――扶桑は航空エンジンの革新により、短期間に2000馬力から3000馬力、ついにはジェットに到達した。その過程で長島のレシプロ航空エンジンは不要の産物とされ、多数が工場で不良債権となっていたが、日本へのオリジナルエンジンとしての売却などの外貨獲得手段に活用された。既に、日本のかつてのオリジナルエンジンは失われていたからである。ダイ・アナザー・デイ中に起こった進化は史実の15~20年分の先取りであり、それに追従できない国は大多数であった。その過程で、航空魔女の権威は大きく低下してしまった。ダイ・アナザー・デイの戦局にほとんど寄与していなかったからである――
――航空魔女は本来、最長でも10年しか戦えない職種であるので、引退後は別職につくのが主流であった。だが、芳佳が史実で至った思想が知られたことは結果として、彼女達の引退後の進路を狭める事となった。その償いとして、芳佳Aは定年までの長い期間、前線勤務であり続けることになる。思想の転換により、規定年数の軍役を終えた後に『一般職につく』ことが憚られるようになったことへの自己責任を取ったのである。そのため、太平洋戦線は実質的に『引退した後に悠々自適の生活を送る』という魔女のラフスタイルを奪い、生涯の仕事を軍役と社会奉仕活動。この仕事に二極化させる流れを根付かせたと言える。この流れによる、太平洋戦線の長期化は扶桑政府には完全に予想外で、大量破壊兵器の使用も実味を帯びる事態に至ったことに震撼していた――
――扶桑の大陸領の実質的な放棄は1945年の時点で内々に決議されていたが、元住民の心情に配慮し、誰もが口を噤んでいた。元の住民は『戻れること』を前提に、個人財産を置いてきたのだから、『これから大陸領は扶桑の領地では無くなります』とは、当事者の前では絶対に言えないのである。結果として、大陸領の国連の直接統治への移行は『当事者の全員が世を去ったであろう時代』まで先送りとされていくのである。その代替に南洋諸島の面積拡大が行われ、大陸領の元住民を優先的に移住させていく。南洋の新島群はドラえもんが定期的に新島を作っていたが、馬鹿みたいに資源が取れるようになったので、その防衛のほうが重大事になったからである。扶桑はその関係で海軍に予算が割かれ、陸軍は冷遇されていくのである。とはいえ、それはおおよそ、数十年後の状況である。太平洋戦線が激しい時期、三軍の予算は均衡が取られていたのである――
――1950年代には、太平洋戦線の決着をつけたいのは、日本連邦の方針だが、それは空母の数と人員の練度が回復した後の話であった。空母機動部隊は急激な変革で現場が大混乱の渦中にあり、作戦行動どころではなかったからだ。そのため、空軍は急激に近代化されていき、1949年の初夏ごろには、一般部隊にF-4EJ改が本土から順次配備され、精鋭部隊にはそれより一世代後の戦闘機が配備されだしていた。それら新鋭機は空母機動部隊が張り子の虎と化した時期を支える原動力となった。同時に早期警戒機などによる航空管制も普及したため、以前より行動の自由度が下がったと愚痴る者も多かったが、多勢に無勢が当たり前な太平洋戦線では、すぐにそうした古風な思想は駆逐された。この頃になると、カールスラント軍の不祥事の結果、扶桑軍は感状を積極的に発行するようになっていたので、管制官であろうと、その名誉に預かれることは多かった。金鵄勲章の授与は憚られるようになったものの、『武功徽章』は積極的に授与される時代を迎えていた。他国への示威と『外交的意味合いでの圧力』を兼ねていたからだ。これに扶桑海軍の現場は反対していたが、カールスラントの不祥事の発覚で、掌返しで方針を転換。陸海空共通の戦功章という位置づけで、その運用が始まっていた。沈黙は金なりは西洋では通じないのだ――
