ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第六百十五話「つかの間の平穏」

――グレートマジンカイザー。対ZERO用としては不要とされたが、それ以外の用途では充分な性能があるため、64Fに実質的に譲渡された。改修後はマジンカイザー(改修後)と同様に、Zとグレートに近めのカラーリングへ変更されていた。マジンエンペラーGの開発でその役目を奪われた感があるが、強力なスーパーロボットであることに変わりはなかった――

 

 

「使うことはなかったな、こいつを」

 

「えーと、これ……マジンガーですか?」

 

「グレートマジンガーを強くした『グレートマジンカイザー』だ。念のために用意したものなんだ」

 

「スーパーロボットって、軍で使うものでしたっけ?」

 

「譲渡されたんだよ。科学要塞研究所から」

 

ナリタブライアンとの挨拶を終えたのぞみBは戦闘が落ち着いたため、別の自分の上官にあたる黒江との対面を果たした。正確には、黒江はそれ以前に会っていたが、のぞみBは記憶していない。彼女は昏睡状態にあったためだ。

 

「お前とは、前に一度会った。覚えてないと思うが」

 

「えーと……いつですか?」

 

「お前がシャドームーンに負けた時だ。ただ、その時はお前を手当てするので精一杯だったが」

 

「あの時……。あの時はそっちの私が成り代わってたんですよね?」

 

「緊急事態だったし、お前がいなくなっちゃ不自然極まりないだろ?だから、とっさにやらせた。一ヶ月近くは寝かせたな、プリキュアの姿で」

 

「なんで、変身した状態で治療を?」

 

「変身を解いたら、お前、腕が使い物にならなくなってたぞ。骨が砕けてたからな。プリキュアの力が働いてる状態なら、それ以上は悪化しない」

 

「目が覚めた時、一ヶ月過ぎてて、腰抜かしましたよ。でも……変身した状態の私を安静にさせられる薬なんて、あるんですか?」

 

「知り合い(アグネスタキオン)に調合してもらった特注品だ。それを定期的に投与させていた。その間はこっちのお前に代理をやらせた。ココは困惑したがな」

 

「ココが困った顔してたのは、そのせいだったんですね?」

 

「そりゃ、こっちじゃ籍入れてるからな。お前も既婚者だし。もちろん、指輪は預かってたがな」

 

「ココ……の生まれ変わりさん、給料いいんですね」

 

「普段は高校教師だからな。それで、文芸部顧問だって聞いてる。お前と一緒にいられるのは、お前が軍で休暇取ってる時期だけだから、夫婦関係とはいえ、あまり会えないがな」

 

「そっちの私、教師にならなかったんですね」

 

「なろうとしたが、それで事件が起こってな。軍に残らざるを得なかった。損害賠償がかなりの金額になったが、お前を慰めるのは苦労したぜ。ヤケ酒したし」

 

「え、や、ヤケ酒!?」

 

「俺と同僚が駆けつけた時だ。お前、かなり悪酔いしててな。泣き上戸になるわ、絡み酒してな。それで俺の下宿してる、友人の家につれてったぞ」

 

「なんか恥ずかしいですよ~!」

 

「よっぽどショックだったんだろ。それでそこに下宿させることにしたってわけ。ココはそこの家主の義理の息子だったんだ」

 

「それで…?」

 

「軍としても大騒ぎになってたし、あちこちで悲喜交々色々あった時期だしなぁ。家主にゃ迷惑かけたけど助けられたなぁ、その時は。それで、そこの家に住むことになったんだよ。で、ココが話を聞いて、駆けつけてくれてな。それでお前を慰めてた。その時はそれだけだったが、ある時の戦いで、闇落ちしたお前を助けるために現れて、告白した。それで、お前は元に戻った。お前、その後、相当に舞い上がってたぞ?」

 

「なんですか、それーーー!?」」

 

「大人になったら、わかることだよ」

 

「そうそう。それで、あたしの記憶が戻った時、あんた、ドリームの姿で、だいしゅきほーるどやらかしたわよ。こっちは病み上がりだったのに」

 

「えーーーー!?ほ、本当!?」

 

「しかも、戦場のど真ん中で。敵に『メロドラマは終わったかね?』って嫌味言われたわよ」

 

