では、2012年からの四年で手続きが進められた)にあったからである。件の官僚は依願退職には持ち込んだものの、退職から数日後に暴行容疑で収監されたが、扶桑との取引で『政治犯』として扱われ、禁固刑に変更された。牢獄の主が皇室の信奉者である刑務所で村八分の扱いを受け、精神的に死した状態で刑期を勤めたという。
――日本側の次元ゲートは連邦の発足後の正式な設置場所が伊豆七島最南端となり、2018年に試験的な設置場所であった『小笠原諸島』から移動した。それ以降は時差もシンクロすることになり、警備艦隊は自衛隊と扶桑艦隊の連合であった。重要な建造物であったため、予備ゲートの建造が2023年の段階で検討中であった。ただし、敵味方共に通れるため、近海でのリベリオン艦隊との海戦は日常茶飯事となった。そんな戦闘で鹵獲されたモンタナ級は一隻が米海軍の手に渡り、試験艦という名目で2017年頃から『戦艦の再建造』を行いだすきっかけとなった。扶桑との接触後、アイオワ級の再々々復帰を検討していた米海軍(扶桑の大和型への抑止力という名目で)であったが、既に建造から100年近くが経過していたアイオワ級の復帰は物理的に不可能であった。日本連邦が鹵獲したモンタナ級の存在は渡りに船であったわけだ。日米同盟を理由に、二隻を譲渡させた彼らは2017年度からリバースエンジニアリングを開始。それが完了した翌年度に『BC計画』という名で戦艦の再装備を開始。試験艦名目で同艦を『新造艦』扱いで就役させたのである。アイオワ級のデータをもとに、時代の差で最適化された武装を備えているが、主砲周りは手を加えられなかったので、内部機構の改良がされた以外は流用されていた。とはいえ、元々がダメコンに定評のあった米軍艦艇であったので、船体の消火・排水設備などを現代艦艇に準じたものに変えるだけで、その生存性は相当に上がった。実験艦の名目であったが、艦番号も史実で中止されたモンタナ級に続くものを与えられたため、『正統なアメリカ合衆国海軍戦艦の後継者』として、華々しくデビューを飾ったのである――
「扶桑の大和型に対抗して、アメリカが戦艦を就役させてきたけど、あの出どころはどこなんです?」
キュアルージュがスカイライダーに質問する。
「あれはゲートの移動作業にかかる予定日に襲ってきた敵艦隊の一隻を鹵獲した日本に迫って、譲渡させたものを直したのさ。21世紀のアメリカに一から新造するノウハウはないからね」
「いいんですか?」
「同じ国ではあるからね。日米同盟もあるから、断れなかったのさ。とはいえ、現場の声で『ヤマトクラスにでかい顔されては、合衆国海軍の沽券に関わる』とかなんとか」
「……アホみたいですね」
「兵器なんて、そういう理由で普及するもんさ」
実際、扶桑の大和型が近代化された姿で颯爽登場した後、駆逐艦とフリゲート艦が主流になっていた戦後の米海軍の将兵はその威容に圧倒された。近代化で史実より大型化していたために、余計に劣等感を煽られたのだろう。機銃群はパルスレーザー、主砲も史実のそれとモデルが違う(副砲は撤去済み)という近代化ぶりは米海軍をも驚愕させたのだ。更に驚くべきは、その後継モデルも就役しつつあるという情報であった。扶桑は必要上、戦艦主砲を『98式陽電子衝撃砲3連装砲架3型』(宇宙戦艦ヤマトの主砲の三世代目)とその上位モデル『一式陽電子衝撃砲3連装砲架』に換装を進めており、それで地球連邦との補給の共通性を持たせている。構造上、ショックカノンは実体弾を放てるので、扶桑も旧来の砲弾を無駄にしないでよかったのだ。なお、ドレッドノートとアンドロメダについては。アースとガイアで口径に差があるが、実用上はさほどの差ではないという。ヤマトについては、双方で顕著な差異はないが、アースのヤマトは全艦砲の実体弾射撃が可能だが、ガイアは内部構造の都合で、一部で実体弾射撃ができないという差がある。
「この艦も波動エンジンを持つようだが、イタリアとドイツの技術では、持て余し気味のようだ。内部を調査しているライダーマンから連絡があった」
「どうしてです?」
「膨大な出力を転用可能な兵器を有していないからだそうな。旧日本軍は設計段階で冷凍光線と熱線放射装置を搭載しようとしていたからな。アイデア勝ちだな、日本の」
日本海軍は熱線と冷凍光線を同時に搭載させ、あらゆる敵に対応可能にしていたが、イタリア軍は『空を飛ぶ戦艦』の範疇でしか、兵装のアイデアを練れなかったようだと、ライダーマンからの連絡がスカイライダーに入った。イタリアの技術の限界ではあるが、ドイツ軍もイタリア艦に戦力的価値をさほど見出さなかったのか、改装はしていないらしい。
「あとは地上の機甲部隊だが……機甲部隊が泣いてるぞ」
「パットンまで持ち出したのに?」
「敵がマウスを持ち出してきたんだそうでな……」
「ま、マウスぅ!?残ってたんですか、あれ!!」
「しかも、戦後の改良で主砲が150ミリくらいのを積んでるらしい。戦後型徹甲弾でも、正面を貫くのは困難だ。航空攻撃でやるしかないが、問題が起こった」
「問題?」
「扶桑軍がサンプルにほしいから、一両は持ち帰ってくれと」
「サンプル、ですか」
「ああ。今後の参考にしたいんだと。そんな注文だから、爆撃で安易に焼き払うわけにもいかなくてね。光太郎は他の連中の相手で手が離せんそうだ」
「なら、いい手があります」
「いい手?」