――ミーナの失態により、扶桑軍は従軍記章と武功章の必要性を痛感。ダイ・アナザー・デイ時に扶桑海事変とリバウ撤退戦関連のそれらを緊急で設け、該当者に緊急で授与した。ミーナの愚行は(結果として)扶桑の悪習の息の根を止めたことになる。ダイ・アナザー・デイの終了後には正式に『海軍の特務士官枠を廃し、三軍全体で兵科の区別なく、准尉以上を将校として扱う』という、天皇の名の下の全軍布告がなされた。これにより、芳佳は史実と違い、戦闘部隊でも、正式に将校として扱われることになった。(日本軍出身の義勇兵から連合軍に多数の抗議が舞い込んだことで、連合軍本部が仲裁に常に追われた事が原因。アイゼンハワー総司令官が『日本人は突然に豹変するから、対応するのが怖い』と大いに嘆き、1946年に大統領に就任した後、日本連邦にそのことの恒久的解決を懇願したほどの大問題であった)同時に、ミーナの降格の決定が正式に布告される時の軍記違反の項目がやたらと長ったらしくなったという。この軍規違反はグンドュラ・ラルにも適応されたが、彼女は(代えがたい人材であったので)上位の役職にわざとつけることで『悪さができない』ようにされたのである。また、下士官にこだわっていた『エディータ・ロスマン』は異世界での療養後は考えを変え(皇帝による説得と、父親との対立も大きいが)、新設された特務士官枠の第一号になるなど、騒動の余波は大きかった。同時に、芳佳が抱いていた『その力を、多くの人を守るために』という考えの弊害も生じ、魔女の引退後の進路を社会全体が狭めてしまう極大の同調圧力を生むことになった――
――この考えの弊害は本人には、別世界の自分自身が『人間関係で大きなトラブルを引き起こす』という形で生じ、坂本の頭痛の種となってしまう醜態となった。また、既に戦えない状態であった『二人の先輩』の心に極大の傷を負わすという有様は、芳佳Aが黒江に『煮て焼いても、大いに結構ですよ』と嘆きつつ、その処罰を任せるほどであった。のぞみは芳佳BとリーネBの『教育』を任じられ、おおよそ二年近く、二人の教育に努めた。芳佳Bはのぞみの教育により、『エクスウィッチに無理強いしない』事を覚えた。坂本はあくまで『特別』であって、普通は引退した後は戦えないのだ。自身の考えが必ずしも正しくないという現実に、芳佳Bは打ちのめされた。したくともできなくなったという立場がわからないと言い返された瞬間、ヒステリーを起こしてしまったという醜態を晒し、別世界(A)の坂本に呆れられたからであった。芳佳Bは考えを押し通すつもりで、模擬戦を挑んだものの、A世界の猛者たちの前では赤子同然であった。それがA世界のマスコミに嗅ぎつけられた結果、別の自分の仕事に支障が生ずる事態を招くなど、とにかくも『ヤキの回った』時期を過ごしていた。良くも悪くも、芳佳Bは中学生活の延長線上の考えで、軍役についていたのである。一方の芳佳Aは角谷杏の『頭脳明晰』要素が強まったため、宮藤芳佳本来の人柄では無くなった感が大きい――
――遠征の時期には、産休中であった芳佳A。出産間もない長女を育成していたのだが、数年後には第二子を儲けるが、それが軍人としての後継になる次女であった。別の自分が醜態を晒してしまった事で、彼女も少なからずの損害を被った。芳佳Bがワーカーホリック気味であったことの弊害であった。芳佳Bは結局、『違う世界では、違う人生を歩んだ』という現実を顧みなかったことで、自身の評価に傷をつけたわけである。ミーナ達はそれを認識した上で、それぞれ『お客さん』扱いを受容している。だが、芳佳とリーネは『力がある(あったのなら)のなら、なにかをすべき』という強迫観念を強く抱いていた。それがトラブルのもととなったのである。償いのため、芳佳BはB世界の智子の『ツバメ返し』と黒江の『秘剣・雲燿』を継承することにし、それを二人への禊とする。A世界での二人はあくまで『自分たちの世界の二人とは別の存在である』(一応)ことを認識できた故の決断であった。顔出しを控えての裏方仕事を始めたのも、その一環であった――
――芳佳BとリーネBは自業自得とはいえ、仲間内でさえも『肩身の狭い思い』をする事になり、芳佳Bは仕事に過剰にのめり込む事となった。芳佳はサメやマグロのような気質(泳いでないと死ぬからか)だと評された。芳佳Aが産休を取っているので、余計に目立ってしまったのである。リーネBは影武者としての活動ができるが、顕著な違いが生じた芳佳の場合は不可能であった。それが、芳佳Bがレスキュー任務に過剰に入れ込む理由となった。ミーナBはこのことに『扶桑人は生真面目すぎるのよ』とぼやく事となった。B世界の黒江達が精神的なカウンセリングに通うことになってしまったことの罪を『働くことで償おう』としているからだろう。A世界の当人たちが前線でバリバリに戦っているのは、『その世界特有の特異体質の持ち主だから』と説明され、ようやく自分の非を認めたあたり、芳佳本来の一途さが『頑固さ』という形で発露してしまうと、周りが事を収めるのに苦労するという例を示してしまったことになる。それで今度は過労判定されるほどにレスキューに入れ込むようになったので、B世界のミーナは『ああされると、扱いに困るのだけど……』とぼやいていた――
