――ブライアンとゴルシは戦車隊のサポートを受け、ついにドイツ機甲部隊と対峙した。カールスラントが完成品を欲しがった(ドイツの干渉を受けなくなったため、量産のサンプルが必要だった)のもあり、大技は使えない。履帯を切るなどの方法で放棄させるしかなく、苦戦を強いられた。そのため、対戦車火器で損傷させる策が取られた。地球連邦軍の一年戦争期のものだが、戦車関連研究がそこで実質的に完結したため、未だに生産されている。対MS戦術が『MSや航空機で対処する』方向で固まったため、結局、歩兵装備は21世紀と大差ないもののまま(レーザーライフルも、結局は実体弾を置き換えるには至らなかったため)である。
「23世紀になっても、対戦車火器は変わんないんだな」
「歩兵装備は21世紀でだいたい完成されてますから、これ以上にならないんですよ。一年戦争後に歩兵装備の刷新はほぼ停滞したからね。パワードスーツも研究されていたんですが、軍縮時代に放棄されてまして」
ドイツ機甲部隊と対峙するブライアンとゴルシ(肉体はプリキュアらのそれを借りている)。援軍でやってきた地球連邦軍の兵士は、軍縮時代の流れを愚痴る(結局、『自衛のための軍備は必要だ』という流れに落ち着いたが、それまでにプリベンターに放棄させられた軍事研究も多い。彼らはガトランティス戦後は肩身が狭い思いをしている(結局、ガトランティス戦が絶滅戦争となったため、軍関係者の死傷率が途方もない事になり、行いを逆に非難されたため、戦後は『無人兵器に頼らないこと』を条件に、軍事研究の再開を容認したという)。とはいえ、一年戦争以前と大差ない歩兵装備で戦争をせざるをえない点に、連邦陸軍の窮状があるのは理解しており、パワードスーツ研究の再開にあたり、自分達が資金を捻出するなど、一定の配慮を見せてもいる。
「あんたらも大変だな」
「だから、あちらこちらから技術を貪り食う有様なんですよ。だから、プリベンターは軍との仲はあまり良くはありません。特に我々、陸軍とは」
連邦陸軍は宇宙開拓時代にはあまり意味がないとされ、軽視されがちだが、惑星の自然災害は起こるため、その救助要員としての維持が重視されるようになった。とはいえ、歩兵戦には必須であるので、20世紀後半から21世紀初頭レベルの装備で忍んでもらうという妥協で運用されている。その都合上、宇宙軍には普及しているはずのレーザーライフルすら、陸軍には満足に配備されていない。最も、実体弾への信頼も理由だが。
「よし、対戦車ミサイルを撃つぞー!」
ゴルシは携帯式対戦車ミサイル(一年戦争時から使い続けられているもの)を撃ち、パンターの長砲身型を擱座させる。MS相手では効果が薄かったので、倉庫で埃を被っていたものだが、宇宙の諸外国の陸戦兵器は戦車のレベルで留まっているので、充分に効果が見込めると判断された(人型ロボットを兵器として用いる軍隊は珍しい)からだ。
「よーし、ハッチを開けろ。こっちはいつでも、お前さん達を燃やせるぜ」
と、擱座した戦車に向けて呼びかける。すると、兵士らはあっさりと投降する。意外にそのあたりは(ゲルショッカーの反省で)緩いらしい。遠くでは、砲声が響いている。ヤークトティーガーに向けて、自走砲の一斉射撃が行われたらしい。元々、ヤークトティーガーも重駆逐戦車であるが、あまりの頑強さに、自走砲の掃射による擱座を狙う方向になったらしい。
「怪人がいたら、ブライアン。お前の借りてる体の技でぶっ飛ばせ」
「分かっている。この体にも、だいぶ慣れたところだ。力の加減の仕方はレースに応用が効く。いずれ戻った後、私の血肉になるさ」
ブライアン自身、後で本格的に気づくが、自身にも聖剣が宿っていた。ブライアンはそれを日曜大工などで活用していく。さらに、ドラえもんに頼んで『大工ドリング』を調達してもらい、それで家具を自作していくのである。また、のび太の街の日曜講座に通い、家具製作の技術を身につけていく事になる。
――歴代仮面ライダー達との共闘により、連合軍はなんとか、デルザー軍団の撃退に成功しつつあった。仮面ライダー三号の猛攻で仮面ライダー二号が戦線離脱を余儀なくされたが、それ以外は比較的に軽傷であり、どうにか戦線の崩壊は避けられた。三号の異常な強さの秘密は何か?それも一つの謎である。光速にすら対応できる反応速度は、歴代ライダーでも屈指の早さになるからである。彼らは怪人の掃討をしつつ、四号の体の残骸を回収していた。ズワルト・シャインスパークで消し飛んだ部分も多いが、ごく僅かに残った体の部品があり、それを解析していた――
「フム……やはりな。強力な自己再生プログラムの施されたナノマシンが使われている」
「ごく僅かに残った部分だけで、これだけの再生を?」
「うむ。ベルト回りの部分の欠片を回収したが、見給え」
「!!」
同席していた黒江も息を呑む。凄まじい勢いでベルトが再生していたからだ。
「まるで、RXの自己治癒能力のようですよ」
「光太郎のそれと違い、これは科学的な力だ。俺達も持っているが、ここまで強力ではない」
「すると、四号はいくらでも?」
「魂を電子化していたのなら、体など、いくらでも替えが効く。それも改良を施してな。奴はある意味での不死身だ。俺達以上に」
「手強いですね……まるで、漫画だ」
「君が言うと、変な感じがするよ。まぁ、サイボーグである俺達のいう事でもないが」
「本郷さん。こっちに戻ったってことは……一文字さんは?」
