――黒江から知らされた『のぞみAが到達した圧倒的な力』の根源が気と(プリキュア経験者である故)の高い生命エネルギー(波紋法)、更に通常の感覚を超越する異能(小宇宙)の複合したものという回答。漫画で聞いたことのある異能を複合し、更にプリキュア化による強化を上乗せする『チート』もいいところな位置づけの存在という事実。戦いと修行の結果である事、感情の爆発で『壁を超えた』と表現されるなど、バトル漫画の特徴満載であった。だが、のぞみAは実際問題、プリキュアとしての能力の伸びしろは転生してしばらくした時点で限界に達していたので、プリキュアの壁を自己意思で突き破り、強化形態への任意での変身を得たのは、理にかなう進化であった――
「かれんさんは知ってたんですね」
「ええ。私は『分身体』だから、記憶は共有関係なのよ」
かれんとこまちは記憶を本体と共有する『分身体』がB世界にいるので、その分身体がB世界での役目を代行している。ドラえもんの分身ハンマーで生み出した分身体だが、文字通りの分身であるので、レントゲンなどでも問題はない。ドラえもんが二人の分身を作る際に用いたのは高級仕様のものであったので、記憶が本体と共有されているのだ。分身体であっても、プリキュアへの変身は可能であり、そうして、B世界のプリキュア5は活動を続けている。
「ドリームキュアグレースになっても、まだ差があるなんてぇ~……」
「仕方がない。こっちの君は常に『生きるか、死ぬか』という極限状況下に置かれていたんだ。差が出るのは当たり前だ。ナチの残党が世界を股にかけて活動していて、私達はその対処に追われていたし」
「ナチの残党って、そんなに大規模なんですか?」
「陸海空、武装親衛隊を合計したら、数十万はいる。おまけに、かなりの軍備を維持しているのでね。だから、私の故郷では、一気に通常兵器が朝鮮戦争の水準に上がった」
ダイ・アナザー・デイでは、ティターンズとの同盟関係を理由に、バダンがかなりの規模の機甲軍を動員。連合軍の戦車では最新鋭とされた『M4中戦車』をブリキ箱扱いで撃破していった。ジョージ・パットンが史実と正反対に、新型戦車の開発を押し進めさせたのは、自身の軍団が地獄に落とされたからと、実に切実な理由である。連合軍は結局、ダイ・アナザー・デイで保有戦車の多くを喪失。その補填に新型を宛てた故、連合軍は太平洋戦争では組織立っての動きが取れない有様であった。生産と訓練が追いつかないのである。そもそも、朝鮮戦争期水準の戦車すら、大国がやっとこさ造れる程度であり、史実の二次大戦後期の登場の戦車すらも造れない国があるのが『魔女の世界』の現状である。日本連邦は『バダンとの死闘』で扶桑側の兵器技術が戦後水準へ飛躍するのを歓迎し、アメリカ合衆国を動かし、矢継ぎ早に戦後水準の兵器技術を与えた。とはいえ、日本は微塵も魔導技術がない世界であるため、魔女関連装備の発展は予想以上に遅延。史実の兵器開発速度が魔女装備に今度は反映されていくこととなった。
「大和よりも強い戦艦が複数隻いてね。私の国は大慌てになった。それで、棚上げされていた『改良型の大和』(超大和)の開発計画を復活させざるをえないほどだった」
「それじゃ、あなたは第二次大戦の……」
「その時期に日本軍の若手将校だから、君らとは、ひいばあさんくらいの差があるよ」
黒江は笑う。この手の反応は日常と化したからだ。
「あなたは陸軍、それとも海軍なんですか?」
「昔は陸軍だったが、空軍ができて、空軍に移籍した。パイロットなもんでね」
陸軍出身なのは本当だが、垢抜けている理由を『パイロットだから』で済ます。実際、軍で最もハイカラな人種なのは本当だからだ。
「私の世界は魔法がある。君等の知る、朝比奈みらいちゃんの使うものとは違うものだがね」
「みらいちゃんを知ってるんですか」
「仕事の部下なんだよ。私たちの世界にやってきて、保護する必要があったんでね」
