ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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プリキュア5の世界編です。


第六百三十二話「古の妖異祓い、ブライアンの一仕事」

――プリキュア5の世界で戦う遠征軍は残敵相当に入っていたが、本来はオトナプリキュアの世界で出現するはずの『シャドウ』という怪物が出現し始めた。海底軍艦の戦闘で、街の付喪神が勝手に闇落ちしたらしい。Gフォース隊員にたまたま、陰陽師のノウハウを受け継ぐ者がいたため、シャドウの完全な封印がそれで実現した。妖異との知られざる戦いを平安期に行っていたという伝説もあるため、意外なところで戦力となったのである。日本では信仰も薄れ、忘れ去られた存在であった陰陽師だが、その力を受け継いでいた者により、脚光を浴びたのである。プリキュアの力さえ『決定打にはなり得ない』という研究結果の出ている存在を封じられるというアドバンテージが陰陽術にはあったのである――

 

 

 

――元々、魔女には陰陽道の知識を備える者もいたという伝説があった。扶桑陸軍はその名残りか、巫女装束を戦闘服にしていた。その理由が巡り巡って、シャドウの完全な封印に役立ったのである。陰陽道の知識は黒江たちも先祖の関係で、多少は持ち合わせていた。それが役に立った。かの安倍晴明に匹敵しうる才を持つ者が21世紀以降にに現れたのなら、先祖返りに近いだろう。世が世なら陰陽頭(陰陽道を所管していた『陰陽寮』の長官)になれたであろう。近代より前の時代には、彼らは表向きの仕事以外に、妖異と闘ったという伝説が残されており、ドラえもんの世界では『怪異が完全形態になる前に討伐され終えていたのでは?』という説が唱えられ始めている。安倍晴明の末裔である土御門家も、2010年代には本家が消息不明との事なので、分家筋の者に家祖に匹敵しうる力を隔世遺伝で持つ者がぽっと出ても、なんら不思議ではないのだ――

 

 

 

――戦場――

 

「今は21世紀だぞ?今更、陰陽師でもなかろうに」

 

「仕方ないよ。あたし達の力は所謂、対症療法のようなものなんだって、こいつらに対しては」

 

「まさか、御札や式神が大手を振って使われて、本当に効果があるとは…。歴史書やTVの中の話だと思っていたよ」

 

ブライアンはキュアドリームに扮しているわけだが、自身もウマ娘として、神事と無関係ではない。弓術などの心得があったので、御札を矢に貼り付け、それを射る方法でシャドウを封印する。

 

「うん。あんたらだって、予想外だろ?」

 

「まぁね。御札なんてカルトとかが使うもんだってイメージあったけど、まさか自分が妖異を封印するために使うなんて」

 

シャドウは調査の結果、プリキュアの固有技にも耐性がつく(本来いるべき世界では、プリキュアたちはタイムフラワー由来の力を使うためか、技が往時の定格出力を出しきれない事があった)事があるため、陰陽師由来の力で封印したほうが確実だという結論に達し、Gフォースが緊急で用意したものであった。シャドウの完全な封印には『霊力』が必要であったのである。霊力が込められている御札に封印した後、ストナーサンシャインで完全に消滅させる策が取られていた。

 

「人々の悪意を媒介に増えるヤツなら、霊力で対抗するしかないってのも、映画みたいな話だな」

 

「昔あったね。安倍晴明……だっけ?」

 

「そうだが、母系で血を紡いできた一族が残っていたとはな。男系はとうに絶えたと聞いている」

 

安倍晴明の一族は阿倍御主人という、大昔の右大臣を祖にする説もある。少なくとも、家名を『土御門』を称した近世の頃に嫡流は絶えているとの記録があるが、支流があったはずなので、その内のどれかの出であるのが、件の隊員なのだろう。

 

「支流があるはずだしね。平家一門も落ち延びた一門がいたわけだし」

 

