ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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プリキュア5の世界編です。


第六百四十二話「つかの間の休息。そして、1993年の謎」

――扶桑海軍空母機動部隊の形骸化は日本の防衛当局も予想外の出来事であった。結局、雲龍型航空母艦はコア・ファイターのおかげで、空母としての運用が継続できたようなものであった。日本側は最低でも『65000トン級がほしい』という意向であり、雲龍型航空母艦は処分の対象であった。だが、大鳳型の量産も頓挫し、新空母の寸法が85000トン超えになり、量産も効かない代物になったため、場繋ぎが必要になった。ミッドウェイ級が扶桑で改装(史実の最終形態への改造)の後、軍役についたのは、空母不足を誤魔化すためである。日本側が民間から買い上げて改装した軽空母を強引に退役させたのも、空母不足を助長したため、(初代)天城が退役できない有様となった。結局、ミッドウェイ級は扶桑軍で使用される事になり、戦後に譲渡することにされた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――とはいえ、それに載せる艦載機部隊も育っておらず、日本側が『飛行時間が800時間を超えるまでは実戦に出さない』と要望したのも、空母機動部隊の置き物化を促進した。日本側は特攻兵の飛行時間が100時間かそれ未満、マリアナ沖海戦が600時間(平均)であった記憶から、史実での南雲機動部隊の平均飛行時間とされた1100時間を求めた。だが、そんな超ベテラン級の飛行時間を持つパイロットは扶桑生え抜きのパイロットには教官層にもおらず、黒江たちが(転生によるチートを考慮して)ようやく達成する程度であった。魔女の世界では、最短で数年しか戦場で働けなかったからで、日本は魔女主体の様相を改め、通常兵器主体に編成を切り替えるように要請を出したが、怪異のこともあるので、魔女を戦場から排除はできないのが現実。これは強襲揚陸艦の航空戦力としての運用、近接格闘能力を鍛え上げ、万能性を持たせることなどで妥協された。当時は別世界のパワードスーツなどが大活躍する一方、魔女は事変世代の猛者たち以外はF6FやF4Uといった高性能レシプロ機にすら、満足に伍することもままならなかったからだ。大半の魔女の持つ12.7mm銃では、初速を上げたところで、20mm砲を弾ける装甲を持つF6Fや、頑強な構造を持つF4Uに致命傷を負わせる事は困難であった。更に、相手がジェット機になると、それまでより射撃機会が減ってしまい、戦果を挙げにくくなった。第一世代最高のF-86ストライカーを与えても、操作感覚の違いで忌避する者も多かったため、1949年度では、以前のような軍政に影響を与えるほどの権勢は見られなくなり、『退役まで無難に過ごしたい』層と『戦いこそが本懐だろう』な好戦的な層に分かれていった。64Fはそのどちらでもない事も、数少ない新世代にバカ受けであり、配属志願は多かった。とはいえ、激戦地の部隊であるので、それなりの適性は求められた。隊員資格に値するか。そのふるいにかける目的で教育専門の『極天隊』が作られ、元の統合戦闘航空団出身者のうち、気質が対人戦闘向けでない者はダイ・アナザー・デイ後にその教育隊に入り、教官として生活していた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑の戦艦部隊は特殊な事情で存続したにすぎなかった。馬車引きのごとく酷使されたが、それは生存性。怪異の攻撃を食らっても、戦艦の装甲ならば耐えきれるからであった。日本は史実と異なり、現代艦級の万能性が異世界(未来世界)の技術で与えられたと知った日本側は見栄えの良さも鑑み、馬車引きのように扱った。だが、予想外の事態も起こった。M動乱を期に、扶桑は大和型のさらなる進化型『超大和型』を整備しつつあったので、接舷可能な桟橋が限られていた。播磨型で350m、水戸型で380m前後という超弩級の大きさ。まさに(日本基準では)空前絶後の大型艦であった。信じられないことに、その大きさでありつつ、常識外れの旋回性能と加速力を兼ね備えている。日本側はその使用技術が自分達を遥かに超えていることに薄々と感づき、震え上がった。大和型を超越する口径と重量の砲塔が現代艦の無人砲塔のごとく、スムーズかつ迅速に稼動したからである。それでいて、口径と砲弾重量(2トン超え)からは信じられない速度で連射が可能(機関砲のように)と、他国の戦艦はおろか、現代艦も超える能力を誇るとくれば、ミサイル兵装前提の現代艦の存在意義が揺らぐ。加えて、現代艦は商船のほうが戦闘艦より頑強であったりする。結局、現代艦の面子を守るため、扶桑派遣の護衛艦には『扶桑でバイタルパートへの物理装甲付与の改修を施す』というせせこましい手段が取られた。本来は必要ないと言えるが、前時代の象徴なはずの戦艦に現代のものが劣るのを認められない論調があったのだ。だとしても、構造上の限界もあり、軽巡相当の装甲厚が限度であったが――