「回復したよ。俺と同じ再改造を施し、ネオ二号になれるようにしといた。ジローが手伝ってくれてな」
「キカイダーが?」
「うむ。彼らも悪のエネルギーの増大で蘇った。それと、ブライアンちゃんから伝言だ。行く前に、ハカイダー部隊と相まみえたそうだ」
「ハカイダー?確か、キカイダー三人衆に倒されたって……誰に再生を?」
「うむ。おそらくはバダンの陰謀だろう。サンバルカンの強敵だった『アマゾンキラー』が再生されたという知らせも受けている。時空魔方陣を使ったんだろう。この分では、歴代戦隊や宇宙刑事の強敵も何人かは再生されているだろう。テラーマクロは一也が追っている。師と兄弟弟子の仇だからな。それと、アポロガイストの動きに気をつけろと、ディケイドから連絡を受けている。警戒してくれ」
「わかりました。デルザーは?」
「連中はこの間に手痛い損害を負っている。この世界からは手を引くだろう」
本郷猛のいうように、この日から数日前のデルザー軍団との決戦は連合軍の勝利に終わった。その戦いで、ゴルシとブライアンはそれぞれ『プリキュア』の体と名を借りて戦い、殊勲を挙げていた。
――数日前――
「磁石団長、今回は俺の勝ちだな」
「何だと!?」
『エレクトロサンダーウォール!』
ストロンガーが超電子エネルギーの奔流を地面から滝のように噴き出させ、磁石団長の体を粉砕する。
「ぬおおおお……!!勝負は預けるぞ!!」
粉砕される寸前に捨て台詞を吐く磁石団長。磁石がモチーフの半機械人だからか、デルザーでもっとも電気エネルギーに脆いところを露呈する。
「次はあたしだな。いっちょやってやる!!」
ゴルシはキュアビートの体を借りているが、彼女の固有技は使わず、毒を持つドクターケイトと鋼鉄参謀をまとめて倒すべく、この技を使った。
「ストナァァァァァァ・サァァァァンシャァァァァイン!!」
これはゲッター線を浴びた際に『やり方』を垣間見た故に可能となった芸当で、キュアビートが転生後、後天的に身に着けていた技能であったが、ゴルシが入れ替わっている状態では、これが初使用であった。つまり、戦闘向けの能力を持つプリキュアの中でも、特に戦闘力の高い者は『これから待ち受ける何か』に備える目的で、ゲッター線の導きを受けた事がわかる。ゴルシとブライアンはその力を借り受けているのだ。
「おし、ブライアン!最後だ、ライダーたちと同時に決めろ!!」
「よし!!」
仮面ライダーで特に攻撃力に優れる『仮面ライダーストロンガー』、『仮面ライダーZX』の二人と同時にブライアン(体はキュアドリーム)は飛び上がる。三人は空中で大の字になり、高速回転を行う。それと同時に三人が同時に電気エネルギーを空中に放出。落雷を瞬時に起こす。それを更に凝縮。超電子エネルギーへと変換する。
『超電!!イナズマキィィィィーーーーック!!』
超電子エネルギーを纏った三人による同時のイナズマキックである。プリキュアと仮面ライダーのエネルギーが相互に融合しあい、黄金聖闘士の全力攻撃にも比肩しうるエネルギーとなり、最後に残った魔人らを空中でぶち抜く。三人が地面に着地すると同時に、魔人らは跡形もなく消し飛ぶ。ただの飛び蹴り。されど、侮りがたしというもの。これこそが、仮面ライダーたちの攻撃で最も破壊力を発揮する攻撃である。仮面ライダー三号も当然ながら可能であり、その破壊力は未知数である。(ブライアンがウマ娘である都合上、キックの破壊力はのそみ本人の数倍に跳ね上がっていたのも、この結果に繋がった)
「思ったより破壊力出せたな……。私でこれなら、あいつはどうなるんだろうな」
「その口ぶり……後輩にいるのか?お前以上の力の持ち主が」
「ああ。私も三冠経験者だが、後輩にいるんだよ、恐ろしいパワーの貴婦人がな」
「何、三冠牝馬だった……ジェンティルドンナか?」
「ああ。三冠牝馬だった連中でも突出したフィジカルの持ち主だよ。あいつはウマ娘としても、三冠は確実に取れる。同期で戦えるのは……」
「あたしとジャス、ヴィルシーナの三人だな。ウインバリアシオンは一期上だが、オルフェの奴がいるしな」
ジェンティルドンナはウマ娘としてのフィジカルは歴代でも最高位級のもので、下手なダートのウマ娘以上の力を持つ。それまでにパワーウマ娘の代表格であったという『カワカミプリンセス』すら比較にならないほどの差があるというのは確認されている。カワカミプリンセスと違い、『力加減がそこそこ上手い』。
「どうなってんだ?お前らの世界」
「年齢とデビュー順は一致せんよ。ルドルフと私が多少ズレてるだけで、ほぼ同時代を生きてる時点でな。本来は一回りも時代がズレてるからな。あんたらも知ってるだろう?」
「まーな。確かに、お前の『前世』で活躍した時期は90年代前半。シンボリルドルフはその10年も前。本来なら『巡り合う』機会はこれっぽっちもない。お前は自覚があるんだったな」
「つい最近のことだがな。まぁ、生まれ変わっても、全盛期のヤツと戦う機会はないと諦めていた。私達のアスリートとしてのピーク期はごく短期間だから、私も再起を諦めかけた事はあるさ」
ブライアンはこの千載一遇の好機をフルに使い、全盛期のルドルフやオグリと一戦を交えたい(レースで)という願望を叶えようとしていた。のぞみも、オグリもその意を汲んで、既にお膳立てを整え始めている。ゴルシもその旨を把握済みであり、同期のジェンティルドンナを誘ったのである。