キュアルージュが多少愚痴っぽく話す。その時は病み上がりであったのに、ドリームにだいしゅきほーるどされたのだ。しかも、戦場のど真ん中で。さすがのタウ・リンも『メロドラマは終わったかね?』と嫌味を垂れるので精一杯であったほどだ。

 

「で、その後でしたよね?」

 

「正確には、それからしばらくした後の戦いだったな。それで、お前はシャイニングドリームの殻を破って『進化した』。その状態で魔神と融合したんだ」

 

 

「映像は見せてもらいましたけど、なんですか、あの『バトル漫画』みたいな覚醒の仕方は」

 

「カッコよかったんだし、それで良しとするんだな」

 

「覚醒と融合が済んだ後は、気軽にシャイニングに変身してるぞ、お前。空飛べるからってんで。気合入れれば、それになれるようになってたから。近頃はいきなり、それで戦ってるぞ」

 

「えーーーー!!いいんですかぁ!?仮にも、ミラクルライトで生まれた形態ですよ、あれ!!」

 

「個人としちゃ、あれが現役当時の最強形態だろ?その姿はイレギュラーだしな」

 

「そうそう。あんた、キュアグレースとは、あたしらが2020年まで現役してなきゃ会えないのよ?ここから13年以上も先の話なのよ、本当は」

 

「13年!?えーと……27歳になってるじゃん、その頃には!!」

 

「つまり、プリキュアはその時代になっても生まれてるってことだな」

 

「ですね。世界線によるけど、あたしらはその時期でもプリキュアしてるってこと」

 

「27歳かぁ……どうなってるんだろう」

 

「ああ、そのうちの一つの世界じゃ、お前、酒飲みになってたぞ」

 

「嘘ぉ!?」

 

「後で、その本人から連絡来るから、お前から質問があったって伝えとく」

 

「え!?連絡取れるんですか!?」

 

「ああ。そのうちの一つの世界じゃ…!?」

 

「地震!?」

 

「いや、違う。これは……!」

 

三人が外に出てみると。

 

「げ、空魔獣グランゲンに……結合獣ボングだと!ダムドム星人か!?」

 

「あいつら、性懲りもなく!」

 

「ルージュ、あれ……敵?」

 

「うん。それも別の銀河の異星人」

 

「連中め、ギルギルガンでも連れてきたのか……お!!」

 

『ここは任せろ!!』

 

「大介さん!!」

 

「ろ、ロボ亀!?」

 

「あ、やっぱ、そう見える?」

 

「まぁ、それは分からんでもないが、フランス人にファンの多いスーパーロボットだぞ、あれ」

 

「あれが?」

 

「見てろ」

 

怪訝そうに見ているのぞみBに黒江が促す。すると。

 

『シュゥゥゥト・イン!ダイザー・ゴー!!』

 

デューク・フリードの勇ましいかけ声と共に、スペイザーからグレンダイザーが分離する。外観がマジンガーに似ているが、これはフリード星と地球の先史文明の一つ『シグマ文明』が同祖の種族であったためである。つまり、現生人類はその文明が栄えていた時代を経ていたことになる。おそらく、ラーメタルの直接統治下にあった時期の文明だろうとされる(つまりは未来世界にも、魔神ラーガが存在していたことになる。だが、それらしきものは発見されていない)。

 

「こいつらの相手は俺に任せてくれ!」

 

デューク・フリード(宇門大介)は一人称を使い分ける。最近は『俺』を使う機会が多いのは、スーパーロボット軍団の中では年長格になるからだろう。

 

「大きい……」

 

「30mあるからな。マジンガー系じゃ、一番の大柄だな」

 

グレンダイザーはマジンガー系のスーパーロボットではもっとも大きく、全長は30mを超える大型機だ。グレートやカイザーよりも頭一つ分は大きい。(カイザー系統を除けば)一番に強力なパワーを持つマシンでもある。

 

『スクリュークラッシャーパーンチ!!』

 

大人のぞみも使っている『スクリュークラッシャーパンチ』。その大元はグレンダイザーの武器である。

 

『ダムドム星人め、光波獣ピクドロンを繰り出そうと、グレンダイザーには通じないぞ!!ダブルハーケン!!』

 

「大介さん、それ本当っすか?」

 

『ダイザーは光量子で動いているからな。光の矢などは通じんよ』

 

ダブルハーケンを展開し、結合獣を綺麗さっぱりに両断しつつ、黒江に答えるデューク・フリード。

 