 

 

 

 

 

 

――結果、大戦型艦艇の『被弾前提の設計』のほうが平時の突発的な事故や有事の生存性が高いことがダイ・アナザー・デイからの流れで証明されてしまったが、21世紀世界では、二次大戦式の装甲を持つ艦艇の建造は不可能である。ミサイル兵装の発達で、その設計思想自体が放棄されていたからだ。そのため、現物の補修工事はできても、自分達の手での新造は(過去の図面が完璧に残る)アメリカであっても困難を極めた。とはいえ、そこはアメリカ。日本連邦が派遣や出向で済ませたのとは対照的に、譲渡艦の補修以外にも、新造をこなせた。結果的にそのことで、自由リベリオンへの武器の供給に目処をつけ、なんだかんだで『軍事顧問団』という形で関わるなど、アメリカらしい『ずるさ』を発揮していた。、こうした、アメリカと日本連邦の蜜月は21世紀を通して維持されるのだが……?――

 

 

 

 

 

 

 

 

――転生者達のうち、素体が軍人であったものは素体となったものの諸権利を受け継ぐ事になり、英傑の転生であった者については、素体の軍階級以上の待遇となった。アストルフォしかり、アルトリア・ペンドラゴンしかり。中には、転生先が生前の祖国ではない(アルトリア・ペンドラゴンやシャーリー)者もいるので、その帰属の是非についても、連合軍は苦労を強いられた。ジャンヌ・ダルクについては、旧来の地域国家が既に消滅している時代の人間へ転生したため、特段の問題はなかったが、アストルフォは単一の人格として転生したが、ペリーヌ・クロステルマンの第二人格の一つであったモードレッドについては『生前の行いの報い』もあるのか、いまいちぱっとしない。とはいえ、ペリーヌ・クロステルマンを暗殺から救うなど、人格のみが表層化し、暗殺者を退けることもあるなど、一応は英傑らしいところも見せられたという――

 

 

 

 

――デルザー軍団を撃退し、つかの間の休息をしている一同――

 

「ブライアン。あなた、いつまでわたしの体を使ってるつもり?」

 

「そうだな。うちの世界と先方の世界は時間の流れが違うそうだからな。ある程度は調整をするが、いつかは明言できんよ」

 

「え~~!?」

 

「それに、落ち目だった私が復活したと認識されるには、現役最強の誉れ高い後輩を三、四人はぶち抜かなきゃならん。凱旋門まで挑戦せんと、世間は評価を変えん。落ち目になるとはそういうことだ。元の姿に戻ったら、あんたを招待してやりたいが、当分は先だな」

 

ブライアンは自分が『落ち目だった』事は認識しているので、評価を完全に覆すには、師であるオグリキャップの引退レースと同等以上の『キセキ』を起こさない限りは無理だろうと感じていた。本来は自分ですべきことなのだろうが、もの他のことで精神的に疲弊していた状態の自分では(治癒された肉体の)ポテンシャルは出せない。それを自覚している故に、異なる立場に身を置いた。それを説明する。

 

「話せば長くなるがな、こいつは全盛期に強すぎた。故に、低迷した時の掌返しもひどくてな。親父さんも例外じゃなかった」

 

「え、お父さんも?」

 

「私たちは人の肉体に『競走馬の魂』が宿ることで生まれる種族だ。だから、男の肉親は普通の人間だ。そこの謎は解明されてないが…。親父は私に家業の酒造と旅館を継がせる気だった。だが、姉貴も妹もいる私としては、そんな気はなかった。ガキの頃はいざ知らず、長じた今となっては、な」

 

