――結局、魔女の世界の国々は別世界での歴史を知ると、民の繁栄は独立で勝ち取られるとは限らないと学び、普通なら独立できたはずの地域も『大国の庇護下で生きる』事を選んだ。怪異の事が頭にあったからだ。台湾のように、もはや原住民は極少数、中華系の生き残りも扶桑系移民と混血が進んでおり、既に扶桑の華族の地位にある者(明朝の元の皇族など)も多い事から、旧王朝の復興を選ばないケースも多い。台湾は魔女を元は輩出しない地域であったからである。日本の左派はこの現実に困惑した。さらに、沖縄で怪異の封印を解いてしまい、その討伐で那覇に大損害を被らせた事を反省もしないなど、顰蹙を買うことになり、塩を引くように、手出しをやめていった。その後始末に、日本政府は追われた。更に言えば、軍人の地位をある程度下げたかったが、いたずらに蔑むことではないという点では歯止めを持っていた彼らは扶桑の国民の掌返しを戒めた。負けた旧軍人らを蔑んだ『過去の自分達』を見ているようで、いたたまれなかったからだ。結局、扶桑人らは『社会的ステイタス』が縮小されていく軍組織への魅力を感じなくなったが、時代の風潮的に『戦時下で籍は置いておく』ことは続けていった。華族制が形の上で残ったおかげで『えらくなれる』事が分かりやすかったためで、勲功華族はその側面で『国家顕彰』として重宝された存在であった――
――民需は軍需に比して、意図的にゆっくりとした速度で発展させられていったが、これは1940年代の人々に電子機器を普及させるのは無理があると判断されたからだ。ミーナの隠された保守性がそれを裏づける形になったため、ミーナは後年(別人格だが)、その釈明をする羽目となった。最終的に、上官であったガランドに迷惑がかかったからである。元の人格が起こした『可変戦闘機死蔵問題』は経歴に大きな傷を残したばかりでなく、その手の議論を終息させてしまう効果があったのである(ただし、錯乱しつつも『弾薬が事前に手配済みで、燃料がほぼ心配ないのを知っていれば、最初から許可を出していた』とも釈明しているため、ミーナは燃料消費量を気にしていたとも取れるが、そもそも、熱核反応でなくとも、戦後型タービンエンジンの燃料は専用の燃料を用いるので、高オクタン価ガソリンは使わないのだ)。結局、転生者がいる、あるいは未来世界への派遣経験者のいる部署のみが21世紀以降の機器、多くの娯楽や武器などに触れる権利を特権として持つ事になり、そこへの人事異動=エリートへの道という図式が生まれていく。仕方ないが、それを理解できなければ、どんなに優れたものも『猫に小判』なのだ――
――結局、彼女の人格入れ替わり直前の釈明はカールスラントの赤っ恥を余計に大きくした。作戦を早期に終結させる可能性を潰し、泥沼化させたも同然なので、事後に責められて当然であった。ミーナの元の人格は作戦中には『交代』していたため、事件の弁明は叶わずであった。連合軍は消耗した機材をジェット機へと入れ替えていき、カールスラントは配備に失敗した機材を売り込みに回したが、既に連合軍の主力機はF-86に決められており、無駄な努力であった。結局、カールスラントの独自研究は史実のメタ情報で駆逐され、軍用機開発能力も完全に失うことになるわけだが、理不尽に市井に放り出された扶桑陸軍の中堅軍人ら(元の大陸駐留軍の参謀ら)よりはマシであった。自暴自棄になった彼らの犯罪も多発。彼らへの救済が認められるのは、史実の関東軍と縁もゆかりも無い『単に、同じ大陸に駐留していただけ』だと証明され、中国が魔女の世界には存在していない』事が公表されてからの事であった。扶桑国民は大陸領の奪還を夢見たが、もはや、政治側に『荒涼地帯しか残っていない元の中国大陸に再植民するだけの熱意』は残っておらず、大陸領は結局、後年、財産を回収し終えた後に国連の委任統治地とし、権利を放棄。それと引き換えに、元々、太平洋共和国領であったハワイ諸島の統治権を正式に取得。更に、旧・瑞穂国の領域であるリベリオン西海岸一帯は時限付きの『扶桑の自治区』とする事が1990年代に決まる。リベリオンは当該年代でも、全土を治めるだけの統治力に回復しなかったからで、リベリオン合衆国は縮小した領土のままで21世紀へとなだれ込んでいくのである――
