ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五百二十九話「白色彗星帝国残党の急襲」

――のぞみAが何故、空間支配能力を欲するのか?それは『2020年代に、全プリキュアが敗北する』世界線が生じてしまった事に恐怖したからであった。黒江は『なら、空間を支配しろ!』と発破をかけ、のぞみAは以後、その方向性で修行に励んでいく。そんな中。――

 

「俺だ」

 

「どうしたんです?そっちは戦闘中じゃ?」

 

「山南提督から言付けがあってな。別の世界線のお前を士たちが調査してたら、白色彗星帝国の残党と艦隊決戦になるそうだ」

 

「えぇ!?」

 

「それで、その世界線のお前に卑弥呼の魂がこっちの世界線の全能力と記憶を与えたんだそうだ」

 

「ひ、卑弥呼って……あの邪馬台国の?」

 

「そうだ、邪馬台国の卑弥呼だ。魂だけで、その世界の地球の危機を知らせたんだ。たぶん、草薙流古武術も使えるぞ」

 

「全能力をインストールさせたんですか?」

 

「そう言っていたそうだ。記憶もな。そのほうが円滑に連邦軍と連携が取れるし、少佐としてのお前の権限も使えるからな。それと、その世界線のプリキュア達は加齢や心境の変化でかなりが戦いから離れているようで、お前の要請を断るしかなかったチームもかなりいるから、こっちから戦力を割くことが要請された。遠征が済んだら、数人をその世界線に派遣する。その世界線のお前が戦うようだから、お前はそのまま待機してろ。あ、一つ言っとく。その世界線だと、お前、28歳くらいになっとるってよ」

 

「あ、アラサーじゃないですかぁ!?」

 

「そんくらいの時期になってたんだろう?時間軸が」

 

黒江は戦闘の合間にのぞみAに連絡を入れたわけだが、大人のぞみに戦う力をもたらしたようなものである。

 

「向こうは戦う理由が明確にあるから、覚悟が最初からガン決まりだが、お前からすると、耳が痛いかもな」

 

「ええ。たぶん、教師だろうから、守るものも最初からあるだろうし。あたしは戦いの中で見つけるしかなかったですし」

 

のぞみAは転生後、実のところ、戦う理由を見出しきれていなかった。デザリアム戦役で私怨に走ってしまったのも否めないため、最初から戦う理由を持って、プリキュアに戻った『別の自分』が羨ましいようだ。

 

「お前の戦う理由は戦いで見つけるしかない。向こうは『平和な暮らし』の中での非日常と言えるが、扶桑の軍人に転生したお前は、戦うしかないからな。まったく、因果な商売だぜ」

 

「……」

 

「お前は前世が前世なだけに、危うさがあるからな。デザリアムの時のあのザマを考えてみろ。向こうのお前に顔向けできるか?」

 

「……すみません」

 

「気持ちはわかるが、りんも言ってただろ?怖がるなって」

 

「…はい」

 

のぞみAの精神状態が本当に安定したのは、デザリアム戦役の最中である。前世が前世なためか、自分の大事なものが壊されたり、侮辱された場合、感情的になりやすくなっており、デザリアム戦役では自習室(反省室の言い換え)の常習犯であった。逆説的には、前世で『耐えられないほど』に悲劇に見舞われてきた事の証明であった。

 

「向こうのお前に顔向けできるように精進しろ。会う機会があるだろうし、お前の身分を貸し出すんだから、向こうに胸を張れるように励め。俺が言えるのは、ここまでだ。ブライアンもその事を見抜いたから、お前に体を貸したんだしな」

 

「わかってます」

 

「しばらくはブライアンとして生活してみろ。それが俺からのお前への課題だ。そろそろ突入だから、切るぞ」

 

「ご武運を」

 

「ああ。お前も息災でな」

 

黒江からそう言われ、しばらくはナリタブライアンとして過ごすことになったのぞみA。別の自分に顔向けできるようになれ。それが黒江からの課題であり、発破であった。大人のぞみがゆいと会い、ブンドル団との戦闘に入る時、のぞみAはナリタブライアンとして生活していたのである。

 

「のぞみちゃん、レースに出るの?」

 

「先輩からそう言いつけられたからね。やるしかないよ」

 

マヤノトップガンに聞かれ、そう答える。スピカのトレーナーから『体慣らしに、OPグレードのレースに出走してみるか?』とのメールが来た。精神的に入れ替わっているため、ルドルフも心配している。

 

「んじゃ、本格的に併せてみる?テイオーちゃんもいることだし。番組の撮影日まで、まだあるし~」

 

マヤノトップガンの提案により、ウマ娘になりきるには、走り込む必要があるという理屈から、町内一周のランニングをすることになったのぞみA。ウマ娘の身体能力面の全盛期は人より遥かに短い傾向がある。前世がサラブレッドであるからだろうか。史実の事を知ってしまえば、それに抗いたくなる。ゴルシはそのクチだ。

 

「でも、マヤノちゃん。どうして、勝負服がフライトジャケットなの?」

 