『ハンドビーム!!』

 

ハンドビームも実はZの光子力ビームを超える貫通力を持つ。牽制用の武器だが、Zより遥かに強力なマシンの武器であるので、威力は推して知るべし。

 

『反重力ストーム!!』

 

グレンダイザーは他のマジンガーでいう『放熱熱線』がある部位に『反重力光線』を放射する機構がある。これが便利な武器なのだ。

 

『スペースサンダー!!』

 

最後にまとめて、スペースサンダーで消し飛ばす。これがグレンダイザーのコンビネーション攻撃だ。

 

「大介さん、どうしてここに?」

 

『ダムドム星人がベガ星の弱まった時勢、平行世界に手を伸ばしてきてね。俺はそれを阻止するために赴いたんだ』

 

デューク・フリードは一人称を状況に応じて使い分ける。普段は『僕』だが、戦闘時などは『俺』となる。『俺』が素であると思われるが、王子である(王位継承前であったので)都合、一人称は意識して変えている節がある。

 

「ベガ星、本国がぶっ飛んだんじゃ?」

 

『うむ。鉱山の鉱脈を広げる際の事故らしいが、自業自得だ』

 

この頃には、デューク・フリードの主敵『ベガ星連合軍』は本国の鉱山の鉱脈拡張工事の際の事故で本星が爆発してしまったことで、地球の月に引きこもっていた。元の前線基地が本拠地化というのも、悲惨である。

 

『この世界の争乱はまだ続くだろう。ダムドム星人とバダンの利害が一致したようだからな』

 

「また、ギルギルガンを?」

 

『おそらくな』

 

バダンとダムドム星人の同盟構築の情報。その報により、グレンダイザーが飛来したわけである。

 

「当分の間は学校は休校になりそうだなぁ」

 

「海底軍艦は映画撮影で誤魔化せんから、国連の調査という名目で街の封鎖を続ける。地球連邦は国連の後継ぎだから、あながち嘘じゃない」

 

 

「そういうもんですか?」

 

「お前、そっちでの成績はどうなんだ?どーせ、2のほうが多いだろうが…」

 

「失礼なー!!最近は3が多くなりましたよー!」

 

のぞみBは現役時代の時間軸の存在である都合、のぞみAのように『優秀な学業成績』は修めていない。現役の後期であるので、平均に追いつくかどうかというところにまで向上はしていたが。

 

「大人になって、成績が伸びたってところか。高校以降は学業優秀って言ってたし」

 

「え!?ほ、本当ですか!?」

 

破顔し、嬉しがるのぞみB(ドリームキュアグレース)。A曰く、『大学は教育学部だったし、中学教師になれた』という事なので、高大の七年ほどは成績優秀者であったのだろう。ただし、生来の天然は変わらず、卒論を来海えりか(キュアマリン)に手伝わせたと告白している。

 

「ドジは変わらずで、キュアマリンのえりかに卒論を手伝わせたそうだぞ」

 

「えーーーー!?」

 

「転生した後も、日常じゃドジるから、有事に強いタイプなんだよ、お前。携帯の充電忘れて、コンビニに駆け込んだとかするし」

 

「うぅ。そっちの私、転生しても、それするのかぁ……」

 

「こればっかりはな。仕事はできるが、ドジはするってヤツ。三つ子の魂、百までも…ってあるだろ」

 

のぞみは現役時代の時点では携帯電話は持っていなかった。A曰く、『高校以降に買い与えられた。自分で買ったのは、大学の時が初めてである』とのことである。また、少なくとも『オトナプリキュアの世界』は現役時代の後に分岐した未来の一つであり、プリキュアになれなくなるのは、オトナプリキュア世界特有の現象だという。

 

「2023年のプリキュアには、大人でプリキュアになったのもいるし、第三のお前曰く、教育実習の時の教え子らしいぞ?」

 

「嘘ぉん!?」

 

「よく考えてみろ、教育実習の教え子だぞ。お前が教えてた頃に14歳前後なら、それから5年もたちゃ、身体的には大人だ」

 

「た、確かに」

 

そのため、オトナプリキュア世界は『人類が滅びに向かうはずの世界線』である事が示唆されている。また、プリキュアを続けながら、『個人としては不幸になった』世界線もあったのだ。それがAの転生前の世界だ。

 

「ココには言ってないが、お前達は一度、疎遠になる未来が発見された」

 