――リベリオン内部は意外にまとまっていた。史実のそれを正反対にした人種差別を意図して起こさせた結果である。また、国内の争いを意図して拡大させたティターンズにより、リベリオンは国の体を『戦争で保っている』と言われるまでの有様となった。その都合から、リベリオンは『やりたくない』戦争に全力を傾けていた。実際、多少なりとも旨みはあったからである。迷惑を被った太平洋共和国は事実上の解体も同然の状態。後年の西暦2000年頃の法的な終焉を迎える一因となった。扶桑海軍は結局、艦艇の航続距離を新式への入れ替えで延伸するしかなく、電子装備の普及で旧来式工作艦が無用の長物化(戦後型艦艇は必要な鋼材のレベルなども戦前と異なる)してしまい、工作艦明石とその姉妹艦の取り扱いで揉めるなど、日本と扶桑の不調和音も響いた。結局、電子装備の修理が可能なように明石型の能力を近代化する事、能力のすべてをグレードアップした後継艦を作り、それを小泊地に停泊させる事で決着し、扶桑は戦争のうちに『工作艦20隻体制』を達成せんと邁進した。この議論に伴い、朝日(元・戦艦)は工作艦任務を解かれ、元の戦艦の姿へ復元され、博物館船に転じたという。リベリオンはこの扶桑のシッチャカメッチャカにつけ込める時間を(64Fの存在を恐れるために)むざむざ浪費。ニミッツというカリスマを失ったが故に、責任逃れが横行している事を示す好例となっていた――
――64Fはダイ・アナザー・デイで事実上の孤立無援に追いやられたが、独力で補給体制を確立。以後は終結まで戦線を支えたわけだが、その驚異の戦闘力は味方よりも、敵であるリベリオン軍に評価されていた。戦闘員一人当たりの戦闘力が異常な高数値だからで、更に魔女の多くは天測航法を会得済みと、軍事的には最良の集団である。結局、カールスラント軍の魔女は多くがこの『天測航法』を会得していなかった事で評判が下がり、一部のトップエースのみが戦役で会得するに留まったこともあり、軍事的な評判は下がったという。仕方がないが、カールスラントは陸上の航空戦がほとんどだが、扶桑は洋上戦闘の経験が豊富であったからだ。また、扶桑は近接格闘術が比較的に普及しており、17歳(1945年当時)以上であれば、刀剣の心得を持つ。これは転生後にのぞみの戦闘技能の引き上げに寄与している他、元々、護身術代わりに剣道などの心得があったブライアンの剣筋を実戦に耐えうるレベルに引き上げてもいた――
――アドルフィーネ・ガランドは引退後、ミーナの失脚に伴い、自身の後任にグンドュラ・ラルを推薦する、黒江らを通し、間接的に連合軍を統制するなど、影の実力者として君臨した。彼女はミッドチルダへ移住しており、魔女の世界で幼女化して生存していた、スバル・ナカジマの母(遺伝子上の、だが)であった『クイント・ナカジマ』の義母になっていたため、自動的にナカジマ家の家長になっている。G機関はその彼女を慕う者らのコミュニティのようなものだが、いつしか『元帥府』と揶揄されていた。籍を置く魔女はどれも、『カールスラント軍が健在であれば、いずれは方面軍司令を務められた』と言われる大物たちであったからである。また、魔導理論に関連の著作がミッドチルダと魔女の世界の双方でベストセラーを記録したのを期に、民間諜報機関としての体裁を整えさせ、ドラえもん世界では最終的に『野比財団の提携企業』という体裁で『貿易事務・製品の販売』を表向きの業務としている。ガランドはそこのCEOという事になっていた――
