ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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オムニバス編です。


第六百二十九話「様々な状況 2」

 

 

 

――史実には知ってはいけない類のものもある。サイレンススズカやライスシャワーの史実がそれである。扶桑を振り回したのも『敗戦したほうが経済・文化的に栄えた』という史実の情報であった。とはいえ、後者は扶桑の混乱のもとであり、軍部に大打撃を与えた。日本は軍部の鼻っ柱を粉々にする程度には軍部の名誉に打撃を与える意図があったが、結局は扶桑自体に社会的混乱をもたらすのみであった。元の大陸領の住民は数千万いたが、その住民は1940年代の日本列島のインフラと農業の状況で養えるものではない。21世紀時点でさえ、日本列島で養える人数は千万単位とされているので、元の大陸領出身者は戦争で合法的に死んでもらうか、南洋に再移民してもらう。それが日本の案であった。とはいえ、引き揚げ者から後の世のスターが生まれた例もあるので、先祖の地に帰る事は規制しないことで落ち着いた。その兼ね合いで、扶桑の大陸領は1949年から『店じまい』が始まったのである。戦国期以来の財宝等の回収作業は1980年以降も終わらない見込みであったため、施政権の放棄は1991年頃を目処にするとされた。この決定は扶桑を大陸国家から海洋国家に回帰させることを意味していた――

 

 

 

 

 

 

 

 

――連合艦隊の既存艦艇はダイ・アナザー・デイの後は『欧州派兵の可能性よりも、太平洋戦争での戦闘力を保持する』事が重視され、航続距離延伸の改造と居住性重視の改設計は結局、ダイ・アナザー・デイ後に殆どが差し戻される事になったが、水雷装備の再装備などの再改造で船体に無理のかかった艦も多かった事から、既存艦の多くがダイ・アナザー・デイ後に退役していった。特に巡洋艦は対空装備は増やされていたが、水雷装備を撤廃していた故に、M動乱とダイ・アナザー・デイで数を減らしたからである。欧州派兵の可能性減少から、既存艦に無理をさせる必要がなくなったのも、新型艦への入れ替えの大義名分にされたのだ。これも海軍の活動の不活性化に繋がった。その代わりに空軍は酷使され、新旧の機材がマルチロール化され、使用された。その影響は1949年の戦艦部隊のオーバーホールで顕現。海軍は開店休業状態が半年以上は続く事になった。空軍は機材の消耗が激しいのもあり、機材の更新速度が異常な速さとなり、わずか数ヶ月でF-4EJ改の配備が進んだのである――

 

 

 

 

 

――他の国が戦後第一世代機の配備にも四苦八苦している中、全軍に超音速ジェット戦闘機が配備されつつあった扶桑は異常と言えた。F-4はマルチロール機の先駆けであり、その搭載量で旧来の双発爆撃機を駆逐していった。日本連邦では早期に『その次』が用意されつつあったので、F-4は爆撃任務を主体にして運用され、(結果的に)カールスラント空軍の高官の多くが抱いた『電撃爆撃機』の構想を技術発展が最良の形で実現させたのである。更に、日本連邦はF-15系列も実用試験段階に入りつつあった。ここまでになると、他国は数十年単位で『手も足も出ない』。日本での最終的な改装と同じ状態で生産させるからで、魔女装備を通常兵器が追い抜いてしまった時代の本格化の証明と言えた――

 

 

 

 

――ストライカーの利点と言える『小回りの良さ』は1949年でも通じたが、『重装甲の米軍機を貫ける火力を持たない』(魔女は7.92ミリ~12.7ミリ銃を好む傾向があった)事はダイ・アナザー・デイで大問題となった。20ミリ機銃以上でなければ、P-47には傷もつけられなかったからだ。P-51は意外に脆いが、P-47は通常の機銃(20ミリ以下)では滅多に致命傷とならない。それは魔力による装甲の弱体化効果が起こらない敵への魔女には最悪の相手となった。また、陸軍航空総監部、海軍航空本部の双方の技術将校やエリート士官は日本軍時代の恨みを持つ日本義勇兵に謂れなき暴力(金属バット、鉄パイプなどでのリンチ)を受けることが44年年末~45年夏までの半年に頻発。黒江たちが兵器開発でも指導的役目を担っているのは、一連の流れで、双方の機関のエンジニアや将校が(ショックのあまりに)大量に離職したからである。MSやコンバットアーマーなどの導入に抵抗がさほどなかったのは、既存兵器は『史実で成功した兵器を小改良すればいい』という方針に意気消沈した、軍の技術将校と軍属のエンジニア達のせめてもの抵抗であった――

 

 

 

 

 

