――大人のぞみは大人かれんと再会したが、その再会はしまらないものであった。ドラえもんは大人かれんに『自分は平行世界の住民』である事、その世界におけるプリキュアオールスターズの法的後見人の一人であることをかいつまんで説明した。そして、この世界にはキュアピーチ\桃園ラブと共にやってきた事を話す。さらに、のぞみが力を取り戻した背景には、邪馬台国の女王であった卑弥呼が絡んでおり、彼女が地球全体の危機に対抗する術として、のぞみにプリキュアの力を戻させたのだと――
「卑弥呼……!?そんな、彼女は2000年近く前の存在よ!?どうやって干渉できるというの!?」
と、大人かれんが動揺したところに。
「ひ、人魂!?」
流石のかれんも、診察室に人魂がおどろおどろしくも現れたのにはたまらず、みっともなく狼狽してしまう。次の瞬間、人魂が人の体の形になっていき……。
『こういう事です』
「!?」
人魂が古代日本で見られたような巫女装束に身を包む20代の成人女性の姿を取る。伝承通りの服装から、そう判断するしか無かった。
「嘘……!?まさか……そんな事が……!!あなたは…あなたは!!」
「理屈で説明できない事など、いくらでもあるのですよ、水無月かれん。いえ、キュアアクア」
「!?」
「私が涅槃から舞い戻った理由は宇宙にあります」
「宇宙!?」
現れた卑弥呼は大人かれんに『太陽系に向けて、圧倒的な戦闘力を誇示しながら、意気揚々と進撃する大艦隊』のビジョンを見せた。その数は圧倒的であると同時に、歴然たる科学力の差を示している。衛星軌道から艦砲射撃をされれば、月面探査すらおぼつかないレベルの文明レベルの地球では為す術もない。
「これが理由です。あなた方は彼らに対抗する術をこの世界の人間として、ほとんど唯一持っている」
「ですが、私達は既に……」
「問題はありません」
卑弥呼はその力で以て、大人かれんを若返らせた上で、キュアアクアへと変身させる。のぞみの時と同じ手法だ。これにより、歴代のプリキュアたちは初変身、もしくは最後にコスチュームが更新された時の肉体がアカシックレコードに記録され、変身を行った際には、変身者が往時から加齢していても、変身時のみは全盛期の肉体を使える事が正式に判明した。
「こ、これは……!!」
「やっぱりそうか……。アカシックレコードから、この子たちの全盛期の肉体を呼び出したんですね?」
「ええ。私の能力であれば可能です」
卑弥呼はそれを肯定した。ドラえもんの推測がここで確信に変わったわけだ。
「ど、どういうことですか、これは!?」
「貴方の全盛期の肉体と能力を呼び出し、今の貴方に与えたのです。貴方たちの力を記憶する『座』に直接の介入をしたのです」
キュアアクアにも、軍医となった世界線の自身の記憶と能力を与えたらしい卑弥呼。生前の時代背景を考慮しても、歴代の『1000年女王』の中でも、特に高い能力を誇っていた事がわかる。
「それと……変身する一瞬で、脳裏を走馬灯のように駆け巡った『存在しないはずの記憶』は……」
「彼の知っている貴方自身が別世界で辿った道です。事を円滑に運ぶ為の措置ですので、悪しからず」
と、別世界の自分自身の全ての記憶や能力を『移植した』事を告げられるキュアアクア。姿格好が全盛期のそれに戻っていることに腰を抜かしそうになるアクア。変身を解除してみると、キュアモが手元に戻っている。
「……ドリーム。一晩は考えさせて。状況は分かったけれど、仕事を休むにしても、色々と大変なのよ、医者は」
「わかりました。明日、同じ時間にまた来ます」
「では、私もこれで」
卑弥呼も魂の姿に戻り、どこかへ消えていく。呆然としつつも、大人かれんはその翌日までに、勤務する病院に長期休暇届けを出し、周囲に迷惑がかからないように取り計らった上で、別世界の自分の身分を使い、白色彗星帝国との戦いに参戦するのである。確約を得たことに安堵した二人はこの後、形式的な診察の後に屋上に戻り、コスモタイガーで次なる仲間の元へ向かった。