「!?ど、どうしてですか?」

 

「お前が大人になるだろ?向こうは王位にあることをその頃に強く意識しだすんだ。それで向こうは身を引こうとする」

 

「そ、そんな!?」

 

「そう思うだろ?俺も思わず、ぶん殴っちまったよ」

 

黒江はのぞみAの前世での不幸の原因がココの個人よりも国を選択した結果であることを知った際に『思わず、ぶん殴った』と告白する。ココ自身もその結果、のぞみが負の連鎖に陥った挙句の果てに、彼女の二人の子が身内同士で殺し合うという結末に愕然とし、その責任を痛感した。それが転生後に結婚に踏み切った理由であったと。

 

「大権のある王位はある意味、個を犠牲にするも同然のものだからな。だから、地球では時代が進むと、議院内閣制が発達したんだが、あの国は平和だったから、その余地がなかった。ある意味じゃ不幸だ」

 

「向こうのココはその後悔が…?」

 

「お前がシングルマザーとして産んだ二人の子供が、プリキュアとダークプリキュアに分かれて殺し合うってのが、お前の別個体が辿った人生の幕引きと知ったら、な。それで、王位の柵が無転生でなくなったことで、ようやく踏ん切りをつけたんだ」

 

「……!!」

 

「それに、仕事も上手く行かなくなったそうで、それでプリキュアである事に存在意義を求めた。個人の不満の捌け口を戦いに求めた、いや、そうせざるを得なかったというべきか…。ココの一つの世界線での罪は、お前をそういう心境に追い込んでしまったことだ」

 

黒江はのぞみAの過去生における不幸の始まり、その原因がココにあることを教える。それがAが転生後、過去生での恋の成就と想い人との再会を(当初は)諦めていた理由だ。

 

「転生したら、したで、王位とは別の意味での使命を帯びるってのも、皮肉の効いてる話だが…。お前らが戦った後に、世界線の分岐ポイントがあるのが確認された。それでお前らの存在が人々に忘れさられ、自分達の幸福だけを追及していく発展を人々が選んだ結果、地球が滅ぶ。逆に、毎年恒例でプリキュアと悪の組織や存在が出現していく世界線のほうが『平和に発展していく』んだから、皮肉なもんだ」

 

「そんな………」

 

「喉元過ぎれば熱さを忘れるという格言があるだろう?ココがドリームコレットを復活させて、お前たちを戦いから解放させたいと願ったかもしれんが、それが理由で、地球人が享楽に走って、自業自得の最期を迎えるっていう世界線がある。つまり、お前らがプリキュア戦士として戦い続けることに、この世界線の地球人が未来まで存続するかっていう事の双肩がかかってるんだよ」

 

「ココが聞いたら、顔を真赤にするかもしれんが、戦争に次ぐ戦争と宇宙移民が同時進行の世界線を思えば、遥かに穏便な世界だよ、この世界線のまとまりは」

 

ココはこの世界線では、『自分が別離を選んだことで、のぞみの人生を狂わせた』世界線の事を知らされるので、相当に良心の呵責に苦しむだろう。

 

「あなたの世界に転生した私……その存在が羨ましかったのも事実なんです。自分たち以外にも、敵と戦ってる人たちがいる。私達が及びもつかないような力を以て…。しかも遥かな過去から延々と…」

 

「古くは仮面の忍者赤影、怪傑・風雲の両ライオン丸……変身忍者嵐……仮面ライダー、スーパー戦隊…宇宙刑事……その技術提供で生まれた派生ヒーロー達……。探せば、いくらでも名前が出てくる。キューティーハニーはその中の女子ヒロインモノの先駆けだ。今度会ったら、挨拶しとけ。キュアミントの姉貴の転生体でもあるから」

 

「それなんですけど、なんで、アンドロイドに魂が?」

 

「日本は他の国と違って、万物に魂は宿るって考えに抵抗がない。そのおかげもあっての奇跡だな。体は機械だが、心は人間。だから、こまちと暮らし始めたんだよ」

 

如月ハニーは秋元まどか(秋元こまちの実姉)の転生でもあるので、こまちを再建した如月邸に招き、共に暮らしている。姉妹で変身ヒロインというのも凄いが、姉が(メタ的意味で)大先輩であったことに、こまちは珍しくぶーたれたと、黒江は教えた。また、キューティーハニーとして、フルーレの名手である事は『妹の親友である』水無月かれんに憧れられる理由となったとも。