――しかしながら、真の業務は非公式の諜報であり、のび太は成人後、スポンサーとして、その指揮権を持っている。魔女の世界に武器や弾薬を輸出する仲介も行っており、特に64Fとその支援部隊向けに未来兵器すらも卸している。表向きは『アナハイム・エレクトロニクス社の下請け』である。アナハイム・エレクトロニクス社はビスト財団の失墜後、野比財団が次の支配者に君臨したため、全面的に連邦(良識派)寄りに転じており、MSなどの製品もジオン系のものは(需要の減少を名目に)生産を縮小しているが、ヒット製品は依然としてある。ギラ・ドーガである。同機はハイザックの老朽化に伴う、次の『仮想敵役』として抜擢されたり、ジェガンやそれ以降のMSの反応系の強化に寄与するなど、意外に貢献している。また、可変機構の普遍化でゼータ系のMSの値段が相対的に低下、宇宙軍と空軍が好んで配備するなど、アナハイム・エレクトロニクス社が(ビスト財団に支払うペイが無くなった分)得する分野も増えた。また、ビスト財団よりも歴史があり、後ろめたさもなく、旧先進国の極普通の少年に由来を持つ野比財団はアナハイム・エレクトロニクス社としても『次の寄生先』にはうってつけであった(サイアム・ビストも自身の死後における『財団の未来』には興味などなく、野比財団にすべてを譲る腹づもりであったので、結局、彼の手のひらで財団の多くの人間は『踊っていた』だけであった)――
――もっとも、ムーンクライシス事件で業務は停止状態に追い込まれており、再開ではなく、野比財団への業務譲渡という形での自然消滅となった。人員は殆どが(生活水準の維持のために)野比財団へ転ずる見込みであり、ビスト家の(お家騒動もあり)生き残りらは没落貴族のような家柄に堕ちていくのである。自業自得の顛末であるが、それに代わる形で、野比家は日本の名家(確かな記録で戦国時代に届き、伝承では古墳時代に由来が遡る)として、地球連邦の牽引役に成長していく。皮肉な事に、誰かがリーダーシップを取らなければ、戦時・平時を問わずに議会制民主主義国家は停滞する。野比家はその役目を裏で演ずることで、傾いていた地球連邦の組織としての再建に尽力し、家としての二度目の中興を迎えていくのである――
――ジェンティルドンナに送られた『候補者』リストは『その時点で手空きかつ、彼女との親和性が高そうなメンバー』である。彼女も『歴史に残る名牝』の魂と名を持つが故に、(彼女の場合は純粋な鍛錬だが)ゴルシ、ブライアンと同じ方法を取ろうとしていた。史実通りにいっても普通に『栄光』が約束された彼女だが、それだけでは自身を満足させられなくなったのである。ブライアンはそれを知らされると。
「ふん、ヤツめ。私の腹づもりを悟ったか」
と漏らしたという。そのブライアンは最後の詰めでナチスの師団と戦っており、プリキュア姿だが、武器を拾って使っており、重武装であった。サバイバルゲームで触れた事のある銃(第二次大戦世代のものはだいたいが遊戯銃化されている)であるのもあり、容易に再装填可能であった。敵は比較的に製造工程が良好な個体を持ち出していたのか、新品同様であった。
「元の世界で非可動のハンドメイド品ってことで、銃マニアに売れないか?」
「いくつかはいけんじゃね?クリスエスに聞いてみろ。しかし、さすがドイツだ。最末期の製造だろう『StG44』でもきちんと動作するぜ。日本だったら、使い物にならんところだ」
「対サイボーグ用の徹甲弾を当時の規格で制作してたとはな。そこはドイツらしいっちゃ、らしいな」
「人間が食らっちゃ、腕の一本はトマトにされる威力だが……幸い、奴らも大半は従来の規格品だ。弾の箱はバリケードにたんまり転がってる。拾って行こうぜ。プリキュアの固有技はエネルギーを浪費するからな。脳改造で『純粋な戦争機械』になってる連中には浄化は意味はないし、破壊力だけが必要な局面には無駄だ」
