――プリキュア達の派生世界は多いことがわかり、のぞみAはその中でも最強のパワーを得たものの、ほぼ人外となってしまっている。その説明は投げているゴルシ達――
「その力…わたしはどうやって?」
「話が長くなりすぎるから、今はやめとけ。背景一つで、大学の講義一コマ分にもなるそうだぞ」
「え~!?」
「おまけに、お前、はーちゃんと義理の親戚だぞ」
「だからぁ~!?」
「それは、後でのび太に詳しい説明をしてもらえ。それに仕事が軍人だぞ?他の世界の自分にキレられる率高いってボヤいてた。好きでなったわけじゃないし、転生した時に、他人の身体を乗っ取る形になったって事情があるって」
「そんな事あるの?」
「色々なパターンがあるが、お前の場合は肉体まで変異させちまったパターンだと。それで、科学的には説明不能らしくてな。で、形式上、その素体になった奴の職業を続けた結果だそうだ。で、それはそれで問題が起こったんで、軍に骨を埋めることになったんだそうな。高給取りだし、高級将校だから、下っ端の連中の狼藉も止められるしな」
「軍人って、粗暴なイメージあるんだけど」
「いつの時代のイメージだよ?下士官以下の連中はともかく、将校は大卒くらいの頭のインテリか、叩き上げのベテランだぞ」
「自衛隊とも縁なかったし…、わたし」
ゴルシに呆れられ、しょげるのぞみB。とはいえ、徴兵が当たり前であった扶桑では、下士官の層は厚いので、一般人に狼藉を働くチンピラ同然の兵や下士官もおり、64Fの隊員にはそれを阻止し、警務隊(憲兵が一般人への行政警察権を完全に放棄させられた後に自衛隊式に改編された兵科・職務)に引き渡す権限も与えられている。それを考えれば、超高待遇である。
「それは置いといて、それで結婚して、家も買ったそうだが、防空司令部に入居に待ったがかけられてな。それで、当分は居候の身が続くってよ。戦中だからって、家屋の無事を保証できないかららしいがね」
「なに、それ」
「戦争中の軍の事情だそうだ。お前は教師にはなれる未来が9割方保証されてるが、そうならなかった世界線もある。その内の2つの世界線のお前が活動してて、もう一方はアラサーだそうだ」
「あ、アラサー!?」
「だけど、その世界のお前はプリキュアの力を失っていたから、超常的な存在が介入して、どうにかした。で、宇宙戦艦ヤマトが戦った異星人の軍隊の残党と戦ってる。身体的には、お前より三歳ほど年嵩の状態に戻ったそうだ。つまり、高校生くらい。身体的には絶頂の頃だ」
「超常的な存在?」
「その世界はお前らの後にプリキュアは出たが、ほとんどは一年で力を失ってたらしくてな。それで、アカシックレコードに介入できる存在(1000年女王)がお前らにパワーを戻した。で、お前の仕事を代行してる。戦争で元の職場が消し飛んだとかで、当分は代行業を続けるって」
大人のぞみはなんだかんだで、『自分の存在意義を満たせる』ということで、戦いには躊躇ないままであった。記憶を共有したこともあり、軍人として振る舞うのに違和感はない(既に成人済みという実年齢の都合もあるが)。また、能力もすぐに使いこなす。大人になったことで、覚悟が決まりやすくなっていたからだろう。
「大人のわたし、なんだかんだでプリキュアに戻りたかったの?」
「仕事はうまくいくとは限らねぇんだ。夢を叶えても、それが当人の幸せとは限らねぇって事さ。これはあたしらにも言えるかもしれねぇな」
「うちの姉貴が言っていたが、親類が鬱病になったとか聞いた覚えがある。まぁ、現実は甘くないという事だろうよ」
「叶えた後にどうするか…。それかぁ。なんか幻滅なんだけど」
「それが現実だ。叶えた後に目標を見失うと、私のように、後で苦しむ事になるぞ」
「あたしらとお前は分野は違うが、志望した分野で成功した。だけど、その後がむしろ問題なんだよ。どこかで厳しさをわからせられるっつーか……」
ゴルシとブライアンは夢を叶え、ピークアウトに悩んだ経験持ち(ゴルシはやり直しの最中だが)であるので、現実の厳しさを知っている。その上での忠告でもあった。のぞみBはこの忠告が心に残り、精神面の強さを身に着ける意味合いで、『プリキュアとして現役であり続ける』意志を固める。ココBは(別の自分の失敗を鑑みて)それを尊重するのである。
「別の私はそれに苦しんで、プリキュアの力に郷愁を感じた。それで、宇宙戦争で取り戻せたからって…。うーん……」
「14歳のお前に、26歳の自分の気持ちを理解しろとは言わねぇが、自分の取り得る選択ってのは、頭に入れとけ」
