――扶桑海軍はクーデター後に組織再編の名の下に大鉈が振るわれた結果、怪異対策に強襲揚陸艦の航空運用がなされることで決着した。空母は国家総力戦では、集中運用が肝(核兵器が存在しないためだが)なのだ。扶桑は1946年から急ピッチで艦艇の近代化に邁進してきたが、旧型の軽空母や護衛空母の穴は簡単に埋めらめるものではない。怪異がいなくなったわけではないため、一部は現場判断で、練習空母の名目で使われている。そうでなければ、突発的な怪異の出現に対処できないからであった。空母機動部隊のこうした形骸化とはうってかわり、打撃艦隊は急速に戦後世代への更新が進んだ。その一方で、重巡や戦艦などの大戦中の区分が生き続けている事に日本の財務官僚から反対論が吹き出てもいた。だが、モンタナ級というバケモノは戦後の対艦ミサイルでは『費用対効果』が却って低い(上部構造物を破壊できたとしても、沈めはしない)現実があるため、財務官僚達も砲熕型大型艦艇の運用の継続を認めた。戦後の小~中口径砲では、最終世代の戦艦の重要部の装甲は貫徹不可能(もし、第十雄洋丸事件のような案件が起こった場合、護衛艦の砲では撃沈は至難の業だが、戦艦や重巡の火力であれば、容易に撃沈できる)であるのは、子供でもわかるからだ――
――モンタナ級の撃沈には、戦後型魚雷であろうと、片舷に6発~7発の命中は少なくとも必要であるが、アメリカ流のダメージコントロールがある以上、10発以上の消費はやむを得なかった。野党に『金の無駄』と言われるのを恐れた日本政府は、扶桑艦隊に戦艦の相手を丸投げした。これが扶桑に戦艦部隊の維持の大義名分を与えたのである。モンタナはアイオワと設計思想の異なる『重戦艦』。それに対抗するには、超大和型戦艦を揃えるしかないのである。航空部隊での攻撃より、戦艦での艦隊戦が確実とされる逆転現象が起こったわけだ。そのため、次元ゲート付近の海域での艦隊戦は珍しくない事と言えた。その過程で鹵獲された個体はいくつかあり、その内の数隻は2010年代末頃にアメリカ合衆国に譲渡された。その見返りに、扶桑に戦車戦のノウハウが伝えられ、戦闘機の生産ライセンスも提供された。太平洋戦争は『史実戦後の西側諸国兵器の博覧会』の様相と化していたのである。扶桑本土の守りはM41軽戦車にさせ、南洋に重戦車を回すというドクトリンは当分の間、維持される事になる。本来は大陸領奪還のため、重戦車の整備がされていたので、それが実質的に『放棄された』事は極秘事項とされた。政治的意味で、政権の致命傷になりえたからである――
――扶桑の大陸領土の問題は1990年代まで先送りとされ、数十年は議題にせずに済むわけだが、その間に、戦国期以降に築いていた生活基盤の回収作業は進めなくてはいけない。作業班は1949年に生きる大人らの孫の代まで仕事をし続けなくてはならない。戦国期~安土期の財宝や鉱物資源の回収も仕事になるからだ。同時に、宇宙進出の準備も進める事になった。怪異は月や火星にもいるであろう事は既に予測されており、扶桑は1969年を目処に、宇宙軍を設立する腹づもりであった。64Fに管理させている宇宙艦隊はその布石であった。全ては生き残るためであった。同時に、未来世界の関東平野が宇宙船に改造されていた事実を鑑み、扶桑の1949年時点の主要領土を宇宙船に改造する作業も2000年を目標に、既に始まっていた。同時に、机上検討として、地球そのものを動かすことも研究される。このように、扶桑は宇宙に生き残りのための希望を見出す形で、連合国全体を巻き込んでいくのである――