「マヤのパパ、パイロットなんだ。それとね。子供の頃、あの映画見たんだ」

 

「あー~なるほど」

 

マヤノトップガンの父はパイロットらしく、その縁でフライトジャケットなどに興味を持ち、飛行機関連にうるさい。ブライアンと競り合えるレベルに成長した現在では、彼女自身に憧れるウマ娘も多いが、レースを離れれば、飛行機好きの天真爛漫な少女である。

 

「子供の頃、パパによく、飛行機のおもちゃとか買ってもらってたんだ。マヤはウマ娘だから、スピード感は走って、味わうんだけどね」

 

忘れられがちだが、マヤノトップガンは史実では、サクラローレル、マーベラスサンデーと共に古馬三強を謳われたほどの名馬であった。ウマ娘としても、ブライアン世代が陰りを見せ、ターフを去り始めた時期の三強と称されるほどの天才だ。のぞみAは本格的に走るにつれ、ブライアンの肉体のバランス感覚やパワーの差(なんと、ブライアンの肉体のパワーはキュアドリーム時ののぞみを上回るほど)に戸惑う羽目となった。

 

「おわっ!すごいパワー……加減間違えると、歩道を踏み抜いちゃいそうだ……」

 

「ブライアンさん、全盛期はターフ踏み抜いてたから。オグリさんもそうだって聞いたよ」

 

「うへぇ……」

 

ブライアンは怪我を無意識レベルで恐れるようになった事で、全盛期のパフォーマンスを出せなくなっていたが、その怪我が医学的に完治した上、筋肉量なども全盛期のそれに戻っている状態なので、下手な現役真っ盛りのウマ娘の数倍のパワーを出せる。それを短期間に馴染ませるのは、のぞみには無理難題に近い。言うなら、普通自動車しか運転してこなかった若者に、カリカリにチューンアップしたマッスルカーをいきなり運転させるようなものである。

 

「どう?これがあたし達がいつも体験してるスピードだよ~!」

 

「これが…!」

 

自分の足でここまでの速度は出したことはない。黒江達や自分は異能込みで出しているが、それ抜きで出せることは、ウマ娘が走る事に運動能力を特化させた種族である事の証明である。速度は自動車と並走できる領域で、現役時代であれば、プリキュア化していても到底無理な速さであった。もっとも、G1のトップ級のウマ娘である事を考えるべきだが。

 

「ブライアンさん、全盛期は差し戦法だったんだけど、足に負担がかかっててね。それで股関節炎になっちゃったんだよ」

 

「差し?」

 

「足を溜めて、直線で追い抜く戦法。見栄えいいけど、足に負担がかかるんだ」

 

マヤノは意外と知的な一面がある。ブライアンが怪我をした後の心境を敏感に感じ取っていたため、ブライアンに発破をかけたかったが、ブライアンは強情っぱりなところがあり、それが原因で、個人トレーナーとの関係がうまくいかなくなってしまい、マヤノが口出しするどころではなくなってしまった。

 

「ブライアンさんは後半にリミッターを外して、一気にまくる戦法だったから、全盛期の頃はすごい着差で勝ってたけど、怪我でそれができなくなったって気づいた時……見ちゃったんだ。泣いてるのを」

 

ブライアンはトレーナーが去ってしまったのが追い打ちとなり、ついには引退勧告寸前の有様であった。世間が見放していく中、ブライアンを庇い続けた姉のハヤヒデが怪我をしてしまい、レースから距離を置くことになると、ブライアンは拠り所を失い、内心は誰かに助けを求めていたが、口では強がりを言う自身に自己嫌悪を覚えるようになり、八方ふさがりになりかけた。それに手を差し伸べたウマ娘がゴールドシップであり、オグリキャップであった。

 

「その頃からかな?オグリさんに慰めてもらうのが増えたの。」

 

「どういうつながり?」

 

「多分、怪物の渾名持ちだったつながりじゃないかな」

 

と、マヤノは推測したのだが、実際はオグリキャップはタマモの歴史改変に付き合った際、自身の引退レースに幼少の頃のブライアンが来ていて、その頃から慕っていたからである。歴史改変の副産物であったため、オグリも表ざたにはしていない。つまり、史実でテイオーがルドルフに憧れるきっかけになったのと、ほぼ同じようなことを、ブライアンは体験していたのだ。その日、ハヤヒデは居合わせていなかった。母親の手伝いがあったからだ。その当時は現在が嘘のように臆病で、引っ込み思案であったブライアンにとって、前走で無惨な有様であっても、有終の美を飾ってみせたオグリはヒーローであった。ブライアンが怪我の後も現役にこだわっていたのは、オグリの起こした奇跡をその場で見た者としての意地であったのかもしれない。

 

「オグリさん、今じゃ、前の会長さん(ルドルフのこと)に真っ向から意見言える、数少ない人だから、意外に後輩から慕われてるんだ。会長さんを呼び捨てできるし」

 