ブライアンは全盛期に海外遠征を視野に入れている事を公言していたほど、レースは生活の一部である。父親は『ピークアウトが起きれば、自然とレースから離れてくれる』と考えていたのだろうと、面談したシンボリルドルフの談。ところが、ブライアンはライバルが台頭してきたことで『のめり込んでしまった』と、父親は嘆いていた。父親の予想外はローレル、マヤノ、マーベラスと言ったライバルたちが台頭してきた事、ブライアンの師が『キセキを起こした』平成三強の一角であったオグリキャップであったこと、ブライアンの再起を純真に信じていた親友の『サムソンビッグ』(ブーちゃんと呼ぶのが許されているレベル)の存在であった。

 

「それでも、親父は次女の私に継がせる気だった。私はそんな事には興味はないと言ったら、喧嘩になった。それで勘当された。高校は出させてやる。それが餞別だと言われたから、余計に引退できなくなった。大学の内部進学の志望を出していたからな」

 

「どうするの?」

 

「形式上の上位リーグに行く条件は満たしているが、それだと、今の時点で有する権利を色々と失うからな。今の立場のままで凱旋門に二回は挑戦するが、ここ二年はすでに枠が埋まっていたからな…。それもあって、あんた自身との事の長期化は必至だ。ディープインパクトが出るからな」

 

のぞみ自身との入れ替わりは長期に渡ることになることがブライアン本人から明確にされた。今をときめくヒーローである『ディープインパクト』が凱旋門賞への出場を表明した事、高校の寮を卒業と共に引き払う時に向けての準備もあるためだという。

 

「ディープインパクトだが、ヤツも凱旋門賞は勝てん。奴には薬の服用に気をつけろとは言ってあるが…」

 

史実では、投与された薬がドーピング云々とされ、順位剥奪とされたディープインパクト。そのことが原因で『作られた英雄』という評判が生まれ、更に、ディープの全盛期の輝きをその子であるコントレイルが期待され、不調期の長かったコントレイルの評価に影を落とした。ゴルシはそれを知っていた。ディープインパクト自身も、子であるコントレイルへかかった重圧と、自分自身の『作られた英雄像』という評判はウマ娘化しても気にしていたようで、『長めに現役でいる』という風に発言を切り替えつつある。それはコントレイルへの餞だという。

 

「どういう事?」

 

「日本じゃ問題視されてない薬が仏でひっかかったんだよ。ドーピング検査で。それで、ディープインパクトの評価に影を落としたんだ。ヤツにはそれを忠告している。奴はあたしのオジキだから、やんわりにだがね」

 

「別のあんたには苦労をかけることになるが、私もあんたの仕事を代行する。記憶を共有できる仕組みが確立されているからな、ドラえもんのいる世界は」

 

ブライアンは当面の間はのぞみAの業務を代行し、のぞみAもブライアンの学生生活を代行する。双方にメリットがあったためだ。また、バード星で確立されていた『記憶のバックアップ技術(地球でも、コピーロボットに採用されていたもの)が供与で復活したことになる。

 

「コピーロボットはわかるな?」

 

「えっと、パーマンが持ってた奴だよね?」

 

「それをドラえもんも持っていて、その技術を応用したらしい。未来デパートが売ってたとか」

 

「なぁ!?なんでなんで!?」

 

「知るか。おい、ゴルシ。なにか飯はあるか」

 

「戦闘糧食で済ませってよ。のび太がいりゃ、グルメテーブルかけを借りられんだが」

 

「自衛隊のはうまいと聞くが?」

 

「かなりな。戦中に比べりゃ天国だそうだ」

 

秘密基地の臨時食堂で戦闘糧食をもらい、簡素なテーブルで食事にありつく一同。

 

「あと二日で仕事再開か?」

 

「休息が終われば、機甲部隊の掃討だ。連中は元々、ナチスの敗残兵だからな」

 

「ライダーたちはそいつらに改造されたの?」

 

「八割はな。別ラインで改造されたライダーもいるからな。もっとも、関係性がないわけではないらしいが」

 

「一号の成り立ちから話したほうがいいな。あたしも彼自身から聞いたことの受け売りだけど……」

 