――水戸型戦艦『水戸』は初陣での活躍の後、プロパガンダ的意味合いで、第一戦隊旗艦と連合艦隊旗艦に就いた。魔女の世界では、大淀のような巡洋艦級が国の艦隊総旗艦になる余地は(生存性の問題で)無く、なし崩しに連合艦隊の旗艦は戦艦がし続けていた。連合艦隊旗艦という地位でありながら、前線で戦うのは半ば強制であったが、水戸型は(通常の戦艦の範囲では)当時に最強を誇っており、問題とされなかった。播磨型の小改良と通告されていた日本側だが、武装の強化具合が尋常ではないので、小改良とは見なしていなかった。史実では実用化されていない砲が載せられているのはもちろん、上部構造物の外観も当初から、宇宙戦艦ヤマトそのままであったからだ。戦艦や重巡などの整備では、日本は手出しのできない聖域に近かった。設計・製造ノウハウが第二次世界大戦の終わりと共に失われていたからである。戦艦はともかく、一万トン級の重巡でさえも作れないのは、無知な民間から野次られたが、21世紀では、軍艦に厚い装甲を持たせる思想が死に絶えて久しい上、連装以上の砲塔を造るノウハウもとうに失われていた。駆逐艦の砲の取り換えなら可能だが、重巡級の連装砲になると、お手上げ(装甲付きの艦砲としての20cm連装砲の製作も、日本には不可能であった)であったのだ――
――このように、砲熕型大型艦の直接的な打撃力は戦後型のミサイル艦で完全に代替できるものではなかった。怪異に迎撃される可能性もあったからだ。逆に『エネルギー兵器』が有力視され、高角砲と機銃は一般艦もパルスレーザーに将来的に取り替える手筈であった。水上機はヘリコプターで代替され、超甲巡は大工事で艦橋とマストの形状が大和型戦艦(改装後)と規格統一され、艦容を竣工当初から一新した個体、当初からその仕様で建造された後期型とに分類された。元々、甲巡を代替する意図で建造されていたが、日本側の意向で『普通に戦艦だろ』ということで、『大口径速射砲を積む巡洋戦艦』に分類変更されてしまったために、既存のそれは年単位での(装甲の強化、機関換装を伴う)大改装が必要となり、艦政本部は大いに嘆いたという。超大和型戦艦が主力となった時代故の混乱であった。取り外された31cm砲は要塞砲や高射砲台に転用され、一定年数は現役であったという。一連の混乱は空母機動部隊の形骸化と併せ、『海軍事変』と後世に語り継がれていく。連合海軍の形骸化(ブリタニアの軍縮、ロマーニャ海軍の壊滅など)に伴い、大型戦闘艦を一国で多数を維持せねばならない身の上となった立場の悲哀がそこにあった――
――ガリアはペリーヌ・クロステルマンの願いと裏腹に(彼女の政治ミスもあり)革命前夜の再来の様相となった。パリ陥落に至るまでの共和国軍高官らと政府の醜態、ガリア革命期の革命政府の旧王家への暴虐などが白日のもとに晒された結果、大衆が疑心暗鬼に陥ったためである。ペリーヌ・クロステルマンが国土復興至上主義的な思考のもと、国民の娯楽イベントにも消極的であったことへの反発も強まり、ペリーヌ・クロステルマンは七度も暗殺未遂事件の当事者となった。日本が短期間に復興できたのは、日本人の勤勉な国民性によるものであり、ある意味、タガが外れた場合に『極端に走る』前歴のあるガリア国民には極めて困難な事柄であったのだ。ペリーヌがそれを理解した頃には、ガリア国民の体制への不満は大きくなっていた。結局、ド・ゴール派は体制の維持を名目に、ティターンズに接近し始め、ガリアは日本連邦を仮想敵とする形で『1946年以降の時代』を迎えていく。ペリーヌはド・ゴールの失脚と『ボナパルト時代の再来』を恐れたが、彼女の努力ではどうにもならないほどに、ガリアはズタボロであった。彼女は1946年頃、実質的に日本連邦へ移住する。幸いにも、ド・ゴールが政治家として、そこそこ優秀であった事から、完全な破綻は来さずに済んだが、日本連邦と対決するには国力が衰退しすぎていたのである――