その辺は虚実入り混ぜる。全てを話す必要はないからだ。しかしながら、みらいに会った事を口にしたことから、B世界は『オトナ』~世界とは繋がらない事が判明した。オトナ世界の大半の展開では、『フレッシュ』以降のプリキュアは存在していないからである。そのことから、B世界では、のぞみたちはプリキュアであり続ける事になる。
――ちなみに、黒江が触れた『超大和型』は扶桑の在来技術では『机上の空論』とされたが、未来世界の製造技術が使えるようになったことで具体化し、わずか四年で『主力化されるまで』に揃えた。既存の大和型の主砲も限界まで強化する案も出ていたが、武蔵での実験が芳しくなく、48cm砲で妥協される事になった。そのため、連合軍は46cm砲搭載の戦艦の新造で、連合軍の艦隊兵站の統一を図ろうとしたが、同位国の横槍などで多くが計画倒れとなり、日本連邦に戦艦の戦力の大半を依存する羽目となる。これに驚いた21世紀世界の列強諸国は、アジア人頼りを嫌う者たちの不満を抑えたいという露骨な理由から、連合軍の構成国のうち、比較的に余裕のある大国の『戦艦の新造』を容認するようになった。その巻き返しの第一歩が、ロマーニャの『インペロ』である。政治的に、大和型とその後継ぎたちが世界の海を席巻するのを良しとしない風潮が欧州で生まれたためである(これは時のアメリカ合衆国次期大統領の意向でもあったらしい)。とはいえ、史実より強力な諸元での新造は自由リベリオンには荷が重いものであるため、とりあえずは『史実通りの諸元のモンタナを追加建造可能なように、南洋新島群のインフラを整える』方向で固まり、自由リベリオンはその方針で海軍の整備を進めていた。しかしながら、扶桑はその間に、ヒンデンブルク号に対抗できる戦艦の整備に邁進していき、1949年夏時点での戦艦の保有数は最盛期のリベリオン海軍に迫る数に到達していた。『ヒンデンブルク・ショック』は扶桑を戦艦の整備に邁進させる一つの大義名分となった。それと似たようなショックは『M26ショック』という形で、自由リベリオン陸軍で起こっていた――
――黒江も、のぞみも『陸軍軍人』というだけで不利益を被った経験持ちである。これは戦後日本人の陸軍への悪感情が理由である。のぞみのケースは外交問題に発展している。空軍の設立を日本が後押ししたのは、件の官僚が事情聴取の際に『空軍のパイロットなら、空軍といえと!!…え、日本は戦前に組織としての空軍を持ってない?』と述べたためで、恥の上塗りとなるのを恐れた日本政府が『予備役編入願いをなかった事にしてくれ!!その代わりに待遇の改善を約束するから!!』と取引したからである。しかし、既に転職の準備を始めていたのを『国家の意思』で潰されたのぞみとしては、『はた迷惑』もいいところである。だが、日本側、とりわけ文部科学省が現役軍人を教職から追放する方針であったため、軍の付属校の取り扱いも問題になり、そこに在籍中の魔女の候補生の扱いも問題となった。結局、高等工科学校とその予科という形で抱え込み、『7~8年の勤務実績がなければ、学費の返還義務が生する』というという規則を作る事にした。これは育成費用とその実働期間等の兼ね合いで計算されたものだが、魔女は実働期間が最短で『数年ぽっきり』であり、多くは期間の終了後に市井の生活に入る。モデルや俳優になるケースもあったが、高い費用をかけて士官にしても、数年でやめられては困るという意見が多数派となり、規則は生まれた。この規則は現場の魔女に一種の恐怖を植えつけたらしく、1949年次に実働状態の魔女たちはその全員が『定年に達するまで』勤務を続けていく。戦争が『世界の存亡』云々に発展したため、『やめるにやめられない』という空気があったのである――