キュアハートも転生後に戦車道の関係で、奉納などの儀式に関係したためか、霊力の素質(式神などを使役できる)があった。その関係で、陰陽師関連の道具を完全な形で使用できたのだ。

 

「豊臣家にもそういう伝説があるからな。しかし、正統な陰陽師は絶えそうなのだろう?」

 

「21世紀の公的な記録によれば、ね。土御門家も華族制度の廃止で没落して、その嫡流は消息不明らしいよ。支流に属する家柄の青年が2010年代にいたらしいけど、そっちも不明」

 

その青年とは、上条当麻の悪友であった土御門元春のことだが、学園都市の解体後の消息は不明で、戦いで戦死したのか、隠棲したのかさえも不明であった。2010年代を境に、魔術と科学の対立が終焉した上、その後の時代には、十字教すら『神も仏もない』宇宙戦争の繰り返しで宗教としての求心力が衰退したのあり、23世紀以降は(戦闘要員としての)活動が停滞しているという。だが、そのノウハウ自体は残されており、黒江達はそれを収集することで『魔術への初動対処』としている。とはいえ、広義の魔術に属する陰陽道の研究は『魔女の世界』では平安期以前に停滞して久しかった。そのために、他世界で洗練された状態のものを得る方向でノウハウを取得している。ダイ・アナザー・デイ以降、空母の飛行甲板に魔術処理がされなくなり、そうした仕事で食いつないでいた魔女も軍属から離れて久しかったからだ。

 

「必要とされなくなると、消えるのも早いからな。軍馬と騎兵しかり、戦艦しかり……蒸気機関車……」

 

「あれ、あなたの世界じゃ?」

 

「馬はいないが、ウマ娘も従軍していた過去がある。今でも、引退後に自衛隊や警察に就職する例はある。最も、協会の理事職になるのが、競走ウマ娘経験者としての最高の名誉とされているがな」

 

「引退したウマ娘ってどうなるの?」

 

「脚が健在なら、市民ランナーになって、草レースを楽しんでいる者もいる。まぁ、脚に重大な怪我を負って競走生命が絶たれたか、衰えで引退した場合は誘導ウマ娘になることもあるが、これとて限られた枠だ。それに、同世代で差がありすぎると、引退後の進路が世間の評価一つで決められることもあった」

 

「そんな事あるの?」

 

「私の先輩のマルゼンスキーが現役の時代、その同期たちが悲惨な事になったんだ。大レースを勝ったウマ娘ですらまったく評価されず、マルゼンスキーへの敗者として二軍扱いしたんだ。私らからすれば信じられんが、先輩は帰国子女だった故にクラシックレースに出れなかった。その悲劇性、その一個上に華の三強と言われた三人…先々代の生徒会長たちがいたことから、彼女らを世間は評価しなかった。いくら努力しようと、な」

 

マルゼンスキーの現役時代、マルゼンスキーの悲劇性は世間の同情を生み、同時に同時期のクラシック制覇ウマ娘の評価を奈落の底に陥れた。彼女らは(プレストウコウのように、後進に史実での子孫の魂を持ち、足跡を追ってくれるウマ娘がいるのが相対的に『勝ち組』とされるレベル)後進を育てる権利を持たせる事すらも事実上、(世間によって)許されなかった。この時のブライアンは知らなかったが、実際に『八大競走の覇者』級のウマ娘がチンピラ同然の有様に落ちぶれてしまった事が確認されるのである。

 

「それでどうなったの?」

 

「協会の暗部にも絡んでるせいか、しばらく機密指定した上、学園理事会の一部が当時の記録の多くを独断で破棄しやがったんだ。そのせいで消息を追えんヤツがいる。仮にも、大レースを勝てた連中を、だ」

 