「せっかくだから、ジェンティルを誘っといた。その内、のび太んちに来るだろうさ。ジャスの話だと、オルフェーヴルが話を聞きつけたそうだ」
「何、あの青二才が?」
「ヤツが聞いたら、なんていうだろうな、そのセリフ」
オルフェーヴルはどういうわけか、口調がどこぞの英雄王に似ている。ウマ娘になる時に『魂の欠片』がくっついたのか?と、ゴルシは冗談交じりに話している。声色は『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』や『篠ノ之箒』にとても良く似ているが、その二人と違い、常にドスの効いた喋り方である。ブライアンは既に『シニア級』に属するが、オルフェーヴルはまだ『メイクデビュー』から日がそんなに経っていない『若造』である。将来は確かに嘱望されているが、(この時点では)本当に青二才に過ぎない。
「私も昔は減らず口を叩いたものだが、ヤツはまだ青い。クラシック級にもなっていないはずだぞ?それで『英雄王』みたいな口の聞き方だと?」
「ドリジャの姉御がいるから、ある程度は抑えてるって話だ。姉御は裏番っぽいぞ」
「それはそれで怖いな……」
ゴルシも『姉御』と形容するのは、ドリームジャーニー。オルフェーヴルの実姉である。その彼女が更に慕うのが、ゴルシらの史実の父である『ステイゴールド』である。その関係はブライアンも周知の事実だ。
「お前らの一派は気性が荒いからな……。だが、今のところは凱旋門を二位に食い込める運命を持つ唯一の一派。エルはあの一回で燃え尽きたようだが……」
「エルとあたしら『ステイ一族』だけだもんな。凱旋門賞で大健闘できる因果持ちは。あたしはダメだったが、ナカヤマがやってくれる。お前は『全ての運命が終わった後』だ。却って、そのほうが切り開けるかもな。未来を」
「ああ。私はその一点に全てを賭ける。のぞみとは、そのあたりは織り込み済みだ。ローレルには悪いが、あいつを因果から守るため、涙を呑んでもらう」
「お前らもなかなかに因果な話してんな」
「私達は前世からの因果を引き継いでいるところが多いからな。それを自覚してしまうと、精神が危うくなりそうなヤツも多い。同期のサクラローレルもそうだ。このまま海外遠征に行けば、競走能力を永久に失う未来が待ち構えている。私はそれを阻止したい。それには、王座に返り咲く必要があるんでな」
「意外に同期を意識してたんだな、お前」
「一目は置いていたさ。シニア級に入るあたりからだが」
ブライアンは全盛期からは相当に丸くなったか、サクラローレルを『一目置いていた』と口にする。全盛期から一転しての地獄を味わったからだろう。口調も全盛期と比べればだが、柔らかい雰囲気が出ている。
「ローレルが今の私を知れば、『腑抜けた』と思うだろう。だが、孤独と地獄を味わったからこその道もある。このままで終わるつもりはないぞ、ゴルシ」
「お前さん、オグリの辿った道を意識してるだろ」
「あの人は私の師だ。おふくろはそれをわかってくれている。妹たちもだ。もっとも、私が弟子として可愛がられてることは嫉妬されてたがな」
「ああ、オグリの妹の『オグリローマン』だろ?あいつも可哀想な道を辿ったからな。おまけに、お前の同期だろ?」
「ああ…。あいつは『オグリさんの忘れ物を取りに来た』以外の因果がなかったからな…。姉貴の夢を果たす。それだけが存在意義のようなものだった。それもな……」
ブライアンはオグリの年の離れた実の妹であった『オグリローマン』のことを回想する。オグリキャップの果たせなかった夢を果たす。それだけが存在意義のようなウマ娘であったが故に、彼女自身はそれを果たした桜花賞の後は精彩を欠き、そのままターフから去った。『実姉の正統後継者』を期待されたものの、鋼のような闘争心を誇っていた姉とは真逆の気質であることが災いし、桜花賞ウマ娘以上の存在にはなれなかったオグリローマン。そのバトンを『オグリの弟子』として受け取った以上、史実同様の『堕ちた王者』のままではいられないのだと、ブライアンは言う。
「ヤツの分も私が雪辱を果たす。史実を考えると、オグリさんの強さは『突然変異』か、強かった祖先の隔世遺伝だと考えていいしな」
ブライアンはオグリの一族から『オグリ自身に比肩しうる正統な後継者』が出る可能性は(史実を考慮すると)なくはないが、可能性は低い事を知っていた。故に、『精神的意味の後継』に自分がなると公言しようと考えている。
「あの人とは違う道を歩んでいた。だが、心意気を引き継ぐことはできる。全盛期の頃、世の中の連中は私に、『ルドルフの後継になれる』と言って憚らなかった。だが、あいつのようにはなれなんだし、今後に返り咲いたとて、不調の時にできた色眼鏡で見られる。ならば、オグリさんのように奇跡を起こすしかない。長い時間がいるのは承知しているさ」
「どのあたりまで任せる気だ?」
「のぞみとの約束があるから、この生活はいましばらく続ける。『心の弱さ』が隠しきれなくなったのは、私としては『生き恥』だ。姉貴には……現役生活の最後に『競ってくれ』と言ってある。それを姉貴への手向けにする。妹として、『ライバル』として、私なりの姉貴へ依存してきた自分なりのけじめをつける」
仮面ライダーストロンガーにそう答える。ブライアンは自身の幼少期への決別を『姉との競走』でつけ、自身の目的へ決意を固めたいのだ。この『仕事』はその『下地づくり』。イップスを克服するための荒療治。