ルドルフは自身が見込んだ者に限るが、後輩に呼び捨てされても許すという寛大さを持つ。オグリとタマモは一時代を築けるレベルの実力者であるから当然なのだが、世代が互いに近いというのもポイントであった。

 

「なるほど」

 

「マヤ達の界隈じゃ、親が実績のあるウマ娘だと苦労するんだよね、子供が。キングちゃんはまさにそれだったし」

 

キングヘイローの不幸は『親が天下無双級の実績のウマ娘であった』事であろうとは、同期や先輩達の一致した見解であった。捜索の進展はというと、なんとか絞れてきたが、キングヘイロー自身が黄金世代と謳われた世代のウマ娘であるため、捕縛に失敗したという。理由はウマ娘という種族の薬物への耐性の高さであるという。

 

「どうなったの」

 

「空港に向かってるところを見つけて、3つの組織の連合チームが捕縛しようとしたけど、キングちゃん、麻酔薬や睡眠薬に強いらしくて」

 

「効かなかったの?」

 

「そうらしいよ。メジロ家のチームには元競争ウマ娘もいたけど、キングちゃんはG1級だよ?」

 

「あとちょっとまで迫ったけど、逃げられたって事?」

 

「家の財力でチャーター便を呼んでたみたい。チャーター便は荷物チェックはあまりやらないからね。どこかの自動車メーカーの元社長が高飛びした時からは厳しくなったらしいんだけど、日本だと。キングちゃんいたの、外国だからねー…」

 

「なるほど」

 

「どこに向かったかは掴んだみたいだから、ラモーヌさんに協力してもらうみたいだよ」

 

「メジロラモーヌ?あの三冠の?」

 

「うん。会長さんと同世代だけど、とても学生に見えないんだ」

 

と、妖艶な風貌から、学生に見えない!としばしばネタにされるのがメジロラモーヌ。史実での三冠牝馬である。メジロの至宝と称されるが、ドラえもんの接触した世界線では、天皇賞至上主義な祖母に反発し、一時は荒れていたという。(荒れていた言動はこの時期には平常に戻ったという)そのため、最近は学園に通学していなかったらしく、キングヘイロー捕獲の切り札として召喚され、仕事についたとの事。

 

「今はそんくらいかなぁ。わかってる事」

 

「なるほどね~」

 

「のぞみちゃんのほーは?」

 

「あたし?別の世界線の自分にその内、会うことになったよ。それまでに自分を鍛え直しておけって。向こうは明確に戦う理由があるけど、あたしは流されて、ここまで来ちゃったようなもんだしなぁ」

 

「理由なんて、そのうち見つかるよ。マヤだってそうだったもん」

 

マヤノトップガンはブライアンやマーベラスサンデー、サクラローレルと切磋琢磨する事でレースを走る理由を見出していった。そのため、転生からというものの、状況に流されるほうが多かったのぞみAの自虐的な物言いが気になり、『併せ』を口実に、話を聞いてみたのである。どうやら、明確に戦う理由のある別次元の自分が羨ましいようである。

 

「向こうは教え子や仲間を戦禍から守るっていう目的もあるからね。あたしは状況に流されて、軍人を続けてるところあるし、前の戦いじゃ、みんなや先輩たちに迷惑かけたしさ…」

 

「でも、プリキュア戦士として、周りからチヤホヤされたいって気持ちもあったんでしょ?」

 

「それは否定しないよ。前世じゃ、娘に罵倒されたからね。実の子供に自分の存在を否定されるってのは……。だから、英雄として扱われることに、気持ちよさがあったんだ」

 

まったくの第三者であるためか、マヤノトップガンに本音をぶちまけるのぞみA(肉体はナリタブライアン)。第三者のほうが本音を言える事もあるのだ。

 

「それで、りんちゃんが記憶喪失になって……」

 

「うん。りんちゃんがいたから、自分がいた時代より何十年も昔の世界でも……あたしでいられたんだ。たとえ、出身世界が違っても、ね」

 

のぞみは正気でいられた理由を、りんの存在のおかげだと断言する。プリキュアとしては周囲を引っ張るのぞみであったが、転生当初の時点では甘えられる相手がりんしかおらず、りんも出身世界が違うのを負い目としつつも、のぞみを精神面で支えていた。りんへの依存心が強まってしまった事が『デザリアム戦役での醜態』に繋がったというのは、この頃には自覚していた。故に、自分を見放さずに向き合ってくれた黒江たちに真に心を開くようになったというわけだ。

 

「だから、前の戦いで……りんちゃんが記憶喪失になったって聞かされた時は頭が真っ白になって……。口じゃ戦士らしいこと言っても、本当は怖かった。自分でも、自分が何をやってるのか…。だから、先輩たちから見放されたと思った。だけど……」

 

のぞみAは前世が前世なだけに、必死に自分を取繕おうとしていた。だが、そんな『イツワリノスガタ』がデザリアム戦役で取り払われた結果、真の姿が曝け出された。黒江を真に慕うようになったのは、そんな自分のヒステリーを真っ向から受け止めるため、自分もわざと自習室に入って口論をし、最後には殴り合ったという出来事を経てのことだ。

