――ダイ・アナザー・デイから使われだした戦法に『遠距離からのミサイル攻撃』がある。主に巡洋艦以下に撃たれたが、戦艦の対空砲火を封殺するためにも撃たれた。更には航空機による機銃掃射もされまくったので、巡洋艦以下は曳航されたものの、スクラップにするしかない損傷のものも続出した。日本連邦側は旧式駆逐艦は一線から下げていたが、唯一、当時に防空艦扱いであった『秋月型駆逐艦』のみは改修を受けた個体が参陣していた。二次大戦の常識では大型の駆逐艦だが、戦後の常識では、コルベットかフリゲート扱いの大きさであるので、武装の改良は必要最低限であったが、(二次大戦型としては)最強クラスの武装であった。航続距離的に、松型駆逐艦はダイ・アナザー・デイに参陣できなかった。元々、戦時急造タイプであった故に、拡張性無しと見做されたからだ。とはいえ、松型は沿岸警備任務には重宝された他、余剰艦は日本で博物館船となったり、映画撮影に駆り出されたという――
――同時に、自衛隊の持ち込んだ戦後型護衛艦はその電子兵装によるサポートや防空戦に役立ったものの、艦隊戦では蚊帳の外に置かれていた。大和型やそれ以上の大戦艦が闊歩する戦場では、砲撃から生き残れる保証がないからである。戦後型は直接戦闘ではむしろ脆いのだ。のぞみはその戦いに立ち合っており、夢原のぞみとしての復帰戦の内、海戦はその戦であった――
――空母は大戦型のものは大半が改装でコア・ファイター、あるいは戦後第三世代の少数運用が限界であったので、大型正規空母(日本人にとって、空母=米軍基準の大型空母であったため)の少数運用と大戦中の艦隊運用が混合された状態で運用された。特に戦後の半世紀ほど現役であったミッドウェイ級空母は、日本連邦がプリキュアを使ってまで制圧させるほどに魅力的な物件であった。ミッドウェイは1949年までに、史実最終時相当の改良を受け、扶桑連合艦隊に就役。史実では動揺性が悪化したため、その改修も済ませた上での改修であった。姉妹艦の『フランクリン・D・ルーズベルト』も改修中であった。本来はすぐに自由リベリオンに売却の予定であったが、空母機動部隊の形骸化が顕著になったため、場繋ぎで扶桑連合艦隊の所属となった(既存の日本型空母に信濃がいないので、緊急で決まった)。船体塗装がリベリオン海軍式のままなのは、そういう事情による。艦載機も先行配備された『A-4』と『A-7』、『F-4』であるので、日本型在来艦に比して、大きく異質であった――
――1949年の夏に入り、陸で新兵器が続々登場し、連合軍は攻勢を開始しだした。移動司令部代わりに、ビックトレーやヘビーフォーク級陸戦艇が、前年度から供与されだしたからでもある。ティターンズは存在した時期の任務と組織の性質上、航空戦力は多く有しているが、陸戦艇はさほどなかったので、連合軍はそこにつけ込んだ。ラーテの配備と生産が頓挫した後の代替兵器の側面もあるそれらは日本連邦陸軍の威光を示すのにも充分な大きさを誇っていた。ビックトレーの主砲は有に53cmを超える口径であったからだ――
――南洋の乾燥地帯――
「ビックトレーにヘビーフォーク。一年戦争の陸戦艇がよく残ってたもんだ。カールスラントは泣いてるだろうね」
「陸軍の連中は心が折れてますよ。ラーテはせいぜいシャルンホルスト級の28cmですが、これらは50cm砲でしょう?」
アストルフォにアルトリアはカールスラント陸軍高官の嘆きを代弁した。
「で、今回の作戦は?」
「この付近に布陣するリベリオン陸軍を艦砲射撃で釣りだした後、コンバットアーマー、デストロイド、MS、新式の重装型ストライカーを装備した魔女を集中投入し、殲滅する腹づもりだそうです」
「噂のパーシングやコンカラーのストライカーの生産が?」
「魔導触媒の確保に成功したそうで、月産30両ほどのペースだそうです」
「大量生産できる兵器でもないもんね、重装型のストライカー装備」