「史実を考えると、お前は股関節炎で歯車が狂っている。関節炎の影響で、末梢神経障害が起こったんじゃないか?あるいは……」
「それは私も考えたし、実際に元の世界で診断を受けたさ。しばらくして、医学的には完治しているはずだと言われた。あれで全盛期からの感覚のズレが生じたのは事実だが、心の何処かで怯えていたかもしれんな……」
ブライアンはイップスの原因が以前の故障が大きかった故に、心のどこかで『また起きるんじゃ……?』という怯えを抱いた事が低迷の原因だという自覚があったようだ。その怯えを克服せねば、王座に返り咲くことは叶わない。その危惧が今回の戦いへの変則的な形での参陣へ繋がったのだ。
「全盛期、私はラムタラに対抗しえると言われた。そのことで驕り高ぶったことも事実だ。その報いは充分に受けた。あんたらの知る結末なんぞ、クソ喰らえだ。たとえ、それで誰かの運命がそれで狂っても、だ」
「お前は栄光を取り戻そうとしている。それは史実という因果への反逆だ。険しいのは覚悟しているな?」
ZXもそれを問う。
「もちろんだ。あんたらが組織に歯向かったように、私は『運命に歯向かう』。堕ちた王者だの評判を抱えたままで、競技生活を終わるつもりはない」
三冠という至上の栄光を得ながら、後半生は悲運に終わる。それがナリタブライアンが『本来辿る道』である。だが、ブライアンはそれに反逆し、栄光を取り戻そうとしている。それが個人トレーナーへの競技者としての手向けであり、前世の自分への鎮魂になると。ブライアンはミスターシービーから数えて、三人目の三冠ウマ娘だが、協力者に選んだプリキュアであるキュアドリームもまた、『三代目の中心戦士』である。これも本人は意識していないが、因果であった。
「お前、キックの筋は悪くはないが、キックの前に、きりもみ回転をもう少し加えろ。風見さんはそれでキックの破壊力を上げているぞ」
「あんたらはキックの鬼だものな。インパクトの瞬間にどうしている?」
「乾坤一擲の気持ちを込めるのも大事だが、基本の脚力を鍛えろ。俺達は基本的に、昆虫の能力を移植されたようなものだし、更に言えば、元から格闘技やスポーツの経験があるからな。のぞみにも言っているが」
「私たちの種も『馬類の能力を人間の身体に持たせた』ようなものだから、耐えられるかぎりは『常人を超越した力』を引き出せる。無論、故障したり、ピークアウトすると、能力は減退するがな。サラブレッドの宿命だな。全盛期が基本的に短いのは」
ブライアンは元々、怪我が治りきらない上、種の宿命である『ピークアウト』が起こりかけていた身の上なためか、競技者としてののウマ娘の儚さに気づいてしまった。それも超えたいのだ。
「三冠も、姉貴との競走も……すべては儚い夢。それに気づいた時、私は前世の記憶を取り戻した。取り戻した以上は……前世と違う道を往ってもいいはずだ。他のやつがこうなったとして、何人が自分の因果というものに耐えられるか……」
自分やゴルシ、ジェンティルドンナのように、一時でも『輝かしい栄光がある』者はいい。だが、ヴィルシーナやウインバリアシオンのように、『常に自分以上の強さのライバルに及ばなかった』という事自体が『運命』としてある者はどうなのか?それがブライアンが抱く、今後への不安である。海外遠征自体が『全盛期の終わり』、あるいは『競走生活自体との別れ』に繋がる者もいる。例えば、次代のホープの一人と目される『サトノダイヤモンド』は『海外遠征の後は精彩を欠き、より強大な力を持つ後輩に引導を渡される』という未来になる可能性が大きい。また、史実で早世した『ドゥラメンテ』はどぷうか?一言でいうなら、競技者としての春は短い。エアグルーヴが知れば、卒倒間違いなしの『残酷な未来』だろう
「信じる、信じないは個人の勝手だが、お前のように、何かしらの形で『史実』を知ってしまう者は出てくる。その未来を受け入れる者もいるだろうな」
「いるだろう。それは個人の自由だからな。だが、いい気分はしないはずだ。超然的な何かに『自分の未来』が縛られるなんぞ……特に、ウインバリアシオンは絶対に拒絶するはずだ。……あいつの場合は、自分の中のドス黒さを捨て去れるかだろうがな」
ブライアンは後輩の一人である『ウインバリアシオン』が今後、世代の覇者であることを運命づけられているオルフェーヴルへ屈折した感情を持ってしまい、ある意味では『醜悪』な様に至ってしまう事を危惧しているようである。
「お前、バリアシオンがオルフェにあれこれ持っちまう事を?」
「私自身、ローレルを『こじらせた』経験持ちだ。バリアシオンがオルフェへどう思うか、なんぞは簡単に想像できる。同期に強すぎるのがいて、自分がそれに食らいつけるくらいの才能はあるが、それ以上にはなれない事を知ってしまうことは……ある意味で一番に残酷なことだ。何かの舞台でも、そういう展開はあったろ?それとなく、気をかけてやれ」
「あいよ」