――日本連邦は『余った』雲龍型航空母艦を様々な用途に転用していった。同艦型はダイ・アナザー・デイ時点で23隻も存在していたが、紫電改・流星・彩雲に対応しきれないと評価され、結局は零戦・彗星・天山を搭載し、ダイ・アナザー・デイに参加した。とはいえ、後期艦は『工事の質』を疑問視されており、全艦が空母として参加したわけではなかった。輸送艦として従事し、潜水艦に沈められたものも存在する。また、肝心の空母としても早々に陳腐化したため、日本は全艦を『新式の肥やしにする』方針であった。だが、雲龍型航空母艦をスクラップにしたところで、その代わりにする航空母艦が量産できるわけでもない。また、雲龍型航空母艦の大きさでも、レシプロ機並の数を積めるコア・ファイターの登場もあり、その運用試験艦として『鋼材の質の良い』初期の六隻のみが(軽空母の撤廃の穴埋めで)現役継続。後は他用途に次々と転用されていった。元の暁部隊の輸送船の能力不足の露呈による輸送艦の確保のためでもあった。レシプロ機がダイ・アナザー・デイを境に減勢され、ジェット機に世代交代した結果、雲龍型航空母艦はコア・ファイターを載せられる船体強度が無いと見なされた個体は別用途に転用されていった。とはいえ、初期の七隻前後は工事簡略化がなされる前の竣工であり、質の良い鋼材で造られていた。その七隻のみはコア・ファイター運用試験艦という名目で空母運用が続けられた。また、日本式空母でご法度に近かった『露天駐機』も(機体の製造工程の近代化などを名目に)行われるようになっていった――

 

 

 

 

 

 

 

――空母の近代化で『装甲空母』が徒花であったことが突きつけられはしたが、生存性向上を名目に『一定の装甲を持つ』事は続いた。艦載機の大型化が極度に進展したため、空母の保有数は大戦前より減らされる方針であったので、強襲揚陸艦の航空運用で数を補うこととされた。魔女の軍事的有用性の低下はこうした方針変更にも表れていた。艦載機のマルチロール化も進んだが、艦の製造が追いつかず、航空機の製造も追いつかないため、艦によっては『A-4』が戦闘機の役目を代行するのもざらであった。同機は扶桑で特に評価され、瞬く間に大半のレシプロ在来機を駆逐した。時代的に『ジェット機の黎明期』であった1940年代終わりに、成熟期に生まれた『A-4』を持つこと自体が反則であった。ブリタニアでさえ、シービクセンを改良し、機銃を搭載した独自モデルを作るので精一杯の時代であるからだ。ブリタニアが空母機動部隊にこだわったのは、日本連邦の海軍力=連合国海軍の軍事力と同義と見なされるのを恐れたという心情、植民地が完全な独立を拒んで、ブリタニアの傘下であり続けている事による財政面での余裕も理由であった。戦艦こそ減勢されたが、依然として九隻前後は軍籍に残っていたし、空母も本来用途に転用され、史実での新型も造られ始めたからである。潜水艦が史実ほどは重要な兵器と見なされていない故である。空軍も弾道ミサイルが史実ほど造られないおかげで、通常装備の充実度は低下せずに済んだ。とはいえ、既存兵器の(史実での)後期生産型に切り替えることでの財政負担も大きく、同国は世界の主導国としてのポジションからは陥落していく。魔女大国としての優位性も低下した(グローリアスウィッチーズの醜態が報じられたため)からだ。ダイ・アナザー・デイはブリタニアから覇権を奪い、カールスラントからは国家としての実態を奪った。ロマーニャからは高い軍事力を。リベリオン一国だけで、欧州の複数の大国の軍事力を圧倒したという事実は同国が(本来なら)次代の超大国と化するはずであった事の証左であった。日本連邦はその代役をさせられ始めたと言える――

 

 

 

 

 

 

 

