ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


オトナプリキュアの世界~第二次土星決戦編~
第五百十八話「風雲急の戦局」


――プリキュアオールスターズの内、複数は既にゲッターの使者に存在が転じており、地球人の守護の為なら、同じプリキュアであろうと倒すという思考に至っていた。キュアフェリーチェとキュアドリームは世界の因果律すらも操れる領域に至っていたため、他の世界の自分自身とも『独立した存在』となっていた――

 

 

 

 

 

――マジンガーZEROと魂のレベルで融合したために、本来は持たなかった『苛烈な側面』を持つことになったキュアドリーム。圭子の教育によるものか、正攻法主体の現役時代と異なり、絡み手も用いるようになった他、口も悪くなっていた――

 

 

「君、現役時代とキャラ違くない?」

 

「最近はよく言われる。元の体の元の持ち主やZEROの影響だね」

 

本人も『本来の流れにおける自分』からかけ離れつつあるのを自覚している。テイオーの指摘の通り、現役時代の天真爛漫さは多少なりとも鳴りを潜め、剣鉄也のような『苛烈さ』を時たま見せる。11戦隊を『ズブの素人』というなど、現役時代からは多少なりとも離れた言動になっていた。

 

「今の君なら、ZEROの力でルールブレイカーになれんじゃない?」

 

「もうなってる自覚はあるよ。不文律も時代の移り変わりで変わるもんだしね」

 

「もし、地球を滅ぼそうとするのがいたら?」

 

「カイザーノヴァか、シャインスパークで消し飛ばすだけさ。プリキュアの力をメタ的な意味で無効化する敵がいるのなら、それ以外の力で対応するから。先輩も、あたしの姿を借りてた時は自前の力で戦ってたしね」

 

大決戦の事は、この頃には詳細を聞かされていたのぞみ。戦闘力も史実の自分と比べ物にならないほどに強大になった故か、そのような存在が現れることも考慮していたらしい。

 

「創造は破壊から生まれる……。ディケイドがキバから聞かされた言葉らしいけど、たぶん、いずれ、プリキュアにも出てくるかもしれない」

 

「なにが?」

 

「ウルトラマンベリアルとか、トレギアの類の奴。悪意のない、純粋に邪な野郎だね。そういうの現れたら、ゼロブラスターで塵一つ残さずに消滅させてやるさ」

 

ZEROの持っていた『因果律操作』とファイヤーブラスターを組み合わせた技『ゼロブラスター』。その威力は超合金ニューZすらも容易く溶解せしめ、超合金ニューZαクラスの防御力でなければ防げない。つまり、ZEROのブレストファイヤーの絶対性とファイヤーブラスターを合体させたのである。

 

「君、人間マジンガーか、ゲッターだねぇ」

 

「タハハ……それも本当だしなぁ。それで、ライスシャワーちゃんの事は?」

 

「ブルボンやマックイーンに任せてある。お見舞いの電話は入れといたけどね」

 

「いいの、それだけで」

 

「意識は戻ったけど、まだ面会できる状態にはいってないからって、病院から断りがきたんだ。それに、生徒会長のボクがいくと、マスコミ連中がどこからか嗅ぎつけるしさ」

 

「触れないようにしてたのは?」

 

「ボクだって、ライスの事はショックだし、心配だよ?でも、病院に迷惑かけたくないし、今は生徒会長だから……さ」

 

「面会の許可出たら、どこでもドア借りれば?スペアポケットがあるんだし」

 

「え、どこどこ!?」

 

「ドラえもん君が押入れ(ベット改造済み)に置いていったんだ。万一の時用にね。一緒に仕事するようにはなったけど、ドラえもん君、のび太君が成人した後は帰ってるんだ」

 

「へー、意外ー」

 