マルゼンスキー世代のウマ娘の落ちぶれぶりはこの後、実際に確認された事により、当時からいる『反シンザン派』の凋落を決定づけると同時に、協会のその当時の『マルゼンスキーの同期の国内生まれウマ娘』への冷酷非情ぶりがクローズアップされていくのである。だが、すでに多くが学園すらも去り、『連絡すら取れない』有様。人間不信に陥っているウマ娘もいた。皮肉にも、それがマルゼンスキーが『走り続ける』理由となっていく。ドリームトロフィーリーグが完全な意味での上位リーグと化する過渡期と言える現状、マルゼンスキーのような波紋法などで強化済みの古参勢が他を蹂躙してしまうのは仕方がないことであった。従来は協会運営費などを稼ぐための『リーグの体裁を取っている興行』という体裁が強かったため、往時の勝負服の着用も禁止されていた。だが、シンザンによる改革が進んだ結果、『全盛期と遜色ない実力のスターたちが真剣勝負をする場』のイメージを生み出す事に成功した。誰も『昔のネームバリューで売ってます』的な馴れ合いは見たくなかったのだ。

 

「慌てて救済措置が取られたが、その頃には世代が進んでいた上、今度はオグリさんの問題が出てきてな。協会は決まって、後手後手だ。おまけに、今のトップ級の筆頭のテイエムオペラオーは芝居臭いから、いくら勝とうと、人気が出なくてな。敵のほうが多い気がする」

 

オペラオーは善人であり、人柄もいいはずだが、芝居臭さが鼻につく故か、敵も多い。(レース外では)基本は人格者であるが、レースでは覇王として振る舞っていた故の『ピークアウトの激しさ』は彼女を追い詰めている。フジキセキがドラえもん世界に連れて行ったのは、そういう事が大きい。

 

「霊力の御札を込めた弾を装填した74式が砲撃して、他の区域のシャドウを封じるって」

 

「方針が定まれば、日本は早いな」

 

「誰も責任を取りたくないだけだもの。上は。ダイ・アナザー・デイの時、戦車の落差に愕然とした陸軍機甲本部の連中、日本義勇兵にお礼参りされたんで、センチュリオンをやけくそ気味に爆買いするし」

 

ダイ・アナザー・デイは戦車戦の宝庫であったが、陸軍機甲本部にとっては『生きた心地のしない』戦であった。ティーガーすら容易に撃破できる『M26』が雲霞のごとく襲いかかり、ロマーニャ陸軍を全滅させたという報に腰を抜かした彼らだが、史実でチハでフィリピン防衛戦を闘った生き残り日本兵らの襲撃を受け、業務が止まるトラブルも発生。以後は突き動かされるように、ブリタニア製新型戦車を導入していった。その他、日本の方針で『スーパーX』シリーズの導入も決議されたという。

 

「で、おまけにGフォースへの批判が出たんで、スーパーXシリーズを通常部隊に量産するって」

 

「あんたんとこの軍隊はゴジラと戦う気か?」

 

「それも考えてるかもね。自衛隊の退役した幹部から猛烈に売り込まれたらしくてね。仕方がないから、無線操縦の2以外を採用するって」

 

「まさか、ドラえもんのとこの自衛隊、あれを作ってたのか」

 

「学園都市があるから、旧軍時代の研究が放棄されずに生きてたんだろうね。最も、バブルの金がある時代にできたから、採用されてたんだって」

 

「格納庫のXⅢは実物か?」

 

「オリジナルだって。95年くらいにできたけど、左派の批判を恐れた、当時の政府の指示で、松代大本営に秘匿されてたんだそうな」

 

スーパーXⅢは松代大本営に秘匿されたまま、年月が経過したものであった。左派は自衛隊の秘密主義を批判しようとしたが、『公表したら、世論を煽って解体させようとするクセに』と揶揄された。スーパーXⅢの装備は原子力事故に有効であったため、左派も『そういう装備として開発していたのなら、運用を自分達は反対しなかったのに……』と悔いたという。結局、公になった後は扱いに困っていた陸自からGフォースへ移管され、扶桑軍が量産する事になったのである(質で量を超えるべしとする方針が徹底される事になったため)。結局、扶桑の戦死者を減らすためには、時代を超えた超兵器を渡すしか、方法がないのだ。