ゴルシもプリキュア(キュアビート)に扮しているが、固有技は使っていない。相手が純粋に滅ぼすべき悪であるが故である。武器も拾った『StG44』である。初の突撃銃である故、後発のものに比べれば洗練されてはいないが、必要な機能は備えている。カールスラントでは『1945年当時に試作品は完成していたが、ドイツがより後の世代の自動小銃を押しつけていったので、未だに生産されていない』。ところが、戦場で有効性が示されたため、荒れ果てていたラインの再建が開始されたばかりであるという。64Fはこうした『バダンからの鹵獲装備も積極的に使う』部隊であった。
「おい、ここの建物、見てみろ」
「武器の集積所だ。工作班を呼んで、ブービートラップを解除させろ。それからだ。武器をぶんどるのは」
街で空きテナントになっていた建物が武器庫にされていたようで、無造作に各種の武器が箱詰めで積まれていた。どうやら、配分前に放棄が決められたらしい。二人は工作班を呼び寄せ、建物にあるブービートラップを解除させてから、食事(軽食)を取った。
「まさか、これっぽっちで満足せねばならん日があるとは」
「仕方ねーさ。普段の量はヒトの体には耐えられないしな。ルドルフやタイシンみたいに少食の体質ならいいが、あたしらはな」
中身がウマ娘であるため、量に不満がある二人。だが、ヒトの体には(軽食としては)充分な量であるというジレンマである。扮しているものの、食事は不満である(量が入らない)。しかし、これでも変身で必要エネルギーが10倍以上に膨れ上がっているので、変身前より入るほうである。
「ルドルフは燃費がいいからな…。人間とほぼ同じ量で、倍の量を食う多くのウマ娘を追い抜ける力を出せる。近年の日本車みたいなヤツだ。と、なると、今の私の体を使うのぞみはルドルフと似た状態か?」
「たぶんな。ヒトにしては食うほうだけど、ウマ娘としては少食に入ると思うぜ」
「そう思うと、スペやオグリさんはなんだ?」
「あいつらは戦車並の燃費だってことだな。パワーを出せるが、燃費がすこぶる悪い体質。引退したオグリ、大食い番組にばっか、呼ばれんだろ?そういうことだ」
「なるほどな。まさか、日本の古式ゆかしい軍刀をお上から拝領するとはな。元々、もらう予定だったのか?」
「ああ。お上とその周辺は、ダイ・アナザー・デイの戦いの戦功を記念して、のぞみに恩賜の軍刀を送るはずだった。だが、騒動で『恩賜~』云々を左派が政治問題にした関係で先送りになったんだそうな。連中が災害と疫病で興味無くしたんで、ようやく…ってとこだったが、64Fは有事即応部隊だ。それで、お前がヤツに渡してやれ。日本軍人で至上の名誉だ」
物資にあった『大げさな装飾が施された軍刀』は天皇がのぞみに『武運長久』を願い、贈与したものであった。扶桑が未来世界に特注した代物であり、刀身は戦闘を含めての実用に耐える。魔女の世界では、軍刀は『コンバットナイフよりも宛になる』近接格闘用の武器であり、古参軍人、それも剛の者の証。扶桑の世代間対立は『近接格闘術』の訓練が『服部静夏の次の世代から再開された』ということへの中堅層の反発で爆発に至った事を考えると、魔女たちは自分で『自分達は手を汚さずに、世界を守っている』という幻想に浸っていたのかもしれない。
「しかし、魔女の世界の魔女はなぜ、世代間対立を表沙汰にしたと思う?」
「上の世代がでかい顔してるからか?」
「魔女の世界はあたしら並に回転が早いからな。その常識を他の世界の連中にも、勝手に当てはめていたら、そうではなかった。おまけに、引退したとしても、20代なんて、世の中からみりゃ、青二才でしかねぇだろ?」
「確かに。連中は?」
「そのギャップに耐えられなかった。しかも、上の世代の最強が別の異能を別に持ってて、それで現役バリバリなのにもムカついたってとこだな。上手くコツでも聞いときゃ、共存共栄したかもしれんが、魔女ってプライド高いのが多いそうでな。あいつみたいに、時と場合で周りに謙れない。だから、淘汰されんだろうな」