――魔女の世界での欧州の権威が凋落した理由はもう一つあり、日本連邦の警告を国家と軍指導層が本気にしなかったのである。ダイ・アナザー・デイで、ロマーニャとヒスパニア陸軍がたった数週で無力化させられた際、ガリア指導層は陣営の鞍替えすら検討した。だが、日本連邦が死闘を展開し、圧倒的大軍を撃退してしまうと、完全に国際政治の主導権は日本連邦の手に渡っていった。その扶桑は人的な意味での黄金期であった『事変とその後の数年の世代』からの世代交代に失敗した。途中まで進展していた世代交代を政治的都合で打ち砕かれたからである。日本としては善意で行ったが、それが魔女の根幹に関わるというので、世代交代の否定に繋がった感は否めない。魔女の人員構成はこれで両極端化。凡百の新人を前線に出せないという問題が軍を苦悩させる事になった。更に、魔女だけを艦載する構成がご法度となり、空母から発進促進装置が撤去された事から、その代わりに強襲揚陸艦が充てがわれたが、軍事的実効性の低下で疑問視されている。通常兵器の急速な発達は彼女らの居場所を奪ったわけだ。扶桑軍も航空関係者のうち、海軍航空関係者は(史実で特攻を考えたことへの制裁として)多くが失脚していった。また、志賀のような誇り高い中堅は『政治かぶれの厄介者』と扱われた。彼女自身が『海軍航空の伝統』にこだわっていたのが仇となったのである。結局、志賀自身も歴代の連合艦隊司令長官らの前で天皇に諭されるという醜態を晒してしまい、以後は出世コースから外れたので、海軍出身の航空関係者は源田実などの『自衛隊の高官になった経歴』がある者以外にとって、1940年代後半は冬の時代であったと言える――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――航空機の低視認性塗装は魔女に大不評であったため、魔女の世界の軍用機は『ド派手な塗装』で識別する事が通例となった。64Fのエンブレムがこれ見よがしに大きく描かれているのも、友軍の誤認防止が理由である。旧世代の高射砲が(怪異への直接打撃力確保の観点から)生き残る見込みでもあったからだ。VT信管が導入されたりした結果、誤射で撃墜の可能性が増したのも大きい(太平洋戦争で実際に起こる)。魔女の覚醒数が『1945年八月十五日』を境に、大きく低下した(史実で戦前日本が実質的に終焉した日)のも打撃となり、扶桑の魔女は(一部のエリート以外は)苦難の時代を迎えた。在籍者の平均年齢も大きく上がってしまった(14.5歳から25.8歳へ)上、ナショナリズムの高まりを強引に封じた結果、銃後と戦線の落差の激しさに失望する者が続出する有様である。日本義勇兵の割合が高まるのは、プリキュア達の活躍が報じられ、触発された者たちの志願が増えたからである。この大戦で志願した日本義勇兵が皮肉な事に、扶桑の魔女の培ってきた様々なノウハウを維持するのに貢献していくのである。新規育成枠の6割以上を義勇兵の占める時代は長く続き、史実で自衛隊の生え抜きの増加が軌道に乗る『1960年代初頭』までに及び、大戦世代が長らく、現場の屋台骨であり続ける羽目となるのだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――この現象は『史実で日本の国防組織が解体され、再建されるまでの時間』に相当する時間の間、継続。結局、事変当時からの古参の魔女達が(1945年当時に『若齢』の部類であった事から)否応なしに現役の継続となった。事変世代には、既に人材育成機関に回っていた者のほうが多かった時期だが、人材育成機関の縮小と戦線の風雲急から、殆どが前線勤務とされた。クーデターの余波で『魔女の部隊の稼働率』は絶頂期の4割弱にまで低下しており、有名無実化した部隊は多かった。前線勤務に耐えられる気概と能力の魔女が大きく減少してしまった結果である。そのため、多くの魔女の航空隊が解体されるに至った。皮肉な事に、異端児である64Fが『魔女の権利の維持』の防波堤と見なされるように変貌したのである。科学の発展と日本経由の異能の導入は『胡座をかいていた』魔女の立場を決定的に悪化させたのである。この状況は1954年以降に改善され始めるが、それまでに長い時間を要するのである。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦経由で、地球連邦軍はファウンデーション王国のメタ情報を入手。それをオーブ首長国連邦へ通達した。そのため、改修中のストライクフリーダムとインフィニットジャスティスなどへ『対フェムテク装甲対策』が施されることとなった他、武装の理論がM粒子前提の高出力のものへと変えられた。また、機体構造が変更され、二次・最終装甲に『ガンダリウムε合金スーパーセラミック複合材』が採用された。フェイズシフト装甲を突破しても、実体弾に無敵に近い物理強度を持つガンダリウムの装甲で搭乗者を護るという思想である。未来世界で譲渡可能な装甲技術で最高グレードのものであった。また、ミネルバ級二番艦『ミレニアム』は建造開始段階で設計変更が施されることとなった――

 

 

 

 

 

――未来世界の超戦艦(ヤマト型、アンドロメダ級など)たちの影響はオーブ首長国連邦に影響を与えたが、すぐに地球連邦軍のペガサス級強襲揚陸艦やラー・カイラム級機動戦艦に比肩する性能の軍艦は作れない。また、オーブ首長国連邦の国防軍自体は元々、小規模な軍隊であった事から、ザフトや連合軍などの大規模な軍隊との有事には、地球連邦軍の軍事力頼りな状況ではある。オーブ首長国連邦はTMSを好んだ事から、Zプラスとリゼルがムラサメの上位機種として採用された。地球連邦軍のMSの外観に苦言を呈する将兵も多かったが、外観で勝敗が決まるわけではないので、受け入れていった。また、地球連邦製OSのさらなるデバック作業を行うという対価で地球連邦軍の協力を取り付けた彼らは着々とファウンデーション王国の蜂起を想定した準備を整えていった――