 

「嬉しかったよ。あたしを一個人として見てくれているってことが。錦ちゃんの代わりとしてでなくて、さ」

 

「それで、殴り合いしたの?」

 

「売り言葉に買い言葉って奴だよ。だけど、なんだか、すっきりした気持ちだった。それからかな。『この人の下でなら、命を賭けれる』って思ったの」

 

のぞみAは自分が前世で人たらしであったがため、『される方に回る』という事を学ぶ機会に恵まれなかった。それもある種の不幸であろう。

 

「前世じゃ、今の旦那と結婚できなかったから、それもネガティブになっちゃった原因かもしれない」

 

「あー……。他には?」

 

「中学校の教師になったことかな…。」

 

大人のぞみは小学校の教師になっていたが、のぞみAは前世で中学校の教師であった。小学校は部活があまり活発ではない(学校によってはある程度)ので、業務も比較的に楽であるが、中学校になると、部活がある。その上、授業時間が長く、職員会議や研修その他の業務もあるため、遅くなる事はザラ。さらに、若い教師ほど運動部の顧問をやらされるなど、責任だけ取らされるという問題もあった。のぞみAはその負の側面のために、幸せをつかめなかった。つまり、大人の自分の人生を反転させたような人生だったという。

 

「転生先で転職しようと思ったのは、時代的にのんびりできるかなって思ったのもあるんだ。1945年の旧学制下の頃だし。実際はご覧の有様だけど」

 

結局、扶桑の教育制度周りも現代日本寄りに改定されていったため、確実に自由時間が確保できる軍人のほうが気楽に生活できるというのも、扶桑人から問題視されている。もっとも、扶桑の教師は日本よりだいぶホワイトな職場だが。

 

「なんか大変だったんだね」

 

「うん。まぁ、向こうのあたしには幸せになってほしいよ、あたしの分も、ね」

 

のぞみAは前世で不幸だった分を現世で取り戻そうとしている。軍人である以上、戦いは避けられないが、夫婦生活を満喫できる分、前世より遥かにマシ。そう考えていた。確実に勝っている面は一つある。それは大人の自分はアラサーの肉体年齢であるので、色々と気にし始める年頃だろう事。自分は現役時代に近い10代の肉体年齢を保っているので、素で無茶が効くことだろう。30代になると、色々と変化が表れ始め、無理が効かなくなる。それは自分の実体験でもある。

 

「教師生活だと、結構飲むからなぁ。向こうのあたしの肝臓が心配だよぉ」

 

のぞみAは錦の酒に強い体質を引き継いだために酒豪になるが、現在はパイロットの職業柄、控えている。しかし、大人の自分は女子会で『しょっちゅう飲んでいる』というので、肝臓の数値が心配になったらしい。

 

「会ったら、それ言ったら?」

 

「うん、そうする」

 

(とはいえ、プリキュアになれば、肉体は一時的に全盛期の状態に戻るので、内臓の数値の心配は無かったりする)

 

「向こうは現役じゃなくなってるんだよなぁ。どうやって、カンを取り戻すつもりだろう?」

 

色々と気になるらしい、のぞみA。とはいえ、(卑弥呼によるブーストはあれど)大人のぞみもやはり『戦闘の天才』というべき才能があり、10年単位のブランクが有るのにも関わらず、後輩のキュアプレシャスと共闘しようとしていたりする。それもある種の才能と言えよう。それが縁で、キュアプレシャスがのぞみAらの戦線に加わるのだが、それは後の話。そして、大人のぞみは大人のぞみで、のぞみAの持つ能力があまりに強大すぎ、逆に向上している身体能力で感覚がむしろ狂ってしまい、慣れるのに四苦八苦する羽目となったという。お互いに苦労が多い立場であるが、戦士であるが故の宿命が戦いに誘ったのは共通していた、二人の夢原のぞみ。お互いの存在を認識していても、面と向かっての面識はない。片方は修行、もう片方は地球を白色彗星帝国から守るために、戦士に戻るという違いはあれど、プリキュアであったという事実が戦いに誘ったと言うべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

――地球連邦軍は白色彗星帝国残党との一大決戦に備え、続々と艦隊を集結させていく。アンドロメダ級(アース)が率いる第一艦隊、主力戦艦で固められた第二艦隊。戦闘空母とヤマト型で構成される第三艦隊…。波動エンジン艦を主体にした編成であった。残党であるとはいえ、破滅ミサイルや火炎直撃砲を持つ強力な艦隊であり、最悪の場合、都市の数個は焦土になるのは覚悟せねばならない。そのため、その世界の大国の人工衛星とネットワークによる核ミサイル網は予め無力化(誤作動で核ミサイルがばら撒かれる危険があるため)させておく必要もあった。(ただし、戦闘機による空戦であれば、21世紀の戦闘機でも、ある程度は戦えるが)そのため、工作艦が地球へ送り込まれていた。地球連邦軍はアースとガイアの連合艦隊として初の実戦となる。無人艦でとにかく戦力を削るため、開幕からいきなりの拡散波動砲の予定である――