――扶桑空軍はレシプロ軍用機の大半の軍役解除に伴う数的劣勢を補うため、オーバーテクノロジーを率先して導入していった。これにより、MSやVFが普及していった。これに驚いた日本側は慌て、F-2戦闘機の生産ライセンスを与え、レシプロ双発攻撃機を退役させる事とした。この施策により、四式重爆や銀河などの旧軍型双発機は退役となった。コスモタイガーやコアイージなどの未来戦闘機はレシプロ機の退役で生まれた、大幅な数的劣勢を補うために導入されていったのだ。多発機の富嶽と連山はまだ転用が効くため、現役に留まっているが、それも1950年を目処に減勢を始める手筈だ。この刷新により、『魔女の世界の他国』への軍事的優位性が数十年は安泰である見込みであった。大半は戦後第一世代型の開発でさえも四苦八苦しているので、第四世代機の開発が終わりつつある扶桑は『最低でも25年』ほどは絶対優位にある見込みであった。その関係で、史実の戦闘機同様に開発が遅れる『航空ストライカー』は部内で軽んじられる存在と化した――
――他国はダイ・アナザー・デイで多くの戦力が失われ、その後の軍事的劣位を決定づけてしまった。モンタナ級に対抗できる艦隊戦力が日本連邦とキングス・ユニオン以外になく、ガリア、カールスラント、ロマーニャの三カ国はそれぞれの理由で形骸化してしまった。キングス・ユニオンも近代化名目での軍縮に走ったため、日本連邦が数的主力を担う必要が生じた。これが日本が軍縮の『押しつけ』に失敗した理由であった。太平洋戦線で旧式兵器が『数合わせ』に使用されたのも、兵器が足りない上、弾薬の在庫がだだ余りであったのだ。64Fがダイ・アナザー・デイで使った『MG151/20』も在庫処理の一環であった。(弾薬が戦後のNATO規格になれば、戦中ドイツの独自規格である薄殻弾頭は淘汰される運命にあったため)64Fは歩兵戦でも同機関砲を使ったが、それは圧倒的多数の敵装甲車や歩兵の掃討用であった。とはいえ、異能を使ったほうが効率が良かった事から、使用弾数は終結時点で30万発程度に留まった。機関砲本体も(プリキュア覚醒者と異能持ちが作戦の主軸となった都合で)未使用の個体が多く残された。ミーナの失脚後、グンドュラ・ラルが主導し、隊員の使用火器の大口径化が進められたが、組織の64Fへの改編や異能持ちの主軸化で作業が停滞した。接近戦用の武器のほうが需要があったからである。スーパー戦隊(昭和末~平成初期)の協力で、武器その他は揃えられたが、銃器の更新は後回しにされた。薄殻弾頭はその場繋ぎで使われたのである。――
――遠征中――
「弾薬庫の薄殻弾って、ドイツが戦中に作ってたアレか?」
「弾薬庫で余ってたやつだよ。カールスラントの本国で腐らすより、俺達が使ったほうが幸せだよ。扶桑でコピーも8割方できてたが、戦後規格のバルカン砲とリボルバーカノンの弾丸で淘汰されて、生産中止だ」
カールスラントの薄殻弾頭は1940年代の在来型航空機関砲弾としては最高峰の威力を誇っていたが、当時の他国では『精密過ぎて、コピーもできない』、『遠隔地に補給できない』との理由で使われておらず、在庫が余っていた。64Fは地球連邦軍のバックアップを得たがために、カールスラントから運び込み、数十万発をダイ・アナザー・デイで集め、使用した。
「あんたが包帯姿なのは珍しいな?」
「相手が相手だ。仕方がない。治りは早いから、あと一週でギブスは取れるがね。うちの本国の弾薬庫にまだ数十万あるから、ウチで消費せにゃならん。カールスラントの在庫は六割くらい消費したけど」
薄殻弾頭は生産中止(NATO規格に置き換えられたため)となったが、需要は残っていたので、既存の弾がカールスラントから運び出されていた。カールスラント空軍は形骸化していたため、扶桑空軍がその使用者になっていた。これは九九式二〇ミリなどの既存の機銃の多くがジェット機用のリボルバーカノンとバルカン砲に置き換えられてきているが、魔女の装備としての在来型の需要があるからである。カールスラントとしては、本土奪還のために増産していたのだが、ドイツが生産中止にさせたため、カールスラントの軍需産業は瞬く間に経営危機に陥った。同国そのものが無気力状態となったため、結局は本土奪還を容認(魔女の世界では、ポーランドが歴史的に存在していない)し、生きる気力を与えるしかなかった。日本連邦が国家総力戦前提の軍隊を維持せざるをえない事情はここにもあった。