――航空機のパイロットも本来は一定の年齢や期間をすぎれば、後方業務に専念させるという慣習があったが、連合軍の主軸が『率先垂範』の日本連邦へ移り変わると、『士官たるもの、常在戦場』という思考が支配的になった。日本の大衆がそれを望んだからで、後方業務の軽視が叫ばれた。とはいえ、貴族(華族)や高級軍人ほど(銃後の視線を気にして)前線勤務を望むという状況となり、日本の大衆の近代戦への無理解ぶりが(魔女の世界の欧州に)嘲笑の対象となった。とはいえ、日本連邦、とりわけ(旧・帝国陸海軍出身者に限るが)日本の義勇兵の死兵ぶりは欧州の軍隊の顔色を失わせた。航空機や戦車を躊躇なく敵陣に突っ込ませ、爆破する、空母を見たら、鬼の首を取ったようにスクラップにする…。そんな戦いぶりは鬼気迫るものであった。黒江たちは結局、ダイ・アナザー・デイでは『一騎当千』をひたすら求められたために『チート上等』な戦いをし、戦局を動かした。義勇兵と彼女らの戦いぶりが戦局を動かしたことから、日本の大衆は扶桑の軍隊に『一騎当千』を求めた。その結果、扶桑の魔女たちは(多数派のクーデターの失敗で)『凡百な者に生きる権利はないのか?』と問いかけることになるが、日本で発現した魔女たちは(異能だらけの世界故に)扶桑の平均レベルを超越した素質を全員が備えるというオチとなり、扶桑の(既存の)魔女たちの多くが『前線から淘汰される』という顛末を迎える。そのため、突然変異体扱いされ、異端視されていた黒江たちが『扶桑の代表』として(掌返しで)遇される状況となったわけだ――
――皮肉にも、ダイ・アナザー・デイがその契機となった。凡百の魔女たちは鋼鉄の嵐に敢えなく呑まれていき、ヒスパニア陸軍とロマーニャ陸軍は『組織的戦闘能力の喪失』という最悪の結果となった。その原動力となったのが『M46』戦車であり、M26重戦車であった。同戦車は(魔女の世界の水準では)諸外国の機甲車両の殆どを圧倒するバケモノであり、史実より対戦車戦闘の研究が進んでいなかった不幸もあり、両陸軍は(日本もびっくりなほど早く)戦闘能力を早々に喪失。Gフォースはその穴埋めをせねばならなくなり、対人戦でのメーサー兵器や『G兵器』(要はメカゴジラとMOGERA)の使用に踏み切り、その力でリベリオン軍の進撃を食い止めた。その一方で、連合軍は(機甲兵器の不足から)積極的に鹵獲を行い、ダイ・アナザー・デイでは、撃破された敵車両をドラえもんズが再生し、それを扶桑の秘密工廠で機能的アップデートを施すというサイクルすら生み出された。そんな戦場の様相で、連合軍の兵器の技術レベルは悪くて(史実の)戦間期レベルであったのが、数週間のうちに1950年代の水準へと飛躍。ダイ・アナザー・デイの後期には、ゼロ戦らに代わり、『日の丸のハチロク』(F-86)が乱舞するに至り、政治的混乱が起こったカールスラントはこうした技術革新に無力であり、ダイ・アナザー・デイでの『失敗』で『軍事強国』としての権威、科学立国としてのプライドを木っ端微塵にされ、以後は二流国家へ没落してしまう。ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケはその元凶と見なされたため、今後の20年以上は(公に)祖国の土を踏めない事になった――
――M4中戦車はその後継ぎになるはずであった車両達に(モデル寿命で)引導を渡されることとなり、M4を支持していたジョージ・パットンは(史実が史実なため)瞬く間に苦しい立場に追い込まれた。史実で『戦車への無知』が判明していたこともあり、アメリカ陸軍からも批判者が出る始末であった。だが、機甲部隊の重要性を理解はしていたのも事実である事、『魔女の世界』では実質的に『加東圭子の下僕』である事から、多少は大目に見られた。自身が死にそうになったためで、アイゼンハワーも流石に『M4と戦車駆逐大隊』で戦えない……』と結論づけ、戦車駆逐大隊はダイ・アナザー・デイ後に解体されていった。唯一、M36ジャクソンのみが清涼剤的に活躍したが、同格の砲を持つM26などには苦戦し、『一時の徒花』として消えていった。その後はM46、M47、M48と、順当に機甲車両は発展。1950年次の『M60の配備』も現実味を帯びていた。歩兵の対戦車火器も急速に普及していき、一般部隊でもパンツァーファウストやバズーカ砲が使用可能となった。軍事面はこのように急激に発展したが、逆に民需の発展はは『本来より多少早い』程度に留められた。ミーナの見せた機械技術への保守性が仇となったためで、実際は黒江のように、いち早く未来科学に適応できる者もいるのだ――