 

 

「無人艦でどこまで削れるか、だな。有人艦は温存しておきたい」

 

無人艦は使い捨てだが、拡散波動砲を撃ちまくるための一種のリモコン兵器として割り切っての運用となる。そのため、拡散波動砲で奇襲を仕掛けた隙に、空母機動部隊を空母戦で撃滅する。地球連邦軍は無人艦を盾に使い、火炎直撃砲を封じた上で、艦隊決戦を仕掛けるという戦術のため、無人艦を数千単位で消費する覚悟であった。また、敵は地球本土を情け容赦なく焼き払うつもりである。日本は特に、地球連邦の首都と見做されているので、念入りにやられる危険がある。(大人のぞみが危惧したのは、そのことであった)

 

「夢原少佐は上手くいくでしょうか」

 

「おそらくは必ずしも成功はせんだろう。保険はかけておいたが、彼女に共感してくれる者もいるだろうが、大半はうんとは言わんだろう。地球の運命がかかった戦いはもう起きないだろうと考えているだろうし、加齢で多くの子らが資格を喪失している。勢ぞろいはないだろうな」

 

山南の読み通り、大人のぞみは『おいしーなタウン』にいく前、いくつかの後輩チームのもとを尋ねたが、力を失っている事などを理由に、参戦を断られてしまっている。仕方がないが、往時から相当の年数が経ち、力を維持していたチームは意外と少ないのだ。更に状況を理解した上で、共闘を確約してくれたチームはごく少数。多くのプリキュアは個人単位の参戦になる見込みである。

 

「彼女のように、地球を守るために、あらゆる手段を尽くす選択を選べる者は少ないだろう。ましてや、別世界の軍隊同士の戦争に加担するなど、いい顔をせん者は多いだろう。彼女に共感してくれるのは、苦楽を共にした世代のみだろうな……」

 

と、悲観的な彼だが。元・プリキュア戦士らが『地球が真に危機である事』を突きつけられることがその翌日に起こってしまうのである。白色彗星帝国の高速中型空母の部隊が『ナグモー』提督の指示で地球圏に奇襲攻撃を敢行したのである。目につくものをすべて破壊せよという指令による攻撃であった。ワープによる完全な奇襲攻撃であり、宇宙戦艦への索敵網がない21世紀の世界には不意打ちであった。

 

 

――おいしーなタウン――

 

ブンドル団を撃退し、一息入れようとしたキュアドリームとキュアプレシャスだったが……。

 

「あ、あれは……カブトガニ!?」

 

「いや、あれは敵の爆撃機だよ!伏せて!!」

 

二人の眼前で街に急降下爆撃をしかけてきた『デスバテーター』艦爆。機体下部に携行している爆弾が一斉に投下され、街を破壊していく。

 

「あ、反転してくるよ!」

 

「機銃掃射する気だ!!走って!!」

 

「ひ、ふえええ~!?」

 

パルスレーザーによる掃射が襲いかかる。二人は必死に走って逃げるが、デスバテーターは執拗に追ってくる。

 

 

「自衛隊は何してるのー!?こういうの、あたしらの相手じゃないってー!?」

 

「大方、発進する前に滑走路がやられてると思うよ」

 

「え~!?」

 

「自衛隊って、なかなか動けないもの」

 

ドリームは同位体の記憶から、こういう場合に自衛隊は真っ先に攻撃されるのがお約束である事、政治家たちの判断は常に後手後手である事をプレシャスに教える。

 

「あ、また来るよ!?」

 

「プレシャス、飛んで!」

 

「う、うん!?」

 

「いいから!」

 

ドリームは指示を飛ばし、なおかつ敵機が自分の近くに位置した瞬間。同位体がよく用いる攻撃『サンダーブレーク』を放った。プレシャスを飛ばしたのは、サンダーブレークを上手く誘導する自信がなかったからだ。

 

「別の私、ゴメンッ!技、借りるよ!!……『サンダーブレーク!!』」

 

プリキュア本来の技ではないが、侵略者相手に慈悲は必要ない。指を天高く掲げ、指先で雷を受け、そのまま敵へ誘導する。威力はグレートマジンガーのそれと同等以上。つまり、スーパーロボット級の破壊力だ。

 

「わひゃぁ!?」」

 

思わず、キュアプレシャスは両耳を手で塞ぐ。サンダーブレークが直撃した際には轟音を発するからだ。さしものデスバテーターもたまらずに粉砕されるわけだが、耳が痛くなる攻撃だ。

 

「耳がいたぁ~いよぉ……」

 

「今は我慢して!あ…!」

 

自分たちに気づいた一機が攻撃をかけようとしたが、上方からのパルスレーザーで粉砕された。そして、その主が飛来する。

 

「あのコスモタイガー……もしかして、玲!?」

 