「古いですが、一年戦争の時のグフ・カスタムが数機ほど手元にあるので、ヒートワイヤーで蒸し焼きにします。オリジナルのグフでもいいんですが、戦争博物館に持っていかれましてね」
兵士がいう。グフ・カスタムを持ってきていると。グフ系は鹵獲次第、戦争博物館に持っていかれるくらいには希少な機種であるが、グフ・カスタムはその性能バランスから、残党から接収したものが、元ジオン系のパイロットたちによって使われていた。
「あ、すごい大きい車だ」
「ザク・タンカーか…。これも残党から?」
「ええ。かなり貴重なので、持ってくるのは手続きが煩雑でしたが」
荷の覆いが外され、荷台で寝かされていたグフ・カスタムが立ち上がる。連邦の鹵獲機であるのだが、カラーリングはグフ・カスタム本来の青系のもので、ブレードアンテナやガトリングシールド、ヒート・サーベルもそのまま使われている。残党にしては、物持ちがいい部隊からの接収品らしい。
「それじゃ、ネズミ退治に行ってきますよ」
と、グフ・カスタムは見事な動きで街を駆けていった。投入数は三機。ほぼ全員が元のジオン軍パイロットだ。ただし、ガトリングシールドは装弾数が多くないので、右手にジム・ライフルが持たせられているが。
「すごーい…。あんな大きさであんなに早く…」
「あれは旧型なんですが、格闘戦では無敵を誇ったとされる機種ですから」
「あ、気づかなかったようだが、あのうちの一体に乗ってるのは…キュアミントだ」
「え、えぇ!?み、ミントがぁ!?」
「カラーリングで気づくかと思いましたが」
「すいません、この子、そういうカンは鈍いんで…」
ルージュが謝る。
「説明しよう。こちらの君がガンダム乗りだからと、彼女は訓練を受けていた。ジオン系の機体のシミュレーターはやらせていたが、実機は今日は始めてだが、行軍訓練はやらせていたらしい。で、本当は乗り慣れてる元のジオン系のパイロットが担当するはずだったが、彼女に実戦を経験させようって判断でな」
「それに、彼女の姉上がキューティーハニーですから、普通に乗りこなせますから、ガンダムも。それで」
「こまちさん、なにしてるんですか!?」
「まぁまぁ。君だって、ガンダム乗りだし」
「それはそっちの私ですってー!」
「最近はマジンガーとゲッターにも乗る訓練してましたよ、あなた」
「嘘ぉ!?」
「ボイトレしてたからね、その時に備えて」
のぞみBは別の自分がガンダムのみならず、スーパーロボットにも乗れるように訓練をしていることを聞かされ、驚天動地であった。そして。
「あ、噂をすれば、ですよ」
兵士が空を指さす。すると。
『ゲッタァァァ・シャイィィン!!』
黒いゲッターGがゲッターシャインの態勢に入っていた。ドスが効いているが、自分の声であるので、のぞみBは驚く。
『シャイィィン・スパァァァク!!』
サイコガンダム(無人機)の最後の小隊をゲッターG最強の技『シャインスパーク』で消し飛ばす様子であった。ブライアンは他人の体であろうと、元から正規のボイストレーニング(ライブのため)を受けていたので、叫び声の通りが良い。叫び方ものぞみBよりごく自然なもので、のぞみBはあまり叫び慣れていない(叫ぶ機会が戦闘しかないためか)ため、発声が力み気味かつ、掠れ気味であるのとは対照的であった。
『ふう。これで始末したか。お…。あんたも参加したのか』
「私の体で、変な事してないー!?」
『知らん。それは私の管轄外だ』
のぞみBは現役当時の若干高めの声であるが、のぞみAの体を使うブライアンは、そのパーソナリティの反映か、Bよりトーンが低めかつ、ドスの効いている声になっている(ブライアン本人の声よりは高いらしいが)。
『よっと』
ゲッターGを着地させると、頭頂部のハッチから通常フォームのキュアドリーム(ブライアン)が出てくる。本来は脱出用だが、ゲッターGは初代と違い、緊急脱出の事も考えられている事がわかる。
「ハッ!」
ブライアンは50mもの高さから飛び降り、見事に着地する(ウマ娘であるので、元からヒトを超える跳躍力があるが)。のぞみAの体を使っているが、鼻にテーピングテープをしている、ゲッターに乗った故か、マフラーを首に巻いているなど、通常フォームながらも、細かい違いがある。目つきも、猛禽類を思わせる鋭いものだ。
「これが……」
「あんた自身から借りているが……ある程度は好きにさせてもらっているぞ」
ブライアンはここで、のぞみBと改めて対面した。のぞみBは『同じ人間同士のはずなのに、振る舞いや声色、外見の細かい差異で、違って見える』ことに驚く。
「この世界のあんたは中坊のようだが……」
「何よー!あなただって、そんなに変わんないんでしょー!本当は」
「生憎だが、こっちは高等部だ」
トレセン学園の高等部に在籍中のナリタブライアンは高校生である。中学生であるのぞみBよりは明らかに『大人』である。その揺るぎない事実の前に、のぞみBは大いに膨れる。
「ぐぬぬぅ~……。そんなのズルいよぉ」
「とはいえ、あんた、私のいる時代では、20の後半になってる計算だぞ」
「へ、どういう事?」
「話せば長いが……」
ブライアンはここで、自分が本当生きる時間軸を説明する。その頃には、自分もいい年した大人になっているのであることに遅まきながら気づく。
「う、うーん……」
喜んでいいのか微妙な顔ののぞみB(ドリームキュアグレース)であった。その様子を観察し、ニヤニヤするキュアルージュであった。