一同はプリキュア姿のままである。実質的にそれが仕事着の扱いとなっているからだ。なお、のぞみBはドリームキュアグレース、ブライアン(肉体はのぞみA)はエターニティドリーム形態となっている。ゴルシについては通常のキュアビートの姿だが、ゴルシ自身のポテンシャルの高さの反映により、現役時の彼女を超えるポテンシャルを発揮している。

 

 

「かいつまんで言うが、ナチ残党は世界各地に散らばっていたが、南米の最大派閥が人体改造技術をオーバーテクノロジーを以て完成に至らしめたのを期に、ネットワークができた。それが現代型暗黒組織の起こりだ。それで改造技術が成熟した1960年代後半に、強靭な若者を拉致して、次代の最高幹部に仕立て上げる動きができた。その中で提案された『バッタの力を持つ改造人間』が仮面ライダーの原型になるものだった」

 

組織が仮面ライダーを生んだ理由から話すゴルシ。仮面ライダーの出自は組織にあるからだろう。その過程で、プロトタイプ(0号というべきか)の個体がいたが、素体に問題があったのか、能力に耐えられずに死亡したという。それを改良したボディの素体に選ばれたのが、本郷猛(一号ライダー)であった。一号が反逆者となり、その刺客として改造されたのが一文字隼人(二号)。しかし、一文字の完全な改造は本郷に阻止され、本郷の同志となった。それが仮面ライダーの起源だ。

 

「……な感じだ。恐ろしいことに、大阪万博の半年から一年後の話らしい」

 

「えーーーー!大阪万博って、1970年の話だよね!?」

 

「そうだ。その時に20代だったんだよ、一号と二号は」

 

「えーと、今は2008年だから……ん!?」

 

「そうだ。あの二人の年齢、本当ならジジイになってていい年齢だ。この時点でな」

 

仮面ライダー1号と2号の実年齢は2008年時点で既に、老境を迎えている。7人ライダーは数年の誤差があるが、概ね、平成後期には老境を迎えていていい年齢層であった。改造された時点の青年の容姿を保っているが、改造でその容姿は自己意志で可変できるため、年相応の老けた容姿にもなれるという。彼らは改造態が真の姿と言えるからだ。

 

「あんたも、私等のもといる時代じゃ、20の後半くらいだろうに」

 

「そりゃそうだろうけど」

 

ウマ娘達の生きる時代では、のぞみも26歳を超えている計算である。Bにとっては、14年以上も未来のことだ。ここから『オトナ』~世界と似た経緯に至るには、ココが何かかしらの手段で『プリキュア達を戦いから解放させたい』という願いを叶えることが必要になるが、それが皮肉にも、事変への対処手段を奪うことになった。ココBは『オトナ』世界のそんな経緯を知らされ、強い罪悪感に押しつぶされそうになっているが、自業自得の感が強いため、ナッツからも辛辣な態度を取られる有様であった。オトナ世界でも、フェリーチェに『対処手段を奪った』事を暗に責められ、タジタジになったように、ココは大罪を犯す要素が多すぎるのだ。

 

「ココ……どうなの?」

 

「当分は立ち直れんよ。別の世界のあんたらから対処手段を奪ったのは、その世界の自分だと知らされれば、な。ヤツには反省の時間がいる。最も、今回のことで、その選択は取らんだろうし、敵が現れてる以上は…な。それに、未来世界にいる地下勢力もこの世界のことは察知しただろうから……Gフォースの兵力は当分、置かなきゃならんだろう」

 

 

「地下勢力?」

 

「地球連邦軍のある世界で暗躍してる、悪の軍団の一つだ。色々な成り立ちと出自を持つ。それらにバレたことは察知している。いずれも、21世紀の軍隊では止められん力をもっている。地球連邦軍でも、通常のMSやコンバットアーマーじゃ止められん。だから、スーパーロボットなんてのが造られた。贅を尽くされているから、下手な兵器はおもちゃ扱いだ」

 

マジンガーZの時点で21世紀最高の戦闘集団と言える『米海軍の空母戦闘群』と同格の戦闘能力であり、それを超える能力を持つロボットも多くなっている。そして、ある種のシンギュラリティポイントを超えた『神の領域』が『真ゲッターロボ』なり『マジンカイザー』などで、それらは最高位に君臨している。

 

 

「最も、ゲッタードラゴンやグレートマジンガーも型落ち気味で、真ゲッターロボと同格の連中が一線級と言われてるそうだがな。一発で日本列島くらいは消し炭にできるような」