 

 

 

 

 

 

 

――プラントは二度の大戦で致命的な人的損害を負った事から、穏健派・主流派共に『戦争があと一回でもあれば、プラントは国家運営の破綻をきたす』という見解で一致していた、。前政権下で重宝されていた『シン・アスカ』や『ルナマリア・ホーク』を厄介払いするつもりであったのは、エースパイロットがいることで『ザラ派の残党』がクーデターを考えるのを抑止させる思惑による。更に言えば、地球連邦軍の方面軍旗艦『ブリュンヒルト』の圧倒的力に屈していた。同艦の性能は(波動砲を積んでおらず、武装が内装式であるのを除けば)アンドロメダ級をも凌駕しており、ザフト軍最大のゴンドワナ級空母がホビーに見える管制性能も有している。さらに、並の空母を超える搭載能力。更に、ジェネシスすら遮断(恒星間宇宙船なので)する船体構造と核ミサイルを物ともしない装甲。その超兵器ぶりは戦争抑止力となった――

 

 

 

 

 

――コズミック・イラは『宇宙クジラの発見で既存宗教の権威が崩壊し、宗教的な倫理観での抑えが効かなくなった』世界でもある。未来世界が『イスカンダル星やテレサなどの登場で、宗教の権威が逆に保たれた』のとは対照的であった。(これは後にシャルバートの秘密に関しての秘匿にも一役買った)その弊害により、民族浄化レベルの虐殺にも躊躇がない。地球連邦軍はその武力で地球連合、ザフト軍の双方の過激派を掃討すべく、ジャンク屋組合もオーブ首長国連邦経由で味方につける形で、世界秩序の再編を図った――

 

 

 

 

――結局、宗教の抑えが失われた場合の人類は破滅的思考に走りやすいというデータをコズミック・イラは提供する事になった。コズミック・イラの国家指導層はそのことを自覚せねばならなかった。二度も民族浄化級の虐殺を伴う大戦を経験した後はどの国も、『正規軍として軍事行動を起こす』力は残っていないからだ。例外と言えるオーブでも、大国と正面切って決戦ができる力はない。地球連邦軍は地球連合、ザフト、オーブ。その四つの全てと一方面軍だけで戦争が可能である。オーブが地球連邦軍に恭順しているのは、その力をカガリ・ユラ・アスハはよく知っているからである――

 

 

 

 

――ザフト脱走兵(元のザラ派将兵)のテロ行為は第二次大戦後も続いたが、元々が小規模であった事、地球連邦軍の参戦による練度の逆転(ザフトの古参はスタンドプレーに走りがちであった)が原因で、地球連邦軍に倒され、次第に掃討されていった。地球連邦軍で旧型機扱いのジェガンにさえ満足に抗しえないからである。更に言えば、連邦軍最新鋭の『ジェイブス』はオーソドックスなジム系ながら、ザンスカール系の異常な高性能機を仮想敵にして設計されていたので、性能は前型の比ではない。持ち込まれた少数機が倍する数の『ジンハイマニューバ2型』を無傷で殲滅するなど、確かな性能を持っていた。更に、ガンダリウム合金の装甲は廉価なグレードでも『斬機刀』を受け付けないという強度を示した。ザフト、連合の右派は連邦軍の武力を恐れ、ファンデーション王国を利用し、殲滅を試みるのだが……――

 

 

 

 

 

 

 

――地球連邦軍はコズミック・イラへの介入は片手間であり、力を入れているのは、オトナプリキュア世界での決戦であった。白色彗星帝国の猛攻により、既に米西海岸は火の海であり、さしもの米国も西海岸での抵抗力を失いつつあった。そのため、残存戦力は西海岸の放棄を決定し、撤退を始めていたが、そこに地球連邦軍が介入した格好となる。フリーダム、デスティニー、インパルスは初戦で早くも活躍。元々、ハイマットフルバーストによる殲滅を想定されていたフリーダムは特に活躍した。格闘戦向きの機体ではない(キラ・ヤマト機の格闘での強さは設計の良さ、搭乗者の技量でやれたにすぎない)とされるが、キラ・ヤマトがそうだったように、技量で補える範囲のものであるので、のぞみもそれで補っていた。のぞみ機は歴代ガンダムの構成技術でリファインされているので、機体性能はオリジナルより上の次元にあった。装甲は完全なフェイズシフトではなく、ガンダリウムを使った箇所が多いので、機体の重さもオリジナルの半分程度である。そのため、機体は普通の塗装で彩られている――