 

「かれんさんが……意外だなぁ」

 

「フェンシングでいいところまでいったそうだな?かれんは」

 

「今年の春の終わりに、街内でのフェンシング大会があったんですけど、その大会で準決勝までいったんです。かれんさんは医学部目指すから、若いうちにしか出来ないから…って」

 

「平成後期の15歳の台詞じゃないぞ、それ」

 

「あれ、平成って終わるんですか?」

 

「この時代の10年後くらいに、お上が退位なされて、元号が変わるんだ。その頃には、お前も25歳だ」

 

「第三の私がそんくらいなんですよね?どんな感じだろう」

 

「少なくとも、仕事のストレスで酒飲みまくったせいで、早くも肝臓がガタついてるそうだぞ」

 

「嘘ぉ!?25で!?」

 

「そんくらいストレスかかるんだよ、平成末期~令和の教育現場」

 

大人のぞみは肝臓が『20代で黄信号になる』有様なくらいに酒飲みになっていた。だが、1000年女王達の力で健康な体に戻り、現在はキュアプレシャスに食事を管理されているとのこと。

 

「後輩のキュアプレシャスに食事を管理されてるそうだぞ、かれんのいいつけで」

 

「オーマイガー!!後輩の手を煩わせるなんて、キュアドリーム一生の不覚……」

 

「お前、現役時代からノリよかったんだな」

 

「ノリ良くなきゃ、プリキュアの技名を叫んでられないですって。あ、この機会だから、聞いておこうっと」

 

「なんだ?」

 

「わたしが昏睡状態になってた時、そっちの自分自身が代理で過ごしてたんですよね?どうなってたんです?」

 

「お前は寝かされていたからな。話しておこう。構いませんね、大介さん?」

 

『ああ。俺も協力したからね。構わんよ』

 

――それは争乱が起きる前の時間軸のこと。のぞみAにとっては、束の間の『現役時代の追体験』と言える出来事であった。話を要約していくと、こういう流れであったという。

 

 

・シャドームーンに腕の骨を砕かれ、変身を解いたら『使い物にならなくなる』事がわかったため、黒江、のぞみA、コージ、光太郎(RX)の四者の合議で『キュアドリームの状態のままで治療を施すという手段が講じられた事、プリキュアになっている者を(治療のためだが)寝かせた状態にしておくには、通常の医薬品では不可能だと見込まれたため、ウマ娘・アグネスタキオンの調合した特製の麻酔薬が使われた

 

・のぞみAは束の間とはいえ、現役時代の生活に戻ったのを心底楽しんでいた

 

・その最中、春日野うらら(キュアレモネード)が風邪で喉を痛めてしまい、折角の飛躍の機会やも知れぬコンサートをフイにする危機があったが、既にナリタブライアンと本格的に入れ替わる事が決まっていた都合、交流と特訓で歌唱力を大きく増していた彼女が(デューク・フリードが治療薬を運んでくるまでと、治療薬でうららの体調が回復するまでの繋ぎで)キュアドリームの姿で場を持たせた事があった事

 

・そのコンサートでは、咄嗟の判断で『Dynamite Explosion』、『NEW FRONTIER』、詳しい出自などはぼかしたが、『unbreakable』(オグリキャップが現役のラストランで披露した楽曲)、『DREAM JACK』(フジキセキの現役時代の持ち歌。フジキセキの現役期間の短さもあり、幻の曲扱いだという)、『シャドーロールの誓い』、『BLAZE』(共に、ナリタブライアンの持ち歌)、『感情ノ黎明』(同・ナリタタイシン)と続き、『ワルキューレがとまらない』、『Shining☆Days』で〆た事

 

・いくら『からくり』を知らされたとはいえ、音痴であったはずののぞみがプロ級の歌唱力に飛躍している事に、美々野くるみ(ミルキィローズ)が腰を抜かした

 

・元々、絶対音感を持っていたので、それを上手く使えるように正規の訓練を施したと言われても、明らかに別人級の歌唱力なので、事後に美々野くるみに『どーいうからくりよ!!』と詰め寄られたこと

 

・うららも、デューク・フリードの運んできた治療薬で治癒し、その流れを殺さずにコンサートがこなせた事、プリキュアの応援を受けたという(実際には、自分がメンバーだが)話題性もあり、人気に拍車がかかったこと、その後日にライブアルバムとして、一連の流れが(編集の上で)リリースされたとのこと

 

・ドリームの披露した一連のナンバーは後日、スタジオで編集され、春日野うららのトリビュートアルバムの楽曲の一つとして収録され、ついでに、うららが歌ったバージョンも作られたとのこと

 

 

「えーーーーー!?そっちの私、その気になればだけど、プロになれるじゃないですか!!