 

「!!」

 

「最も、連邦の敵は宇宙にいるから、それでもまだまだって感じらしいぞ」

 

「……スケールでかすぎない?」

 

「一つの宇宙だけの問題でもないし、複数の地球が狙われてる状態なんだ。地球人だって、生きるのに必死さ。それに、第三のあんたが言ってたが、現役時代の末期に、全部のプリキュアが束になっても、一回は負ける敵が出てくるそうだ。それに対抗できる力を持ったほうがいいぞ」

 

「え!?本当?」

 

「第三のあんたが遭遇したそうだ。だから、それを聞いて、シャインスパークやストナーサンシャインの会得に至ったんだと。遭遇した記憶があるそうだしな」

 

のぞみAがゲッター系の大技に傾倒したのは、前世の現役時代末期に遭遇した記憶のある『シュプリーム』への警戒心からでもある。(最も、単体の生物として最強級のシュプリームも、ゲッター線の前では『未熟な進化』に過ぎないが)

 

「それと、何があるかはわからんからな?」

 

「どういうこと?」

 

「ここから4年後の2011年。未曽有の大地震が日本を襲う。それも1000年に一度級のが」

 

2011年に大地震が起きることは確定事項らしく、ウマ娘世界でも、過去に起こったことが明言された。

 

「その更に1年後の『スマイル』~の時代に、中規模の地下勢力との戦闘があったってよ。それを見せとけって言われてる。似た出来事を体験することになるだろうからって」

 

ゴルシはタブレットをテーブルに置き、その時の記録映像を見せる。黒江に言われたとのこと。別の世界における出来事だが、のぞみAが深く関わった一戦であったからだろう。その中で、のぞみAは(ゲッターの影響で)激しさを見せ、スマイルの面々に引かれていたと記録されている。その世界に集められたプリキュアの中で『突出して強かった』からでもあるが、敵が敵なためもあるが、最初から話し合いの選択肢を捨て、ガチで倒しにきているのだから、(初見の)その世界の『スマイル』が引くのは当然だ。

 

「……あのさ、これ…わたし?」

 

「正確には、入れ替わってるほうだがな。敵が敵だから、情け容赦なく倒してるし、その世界の横浜は戦闘で大きな被害を受けたそうだ」

 

その戦闘を経験したプリキュア達がランダムで『その次のオールスターズ戦』に呼ばれることで、尾ヒレ背ヒレがついたと、ゴルシはいう。奇しくも、スマイル以降は『オールスターズ戦が沈静化に向かい始めた時期』であるので、介入で変化した戦いを経験した層の認識を正せる機会がなかったのも、認識に差異が生じた理由であった。また、のぞみA(と、入れ替わりの多い黒江)の情け容赦のなさに震え上がり、そのことを自分の後輩に伝えた者もいたので、のぞみは風評被害を被ってもいたが、自分で悪ノリしたこともあるので、ある意味で『相殺』された状態と言える。

 

「問題は敵の強大ぶりに、お前らの強さが追いついていないことだ。仮面ライダー達でも苦戦するような敵は異世界にごまんといるが、お前らは現役時代から基礎能力の上げようがない。仕方がないが」

 

「それで、そっちは?」

 

「色々な世界の戦闘法を調べては取り組んでるそうだ。特に、得物を使われると、お前らはド素人だからな。いくら才能があっても、経験がなきゃ」

 

「む~……」

 

「あたしらはプロのアスリートだし、武道も護身術代わりに覚えさせられたりしているからな。身のこなしは見かけの体格とは反比例してるぞ」

 

 

「わたしだって、2年は戦ってきたのにぃ」

 

不満を口にするのぞみBだが、ウマ娘たちはプロアスリートであり、ヤエノムテキのように『武道を個人的に習っている』場合もあるので、意外と格闘技に精通していることも多い。トレーナーが個人的に護身術を習わせていたり、個人の嗜好で格闘技をしている者もいる。そのため、素人ながら、経験だけで一定の強さを持てるプリキュア化の恩恵はかなり大きい事がわかる。

 

「お前らは身のこなしがこなれてない。まぁ、戦士で居続けなきゃいいが、敵が現れる以上はな」

 

