――地球連邦政府はジオンの壊滅とコスモリバースシステムの独自改良とテラフォーミング技術の活用で21世紀初頭時点の頃の環境にまで地球の自然環境を回復。それと同時に、すべてののコロニー群に『食料品生産専門プラントを備える』ように要請。同時にサイド8の新設を行った。コロニーはこの時点で政治的な名称は『セツルメント』に改められたが、その認知度は低く、コロニーという単語を駆逐するまでではなかった。デザリアム戦役から間を置かず、ボラー連邦と一触即発の状態に陥った地球連邦は、古代進を通して、かつての旧敵国であるガルマン・ガミラスと相互安全保障条約を締結。ボラー連邦への対抗の意思を明確に持った。天の川銀河はボラー連邦と地球連邦/ガルマン・ガミラスの陣営に分かれての銀河大戦の時代に突入し始めていた――
――この頃に地球連邦軍は一年戦争時代に使われた軍備の多くを他国に放出し、新装備へ更新を行っていた。人的資源がカツカツになっている地球連邦軍は無人艦隊の廃止はできず、モビルドールや無人戦闘機の完全排除も(人的資源の問題で)不可能であった。地球連邦軍自体、宇宙開拓時代に伴う大戦の連続でガタガタであり、軍備こそ革新はしたが、ごく一部の極限されたエースパイロットと指揮官に戦果を依存する有様であった。確認された全プリキュアに連邦軍の軍籍が与えられたのも、その人員不足が理由であった。波動砲が大型艦に装備される事が多いのも、それが理由だ。そんな窮状の関係で、MSの更新は(軍縮時代のハト派の願いと裏腹に)生産ラインの構築の手間が惜しまれたこともあり、ジェガンから完全にはできない状態のままであった。こうして、ジェガンはデザリアム戦役後も現役機の地位を維持していた――
――とはいえ、さすがに初期導入機の老朽化は覆しようがないため、ジェガンに代わる量産機の模索が続いた。結果、ジャベリンとその後継であるジェイブスがその地位にある。ジャベリンもガンイージのジェネレータとアビオニクスに換装した末期型に切り替わった。連邦軍最後の小型MSとして。連邦軍は艦艇設備の更新の手間がかからない『16m級』に血眼になっていたが、その整備には長い時間がかかる見通しであったのも、ジェガンの延命とジェガンのモデルチェンジが実行された理由であった――
――地球連邦軍はジオンほど撃墜王を奨励していなかったが、いたほうが都合がいい事は理解していた。長年、ジオンの撃墜王に苦杯をなめ続けた経験がそうさせたか、かつては政府公認で弾圧したニュータイプらを認めるようになり、専用機も積極的に開発するようになった。野比財団とその息がかかった者が政府の中枢を抑えた事、通常の部隊では扱えない反骨精神旺盛な人材に限って、撃墜王となることがお約束となった事、レビル将軍の帰還で、そのシンパが息を吹き返し、ゴップ議長と組んで、連邦軍の浄化を進めている事、沖田十三と土方竜の薫陶を受けた人材が育ち、中堅に成長していたことが理由であった。戦争に次ぐ戦争で、連邦は異世界にも生存圏を得ようと画策し、時空管理局との接触、管理局のM動乱での賢威失墜で、地球連邦は次元世界の騎手の地位を手に入れたも同然となった。管理局の機構は存続させたが、事実上の傘下に収めた。時空管理局が質量兵器の解禁を容認したのは、権威失墜の他に、優秀な魔導師に限って、管理外世界の兵器を見下すという悪癖が最悪の形で表れ、あわや組織解体というところであったからだ――
