――世界線の分岐と転生・融合により、プリキュアへの変身能力を完全に自家薬籠中の物とした『魔女の世界に転生した夢原のぞみ』。なぜ、そうなったのか?魔女に転生していた事で『願いの受け皿』としての自己が確立されていた事、『ドラえもん世界』(未来世界と同一の世界線)でキュアドリームとしての自分が完全に崇拝の対象になっていた(プリキュアの中でも、特に人気があった)事、『成人後にすべてが破綻した』世界線からの転生であった事で、本人が『人生で最も幸せであった時間』への回帰を強く願っていた転生時の深層心理を理解したマジンガーZEROが融合の時に世界の因果を操作し、『地球意志による能力の一時的な復帰』ではなく、『プリキュアとなった全員が最初から持つ能力が覚醒しただけ』と言う風に、のぞみの願いを汲み、オールスターズの全員(…とのこと)変身能力を存在そのものに改めて紐づけたからである。彼女のいる世界線は『オールスターズが永続的にプリキュアへの変身能力を持つ』世界線となったわけである。これが『マジンガーZEROがのぞみに約束した『罪滅ぼし』であった――
――『オトナプリキュアの世界』――
「で、どう説明しよう……」
「そもそも、この世界にマジンガーZが何かかしらの形で『存在している』かどうかを調べんとならんだろ。まぁ、たいていはあるんだが」
マジンガーZの中でも、最もぶっ飛んだ存在であるマジンガーZEROは世界の因果律すら操作することができる。神の領域に踏み込んだマジンガーの一体と言っていい。Zの大まかな容姿を保っての神化に等しいパワーアップだが、その大元が存在していないと、説明が最高に難しくなるのだが。
「えーと、のび太くんが渡してくれたタブレットで、この世界のインターネットの百科事典に接続っと…」
「のび太から渡されてたのか?」
「うん。時空管理局が改修したから、地球系の世界のインターネットなら楽に接続できるんだって。……あ、あったよ」
「やはり」
のび太がキュアピーチに渡していたタブレットは時空管理局が改修し、地球系の世界のインターネットであれば、どこの世界線でも接続できるという優れもの。そこが地球連邦政府への数少ない技術的に優越するところである。
「他の世界と同じだね」
「ふう。第一関門は突破か」
「喜んでもいられないって。その到達点の一つが自我を得て、世界の因果を弄るところまで進化していって、みらいちゃんたちを一回は倒したって事からして……」
マジンガーがある事が確認できたのはいいのだが、それが転じた『ZERO』は一度、プリキュアスターズと対立したが、ZEROの行動の根幹が『マジンガーZが人々の記憶から忘れ去られる』事への兜甲児の抱いていた恐怖心にある事を理解したのぞみが浄化(真スターライト・ソリューションという技を使用した)の後に対話を行って、のぞみと融合した。それが最高に難しい。のび太曰く、『チンパンジーにプレステ5の難解なゲームをやらせる』くらいの難度との事。
「そうだな。そこを理解させるのが……」
「おまけに、みらいちゃんとのぞみちゃんが最強フォームで、宇宙移民が定着した時代の月を揺るがす大喧嘩をしたなんてさ……」
のぞみAのパワーアップは折り紙付きで、アレキサンドライトスタイルになっているはずのみらいをも圧倒した。さらに、ゲッター線の制御も可能になるなど、飛躍的に強くなっている。
「いいじゃないか。あの二人が本当に全力で戦闘したら、星の一個か二個は消し飛ぶのは目に見えている。せめてもの良心だろうよ、月面の上空で戦ったのは」
「で、その後じゃない?城戸沙織さんが聖剣を与えたの」
「ああ。しかし、あいつは心のどこかで、そうなるのを望んでいたのかもな」
「うん。プリキュアである事自体が精神安定剤になっちゃってた世界線からの転生だからなぁ…。だから、かれんさんとこまちさんが居ても立ってもいられないってなったんだよ。B世界ののぞみちゃんには悪いことしたよ。この世界線だと、プリキュアの変身能力が自然に失われたみたいだね」
「多分、アイテムを与えた側に『役目を終えた』と見なされたんだろう。2000年代以降のアニメ作品にありがちな経緯だ。俺は余計にパワーアップしたというのに」