「あんたらの軍隊はどうなるんだ?」
「史実のアメリカの役目を背負わされたようなもんだからな。半世紀は忙しいだろうよ。史実と違って、戦艦が現役のままで21世紀になるだろうから、海軍一つとっても、違うしな」
魔女の世界では、潜水艦に軍事的メリットがさほどなかった事から、潜水艦の発達は別の方向性となる。弾道ミサイルも、軍事的にさほどのメリットがない事から、さほど開発はされないだろうという予測がある。その事から、戦艦が生き続ける理由は充分にある。空母も高額化のデメリットがクローズアップされるため、中小国は持てなくなる。その事から、日本連邦は戦艦と空母をかなりの数で維持をせねばならない。リベリオンを武装解除するまで叩くのは、扶桑の国力的にも、物理的にも不可能である。
「ハワイを落として、西海岸の一時占領が国力上の攻勢限界なのはわかってるからな。問題はそこまでこぎつけるのに、5年で済めば御の字だ」
「ハワイは大陸の一部じゃないのか?」
「アニメと違って、1940年にあのあたりで地殻変動が起こった記録がある。その時に大陸から離れたんだろう」
「ずいぶん最近だな?」
「つながってた箇所が切れただけだから、影響もさほどなかったんだろう。和平交渉になった時に返還を要求して、それが国境になるだろう。ウチの世界じゃ、ハワイは元々、日系国家のものだからな。アメ公がなんといおうと、な」
「それにこぎつけるのに、軍人の犠牲はどんくらいいると思う?」
「100万は消えるだろうな。日本が意図的に中堅軍人の多くを殺すだろうから。陸海の参謀級は自衛隊に在籍できた記録のある連中以外は8割方が帰れんだろう」
黒江はブライアンのお目付け役として、キュアビートの体を借りているゴルシにそう言った。日本の大衆は扶桑の職業軍人を100万単位で殺しても、良心の呵責はない。むしろ、自分達を地獄へ追いやった報いだと思っているだろうと。
「いいのか?」
「良くも悪くも、日本の大衆は軍事に無知な連中だ。特に戦後はな。俺達よりも、よほど質のわりぃもんだ。お前らだって、自分達が走る裏で、トレーナーや協会の間でのダーティーなやりとりがあるのは知ってるだろ?」
「ああ。オグリの時のが有名だが、マルゼンの時のゴタゴタもなかなかだぞ。のぞみから連絡があったが、その世代の大物がチンピラに身をやつしてたそうだ」
ウマ娘達の努力が政治的理由で報われない事は多々あった。マルゼンスキーの現役時代の悲運は、当人ばかりか、世代ごと不運に追いやられてしまった(引退後も協会の役職につけなかったりした)ところがある。
「あの世代はどこまでいっても、不幸に見舞われるようだな。日本競馬史上で最高に不幸と言われたが……」
「マルゼンも不幸だったけど、その周りは更に悲惨だったからなー……」
マルゼンスキーが自動車運転が可能な齢になり、高校を卒業するであろう年頃になって尚も学園にいられるのは、現役時代の不運への償いを兼ねた措置だろうと、後代のウマ娘たちには予測されている。
「お互いに、避けようがないものはある、か」
「うむ。俺達はもっと深刻だよ。日本の大衆は戦後の繁栄を殊更に神聖視するからな。だから、戦前の軍部を地獄に落とそうとするんだろう。300万の内、200万くらいは軍属なり、正規軍人のはずだが、徴兵だったしな」
扶桑軍人はこの日本人の心の相克に苦しめられているといえる。アメリカに復讐したいが、当時の軍部には地獄を味わせたいというものに。戦中の航空産業が温存されれば、それを利用し、アメリカ航空産業の下請けも同然の有様から抜け出せるというのに。日本の政治家はそれに甘んずる事を良しとしている。その結果、扶桑の航空兵器開発力は大きく下落した。最も、軍需の技術を民需に転用したからこそ、戦後の自動車産業の繁栄があるのだが。結局、扶桑は『帳尻合わせ』で史実アメリカの代わりに血の献身も果たさなければならないため、日本と異なり、アジア太平洋唯一無二の先進国として君臨していく。その過程で、扶桑の軍民。双方の旧来の価値観は形骸化か、霧散していく。海軍航空の集団主義もそれだ。