――時空管理局は形の上では存続していたが、実質的に地球連邦政府の統治の窓口同然の様相を呈した。魔導師の万能性が否定された関係から、質量兵器の使用は実質的に解禁された。地球製兵器の動力を魔導炉に置き換える実験も行われていたが、大型魔導炉心は取り扱いを誤れば、プレシア・テスタロッサ(フェイトの実母)が闇落ちしたような事態を引き起こす事から、次第にその研究の熱意は冷めていった。普通に地球製動力の無害化を研究したほうがコストパフォマンスが優れていたからである。魔導師の不足がより致命的になった状態かつ、同士討ちが原因で、社会的信用も失墜していた上、なのはは『やらかす』。一挙に組織の中枢に組み込まれた『八神はやて』は人格の変化で以前より冷徹な判断を下せるようになったとはいえ、時空管理局という組織の惨状には目を覆った。第二次世界大戦レベルの航空機の機銃掃射さえも防げない一般局員とエース級の落差が激しい上、サイボーグ化した敵幹部には大魔導師の攻撃も通じない。はやて自身が最大砲撃魔法を気合でかき消されるわ、達人の手刀で体を切り刻まれ、病院送りにされる醜態を演じたこともある。それが動乱であった。また、ミッドチルダの再生医療で難を逃れたが、フォッケウルフFw190後期型の機銃掃射でバリアジャケットを貫かれ、片腕を吹き飛ばされたこともある(帰還後に即座に再生治療を受けたが)――
――なのはとはやては再生医療の恩恵で、四肢の欠損を免れたことになる。むしろ、はやてほどの魔導師をしても、純鉄製の弾丸を装填されれば、四肢の欠損は普通にありえるという事実は魔導師の優位性を揺るがす事態であった。ましてや、ミッドチルダの飛行規則は魔導師優位で設定されていた故、ミッドチルダの秩序は動乱で人心が乱れた後は崩壊寸前となった。結局、地球連邦政府にそれとなく取り繕ってもらうことで組織自体は命脈を保ったが、権威は完全に失墜。魔導師達は否応なしに『質量兵器優位の実情』を認識させられた。なのはら三人のような者は『百年に一度くらいしか現れぬ英傑。他は凡庸か、それ以下の凡人』であるという事実を突きつけられたからである。ティアナ・ランスターの管理局の籍が復活させられたのは、リンディ・ハラオウン(フェイトの義母)主導の施策であり、皮肉にも、事故死した彼女の実兄『ティーダ』の名誉の回復を行うことを取引材料に使われ、当のティアナを引かせたのは言うまでもない。だが、空戦魔女に転向していた彼女の再雇用は時空管理局の教育関連部署の沽券に関わる事態でもあった。結局、ティアナはその頃に『前世で日本人であった』事が判明。その時の『鴇羽舞衣』という名を別名義として用い、その頃の容姿を使う事になったという『しょうもない』顛末となった――
――ティアナは遠征に従事し、デルザー軍団と対峙し、決戦にも参加していた。前世の記憶と二つの時代での能力が融合・変質した状態となった故で、本人としては複雑な心境であった。だが、時空管理局の魔導師/執務官(後に『最後の執務官』と渾名される)としての参加ではないので、クロスミラージュは携行しておらず、変質を起こした『高次物質化能力』を用いて戦っており、主に戦闘員の掃討を担当していた――
「くっ!硬っ!?」
「ふはは……どんどん打ってこい!」
「それぇい!!」
鋼鉄参謀はプリキュアやマイスター乙HIMEの攻撃を正面から受け止める装甲を誇っており、ティアナの放ったパンチを受け止め、逆にパイルドライバーを仕掛け、地面に叩きつける。
「きゃあっ!!いったぁ……」
ティアナは豪快に地面へ叩きつけられたが、能力による防御力強化の効果で気絶は免れるが、すぐの反撃は不可能であった。
『ターボスマッシャーパーンチ!!』
気づいたブライアンがターボスマッシャーパンチで鋼鉄参謀を吹き飛ばし、救出する。
「さ、サンキュー……。こいつら、さすがの装甲ね……」
「生半可な攻撃はダメージにならんぞ。あんたも隠し玉はあるんだろ?」
「ああ、前世で使役してた『あれ』のことよ。手の内はあまり見せたくないし、管理局のお偉方がパニックになったもの。お披露目した時」
ティアナは前世の記憶が戻った後に呼び出せるようになった、ある存在に振れる。召喚は本来はキャロ・ル・ルシエの領分であったのだが、その彼女が召喚できた最強の『ヴォルテール』をも更に凌駕する力を誇るその存在は、キャロの呼び戻しを検討していたリンディ・ハラオウンをして『言葉を失う』ほどのもので、他の幹部たちはパニック状態であったと語った。凄惨な戦争にエリオとキャロを関わらせる事を嫌ったフェイトの意向もあり、動乱を大義名分に、転属させられたとの事。