――のぞみの問題が(日本側の懇願で)妥協的解決を見た後、のぞみは多額の損害補償金と軍階級の早期昇進の確約を得た。ただし、転職は事実上不可能に陥ったため、息抜きとしての広報活動の容認を認めさせた。こうして、なしくずし的にプリキュアの全員は一定程度の芸能活動を課せられる事になったが、元から芸能活動を表の仕事にしていた者も多く、全員が受け入れた。オトナ世界にいたプリキュア達も(大人のぞみを介して)のぞみが別世界で抱えてしまい、転生後の人生すら変えてしまった『対立』を慮り、何人かはそのまま『別世界のオールスターズの戦列に加わる』事を確約している。それは二人ののぞみにとっての精神的な救いであった。転生して尚も、世界のために戦う宿命を『超常的な意思のもとに背負わされた』り、別世界の影響で、真っ当な人生を送れる立場では無くなったことは(通常なら)ありえない事態だが、結果的に『英雄は英雄であり続けなくてはならない』という法則にはまったが故の悲劇であった故に、そう追い込んだ別世界の自分の行為への償いの意味もあった――
――それと、剣鉄也の口から、世界の裏で戦うヒーローらの存在を知らされ、のぞみがその道を選んだことで、その『道連れ』になろうとしたことも大きい。実際に大人のぞみは家族との暮らしも、個人としての幸せも捨て、1000年女王として、地球自体の統治を裏で始めるつもりであった。羽黒妖の調査でオトナ世界においては『遠い先祖がラーメタル人であり、のぞみの代で『その要素が隔世遺伝された』事が確認され、親類縁者の誰とも、元から『比較にならぬ長寿命』を備えていた事が判明。また、肉体的老いも実際には普通より緩やかであり、肉体年齢は戸籍上の年齢より『かなり若かった』ことも。とはいえ、教師の職務が過酷であった都合上、肉体的な疲労が大きく蓄積されていたのも事実であった。そのため、肉体的な全盛期に回帰できたことも教師の道を(実質的に)諦める理由でもあった――
――別世界の医療知識が元の職業に戻る際に大きく貢献することとなる大人かれん、その助手として働くことで、『医師への道』が開ける『薬師寺さあや/キュアアンジュ』。彼女はのぞみたちが20代後半の時期では高校生ほどであり、中学卒業後は芸能活動から足を洗い、医学生に転じようとしていた時期にあたる。ほまれの提案で事情が説明され、プリキュアへ復帰。医学生志望であった都合から、かれんの預かりになった。実際の年齢差が(少なくとも)一回りはあることで『自分の年齢』を実感した大人かれん。とはいえ、プリキュア化していることもあり、見かけはほぼ同年代で落ち着いていた――
――「オトナ」世界―― 宇宙戦艦ヤマトの医務室にて
「まさか、あなたが私の高校の後輩になるなんてね」
「皆さんは違う高校に?」
「ええ。のぞみとりんは腐れ縁の関係だから、高校も大学も同じだけど、私は医学の道に進んだから。あなたは芸能から医学へ。すごい転向ね?」
「ええ。親の七光りである程度はできましたけど、色々な事があって、この道に。まさか、知らずにあなたの後を追っていたとは、思いませんでしたわ」
さあやは高校卒業後は医学部に進むと決めていたが、(図らずしも)その前に本格的な医療現場に(キュアアンジュとして)立つ事になった。キュアアクアは既に本職であるため、コスチュームの上から白衣を羽織っているが、アンジュは(本来の身分は学生なため)そのままの格好で業務を手伝っていた。