彼女たちが便乗してきたビックトレー級から続々と、梱包を解かれる重装型ストライカー(ティーガーを基本フォーマットとした外装式。半ばデストロイドじみているため、それを更に発展させた)。通常のストライカーより高価な兵器である。かつてのティーガーストライカーの方向性を突き詰めた、重戦車相当の『重装型』であり、維持費が高額なので、戦中のみの使用を想定された『徒花』だが、戦時下では重要な兵器であった。
「あんな大仰な装備、財務が見たら泡吹くよ?」
「戦時下ということで、許されているのでしょう。日本軍に対戦車車両は殆ど、配備されていませんでしたからね」
「それからすれば、天国だっていうもんね。この重装備の山。五式砲戦車もあるし、それも155ミリ砲搭載で」
ビックトレーは輸送艇も兼ねられるため、扶桑の機甲師団を丸ごと輸送可能であった。一年戦争後はその用途を強化された末期型が生産されていたので、扶桑の重装備の半分は同陸戦艇によって輸送されていた。移動司令部を兼ねていたので、戦闘車両とその弾薬はMS用よりスペースを使わない事から、扶桑陸軍は主に戦闘車両の輸送にも用いていた。ある意味、ビックトレー本来の目的に適した運用を戦時下の日本連邦がしていたことになる。MSの運用は空軍が確保した宇宙艦艇にやらせればいいのだ。
「しかし、今回はかなりの大規模作戦ですね?」
「戦線を動かすきっかけにしたいんだってさ。うちら以外の部隊にも手柄を立てさせたいんだとさ」
「リカバーのために、私達が?」
「そうそう。君、今回はいつもの格好じゃないんだね」
「今の私は王位にあるわけではありませんからね。私の正体を知っているのは、司令官級に限られますし」
アルトリアは今回の作戦に従事する際、一士官(騎士)であることを示すためか、修行時代の頃の容姿のうちの一つを使っていた。俗に言う『セイバー・リリィ』の姿である。ただし、持つ剣が正式なエクスカリバーであったり、声色も王位にあった時期以降の凛々しいものであるので、完全に当時と同じわけではなかった。とはいえ、ブリテンの王位にあった者が聖剣を携えて、日本連邦に与するというのは、(ブリタニアにとっては)重大なメッセージの暗示である。
「君、元の王様だもんねぇ。去年か一昨年(21世紀でのことだ)のコミケで売り子させられてたけど」
「……仮にも、私は円卓の騎士ですよ?それが事もあろうに、コミケの売り子など、我が子には見せたくはありませんよ」
円卓の騎士に売り子をさせる黒江と艦娘・秋雲もなかなかの豪胆さである。黒江と秋雲は予てから、同じ同人サークルで執筆活動を行っていた。2023年からはアグネスデジタルが加入し、メジロドーベル(実は、私生活では同人活動に精を出している)にも声をかけようかという状況にある。元々、それぞれの世界で質の高い同人活動をしていたりした面子が集まったため、サークル売上は相当なもの。かと言って、それぞれの本業も第一級(黒江はトップエース、秋雲は艦隊型駆逐艦娘の手練れ、アグネスデジタルは芝・ダート双方の『勇者』、メジロドーベルはダブルティアラ達成者)の実績を収めているため、界隈でも『あのサークルは超人の集まり』と話題になっている。
「いいじゃん、存在を知ってる上で、楽しんでくれるんだから。まさに転生様々だよ」
アストルフォは文字通りに転生ライフを楽しんでおり、現役のプリキュア戦士でもある。それでいて、シャルルマーニュ十二騎士であるのはやめていないので、ある意味、歴史に名を刻んだ英霊でありながら、転生後の日本で『プリキュア戦士』を兼ねるという『初の事例』であろう。元は女装男子であったが、転生後は外見通りの体になっている。生前の名残りで男性的な口調のままだが、ボクっ娘として大人気である。シャルルマーニュ十二騎士が一人というのは、歴史的に充分な実績だし、プリキュア戦士とロボットガールズの力も併せ持つので、英霊としては弱い部類でも、それ以外の力でどうにかなるのである。
「貴方は転生を楽しんでおられますね」
「儲けもんだよ、何度目かの人生なんて。しかも、何度か死んでるから、今度は死なない。いや、死ねないというべきか」