 

「松代大本営は隠し箱か?」

 

「戦後は存在が忘れ去られてたからね。ドラえもんの世界だと、あたしらが知ってるそれよりもっと大きくできてて、軍が終戦間際にブツを隠してたんだ。戦後も自衛隊が同じ目的で使ったらしいよ」

 

「それはそれで、後世に禍根を遺しそうだがな」

 

「うん。戦後の早い時期に陳腐化した機械式暗号機とかは博物館に収蔵されたそうな。エニグマをもとに国産化を試みたものとか」

 

「その時は最高機密でも、技術が発達すれば、カテゴリ自体が消える事はあるからな。その最たる例だな。エニグマなんぞ、私の親父でも知ってるくらい有名だしな…」

 

ドラえもん世界の登戸研究所は、ドイツから供与されたエニグマの国産化を試みていたという。扶桑もエニグマを1944年春まで使用していたが、別世界との接触で旧式化を認識。コンピュータによる暗号に切り替えている。その際には、キッパリと機材一式を博物館送りにしているが、在来型を欺瞞目的で使っている。魔女の世界では、必要性の問題で、エニグマの解読がされていなかったからだ。

 

 

「その一方で、宇宙由来の技術で色々な超兵器の設計やブツが終戦の日まで造られてたそうな。初代スーパーXの基礎設計も、その時に残されてた『移動要塞』の案を小型化したものだとか?」

 

「東條英機の罪だな、そんなものを負けだすまで使おうとしなかったのは」

 

「彼は産業育成のためだと思って……と、サイパンがあっさり落ちた時に、側近の誰かに漏らして、大いに嘆いたそうだよ。で、有志が戦後も研究し続けた結果、初代スーパーXが生まれたそうな」

 

スーパーX。ある世界で三代に渡り、怪獣王ゴジラと闘った陸自の兵器である。怪獣王ゴジラがいない世界では、『旧軍時代に残されていた、オーバーテクノロジー由来の試作兵器』という形で存在していた。スーパーXは戦後の世界で発電に使用されている原子力の事故を想定した『カドミウム弾』を初代の時点で備えていた。その事から、実機が完成した1980年代の時点で原子力事故は想定内だったのがわかる。だが、1984年頃に想定外の事故で初代を損失。無人化されたⅡ、有人に差し戻し、航空機の体裁を強めたⅢが90年代に完成している。なぜ、日本で実際に事故が起こった時に使われなかったのか?という疑問があるが、それは多額の防衛予算をワンオフの超兵器にかけたことへの批判が起きる事を恐れたからだが、スーパーXⅢに原子力事故を抑える力がある事を革新政権が知っていたら、直ちに使っていたのか?という疑問がなされているという。結局、過度の批判を恐れた与党などが要因で、ほとんど『宝の持ち腐れ』と化していたので、扶桑に実証実験をさせたかったのだろう。核分裂より安全性のある核融合発電や根本的にそれも超える光子力の発電が21世紀の後に開発されるまで、人類はエネルギー問題に悩むのである。

 

「まさか、小型核融合炉が使われているとは思うまい」

 

「大型機を戦闘機と同レベルに動かそうとすりゃね。コスモタイガーがガミラス機より強いのも、ジェネレーター出力とかの余裕があるから、機体の反応速度とか、固定武装のパワーを上げられたからだし、パワーは正義さ」

 

キュアハートは転生先で、アンダーパワーのドイツ重戦車に苦労していた故、攻防速のバランスがうまく取れているものは好きなようである。(逸見エリカ本来の趣向からは変わったが、ドイツ重戦車は全体的にアンダーパワーであった)

 

「しかし、日本はナチ残党を認知しているのか?」

 

「ドラえもんの世界の日本なら、とうに認知してるそうだよ。問題は戦争経験者が減っていった1990年代あたりで、危機意識が一気に落ちた事。災害がそのあたりで増えだしたってのに。で、いざ起こるとヒステリーになる。連中には、旧軍の残党もいるって話だからね。日本の軍事アレルギーが招いた悲劇ってヤツ」