のび太とドラえもんは一緒に仕事をするが、のび太の成人後は当然ながら、未来に帰っている。統合戦争の勃発は2130年代のことであるので、ドラえもんは(時系列が入り交じるが)22世紀野比家で十年ほどは平和な時間を過ごしていたことになる。統合戦争の勃発後に、バダンと死闘を展開し、時空破断装置をドラえもんズの仲間と共に阻止したが、それと引き換えに、歴史から姿を消すのである。仮面ライダー達がのび太の要請に二つ返事で応えるのは、その恩義によるものだ。また、プリキュア達の中にも(当然だが)公的機関に属して戦うことに強い抵抗を覚える者もいた。『魔法つかいプリキュアの仇討ちのため』という共通目的で当初は団結していたからだが、次第にその出来事を引き起こした黒幕と戦う事が『次元世界全体の平和につながる』事を意識しだし、(のぞみやみなみ、ゆかりなどの数名が公的機関に属する魔女を素体に転生したのも大きいが)公に行動するための理由づけと割り切るようになっていった。ことはを二十年近くも保護してくれていたのび太への恩返しもしなければならないのも、プリキュア達を次第にまとまっていった。ゲッター線などの超常的なモノの意志がプリキュア達の集結と能力の強化に関係した関係か、『世界を再構築する』類の力に耐性がついており、それを寄せ付けない(ZEROの因果律兵器の効用が他のプリキュアにも及びつつある証拠)。それぞれの事情で、セブンセンシズの扉を開いた者も増加しており、ディケイドというルールブレイカーが味方にいることもあり、それに近い行為が可能な敵が未来のどこかで現れる事を高次予測で感知したZEROの手助けでもある。

 

「これから、ディケイドと似たような事ができる敵が出てくるかもしれないからね。そうなったら、あたしが先頭に立つ。本当に不死身になっちまったってのもあるけど、他の子に無茶はさせられないからね」

 

ZEROとの魂レベルの融合で文字通りの不死身になった(ZEROの魔神パワーの名残りである『自己再生』や『変態』、『自己進化』付きだが、『ギャグ補正』よりは緩めの補正である)が、自分自身がシリアス寄りの存在である故、絶対ではないことも自覚している。

 

「魂レベルでの融合だから、この状態でもストナーやシャインスパークを使えるってわけ。そういう場面はないと思うけど」

 

「なーるほど。ライスが退院したらさ、ここに連れてきていい?」

 

「許可取ったから、いつでもいいよ」

 

ゲッター温泉に入り、湯治をする二人。ゲッターエネルギーが染み込んでいるせいか、緑色に輝いている。その効能は肉体の老化すらも内面から治癒してゆくほどであった。この効能により、テイオーは肉体の柔軟性と頑強さを併せ持つための一歩(体質が変化した)を踏み出すのである。

 

「ライスを助けられて良かったよ。タイシン先輩がナノマシンを打ち込んでくれたおかげで、選手生命を失うような事にはならなかったって。半年くらいはリハビリを兼ねての入院が必要だから、入院費はボクが出すよ。(テイオーはウマ娘としては、シンボリ家の縁筋にある名家の令嬢である)。ライスはトレーナー無しでやってきたって報告が上がってきた時は驚いたよ」

 

「え、チームのトレーナーは?」

 

「それがね、ライスって、チームのトレーナーからあまり顧みられてないと言おうか、放任されてたらしいんだ。今回の事があったから、生徒会長の権限で、ボクの属してる『スピカ』に移籍させることにした」

 

この措置により、ライスシャワーはチームスピカに属する事になり、解体された『リギル』に代わる最強のチームとしての体裁が強まっていく。変人奇人も多いが、『確かな実力を持つ』という評判を得ていくのである。

 

「有望な若い子も入ってくるからさ。キタちゃんと……デアリングタクトっていう……」

 

「大物も大物だなぁ……」

 

『活躍が約束された』大物達が加入する事が判明したからか、スピカはますます盤石になるだろう。ライスシャワーも、その二人も歴史に名を残すほどの大物。のぞみは学園側が『新時代の到来』をアピールするため、意図的にスピカに人材を集めるように仕向けたのでは?と感くぐる。自分の勤務先もそのような側面を持つからだ。

 

「君も大変だったようだね、職場でさ」

 

「プリキュアの中じゃ古参だった上、後輩連中を束ねる必要に迫られたからね。おまけに、転生先が正規の職業軍人で、将校の端くれだったから」

 

正規の職業軍人であるため、立場相応の事は否応なくやらされたと話すのぞみ。のぞみ自身は自分の置かれる立場を明確にされる事を現役時は嫌っていたが、大人の世界では『役割を担う』事が大事であるので、そこは割り切っていた。