「本当はあと二人は(スバル以外に)同僚いたんだけど、まだ子供だったんだ、動乱ん時。それで、フェイトさんが原隊に送り返したんだそうな。その子らに戦争させるわけにはいかないから、あたしが役目を引き受けたんだ。前世で妹分だった子に、どこかで会えればいいんだけど。ただ、気になってることもあるのよ。なのはさんが『前世での戦友』の生まれ変わりじゃないかって思う時あるのよね」
「あんたも大変なこった」
ティアナは、なのはがハルバードを奮う姿に既視感を覚えたが、それが前世の記憶が由来である事に気づいたと明言した。前世の強大な力が蘇った故に、エリオとキャロの代役もやらされるハメになった事は不本意らしいが、アイオリアの性質を受け継いだフェイトが二人を戦争から遠ざけたのは理解できるので、なしくずしであるが、自分が二人の担うはずであった役目を引き受けたと。
「まぁ、接近戦じゃ、あたしのほうがステゴロでなのはさんに勝てるってのは、自信ついたわ。転移前は手も足も出なかったし。仕事と育児を理由に、対人訓練を数年はサボってたようだし、あの人」
「あの人(なのは)は呑んだくれにもなってるようだしな。それで酒抜きに、流竜馬の道場行きか」
「そういう事。ま、いい薬になるんじゃない。調から聞いたけど、生活荒れてたようだし」
「そうか。順風満帆だった頃の面影か、あの凛とした雰囲気は」
動乱からの数年を『育児と佐官への昇進に伴うデスクワーク』に費やした影響か、なのははダイ・アナザー・デイの後は『体が鈍っていた』事が語られる。ウマ娘世界からの転移の際の諸手続き等の都合で(元の姿で)面会したらしく、公務員の現場職にありながら、失態で窓際族同然の扱いになって自暴自棄になっている姿と、スイッチが入れば、反射的に往時の姿を偲ばせるような『凛とした雰囲気』を纏う姿に、ある種のギャップを感じたらしいブライアン。それも、なのはの悲劇と言えよう。また、ティアナの前世での戦友に、なのはと似た人物がいたらしく、共通点が多い事もあり、なのははその人物が転生した姿ではないか?と考えているようだ。最近はそういう事例が相次いでいるので、ありえない話でもない。
「世界の垣根を超えた故、か。不思議なものだ。さて……私も最後に決めるか。あんたは浄化専門らしいからな、その形態だと。これまた借り物だが……」
残った魔人の内、かつてのストロンガーの仲間『電波人間タックル』を葬った仇敵『ドクターケイト』を倒すべく、ブライアンはのぞみの空中元素固定能力をフル活用し、『超獣戦隊ライブマンのファルコンセイバー』を召喚する。ブライアンは確実に仕留めるため、『パワーゲイザー』で空中に吹き飛ばし……。
「これで終わりだ!!」
『ファルコンブレイク!!』
レッドファルコンの必殺技『ファルコンブレイク』を放ち、一刀両断する。のぞみAが最近になって覚えたらしい『連携コンボ』とのことだ。
「おう、パワーゲイザーとの連携か……確かに『垣根』を気にせずにいいのなら、なかなかの連携だな」
「あれもなかなかだと思うぞ?」
「あー…あれか。別の意味でツッコミ入るな」
と、ゴルシが口にする。遠目に、別の魔人をキュアメロディ(シャーリー)が不知火流忍術の奥義『鳳凰の舞』で屠る様子が見えた。彼女の場合は『転生者なんだから、何か覚えろ』ということで、ダイ・アナザー・デイ中に会得したのが不知火流忍術であった。プリキュアの技が浄化特化である代であったことも、会得の理由であった。現世でアメリカ人である彼女が日本の忍術を極めた事は、坂本にやたら愚痴られたとの事。黒江はそれに『奴は前世で日本人だぜ?』とツッコミを入れているが、ツッコミの方向がずれている気がすると、のぞみAの談。
「よっ、にっぽんいち~~!」