14歳であるのぞみBには、26歳になった故に、かつての立場に郷愁を感じ、戦争への従軍を受け入れた『大人の自分』の気持ちは理解できないかもしれない。だが、26歳となり、人生の岐路に立っていたからこそ、青春時代のキセキをもう一度起こすことで『大事なモノを守りたい』という願望を抱き、それが叶えられた以上は『戦士』に立ち還る。それも自分の選択であるのだと理解するには、時間が必要だろう。
「明日は学園の関係者に、あいつと一緒に説明した後で学生連中向けに『詫びのライブ』だったな、ゴルシ」
「ああ。お前、付き合えよ。かれんには言ってある」
「そっか、かれんさん、生徒会長だっけ…」
「お前、忘れてたのかよ」
「いやぁ、最近は生徒会から引退するのを見越して、後任選びをしてるみたいでさ。今度こそ卒業するみたいだし」
「この世界に波及してた次元震の影響が収まったようだな」
「だな。物事の繰り返しが終わるということは……」
プリキュア5の世界は『次元震』の影響が収まり、2009年へ歩みを進め始めたようであった。順当に行けば、のぞみとりんは2010年の春には中学校卒業と高校入学を迎えるだろう。
「なんだか、怖いんだよね、今更、時間の針が進み始めるの」
「まぁ、夢みたいな二年だと思え。だけど、それが現実だって証はお前の手元に残る。ココも反対はしないと思う。別個体はそれでお前を(結果的に)苦しめたんだからな」
「まったく、好きな女を(良かれと思って、そうしたことで)苦しめてしまうなんてのは、あいつだけかと思ったが……」
「お前、ほの字だったもんな」
「うるさいぞ、ゴルシ」
ブライアンの本心が垣間見える一言であった。ココBは『別の自分』の選択が想い人を(結果的に)苦しめた事に極大のショックを受け、好物も喉を通らないとのことだが、ブライアンも(元トレーナーが良かれと思って、敢えて選んだ選択で)苦しんだ記憶からか、ココの考えに批判的であるらしい。第三者から見ても、ココが一つの世界でした事は『余計なお世話』であり、白い目で見たくなるような胸糞悪い思いがするのがわかる。
「あとで、ミルキィローズとは殴り合いせねばならんかもな」
「え、ミルクと?」
「『私たちの世界で、ココ様がそうするとは限らないじゃない!!』ってヒスってな。面倒な事になったが、ああいう噛みついてくる手合はやり返してやるのが、私の流儀だ。お前がここにくるまでに会話したが、そのことで食ってかかってきてな。気持ちはわかるが、殴りかかられるいわれはないからな」
「あの子、喧嘩っ早いからなぁ。でも、よく無事だったね、ローズのパンチを受けて」
「筋は悪くないが、読みやすいよ。私たちの動体視力はお前らよりかなり良いが、それを使うまでもなかった」
「あの子、人間態になれるようになってから、そんなに経ってないし、この世界じゃ、実戦もそんなにしてないんだよな。BLACKさんが先に現れてさ……」
「あの人がいると、BLACKの時点でも、お前らの敵くらいは『敵じゃない』からな。どんまいと言おうか…」
B世界では、ミルキィローズの見せ場の少なからずを『仮面ライダーBLACKが持って行く』形になったため、ミルキィローズは経験不足であった。ブライアンに食ってかかったが、軽くあしらわれる有様であったと、ブライアンが語る。
「仕方がないが、私等はレースで反射神経が極限まで鍛えられてるんだ。あいつの素人丸出しの拳などは軽いものだ。欠伸が出るくらいに。いくらパワーがあろうと、当たらなければな」
ブライアンの語るところによれば、ローズの攻撃は(ブライアンからすれば)まだ、そこらの(喧嘩なれした)チンピラのほうがマシなレベルのものであり、(自分からすれば)意図が見え見えであったという。
「まさか、やり返したの?」
「合気道で制圧した。顔見知りの後輩が有段者でな」
「ああ、カレンか」
ミルキィローズBはAと違い、経験不足により、ブライアン(姿はキュアドリーム)の合気道(素人よりはマシ程度の腕だが)にたやすく制圧された事が伝えられる。ブライアンは事前(入れ替わる前に)に映像通信でカレンチャン(スプリント路線の強者で鳴らすウマ娘)から合気道の手ほどきを受けた事が語られる。即興なので、カレンチャン曰く、『ズブの素人よりはマシ程度には仕上がりますけど、それ以上は求めないでください』との事。
「ズブの素人よりはマシ程度だが、あのガキを制圧するには充分だった。もっとも、私がお前の姿を借りてる事が気に入らないようでもあったが、こっちにも事情はあるんだが」