デスバテーターを粉砕したコスモタイガーの機番から、デザリアム戦役でも共闘した『山本玲』大尉の乗機だと気づいた。かの山本明中佐(二階級特進)の従妹であり、デザリアム戦役後は戦闘空母『天城』に配属されたというが…。

 

「あの戦闘機のパイロットと知り合いなの?」

 

「前に、一緒に戦ったことのある若い子。その時は駆け出しだったけどね」

 

同位体の記憶を頼りに、そういうドリーム。実際に共闘した記憶があるので、そういうしかない。なお、玲はかの山本明のただ一人の生き残った血縁者であるため、あっちこっちに勧誘されていたりする。とはいえ、実はのぞみはAが転生した際の素体の年齢が17、玲は初任のダイアナザーデイの時点で19歳。実は年上であるが、階級が上であったことなどから、玲は(当然ながら)敬語で接している。

 

「この隙に、公園にいくよ!」

 

「え、なんで!?」

 

「そこに乗ってきた飛行機を隠してあるんだ」

 

「えーーー!?」

 

プレシャスを伴い、急いで公園に行き、覆いを外し、機体のキャノピーを開放し、乗り込む。

 

「プレシャス、プリキュアの変身は解かないほうがいいよ。こいつで一気に衛星軌道上に行くから」

 

「……え?」

 

「シートベルトした?」

 

「う、うん……。でも、なんで、戦闘機の操縦できるの!?」

 

「それは後で説明するから!無線を入れてっと……」

 

無線を入れ、飛行中の山本に状況を問い合わせる。

 

「玲、あたしだよ!状況を説明して!」

 

「少佐ですか?敵が奇襲攻撃を仕掛けたのです。ワープを用いて」

 

「ワープ!?そんな、シリウスから太陽系は一発で行ける距離じゃ…!?」

 

「敵は短距離ワープを繰り返したものと推測されます。既に日本上空には敵の遊撃部隊が展開中。ヤマトを旗艦とする我が機動部隊が急派されたのです」

 

「離陸したら、どこへ?」

 

「ヤマトに着艦してください。我が母艦は緊急発進で甲板が空いていませんから」

 

「ヤマトはどこに?」

 

「あなたがおられる街の上空に来ています。通信で着艦許可をお取りください」

 

「了解」

 

ドリームは同位体の記憶を得たのを拠り所に、ヤマトに着艦許可を求めたが。

 

「ドリーム1、こちらは古代進だ。済まないが、本艦はただいま、艦載機の発着が激しく、着艦の許可を出せない」

 

「そんな殺生なー!」

 

「すまん。なにぶん緊急事態なので、予備機も全て出しとるんだが、予備機の計器が故障を起こしているんだ。復旧に時間がかかるから、本艦に帯同する『飛鳥』に着艦してくれ。飛鳥には私から通告しておく」

 

「玲、離陸するから、上空援護を」

 

「了解」

 

「ど、ドリーム。すっごーい。英語で話してたー!」

 

「仕事で必要だったんだ、こういうの。航空無線って、普通は英語でやりとりするから。まぁ、緊急だから、途中から日本語だったけど」

 

『嘘はついていない』が、本来は国語教師であるので、本人としては、なんとも言えないらしい。

 

「さて、いくよ!」

 

コスモタイガーのエンジンが吠え、一気に離陸する。ものの数秒でヤマト率いる『65護衛隊』(ヤマトが旗艦の空母機動部隊。編成は大まかには、フェーベ航空戦での臨時機動部隊を継承している)のいる高度に到達し、飛鳥へのアプローチに入る。

 

 

 

 

――補給母艦『飛鳥』。ガトランティス戦役を生き残った、建造中の戦闘空母(第一世代型)を補給主体の艦に変更した艦である。艦長はヤマトの乗務経験者が務めている(アースでは、ヤマト乗員の異動はめったにないため)という。ドリームとプレシャスを乗せたコスモタイガーは古代(アース)の指示により、同艦に着艦した――

 

「ふう…。着艦は神経使うよ」

 

「そうなの?」

 

「空中だと揺れないけど、上手くやらないと、機体壊すからね」

 

機体から降り、甲板員からドリンクをもらいつつ、ドリームはぶっちゃる。(本当は記憶が頼りなので、ヒヤヒヤであったが、操縦技能が継承されているため、上手くできた)

 

「あ、あれ!!」

 

「そう。宇宙戦艦ヤマト。あたし達を助けに来てくれたんだよ」

 

「あ、あれって本物だよね…??」

 

「当たり前だよ」

 

甲板から見える『宇宙戦艦ヤマト』。アース基準であるので、本当に戦艦大和の転生した姿である。特徴的な艦容が飛鳥の甲板からよく見える。

 

機体から降り、甲板員からドリンクをもらいつつ、ドリームはぶっちゃる。(本当は記憶が頼りなので、ヒヤヒヤであったが、操縦技能が継承されているため、上手くできた)

 

「同期に着艦訓練でミスしまくって、空母搭乗資格取り逃したの居たよ。あたしは一発でできたけど」

 

「あれ。こういう仕事、やった事あるの?」

 