「私も、全盛期に『吹いてた』のを今更、後悔してるからな。一時のあのザマで掌返しを受けて、あいつを失った。あいつ、別の業界で上手くやれていればいいが…」
「あいつは表には出てこないだろうが、お前が成人した後に、お前が結婚を申し込む分には受け入れるだろうさ。もっとも、あいつがその気でまだいれば、な」
ブライアンはいずれ、元の個人トレーナーとよりを戻したい。それがあちら側もだろうが、競技者としてのブライアンには関われなくなったが、個人としては、誰にも止める権利はない。ゴルシはその時が来れば、盛大に祝ってやるつもりであった。『彼』もトレーナーとして見届けられないのは心残りだろう。勘違いされるが、ブライアンは父との関係が破局に至っただけで、他の家族との仲は良好であった。不運は『長子は好きにさせるから、家を次子に継がせる』という、姉妹のデビュー前の見積もりをブライアンが大きく超えてしまった故の父親の身分不相応の野心と『諦めの良さ』に集約される。
「いずれ、父親に見せてやれよ、復活したお前を」
「親父がこちらの招待を受けるとは思わんが……」
「その辺はハヤヒデがどうにかするだろ?」
ゴルシはブライアンの父とのこじれた関係の修復に心を砕いているようで、ハヤヒデとその点で連携を組んでいる。ブライアンはブライアンで、素直ではないし、父親は父親で、古臭い職人気質を引きずっている。その頑固さを変に受け継いだのが、今回の出来事の根幹かもしれない。それはブライアンも自覚している。
「連邦軍は今回の事変が終わったら、近接世界である『オトナ』世界に戦力を?」
「向こうのほうが重大だからな。下手すりゃ、第二次土星決戦だそうだ。白色彗星本体がない分、楽だが。それでも、火炎直撃砲が最低で二門あるそうだから、無人艦が1000単位で破壊されるだろうってよ」
「うわさのメダルーザ級か。地球連邦軍もなかなか苦戦する敵だそうだな」
「艦隊戦はなんだかんだで多数での殴り合いだそうだからな。上下左右からビームが乱れ飛ぶ。地球が1番、物理的攻撃に耐性があるそうだぜ。ノウハウが残ってるそうだから、火薬攻撃の」
「そうか、他の星では戦闘機用のミサイル以外に残ってないのか?火薬」
「野蛮人扱いされるそうだぜ。戦艦の火砲に積んでたら。だが、一番に意表を突ける武器だそうで、連邦は双方の機能を果たせるショックカノンを好んでんだ。戦闘機はパルスレーザーと陽電子機関砲で事足りる」
地球(未来世界)が規模に見合わぬ軍事的繁栄を誇っているのは、内戦のおかげで戦闘ノウハウが星間大国以上にあるおかげである。また、将来、イルミダスと戦うために流されたものも含めれば、地球連邦軍は軍事的に強大になっていると言える。
「皮肉なことに、医療もそれで長足の進歩を遂げた。ドラえもんの時代のそれが一部でも残されたおかげだそうだ。ウマ娘のピークの短さは医学的にはわからんが、もとになった『ウマ』の魂を持つ故の因果と考えれば、合点もいくとのことだ」
「やはり、そこか」
「選ばれし者。言い方はわりぃが、栄光が約束された者はすべからく、その通りになる。その後がどうであれ。お前は史実超えを選んだ。このまま引退して、理事職で食っていくのもできたが、お前は競技者としての起死回生を選んだわけだ。引退時は決めてあんのか?」
「凱旋門を二、三度挑戦した後の有馬。それで終いにする。だが、落ち目の者がその立場を手に入れるには、相当な時間をかけるしかない。ヤツには苦労をかけることになるが、王座に戻るには、時間をかけていくしかない」
全盛期は世界最速とされた『ラムタラ』に対抗可能とも目されたブライアン。一度、落ち目を迎えた後に這い上がるためには、泥をすする覚悟であった。だが、イップスにかかった事を悟ったため、ゴルシの手引で、今回の出来事となった。医学的に遥かに進んだ時代の精密検査で肉体的問題は(股関節炎が起こした末梢神経障害も含めて)完全に取り除いている以上、残されたのは心の問題であるからだ。