 

ショッカーの時点で、ナチ残党である彼らに協力していた旧軍軍閥の生き残りの存在は危険視されており、ドラえもん世界の日本が自衛隊の創設に踏み切った裏の理由だという。戦後日本の強烈な軍事アレルギーは負の影響を多方面に残したが、それが扶桑にも及んだのである。

 

「その尻ぬぐいを歴代の仮面ライダーやスーパー戦隊にさせていた……。その割に『こいつ』(のぞみ)には冷酷だったようだな?」

 

「若い官僚はその時代の事を知らないもの。で、中枢部のほうが顔面蒼白さ。政権転覆もありえるからね。おまけに、大和と武蔵に艦砲射撃されて、東京が戦後に逆戻りすることもありえたから、その官僚はすぐに懲戒免職。日本は扶桑の天皇に平謝りするしかなくなって、関係官庁のトップ3までが連帯責任で腹を切らされた(辞職)。仮にも、世界を守ってきたヒロインを…だからね。総理大臣がヒステリー起こして、防衛大臣以外は青くなってたって話」

 

のぞみの転職活動を実質的に妨害し、国家権力で潰したという事実は週刊誌で報じられ、大スキャンダルとなった。日本政府は火消しに追われたが、結局はかつての東條英機を笑えないレベルで、不満分子になりつつあった扶桑軍の予備士官らを死地に送る方法が世論の意向で行われた。のぞみ以外への損害補償を財務省が渋った結果でもあるので、日本はこうした対応への不慣れをも露呈した。

 

「で、人事的に取られたのが、騒動に巻きこまれた予備士官たちを最前線送りにするって方法。日本の多方面が押し通したそうだよ、反乱を抑えるために」

 

「やれやれ。補償金を素直に払えばいいものを。近頃はそれも惜しいのか?」

 

「2.26みたいな事を目論むからって、その家族もまとめて、僻地に強制移住させたそうな?まったく、扶桑は従兄弟のような関係の国家だってのに、戦国大名も滅多にしないことを強要したもんだよ、日本は」

 

ドラえもん世界の日本は世論がある種のヒステリーを扶桑へ起こし、のぞみの騒動に巻きこまれた予備士官らを最前線に送り、その家族は僻地に強制移住という、カチコチの共産主義国家でも見なくなったような施策を強要したと、キュアハートは呆れつつも話した。

 

「扶桑の軍事力と思考回路が怖かったんだろうけど、騒動とクーデターの後のリストラで、扶桑は生え抜きの正規士官が減っちゃったのよな。陸海で。だから、義勇兵で補うしかなくてね。だから、自衛隊員がGフォースって形で関わる事になった。魔女出身の連中は他の兵科に無知だから、つぶしが効かないって批判も起こった」

 

「それで、あんたらは便利屋か」

 

「魔女出身の連中は小学校も終えないうちに駆り出されてきたのが多数派だから、近代戦には使えなくてね。自衛隊の連中とかは最低でも高卒っしょ?だから、色々と不都合が多い。部隊と部隊の連携も気にしないで、手柄に逸るってのも日常茶飯事。中央の統制もあまり効かないとあれば、あたしらを突っ込ませたほうがいいってなったのさ。最も、普通の部隊の嫉妬買ってるけど」

 

戦国期からの名残りで、魔女は魔力発現=軍隊へ入れるという認識が出来上がっていたので、日本主導の志願下限の引き揚げと最低学歴の策定に反発が起こった。結局、魔女の世界でのあれこれが知れ渡り、『面倒な存在』と見做されたが、それが扶桑にも伝播したために、彼女らの後続世代がほとんど増えない時期が続くため、1945年時点で軍籍があった魔女の大半が『定年まで軍に在籍する』羽目になるのだ。

 