――『オトナプリキュアの世界』に転移した地球連邦軍・太陽系連合艦隊。ガイアからも増援が派遣され、数の上で五分五分になりそうな彼らは、戦役での最終防衛線を地球と月の中間地点に定め、現地の国連の露知らぬところで、大艦隊戦の準備を着々と進行させつつあった。いざという時は、コスモハウンドやコスモシーガルで現地人を非戦闘艦に避難させる計画である。作戦計画は土星決戦の教訓により、航空決戦で制空権を獲得後、ガイアの派遣してくれた無人艦達の拡散波動砲で奇襲攻撃を敢行。火炎直撃砲での先制を潰す。土星決戦では、火炎直撃砲でかなりの損害を被ったからである。連邦軍はフェーベ航空決戦以来、自身の航空戦力の精強さに自信を持っていたが、数の不足は相変わらずである。国力を背景に、個別の専門用途機を有する白色彗星帝国と違い、地球連邦軍ではマルチロール機が主流であり、それで数を補っている。大人のぞみは別世界の自分が地球連邦宇宙軍に籍を置く(少佐)事を利用し、戦いに参加したわけである。――
――翌日 太陽系連合艦隊旗艦『しゅんらん』――
64Fへ譲渡が決まったしゅんらんであるが、その前の『最後のご奉公』として、当初予定通りの運用たる連合艦隊旗艦として参戦した。アンドロメダ級がガイア(反地球)との政治的軋轢となるのを嫌った政治家たちによる決定であった。反地球側もアース(地球)側の波動砲が『次元波動爆縮放射器』とは似て非なるものである事を知った後は『我が方はアンドロメダ級を退役させよと求めていない』と延べ、『ガイアの古代進の早合点である』と説明した。結局、ガイアの古代はこの事で政治的に嫌われ者となり、長らく辛酸を舐める事になった。一方、アース古代も白色彗星帝国戦時の行為が原因で、一定以上の出世に縁は無くなったが、デスラーとの友情や、藤堂軍令部総長が『沖田の子供たち』と目をかけている事、更には、多くの戦功のために実務でのお咎めはないので、お互い様だが。
「夢原少佐が出頭いたしました」
「ご苦労。艦橋に案内したまえ」
「ハッ」
兵士に指令を発し、自身は航海艦橋の艦長席に陣取る山南。その五分後。
「山南提督。ご命令に従い、出頭いたしました」
「ご苦労」
大人のぞみは別世界の自分の記憶&能力と経験を卑弥呼の超能力でインストールされるという裏技で戦士に戻った。記録上は『別世界の自分が戦った』事になるため、自分の生活そのものには影響は無いが、別世界の自分が辿った過酷な経緯に複雑な思いを抱いたため、その事をいうつもりであったが、山南は卑弥呼から既にそれを知らされていた。その手際の良さは一国を治めていた女王であった生前から変わっていないようだ。
「少佐、君の事は既に卑弥呼女王(元の女王であるため、敬称は女王陛下である)から聞いている。我々の世界における君には、事後通告になるだろう。彼女も別のところで戦っているからな」
「知っておいででしたか」
「うむ。君もわかると思うが、相手は世界線によっては、ヤマトすらも相打ちに持っていくしか方策が無かったほどの強大な大帝国の軍事力だ。我々も全ては防ぎきれん。我々がそうであるように、敵もワープ航法が使える。水雷戦隊が地球本土へ攻撃をかける危険が考えられる。デザリアムがそうであったように」
「…ええ。」
別世界の自分が記憶するデザリアム戦役では、デザリアム軍による虐殺があちらこちらで起こり、地球で最も豊かな地域に返り咲いた関東地方では、多くの死者が出た。その凄惨さに憤った。もし、そんな光景に自分自身が遭遇したら、自分も同じリアクションを取るだろう。そんな奇妙な確信が大人のぞみにはあった。
「万一のために、空間騎兵隊を引き連れてきているが、敵が上陸すれば、君の世界の如何な軍隊も歯が立たんだろう。そのために、空母の一部を防衛に割かねばならん。君には、それを補う役目を担ってもらう」
「ガンダムXのサテライトキャノンですか」
「そうだ。ビットMSも搬入してある。あれには通常のニュータイプと異なる適性が必要だが、今のところ、君しか適性がある者は確認されていない」
「それは辛いです」
「仕方あるまい。ティターンズが強化人間を非人道的手段で量産していた事はデザリアム戦役の後は周知の事実だ。フォウ・ムラサメなどはその悲劇の象徴だ。なので、造る事は様々な意味で不可能だ。探してはいるがね」
デザリアム戦役当時、フラッシュシステムは通常のニュータイプとは多少異なる適性が必要なことから、のぞみAしか適合者が確認されていない。あいにく、当時に最新最強のガンダムダブルエックスは64Fに配備中の一機のみしか存在していない。自動的にその前型であるガンダムXになるわけだ。