オルフェとウインバリアシオンは同期である。それ故に、バリアシオンの精神が何かしらの形で『歪む』事を危惧しており、一期違いだが、ほぼ同年代のゴルシに忠告する。これは次代の覇者として将来を嘱望されるオルフェーヴルの強すぎる光が『誰かを闇に落とす』ことは早くから予測されており、ウインバリアシオンは(彼女自身がバレリーナとして挫折した過去がある事から)その候補として見られていた。何度かの模擬レースの戦績からの立ち位置の予測だったが、それは後に証明されていくことになる。バリアシオン自身も自身の醜悪な一面に気づいてしまうが、ゴルシの機転で辛うじて、精神バランスの崩壊を防ぎ、自身の中の『オルフェーヴルへの劣等感』に折り合いをつける道を選ぶ。一方、オルフェーヴル自身もやがて、ジェンティルドンナが、ブライアンが、ディープインパクトが、オルフェーヴルの覇道に『最大の強敵』として立ち塞がるようになることで、自身のアイデンティティと向き合い、宿敵という概念を理解していくこととなる。その史上空前絶後の切磋琢磨ぶりは、メジロ、シンボリ、サトノ。三つの名家に、予てからの共同プロジェクトの具体化の機運を呼び込んでいくこととなる。世界最高峰のレース『凱旋門賞』への長期的かつ、連続的な挑戦を主眼に置く『日本ウマ娘界最大の悲願』として。その下地をのぞみは(図らずも)整備している事になる。
「デルザー軍団はこれで撃退した。後は残置する機甲部隊を始末するだけだ。ジオン系の未成兵器はスーパーロボットで始末すればいいしな」
「鹵獲したものはどうするんだ?」
「アナハイム・エレクトロニクスに引き渡す契約だそうだぜ。グロムリンはグレートカイザーで膾切りにしたから、主要部分を引き渡すそうだ。コンピュータのデータバンクを調べたら、今回のヤツはプロトタイプであって、本命がいるらしい」
「本命だと?」
「データバンクによると、アクシズの残党がグリプス戦役の前後に戦艦サイズのモビルアーマーとして、グロムリンⅡを試験的に設計したらしいぞ」
「裏でコソコソ造ってたんじゃなかろうな?」
「グリプス戦役の後に宇宙戦争の時代に入ったから、資源はリサイクルで確保できるしな。連邦も波動エンジンを鹵獲しての建造を警戒しているそうだ」
「ジオンもそこまでいくと、妄執だな。ナチスでさえ、元来のイデオロギーだったナチズムなんぞ、とうに捨ててるというのに」
バダン帝国はナチスの生き残りが幹部層だが、ナチズムはとっくの昔に放棄している。それを考えると、ジオン残党のジオニズムへの執着ぶりはそれを超えるレベルの妄執であると、仮面ライダーらにも断じられる。連邦もその全てが正しい訳では無いが、かつての社会主義が矛盾の拡大で崩壊し、資本主義が生き残った東西冷戦の結果がそうであるように、先鋭的な選民思想を持つ集団はすべからく、滅びる運命にあると言える(ショッカーからの歴代暗黒組織しかり)。
「あそこは旧公国系と新生ネオ・ジオン系で分かれてる上に、同士討ちで数を減らしてるからな。それを考えると、バダンに利用されるのも仕方がないってヤツだな。別世界のプラントのほうがまだ一枚板な感あるぞ」
コズミック・イラでは、逆に地球連合のほうが派閥抗争で衰退し、プラントのほうが経済的には豊かな状況となった。だが、軍事的にはプラントは『後がない』状況である。人的資源の余裕が既に限界に達したからで、コーディネイターという種そのものも『あと数十年すれば、自然に減少していくのみ』という運命が待っている。ラクス・クラインもそれは父の派閥を継承した関係で知っており、故に空間把握能力の発達で生まれる『ニュータイプ』という可能性に、人類の次のステージを託すつもりであるという。
「言えてる。連邦軍もエゥーゴとカラバ、ティターンズの呉越同舟で立て直しの最中だからな。故に、アースフリートとロンド・ベルしか、迅速に動けない。単独で世界を股にかけなくちゃならんのも辛いだろうな」
アースフリートは元々は太陽系直掩の艦隊として生まれた組織で、波動エンジン艦で固められた『外宇宙航行能力を持つ艦隊』である。その残存艦を基幹に再建が進められ、この遠征の時点では、人員の質を除けば、全盛期に近い規模にまで戻っている。波動エンジン艦はコスモナイト鉱石が重要部分に必要なので、核融合炉搭載艦より建造に手間がかかるのだ。
「街の立て直しを終えたら、学園の慰問イベントをした上でサヨナラだ。念の為に、数人を守りに置く。後は街の付喪神の供養だな」
「具体的には、どうすんだ?」
「陰陽術で封印したから、時計台の辺りに祠でも建てて供養するそうだ。この街は環境汚染で放棄される結末があるそうだからな。プリキュアの仕事として、環境保護活動の啓蒙もしないとな」
「ガキの相手は苦手なんだがな。妹達で手を焼かされたからな…」
ブライアンはそういいつつも、なんだかんだで面倒見がいい。
「中学生なだけ、まだいいじゃねーか。うちの学園には飛び級もいるしな」
ニシノフラワーがそうであるように、年齢的には小学生であるが、飛び級で中学生になった者もいる。
「それはそうだが……まいったな」
「ま、俺達も手伝ってやるさ。男子にはヒーローショーは受けるしな」
「あんたらがやると、ガチになるだろ」
「違いないな」
――そのようなわけである。こうして、デルザー軍団はひとまず撃退され、後はそれ以外の機甲部隊やジオン、ティターンズ系の機動兵器の掃討が仕事となる。陣地設営には、旧式化したジムⅡが動員され、前線はジェガンなどの世代が担うという、グリプス戦役後の地球連邦軍の運用ドクトリンがここでも適応された。ジムⅡは練習機用途などで余生を送っているわけだが、装備で恵まれている部隊では『重機』代わりに使われている。機甲部隊とは別に、MS部隊もいるので、ジェガンはなおも重宝されている。ジム系としての完成形であるからだ。基本的にそれ以前のMSが敵である上、より新型の機体はゲリラ的運用がしがたいのも理由である。故に、小型化時代の『MCA構造』はそのような軍事的理由で衰退。素材と構成が刷新されたムーバブルフレームが次第に次代の主流となるのである。ガンダムX系統はそのテスト機としての側面を持つ。充分に実弾兵器への耐久性を持つ』最小サイズの策定のための――