この時期になると、門矢士は自身より後に現れた仮面ライダー達にもカメンライドできるようにパワーアップしており、変身ベルトもマゼンタ色となっている。ことはを救出した後にそうなったという。試していないが、昭和ライダーの力も使えるはずだという。
「あんたは世界の理をぶち抜けるもんねぇ」
「神様がそういう存在にしたんだろう、俺を。世界の秩序を粉微塵に壊すことで、新しい道を開くための、な」
士は自分の存在意義をそういう風に見出したらしく、この時点では完全に善の存在となっていた。以前より人当たりも良くなっているらしく、現役時代に比して、饒舌である。
「で、考えついたか?」
「全然。この時代、あたしらも何歳になってるんだか。たぶん、ほとんど同じくらいにはなってるはず」
第一世代オールスターズはほぼ同時代を生きていたので、2020年代には、20代後半~30代前半になっていると思われる。そのため、現役時代の能力を維持している世界線のキュアピーチである自分は、よほどの緊急時でなければ、この世界線ののぞみや咲たちの前に姿は見せられない。現役時代の姿+任意に最強フォームになれるというパワーアップを遂げているので、変身能力以外にも『10代特有の万能感と、未来へのまっすぐな希望』が加齢と進学や成人という厳しい現実の前に失われている状態の『オトナ』にならざるを得なかった世界線ののぞみ達はどう思うのか?それは全くの未知数だった。士が調査したところ、『かれんたちの中学卒業』を期に、会える機会が次第に減っていき、のぞみが高校生になる頃には、完全に疎遠になっていた(仕方がない事だが……)事、皆の心のつながりがその頃に薄れたことも、現役時代の変身能力が失われた理由であろうと、士は考察した。
「大人になるってことは、子供の頃みたいに、漫画やアニメ見て笑って、学校でワイワイやるのとは、わけが違うからなぁ。あたしも、前世での事だけど、親の老後の事とか、20代の後半辺りには考え始めないといけなかったしなぁ」
「そういうこともひっくるめて、大人になるんだろう。だが、皮肉じゃないか?俺たちの知るあいつは『必死に背伸びして、大人の世界で頑張ったが、それに耐えられなくなり、青春時代に得た異能にすがったが、実子が自分のせいで闇落ちした』って結果に絶望して死んでいった。転生してからも、必ずしも望んだことは叶ってない。だが、あいつが本当に望んだものは……中学生時代のように、みんなでワチャワチャする事だったのかもな」
「そうかもしれない。全部が裏目に出た世界線から来たらしいからね。だから、あたしも戸惑ってたところあるんだ。あたしが来た時…さ」
「あいつにとって、お前は『幸せだった青春時代の象徴』みたいなものだったかもな」
「それは薄々と感じてたよ。のぞみちゃん、ダイ・アナザー・デイの頃は無理して、現役時代の自分を演じてた節があるんだよね。幹部達にも具申したことあるんだ。デザリアムとの戦いが始まった頃」
のぞみAの『心の闇』は割に早い段階で仲間たち(その中でも、同じ時代にプリキュアであった世代の者)に気づかれていたが、手をこまねいている内に、タウ・リンへの敗北があった事、転生したが故に、りんの存在が余計に精神安定剤になっていた事が浮き彫りになり、りんとのつながりを嘲笑された事、プリキュアの力を『子供の空想のように儚く、脆い奇跡に過ぎない』と切り捨てられたことに激昂し、戦いを挑んだ。だが、タウ・リンは現役の最盛期の状態に戻っていたはずののぞみAを意に介さない戦闘力でねじ伏せ、彼女が闇落ち寸前の心理状態になって怒り狂っても、手傷を負わすのみ。この時、無理を重ねていたのぞみAの精神は破綻寸前に追い込まれていた。自分やことはは『一刻の猶予もない』と判断し、かれんとこまちを連れて行くことにしたのだ。
「あいつらもそれは薄々、感づいてたぞ。だが、それはあいつ自身で答えを見つけなきゃならん問題だった。だが、かれんとこまちが来なければ……」
「うん。人間、支えになる何かは必要だからね」
「人は一人では生きられん。たとえ、俺でも…な」
士のそれは大ショッカーを束ねていた時期の自分を自虐しての発言であった。
「あいつはこれから、職業軍人として生きていくにしろ、前世で望んだ幸せを手に入れている。夢や憧れを『戦いで取り戻した』ともとれる。だから、この世界では、一定の加齢……おそらく、高校から大学に進学する頃だろう……をして、夢や情熱が失われる(どのような形にしろ、そんな通過儀礼の後に大人となる)ことで『役目を終えた』とされて、変身アイテムが消失したんだろう」