「君の仲間は応じてくれたかね?」
「ハッ。何人かは応じてくれましたが……やはり」
「戦争に参加したくないのは当然の事だ。力を失って、既に何年も経ている者も多い時間軸だろうし」
「申し訳ありません」
「こちら側の世界から数人は派遣するが、それほど多くは送れん。それは了承してくれ」
「ハッ……」
一日目は芳しくない結果であったのがわかる。スキャンの結果、居場所が判明した者に当たってみたが、大半が良い返事を返さなかったらしい。仕方がないが、既にオールスターズ華やかりき頃からは10年以上の歳月が経っており、加齢や心境の変化で、往時の力を失っている者が大半であったためもある。もちろん、往時ののぞみに憧れていた後輩や、苦楽を共にした同世代の者もいるため、同意した者もいる。宇宙からの侵略者に曲がりなりにも対抗できる力を持つのは自分達であるという自覚が古い世代のプリキュアほどあったからだ。だが、現役時代のように『怪物然とした』者たちではなく、れっきとしたヒューマノイドタイプの宇宙人との生存競争。それに拒否反応を示す者は多い。元・プリキュアであろうと。
「気に病むことはない。元々は我々がやり残した事だ。君たちに頼む方が無理筋なのだ」
「提督……」
「この世界には、我々のような誤りは犯してほしくはないからな。母星を自ら傷つけ、強引に追い出して、自然に還そうとするような者が現れないように……」
一年戦争から第二次ネオ・ジオン戦争の時代のジオン系勢力の事を指している事は、大人のぞみにも理解できた。ジオンはアースノイドの愚行を挙げ連ねる割に、やっている事は環境破壊の促進。20世紀の終わりに活発になり、21世紀に端緒についた事が、22世紀に終わるはずがない。コスモリバースシステムを以てしても、自然が20世紀半ばの状態に回復するには、尚も長い時間を要するのは、子供でもわかる事だ。
「あの人……シャア・アズナブルの事ですか」
「そうだ。あの男は指導者をするには、青二才過ぎた。個人の思想を優先させたのだ。故に、アムロ少佐に敗北したのだよ」
大人のぞみは同位体の記憶を得た故に、20~21世紀の人間たちが行った『大量生産・大量消費』の生活スタイルに嫌悪感を持つ宇宙移民がシャア・アズナブルというカリスマを祭り上げ、シャアはそれをライバルとの決着をつけるための大義名分に用いた理由に察しがついていた。同時に、出自が隠遁生活を許さない事に同情していた。
「彼は……なんで、あんな事を」
「地球への贖罪というが……実際は地球の環境を自ら破壊する大罪を犯すだけだというのに。ジオニストは過激な事しかせんからな。」
この時代になると、ジオニズムは子供時代のび太たちにその偽善を糾弾されたり、ザビ家が連邦寄りのスペースノイドをすべて粛清するつもりであった事の判明により、加速度的に求心力が低下。火星の『オールズモビル』がいなくなれば、自然消滅を待つだけの思想に堕ちている。これはザンスカールのマリア主義、コスモ・バビロニアの『コスモ貴族主義』も同じだ。もっとも、スペースノイドが元来、信仰していたのは『エレズム』だが。地球の恒星間国家化が進展した事で、容易く破壊されるスペースコロニー群の地位が落ちるのは、なんとも皮肉な現象であった。
「この世界の人々を巻き込みたくはないが、敵の提督……情報によれば、『ナグモー』というらしいが……はバルゼーと違い、慎重派らしい。思うようにはいかんだろう」
地球連邦軍は最善は尽くすが、思うような展開にはならないだろうというのが、山南の予測であった。実際、過去の土星決戦でも、火炎直撃砲にしてやられているし、敵艦隊は火炎直撃砲を当然ながら有しているだろう。地球連邦はそれに耐えうる装甲をやっと開発できたが、直撃した場合、着弾点の温度は7万度に達する。これは地球の殆どの金属が融解する温度である。
「火炎直撃砲。あの超兵器の威力は凄まじい。なんとしても、事前に止めなくてはな……その下準備のためには、戦艦部隊から護衛を引き剥がさんとならん。いわば、第二のフェーベ航空決戦だ」
「提督はあの戦いに?」
「その時は緊急事態だったから、本隊の戦艦を率いていたが、状況は逐一、確認させていた。我々はその状況を再現するのだ」