 

「広報業務で必要だから、仕事でやらせたんだが、こっちの世界線だと、絶対音感が隠れててな。それが開花したんだ。そうなれば、後はトントン拍子に上手くなってった」

 

AはBにはない才能として、『エアギター』と『絶対音感』を持っていた。エアギターのほうは動画のアップロードでの小遣い稼ぎの他、『エアギター選手戦』で好成績をマークできる腕前であった。(60年代のサーフミュージックや70年代以降のロックナンバーなどを得意とする)絶対音感の開花と歌唱訓練の成果もあり、歌唱力も改善された。その最初のお披露目(一応はプリキュア活動の一環だが)となったわけだ。

 

「うららもがんばってました?」

 

「おう。人気に拍車をかけた。舞台女優へのいい足がかりになったと思うぜ。アイドルがキャリアアップで女優に転じた例は昭和の昔から多いし」

 

「うらら、お母さんが舞台の大女優(2008年当時の常識なので)で、お母さんみたいになりたいって言ってるんです。そっちの世界線だと、どうなんです?」

 

「平時になれば、な。あいにく、俺の故郷は戦争の真っ只中でな」

 

その言葉から、春日野うららはA世界では、平時になれば、俳優業を兼業する旨を公言している事が窺える。また、リベリオンとの戦争は当分の間は終わらないことを実感しているようである事がわかる黒江。

 

「平行世界を股にかけて、連中と戦ってるからな、俺たちは。お前もだが」

 

「そっちの私、どんくらい偉いんですか、軍隊で」

 

「エリートの最精鋭部隊の幹部だぞ?そんじょそこらの兵隊や下士官がコスチューム見ただけで最敬礼するくらいには偉い立場だ」

 

佐官であるのもそうだが、ダイ・アナザー・デイ、デザリアム戦役での武勇と武功から、連合国内部で『両戦役の英雄』として扱われているため、実はそんじょそこらの兵隊たちからすれば『雲の上の存在』である。扶桑軍の軍規引き締めも任務であるため、その階級と戦歴は大いに助けになっている。長年の戦時状態で扶桑軍の軍規は弛んでおり、兵士が一般人に狼藉を働く事もままあった。日本連邦の大衆や政治家に嫌われ者の憲兵の任務を実質的に代行する権限が与えられているので、実は平時でも、扶桑軍で好きに過ごせる権利と権限を持ち合わせているのだ。

 

「うへぇ……」

 

「お前は戦歴が長いだろ?それで古株の下士官連中も黙らせられる。日本の軍隊じゃ、メンコの多さが星の多さ以上に『関わってくる』んだ」

 

如何に将校であろうと、経験がなければ、古参の下士官に舐められるのは、世界の軍隊の常識だが、のぞみの経験値の多さと転生後の実績は扶桑の軍隊生活で大いに役立っていた。プリキュアとしても、後輩に敬意を払われるくらいの立場(ベテラン)であるので、現役時代よりは(仕事の都合で)上下関係は多少なりとも意識している。それを教えられたわけだ。

 

「前にお父さんが『フルメタル・ジャケット』見てたけど、ああいう感じなんですか」

 

「コアなの見るなぁ、お前の親父さん……」

 

妙にマニアが唸る、コアなタイトルが出たため、思わず、そういってしまう黒江。

 

「あれはアメリカ海兵隊で、しかも、ナム戦の時代設定だったからな…。それにしても、お前の親父さん、なんで知ってんだよ、フルメタル・ジャケットを。あれは戦争映画好きでも、一発でタイトルが出るか微妙なくらいにはコアだぞ?」

 

「さー…。絵本作家の仕事とは関係ないはずだしなぁ。サバゲーでも、若い頃にしてたのかなぁ?」

 

それは謎だが、騒乱にもつかの間、平穏が訪れたことを示す一幕であった。

 

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