と、ちゃんと決めポーズも決めるキュアメロディ。律儀に扇子も持っている。自分の固有技はあくまで、浄化専門。純粋な悪には(善性がないため)通じない事をよく自覚しているからこその使用である。忍術をちゃんと扱えるように、ダイ・アナザー・デイ後に修行をした末の成果であった。
「あの格好でやられてもな」
「それ言うなって。野暮ってもんだぜ」
「しかし、あのネタわかるやつ少ないと思うが……」
「ゲーマーならわかんじゃね?」
と、いささか緊張感に欠けるものの、一同は任務を遂行した。扶桑軍本隊が政治による軍事戦略の不在に苦しみ抜いていたのとは対照的に、現場はデルザー軍団への凱歌を謳い上げるのであった。
――魔女の世界では、スオムスが智子の戦果秘匿の件で経済制裁を示唆されたことで大混乱(オラーシャからの難民流入もあり)に陥り、大統領のマンネルヘイムは過労と心労で床に伏せてしまったり、オラーシャと独立したウクライナが紛争を始めるわ、ブリタニア内部の政治勢力争いが泥沼化するなど、完全に欧州が政治的に失墜する要素しかなく、扶桑は扶桑で、日本との軍事戦略の違いの大きさに苦しめられているなど、戦争が長引く要素しかなかった。ブリタニアは史実の『ビルマでの降伏日本軍人の抑留と虐待』が伝わったことで、同盟を手切れにされる事を恐れるようになった。中世以来、ブリタニアは扶桑の激昂性に触れてきた関係で『自分達が築いた秩序を壊されないように』と、扶桑との関係に気を使ってきていたが、史実のセンセーショナルな事実が伝わってしまい、ブリタニア中枢は報復で『リベリオンといっしょにブリタニアを滅ぼそうとする』という被害妄想に取り憑かれていた。特に『魔女の世界』では、扶桑の傭兵に、いくつもの騎士団が根絶やしにされた』という逸話が存在していたので、リベリオンで炸裂した反応兵器の威力も相まって、扶桑が入手して、人種差別への報復に使うのでは?と疑心暗鬼であった。ブリタニアは弾道ミサイルへの防御手段を持たないのも、日本連邦への恐れに繋がった。実際に、重巡・高雄の史実での顛末に憤慨した者の手で外交官が殺されかける事件が起こったのも、その論調を加速させた。一言で表すなら『日本人は怖い!!!何されるかわからないもん!!』であった。別の理由もある。国家財政が破綻の一歩手前であったのも、軍事的な覇権に興味のない者が伸長し始めるに足る理由であった――
――こうした情勢で、扶桑という単語は次第に(発音のしにくさにより)扶桑でも廃れ、魔女の世界でも『日本』が主流になり始める。『扶桑』は扶桑出身者の日本人との区別のために書類に記される扱いになっていく。日本連邦の定着による変化であった。軍人は手放しで『名士』扱いはされなくなったが、国家に奉仕している事には違いないため、慎重に扱う市町村が続出した。軍人街が社会問題として、1949年には認知されたからであった。こうした社会問題への対処を大義名分に、魔女の『士官での一律雇用』が各国で定められた。その関係で『特務士官』を定める国が続出した。教育係の下士官に生きがいを感じる者が多かった故で、元の曹長達の反発を抑えるための措置であった。扶桑は逆に『特務士官』枠が通常兵科へ統合され、軍学校の教育が長期化する流れとなったため、義勇兵で前線の人的損耗を補っている。義勇兵のストックは全世界規模で『軍縮で予備役にされた働き盛りの魔女』がたんまりいたため、なんら問題は無く、疎まれた『カールスラント出身の職業軍人』の再雇用の受け皿にすらなっている現状。メルダースほどの大物が日本連邦の義勇兵として在籍しているという事実は、カールスラント共和派の酷薄な人情、ドイツの圧力を利用し、帝政を倒そうとしたツケで、彼らが国賊のレッテルを貼られつつある事の表れであった――