地球連邦の生存する古参のパイロットらはフェーベ航空戦を生存した手練れである。デザリアム戦役では航空戦はあまり生起しなかったが、白色彗星帝国戦役はフェーベ航空戦が戦史に残るレベルで有名だ。
「今日はこれを持って行きたまえ。白色彗星戦役の記録映像だ。ドラえもんくんに編集させたものだ」
「ありがとうございます。では……」
「うむ。幸運を祈る。交渉は粘り強く、だよ。少佐」
「ええ…」
大人のぞみはその映像データを支給されたタブレットに移し、直ちにしゅんらんを離艦。再度の交渉に向かった。映像に、地球連邦軍の衛星軌道の防衛網の無力化後、火の海になるアフリカ大陸や月面、古代進の最終決戦時のズォーダー大帝への啖呵が収録されている。
(別の私は映像に入ってる古代艦長の啖呵に共感したらしいけど……)
大人のぞみは環境の違いもあり、地球連邦軍が白色彗星帝国戦役の際に、『矢尽き刀折れ…』な有様になってまで抵抗し続けた意義を計りかねていたが、古代進が相打ちを覚悟する気持ちは分からなくはない。別の自分がりんの記憶喪失で狂いかけた記憶と経験は自分達に起こったら…?という恐怖があるからだ。愛する母星を守るために、愛のために死ぬ覚悟。21世紀の平和な時代に生きる自分たちにはなく、軍人である自分の同位体にはあるもの。大人のぞみは軍人として生きる『別の自分』との違いを考えながら、コスモタイガーで地球に再度降下。居場所を特定している2020年代のプリキュアである後輩に交渉をすることにした。
―― 地球 『おいしーなタウン』
大人のぞみが翌年、あるいはその次の年に赴任を打診されている学園の系列校がある『おいしーなタウン』。農林水産省が国土交通省などと組んで、2004年(なぎさとほのかのデビューの年)から再開発をした新興の街であった。大人のぞみは現役時代の末期かつ、オールスターズ戦の最末期、実はこの時代に召喚され、この時代のプリキュアと面識を持っていた。
「えーと、あの子達とは大人の姿で会うのは初めてだよねぇ。私ってわかるかなぁ……」
のぞみAもそうであるように、初期世代のプリキュアは1990年代の生まれになる。妖精たちの繋がりのためか、同年代の姿で会うことが多かったため、お互いの生年月日は意識していなかった。だが、真面目に考えてみると、2020年代のプリキュア達は生年月日が2000年代後半にさしかかる。つまり、自分らが戦っている頃は赤ん坊であった計算になる。
「向こうの私も……似た気持ちになったのかなぁ。1993年生まれだもんなぁ……」
2022年にアラサーであることに気づき、大いに落ち込む大人のぞみ。服装は昨日に寝入る前に着ていたスーツ姿。年齢相応の仕事着だ。
「時間は午後二時四十五分くらい。中学の授業が終わる頃か…。たしか、このへんには……ゆいちゃんの実家が……」
現役時代に召喚された時の記憶を必死に呼び起こし、十分ほどで後輩戦士であった『和実ゆい/キュアプレシャス』の実家であり、レストラン『なごみ亭』についた。幸い、無銭飲食は避けられそうなので、安堵した大人のぞみは『その時』に、ゆいがおすすめだと言っていたメニューを注文する。
「そういえば、昨日からろくに食べてなかったんだった~!!ごはんが進む~!」
プリキュアに戻った反動か、現役時代と同様に食欲が戻った大人のぞみは追加注文でご飯の大盛りを注文、とにかくかっこんだ。
「ごはんにしょうゆをぶっかけてっと……」
大人のぞみは大学時代、仕送りを使い込んだ時は、学食でこうするのがお決まりであった。あまり褒められたことではないが、空腹を紛らわす手段の一つであった。
「大学時代を思い出すなぁ。仕送り使い込んだ時は…。おっと、かれんさんに会ったら、怒られそうだから、味噌汁でも頼むかな」
意外に若い内の食生活はズボラだったらしい大人のぞみ。一通り食べ終わったところで、ゆい(キュアプレシャス。この時代の現役戦士)が帰宅する。店は繁盛しており、ゆいも荷物を部屋に置くと、店番に加わる。
(あ、ゆいちゃんだ。あたしにとっては……13年ぶりくらいだけど、あの子にとっては数ヶ月もしてないはず……)
なんとも言えない寂しさがよぎる大人のぞみ。
「お下げしましょうか?」
「お、お願いします。(いきなり来たーーーー!?)