「その割には楽天的ですね…」
「そうじゃないと、自分が本来生きてた時代から千年単位の未来で生きていけないよ?」
アストルフォはこれである。アルトリアは生前の自分の行いを引きずっているようだが、アストルフォは転生を重ねた故に、楽天的な様子を見せていた。お互いの体躯は転生を重ねた故か、さほどの差はない。むしろ、日本軍の将官や参謀らと居並んでも、文句の一つも出ない存在であるのが彼女たちである。歴史上の英傑そのものなのだから。
――リベリオン軍はダイ・アナザー・デイの物的損害も数年がかりで回復させられるだけの能力を誇っている。21世紀以降の時代ではそうはいかないが、20世紀半ばのこの時代、兵器が一定程度は単純な仕組みで造られていたので、換えがいくらでも効くのである(人的資源はともかくも)。この時期、ジェットの配備にこぎつけていた国は数カ国程度。それも、通常のジェット機を主力に用いるほどに生産していたとなると、たった三カ国である。カールスラントはちょうど、通常航空機としてのジェット機の量産間近の段階で介入を受け、シッチャカメッチャカにされた挙句に『国産ジェット機の量産』を潰されていたため、日本連邦は(ライセンス生産にしろ)大量生産にこぎつけたので、まだ幸せであった。二次大戦のような国家総力戦の戦場に、戦後型ジェット機が供されることは『資源の無駄遣い』とそしる声があるが、現代の戦闘機は大戦中のような『大量生産する』代物ではないので、旧式機ならば問題はないという声もある。実際、冷戦中の戦闘機は大量生産されていたので、現用機に近い世代といえど、大量生産していいというのが防衛省と国防省の理屈だ。いくら財務省といえど、旧日本軍のような『多勢に無勢』を兵に強いている事が知られれば、さすがの財務省も大臣のクビが飛ぶ案件だからだ(最も、戦後日本はそれが半ば、前提条件であったが)。そのため、怪異のおかげで予算がフリーパス同然に通る状況は歓迎すべき状況であった――
――その中でも、機動兵器対策として、量産MSを揃えているのはさすがであろう。また、象徴として、各部を改修したガンダムMk-Ⅱが配備されている。旧式化している機体だが、元々がガンダムタイプであるため、装甲やソフトウェアなどの更新を行えば、一応は戦える水準の能力値は留めていた。ティターンズが開発した『欠陥あり』(実は製造当初の同機はムーバブルフレームの剛性不足という欠陥があり、それもあり、量産が頓挫したという)のガンダムがエゥーゴの手で『完全なガンダム』に新生し、ティターンズを撃滅するための先鋒として使われる。それはティターンズへの大いなる皮肉であった――
「それにしても、嫌味のために、ガンダムマークⅡを再改修して使うなんてね。ティターンズの技術者が聞いたら、顔を真赤にするだろうさ」
「貴方が乗られるので?」
「英霊のクラスはライダーだったんだよ、ボク。MS戦はこなせるよ」
アストルフォは乗り物のスキルが高い。MSであっても、例外ではないらしい。ティターンズの後期の新鋭MSは主に宇宙に配備されていたので、地上軍の残党である彼らはせいぜい、アッシマーかギャプランがいいところ。バーザムが最新と言えるレベルだ。
「敵はシンパから提供を受けても、せいぜいバーザムか、ゼク・アイン。ギラ・ドーガがマラサイの後継扱いで回されているかどうかだけど、量産品は盾とかでケチってるしねぇ」
アナハイム・エレクトロニクスがMS産業を独占していた時期、量産MSの性能差はあまりなかった。ジェガンとギラ・ドーガがそうであったように。低コストの量産品故か、高級機の相手にならないという有様であったことでも知られている。それが緩和されるのは、サナリィの台頭以降の時期だ。とはいえ、ガンダムタイプと量産品の性能差は(新技術で)再び開いているが…。