――新世代の魔女の出現率が(史実で日本の軍事組織が解体されていた時期に相当する時期に合わせて)低下していたのも、魔女の地位低下に繋がった。プリキュアらに期待が過剰にかかっていたのは、日本に仮面ライダーやスーパー戦隊などが昭和後期からいた事、それを裏づけるように、市井に『恐竜戦隊ジュウレンジャー』や『忍者戦隊カクレンジャー』の勇姿が語り継がれていた故でもあった。のぞみAが戦いを選んだのも、彼らの存在を知り、実際に共闘したことでの心境の変化も大きい。折しも、焼夷弾が水で消せないものであると事実が日本主導で報じられ、扶桑の国民をパニックに陥らせていた頃(皮肉にも、このパニックが扶桑の住宅が大正期以前のタイプから戦後型に移行するきっかけとなる)で、防空機材は一挙に強化されたが、21世紀型のパトリオットミサイルは多数の敵機に連続発射するものではない上、大戦型の防空戦向けではなかった。妥協策で『五式15cm高射砲』の近接信管装備かつ、連射能力と射高の向上型が生産され、三式12cm高射砲以前の陣地高射砲を駆逐していった。また、防空法の廃止と、それに代わる法整備で、防空監視隊が警察の管轄を離れ、正式に軍の隷下に収まった事、防空監視・通報資材の近代化で旧来式の教育しか受けていない未婚女性の必要性が薄れてしまうという事態のため、扶桑空軍は防空体制の近代化を米空軍や空自に教えを請うなど、シッチャカメッチャカな状況にあった。しかし、当時は大卒はごく僅かなエリート層のみ、中卒が現在の高卒にあたるくらいの認識であったため、結局は人員の再教育と雇用継続で決着した。また、隣組などの組織は史実戦後の方式に改められ、法制組織としては廃されるなど、戦後方式へ一挙に様変わりさせられたため、扶桑内務省は大パニックに陥った。思想の自由の明記と華族や軍部の暗黙的な特権の否定(諸権利の明記)などの変革も起こった結果、内務省は解体の恐怖に怯える事になり、陸海軍省は空軍の設立を大義名分に、国防省に統合させられた。華族身分は(魔女の安定供給と、内政干渉防止という大義名分もあり)廃止を免れたが、ノブレス・オブリージュの徹底が求められたため、次期当主が『軍人である分家の息女となる』ケースが元大名の華族で続出していく。その関係上、皇族であり、既に軍人であった者の取り扱いも問題となった。狙いは日本側主導で『扶桑の皇太子(令和の世での上皇にあたる方)を従軍させないための措置』のつもりであったが、皇族軍人が史実より大量に存在していた上、現場の士官達は皇族の調停権を宛にしているという状況にある扶桑に、日本は困惑していた。仕方がないため、その皇族軍人達を反乱の防止に使うため、『皇族といっても、これからは職業上の特別扱いは無くなるが、一定の軍隊階級と年齢に達している者は固有の権利として、有事における調停権を有する』という妥協策を採択した。ノブリス・オブリージュは日本的な概念ではないが、指揮官先頭はどの分野でも、日本人の理想であった事との兼ね合いであった。――
――かくして、仮面ライダー三号との決着はつかなかったが、デルザー軍団に相応の打撃を与えることには成功。あとは末端の元ナチス・ドイツの部隊の殲滅のみである。Gフォースとバダンの対決は山場こそ乗り越えたが、最後の『谷』と言える場面にさしかかったわけだ。とはいえ、戦車戦は『ヤークトティーガー』や『E100重戦車』といった少数生産、あるいは戦時中の未成兵器が投入されたため、連合軍のM48戦車も損耗が大きかった。MSやコンバットアーマーの投入で抑えたが、それでも、ヤークトティーガーやE100の砲弾を側面に喰らえば、M48は撃破される事が多かった。対策は『M60への更新』とされた。M103重戦車の投入も考えられたが、道路状況やパットンの気質などで見送られた。とはいえ、味方に重戦車はあるというプロパガンダには使用された。実際はM60で火力は間に合うが、装甲面が代わり映えしないというので、士気が落ちていたからである。だが、戦線の要望に抗し切れず、パットンも配備を認めた。その頃には、史実よりだいぶ改良された諸元になっており、米国系の最後にして最強の重戦車として投入された。結局、兵隊が重戦車を望んだからで、合理性を心情がねじ伏せた実例となった。