―― 南洋島のホテル――
「宮藤とリーネが揉め事を起こして、早くも二年か」
「ええ。ここじゃ、私達は客人にすぎないのに、あの子達は何故、ヒステリックに?」
「引退済みの魔女の気持ちに寄り添うように、夢原大尉…今は少佐か…に教育を依頼し、黒江達をカウンセリングに行かせたが……流石に怒鳴ってしまったよ。私の先輩なんだぞ?」
坂本Bはホテルのロビーのソファに腰掛けつつも愚痴る。別世界にいるため、肉体の加齢が起こっていない。それどころか、微妙に若返ってすらいた。
「ええ。ここにいられる理由はまだわからないけれど、あなたが原因ではないのか、と」
「それは一理あるな。しかし、宮藤があんなに頑固とは思わんだ。先輩の顔を潰すほどに怒鳴るとは…」
「それだけど、ここの私から、『留守部隊を手伝ってみないか』と打診があったわ」
「いいのか?」
「黒江閣下らの留守を守る部隊の拡充が現実問題になったらしいの。これなら、宮藤さんも満足するでしょう」
「手配は進んでいるのか?」
「それは彼女に説明してもらうわ」
「久しぶりだな、美緒」
「この世界の……義子か。この世界だと、正式な将校のようだな」
西沢が説明にやってきていた。服装は以前と変化なしだが、階級は将校のそれになっている。空軍への移籍と、海軍で特務士官が廃されたためだ。
「お前、別の世界でも、アタシが将校になったのを怪訝そうにするんだな?」
「す、すまん。しかし、若い頃は……」
「こっちじゃ、否応なしに現場指揮官させられたんだよ。それで武勲を立てたんで、お上のお言葉で士官に上がった。上等飛行兵曹でいい器じゃないってさ」
「お上のお考えなら、仕方あるまい」
坂本Bは天皇の意向と聞くと、そう言って、大きくため息を付く。西沢の戦功が皇室の耳に届いたのなら…と。
「中尉、それは本当なの?」
「ええ。お上がアタシの前の所属先の指揮官に直接問い合わせちゃって、その指揮官、ションベンを漏らしてましたよ。アタシが聖上からお電話ですと言ったら」
「でしょうね…」
国家元首が現場にホイホイと問い合わせるのもどうか。そう思ったミーナBだが、扶桑の国情と軍の気質を考えると、自ら情報を知りたがるのも当然だろうと考えた。
「聖上は軍部が嘘を報告していた事変からというもの、拝謁する武官たちに直接聞き取りをするようになっているというが……ここではだいぶアグレッシブなようだな……?」
「あたしやお前はお気に入りだからな、聖上の」
「陛下は事変の英雄がお好みなの?」
「いえ、あたしは事変後の志願です。とはいえ、ここじゃ、坂本が引退したんで、宮藤の面倒を見れる海軍出身の士官ってことで、先輩方と同じように扱ってもらってますが」
「義子はリバウが初任地だ。そこで私達と出会い、切磋琢磨した仲だ。同じ世代だが、事変後だから、一期下になるな」
「ああ。それで、あなた方に任せる予定の艦の用意は進んでいますよ」
「中尉、私は空軍よ?」
「宇宙戦艦ですから」
「そ、そう……」
「直に回航されてきます。アンドロメダ級前衛武装艦の35番艦。名前はアマデウス。ガイアから有償援助と引き換えに引き渡された軍艦です」
「番号が多くないか?」
「ガイアは特殊な手段を最近まで持ってて、それで戦争を潜り抜けたらしいぞ?詳しくは分からんが」
転移する直前に次元断層を放棄して、宇宙戦艦ヤマトを救出した事、また別の世界でのガトランティスとの戦争を経た上で、ガイアは元の位置に戻ってきたという。その影響で『Xネブラ』というものができる環境に置かれたとも。その事から、ガイアは転移途上の時にガトランティス(別次元)と戦争をするという、なかなかに危ない橋を渡っていたのでは?と推測がアース側になされている。Xネブラが生ずるようになった影響で、次元波動エンジンの製造に支障が生ずるようになったので、次元波動エンジンを放棄するとも。ガイアの置かれた環境が過酷化したため、波動コアの製造が困難に陥ったためだともいう。
「それで今、アースの整備ドックでエンジンと波動砲の換装を受けているらしい。規格統一の一環なんだそうだ」