「あれ……」
「ど、どうしたの?」
「す、すみません。数週間前に友だちになった子になんだか似てて」
「そ、そうなんだ。(それ、私だってーーー!!)」
平静を装いつつも、内心は心臓がバクバクの大人のぞみ。この時代に14歳(中二)のゆいはのぞみより一回り以上は若いということになる。
「ごはんにしょうゆは良くないと思うよ、のぞみちゃん」
「いやぁ、学生時代の癖でさ……!?ち、ちょっとーーー!?」
「わかるって。マゼンタ色の髪の人、あまり見ないし、食べ方が前と変わってないもん」
「えーーー!?」
なんと、ゆいは一目で目の前の成人女性が先輩戦士である、のぞみであると分かった。定食屋の娘だから、客の食いっぷりを記憶するのだと、ゆいはいう。
「そこーーー!?もっと別のとこで判別してよぉ」
「だって、前の時はあたしくらいの年格好だったから」
「うぅ……」
「その姿だと、30くらい?」
「あのね~!まだ20代だよー!20代!!アラサーだけど…」
と、どっちが子供かわからない会話を繰り広げる二人。
「本当はそのくらいの歳なんだ」
「なんか、騙したみたいでゴメンね。あたし、この時代だと大人なんだ」
バツの悪い思いの大人のぞみ。店のカウンターに飾られている写真の一つに、若かりし頃の自分がゆいと写るものがあるからでもある。
「あの後、連絡取ろうとしたけど、とっくに学校を卒業してるって、学園に言われた時は驚いたんだよ?それも、あたしが赤ん坊の時に」
「わたしも、状況は逆な体験して、バツの悪い思いしたよ。それで就職してから、この街の事を調べたんだ」
「のぞみちゃん、プリキュアには?」
「昨日に現役復帰した……とだけ言っとくよ。説明がややこしいんだ、ものすごく」
と、会話が弾んでいくが。
「あ!」
空気が淀むような感覚が走る。『デリシャスパーティ』の敵である『怪盗ブンドル団』が行動を起こしたのである。
「あたし達の敵が出てきたんだ!のぞみちゃん、戦える?」
「なが~いブランクがあるけどね!すみませんー、お金は置いていきますから、お勘定済ませておいてくださーい!」
と、念のために代金を置いていった上で、ブンドル団との戦闘に臨む大人のぞみ。結果として、この時の戦いが彼女の現役復帰後の初陣となるのである。この時、既にキュアスパイシー、キュアヤムヤム、キュアフィナーレが仲間に加わっていたが、三人はそれそれの事情で、この時には不在であったため、今すぐに現場へ駆けつけられるのは、この二人のみであった。
「でも、なんでまた、この街に?」
「話せば長くなるから、後で!今は…!」
別次元の自分の高い身体能力を受け継いだおかげか、育ちざかりの年頃であり、体力おばけ気味のゆいについていけている大人のぞみ。この事は内心でものすごく喜んでいたりする。
(おお~!息が上がんない~!さっすが、鍛えてる世界線のわたし!!偉いぞ~!)
本来は体力が往時より落ち気味であったため、軍人として体を鍛え上げた世界線の体力を得たことは嬉しい誤算である。ゆいのほうはほんの数週間前に会ったプリキュア仲間が再会してみたら、『自分より一回り以上は歳を重ねていた』のだから、本当はゆいのほうが驚いていいはずだ。だが、ゆいは前と変わらず、自分に接してくれている。それが大人のぞみには嬉しかった。
「ありがとう、ゆいちゃん。昔と同じように、さ」
「あたしにとっては、ほんの数週間前の事だもん。それに、いくら年取っても、のぞみちゃんはのぞみちゃんでしょ?」
「~~!」
感極まる大人のぞみ。
「ど、どうしたの?」
「この歳になると、涙腺が緩くなるんだよ…」
走りながら目頭を押さえ、嬉し涙を流す大人のぞみ。いくつかの後輩チームから参戦を断わられてしまった(そのチームなりの引退後の事情があったからだが)ことに少なからず、ショックを受けていたからか、ゆいの優しさとまっすぐさにジーンと来たらしい。
「いくよ、のぞみちゃん!」
「YES!」
この相づちが、ゆいとのぞみの共同戦線の開始のゴングであった。そして、怪盗ブンドル団にとってはこれ以上ないほどの恐怖の始まりでもあった。しかし、彼らブンドル団も露知らぬ、遥かな宇宙空間では、白色彗星帝国の残存艦隊が(母国と本隊の破滅を知らぬままに)その圧倒的陣容で太陽系に迫り、それを迎え撃つべく地球連邦軍(アース)と『地球連邦防衛軍』(ガイア)の連合艦隊が続々と到着し、太陽系防衛ラインを緊急で構築しつつあるのだった。