プリキュア達の難点は基本的に『一年間しか活動していない』ことそのものである。ラスボスを倒した時点で、戦士としての成長は終わる。だが、実際には、現役時代の能力値で成長が打ち止めになっていると、敵に対抗できない場合が生じた。シュプリームの事例がそれだ。さらに、その事例をマジンガーZEROが探し当てた事が濃厚な以上、彼女らが戦士であり続けた場合、現役時代より強くなっていなければ、シュプリームの平行同位体が襲ってきた場合、手も足も出ない事になる。

 

「敵が現れなくても、戦いからは逃れられないんだね……」

 

「あんたらはそういう因果があるらしい。本人の意志すら関係なしに、あんたらは戦士なんだよ、それが世界の意志だ」

 

プリキュア達もまた、仮面ライダーやスーパー戦隊同様に『本人の意志と関係なしに、戦う運命となっている』存在である事が確定している。ブライアンのその一言はそれを自覚させた。のぞみBは想い人の願いよりも、世界を守る戦士としての使命を選ぶ事となり、次第に正史から外れた道を歩む事になる。

 

「あんたらはまだいい。プリキュアになれば、最盛期の体を好きに使える。だが、私たちは『魂の使命』を果たした瞬間に衰えが始まる。因果から逃れる手段はなかった。どんなに個人で努力しようと、トレーナーと組んで、最適なトレーニングをつもうと。意志力で抑えられることはわかってはいるが……」

 

ブライアンは自身の低迷期に荒れたり、弱音を吐いていた経験がある上、自身の低迷が運命の強制力によるものと知ってしまったためか、それを忌み嫌うような口ぶりである。また、種族としてのピークの短さを通常の手段では打破できないことも、史実の覆しを悲願にした彼女が『運命を超える力』に傾倒したのは当然のことであった。

 

「だから、私はそれを鍛え、運命の強制力をねじ伏せたい。誰がなんと言おうと、だ。泥もすすれば、地べたに這いつくばってもいい。悲運の~と冠詞をつけて、後世の人間共に呼ばれるのは御免被る」

 

「だから、別の私に?」

 

「そういうことだ。あんたの力にあやかりたかったのもあるが」

 

「お前さんは歴代の中でも、そういう星の下に生まれてるからな。お前さんの名声は自分が思うよりも、ずっと大きいってことだ」

 

「いやぁ~……そう言われると……照れちゃうよぉ~……」

 

「別のお前さんの了承は得てる。当面はレースから離れさせて、精神的な療養をさせる。それがいいと、カウンセリングの医者も言ってるしな」

 

「あのさ、どうやって暮らすの?」

 

「それが交換条件でもあったからな。なに、この世界のあんたの学園への説明はきちんとしてやるさ。幸い、黒江さんは自衛官でもあるしな」

 

「え、あの人、違う世界ごとに職業持ってるの?」

 

「ドラえもんの世界じゃ、あいつは本当に幹部自衛官だしな。それも高級幹部だ。潜り込んだ先で本当に組織の幹部になったんだよ、あいつは。そのおかげで、こういう説明は楽だぜ」

 

黒江は自衛官としての籍を持っているので、こういった『事情を知らぬ、外部の者達への説明』などで、自衛官としての身分を活用している事は周知の事実であった。外見は若いが、自衛隊への奉職は20年を迎えようとする古参。肉体的に若いため、自衛官としても普通に戦闘機乗りをしている。空自パイロットは40代になると、戦闘機乗りとして用無しになり、民間への転職が薦められたりするが、黒江の場合は『扶桑で五指に入るエースパイロットだし、肉体的に年を取っていないから』という理由で、第一線で飛んでいるのが普通に許されている。また、ジオン残党の襲撃の頻発化で『若いパイロットを殺すな』とクレームが付き、それまでは高齢を理由に飛ばさなかった高階級の自衛官を駆り出さなくてはならなくなったため、扶桑出身かつ、エースパイロットでもある出向者の魔女は重宝がられている。在籍年数が長いのに反比例して、外見はとても若々しいからだ。

 

「いいの?」

 

「日本人は軍隊に興味ないから、それらしい格好の士官が事情の説明にくれば、そういうもんだと思うそうだ。おまけに、プリキュアにだって、公的機関のお墨付きが必要な時勢になってるそうだぞ」

 

「なんでなんでぇ!?」

 