 

 

 

「一度バラして、構造を分析した後に、未来世界の規格品に置き換えて、組み立て直しただけで、こんなに性能上がるんですか?」

 

「未来世界はMSの研究が完成されてるからね。それに、元から核融合炉を前提に設計されてるから、部品の耐久力もグンと上になる。もっといい合金のガンダニュウムもあるけど、あれはもっとかかるから、金」

 

コズミック・イラから持ち込まれていたデスティニーとインパルス。デザリアム戦役の際に、未来世界の規格品に所々を置き換えて組み立て直され、使用された。そこから部品の全面的な交換がアナハイム・エレクトロニクス社の手で行われ、投入の運びとなった。未来世界の技術で軽量化され、マグネットコーティングの導入などがなされている。その関係上、以前より動きが鋭くなっている。この時のインパルスは通常の操縦系のモードで動いてはいるが、脳波操縦の要素も取り入れられたので、以前より動作がきめ細やかであった。戦闘機と艦艇が相手とはいえ、細かい動きができるのは良いことだ。

 

「日本が戦場になったら、自衛隊は過労死続出だろうけど、ここはアメリカだしね。いつでも休める」

 

「なんでですか?」

 

「コズミック・イラじゃ、どうだか知らないけど、日本ってのは軍人に冷たいんだよ。昔の軍部の行いのせいだけど。二次大戦の後はエタヒニン扱いの時もあったくらいさ。自然災害が増えて、領海侵犯が増えた時代に多少改善はされたけど、エンジントラブル起こしたせいで、自治体に文句言われるからね。どんなに整備しても、何万分の1の確率でトラブルは起きるからね。飛行機とかは」

 

のぞみは『オトナ』世界では教師の道を歩んでいたが、自分が闘っていた名残りで、戦後日本の軍事嫌いの風潮に疑問を持っていた。おそらく、この世界では、自衛隊の必死の防戦を評価する層と、住民に犠牲を出したと断罪しようとする層が抗争を起こすだろう。また、自分たち(プリキュア)が宇宙からの侵略に組織立って動いていないのも、日本人に断罪されるだろうとも考えている。

 

「この世界の『ダンナ』はあたしらが普通に暮らすのを望んでるけど、平和でなきゃ無理だし、そもそも、この世界じゃ、あたしに不義理をやらかしたしねぇ」

 

大人のぞみはココに不信を抱いていた。四年も会っていない上、自分から戦う力を奪ったのでは?という疑念があったからだ。ココも『まさか、宇宙の帝国が地球を滅ぼしに来るとは……』と愕然とし、自分の願いは愚行だったのかと嘆いている。さらに、1000年女王から『のぞみは躊躇なく、戦いに身を投じた』と伝えられ、『ココはのぞみたちを戦いから解放してあげたかっただけココォ……』と懺悔し始める有様であった。このように、オトナ世界では、二人は結ばれない可能性が大きくなっている。

 

「この世界じゃ?」

 

「ココが考えを改めない限りは結婚できないさ。それに、あたしは前と違う体になっちまってるからねぇ。あなたの知ってるあたしと違って、独身貴族かもね」

 

大人のぞみはシンに『独身貴族でいるかもしれない』と冗談めかす。それは自身の変容が原因であると同時に、教職を捨て、事実上は職業軍人に転じたからでもあった。

 

「このまま、サンフランシスコを解放するよ!」

 

フリーダムのハイマットフルバーストを活用しつつ、のぞみは二人に指示を飛ばす。

 

「了解!」

 

こうして、三人は獅子奮迅の活躍でサンフランシスコを解放せんと奮戦する。三機のポテンシャルの高さの証明でもあった。本来は地球国家を打倒、あるいはコーディネイターの足下に屈伏させるために開発された兵器が、それと相反する『地球滅亡の危機から人々を救う』ために使われるという光景はこれ以上ない、プラントの技術者(とりわけ、旧ザラ派寄り)への皮肉であろう。設計ポテンシャルの高さの証明でもあるが、量産機と高級機の間の格差の大きさが顕著なコズミック・イラの象徴でもあるので、未来世界のガンダムタイプとその他よりも露骨に過ぎると、未来世界の技術者たちは顔を顰めたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――『当人が一流でも、子ども達はへっぽこ』という例は人間のみならず、競走馬(ウマ娘)にも多かった。親も子も一流であるのは、サンデーサイレンス系を始めとする外国産種牡馬の特権のようなものであったが、外国産種牡馬でも、ブライアンズタイム系の子孫は孫の代がへっぽこであった例が多く、先細りとなっていた。代表産駒のブライアンの早世も打撃となった。このような例は80年代以前の日本で良血とされていた血統でありがちなことでもあり、史実では、シンザン、シービー、ルドルフ、ブライアン。この四代の三冠馬は『子、あるいは孫の代がへっぽこであったので、サイアーラインが断絶、あるいはその寸前』という状態であった。それはウマ娘の世界でも同じであった。少なくとも、シービー、ブライアンは直接の子孫を残すつもりはないからだった――