――とはいえ、ジェガンはパーツ単位の生産は続いているため、既存機のアップデートはまだ可能である。スタークジェガン化した個体が増えているのは、旧式化したジェガンの延命措置の一環である。根本的に改修して『フリーダム』に改装するのも進んでいるが、大型機に高価なビーム・シールドを持たせる意義を議会に疑問視されていたので、改修はストップ状態であった。また、議会は『対宇宙怪獣』名目で、理論のみは二次大戦中の日本軍が確立させたという『オキシジェン・デストロイヤー』の実用化を進めさせている。この遠い発展形がゲッター艦隊の『ダースデス』砲であるという。これに圭子は『日本軍はゴジラが来る可能性を考えてたのかもな』と語っている。実際、宇宙怪獣は『生物』であるので、オキシジェン・デストロイヤーを改良していけば、宇宙怪獣にも通用するだろうという予測があったため、ブラックホール爆弾より『安全』に倒せるのでは?という期待がかけられていた。――
――怪異は『星の免疫反応では?』という声もあり、魔女は『地球の良心が生み出した存在』説も提唱されている。これはプリキュア達が『オトナプリキュアの世界』では『人類存続のための良心的存在であるのでは?』という推測があるのと同様である。スーパーロボットは宇宙怪獣や怪異をもねじ伏せるため、科学が世の摂理を超えた事を示す好例であった。ゴッドマーズや真ゲッタードラゴンはその好例であった。だが、真ゲッタードラゴンすら、ゲッターの進化では序の口である。一つの文明が『全てを賭けて』生み出した兵器を進化の一言で超えてしまうのは凄まじいの一言であった。宝具すらも超える力を有する、『現代科学の行き着く先』。それがスーパーロボットである。その一端は『プリキュア5の世界』で示された――
――バダンが持ち出したモビルアーマーは複数であった。ジオン系の人員の持ち込んだ『アッザム』の派生型であったので、示威も兼ねて、グレートマジンカイザーが投入された。ただし、黒江は三号との戦闘で負傷してしまったため、事前にのぞみAが訓練を受けていたということで、その体を使っているナリタブライアンが臨時で搭乗した。のぞみA自体が『人間マジンガー』化している状態であったので、ブライアン当人に特段の負担はかからなかった。むしろ、チートに別のチートをかけているのと同義であったため、皇帝級のマシンであろうが、その負担に耐えられるのである。遠征軍からの報告では、『彼女は皇帝のかける負担にも耐え、アッザムの部隊を蹴散らした』とあり、ブライアンがグレートカイザーの力を存分に発揮させた事が示唆されている。最も、表向きはのぞみの手柄となるので、ブライアンは事後に『CM出演料』という形で、礼金と恩給を受け取る手筈である。ウマ娘達はレースと広報活動が本義だが、ブライアンは『衰えた闘争本能を全盛期の状態に戻したい』という願いがあり、そのためには『荒行』が必要という結論に達した。故に、夢原のぞみの体と名を借りて、極秘裏に戦場に立った。その思惑は成功しつつあったと言える――
――こうして、連合軍の太平洋戦線での攻勢は開始間近となった。同じ頃。ウマ娘世界では、ブライアンと入れ替わっているのぞみAが天皇賞・春という大レースに臨む。オトナプリキュア世界では、台湾からの敵の排除のため、大人のぞみがフリーダムガンダムで出撃していく。奇しくも、それらはそれぞれの世界での日付は異なるが、同じ時間帯に起こった出来事であった。三つの世界の時間経過は似たリズムであるらしい。連合軍はリベリオン軍が敵になったり、日本がケチかつ、攻勢を嫌う性分であったため、連合軍は折り合いをつけるのに苦労し、結局は1949年の夏まで攻勢を控えざるを得なかった。日本は『魔女の世界の各国の圧力』で攻勢を認めざるを得なかったが、扶桑軍全体の弾薬の生産と備蓄を抑えさせていたことで猛批判を浴びた。結局、『扶桑の使用分は連合軍全体で弾薬を融通するように』という条文を条件に、一定程度の戦後水準の技術を流すしかなくなるなど、自縄自縛な出来事も起こった。この時期以降、日本は扶桑の軍事的な手綱を握る事を控えるようになる。『現地世界では、近代的なアジアの国家は扶桑しかいない』という状況を鑑み、自分らの常識は通じない事を悟ったのだ――