波動コアの複製が難しくなったのなら、別の技術であるタキオン波動エンジンに切り替えれば問題はないし、サレザーイスカンダルとの条約にも抵触しない。それがガイアの判断であった。波動砲もタキオン波動砲にすれば、何ら問題はない。その関係で、ガイアの艦艇はテクノロジーの変革による基幹技術の交代に直面していた。
「諸元は後でご確認を。貴方方の存在は表には出しませんが、便宜上、こちらの同一人物が戦っているものとして処理します」
「わかったわ。それで、こちらの要望は?」
「改修工事中です。あと三週間もあれば、稼働状態に持っていけるでしょう」
「まさか、未来の超技術を与えられることになるなんてね」
「うむ…。お前らは慣れているからいいが、こちらは電子計算機のでの字もない世界の住民だからな」
「使ってれば覚えるさ。お前らの世界でも、原始的なものは開発中のはずだ」
「本当か?」
「ああ。ここじゃ使う必要が無くなったから、博物館に行ったが。ENIAC(エニマック)だったかな、名前」
未来世界の高度なコンピュータが早期に普及したため、原始的な代物であった『エニマック』は用無しとされ、すぐに博物館の展示物になった。アースの電子技術はM粒子での退化と再進化を経て、コズミック・イラの量子コンピュータ技術も混ざったので、それを導入したほうが手っ取り早いからだ。
「二人には、コンピュータの取り扱いの講座を受けてもらいます。バルクホルン大尉(1945年当時からの転移なので)には、軽くでいいと」
「奴は複雑な機械が苦手だからな。そちらでは?」
「電子メールと携帯電話は使いこなせるようになったくらいか」
「それと、夢原少佐から、お前へのレポートだ。若いのの観察記録だから、見ておけ」
「ありがとう。しかし、環境が変わると、こうも違うものか?」
「まぁ、歳も歳だしな。もう20いくつだぞ?」
西沢はB世界では、態度は若き日から変わってないが、A世界では異なる経験により、年相応の振る舞いであった。古参の特務出身の叩き上げといった古強者の雰囲気たっぷりであったので、元の西沢を知る坂本は不思議そうな趣であった。
――実際、A世界では、扶桑海事変時の古参の多くが『特異体質』とされ、1949年でも第一線の要となっている。A世界では、魔女の世代交代が実質的に停滞していたのと、45年当時の中堅世代が軍を抜けた事による穴を埋めるためであった。更に言えば、政治的状況の急変で、10代のうちに第一線に配置される事がほぼ無くなったのも大きい。10代の内に前線勤務を経験したのは『服部静夏の世代』が最後になった。その後は入隊後に高等工科学校で18歳、統合士官学校で21~2歳まで、近代的な軍事カリキュラムを叩き込まれることになったからだ。折しも、1945年の8月半ばから『魔女覚醒の休眠金』に突入したこと。魔女兵科はそうした理由が重なって、衰退期に入ったのである。そのため、1945年当時に中堅であった世代は多くが(政治かぶれと見做されたので)現場指揮官止まりとなり、幕僚にはなれないケースが常態化した。事変世代(戦前の簡略化される前のカリキュラムで任官)が上にいたからであった――
――魔女の立場の悪化はダイ・アナザー・デイのサボタージュと、プリキュア達の獅子奮迅ぶりが起こしたと言っていい。プリキュア達がその万能ぶりで戦線を支えたのに対し、魔女は『約束が違う』などの理屈でダイ・アナザー・デイへの従事を拒む部隊が多かった。その結果、ロマーニャ陸軍はほぼ全滅、空軍も機能不全、海軍はタラントで主力が無惨な有様を晒した。それを補ったのが、プリキュア達であった。当時に最強クラスの戦車であるM26重戦車とM4中戦車が雲霞のように押し寄せるのでは、貧弱なロマーニャ軍はひとたまりもなかったのだ。制空権もない状況で絶望な戦闘を余儀なくされたロマーニャ軍は文字通りに蹂躙され、全滅した。ダイ・アナザー・デイ後は海軍の再建が優先されたのもあり、陸軍は散々たる有様であった。本来の構想では、各地域に駐屯していた連合軍の魔女たちに制空権を取らせるつもりであったが、多くがサボタージュで動かなかったため、ロマーニャ軍は空中援護を全く受けられなかった。本当にトイレにいっていた数名以外は全滅した部隊も続出し、ロマーニャ軍は早々に実質的な継戦能力を喪失。日本連邦は少数で圧倒的多数のリベリオン軍と戦う羽目に陥ったのである。地球連邦軍の援軍は、その圧倒的不利な戦力バランスの是正のためでもあった――