 

 

 

 

――かくして、シリウスシンボリの出演したCMは大反響。往年のダービー馬の転生した姿である事も、驚きを以て迎えられた。粗暴な言葉づかいではあるが、名家出身である故に、TPOは弁えていた。ゴルシには『糸の幽波紋(スタンド)使いそうな声だぜ』と、からかいの対象にされている。本人もその自覚はあったようで、シンボリ家の集まりでのかくし芸にしているという。ルドルフと違い、とっつきやすい(実際はルドルフのほうが人当たりがいいが、『皇帝』の二つ名と現役時代の栄光は、その人物像を錯覚させるのに充分であった)そのルドルフは寮で39度の高熱で寝込む羽目となり、『新型ウイルス』への罹患も確認され、面会謝絶の有様であった。その間の学園の自治は『有力ウマ娘たちの合議』で行われた。テイオーはまだ若く、ルドルフのような胆力を持っていないからだ。のぞみAは(ブライアンとして)汚れ仕事を引き受けており、職業軍人として磨かれた(教師であったなら、用無しに近いが)胆力で以て、学外を含めた治安維持を担当していた。シリウスなどの荒くれ者の不在で、内外の不良ウマ娘のたがが緩むことが予想されていたからである。(シリウスが不在かつ、ゴルシとナカヤマが生徒会の役員になった影響もある)案の定というべきか。ある日、河川敷でトレーニングをしていたハルウララ、ニシノフラワーの二名が隣町の不良ウマ娘に絡まれてしまうという事件が発生。たまたま通りかかったジャングルポケットがその場を収めたが、両名は野良レースを走らされたせいで疲労困憊であり、ジャングルポケットは二人のそんな姿に義憤に駆られ、激昂。レースという形の喧嘩を売ってしまったという一報が入って……。

 

 

 

 

――ある日の生徒会室――

 

「ジャングルポケット君。私が許可する。今から、学園の精鋭をよりすぐる。そして、そのチンピラ共をぶちのめす。もちろん、走りでな」

 

「元の会長さん……!」

 

「私も混ぜさせてもらおう。久しぶりに天馬の走りを見せるいい機会だ」

 

「あんた……ルドルフ会長の先代でしょ?まだ走れんスか?」

 

「何、例のアレはシンザン協会長の指示で受けたし、例のトレーニングも始めたのでね」

 

トウショウボーイは波紋法を始めるにあたり、医学的に肉体を『現役最盛期の状態』に戻していた。そのため、能力値は全盛期のそれに戻っている。

 

「先輩、例のアレは手配してあります」

 

「ご苦労、マルゼン」

 

マルゼンスキーを後輩として『顎で使える』あたり、トウショウボーイの在籍した時代が窺える。

 

「現地で着替える。設営は終わっているな?」

 

「手抜かりなく。ダートのウマ娘達を選抜していますが、直に終わらせます」

 

「ゴロツキ共に舐められては、学園の沽券に関わる。我が学園の生徒を愚弄した罪を償ってもらうのはもちろんだが、連中の自尊心をどん底にする。とことんぶっちぎるぞ」

 

 

トウショウボーイ自らも出陣となった、その野良レース。相手方が単なる不良なら、現役組で片付くはずであったが、相手方のウマ娘に大物がいたのだ。マルゼンスキー世代のダービーウマ娘にして、引退後は消息不明とされたラッキールーラ、かつての天皇賞ウマ娘のテンメイが身を窶していたのである。同世代のウマ娘がマルゼンスキーの放つ光に飲み込まれ、学園を多くが去っていた。それは八大競走の覇者であった者ですらも例外ではなかった。つまり、ウララはともかく、実力者(史実ではG1級の実力を誇っている)であったフラワーをも追い込んだのは、G1級の実力を誇っていた彼女たちだったのだ。

 

「医務室が騒がしいそうだが?」

 

「フラワーちゃんのことだわ。セイちゃんが騒いでいるんでしょう。あの子はフラワーちゃんを好いていますから」

 

「彼女はメンバーに入れられるか?」

 

「実力的には充分です。ですが、かかってしまっていますよ」

 

「彼女もレースがあるだろうからな。今回は外しておくのが賢明だろう」

 

 

セイウンスカイは『フラワーの仇討ちだ!』と燃えていたが、次の出走レースまで間がなかった故、出陣メンバーからは外されてしまう。その代わりがスペシャルウィークであった。