「あたし等が本気になったら、瓦どころじゃないからな、割れるの。後輩にスマートファルコンっていう、ダートのヤツがいるが、あいつは海を割れたからな、モーゼみたいに」
「…は?」
「ジェンティルドンナだと、どうなるんだ」
「貴婦人サマか?あいつなら、小さい島の一つくらいはカチ割れそうだが……?」
「なにそれ……」
カワカミプリンセス、スマートファルコンの両者すら超えるパワーを誇るのがジェンティルドンナである。それを知っているため、プリキュアのパワーにも驚かない二人。また、二人もかなり上位のパワーの持ち主であるので、並のプリキュアよりパワーがある。それは他の肉体でも適応されるらしい。
「私らは最高で時速90キロ近くを維持して、3キロ近くを走れるからな。基礎面は比較にならん。だが、サラブレッドの如く、ピークが短いのが弱点だった。それを克服するために、危ない方法を取っているが」
「危ない方法?」
「一つはゲッターエネルギーを浴びることか。生物の進化を促すというからな。限度があるが、少量なら体の調子を良くするからな」
「あのロボットのエネルギーをX線みたいな感覚で……いいの?」
「虚弱体質を改善するという医学的効果もあるからな。私たちには福音だよ。短いピーク期を棒に振ったら、競技者としての大成は諦めんとならんし、怪我一つでピークが終わってしまう。ヒトよりも脆い生物なんだよ、私らはな」
ブライアンは競走馬時代の記憶を持ったためか、それまでより人当たりの良い面が表れていた。ゴルシ曰く、ヤツは夭折した記憶があるからなとの事。更に、自身が種牡馬として大成できずに終わってしまった記憶もあるため、気質は以前より穏やかなさが目立っている。奇しくも、入れ替わっているのぞみAの振る舞いと一致している。
「それで、今回のことを?」
「顔出しして戦うわけにはいかんしな。色々としがらみがある身としては。まぁ、別のあんたとは上手くやってるよ」
「でも、大人の私が別にいるわけじゃない?わけわかんない~!」
「平行世界同士だから、遺伝子学的には『よく似た別人』だし、世界線が分岐して存在しているから、対消滅もないそうだ。漫画家が聞いたら、泡吹きそうだが」
大人のぞみはその頃には『オトナ世界の北米』で戦闘中であったが、一同は知る由もない。(オトナ世界での)自分の選択が別世界のココに罪悪感を植え付け、それが結果的に、のぞみBの運命を変える事になるのである。ある意味、のぞみは戦士である事が自分の存在意義を完全に満たしてくれるものであり、教師というものは『想い人と同じ事をしてみたい』という思いで(表向き)自分の夢のように取り繕ったにすぎないとも言えるので、運命の皮肉といえる。
「戦いが全てなのかな、大人のわたし……」
「教師という職業は、学生時代の理想論でやっていけるほど甘くないからな。特にあんたが成人した後の時代では。私の親類もそうだったと聞いている。大人のあんたは教師は辞めるつもりはなくても、プリキュア経験者としての過去を鑑みて、戦うことを選んだんだろうさ。たとえ、想い人の思いに反していようと」
ココの願いは結果的に、一つの世界でプリキュア達から敵と戦う手段を奪い、地球存亡の危機を招いた。それを聞かされれば、ココは正気ではいられないだろう。オトナ世界の地球は地球連邦の介入無くば、『破滅ミサイルで月ごと消し飛んでいた』可能性すらあったのである。
「それに、向こうの相手はアンドロメダ銀河を一時は支配した帝国の軍隊だが……メンタリティは蛮族に近いそうだ。そんな相手を知って、座して死を待つなんて、ガラでもあるまい?」
「……確かに」
「一つの世界ではそうなったが、ここでのココさんがそれを選ぶとは限らない。ましてや、多くの敵が狙っているとわかった以上……」
「私は戦いから逃れられないって事?」
「一度でも力を持った者の宿命って奴だよ。ノブリス・オブリージュって言葉、知ってんか?つまりはそういう事さ」
ブライアンとゴルシとの会話で『プリキュアであった者』はノブリス・オブリージュの言葉の意味通りの義務を否応なしに背負わされた身の上だと自覚した、のぞみB。ヒーロー、ヒロインの全てに言えるが、力を持ってしまった者は否応なしに、そういう義務を背負わされるのである。本人の意志と関係なしに。
「ノブリス・オブリージュ……か。そんなの、昔の王侯貴族や、明治から昭和初期の華族や皇族の話だと思ってた。まさか、ね……」
「誰かがやらなければならん時はある。たとえ、死ぬとわかってろうがな」
ブライアンのほうがノブリス・オブリージュの精神を理解しているのも変な話だが、大人のぞみもその精神で動いているため、時間軸の差による違いといえた。