 

「プリキュアが本職になるなんて、思ってもなかったよ。天職みたいなもんだけどさ、それで飯を食うことになるってのは特に」

 

「アイドルみたいな扱いじゃん?」

 

「戦いで周りから期待されるから、精神面でプレッシャーかかるよ?自分が仮面ライダーV3みたいなポジションになるなんて、現役ん時のあたしが聞いたら、本気にしないって」

 

先輩ヒーローとしての仮面ライダーV3は『現役ライダーを食う』活躍で名が通っており、のぞみも初期のプリキュアの代表(全体の『顔』であるなぎさとほのかに次ぐ立場)のような認知度であるため、彼のような活躍が軍から求められていた。それはのぞみの能力の向上もさる事ながら、小粋な話術なども地味に必要とするものである。黒江の配下にされたのは、そうしたトーク力が高いことで知られていたのも大きい。実際に、大決戦ではそれで敵をさんざ煽り、存在の誇示で自分に敵を惹きつけていた。

 

「先輩のトーク力が羨ましいくらいさ。口八丁も出世の一因だしね。海軍航空の大物と口八丁で関係を持つもの。あたしには、そこまでの頭は元々ないし。最近はZEROのおかげで、多少なりともできるようになったけど」

 

「下駄を履かせられてる自覚あるんだ」

 

「うん。元々、教師に努力でなったけど、上役と上手くいってるとは言えない人生送ってたからね」

 

「そういうもんさ。ボクも、怪我を何度もするうちに、自分の骨折癖に嫌気が差したからね」

 

二人はぶっちゃけトークをし合う。ライスシャワーの事は仲間に指示を飛ばす形で見守っていて、生徒会長であるので、過度の干渉は避けている(自分が『する側』であったので、人のことは言えないが…)つもりだが、気にかけるような言動を口に出そうかの呵責があったという。前任のルドルフもテイオーにあまり干渉はしていなかったが、テイオーが精神的に追い詰められたことに気づけなかった事に責任を感じていたため、史実の親子関係が巡り巡ってのお互いの不器用さに繋がっていたというべきか。

 

「仮面ライダー達は言ってる。時代が求める限り、自分たちは不滅だって。あたしは……プリキュアにもある『その手の願い』を背負わされたのかもね」

 

「ヒーローとかヒロインって、人々に覚えられてる内が華だっていうからね。人々から忘れられる事が彼らの『死』であるのだって、前に何かで読んだ気がする」

 

「プリキュアだって、全部がみんなに覚えられてるわけじゃないからね」

 

実際、イナズマンやキカイダーのような准大物級のヒーローも『21世紀での知名度』は低い部類に入ってしまうので、一年ごとに交代するシリーズものでは、なおさらそれは起きがちである。そんな中で『プリキュア5』は恵まれている方である。

 

「全部のプリキュアを一蹴する敵がいるかもしれないっていう危惧はあるよ。実際、そういう事に遭ったしさ」

 

ダイ・アナザー・デイでは、その時点での最強形態になっていた自分を南斗鳳凰拳は一蹴したし、強化人間であるタウ・リンに至っては『通常形態では、敵とみなしていなかった』。そうした『屈辱』を味わった結果か、そのような危惧を抱くに至ったのだと、のぞみは述べた。

 

「だから、修行を続けてるんだ。自分が盾になれば、後輩たちの負担も減るからね。後輩たちはあたしらの世代と違って、『戦士』としての側面は薄れてきてる。デーモン族や鬼、爬虫人類共とかと戦うのは、荷が重いところがあるからね。対話の余地もないし」

 

プリキュア達は『言葉が通じても、根本から相容れない』敵との戦闘経験がない。デーモン族の悍ましさ、鬼(百鬼帝国)、爬虫人類(恐竜帝国)との生存競争の意義を理解し、人類種の守護をするのは荷が重い面があるのを理解していたのぞみは、戦士としての側面を強く持つ旧世代が新世代の盾になる事を目指していたのである。

 

「言っとくけど、この湯治でたぶん、テイオーちゃんの骨折癖は治り始める。肉体の老いさえも治すというからね」

 

「君はその体で浴びる事を手土産に?」

 