「ヤツに相当な無茶を言ったのは分かっている。だから、私も相応のことをする。それが恩返しだ。本当はレースで恩を返したいが、奴の本当の仕事は正義の味方だからな」
「ビコーやカワカミにはいえねーな?」
「たしかに。自分が奴らの憧れてる事をしてるってのは、妙な気分だ」
「だろうな。お、味方のM60だ」
「タンクデサントしていきます?機甲部隊がいないか、偵察しにいくところです」
「乗っていこう」
連合軍はこの事変で魔女や64Fメンバーの『タンクデサント』を多用している。ただの歩兵ではないため、副次的に部隊の攻撃力が激増するメリットのためだ。
「敵の残りは?」
「辻斬り的に現れるパンターの改良型が主ですね。元々、市街戦じゃ、戦車を取り回すのは難しいですからね。撤退までの嫌がらせでもしているんでしょう」
「ヤークトティーガーを倒して、はいオシマイってわけにもいかないか」
「ヤツは殿でしょう。弾切れまで戦って放棄するでしょう。まさか、M60でも貫けんとは」
ヤークトティーガーは正面装甲が戦時中から更に強化されていた事もあり、M48どころか、M60戦車の火砲すら余裕で弾き返すという驚異的防御力で壁となり、その役目を果たしている。
「もっと上の火砲でも持ってくればいいんでしょうが、M1の120ミリでも、あれを貫ける保証はないですし、敵は彼らだけでもありませんからね」
「しかし、二次大戦中の代物だろう?いくら改良したと言っても……」
「戦後のものは実戦に供された機会がありませんから、むしろ、旧式のほうが新型より役に立つ時もあります。ドイツはよく研究をしていましたから、戦後に引き継がれなかったものもあるでしょう」
今回の動乱は小規模かつ、『プリキュア5の世界』の歴史には残らないだろうが、ドイツ軍とイタリア軍(戦前)の残党が活動しているという噂は残るだろう。最も、現地の国連も今回の動乱への関わりを否定するだろうが。
「怪人達は仮面ライダー達が抑え込んでいます。子供たちに怪人を殺せと言っても、無理でしょうからね。いくら、自我意識のない再生怪人が主体と言っても」
「ガキどもには無理だな…。私達も『覚悟』は必要だったからな」
ブライアン(体はキュアドリーム)は『怪人を倒すには覚悟がいる』と明確に述べた。自我意識のない『獣』と分かっていても、怪人というのは『恐怖』を呼び起こすものである。特に、仮面ライダー(昭和)が戦うような怪人は組み合わせ的に『不気味』なものも多いからである。最も、現役時代のプリキュア5の技程度では、怪人は倒れないが。
「ゲッターマシンガンとレーザーキャノンを持ってきたのか?」
「ええ。あれらは統括官ら以外には、貴方方しか扱えませんから。出撃の際に、後続の装甲車に積んでいますから、後で取ってください」
「あいよ」
怪人の耐久力は通常の銃器を寄せ付けないため、銃器で倒すには『ゲッター線』や『光子力』などを装填した弾頭を使うか、対怪人の配合比率の溶解弾が必要であるが、後者は手間がかかるので、前者が用いられる。
「子供たちには、何させてる?」
「学園の警備です。抑止力にはなりますからね、この世界のプリキュアでも」
仕方がないが、戦力としては心もとないため、B世界のプリキュア5は警備要員にせざるを得ない。決定力不足だからである。ブライアンが入れ替わっているほうのキュアドリームは転生後の戦いで『闘技に事欠かない』くらいに鍛え上げられているので、怪人を一撃で屠る事も容易であり、戦力は仮面ライダーに比肩するが、現役時代のプリキュアは(技が浄化主体であるのもあり)怪人相手には戦力不足なのだ。