また、E100は150ミリ砲を搭載しており、直撃すれば、M1戦車や90式戦車もスクラップ間違い無しであった。M48などは被弾した瞬間にびっくり箱のようにぶっ飛ぶ(弾薬庫の誘爆で砲塔が外れて吹き飛ぶ)有様であった。カールスラントが鹵獲を要望してきた事により、MSやコンバットアーマーによる破壊は避けられ。戦車戦による無力化をするしかなかった。150ミリ砲は『直撃すれば、戦後戦車でも、間違いなしにスクラップ確定』な火砲。それを相手にせざるを得なかった将兵の心情は察するに余るものがあった。更に、配置の妙で、ウルトラホークやマットアローなどの爆撃を封じるなど、戦車戦の大家であったドイツ軍らしさも発揮しており、連合軍の一般将兵の犠牲は増えていた。側面ですら100ミリと60ミリの装甲スカートでガチガチであり、連合軍の標準的な対戦車砲を受け付けず、かのアハト・アハト(長砲身の後期型。硬芯徹甲弾使用)をも正面装甲で弾き返すという『壁』ぶりを発揮。数両を74式戦車の戦後型徹甲弾で行動不能に追い込んだが、74式にも犠牲が生じている。さすがの74式も、150ミリ砲の直撃はひとたまりもなかったのがわかる。撃破された74式の乗員は全員が戦死していたが、それがドイツの切り札を目されていた超重戦車の破壊力であった――
――デルザー軍団を撃退した64Fだが、残った仕事として、ナチス・ドイツ残党の機甲部隊の殲滅が残っていた。連合軍本部からの要請を受けたが、人員の休息と療養の都合で、すぐに動ける状態ではなかった。特に、切り込み隊長で鳴らす黒江の負傷は手痛い損害であった。
「ギブスはまだとれん。あと三日は必要だ」
「その間に、ウチの戦車が無くなっちまうって!早くしてくれよ!」
「落ち着けって、パットンの親父。三日持ちこたえろ。そうすりゃ、こっちも全戦力を投入できる状況に戻る。うちの自動工廠の責任者に話は通しといたから、直にM60とM103の大規模投入も可能になる。兵たちには『三日は辛抱しろ』と布告しろ。こればかりはどうしようもない」
さすがの64Fも人員の疲労回復と休養が必要な状態であったため、連合軍は決定打を失い、機甲部隊の壊滅が危惧されるところまで、瞬く間に追い込まれた。それをなし得たのが、わずか数十両のE100重戦車であったため、カールスラントはドイツに恨み節であったとか。前半の楽観ムードは木っ端みじんと言っていい。黒江に治癒を電話で急かすあたり、機甲部隊は危機的な状況らしい。
「工廠から連絡です。補充分は三日で出揃うと」
「増員は各戦車師団の中から、特に腕っこきの連中を集めろ。山下閣下や前田閣下の名前を出していい」
「わかりました!」
報告にきたキュアハートに指令を出し、自身は珍しく、包帯姿で執務をこなす黒江。デスクワークもこなせるが、気質が前線向きであった故に、めったに見られるものではない。ましてや、背丈以外の容姿の殆どを月読調(未来世界では『月詠』と登録)と同様のものにしている現状では珍しかった。
「M103重戦車……。使えますかね」
「お前の好きなティーガーⅡよりマシだ。……まさか、E100を使ってくるとはな。兵の動揺を抑える道具にはなるだろう。いざとなれば、10式を持ち出させる」
150ミリ砲装備のE100は難敵であった。装填速度が解決されていれば、戦後型戦車であろうが、一撃でスクラップにできる。そもそも、戦後型戦車といえど、150ミリ砲に撃たれることは想定外なのだから、仕方がないことだ。
「なんでまた、残骸の回収、できれば鹵獲なんて」
「カールスラントはドイツのバカ共に目標を奪われたし、共和派が戦前からいた有力者を粛清しようとしたからな。それで国内はズタボロもいいところだ。残骸があれば、それを解析して、自分のとこで作りたいんだろうよ」
「軍需産業の復興のため、ですか?」