 

「マルゼン先輩!」

 

「スペちゃん」

 

「セイちゃんから話は聞きました!私が代わりに走ります!」

 

「その意気や良し。しかし、今からでは、スペシャルウィーク、君はラストレースで着ていた勝負服しか手配できないが、いいね?」

 

「構いません。私は日本の総大将でしたから!」

 

現役を退いているスペシャルウィークであったが、ニシノフラワーとハルウララの一件を聞きつけ、セイウンスカイの代わりに参加を申し出、了承される。ある意味、1974年以降のエース級の競走馬に相当する存在が勢揃いというわけだ。波紋法で能力を最盛期に戻すという反則手段を用いたが、ドリームトロフィーそのものの存在意義が『ただの老人会』と揶揄されていたので、往年のウマ娘たちが往年の力で競い合う。それを世間は求めていたのだ。残酷だが、王者は王者であり続けるしかないのである。

 

 

(元々、ドリームトロフィーは引退する者の福利厚生のため、『名目』を立てて生まれたものに過ぎない。故に、始まった時から揶揄はあった。世代を超えた~云々は綺麗事だ。新しいレースは本気で真剣勝負にしなければな)

 

トウショウボーイはドリームトロフィーとは別枠で『ドリームトロフィー枠と現役の真剣勝負』を構想していた。それが身をやつしたマルゼンスキー世代のウマ娘(マルゼンスキー世代は悲運の世代である)への償いであるとして。そして、かつては天馬とまで言われた自分の復活の狼煙を上げるべく、彼女も現役時代の勝負服に袖を通した。そのため、予想以上に強力な相手方に対抗する(G1級)ため、相応のメンツ(一時代を築けるレベル)で挑むのが礼儀であろうというのが、トウショウボーイの指令であった。ニシノフラワーは天才と評される(史実では桜花賞などを制する)ほどのウマ娘。それを(成長中とはいえ)ぶち抜ける実力を維持している者が身をやつしているのなら、似た立場の自分がどうにかしなければならない。

 

「マルゼン。奴らの素性は秘匿しろ。仮にも八大競走の覇者がゴロツキ同然の行為を働いていたとなれば、協会の不祥事になる」

 

「メジロ家とサトノ家を動かします」

 

「それがいい」

 

この出来事はメジロ家とサトノ家の力で、世に知られる事なく葬り去られる事になるが、マルゼンスキー世代の悲劇が後輩世代に知られるきっかけとなった。だが、マルゼンスキーがこの出来事をきっかけに、『狂戦士』じみたレースへの執着を持ってしまう。同期への贖罪の気持ちが強まったためである。それが巡り巡って、スペシャルウィークの運命を変え、更にはキタサンブラックにも影響を及ぼすのである……。

 

 

 

 

 

 

 

――それから数時間後のとある河川敷――

 

「嘘…だろ……!?」

 

ゴロツキウマ娘たちは、ジャングルポケットが連れてきたメンツに蒼白となった。現役・引退組を問わず、一時代を築いたウマ娘たちが勢揃いであったからだ。一方、ゴロツキのリーダー格の二人のウマ娘……かつてのG1ウマ娘『ラッキールーラ』と『テンメイ』はそのメンツにも臆さなかった。彼女らも曲がりなりにも『八大競走の覇者』であったからだろう。

 

「うろたえるな、お里が知れるぞ。……お久しぶりです、会長」

 

「まさか、貴様たちほどのウマ娘が……な」

 

哀しそうな表情のトウショウボーイ。仮にも、八大競走の覇者がゴロツキ同然に落ちぶれていたからだ。

 

「元・会長さん、こいつらを?」

 

「此奴らはマルゼンスキーの代のクラシックの覇者たちだよ、ジャングルポケット君」

 

「嘘だろ!?チンピラにしか……!」

 

ジャングルポケットはこのコメントであった。対して、バツの悪そうな顔のマルゼンスキー。自分が全盛期に暴れた結果が示されたのだから、当然だ。

 

「フ、お前が子どものお守りとはな、マルゼンスキー」

 

「待って、ルーラー!アタシは……!」

 

「ハードとスピード(ヒシスピード)の仇討ちをこの場でする。たとえ、身をやつしようと、私はダービーウマ娘だからな……」

 

マルゼンスキーの光に呑み込まれ、引退後に消息を絶った同世代のウマ娘は多い。ヒシ一族の嫡流であった『ヒシスピード』が代表例であった。ラッキールーラとテンメイの服装は往時の勝負服であったが、かなりボロボロになっている。学園を辞める時に持ち出した時から手入れをしていないのがわかる。彼女らの悲劇が帰国子女のウマ娘にクラシックレースの門戸を開くきっかけになり、オグリの存在がクラシックの追加登録制度の誕生に繋がったように、クラシックの覇者になろうと、それが世間に評価されるとは限らない。マルゼンスキーの世代とオグリはその事の証明であった。