「処置は下地を作るためのものさ。ブライアンちゃんの肉体の怪我で進行した『老化』をこれで完全にチャラにするって寸法さ」

 

ウマ娘は深刻な怪我をきっかけに、せっかく成長した能力が揺り戻しのように失われる事が多いことから、ブライアンやテイオー、マックイーンをテストケースにして、未来医療の効果を確かめたい。それがルドルフの思惑であった。ウマ娘界で広がっていた『深刻な怪我=選手生命の短縮』という図式を断ち切りたい』という遠大な願いによるもの。のぞみはその願いを汲んだのであった――

 

 

 

 

 

 

――一方、魔女の世界の戦況は均衡が崩れつつあった。扶桑陸軍と空軍がハルビンで敗退する事態となり、敵艦載機にF3Hデーモンが出現するなどの急報も舞い込んだ。扶桑空軍は『F3Hに対抗できる新型機』を緊急で配備することを決定。前線にF-15を回す事を急ぐ事になった。当時の扶桑空軍の前線では、F-86すら満足に行き渡っていなかったため、より大型で双発機のF-15の配備には困難を伴った。だが、緊急事態であった事から、零戦に対する紫電改のような配備への反対運動は起こらず、むしろ、ジェット戦闘機の導入を嘆願する部隊が増加した。南洋が失陥すれば、扶桑は遠からずに干上がるというのは、末端まで認知されていたからだ。だが、ジェット機の導入によるメイン燃料の切り替えやレシプロとの違いの教育の都合もあり、迅速に配備が行われたのは、前線の迎撃部隊や精鋭部隊に限られた。64Fは火消しに駆り出される事になるが、ジョンストン島を叩いている最中であるため、北東方面への転用は『主力の遠征が終わり、ジョンストン島を潰した後』とされた。冷戦もたけなわの頃の機種は大戦時の機種のような大量投入は想定されていないため、数週間程度では数が揃わないのである――

 

 

 

 

 

 

――そんな均衡をなんとか維持していたのが、量産型のスーパーロボットであった。その計画の内、唯一、計画通りに配備が成ったのが『ゲッターD2』である。常人でも扱える範囲の性能に収めたので、戦闘力の高いゲッターではないが、緊急で回せるゲッターとしては最善のものであった。ゲッタードラゴン似の機体がいるだけで、敵への威圧になるのだ。64Fには、オリジナル通りのスペックを持つゲッタードラゴンが配備されているが、パイロットの確保が難しく(ゲッター線の真価を出すには、闘争心が強くなければならない)、使用機会は限られている。ネオゲッターロボは稼働可能時間が有限であることから、侵攻には使えない(プラズマサンダーを数発使えば『ガス欠になる』)とされ、結局、設計段階から戦闘用に設計されているゲッタードラゴンに白羽の矢が立った。だが、そのままの性能では『超人でなければ乗りこなせない』(Gで体がバラバラに千切れる)ので、能力を落としたモデルが開発された。それが『ゲッターD2』である。とはいえ、翼がマッハウイングでなく、バトルウイングに改良されているなど、真ゲッター以降の開発である効果はあった。同機はMSより多少なりとも強力であることから、ハッタリを兼ねて投入され、複数が活動していた。これが最初期のゲッター軍団の活動の記録である――

 

 

 

 

 

 

――そんな戦場の風雲急の最中、キュアフローラはキュアブルームの口から、様々な条件でやってきた仲間たちは『便宜上の身分』を得て、この『魔女の世界』で暮らしている事を知らされた。元の志望に近いことをやっている者もいるが、現役時代の志望とは縁もゆかりもないことをしている者も多い。現実はそんなものだ。キュアフローラも史実の現役引退後は実家の和菓子屋を継ぐ事が確認されている。――

 

 

「のぞみちゃん達がこの世界に転生してたから、咲ちゃんたちは呼ばれたの?」

 

「それに近いね。のぞみちゃんがそれを望んだかもしれないけど。ま、みんなと会えたし、結果オーライだけど」

 

「なんで、みんな歳を取ってないの?」

 

「色々とややこしい事情があるんだ。現役時代の姿を求められているっていう、メタ的なことも絡むからね。力自体は強化されてるよ、昔より。普段は別々の世界にいるプリキュアも多いよ。うららちゃんは呼べた(戦車道部を引退した事により)けど」