「有名になった&何代にも渡って、日本を守ってきたから起きることだ。ドキドキの時代以降に起きるらしいぞ」

 

「なんでぇ!?」

 

「ドラえもんの世界の法務省や警察庁も問題視したそうだ、あんたらの戦闘行為」

 

「嘘ぉ!?」

 

「警察のお硬い連中は、有事よりも平時の理屈を優先したんだそうでな。それで、プリキュアの全員を軍人にしとくことで、そーいう外野のたわごとを黙らせたそうだ。連中としては、仮面ライダー達と同じように、特例で認めるってつもりだったらしいんだが、それを容認する昭和世代と、厳格な法運用を求める平成世代とで大揉めらしくてな。結局、軍部が先手を打った。一部のうるさい連中は騒いだが、法律云々を言われると、引っ込むらしい」

 

「なにそれぇ……」

 

「大人の事情って奴だよ。世に認知された世界だと、色々と無視できないものも多い。歴代ヒーローたちも、世間の後ろ盾で『特殊警備会社』って名目で組織立ち上げるくらいだそうだ。元々が公の組織だったのもいるけど、その組織が解散してたりしてたそうでな。まぁ、警察も悪の組織の相手なんて考えてないからな。一時は考えてたヤツもいたそうだが」

 

「いたの?」

 

「バブル期の頃だそうだ」

 

ゴルシも話に聞いた程度だが、ドラえもん世界でのバブル期に『機動刑事ジバン』~『特捜エクシードラフト』までのヒーロー達が日本警察に存在した事は記録に残っている。だが、『特捜ロボジャンパーソン』の出自など、警察の汚点となる不祥事も絡むためか、2000年代前期頃に、関係者の了承無しに、その殆どの記録と備品が処分されたとの噂があり、実際にウインスペクターの備品であった『ギガストリーマー』が23世紀で発見されている。おそらくはジャンパーソンの大元になった計画、ビルゴルディなどの技術の出どころが世間に露呈するのを恐れた警察の『反・正木俊介派』の最高幹部らの隠蔽工作であっただろうと囁かれている。

 

「バブルが弾ける頃に警察が何か、公にできない不祥事を起こした。超テクノロジー関連の何かを。それが巡り巡って、のび太の街の警察の無為無策の原因になるんだから、皮肉なもんだぜ」

 

「なにそれ」

 

「自衛隊が総理大臣の密命で調べたらしいが、巧妙に隠蔽されてた上、関係者の口裏合わせまでされていた。よほどの案件だ。バレたら、警察庁や警視庁のお偉方のクビが飛ぶくらいのな」

 

「何があったの?」

 

「お前さんの生まれた1993年に何かが起こった。言い伝えられているのは、その年にこういうロボットヒーローがいた事くらいだ」

 

ゴルシは黒江から調査要請の出ている対象の写真を見せる。1993年の日付、紫色のボディを持つそのロボットヒーローを。

 

「このヒーローの名前は?」

 

「その時に現役だった『五星戦隊ダイレンジャー』に聞いたら、『特捜ロボジャンパーソン』というらしい。詳しい記録は後世に残っていない。数年ほど活動していたらしい話が伝わってるが、確証はないそうだ」

 

キカイダー達と違い、特捜ロボ・ジャンパーソンは謎が多く残されたヒーローだという。出自の関係もあるのだろうが、日本警察が何かを恐れ、隠蔽工作に奔走していた事、その残滓が2000年代に悪影響を与え、学園都市の組織解体後の混沌の遠因となったと考えると、皮肉としか言いようがない。

 

「その事が原因なんだと」

 

「そういう事あるんだ……」

 

なんとも重い話だが、ジャンパーソンが後世に残した謎、彼の大元に潜む日本警察の黒歴史。それらがのび太の街の2010年代後半以降の治安面における混沌の遠因になるという皮肉。その黒歴史がヒーロー達の21世紀日本での活動に(法的意味で)悪影響を及ぼすなど、負の影響を後世に残している。どうして、そんな事になったのだろうか?日本警察が組織ぐるみで隠蔽した『それ』はなんなのか?ゴルシはそれを『自分のレースのトレーニングの合間に調べている』と述べ、普段の姿でも、裏で黒江らに協力している事を明言するのだった。

 

 

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