「夢や情熱、か」
「誰しも、子供の頃に好きだったキャラやおもちゃのことをいつしか忘れ、子供の頃に憧れてた職業が自分に向いてる、あるいはつけたとしても、上手くいくとも限らん。人生はそういうものだ。だが、夢や情熱を再燃させる者もいるし、持ち続ける者もいる」
キャプテンハーロックやトチローのように、成人した後に、夢を成人後に自分の望む形で実現させた(ハーロックとトチローは元は地球連邦軍の職業軍人であった)者、クイーン・エメラルダスのように、一族の業への贖罪や恋人(トチロー)の弔いのために、宇宙海賊になった者もいる。士は彼らを引き合いに出した。
「確かに、ね」
「かれんとこまちはキャプテンハーロックと出会うことで、それを知った。ZEROが因果を調整したにしろ、プリキュアへの変身能力を持てている理由の一つだと思うぞ」
のぞみBが駄々をこね、堂々巡りになりかけたその時、アルカディア二番艦がドクロの旗を翻しながら、颯爽登場した。ことはがのび太を介して、依頼していた切り札であった。その際に、ハーロックの動きが気になったのか、クイーン・エメラルダスも更に現れ、のぞみBは色んな意味で圧倒される事になった。
「あ、クイーン・エメラルダスが来たのは?」
「改装されたとはいえ、初期型のアルカディア号を引っ張り出したのを怪訝に思ったから、だそうな。それで、結果的にハーロックに協力する形になったそうだ」
宇宙時代に名を轟かす、二人の大海賊。その二人が現れたのは、ある意味では一大事であった。さらに言えば、クイーン・エメラルダスはあの『メーテル』の実姉である。年端も行かぬ小娘でしかない、のぞみBが圧倒されるのも当然の事だった。ことはが思わず敬礼してしまうほどの『圧倒的な何か』に、のぞみBは言葉を失っていた。ハーロックとクイーン・エメラルダスは座乗艦の圧倒的な戦力で『エターナル』の襲撃を一捻りしながら、『プリキュア5の世界』を後にした。結果的にだが、この出会いによって、のぞみBは『大志』を懐き続ける事で、『拓ける道がある』事を理解し、それがB世界における後年、『ドリームキュアグレース』として結実するのである。
「自由の旗か…」
「ハーロックは心に自由の旗を掲げている。その一端を見たのも、かれんとこまちの心に『少女の心』を残した理由かもな」
ハーロックのその姿勢はしばし、行動を共にした水無月かれんと秋元こまちの心に強い影響を及ぼした。それが変身能力の固着化を起こした理由の一つであろう。
「大人になるってのは、現実が子供の頃の幻想や願いを無慈悲に打ち砕いていくことでもあるからな。のび太の家の近所に住んでた坊やを見れば、わかるだろ?」
「うん、あの坊やのことだね」
「あの坊やは肺や心臓が年を追う毎に悪くなってるそうだから、70や80になるまでは生きれんだろうが、大人になっていくにつれ、現実の厳しさに泣いてきたが、夢だけは持ち続けている。それがなければ、スーパーヒーローやスーパーヒロインたる資格はないんだろうな」
「大ショッカーの首領だった、あんたがいうと、重みあるなぁ」
「自分でその後始末をしているんだ、文句は言わせんよ」
士はその手の議論では、自身が悪の組織を率いていた時期があるのもあり、一家言あるようだ。また、プリキュア経験者達が加齢で変身能力を喪失した理由の一つに『大人になるにつれ、子供の頃の純真さや万能感の喪失が起こるから』という推測もするなど、経験を増した故か、以前より他人に配慮できるようになっていた。自身が悪事を働いていた時期があるのを悔いているからだろう。そんな折、大人のぞみは小学校で担当しているクラスの教え子の家庭が父親の事業経営の失敗で立ち行かなくなり、父親は妻と離婚し、子の親権を得て、郷里に帰ろうとしているのを思い留ませようと奮闘したが、教師という立場の限界と家庭の事情では手の出しようがなく、往年のように『皆をハッピーエンドにする』事ができない自らに涙していた。そんな帰り道。かつてはプリキュアであった故の因果か、偶然にも、士に呼ばれて、キュアエンジェル形態で空を飛んでいるキュアピーチを目撃したのだ。
「嘘……あの翼は……あの姿は……ラブちゃん!?」