――連合軍は日本を逆に叱責する事が多かった。軍事に無知な輩が彼らを応対する事が常態であったからで、日本は上手く立ち回るどころか、恥の上塗りを重ねるだけであった。その結果、日本は扶桑への口出しが次第に難しくなっていく。地方の開発促進のために植民地投資を止めさせようとしたら、軍事的な土地利用への妨害行為の横行と怪異への無知で、現地に大損害を負わせてしまう事例が相次いだ。日本は怪異の調査を国家事業として行いつつ、怪異退治の『軍事との縁を薄れさせる』施策を長期スパンで実行。狩猟免許の整備、学校教育制度の再編、退役軍人への年金と恩給の保証に力を入れた。のぞみの一件での教訓であった。同時に、教員の身分を正式に公務員にさせ、師範学校生は『希望すれば、新制大学の教育学部の生徒になれる』という救済制度を設けた(師範学校は『教員になれば、学費は無料』という『貧困層への救済策』の側面があったので、農村部から大きな批判が起こった)。この『予想外の批判』に驚いた日本は『経過措置として、1945年の時点で師範学校に籍を置いていた者の新制大学への入学、その在学中に学費を徴収しない』との妥協的な救済策を実施させた。師範学校の生徒は『1945年時点で入学が決まっていた者』を含めれば、数百万人にも及ぶ人数であり、多くは農村部の青年層であった。日本は学費の徴収をしようと模索したが、多くが貧困層の青年とわかり、泣く泣く断念している。また、戦後の常識としての『高等教育機関は高額な学費を払うところ』という認識は扶桑の国民の不満を煽るものであったので、日本は『自分たちは政策の不備を指摘しただけ。けして、扶桑への内政干渉ではない』旨の啓蒙を血眼になって行った。予てから不満が溜まっていた扶桑国民の暴発を恐れたのだ――
――こうした政治の失敗は、日本の扶桑への軍事的劣位を強調するものとして、防衛関係の現場からは相当に顰蹙を買っていた。せっかくの技術的優位を自分から縮めさせているも同然だからだ。軍事的な口出しも専門機関によるものに切り替えさせた。目下の問題は旧軍型艦艇の再利用策であった。重巡はイージス艦では換えが効かない(直接的な重火力の投射ができない)ため、結局は高雄型の改善型として、戦間期に提案されていた『改高雄型』を対デモイン級重巡洋艦用に、新規に用意せざるを得なかった。伊吹型は所詮、条約型巡洋艦の域を出ないとされ、『妥協で作った二線級の巡洋艦』としか見做されなかったからだ。デモイン級重巡洋艦を越えようとすると、長門型戦艦以上の体躯とデモイン級重巡洋艦と同等以上の重装甲が必要になるのだ。扶桑の提督らには、重巡の『過剰な高性能化』に疑問を持つ者も多かったが、結局は史実の重巡の散々たる有様を鑑み、認めざるを得なかった。超甲巡が『巡洋戦艦』に変更された結果、水上打撃艦隊も編制で混乱が生じ、戦艦部隊の編成に支障が生じた。結局、当面の間、連合艦隊旗艦は『水戸』が務めることが決まった。この時期に建艦が始まった新造艦の完成は(早く見積っても)1952年以降になるからだ――
――この時期以降、急激に武装の近代化が進んだため、扶桑海軍は兵上がりの特務士官らを再教育せざるを得なくなった。その結果として、1947年から進めていた『特務士官』の区分廃止が完遂された。また、士官学校卒の若手将校らの頭でっかちさが指摘された結果、実戦(実務)経験者が尊ばれることになり、官僚タイプの軍人等は『事務屋』と揶揄されることになった。日本型組織で人望を集めやすい彼らであったが、実戦の状況が彼らの居場所を奪ったといえる。それは海軍でも同じであった。山本五十六のように、軍政家・教育者として名を馳せても、軍略家としては博打打ちと揶揄される者もいる。そのため、彼は史実と異なり、志望通りの『軍政の道』に進めた故に、有能な軍人という評判を手に入れられたが、軍略家として『下』とされたのを気にしている。このように、扶桑海軍の高官らは『実務で有能でも、事務処理に疎い』者、『事務処理が上手くとも、実務でダメ』な者に大別される。日本人はどこの世界でも『ほどほどに』が希少なのである。そのため、自衛隊の幕僚が大量に送り込まれているが、彼らは古典的な砲術に疎い(戦後はミサイルが艦砲にほとんど『取って代わった』ため、艦砲での対艦攻撃の助言ができない)のもあり、戦艦や重巡などの運用の助言はできない。いずれも、戦後の早い時期に運用ノウハウが絶えてしまった艦種だからだ――