「もっとも、タンク技師は国外脱出して、今は流しの設計屋だし、メッサーシュミット博士は戦後はぱっとしない。才能が枯渇したのか、戦後の重戦闘機が主流になる空気でやる気がなくなったのか。タンク技師はうちらの世界じゃ、まだ若い。史実と違って、女だしな。第二世代の量産に助言もらう手筈だ。もう一方のメッサーシュミット博士は使い物にならんよ。悪いが、あの人の時代じゃない」
メッサーシュミット社は航空産業に残れたものの、史実と異なる要因で衰退期に入った事、クルト・タンク技師は史実と異なり、年齢がまだ若いことや、自身が先進理論に積極的な事が幸いし、自身のチームごと、扶桑に滞在している事が語られた。黒江はメッサーシュミット博士が史実の晩年期には精彩を欠いていた事を指して、メッサーシュミットの時代ではないと断言した。(現に、メッサーシュミットはその後、自動車産業で生き残りを図るが、これまた、肝心の業績が悪化したという。とはいえ、ブランド力はあるのが幸いし、史実通りに、かつてのライバルであったハインケル社を吸収。メッサーシュミットの名はしばらく存続することになる)
「ハインケルは?」
「直に吸収合併されるよ。工場が破壊されて、開店休業状態だ。今は資金繰りの悪化の段階だが。何せ、サラマンダーがコケたからな」
それはHe162のことだが、制式名称の『フォルクスイェーガー』よりも『サラマンダー』と呼ばれている。史実通りに完成し、大量生産の段階も秒読みだったが、ダイ・アナザー・デイを前にして、胴体埋め込み式エンジンと後退翼を誇るF-86にその予定を覆され、ハインケル社は負債を抱えた。既に飛行隊も編成済みであったが、史実通りの欠陥による事故で殉職者が続出していた。そこにより優れた設計の次世代機が現れたのだから、関心はそちらに移るのは当然である。
「あの背負式のジェットエンジンのヤツですよね。ハインケルはキメてたんですかね」
「キメてるって言うなよ、当人たちは必死に考えてたんだし。ま、あの方式はすぐに戦闘用で廃れてるのは本当だがね」
胴体の上にエンジンを設置するHe162は史実でもそうだが、被弾に脆かったり、機体に使用された接着剤が断熱圧縮で溶け出す、という欠陥が次々と露呈。戦闘機としての採用は取り消された。その後のウルスラ・ハルトマン(開発チームの一員)による数カ年単位での改良で、非戦闘用としては及第点に達し、新生カールスラント空軍などで使用されたという。
「あれ、未亡人とやもめの製造機になりかけてたからな。だから、みんなはハチロクに飛びついたんだ。ブリタニアもコメット旅客機を末期型の設計で作ってるって噂だが……あれは『曰く付き』だからな」
「どういうことです?」
「世界で初めて事故ったジェット旅客機なんだよ、あれ。しかも、金属疲労が原因の空中分解ってオチ。メタ情報でわかってると、乗りたくねぇ飛行機だぜ」
そのコメットはウィンストン・チャーチル肝いりで制作途中であった。設計は史実の最末期型(史実の事故の後に就航していた型式)を基本としているといい、安全性は史実の初期型とは比べ物にならぬほど高い。だが、日本連邦は自由リベリオンとの規格統一を企図し、ボーイング707などを扶桑に採用させるつもりである。
「チャーチルのおっちゃん肝いりで作らせてるそうだが……機体はメタ情報さえありゃ、ある程度は改良できる。問題はパイロットだ。パイロットが一級でも、機体の欠陥で落っこちた事故は探せば、いくらでもあるし、その逆も然りだ」
「どうなると思います?」
「結局、因果律で数十年はボーイングの天下になると思うぜ。エアバス社はまだないしな。うちらの国の試作機が横空に焼き払われたようにな」
避けようもない運命はどの分野でも起きうる。ブリタニア航空産業の威信低下は何かしらの形で起こるだろうと語る黒江。自国の航空産業の開発力低下がクーデターを契機に起こったように。ブリタニアの必死の努力をよそに、自由リベリオンが最新鋭の戦略爆撃機『B-47』を就役させたのは、奇しくも魔女の世界でのこの日。さらなる悲運としてアメリカ合衆国の技術協力で自由リベリオンに『ボーイング707』の進空は間近であった……