往年の名残りか、視力が素で2.0(2020年代では、その数値は極めて良好な部類に入る)はあるという大人のぞみの目は一瞬だが、キュアピーチを確かに見ていた。この時代、ラブ達もプリキュアでは無くなっているはずである。それ故か、久しく会えていない。だが、見間違えるはずはない。何度も轡を並べて、共に死地を乗り越えてきた戦友の姿を。
「ま、待って!!ラブちゃん……ピーチ!!」
「いぃ!?の、のぞみちゃん!?普段から、そんなに目ぇ良かったっけ!?」
思わずそう返してしまうピーチ。
「視力は2.0だし……。そ、それは置いといて……。どうして、プリキュアの姿なの!?それに……なんで、昔と姿が変わってないの!?私と同い年のはずなのに!?」
「まいったなぁ。ちょっとごめんっ!」
「う、うわぁ!?ちょっとぉ!?」
「仕方がないから、このまま我慢してて」
「こ、この歳(20代後半)でお姫さまだっこは恥ずかしいよぉ~!」
「ちょっとだから、我慢してよ~!本当、いくつになっても変わんないなぁ」
キュアピーチは大人のぞみにはっきり目撃されたため、『予定が狂った!!』と頭を抱えつつも、騒ぎになる前に、お姫様抱っこで士のところへ連れていった。道中で、ピーチは自分は『この世界線における桃園ラブ(キュアピーチ)ではない』事を明言した。ミラクルライト無しでキュアエンジェルになっている事からして、現役時代のラブと異なる道を辿っている。キュアピーチは元々、歴代でも比較的に等身が高めであったため、大人になって背の伸びた大人のぞみに比べても、遜色はない。
「えーと、つまり?あなたは私の知ってるラブちゃんじゃないの?」
「ここから見ての平行世界から来たからね。ここから別の道を辿った世界の住人だよ。現役でプリキュアだけど、仕事がさ」
「仕事が?」
「話せば長いんだ、これが……本当は観測だけするつもりだったんだ」
「観測?」
「うん。仕事で平行世界の調査しててさ。顔合わせないつもりだったんだけど、まさかねぇ……」
「な、なんかゴメン」
「いいさ。こうなったら、付き合ってもらうよ。今夜は家に帰れないと思って」
「それはいいけど、なんか食べ物ある?」
「あるけど、酒は無いよ」
「へ、何も言ってないけど」
「飲みたそうな顔だよ?あたし、今の仕事で乗り物乗るから、やむを得ない時以外はご法度なんだ。こっちののぞみちゃんもそうだけど」
「え、そっちの私、先生になってないの?」
「そこが一番ややこしいんだよ。どう説明したものか……。あたしもダンサーは本業じゃ無くなってね……」
キュアピーチはその難点に早くも遭遇し、頭の痛い思いであった。正確には『内定まで行ったのに、国家連邦組織の都合で潰された』というべきである。ここで大人のぞみは『別の世界線には、プリキュアを現役で続けている自分がいる』事を知ったわけだ。更に言えば。
「転生……?ハハハ、まっさか~」
「本当にそうなんだって。のぞみちゃんが飲んでそうなビールの銘柄、当ててみようか?」
「うわぁ!?そ、それは反則、反則~~!」
大人のぞみは年齢相応に飲酒しているようである。それは容易に分かった。大人になると、付き合いで飲むことも多い。それを上手くやり過ごすのが『大人の世界』での処世術だ。ピーチは少しからかう。
「ラブちゃん、ダンスはそっちだと、辞めたの?」
「いや、飯の種にしてないだけさ。職業はプリキュア戦士って事が把握されてるから、身分保障とかの兼ね合いで軍人とか、自衛官の類になるしかなくてね。プリキュアも、国に存在を把握されると、法律だとかが絡んじゃってね。説明が長くなるけど、これは頭に入れといて」
「軍隊にいて、乗り物動かすって……戦車?」
「あたしは違うよ。それはマナちゃん。」
「マナちゃんもいるの?」
「うん。いちかちゃんまではほとんど揃ってるよ、ピンクチームは。なぎささん以外は」
「なんで?」
「それはわからない。ピンクチームじゃ、のぞみちゃん、あたし、響ちゃんが同時に転生してきたけど、あたし以外は『その世界にいた人たちの立場を乗っ取る』形での転生だったから、色々な兼ね合いがあって」
のぞみAはそのことも『軍人であり続ける』理由に挙げている。『錦の立場を乗っ取ってしまった』事への負い目も、軍人という立場を受け入れ、軍人としての生活を享受する理由なのだと。