――1949年。史実では、日本は占領期である。だが、扶桑は戦前の体制が健在であった。日本の左派はどうにかして『扶桑の皇国体制を解体』しようとし、あれこれの工作に励んだが、自分たちが墓穴を掘る形となった。扶桑はブリタニアと数百年単位で同盟関係にあったからだが、陸軍を中心に、最先端の科学が売りのカールスラントに近づこうとする勢力がいた。日本のメタ情報はそれを駆逐する形になったので、カールスラントは以後、長い間、貧困に喘ぐ事になった。また、ロマーニャとも日本連邦は関係が冷え込むことになったが、ロマーニャとしては日本連邦の工業力なくは、国土復興がままならないため、日本連邦のご機嫌取りに必死になっていく。この外交関係の変化は欧州諸国の没落と日本連邦の超大国化の表れであった。日本連邦が手にした超兵器は『どの国のいかなる兵器よりも優れて』おり、連合軍の全ての他国の軍事力を合わせても、リベリオン一国の全力に伍する事すら困難である現状では、それらが頼みの綱であったからだ――
――海底軍艦の各国への配備も連合軍全体の計画であったが、技術の流出を恐れた日本が強引にストップをかけたが、各国から逆に抗議される事態となった。結果、扶桑側が(炉心のコントロール権を自分たちが持つことなど)日本側を説得し、同盟国にのみの貸与で妥協された。既に発注分の多くが不良在庫と化していたからである。レンタル料を相当にふっかけたかった日本だが、元々が供与であったので、流石に自己都合で変えるのはまずいと判断。炉心のコントロール(自壊などの安全装置)権を持つ事を条件に、同盟国のみの貸与で妥協した。また、扶桑の華族制度の是非についても、『内政干渉』ということで、日本は手出しをやめた。欧州諸国が力を持ったままなので、貴族制度は必要だからだ(世界全体の風潮として、ノブリス・オブリージュが強く残っているため、民主共和制の先駆者であるはずのガリアが貴族の権威を頼る有様であった)。貴族制度を廃したはずのガリアが貴族の権威を頼ったことは内外から批判を浴びたのは当然だが、結果として、欧州諸国の意識のほどが知れたため、日本は扶桑に華族の身分の完全廃止を迫れなかったのである。(妥協的に身分の保証の代償として、特権の縮小継続が決まったが)――
――扶桑華族は特権の縮小が進む時代になると、ある規模以上の大名や公家系の華族は財団を立ち上げ、財産と家宝の管理をするようになった。家宝の流出を恐れたのである。黒田侯爵家のスキャンダルはその恐怖を呼び起こしたわけだ。また、前田侯爵家(加賀前田家)がダイ・アナザー・デイで勲功華族となった七勇士らの庇護者となったことに倣い、大華族が小華族を養う事が増えていく。また、財産税は日本でも批判が起こってきた(バブル崩壊後は『死んだ親がいた都会の土地を相続争いの末に売るか、国に物納する子供、あるいは孫』のケースが増えていた)ので、扶桑への本格導入は(扶桑国民の暴発を恐れて)見送られた。そんな経緯な故、扶桑に永住する日本国民も増加していった。日本は結局、扶桑の国情が近代化するまで『税改革を控えさせる』ことにし、扶桑の国土の開発度合いが自分たちのそれに追いつく時代まで待つことにするのである。日本のように『国土が戦争で荒れ果てていない』からで、如何に作り直しができた戦後が『イージーモード』であったかを思い知った。日本は現状維持バイアスが強く、バブル経済の終焉時に失策を重ねたため、その15年後の2000年代始めの時点で『未来は見えていた』。故に、日本連邦の結成を選んだ。だが、異世界間の連邦など、例がない(当然だが)ので、疑問も当時から存在したが、2016年からの経済復興の目覚しさは当時の関係者を安堵させた。その仲介役は黒江であり、正木俊介元・警視総監(ウインスペクター、ソルブレインの元・司令)であった。2000年にはまだ現役であり、定年が見えてくる年齢になっていたが、彼がいたことで、ヒーロー達の自警活動が黙認されていた感があった。彼が退官した後、レスキューポリスの資産が散逸するのである。