 

「でも、変身したままで仕事かぁ。うーん……」

 

「書類仕事は必要最低限になってるし、プリキュアになってれば疲れないからね。必要なことだけど、飛行機の操縦や、車かバイクの運転はできるようになるよ」

 

咲も車の運転はできるようになっている。軍隊は必要な資格が取れる場所であるからだ。この時代、運転免許証持ちは『取る人間が都会の富裕層しかいない』ため、軍隊は乗り物の整備兵の育成に(史実ほどでないが)四苦八苦していた。その人数確保の兼ね合いで、大衆車の開発を進めるしかないのも、扶桑の悲哀であった。扶桑はクーデター以降、日本の政治介入で民需最優先に切り替えられたが、そこを敵に突かれ、戦争状態に陥った。結局、軍需は軍が一定の自給自足をせねば、戦時下の需要を満たせるものではなかった事を日本が思い知らされたわけである。少数のハイテクが多数のローテクを屈服させられるわけでもなかったが、少数のエース格が多数の雑兵を蹴散らす構図は多発した。史実の第二次世界大戦でもそうだったが、支援が伴った場合のエース格は一騎当千となる。ダイ・アナザー・デイ以降はより顕著になり、『戦力の平均化』よりも『尖った練度の部隊をいくつか置いておく』方針が是とされた。武子は元々、『戦力は育てるもの』という方針を持っていたが、人的資源の払底が史実の敗因の一つであることを知り、妥協的に『精鋭部隊の長』でいる事を選んだ。仕方がないが、時勢は高練度の兵を求めているためだ。

 

「この世界の日本は別の世界の過激な連中が力で政権を握ったアメリカと戦争中なんだ。それはいいんだけど、そいつら、ガチで私らと戦えるくらいの筋肉モリモリマッチョマンの武道家を兼ねててね。人間の可能性を見たね……」

 

「……冗談だよね?」

 

「いや、冗談じゃなく。ガチで苦戦するよ、私らでも。知り合いが撮ってた、その時の様子がこれ」

 

のび太が記録し、各プリキュアに配布されていた資料映像には、プリキュアの能力に小細工なしで追いつき、手刀でコスチュームごとプリキュアの肉体を斬り裂く男(ティターンズ残党の首魁にして、当代の南斗鳳凰拳継承者の『アレクセイ』……ティターンズの在りし日の最終階級は将官とのこと)が映っていた。歴代でも戦闘力が高めのピンクチームのメンバーが最強フォームにも関わず、瞬く間に蹴散らされ、最後に残ったドリームも鋭い手刀で十文字に斬られ、墜落していく。

 

「嘘……このメンバーがいて?しかも、みんなフルパワーの……」

 

「うん。これが次元世界の恐ろしいところ」

 

ドリーム、ピーチ、メロディ、ラブリー、ハートの五人が最強フォームで束になったのに関わず、その男は鎧袖一触で倒していった。この敗北はプリキュア全体に強い危機感をもたらしたわけだが、その男が敵の首魁であり、極限まで鍛え上げた肉体だけでプリキュアを一蹴してみせる格闘技の持ち主。完全に『遊ばれた』としか言いようがない実力差、プリキュア化していても『見えない』ほどの速度の攻撃を放たれる事の意味。フローラはタブレットの映像に息を呑む。

 

「私らは人型の幹部とガチの格闘戦した事あるからわかるけど、手練だよ、こいつ。これで敵の首魁」

 

「ってことは、こことは別の世界の軍人ってことだよね?それにしても……」

 

「私らは世代が下ると、格闘戦で戦う率が下がっていくからね。その中でも経験豊富な子たちが束になって、この結果。それで、みんな、個人個人で修行する事になったんだ」

 

アレクセイが南斗最強の拳の継承者であるという事を差し引いたとしても、彼は職業軍人、それも地球連邦軍の選良とされていた『ティターンズ』の更にトップエリートである。そんな玄人に、『経験豊富とはいえ、格闘技そのものは素人のそれ』でしかないプリキュア達が戦えばどうなるのか。格闘戦の経験でドリーム以上のブルームが『手練れ』と評する時点で、フローラはその意味を悟る。とはいえ、その後、ドリームが地上空母戦で下位の南斗聖拳の使い手である佐官を倒し、捕縛するなど、一応の意趣返しには成功している。しかしながら、かなりの傷を負わせられたため、ダイ・アナザー・デイ後~デザリアム戦役までの期間を全員が修行に費やしている。そのデザリアム戦役では、タウ・リンがさらなる壁となり、のぞみは(りんの記憶喪失もあり)精神的に追い詰められ、ついには狂気に陥りかけた。