「この戦争で、扶桑の価値観は戦後日本に近づくだろうが、欧米の力が残ったままだから、貴族階級は必要になる。市民革命して、欧州を血に染めてるうちに怪異に襲われて、民族が絶えるなんてのは普通にありえるから、欧州も貴族階級の形骸化はさせたとしても、身分の否定はせんだろう」
ガリアは奇跡的にそれを免れたが、ナポレオン時代の軍事強国の面影はすでに無く、開戦初期に無様を晒した。その事が民主共和制の存在意義を揺るがせたのは言うまでもない。黒江の世界では、ノーブルウィッチーズが死産に終わった結果、ド・ゴール派が旧貴族の権威に頼った現実が白日のもとに晒された結果、ガリアに再び革命前夜のような混迷が訪れている。ダイ・アナザー・デイで欧州の力が弱まったと言っても、貴族階級の権威は逆に保たれた。彼らが率先して闘ったからである。結局、それらの理由で、日本は扶桑の華族を消し去る事はできなかった。逆に、華族の当主が(ノブリス・オブリージュの徹底のために)女性の士官になるケースが続出したからである。そうした扶桑華族の日本国内での取り扱いにも難儀したため、結局は爵位の賞罰をきちんとする以外は現状維持となった。ガリアのように、貴族階級はないことになっていても、権威として残ったケースもあるためだった。
「イギリスには残ってるしな」
「昔の旧王家や貴族の家柄が名家扱いされるのと同じだ、日本の元の華族だって、武家や公家だった先祖の権威で偉そうにしてるが、それが許されてるからな。だから、うちの家族制度が欧州に近めの運用だった事に驚いてな、日本の連中」
かくいう黒江は士族の出であり、父は若かりし頃に砲兵大尉として従軍した経験があったという。退役後に事業で一定の成功を収めていたので、元から社会的地位は高い。綾香本人は事変とダイ・アナザー・デイの戦功で勲功華族に叙爵されているので、以降の世代の黒江家は華族として遇されるのである。
「俺も一応は子爵だ。ダイ・アナザー・デイで騎士爵になったが、上げられた。例の案件で権威付けが必要だったんでな」
「ああ、例のアレか」
「あの件は外交問題になりかけた。パットンに悪役を演じさせたのは、あいつ(ミーナ)は上層部不信が過ぎてたから、悪役が必要だったからだよ。外交問題になってるのに罪悪感を与えるための、な」
「だから、パットン将軍にコテコテの悪役をさせたのか」
「ロンメルみたいな紳士タイプより、パットンみたいなタイプは効くんだよ。階級が佐官級の魔女に。うまく脅せるからな。21世紀からすりゃ、パットンは野蛮だろうが、ああしないと、上の統制が効かんのも事実だ。ミーナの年代の連中は政治かぶれも多かったしな」
パットンは戦時でなければ評価されず、出世もできないタイプと評される。だが、実際には意外と機転も効き、人望もあるので、将軍になれた。実際は圭子の尻に敷かれる立場であったのは周知の事実。
「お前さんもワルだな。将軍達を使うとは」
「そうでなきゃ、舐められるからな。軍隊は階級よりも、どっちが先任かどうかで偉さが決まるとこあるし。おまけに、戦時の空軍はスコアの多さで決まるし」
カールスラント空軍は100機以上の撃墜王は当たり前であったのも、日本が扶桑に『黒江達の未確認スコアを公認させる』流れを決定づけた。結局、黒江達の膨大な未確認スコアの認定は外交問題の発覚でなされたと言える。
「将軍達をあごで使えるくらいの権威と実力だもんな、あんたら」
「お上のお気に入りってのも効いてるな。事変でクーデターを鎮圧した実績あるから」
「で、件のヤツの罪状は?」
「機密指定が解除されたから言うが――」
ミーナの最終的な表向きの罪状は『増員に人種差別的な扱いをし、別世界勢力からの厚意を無駄にした』というもの。表ざたにできる罪状としては、それらが限界であった。実際はもっとある(軍事戦略の頓挫の原因など)が、外交関係の都合で表ざたにはできないので、ミーナ個人で明らかに悪い事柄だけを羅列したのである。