――ドラえもんの世界 西暦2022年の厳冬。遠征の前の時間軸――
「ん、この写真は?」
「ああ、私が来て間もない頃の2003年頃、街で起こった事件を解決した事があって。その時の警察の偉い人と記念写真を撮ったんですよ」
この日、キュアドリームとキュアフェリーチェは共に休暇中かつ、のび太一家が年末年始を親類のいる北海道に旅行に出かけたので、留守番を引き受けていた。リビングに飾られた写真の日付は2003年。ことはが野比家に居着いて間もない時期の頃で、のび太が中学三年の頃だ。
「あれ、この人……風見さんの親類?」
「他人の空似らしいですよ?後で聞いた話だと、ヒーロー達の政治的な後ろ盾になってた警察のキャリア組の人らしいです」
風見や番場壮吉を壮年に老けさせたような容貌の警察の幹部らしい人物。その男が正木俊介。機動刑事ジバン~特捜エクシードラフトまでの計画を主導した『日本警察きっての実践派』と謳われた俊英であった。
「ギャバンさんの話だと、彼が地球の守りについていた時期、彼の存在を知った故に、彼らに便宜を図るように取り計らったようです。その頃には既に、相当に上の階級にあったようで」
正木俊介はキャリア組であったので、41歳である1990年の時点で警視監であることから逆算すると、その10年前には警視正になっていたのは想像に難くない。
「その頃、日本はバブル景気に向かっていた時代なのと、銀河連邦との接触で、超重犯罪の増加が見込まれてたそうです。彼はその時期に頭角を現した実践派の一人だそうです」
「実践派、か。キャリア組って、現場を通過点って見てるってのが、ドラマでのお約束だけど、実際は実践派もいるよねぇ」
実際、彼の元に集った部下達も、その時々の俊英と名高い敏腕警察官らであった。また、ギャバンたちの直面していたクラスの犯罪に立ち向かえるようにと、旧日本軍の研究の発達を警察機関にやらせていたともいう。つまり、ジバン~エクシードラフトまでの超兵器の数々は『旧日本軍が敗戦寸前の時期に素案を練っていた兵器群』を先祖に持つ事になる。
「それはそうですよ。彼らも全員が『現場より会議室が好きな連中』でもないですし。その彼が関わったプロジェクトは、80年代から90年代前半期までのヒーロー達を生む要因となったものです」
機動刑事ジバンを嚆矢に、彼が何かかしらの形で関わったプロジェクトでは、燦然と輝く実績を残したヒーローが生まれている。だが、彼がインターポールに出向していた1993年頃、彼に嫉妬する者たちが『ジバンプロジェクト』などの開発資産を使い、戦闘ロボを試作していたらしいという記録(実はそれが特捜ロボジャンパーソンのもとになった戦闘ロボ)もごく僅かに残されている。おそらくは『不祥事になる』ために隠蔽工作がなされたが、当事者の退職後にひょっこりと出てきたものが残されたのだろう。
「彼の活躍が華々しかった時期、彼を妬んだ派閥が戦闘ロボを造らせたという記録が僅かに残されていました」
「ごく僅か?」
「おそらく、その時期に現れた『特捜ロボジャンパーソン』の大元になったものだと思われます」
「あたしが生まれた頃にやってたヒーローなんだよな、それ。子供ん時にビデオで見た記憶がおぼろげにだけど……。この世界だと、実在してたんだ」
「ええ。この世界の1993年の新聞を見ると、その時期に活躍していたようです。のび太のスクラップブックに……あった」