「ガチで殺しにかかる相手には、相応の闘技が必要だからな。波紋法はその補助になる。動きを止めるとか、自分の呼吸を整えるとかな。応用はいくらでも効く。ところで、調査したなら、ジョセフ・ジョースターはいつまで生きた事になるのはわかるのか?」
「彼は91歳になる2011年まで生存したそうです。その『世界の一巡』を考えれば、彼がただ一人でしょう。天寿を全うできた『ジョースターの男子』は」
ゴルシはそれが気になっていたようである。その世界は特殊なため、地球連邦も調査できたのはそこまでらしい。ただ、彼らの用いていた能力や『その世界特有の存在』のことはある程度、調べはついているのである。そうでなければ、波紋法のことはわからないのだ。
「地球連邦軍は調査を公表してるのか?」
「ええ。時空管理局が動乱で死に体も同然なので、我々が実質的に代わりをしています。秩序の維持のために、名は存続させましたが、組織的には我々の傘下です」
時空管理局自体が地球連邦の一部局に落ち着いたことは公表されていないが、部内では暗黙の了解であった。これは動乱で内部分裂を起こした結果であり、抜け殻も同然の組織の体面を保つための妥協である。そのため、時空管理局と言っても、非魔導師のほうが圧倒的に多くなり、エース級と言えるのは、なのはらとその周辺の関係者らしか残っていない。そのため、質量兵器を実質的に解禁している他、軍事部門・司法部門・警察部門を独立させ、三権分立制に改編中である。その一方で、フェイトに今まで通りの任務を続けさせるようにするなど、組織改編の過渡期らしいところを残す。また、なのはもフェイトも、地球連邦軍の勤務経験を持つので、時空管理局への帰属意識は薄い。また、連邦軍の兵士が管理局を一部局扱いしているように、実質的に地球連邦の植民地と化しているのがわかる。
「時空管理局は自分達より技術が上の世界と出会った事がありませんでしたからね。それが管理外世界の派生とくれば……」
地球連邦軍の軍事力は時空管理局のそれを遥かに超えていた。さらに、特A級の魔獣も問題外の戦略兵器を多数有するという事実は時空管理局には『不都合な真実』である。しかし、二次大戦レベルの実体弾で艦艇が沈む事がプロパガンダされてしまった以上、時空管理局の『対エネルギー特化』の装甲を持つ艦艇は時代遅れとされた。さらに、『対象の次元世界においての犯罪の抑止力や防衛の手段でもある軍事・警察力の完全撤廃及び没収』は物理的に不可能になったため、リンディ・ハラオウン(穏健派の首魁で、フェイトの義母)は詭弁を弄するしか方法が残されていないことから、『自主的に治安維持をすると示せば、固有の軍事・警察力の維持は元から認めていた』という論調を使うしかなかった。管理局の権威低下を承知の上で、ある。結局、M動乱でミッドチルダの兵器産業も死に体になったため、地球産兵器をそのまま使う事になり、ゆりかごに隠されていた『宇宙戦艦ヤマトのプロトタイプ』も時空管理局の艦として『購入』となった。それほどの窮状なのだ。
「おまけに、奴さんは組織がガタガタになったんで、地球の傘下に入るのはやむなしとなりましてね。今や、地球連邦の植民地ですよ、ミッドチルダは」
元々、地球系の漂流者が文明を造った事も明らかにされたため、ミッドチルダは地球連邦に逆に支配を受ける立場に堕ちた。貨幣も地球のもので統一されたため、地球連邦の一地方となっているも同然であった。体外的なメンツこそ保たれたが、実情は『暗黙の了解』がまかり通るのである。ミッドチルダが逆に地球連邦の生存圏に組み込まれる一連の過程は次元世界の教訓となり、以後、時空管理局の支配は少しづつ『地球連邦政府の統治』へと塗り替わっていくこととなる。誰の目にも、地球連邦こそが『次代の次元世界の盟主』であったからだ。
「秩序の維持のために、時空管理局の組織は残したのか」
「そのほうが間接統治には都合がいいんんですよ。奴さん、艦隊も張り子の虎とバレたし、地上部隊はカカシ。なのはさん達などのごく少数の精鋭は航空部隊ですから、軍隊として見るんなら、戦争末期の日本軍以下の有様らしいです」