――仮面ライダー四号が勝ち誇る理由は『意識の完全な電脳化』にあった。それは歴代の仮面ライダーの誰よりも一歩進んだ技術であり、意識が転送されたコンピュータさえ無事であれば、ボディはいくらでも替えが効く。これは脳髄が機械のボディに急激な拒絶反応を起こす可能性を無くすという観点から考えれば、最適解に近いものと言えた。歴代の仮面ライダーたちに匹敵する強さのアンドロイドを量産されれば、如何に歴戦のヒーローたちでも、苦戦は必至である。本郷猛はその製造設備は『過去にヒーローたちに滅ぼされた暗黒組織のどれかの遺産』ではないかと目星をつけていた――
――話は戻って――
「俺の推測だが……バダンはロボット兵器はさほど重視していなかった。ジンドグマなどの反省があったからだ。おそらくは……プロフェッサー・ギルの遺産を接収したか、あるいはデスパー軍団の忘れ形見か……」
「デスパー軍団?」
「君は初耳だろうな。かつて、イナズマンが最後に倒した、超能力者の率いる悪の軍団だ。海底軍艦もその彼らと戦うために、一度だけ当時品の状態で出撃したくらいの規模を持っていた。彼らの尖兵は強力なロボット兵器だった。それとプロフェッサー・ギルの遺産を併せて使い、その方面の技術を強化したんだろう。場合によれば、俺達のほぼ全員が機械部品を新式に取り替える必要が出てくるだろう。俺達は基礎能力が高く、なおかつ、特訓で能力を補強できるから、あまり再改造はしてこなかったが……イナズマンにも動いてもらう」
「彼は今どこに?」
「今はキカイダーとは別方面の調査を行っているよ。ダイ・アナザー・デイで俺達が迅速に動けたのは、彼の調査網のおかげだ。ウデスパーもおそらくは再生されているはずだ…。バダンはここのところ、古今東西、俺達を追い込んだ実績を誇った幹部級の怪人やロボット兵器の再生に血道を上げている。おそらくは俺達が徒党を組んだ事に危機感を持ったんだろう。君らには苦労をかけるが、当面は警戒を続けてくれ」
「わかりました」
本郷猛はデスパー軍団の再生を危惧していたようで、イナズマンF=渡五郎に連絡を取り、彼に動いてもらった事を伝える。
「この世界の『子どもたち』に伝えておくべきだろうか?」
「俺達の警戒も限度がありますからね。伝えるべきかと。それに、危機は何かしらの形で、あの子らを襲う。そういう星の下に生まれてますからね、プリキュア経験者は」
「こういう役目は一文字の役目なんだがなぁ」
「仕方がないですよ。一文字さんは入院中ですからね。それに、あなたのその雰囲気で、子どもたちも理解するかと」
「そうかな?」
「ですって」
本郷は気づいていないが、復活後は歴戦の武人然とした佇まいからか、話すことの説得力は一文字以上に増している。黒江はそれを知っているので、本郷を後押しする。こうして、B世界のプリキュア5は全員が『ナチス・ドイツに由来を持つ、別世界の暗黒組織が歴代のプリキュアに魔手を伸ばしてきている』事を知らされたが、現状では『ドリームキュアグレース以外は戦力として数えられない』ため、皆が悔しそうな表情であった。敵に対し、B世界のプリキュア5はあまりに微力なのだ。
「普通の変身じゃ歯が立たない……そんな相手が……」
「俺達でも手を焼く相手だ。改造人間でも、超能力者でもなく、なく、ある種の奇跡に由来する変身をする君たちの力では、相当に上積みの変身をしなければ太刀打ちできまい」
「おまけに、別世界の未来の軍隊の残党も、この世界の存在に気づいたようだ。奴らはこちらで対処する」
デルザー軍団の撤退を確認した後、本郷と黒江はB世界のプリキュア5と話し合いに入った。バダンと、それと手を組んだジオン~ザンスカール帝国の残党らの存在を本格的に知らされ、自分達の対応キャパシティを超えた相手であることを認識せざるを得ない子供たち。ドリームキュアグレース形態は恒常的に使える形態ではない上、のぞみA(肉体のみだが)のように、自己意思のみでパワーアップ形態へ変身できるわけではないのもあり、のぞみBは相当に悔しいようで、歯噛みしている。最も、プリキュアは多くの代で、フォームチェンジを伴うパワーアップには『ミラクルライト』か、それに近い『祈りの力』が必要であるので、自己意思でパワーアップできるAがイレギュラーであるだけだ。
「……こんな悔しいの、初めてですよ。かれんさん達のことでボコボコにされた時もだったけど、今度は完全に自分達で対処できる限界を超えた敵……。戦力外通告がこんなに辛いなんて……」
「仕方がない。君等には荷が重いことだ。『意思がない』とはいえ、奴らを地獄へ送ることは。更に別世界の軍隊の残党は派閥にもよるが、大量虐殺も辞さない狂信者どもだ。そいつらは良心を既に捨て去っている者も多い。故に、君らの技では倒せんだろう。別世界とはいえ、地球人の生んだ業だよ。用いる兵器もそれ相応だ。こちら側のものに比べれば旧型のものだが、この時代の兵器より圧倒的に強力だ」