「まさか、お互いに別世界の地球の戦に関わるなんて、思わなかったわ。しかも、宇宙戦艦ヤマトに乗るなんて」
ヤマトは設計と建造関係者がマンパワー重視派であった。移民船から戦艦へ仕立て直されたこともあり、比較的に乗員が多めの艦艇である。そのため、機器の誘爆(ヤマト型、とりわけ初期型は突貫工事で建造された都合上、電装系の配線の取り回しに難があり、事故も多い)で無駄に負傷者が出やすく、それをカバーするため、医療施設等はドレッドノートタイプの数倍の規模であり、艦医も名医で鳴らす佐渡酒造である。
「この船……本当に?」
「ええ。あの戦艦大和の躯を再利用して、おおよそのシルエットを継いだ宇宙戦艦にした代物。日本人の執念が生んだ『怪物戦艦』よ」
外形に戦艦大和の面影はあるが、相応にSFメカっぽい外観の宇宙戦艦ヤマト。准同型艦らがストレートに原型艦の上部構造物のデザインを受け継ぐのと趣を異にする。これは准同型艦らが『有志の手で大和型、ないしはその後継艦を独自に改造したのに対し、ヤマトは当初から『連邦軍の正規の計画で改造された』からである。
「あれ、戦艦大和って、なんかの映画で見ましたけど、魚雷を片方に集中されて……」
「ヤマトの生まれた世界では、何らかの不沈対策が功を奏して、船体と武装の原型が保たれたそうよ。それでヤマトを作る時に偽装も兼ねて、完全な船型の宇宙船になったとか。それで、それ以降の宇宙戦艦は規格統一もあって、『船形で統一された』というわ」
――元々、船形に近いデザインの艦艇が多い地球連邦軍だが、戦艦大和の躯が他の世界と違い、原型を概ね保っていた事を利用し、宇宙戦艦ヤマトを作り上げた。それが以後の宇宙艦艇のデザインの主流を決定づけたという。実際、それ以後の宇宙艦艇は大艦巨砲主義時代に回帰したような武装構成のものが多い。さらに、かの名提督『沖田十三』がそうであったように、『水雷』畑の提督が連邦軍艦隊の指揮を取ることが多い。砲術出身者である土方竜はむしろ異端であった――
「そのほうが地球型の惑星の調査には都合が良かったんじゃ」
「佐渡先生」
「地球と似た条件で生まれ、生物の生存可能圏である星を見つけた場合、海に降りれたほうが便利なんじゃと。地球によく似た大陸構成で、なおかつ、地球より若い星も中にはあるじゃろうし」
佐渡がやってくる。片手には一升瓶が握られている。一見するとヤブに見えそうだが(元々は獣医だが)れっきとした名医であり、ウマ娘すら治せるほどである。
「お嬢ちゃんたちにはきつい光景も、これから増えてくる。覚悟しとくんじゃぞ。なにせ、今回は本当の星間戦争じゃ。SFのような怪物相手でなく、同じヒューマノイド同士の戦争。アイデンティティは根本から相容れないがのぅ」
ガトランティスは文明国と蛮族の中間のような精神性を持つので、地球人とは相容れない。そんな種族との戦争の残り香に関わっているのだと、佐渡は改めて自覚させる。
「戦いでは、救えん命もある。じゃが、努力次第で救える命もある。それを学んでいきなさい。経験は将来の糧になるぞい」
佐渡も、獣医から総合医に転身したクチである。イスカンダル以来、ヤマトを医療面で支えるのは伊達ではない。
「地球の在来医学だけではわからないことも、異星の医学との組み合わせでわかることも多い。ここには、わしらの接触した全ての宇宙人の医学的視点からの資料も集まっとる。暇な時に見るといい」
「ありがとうございます」
「天文学とかそういうことは、真田くんに聞くといい。なんでも教えてくれるぞい」
ヤマトはもっとも、地球外のヒューマノイドタイプの異星人との交戦経験を持つ戦艦である。それ故に、医学的見地ももっとも有する。故に、佐渡は医学書の出版などで意外と副収入があるという。ヒューマノイドタイプの人類は基本的に地球人と似た種であるので、割に地球の既存医学の応用が効くのだという。