「今のうちに休んでおけ。明日は学園のお偉方と会う事になる。ドリーム役は私がするから、お前はかれんのお付きでもしておけ」
「わたし、生徒会の役員でもなんでもないよ?」
「いいんだよ、そういうことは。学園中にお前がかれんと『つるんでる』事は知られてるんだし、こまけー事はいいんだよ」
と、ゴルシに押し切られたわけが、そこは釈然としないのぞみBであった。とはいえ、翌日、黒江が『自衛隊から国連軍に出向している幹部自衛官』という体裁で、学園の理事長(のぞみたちがよく会話をしていた、学園の売店のおばさん『おタカさん』と同一人物)と面会。国連(実際は地球連邦)からの詫び状、施設部隊による周辺の修復作業と、調査隊(という名目の後片付け)による周辺の封鎖の継続の通達、国連軍が日本の政府や行政機関等との折衝に入る事を伝えた。この時に地球連邦が損害賠償として、学園や街に支払った金額は21世紀での『街を数年は養える』ほどの莫大なものだが、平行世界を股にかける戦いの真っ只中の連邦にとっては安いものである。
―― 翌日 サンクルミエール学園 理事長室――
「今回の事件は内密に処理される案件になります。国連はこのような金額をそちらへ支払う用意があります。日本政府と関係機関(海保)には事後通知になりますが――」
黒江は片腕を包帯で吊った姿ながらも、サンクルミエール学園(のぞみたちが現役時代に在籍した私立中学校)の理事長と面会し、国連軍の使者であると装う。嘘も方便という奴だ。黒江が幹部自衛官であるのは嘘ではないからだ。『ナチス・ドイツとイタリア王国の残党が元の同盟国の日本で暴れまわった』というのは、独伊にとって『不祥事』に充分になりえるテロ事件だし、下手を打てば、重大な外交問題となる。その露呈により、元の西側諸国の連携が崩れるのを懸念するのは『もっとも』であった。国連そのものには、事前に送り込んである人員が事務処理をする手筈である。
「今回の事は日本政府に報道管制を引かせます。ドイツとイタリアの旧体制の残党らしき集団がこともあろうに、旧同盟国の日本で暴れまわったなど、両国にとっては赤っ恥ですし、日本人の両国への感情が悪化しかねない事案です。街の役所へも、別の人員が接触しています。インターネットもしばらくは監視する必要があるとの判断ですので、生徒たちにはくれぐれも……」
「わかりました生徒たちにはそのように伝えます」
(ここだけ見ると、すげーまともな将校に見えるな)
(だな)
黒江は本来、智子や圭子より生真面目であった上、正史でも出世は二人より早かった。その片鱗が垣間見えたので、ブライアンとゴルシは驚く。黒江は普段は『ギャグ漫画の人物』じみてるほどにコミカルな面が強いからだろう。
「彼女たちは?」
「わが方が協力を要請したプリキュアの子らです。連絡が取れた子らに来てもらったので、チームとしてはバラバラですが」
(うーん。自分自身の変身態なのに、他人に使われると……なんていうか、歯がゆいなぁ…。エレンちゃんも、この時代だと、プリキュアどころか、人間態もないんだっけ。本人が知ったら、なんて言うんだろうな)
水無月かれんのお付きとして同席している、のぞみBは歯がゆい思いがあるようだった。その点は正体を明かせるようになった『フレッシュ!』以降の世代が羨ましく思えるのだろう。さらに言えば、『GO!プリンセス』以降は自分たちより10歳以上は下の世代(この時代だと一桁)である。
(この子達もよくまぁ……。ぬけぬけと、プリキュアを演じられるよなぁ。アスリートは記者会見とかやんなきゃいけないっていうのはわかるけど)
と、ゴルシとブライアンが『行儀よく』プリキュアを演じてみせる様に関心する。また、この場にいた誰もが気づいていないが、黒江が軍服につけている略綬には金鵄勲章の略綬が混じっている。日本連邦のある世界では、ダイ・アナザー・デイ以降であれば、装着している者はチラホラいるが、無論、『プリキュア5の世界』では『いない』。しかし、軍隊内部の栄典制度など、戦後の人間はまったく興味がないので、指摘することはない。魔女の世界の扶桑では、逆に『仰々しい』との魔女たちの反対で、従軍記章の増加すら憚っていたが、ダイ・アナザー・デイでのカールスラントの一連の不祥事を受け、緊急で設けられることになり、反対派は中央から一掃されている。この場では、その略綬は『とにかく偉そうな将校』の演出に一役買っていた。
(でも、レース一本槍の割に、武道も嗜んでるなんて。畑違いの分野にも通じてないといけないのかな?)