ジオンやティターンズ、ザンスカールの用いる兵器は当然ながら、21世紀の兵器では対応に限界がある。ザクⅡ程度のものでも、現用兵器の延長線上のものしか持っていない時期の連邦陸軍は常に多大な犠牲を強いられたので、その強力さは有名だ。自衛隊が対抗できたのは、(偶然にも)21世紀型の通常兵器の回路は(その後の時代のものに比べれば)単純な作りであったり、カバーなどが偶然にも回路の保護の役目を果たしたりしたための奇跡である。無論、それは一年戦争の話であり、ジェガン以降の機体が多数出回った後の連邦軍にとってはザク・マシンガン程度は『怖くない』。また、終戦間際のジオン兵器はカタログスペックを満たさない部品でやむなく投入されたものも多く、それも意外な健闘に繋がった面はある。
「用いる兵器の年代はバラバラで、機体にもよるが、普通にビーム兵器を使う。装甲も今ある、どの金属よりも強度のあるものだ。君等の力では……かすり傷をつけるのが精一杯だろう」
「そんな……!」
「おまけにどんなに旧式でも、核融合炉で駆動している以上、パワー勝負では君等は勝てない。俺達は戦闘用に改造されてるし、この彼女も異能を持つので、生身でも戦えるが……」
「あなた達はどうして、そういい切れるんですか?」
「俺達は最低でも、メカニズムの起動用の超小型の原子炉を体内に組み込まれているからだ」
「た、体内に原子炉を!?」
「そうだ。サイボーグの体も、メカニズムの世代が進むと、これが核分裂から核融合炉に進化する。俺は最初に改造されたが、自己進化とメカニズムの定期的な取り換えで、常に怪人を倒せる力を維持している」
自嘲混じりだが、一号や二号は最低でも一回は全身のメカニズムの刷新(再改造)を受けており、それが世に知られる『新一号』であり、『新二号』である。その後も部分部分の機械は定期的にその時々の最新型に換装しているため、長らくその姿で無敵を誇ったのである。だが、根本的に同系統ながらも、次の世代の技術で作られたサイボーグである三号への対抗には、さらなる再改造を受けるしかなかった。その結果が『ネオ一号』である。
「それと……驚くだろうが、俺の生年は1945年。第二次世界大戦が終わった年だ」
「!?1945年!?そうだとしたら……あなたは本当は……」
「この時代では、既に70歳超えの老人だよ。俺が改造されたのは1971年。大学に残って、生化学の研究をしている頃だった。この容姿はその頃のものだ」
「せ、1971年!?大阪万博の一年後じゃないですか!?ファミコンも……インベーダーゲームもない頃じゃ……」
のぞみBの言葉に苦笑する本郷。1971年はそんな時代であったからだ。
「ハハハ。確かにそうだな。君たちのこの時代に比べれば、子どもの娯楽は少なかった時代だ。だが、それなりに生きていたよ、みんな。俺はその頃には大人だったが、漫画雑誌は読んでいたよ。当時は大人が大っぴらに漫画雑誌を買えるような空気ではなかったがね。当時の老人たちから白い目で見られる。だから、あの当時のマニアたちはカモフラージュしていた。この時代でも、その当時を知る者なら、この時代は生きやすくなったほうだと思う」
本郷猛は1960年代後半に成人を迎えた世代の人間であったので、オタクが市民権を得る前の時代をよく知っている。のぞみBは本郷からすれば、『孫でいいくらいの年齢差がある』ので、さながら、孫に昔話を語る祖父のようであった。
「俺は学生時代、スポーツ万能で通り、研究者としても、その将来を嘱望されていた。だが、俺が25歳だった『1971年』の春……組織に拉致された。その時、俺の人生の全ては変わった」
本郷猛は普通に人生を全うした場合でも、日本の歴史に何かしらの形で名が刻まれたであろう資質を備えていた。その『100年に一人』級の才能が仇となり、組織に拉致されたのだ。
「俺は組織から逃げる際に、大学の恩師を失い、更に、自分本来の体を失った事を否応なしに自覚させられた。だが、その体で戦ううちに、仮面ライダーという存在が人々の希望になっていることも痛感した。故に、俺は仮面ライダーであり続け、世界を守る事にしたのさ」
本郷は現役時代、ネガティブに物事を考える癖があったが、仮面ライダーとして戦歴を重ねるうちに、多少は物事をポジティブに見れるようになったらしく、仮面ライダーとしての自己をやがて受け入れた事を示唆する。
「君たちの力は、今後続くかはわからない奇跡のようなものだ。だが、これだけは言える。世界が必要とする限り、戦士は必ず、誰かのために立ち上がらなくてはならないのだと」
「力が必要でなくなる世界もあるんですか?」
「ある。平行世界は無限の可能性を持つからな。だが、大抵の場合、君たちは戦士としてのバトンを『フレッシュプリキュア』に渡した後も、戦士としては現役を続ける。後輩たちが生まれるということは『敵』もいるということだからな」
「信じがたいことだが、これは私達が調査した世界で確認されたことだ。無論、君たちには戦いを止める選択肢もある」
「そんな、敵がいるとわかってて、プリキュアをやめられるはずがないですよ!敵がいるのなら……私はキュアドリームでありつつけます。ココがそれを望まなくても…!!」
のぞみBは黒江の選択肢を示唆する一言に反射的にそう返す。のぞみAより『若い』ためか、直情的なところがわかりやすく出ている。
「……そういうとこは同じだな。うちのと」
「え……?」
「生まれ変わっても、その人物の根本は変わるわけじゃない。表面的には違っていても、人は素がふと出るものさ。君は特にな」