 

「マルゼン、奴らを倒せ。今回は全力でな。それが礼儀だ」

 

「……ええ」

 

マルゼンスキーは現役時代の因縁が招いた自体に悔恨を滲ませつつ、勝負服に瞬時に着替える。トレセン学園在籍組はいずれも、史実で一時代を築いたレベルの者が選ばれており、ブライアン、シービー(ルドルフが不在なので)、ラモーヌの三大『三冠』を筆頭に、マルゼン、スペ、ポッケ、カフェ(タキオンの代理)、エアグルーヴ、スマートファルコン、コパノリッキーであった。普通のチンピラウマ娘相手では、オーバーキルもいいところの陣容だ。だが、相手方もテンメイ、ラッキールーラを筆頭に、インターグロリア、カネミノブが身をやつしていた。いずれもマルゼンスキーが現役最強であった時代に活躍したが、その後は『忘れ去られていた』者たちで、マルゼンスキー一強と言われた時代の闇の象徴であった。

 

「嘘でしょ……貴方たち……」

 

「いずれも、お前の光に呑み込まれた無念を持つ者たちさ…。世捨て人になった甲斐があった。お前の後輩のお嬢ちゃんにたちには悪いことをしたが、お前を誘き出すためだったのだ」

 

ラッキールーラのボロボロの勝負服、ギラギラな目つきと対照的な『やつれた顔つき』はマルゼンの栄光に呑み込まれたことで、引退後の生活が悲惨なことになった事を示している。最盛期には『同世代で最も体格が良い』と言われたはずの彼女も、引退後はかなりやせ衰えている。マルゼンは最盛期の姿しか覚えていなかったので、声で判別したのだろう。八大競走の覇者であった者であれば、ハルウララは置いといて、『天才』と言われているほどのニシノフラワーに土をつけるのも難しい話ではなかったのだ。

 

「……いい度胸ね。このアタシの異名を今一度、思い出させてあげるわ。後輩を泣かせた罪、その身で償いなさい!!ルーラー!!」

 

マルゼンは年長者となった後は『緩めの雰囲気のお姉さん』として振る舞っているが、その仮面を久方ぶりに脱ぎ、現役最盛期の頃の『跳ね馬』と評された荒々しい本性を表した。声色も普段よりドスの効いたものであり、スペシャルウィークはそのギャップに驚き、目を白黒させている。

 

「フッ、久方ぶりにお前の跳ね馬ぶりを見れたよ」

 

ルーラーはどこか哀しげながらも、マルゼンの気持ちを現役時代に回帰させる意図が上手くいったことは嬉しいのか、双方の感情の混じった表情を見せた。

 

「お前たちもいるとはな。興が乗ったぞ」

 

「貴方の走る姿をまた見れるとは思いませんでしたよ、会長」

 

彼女たちの時代の生徒会長はトウショウボーイであったので、学園を離れた後も『会長』と呼ぶ。この事に、現役時代の肩書はその後もついて回るのを実感するエアグルーヴ。

 

「おや……シンボリ家の小僧は?いないようですが?」

 

「あの子は例のウイルスに罹患して、床に臥せっているよ」

 

「やれやれ。小僧は大きくなっても、やんちゃなようですね?」

 

「否定はせんよ」

 

ルドルフも、入学間もない頃は現在におけるトウカイテイオーの立ち位置にいたのがわかる会話であった。それを聞いているエアグルーヴは平静を装っているが、内心は鼻血が出そうなほどに狂喜乱舞していたりする。

 

「おや、会長。従妹のシービーを連れてきたのですね?」

 

「そうだ、グロリア。この子は三冠だからな?」

 

「久方ぶりだね、グロリアお姉さん」

 

「いつ以来かしらね、シービーちゃん?」

 

インターグロリアは現役時代、入学間もない頃のミスターシービーの面倒を見ていたようであった。そのことから、その同期であったマルゼンの年齢が推し量れるというもの。

 

「まるで、マルゼンさんの代の同窓会みたいですね……」

 

「ええ。ですが……言葉は穏やかでも、ただならぬ雰囲気を感じます」

 

現役組が置いてけぼりを食らう勢いの会話であるので、スペシャルウィークは場違い感を覚え、思わず、隣にいるマンハッタンカフェに話しかける。それにカフェも同意したようである。ある意味、ルドルフが台頭する前の時代のトレセン学園の様子がどんなものであったか。それが窺い知れる一幕であった。

 

 

 

 

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