「そういえば、別の世界の私たちはどうなってるんですか?」
「その世界だと、君がまだ現役の頃の時間軸じゃが、わしらと関わったために、その時点でなしくずし的に、軍医になったんじゃ。…それと、あんたとはこの世界が始めてじゃよ。薬師寺さあやちゃん。かれんちゃんが現役時代の頃なら、君はまだ幼年じゃよ」
「私の生年は2005年。そうか、かれんさんの現役時代は2008年まで。普通なら、年齢の近い姿じゃ……」
「そういうことじゃ。春野はるかちゃんで2002年じゃ。プリキュア5の時代では、まだプリキュアのぷの文字も知らぬ幼児という事になるんじゃ」
キュアアクアはバツの悪そうな顔を見せる。本当なら、アクア(かれん)とアンジュ(さあや)はほぼ同年代の姿で会うことはない年齢差があるのだ。
「な、なんか……ごめんなさい」
「いいの。事実だから。最も、向こうの私自身は落ち込んだかもしれないわね」
自身は実年齢が27歳であり、なおかつ大学病院の若手のホープの一人であるためか、新世代のプリキュアと自分たちの間にある『本当の年齢差』をさほど気にしない大人かれん。彼女の予測どおり、現役時代の時間軸の彼女自身は激しいショックを受けているので、実年齢の違いによる度胸の差は同一人物であろうが、年齢の差などの要素で生ずるのがわかる。
「のぞみの話じゃと、ショックでしばらくは生徒会の仕事が手につかなかったそうじゃ。まぁ、その世界でのかれんちゃんは15歳の子供だから、当然と言えば当然じゃが」
この事はB世界の事を指す。佐渡曰く、そのことがあったのは、のぞみBが無謀にも、秋月信彦/シャドームーンに挑み、ものの見事に返り討ちに遭って半死半生に陥り、治療を受けていた頃のことだという。その間、のぞみAが(その時期、折り悪く、ドラえもんは『定期検診』で不在。当時はのぞみからドラミへの連絡手段がなかった)のぞみBに代わって、一時的に役目を代行し、つかの間の学生時代への回帰を味わったのは、大人のぞみから聞いている佐渡。
「ちょうど、その世界ののぞみがシャドームーンに倒され、南光太郎君や結城丈二君らの治療を受けていた時期のことじゃったそうな」
「その話、聞きました。B世界ののぞみはA世界出身の自分自身を妬んでいたと」
「ワシもある程度は語る必要がある話じゃ。B世界に関わる話じゃからな」
「どういう事ですか?」
「のぞみは……ヤマトのある世界が最初に発見した個体……、仮に『A』と呼ばれている個体がいて、学生の私がいる世界ののぞみとは別の個体なの。大人のあの子に表れた能力の全ては本来、『Aが転生も挟んだ長い生を生きるうちに得た力』なのよ」
「つまり……平行世界のあれこれを超えて、のぞみさんは能力を共有したと?」
「正確に言えば、その世界の個体の能力が大人のあの子自身へインストールされた…。そういうべきでしょうね」
「歴代1000年女王の意思によるものじゃよ。卑弥呼、クレオパトラ……古い時代の名だたる女傑の少なからずは表の仕事の裏で、地球全体を統治していたんじゃ。その彼女らは元々、地球の軌道に1000年に一度殺ってくる『回遊星』の住民で、地球人ではなかったんじゃ」
「!!」
――こうして、オトナ世界の住民である、キュアアンジュ/薬師寺さあやはは戦列に加わってすぐに、ラーメタルと地球との間の奇縁、歴代の1000年女王らの悲劇を知る事になったわけだが、同時に『プリキュア5の世界』の存在も知り、のぞみ(大人)が自分の過去の記憶にある『キュアドリーム』と比べて、圧倒的かつ戦闘特化の能力になっているカラクリに迫ることとなった。彼女はこの後、オトナ世界の動乱に『プリキュアに無条件で戻れる、HUGっとのメンバーの一人として関わっていく事になるが、オトナ世界の動乱とほぼ同時に起こったという『プリキュア5の世界の動乱』も気になり、この後すぐに『A世界のプリキュア』たちの連絡先を佐渡から聞き、その日のうちにコンタクトを取ったという――