 

「で、その次の戦いもややこしくてさ。説明されたけど、いまいちでさ。かれんさんに後で聞いてみて。その場に居合わせてないからさ、私」

 

デザリアム戦役に参加していないためと、その際ののぞみの変化などの詳細はこの時点でも『いまいちわからない』らしい咲。科学的に説明不能であるし、そのおかげで『壁を超えた』というバトル漫画じみた経緯は説明が難解すぎるのだ。

 

「あと、どのくらいで退院できるの?」

 

「体が完全に治癒したのが確認されてからだよ。プリキュア化を解くと、傷が悪化する事があるからね」

 

「そっか、プリキュアになってると」

 

「肉体が強化されてるって、医学的に分かったからね。その補正で傷が酷くなるのを防いでるってのはあるよ。それに、回復が早まるから」

 

フローラは転移前の戦いで負傷しており、肉体的にはかなりの重傷であるが、プリキュア化の恩恵で『外見上は傷がない』が、内側へのダメージはしっかり入っており、それが長期療養の理由であった。芳佳の治癒魔法で内臓へのダメージは消したものの、体全体に細かなダメージがあったため、医学的な観点からの療養となった。彼女の復帰には今しばらくの時間が必要であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――とはいえ、プリキュアの戦力強化は依然として課題であるのは変わりない。スポーツでもそうだが、神通力というのは長く続かないというのが常識である。武子もそれを前提に、プリキュア達を鍛えている。とはいえ、この時点での扶桑空軍という組織は寄り合い所帯の感がまだ強く、前身組織時代の派閥抗争を引きずっている。64F以外の部隊は『大損害を負った段階で、事の重大さを悟る』有様であった。当時は未来技術の流入で軍全体が模索の段階であり、仕方がないところであった。空中戦が可能なプリキュアが少ない事が問題であったが、空中戦の機会は初期世代ほど少なく、それでありながら、空中戦に慣れた世代と同等に立ち回れる者は意外と少ない。空中戦では、地上と同じようには立ち回れないからだ。異能が多数ある世界では現役時代そのままでは優位性がないのも事実であり、それと南斗聖拳の組み合わせで劣勢に陥った戦闘もある。ダイ・アナザー・デイでは、23世紀世界の暗殺拳の数々に劣勢を強いられてきたわけだ。最も、実在が確認されたのがその時代なだけで、実際には数千年の歴史がある拳法も多い。更に、強化施術で反応速度を余計に強化されている者もいるため、プリキュア達が逆に劣勢に陥るケースが多いからである――

 

 

 

 

 

 

――異能の他、話術などで立ち回りを有利にする工夫もなされている。その技能を養うための訓練の一環で自主的に行われているのがポーカーや麻雀などの大会であった。元々は季節行事が軍隊ではほとんどない上、魔女の世界に帰る場所がない者たちの娯楽代わりに幹部達が開いていたものだが、その中でも、特に精神力のいるものを実益に結びつけたわけだ。精神的な意味で大人になった数人は『それなりの』立ち回り方を身につけつつあるが、現役時代からの転移者はそうではないからである。とはいえ、プリキュアはボードゲームやカードゲームに縁が薄い世代が多数派であったため、幹部たちはズッコケを経験する羽目となった。とはいえ、TVゲームは64FやGフォース構成部隊に選ばれたエリート部隊の特権に近く、娯楽ではなく、21世紀以降の人間との交流ツールと見なす者も海軍士官には大勢いる扶桑では、ある種の『当然の選択』であった。当時は急激な電子化に反対する者が多く、娯楽まで機械化することに反対する声も大きかったが、日本による粛清の嵐が長く吹き荒れ、海軍は(特攻を史実で進めた者、日吉の司令部に引きこもった者など)多くの人材を理不尽に奪われ、Y委員会に属する提督や参謀に軍の指揮を依存する有様であり、Y委員会の直接傘下である64Fへの反発も大きかったため、他部隊との交流を兼ねての妥協でもあった。だが、司令部自体は自衛隊も陸に置いているし、史実とは通信技術が根本的に次元が違うのも事実である。特攻で浪費された人命を武器に、日本が提督や参謀の多くに懲罰的な人事を発令したため、今度は南洋の部隊を中央が掌握できなくなるという事態が発生。11Fは日本の強権ぶりに反発し、独力で守ろうとしていたが、のぞみの言う通りに近代的な空戦の『ズブの素人』であったのが災いし、戦隊長、副官が同時に戦死するなどの大損害を被り、部隊自体が無力化したのだ――