――地球連邦軍の援軍は『使いどころに困った兵器の実証実験も兼ねてのもの』であったが、連合軍にはまさに救世主であった。当時の連合軍の既存戦力では太刀打ちできなかった『M26重戦車』を正面切って撃破できるからであった。そのため、日本連邦はそれを動員できたという威光を使う形で、連合軍の勢力図を自分色に染め上げた。カールスラント軍は一部の有能な将軍と現場指揮官以外の権威が失われ、兵器の輸出も半ば不可能となったため、以後は自由リベリオン規格の兵器がカールスラント製の兵器を淘汰していった。日本連邦も自由リベリオンとの蜜月を前提に、以降の外交を行うようになったため、カールスラントは重要なシンパを奪われ、慢性的に資金不足に陥っていく。その状態は1950年代全体にわたって続き、1964年まで経済的復興が遅れることになった――
――地球連邦軍は魔女の世界に深く関わり、扶桑を実質的に拠点とした。その関係上、扶桑はたったの数年で、軍隊のネットワーク化をなし得た。それに抵抗した魔女達は技術革新についていけずに終わった。精鋭部隊ほど、21世紀水準の歩兵装備に変わっていったが、魔女達の多くはその流れに対応できず、苦戦が続いた。フリーガーハマーも携帯式防空ミサイルシステムに変わり、連続発射が不可能となったのは大不評であった。そのため、魔女はストライカーユニットのパイロンに小型ミサイルを複数携行して対処することとした。空戦のこうした苦境と裏腹に、飛行という制約のない陸戦ストライカーは早期に開発が進み、強力化した『軽装型』が続々登場。扶桑でも、61式相当の陸戦ストライカーが(共通化されたシャーシという幸運もあって)生産されだしていた。ティーガー以来の重装型は時代遅れの設計思想と化していたが、戦時下では必要であったので、以前からのものがブラッシュアップの末に完成。実質的にそれらが重装型の最後の世代であった――
――陸戦ストライカーに汎用性が求められるようになると、以前の軽装型の発展が主流となり、汎用性が低い重装型は時代遅れと見なされるようになった。とはいえ、軽装型では『強力な武器を携行させられない』という難点により、一部から『重装型を放棄すべきではない』という意見が出た。未来世界でのデストロイド・モンスターの開発時と同じような状況であった。その意見がパットン将軍などの賛同を得た結果、ティーガーのフォーマットを反映させた重装型ストライカーが続々登場していった。敢えて装備を大型化させ、機体の機動力を半ば捨て、火力と防御力に能力を割り振った『時代の徒花』というべき『恐竜』。それらは時代が生み、戦役の終わりとともに消え去るであろうものであったが、ポルシェ博士が主導したプロジェクトの行き着く先でもあった――
――太平洋戦線は南洋本島も戦場であったので、それらが活躍できる余地は充分にあった。戦車砲や高射砲クラスの砲を無理に小型化せずに組み込む余地のあるそれらは『重戦車』扱いで運用できる。120~155ミリクラスの砲を運用可能なようにすると、どうしても、ティーガー的なスタイルが(手っ取り早く)実用化できるスタイルなのであった。64Fのように、未来のパワードスーツを発注する手もあるが、それは地球連邦に相応のコネが必要であるので、64F以外の部隊では、まず無理な手であった。それも重装型の需要が減らなかった理由である。1949年の夏に入る頃の陸戦はそれらが実車やコンバットアーマーなどに混ざって戦い始め、戦線に衝撃を与えていたのである――
――陸戦の転換期はまさにこの時期であった。各国で新型の陸戦ストライカーが相次いで完成し、量産されだしたり、各種歩兵装備の更新装備の生産が軌道に乗ってきた事、それらが耐え忍んできた陸戦魔女の手に渡ったからである。地球連邦軍の強力なる支援で輸送された新兵器は戦線に強力な衝撃をもたらし、64F不在ながらも、連合軍は自力で攻勢に打って出るきっかけを得ようとしていた。南洋に暑い夏が訪れようとする時であった――
――戦線でその陸戦ストライカーの魔導エンジンの咆哮が響き渡る。64Fの活躍を華とするなら、彼女たちは裏方。だが、裏方がいないと、世の中は動かない。それを示すように、南洋島の岩山地帯を行軍する『機械化装甲歩兵』の中隊の姿があった――