「……というわけだ」
「20世紀半ばで同性愛はなー……。社会的に抹殺ものだろ」
「21世紀基準でやっとだから、1940年代半ばはあかんだろ?」
「言えてるな。一般市民はイカレポンチの烙印押すだろうしな。だから、表向きの消息を精神病棟行きにしたのか」
「理由を精神病にしときゃ、一般市民は興味を無くすだろうからな」
「時代だなぁ」
「戦中の頃はそういうもんさ」
「まぁ、あたしもレースのこと考えなくていいから、気が楽だぜ」
「お前は元からG1を六勝できるから、さほど気にしてねぇくせに」
「互角に戦えるのは、指で数える程度なのは事実だしな」
キュアビートの体を借りていても、ゴルシはゴルシである。ただし、態度は普段より真面目寄りだ。また、前世の記憶から、自分がトップクラスのウマ娘である自覚もあるようで、レースのことは気にしていないようである。
「で、どうだ?ウマ娘以外に扮するのは?」
「息抜きになるぜ。あたしらが関わってる事は表ざたには……」
「しねぇって。ブライアンやお前と結んだ密約に近いしな」
「サンキュー。仮面ライダー達は?」
「残敵の掃討に入ってる。あとは粘ってる陸軍の排除だからな。」
「この戦いを映画撮影で誤魔化すには、もう無理あるだろ?」
「ああ。だから、国連機関の査察が入るってシナリオで誤魔化す。自衛隊や海保に海底軍艦は見られてるからな。日本人の習性を利用する」
プリキュア5の世界の動乱は表ざたになりつつある。プリキュアが存在する世界なので、仮面ライダーがいても不思議ではないため、代表で一号ライダーが顔出しする(変身後の姿で)との事。また、のぞみAのいた世界と違い、他のプリキュアが世に知られているため、プリキュア5も変身後の姿のみは認知されているらしい。
「あ、それと、ここののぞみがブライアンの使った技は何かって言ってるぜ?」
「ズワルト・シャインスパークだ。シャインスパークの派生だが、リバースゲッター反応を応用してのもので、闇属性がないと使えないって伝えてやれ」
のぞみAとブライアンは闇属性を持つがため、ゲッターノワールGの『ズワルト・シャインスパーク』を撃てるが、闇落ち要素をほぼ持たない『現役時代ののぞみ』にはその素質がないということだろう。
「スペックに差がありすぎだろ」
「仕方がないさ。映画版のパワーアップをして、やっと改造人間に引けを取らないくらいになる、インフレバランスだからな。あいつはうちのと違って、青い。無理はさせられん」
「逆に言えば、三号は光の速さやクロックアップに対抗できるってことか」
「そうだ。聖闘士になった俺を骨折に追い込めるって事は、ここのあいつじゃ『アリと恐竜』くらいの差があるってことだ。ましてや、あのフォームは戦闘向けじゃないからな」
ドリームキュアグレース(キュアドリーム)は史実では、浄化のために変身したようなものなので、実際の戦闘でのポテンシャルは不明な点が多い。そのこともあり、黒江は戦闘向けではないと解釈していた。とはいえ、利点も多く、少なくとも、通常のパワーアップ形態よりは上位のパワーアップをもたらすのは事実であろう。
「やけにひらひらしてるもんな、あれ」
「こっちのあいつは通常フォームを洗練させる方向性で強化されてるが、あれは戦闘に特化した進化って感じだ。方向性が根本的に違う。子供向けの本とかで比較対象にされそうだが、目的が違うからな。マジンガーとゲッターの武器を再現できる特殊能力、更にはマジンガーZEROの持っていた魔神パワーも使える。戦闘向けのチート満載だ。その割に無敵じゃないのは、いい塩梅ってヤツ」
「あまり強すぎると、迂闊に使えない時あるもんな」
「なにせ、あいつのパワーは今や、超合金Zくらいなら、余裕で壊せるくらいだ。それをブライアンは使ってんだ。言うならば、ものすごいモンスターパワーのオートバイを転がしてるみたいなもん。多分、元に戻っても、ジェンティルドンナにも当たり負けしなくなるだろうさ」