 

 

 

 

 

 

 

――この戦況の暗転は扶桑の中の楽観論を一挙にぶっ飛ばす効果となり、同時に『ハルビンを拠点に、次元ゲートを作られて侵攻される』という恐怖を抱いた日本側の『扶桑への内政干渉』とも取れる提案の数々(華族の公的身分の廃止など。一族がそれまでの爵位を名乗る事自体は連邦として止めないという妥協案であった)も消し飛ばし、日本連邦としての一体性が危機で進展を見せた。また、当時、扶桑の最新空母が(不運空母の代名詞に近かった)大鳳であったことから、日本側の関係者は験を担いで、海軍力の象徴として、戦艦大和の一族を宣伝した。皮肉なことに、ミッドウェイとマリアナに散った機動部隊より、日本海軍の悲劇の象徴としての戦艦大和のほうが『日本の人々にとっても、海軍力の象徴』とみなされ、史実の雪辱を願う声まで寄せられてくるということになり、機動部隊閥、とりわけ空母の艦娘(開戦時の一航戦の両雄)は大和が海軍力の象徴として持ち上げられることに伴い、『MI作戦の敗者』という史実の十字架に精神的に苦しむ事になり、次第にウォーモンガー化が進むのである――

 

 

 

 

 

 

――調は新京駅へ向かう道中、黒江の後輩であった同部隊の第三中隊長(敗走し、ボロボロの姿で新京へ到達)と偶然に遭遇。彼女から『11Fは壊滅した』事、組織だった撤退は不可能であった事、副官も戦隊長も戦死した事を伝えられ、司令部へ緊急の報告をした。事変以来の精鋭の一つとされた部隊が壊滅し、ハルビンの確実な失陥を認識した司令部は考案中の『ミッドウェイ攻略』を撤回。『ハルビン奪還と戦線構築の阻止』に目標を切り替え、本土ヘの資源輸送の裏ルートとして『宇宙』を開拓し、宇宙艦隊はその護衛が初陣とされた。扶桑本土では空港や宇宙港の整備が(史実での空港や大きな港のある地)が一斉に『国土強靭化』を名目に始まり、同時に、本土の備蓄燃料のさらなる増大も始められる。扶桑軍や政府は史実大日本帝国の衰亡の姿を第三者として目の当たりにした事により、物資とジェット・通常の内燃機関の燃料(潤滑油含め)を狂ったように買いつけていく。また、皮肉なことに、事変時の名声で当時の旧・64Fと並び称されたほどの精鋭部隊が独断で敵と交戦し、挙句の果てに、誘導ミサイルという新兵器を引っ提げて飛来した、敵の新鋭戦闘機に呆気なく撃滅されたという衝撃は内外で大きく、戦死した戦隊長の責任を問う論調が紙面を飾った。扶桑空軍の寄り合い所帯の空気、派閥抗争が批判されるようになったのも、この頃だ。この報道の火消しのため、軍司令部はその日のうちに作戦スケジュールを撤回。ハルビン周辺の奪還を主軸に添えた防衛作戦に変更する。とはいえ、既にそれまでのスケジュールを前提に、全軍が動いていたために、補給や部隊移動で大混乱を引き起こしてしまい、司令部は対応に悩殺され、文字通りにシッチャカメッチャカとなってしまう。64Fは(司令部の緊急判断で)『遠征の完了次第、北東方面に投入する』という方針になり、その要となる新兵器の配備が緊急で促進されていくのだった――

 

 

 

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