「うん。前にね。すごくややこしいんだけど、一応ね」

 

「お父さんが『おじいちゃんが若い頃にハマってた』って言ってたなー……」

 

「あ、そっか、プレシャスの世代だと、そうなるんだね」

 

「宇宙戦艦ヤマトって、50年も前のテレビアニメだから、あたしはあまり。お父さんが見たとか聞いた程度で…」

 

「あたしは親父が見てた世代。もっとも、元祖は見てないって言ってたけどね」

 

世代の相違がここではっきり生じる。ゆいにとって、宇宙戦艦ヤマトは『半世紀前の懐かしのアニメ』でしかないが、のぞみは『自分の父親が子供の頃に夢中だったSFアニメ』である。

 

「そうか、プレシャスはあたしが現役真っ盛りの時に生まれた計算なんだ。来るなぁ……」

 

プレシャスが戦う『2022年』から、彼女の年齢分を引くと、プリキュア5の現役最終年の『2008年』になることに気づき、がっくりと肩を落とすドリーム。その当時に14歳であったので、2022年にはアラサーになっている計算だからだ。

 

「その……な、なんかゴメン。……すみません、おにぎりあります?」

 

甲板員にいきなりの質問がそれであったが、甲板員達は大笑い。

 

「おにぎりなら、艦の食堂でいくらでも食べられるよ~」

 

と、教えてくれた。これにプレシャスは目を輝かせる。

 

「お、おぉ~!?」

 

「若いっていいなぁ~…」

 

と、自分の本来の年齢を自覚させられ、遠い目のドリーム。

 

「俺達からすれば、少佐も充分に若いですよ~」

 

「あ、ありがとう…」

 

と、甲板員たちから励まされ、妙な気分だが、とにかく、プリキュアになっているため、ゆいとの年齢差は(プリキュアであれば)ないのである。それに気づき、自分を奮い立たせ、自分もプレシャスを追いかけるのであった。

 

「待ってよ、プレシャス~!迷うって~!このフネ、290mくらいあるんだよ~!」

 

ドリームは同位体の記憶から、ドレッドノート級宇宙戦艦をストレッチした戦闘空母と補給母艦のスペックを頭に入れているが、プレシャスはそんな事は露知らぬ有様。それに気づき、顔面蒼白になるドリーム。

 

「ねぇ、あたしの後輩、見なかった!?」

 

「その子なら、あっちの方に行きましたよ」

 

「ひ~!戦闘用の区間だ~!追っかけないと!」

 

と、通りがかりの兵士が教えてくれるが、行った方角がとんでもない方角であった。なんと、格納庫や物資個を含む重要区間であった。迷ったら、二日は確実に出てこれないほどに入り組んだ構造の区間である。

 

「あ、少佐、これを。携帯食です!」

 

「ありがとー!」

 

兵士が携帯食(戦闘中にも食べられる軽食)を渡してくれ、それを受け取り、口に入れる。ドリームはこうして、顔面蒼白で必死に駆けずり回る羽目になったのだが。当のプレシャスはというと……。

 

「……あれ?」

 

キョトンと辺りを見回すと、いかつい兵士達がいびきをかいて寝ていた。そこは同乗の空間騎兵隊の待機所であった。空間騎兵隊の猛者たちはいずれもバンカラな風貌の男達であり、まさに男の空間。そこに(プリキュアとはいえ)紛れ込んでしまったのだ。

 

(ひぇえええ~!!何ここ~!)

 

と、さすがの彼女もこの光景には目を回す。あまりの衝撃だったからだ。そして、気を失ってしまい、バタンと倒れてしまう。

 

「ん?プリキュアが倒れてるぜ」

 

「夢原少佐が連れてきた後輩か?迷ったんだな」

 

「隊長に報告入れるか?」

 

「少佐が今ごろ、顔面蒼白で駆けずり回っとるだろうからな。早くしてやれ。少佐が二日は出てこれんぞ。迎えに行ってやれ」

 

その頃、ドリームは息を切らしながら、必死にプレシャスを探し回っていたのであるが、実際はすぐに空間騎兵隊が待機所に向かうために使うダストシュートに落っこちてしまったのである。ドリームはそんな事は知らないため、船中を必死に探し回る羽目になってしまい、空間騎兵隊の副官とその護衛が迎えに行き、見つけた時には半泣きであったという。また、彼らの会話から、のぞみ(キュアドリーム)はデザリアム戦役での功績により、地球連邦の先鋒たる空間騎兵隊からも一目置かれていることがわかる。こうして、二人は空間騎兵隊のおかげで再会でき、おおよそ四時間後には、彼らに案内され、無事に食堂にたどり着けた。

 

「……」

 

艦内を必死に走り回った上、自責の念があったからか、半泣き状態のキュアドリーム。それをなだめすかすキュアプレシャス。どちらが年上か分からなくなるが、状況を考えれば、仕方がない事だった。

 

「まぁまぁ、これで一件落着じゃないですか、少佐。飯を食いましょうよ」

 