フェリーチェは棚から、のび太が情報収集のために使っているスクラップブックを開き、ドリームに見せる。すると、1993年の新聞記事にそのジャンパーソンの活躍ぶりが報道されている。
「えーと、93年はあたしが生まれた頃で、五星戦隊ダイレンジャーが活動してた時期にあたるんだよな。その時期にいたメタルヒーローってことか」
スクラップブックにある記事には、ジャンパーソンの活動が記されている。その事から、1993年は悪の組織とヒーロー達の戦いが激しかった時期にあたるだろう。
「この世界だと、その頃くらいまでがヒーロー達の活動が華やかだったの?」
「その二年後あたりまでだそうです。後は平和になったそうで」
「そうか、この世界だと、平成ライダーは生まれてないんだっけ」
「ですね」
「なるほど。あたしらも平成だけど、世界線によっては、あたしらで終止符が打たれた場合もあるっていうけど、彼らは確実に生まれていく……少し、羨ましいな」
キュアドリームは本音をポロッと漏らした。世界線によっては、自分達はひっそりとプリキュアを退くが、彼らは悪と戦う宿命にあるのだから。
「こんな事、昔にココに言ったら、怒られてたかもしれないけどさ…。あたし、プリキュアになったことで自分に自信が持てたってところあってさ。で、普通にナイトメアやエターナルと戦えてた事が後で嬉しくなった。だから、前世じゃ、全部が上手くいかなくなった時に、この力にすがった。ある意味、青春の輝きそのものだったからさ、この姿は」
自嘲気味だが、それが彼女の偽らざる本音でもあった。
「だから…また戦うことになった時…嬉しかったんだ。しかも本当に若返ってたし。前世に未練がないわけじゃないけど……」
「それが貴方が死ぬ時に抱いた『偽らざる願い』だったんですよ。昔に戻りたいという…。だから、その姿を取り戻した。ココもそれは否定しないと思いますよ」
「そうか、そだよね……。フェリーチェ、腹減ったよ~」
「冷蔵庫のレトルトは勝手に食べられませんし……ピザでも頼むか、レストランで食事します?」
「この近くにレストランあった?」
「街境のあたり(裏山の裏)にデ○ーズができましたよ。ちょっと歩きますけどね」
「のび太君の昔の家よりは楽になったから、行こっか」
身支度(カードや現金、身分証入りの財布を持参)を済ませた後、二人は歩きでファミレスに向かった。プリキュアの姿で街を闊歩するわけだが、この時代のススキヶ原では『当たり前になった光景であった。プリキュアの姿であれば、外の寒さはさほど気にしなくていいので、ある意味では便利であった。二人はこの時間軸での『現役のプリキュア』ではないので、さほど通行人の目に止まらない。むしろ、軍人である事が知られていることで『公務中』と見なされているのかもしれない。二人の現役時代ではありえない光景だ。
「変身してなきゃ、堪える寒さだなぁ」
「ですね。何食べます?」
「えーと、給料持ち込んであるから、ステーキを大盛りで。もちろん、デザート付き。若い肉体に戻ったってことは、大盛り食えるってことだし♪」
のぞみAは転生で全盛期の体に戻った事を嬉しがっており、成人後には次第にできなくなった『大盛りステーキをほうばる』ことをしたいらしい。肉体的に歳を取らないことはだが、その気持ちはわかる。
「若返ったの、楽しんでますねぇ」
「素で、10代の体ってのはいいもんだよ。歳を食った時みたいにウジウジしなくて済むし、教師時代はそれで病んだようなもんだしさ」
のぞみAは教師になったこと自体に後悔はないが、なった後の時代は地獄であったようで、なった後のことは語っていない。また、10代の体に戻ったことに狂喜乱舞しているのが窺える事から、就職後は相当に過酷な労働環境に身を置き、次第に病魔に侵されていったらしいことを示唆する。
「世知辛いですね」
「世は非情……・とはよく言ったもんさ」
キュアドリームは時たま、ポロッと前世での失敗話を話の種にする。彼女をして、嫌気が差したと言わしめた『前世での過酷な教諭生活』はどんなものか。それが窺えた。