「大多数は、ランクD行けば良い方の魔導師だもんな。AAA以上の魔導師はどのくらい残った?」
「それらの層に離反されたそうで、なのはさんの『身内』しか残っていないそうです。なので、組織としては本当の死に体だそうで」
「奴さんに同情すんぜ……」
時空管理局は実のところ、元々、全体の7割強が非魔導師である。だが、実戦力を魔導師に依存していた関係で、動乱での内部分裂は致命傷であり、本当なら、組織としては『空中分解』の状態なのだ。はやてが組織をどうにかこうにか持たせているが、これははやて個人の資質に依存するものである。しばらく隠居したいとぼやいているのは、内部分裂に伴い、将来の提督に足る階級の者が自分くらいしかいなくなった有様なためである。
「はやてさんは早く隠居したいそうですが、組織がこうも死に体では、彼女が30近くになっても、再建が進むかは」
「ヤツがカリスマを演じないと、組織が持たないか。時空管理局も意外に基盤が脆かったんだな」
「地球の助力を拒む至上主義者どもが元凶だと、はやてさんは仰っています。なので、野比氏に粛清を依頼しているそうで」
「表立っての処刑は反乱の芽になるからな。古代中国の九族皆殺しをするわけにもいかんし。それで豊臣は滅びに向かった」
ゴルシも反乱の首謀者の一族郎党を皆殺しにする思想『族誅』の問題点をそう指摘した。古代中国などのアジア文化圏では近世まで行われたが、豊臣家滅亡の原因と囁かれるなど、後々で『した側が滅んだ』例もあるので、はやてもそういう選択肢は取らず、のび太に依頼し、事故を装って『消す』方法を取っている。これなら色々と装えるからである」
「あの甥っ子でしょ、おバカで有名な」
23世紀に至っても、豊臣秀次は『無能な男』という評判が根付いているのが、兵士の一言からわかる。魔女の世界では『可もなく不可もない』平凡な『中継ぎ』で人生を終えたというが、それは稀なケースである。
「ああ。豊臣が滅びに向かうきっかけでもあるから、はやても族誅は選択肢には入れなかったんだろうな。ミッドチルダは自分達より上の世界に出会う事がなかった。それだから、足をすくわれたってヤツでいいのか?」
「だいたいは。我々は上の文明と出会って、尽くが仇敵の間柄になった。故に滅ぼすしかなかった。ウインダミアもそうならなければいいんですが」
「噂はあるもんな。もっとも、連中にゲッターエンペラーやアースフリートを敵に回す勇気はないと思うけど」
「プロトカルチャーの遺跡を手に入れた場合はありえるとのことですが、こっちはアケーリアス超文明ですから、比較になりませんよ。向こうがコロンブスへの原住民になりますからね」
地球連邦政府は波動エンジンなどの大元になる技術が超古代の星間文明『アケーリアス超文明』由来である事を知っていた。そして、その文明の絶頂期は全盛期のプロトカルチャーを超越する水準の文明社会があった事を。故に、プロトカルチャーは『現代の宇宙文明の雛形』という意味合いの単語になっている。
「それも哀れな話だな」
「知らないほうが幸せというヤツですよ。アケーリアス自体、田舎では伝説扱いで、実在の確認が取れたのはつい最近、銀河と大マゼラン雲にある『残留タキオン粒子』からの間接的証拠ですからね。波動砲も連中は知らないかと」
ウインダミア王国は波動エンジン関連の技術の存在は知っているが、それを地球連邦軍が軍事的に大々的に利用できることは知らなかった。その齟齬も蜂起の一因である。ミッドチルダはまだ幸運である。地球の敵と判定されれば、惑星ごと滅ぼされるのも普通にありえるからで、形はどうであれ、地球陣営に組み込まれたということは『安寧は約束された』ことになる。ゴルシ達は話をしていくうちに、明暗の分かれた両者の違いを考えるのであった。