「で、のぞみちゃんが乗っ取った……というより、成り代わっちゃったって言うべきかな?……その人、士官学校出てるバリバリの職業軍人でさ。プリキュア5のリーダーだったってんで、軍の偉い人たちはまとめ役を期待して……」
「そっちの私、そんなややこしいことにぃ!?」
「うん。士官学校出てるから、エリート扱いだし、おまけに、また別の世界からの援助でガンダム乗りになってるしさ」
「……へ?ガンダム??横浜に立ったあのアニメの?」
「うん。その最新型のパイロットしてる」
「なにそれぇ!?」
大人のぞみには信じられない事だらけであった。自分がガンダム乗りになっている上、軍の将校になっているなどと。
「それと…いうか迷ってたんだけど、こっちだと既婚者だよ、のぞみちゃん」
「き、き、き、き……既婚者ぁ!?だ、だ、誰と!?」
「ココ……の生まれ変わりの人」
「ココ…!?ココも生まれ変わってたの!?」
「あとで写真見せるよ。ちょっと昭和風だけど、イケメンに転生してるから、記憶持ちで」
野比コージ。小々田コージ(ココ)が転生した青年であり、サムライトルーパーの仁を掌る戦士である。コージというのは、本人曰く、前世由来の仮名で。転生後での本来の名は(飛行機事故のショックで記憶がないので)不明だが、のび太が引き取った際の持ち物に『リョウ』と書かれたものがあったため、本来は『リョウ』という名前をつけられていたと推測されている。1949年次には、二人は結婚半年ほど。既に、南洋の新興住宅地に自宅も構えている。
「あたしは独身貴族してるけどね」
「ラブちゃんの口から、独身貴族なんて単語出るんだ」
「あたしはのぞみちゃんと違って、意中の相手はいなかったからね~。羨ましいって思ってたよ」
「……」
「ちょっと来た?」
「大人になるとさ、涙腺緩むんだよぉ…。あの頃のままだしさ、ラブちゃんは」
「全部が昔通りじゃないけどね、あたしも」
ピーチが『現役時代からほとんど変わっていないこと』で安心し、気が緩んだのか、ほろりと涙を流す大人のぞみ。ピーチはのぞみAがどうして、自分や北条響(シャーリー)に本音を漏らすようになっていたのか。その謎が解けた気がしたのか、大人のぞみを運びつつ、かつての戦友として接した。大人のぞみは高校~成人後まで溜め込んできた『プリキュアでなくなった』故の悲しみや苦悩が大きかったのか、普段はりんにしか見せない弱音を吐いた。懐かしさや、往時と変わらない『キュアエンジェルピーチ』の勇姿に、昔に立ち還ったような感覚を覚えたからだろう。ピーチ(ラブ)も転生後における『大人の世界の現実』と向き合いつつ、プリキュア戦士の次席の一人として、後輩らをまとめ上げなければならない立場にある。のぞみの一期下の戦士であった事から、実質的にプリキュアスターズのサブリーダーであると見なされており、意外に気苦労の多い日々である。(特に、のぞみが荒れていた時期は、代わりに後輩らをまとめていた)
「プリキュアって身バレしてる世界で、公職につくとさ、色々と気苦労の多い生活なんだよねぇ。気晴らしに、カーレースとかオートレースしてるよ、休暇の時は」
「へー……って、ラブちゃんさ。スピード違反してないよね?」
「してないって。勤務の時は運転を美希タンとかに頼むことにしてるし。やむにやまれぬ時しかハンドルは握ってないよ」
「良かったぁ。ラブちゃん、スピード狂じゃん?つぼみちゃんが昔……」
「つぼみちゃん、そっちでもあれを覚えてるんだー……。あ、アハハ……」
ラブはハンドルを持たせると、意外にもスピード狂になる性格で、その点でも、キュアメロディの転生であるシャーリーと馬が合う。その出来事はつぼみがプリキュアオールスターズとしてのデビュー戦であった戦いでの一幕で、花咲つぼみはその事を話の種にしているほど鮮明に記憶しており、幹部たちに『シャーリーの相棒にピタリじゃね?』と判断を下させる理由の一つともなった。ピーチは思わず、乾いた笑いをするしかなくなり、大人のぞみは『花咲つぼみから聞いた』とし、その話を引き合いに出して、本気でラブの『スピード違反による運転免許証の減点』を心配していた。ラブとしては心外だが、つぼみとえりかという証人がいる上、立ち合ったえりかの『完全にどっかの公道レース漫画な顔になってた』という証言もあるので、そうするしかなく、かなりガビ~ン!な衝撃であった。