背中をポンと叩き、声をかける空間騎兵隊の隊員。ドリームの目の前には見事な焼きおにぎりが陣取っている。空間騎兵隊の連中が注文してくれた一品だ。

 

「俺たちの奢りです。たんまり食ってください」

 

「……」

 

ぐずりつつも、空間騎兵隊の隊員の厚意に甘え、おにぎりを口にすると。

 

「ん…!!うっま~!!」

 

と、思わず笑みが溢れるほどの旨さであった。外征艦隊の食料品製造設備は常に最新のものが供給され、材料も質のいいものが艦内で生産されている。当然の事だった、

 

 

「俺たちの間じゃ、味噌つけるのがトレンドですけど、ここはオーソドックスにしょうゆだれベースにしました」

 

「味噌をつけるんですか?」

 

「俺たちは君たちの知るところの海兵隊に相当する部隊だから、高カロリー食が必要なんだ、プリキュアのお嬢ちゃん」

 

「そうなんだ~……」

 

「軍隊の切り込み隊なんだ、この人たちは。だから、軍の中でも特別に強い人たちが回されるんだ」

 

プレシャスの質問に彼らが答え、空間騎兵隊がどういう組織かをドリームが補足する。素でプリキュアと渡り合えそうな男たちだが、話してみると、豪放磊落が服を着て歩くと言っていいバンカラな集団。戦死した斉藤始がそうだったように。ダイアナザーデイでも、デザリアム戦役でも、大決戦でも、彼らは投入され、大勢の死傷者を出しつつも、敵対組織を恐れさせる精強な部隊であり、部署だ。

 

「あたしもずいぶん世話になったよ」

 

「少佐はデザリアム戦役で、月面方面軍の連中に揉まれたそうですね?」

 

「うん。あそこの騎兵に先輩の知り合いがいるから、デザリアムの時に問題起こした後、しばらく研修名目で送り込まれたんだ。あそこの連中、過激だったなぁ」

 

それは本当だ。のぞみAは武子に『問題起こした事は変わりないから、しばらく外で揉まれてらっしゃい』と言いつけられ、最前線の空間騎兵隊に『研修』に行かされたのである。月面方面軍の騎兵は荒くれ者揃いであり、あれこれと鍛え直された。空間騎兵隊なりの心遣いであった。連邦軍の慣習や軍規に馴染んだのは、この研修の成果である。

 

「あそこはベガ星連合やジオン残党とにらめっこしてる分、気質が荒いんですよ。ガミラスとの戦闘も経験した精鋭ですからねぇ。よく五体満足で帰れましたね」

 

「変身してたから。変身してなきゃ、包帯ぐるぐる巻きで戻る羽目になったかも」

 

プリキュア化していてさえも、そう言わしめる月面方面軍・空間騎兵隊。『鬼の月面騎兵』と評され、ジオン残党も恐れる練度を持つ騎兵隊。全・空間騎兵隊の中でも『プリキュアが泣き、仮面ライダーもうなる』と評判になったが、彼らの猛訓練と激戦の賜物であり、艦に同乗している部隊をヒヨッコ扱いできるのは、月面騎兵のみともされる。

 

「あそこの訓練を潜り抜けたら、何も怖くないよ。いや、本当」

 

「昔のアメリカ軍の特殊部隊以上の訓練をしてますからねぇ」

 

歴戦の勇士であるドリームがそう明言するような魔窟があるのか。プレシャスは興味津々であった。

 

「もし、あそこに研修にいく子らが出てきたら、こう言ってくださいよ、少佐。月面鬼兵隊って」

 

どっと笑いに包まれる食堂。一般兵士も将校も同意であったからだ。

 

 

「黒江閣下は知ってますが、彼処は『S』の流れを汲んでるからなぁ。訓練で死人が出ないのが不思議とか言われてたな」

 

「本当?」

 

「ええ。閣下の自衛隊での副官の子孫があそこの隊長なんですよ」

 

「そうか、それで先輩たち……」

 

と、『行かされた』理由に合点がいくドリーム。してやられたといった感じだが、黒江たちが自分をそこまで見込んでくれていたことでもあるので、ちょっと誇らしい気持ちになる。自分自身の経験と記憶ではないが、自分自身は教師生活の中で、上司に恵まれたとは言えないためか、軍隊という特殊な場でとはいえ、自分のことを思ってくれる上役に恵まれたのぞみAを羨ましく思うのだった。

 

(羨ましいな……そこまでしてくれる上役がいて)

 

大人のぞみは人生で成功したように見えつつ、理想と現実の間で苦しみ、のぞみAは現実に翻弄されつつも、自分の戦う理由を探す。ベクトルは違えど、それぞれの理由で悩む二人の夢原のぞみ。大人のぞみはAが当たり前だと認識する『職場の温かさ』が羨ましく、のぞみAはウマ娘たちに相談する事で、自分の弱さをさらけ出す。彼女らの悩みは『身内』では解決できない類のもの。故に、第三者が必要であったのだ。柵が一切絡むことのない…。

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