「日本の大衆は喉元過ぎれば熱さを忘れるってヤツだから、扶桑にも嫌うのは多いよ。でも、扶桑は軍事的に勝ってても、文化が育ってない。それに強いコンプレックスがある」

 

「日本人は和を尊ぶ。それはどこの世界でも同じか」

 

「あれ、抹茶ラテ?」

 

「ゴルシに持たされた。元の世界に帰国子女の後輩がいるんだが、こういうのに悩むんだ」

 

「ラテと抹茶だもんね」

 

「飲めればいいと思うんだがな」

 

封印作業の合間に、持参した飲み物を口にするキュアドリーム(ブライアン)。ゴルシに持たされたらしい。ゴルシはキュアビートの体を借りているので、お互いに『プリキュアに扮している』が、プリキュア本人のキャラは意識していない(ゴルシもトーンは抑えている)。その場のシャドウはすでに御札に封印され、御札が兵士達の手で一箇所に集積される。

 

「お願いしまーす」

 

「わかった。見様見真似だが……」

 

キュアドリームの能力を使うブライアンだが、彼女固有の能力ではない。ストナーサンシャインである。ストナーサンシャインには強い浄化作用もあるので、目的が純粋な破壊ではない時は多用される。

 

 

『ストナァァァァァァ・サァァァァンシャァァァァイン!!』

 

ストナーサンシャインに限らず、必殺技はシャウトが重要である。そのため、ブライアンはあらん限りの気合を込めて叫んだ。見かけの威力は凄まじいが、浄化目的の場合、ピンポイントで目標のみを消滅させ、周囲の環境も浄化する。以前に竜馬が魔女の世界で撃った時は、この特性を利用したのだ。ブライアンも同じだ。

 

「これでよし。本来、こいつらはこの世界には出ないはずと聞いたが?」

 

「土地神が闇落ちしたみたいだね」

 

「あれくらいでだと?世界線によっては、地球ごと焼き払われてりするんだぞ?」

 

「まぁ、堕ちた神は滅ぼすしかないさ」

 

「優しさより激しさが必要ってヤツか……」

 

プリキュア5のいた街の付喪神『ベル』は街が戦果に巻き込まれた事に絶望し、騒乱を起こそうとしたが、64FとGフォースに討伐の対象と見做されたのである。それで陰陽師の力が必要となったのだ。

 

 

「平将門級の怨霊を封印するには、安倍晴明級の天才の力がいるからな。23世紀でも、そのままだろう?」

 

「うん。デザリアムも手出しをしなかったからね、首塚。ゼントラーディの艦砲射撃も、ガミラスの遊星爆弾も何故か逸れたらしいよ」

 

「その頃には、死んだ時から1000年超えてるはずだろ…恐ろしいな」

 

「日本最凶の悪霊かもなぁ」

 

と、首塚の恐るべき力に震えあがる二人。なんであれ、思いの力は1000年経とうとも、不滅である実例だろう。

 

「私たちの種族も、別世界での馬の名と魂を引き継いでいる。別世界と出会うことで、前世に願われたことを叶え直す機会を得られたと考えるべき、か?」

 

「記憶を持って、ね。オグリちゃんはささやかだけど、それを叶えた。それがテイオーちゃんとあなたの番になった。そう考えたら?」

 

「……そうだな。あんたらとは長い付き合いになりそうだし、あいつにも苦労かけることになるだろうが、よろしく頼む」

 

ブライアンらしい微笑で〆る。同じキュアドリームの姿でも、笑い方が違うので、大人っぽさを醸し出している。こうして、ブライアンは精神を鍛え直す荒行をこなしていく。父との確執が生じたことで、やけを起こしていたようにも思えたが、実際は飽くなき闘争心のままに走り続けたいという願望を父が『家業を継げ!』と否定したことで生じた確執なので、姉のビワハヤヒデはそのことを察し、大学卒業後に家業を継ぐのである。

 

「高校を出たら、どうするの?」

 