フッと笑い、黒江はそういう。自身が転生を重ねた者であるのもあるが、のぞみはなんだかんだで(年齢を重ね、表面的には落ち着いても)14歳当時の『血気盛ん』さが残っているのだ。
「また別の世界で大人になった君がプリキュアに戻った途端に、14歳当時の振る舞いに戻っているからな。この写真がその世界の君だ。おそらくは20代後半……」
黒江はここで、『オトナ世界』ののぞみ自身の写真を見せる。地球連邦軍の戦列に加わった直後に、証明写真代わりに撮られたもので、教師としてのスーツ姿であり、髪も年齢相応の形に整えている(ただし、プリキュア復帰後は肉体の年齢が高校時代相当に戻ったため、その当時の髪形に戻している)。
「これが私……?スーツ姿だ……」
「私立の教師になっていたよ。評判も上々だったらしいが、その世界が我々と異星人の戦争に巻き込まれてしまったせいで失職した。学校が物理的に消し飛んだためだ。それで、大人の君は戦いに戻る事を選んだというわけだ。その姿がこれだ」
「えーーーー!?プリキュアの姿で、コスの上に、あなた達の着てる軍服を羽織ってるーーー!?」
黒江はこの時は本業の一つである、地球連邦軍の軍服(シャアの反乱の直前にエゥーゴ閥の意向で改定されたもので、それのロンド・ベル仕様)を着ていた。それと仕様がほぼ同じ(ただし、飾緒や略綬の有無、階級章の違いなどの差異がある)ものを大人の自分が変身したキュアドリームが羽織っているのである。
「うちでは、君は機動科……つまりは機動兵器を動かす兵科だが……のパイロットで、少佐の階級を持つからな。その仕様の軍服を大人の君に支給しているんだ。大人の君等はうちの世界の自分自身の身分を借りているからね。便宜的にこういうことになった」
「少佐ってことは……」
「あのあんた自身は士官学校出のエリート様ってことよ。戦時下でもない限り、現場叩き上げがストレートでなれる階級じゃないわ」
りんは実家が花屋である都合上、自衛隊にも品を卸す事があるらしく、軍隊の世界に多少の知識があるようだ。これはAとB、大人の三者で共通しているらしい。
「ほへー……でも、今いるのは、中身は別の子だよね?ややこしいよぉ。本当にドラえもんの道具があるなんてー!」
「先方の頼みでね。私たちも断る理由はなかった。入れ替えロープは精神を入れ替えるから、肉体自体は正真正銘、うちの君自身のものだ」
「それがややこしいんですってー!!でも、私たちがアニメキャラとして存在する世界だから、当然、キャラソンありますよね」
「2020年代には廃れ気味の文化だがね。無論、君のキャラソンはある。だが、こちらでは転生後ということもあって、現役時代のキャラソンは『小っ恥ずかして、歌えない~!』とボヤいているよ。なので、近ごろのイベントでは、協力してくれた彼女(ナリタブライアン)の持ち歌を借用しているよ」
「いいんですか、それ」
「大人になった後で、14歳当時の心境を反映したキャラソンを当時の調子で歌える自信あるかい?……ないだろう?」
「た、確かに……」
キャラクターとしてのキュアドリームこと、夢原のぞみは現役時代、固有のキャラソンを与えられていた。だが、その本人曰く、『大人になった後の心境じゃなぁ……』とボヤき、現役時代とは異なる心境に至ったこともあって『当時の心境では歌えない』と漏らしていた。この問題は『のぞみ本人の歌唱力の改善に時間を要した』、『転生後は現役時代と異なる心境のもとに戦っている』という二つの要因も絡むものであったため、黒江も困っていたが、『三代目』という観点から、立ち位置が似通っていたウマ娘『ナリタブライアン』との協力関係の成立で解決を見た。イベントで歌う機会がある時には、彼女の持ち歌を借用するという事になったからだ。
「それじゃ、私の仕事で、あの人(のぞみAの肉体を借りているブライアン)が歌ったのは……入れ替わっている『彼女』の……」
「持ち歌だ。詳しくはキュアビートの体を借りてるヤツに聞いてくれ。芸能活動もそれなりにしてるそうでな」
ウマ娘はレース生活をする限りは、ある程度の芸能活動は付属する。ウイニングライブはその一環であるらしい。疑問を口にした春日野うららに、黒江はそう答える。ブライアンはウイニングライブ用の楽曲を何曲か持っており、その内の『シャドーロールの誓い』は全盛期の頃に作られたものとされる(オグリの歴史改変で『オグリが引退時に一度だけ披露した楽曲をブライアン用に仕立て直し、精神的な後継者として、楽曲を引き継いだ』という風に改変されているが)。ブライアンはトレセン学園でも高い歌唱力があったが、それは他人の体を借りていても健在であった。うららは黒江の言葉に悔しそうな表情を見せたが、うららは13歳時点で現役のアイドル(成人後に俳優に仕事の比重をシフトするが)であったので、他人の肉体を借りた状態で、正規のボイストレーニングも受けている自分を上回る、ライブパフォーマンスを見せられてしまったので、悔しいのは当然だろう。だが、プロデビュー済みとはいえ、弱冠13歳の駆け出しの芸能人の春日野うららと、既にウイニングライブに熟れ、学園で相応のトレーニングを積み終えている状態の高校生かつ、経験豊富なナリタブライアンとでは、比較するのは酷である。とはいえ、曲がりなりにも、プロの芸能人である故の誇りもあるであろう、春日野うららの悔しそうな表情に、黒江は次の言葉を探すのであった。