レース一本槍で成功するウマ娘も多いが、神事を執り行う必要が生じた場合などで、武道や舞の素質も必要となるため、意外とマルチな才能が要求される。引退したウマ娘の思いを『供養する』行事などがあるからだ。のぞみAは幸いにも、その手の修練も積んでいたため、対応できたのである。
――かくして、国連からの要請という形で、騒動の幕引きを始めた連合軍。残敵の掃討と後片付けに時間を要することから、当面は街の封鎖は継続する見込みであった。学園の生徒たちに仔細は伝えられない事になったが、噂の防止のために、一部は伝える事にした。幸いにも、2008年はSNSの発達する前であり、その後の時代よりは情報統制が容易いのは、連合軍には僥倖であった。当事者である、この世界の海保や海自には『一部の情報を開示する』という事となった。それと無関係に、街に出現した怪異『シャドウ』は陰陽道の力で封印され始めていた。その関係で、街の歴史を紐解いたキュアミントこと、秋元こまちは『第二次世界大戦の際に、自分たちの街は大被害を被った(華族の別荘地だった故か?)、そこから再建されてきた)事を知る。そして、自分たちのよく知る時計台には古くから、天使を象ったとされるレリーフがあることを(その時計台の付喪神が彼女たち『プリキュア5が最後に戦う相手』のはずであった世界線が『オトナプリキュアの世界』であった)無論、こまちはその分岐を知る由もないが、世界線の分岐によっては、シャドウは自分たちで対処する案件であったろうとは予想する。――
「シャドウ……あれが私たちの最後の敵かもしれなかった世界線はある。でも、この世界はそれとは別の道筋に入ってる。私たちは……戦士であり続ける事が存在理由……。ある意味では皮肉かもしれない」
キュアミントの姿(体力温存のため)で調べ物をしていたこまちはもはや、『プリキュア』という存在が(自分たちの都合だけで)消え去る事を許されなくなった事を実感していた。
「君はどうするんだい?」
「戦います。それがたとえ、ココさんやナッツさんの願いに反しているとしても……。むしろ、それがあの時(プリキュアになった日)からの私たちの存在理由かもしれませんから」
調べ物に協力してくれているドラえもんにそう答え、覚悟は決まっている事を明確に述べる。想い人の願いに反した行動だとしても、戦わなくてはならない時はあるものだと。
「それに、この街に戦禍を再びもたらしてしまった責任は取らなくてはいけませんから。私たちにできるのは、戦うことです」
「そう気負うことはないさ。だけど、誰かがやらなきゃならないのなら、君たちがやるしかない。その資格を持つのなら、ね」
かれんとこまちはこの世界の住民であるため、戦禍をもたらした事への責任を取る意味でも、プリキュアであり続ける事を選んでいた。のぞみBもそれを選んだ事は、B世界の彼女たちは『オトナプリキュアの世界』とは違う道を歩む事を意味する。世界の光と影といえる『ヒーロー達と組織の戦い』は本来、戦いの終わりを望んでいたはずの彼女たちをして、その真逆といえる選択の『果てなき戦い』に引き込むほどのインパクトがあったのだ…。