「寮にはいられんから、野比氏のマンションに転がりこむ。海外遠征もしたいが、単位はとらんとならんからな」

 

ブライアンははっきり『高等部を出たら、野比家のマンションに居候する』と述べた。順当にのぞみが単位を取れていれば、あと数年で正式に高等部を卒業することになる。ウマ娘はレースで遠征が多く、学園への在籍年数も長い。レースをとうに引退したルドルフやオグリが学生のままであるのも、それが理由である。ルドルフも『直に大学に進学するから、野比氏の世話になりそうだ』と述べており、寮に在籍できるのは『高等部を出るまで』であることがわかる。ルドルフは大学卒業後には理事職が約束されており、本人も政治面のトレセン学園の守り手につくつもりであったが、最近はアスリートとしてのやりのこしをしたい(ひいては、現役時代、シリウスとの約束を破ったことの贖罪)願望が強まっている。オグリとタマモがタイムマシンでなし得たからだ。

 

(ルドルフもシリウスと和解したいと考えてるようだが……ヤツはやり直すタマではあるまい。どうするつもりだ?)

 

シリウスはルドルフと和解したい。それが荒くれ者を装う彼女の深層心理に隠された本音だった。のぞみがニュータイプに覚醒めていた都合上、ブライアンも能力を使える状態になっており、ルドルフとシリウスとの定時連絡の会話でそれを感じ取っていた。シリウスが荒くれ者を装うようになった理由は、現役時代におけるルドルフが不可抗力で『約束を守れなかった』ことも多分に絡んでいる。ルドルフはこの事をゴルシに指摘されるまで気づいておらず、自分を深く恥じている。その結果、一人の『アスリートとしてのシンボリルドルフに立ち帰りたい』願望を抱くようになった。生徒会から表立って解放されたのも、その気持が強まる引き金となった。

 

(ルドルフ、シリウスは……海外で走ることで昔の関係に戻りたかっただけなんだぞ……?)

 

 

シリウスが荒くれ者と、自分を必死に取り繕うことで隠している深層心理。ルドルフはゴルシからそれを告げられ、顔面蒼白で膝から崩れ落ちるほどの衝撃を受けた。ブライアンも気づいていると告げられたルドルフは『自分が裏方に回ることで失ってしまったナニカ』を実感し、自分のしていたことへの虚しさがこみ上げ、哀しく笑うしかなかった。生徒会を辞し、一人のウマ娘に戻った現在なら『償えるかもしれない』。ルドルフは本気で現役復帰すら検討している。

 

(ラモーヌは『ルドルフはゴルシに言われることで、シリウスの真意に気づいてしまったのよ。わかるわね』と言っていた。あいつも気づいていたんだろうな)

 

ルドルフが何故、生徒会を退いたタイミングで公言していた趣旨と反する『個人としての思いを優先しだした』のか?その答えを、ブライアンもラモーヌも察していた。自分の振る舞いが『傲慢』と、改めて自覚してしまった。その罪を受け入れ、生徒会長という柵から解き放たれたからこそ、身近な存在のために心を燃やし、公のためではなく、個として生きる時間を持ちたい思いを持ったことを。

 

(ルドルフ。あんたの生徒会長としての襷はテイオーが、三冠の襷は私が引き継いだ。だから、少しの時間でもいいから、個として生きろ。『七冠ウマ娘』でも、『シンボリ家次期当主』でもなく『シンボリルドルフ』としてな)

 

ブライアンはルドルフへ言いたい想いを独白し、次の定時連絡ではっきりと本人に言い、迷うルドルフを後押しするつもりであった。シリウスは『ありがた迷惑だ!!』と言うだろうが、シリウスからすれば、千載一遇の好機(ルドルフと幼馴染の関係に戻れる)である。ゴルシとブライアンはメジロラモーヌを味方につけ、遠大な作戦を既に始めていた。こうして、シリウスは知らず知らず、ゴルシの作戦の目標とされたのだ。暗号名『R・S作戦』として。

 

 

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