「ジェンティルはオルフェをぶっ飛ばせるからな。素で耐えられるのはアタシだけだ。最も、ジャスタの奴が史実だと抜かしたこともあるから、奴も意外に弱点は多い。問題はアーモンドアイだ。あいつが来たら、中距離じゃ、ルドルフでも勝てんぜ」
アーモンドアイの実力は十八番の距離では、『歴代牝馬三冠で最強』の呼び声も高い。そのことを口にするゴルシ。
「あいつが来たら、テイオーの次の生徒会長になれると思うぜ?その資格は充分にある」
「ディープインパクトは生徒会長に興味ねぇし、オルフェは向いてねぇ。アーモンドアイが女帝になるだろうな。文字通りに」
ゴルシも、テイオーの生徒会からの引退後、その後釜がアーモンドアイで落ち着くだろうという予測を早くも立てているようだ。
「で、問題が起こったって?」
「別世界で2019年前後に暗躍するはずの怪物が目撃されてな、ガキどもに対処させてる。この街の付喪神が闇堕ちしたって話だ。ブライアンにストナーサンシャインでも使わせて、早期にケリをつけさせる。Gフォースの隊員に、陰陽師の家柄の奴いるから、街の時計台のお祓いをしてもらうことも決まってる」
「いるのかよ!?」
「ドラえもんの世界の日本、異能持ちが多いんだよ」
それはオトナプリキュア世界を本来であれば、騒乱に巻き込む怪物『シャドウ』のことだが、出撃した世界が悪かった上、現役バリバリのオールスターズがいる事、Gフォースには平安時代からの陰陽師の血を母系で受け継いだ隊員がいる事から、逆に早期に鎮圧される見通しであった。元々、世界の悪意を餌に生まれるモノであり、地球意志の発露とも言えるものであったが、ゲッター線の降り注ぐ量が増加した上、明確に『生きる意志』を持つ人間の前では、星の意志といえど、無力に等しいのだ。
「多分、陰陽道で封印した上で、ストナーサンシャインで消し飛ばしゃ、未来永劫、あの怪物は現れん。そうでなきゃ、プリキュア無しで、プリキュア5の世界が21世紀まで続いてる理由がないし、世界線によっちゃ、裏で1000年女王が統治してたんだぞ?」
「確かに」
逆に言えば、正統な陰陽師の力は『プリキュアでも根本的な封印が難しい妖異』にも対応できるという事でもある。21世紀には忘れ去られ、そのノウハウも時代遅れかつ、形骸化したとされるはずの学問は『異能』という形で本来の役目を果たそうとしていた。
「陰陽師がプリキュアよりもある意味で優れてるってのは?」
「安倍晴明公の系統のみの特権みたいなもんだな。公の男系はとうに絶えてるから、母系で残ってた系統の一つなんだろう。漫画みたいな話だよな。俺達が言う事でもないが」
歴史上の陰陽師でも天才とされたのが、安倍晴明であった。その後の記録からも、彼の一族が陰陽道の要職を独占していた時期があったほどに繁栄した事はわかっている。式神などがプリキュアの力よりも妖異に有効なのは、古代中国以来の研究の成果であろうか?それはわからない。そもそも、日本の陰陽師は古代中国のそれとは違うものとなっているという話もあるが、日本にも、扶桑にも、陰陽師に関しての平安時代以前の細かい記録は残っていない。
「あとでレポートでも出させっか?」
「そうしろ。TVの話をワンクール分は作れるかもしれねぇぞ?」
と、怪物の事は脅威と見ていないことがわかると同時に、陰陽師の存在がここにきて、『妖異の封印』に有効ではないか?ということに『二人の興味がある』ことがわかる。
「件の隊員の来歴と家系を調べさせる。嫡流じゃないにしろ、安倍晴明公の血を継ぐなら、出身地に何かしらの口伝が残ってるはずだ」
その隊員が何者なのか?なぜ、とうの昔に絶えたはずの正統な陰陽道のノウハウを完全な形で持っているのか?謎だらけである。黒江はその謎にも取り組むことになるのだが、とにかくも、妖異に確実に有効な手段を得られたのは確かであろう。