――地球の危機。それが否応なしに認知されたのは、『事が起こった』後であった。白色彗星帝国の爆撃部隊は世界各地に出没し、各軍事基地を中心に無差別破壊。特に日本は念入りに爆撃されようとしたが、駆けつけた宇宙戦艦ヤマトらがそれを阻止した――
――宇宙戦艦ヤマト――
「各艦の飛行隊長及び、艦長クラスに集まってもらったのは他でもない。彗星帝国の空母機動部隊の第二陣が接近している。この世界に被害が生じてしまったのは遺憾だが、起こってしまったことは仕方ない。第二陣を我々は全力で撃滅する」
白色彗星帝国の襲撃は世界各地に及んだ。主要国の各軍事基地は執拗な攻撃により、その少なからずが壊滅。特に、日本の自衛隊は後手後手の対応により、陸自は最も被害が出ていた。空自は空中退避、あるいは現地判断で対空フル装備で戦闘を行い、撃退できた基地とそうでない基地で明暗が分かれた。海自は宇宙戦艦相手でも奮闘し、いくつかの護衛艦が大破に追い込まれたものの、空母を撃沈する殊勲を挙げていた。
「今頃、国連が対応を協議しているだろうが、疑心暗鬼に陥った国々同士では、まともな決議も出せん。我々は現地では名目上、国連軍として行動する。国連軍は連邦軍の前身だから、嘘はついていない事になる」
爆撃はおいしーなタウンのみならず、大人になったプリキュア5の面々が居住する街にも及んだ。幸い、街への爆撃は仮面ライダーディケイド、キュアピーチ、キュアアクア(大人かれんが再覚醒した)、ドラえもんが戦い、阻止に成功したが、かれん(キュアアクア)が勤務する病院に爆撃がされ、かなりの負傷者が生じてしまっている。その模様は偶然、現地のTV局に中継されており、図らずしも、プリキュア戦士への期待が否応なしに高まっていた。(ただし、現地にいるであろう、大人になったラブは大いに困惑しただろうが……)
「各艦は次元レーダーによる索敵を怠るな。現地には病院船が派遣され、救援物資を供給している。現地の各国政府、特に日本政府は『国連』という錦の御旗を掲げていれば、無条件で物資を受け取る。君らも現地人とのやむき接触の際には、国連の関係者と振る舞うように」
と、古代からの通達がなされる。現地の報道では、キュアピーチとキュアアクアが防戦を行い、見事に未知の戦闘機と空挺部隊を撃退したことが大きく報じられており、特にキュアピーチは先陣を切っていたため、英雄扱いになっていた。これに困惑したのが、現地の世界にいる桃園ラブ本人であった。2022年では28歳(のぞみと同世代なため)ほど。職業はダンサー。参加した公演の打ち上げが終わり、自宅で寝ていたのだが、親友かつ幼馴染の蒼乃美希からの電話で飛び起き、テレビを付けてみると。
「え……、えぇぇーーーー!?」
思わず、テレビにかじりつく勢いで食い入る大人ラブ。世界各地を襲った脅威に立ち向かう『若かりし頃の自分』(律儀に、通っていた学校の制服着用であった)が大写しになり、しかも、プリキュアに変身し、キュアアクアと共に立ち向かう光景がバッチリ写っていた。
「嘘ーーーー!?わ、若い時の……あたし!?」
「あんた、いつから分身したの?」
「できるわけないでしょー!?しかも、キュアエンジェルになってるし!かれんさんと一緒に戦ってるし!?こっちが聞きたいって!!変身もできなくなって、随分なんだよ!?」
「あんた、かれんさんの連絡先はわかる?」
「知らないよ~!昔、現役だった頃に連絡先を聞いとくんだったーーー!ドッペルゲンガーに会った気分だよぉ……」
大人ラブは参加している公演のため、地方に遠征しており、東京にはどうしても戻れない。だが、ニュースでは、プリキュア5の戦士たちが活動を再開し、脅威に立ち向かった事も報じられており、おいしーなタウンでは、後輩のプリキュアと共に、ドリームが戦う姿が目撃されたことがテロップ付きで説明されていた。
「のぞみたちの連絡先、現役時代に聞いとくんだったわね…。まさか、活動を再開してたなんて」
プリキュア5も『ある時』を境に力を失ったはず。蒼乃美希はそう記憶していた。だが、何らかの理由で力を取り戻し、今回の事態に際し、個人単位で動いたのだろうか。それにしては、ドリームとアクアだけというのは合点がいかない。極初期の二チーム以外のプリキュアは(自分たち『フレッシュ!』がそうであったように)集団戦が前提のはずだからだ。
「こっちでも調べてみるわ。ブッキーなら、医者繋がりで連絡先を知ってるかもしれないから」
「お願い。のぞみちゃん達、なんで……」
「……あたし達が必要にされる事態が起こり始めた。そう考えるしかなさそうね。そうでなければ、『5』チームが復活することは……」
「それに、もう一人のあんたの謎を解かないと」
「そうだよね。キュアエンジェルにまでなれるなんて……」
別の自分の苛烈な戦闘を見させられる事になった、大人ラブ。敵兵が自爆攻撃まで躊躇なく行い、そのバーサーカーぶりや無関係の人間の被害をまったく顧みない残虐非道に怒りを顕にするアクアと自分(キュアピーチ)の姿が大写しになり、敵兵を(やむなく)殲滅する様子が流れる。アクアは現役時代から医療従事者を目指していたため、無抵抗の者を殺される事にもっとも憤るはずだ。その証拠に『プリキュア・サファイアアロー』を乱射する際に、怒りに燃える表情を見せている。
「敵は軍隊みたいだけど……どこの国……いや、どこの世界の…?」
「わからない……。だけど、ドリーム達が活動を再開して、敵と戦ってる。これだけは確かよ」
美希も受話器越しに戸惑いを隠せないようである。更に。
――自衛隊機が撮影したものですが、上空に宇宙戦艦ヤマトらしきものが――
「……美希、テレビ見てる?」
「ええ……何かの冗談じゃないわよね…?」
TVの映像にはバッチリ映るは、宇宙戦艦ヤマト。彼女達(フレッシュ!プリキュア)の世代の者なら『懐かしのアニメ』という範疇であるが、辛うじて知っている存在。その実物らしきものが現れ、プリキュア達を援護していたと報じられる。ますます混乱する二人であった。
――宇宙戦艦ヤマト。ガイアとアースとでそれぞれ存在するが、地球連邦のシンボルになっており、なおかつ白色彗星帝国と因縁を持つ『元祖ヤマト』こと、アース・ヤマトが戦列に加わっていた。かの戦艦大和の躯を基本ベースにした事で有名だが、当初は移民船であったため、サイズはベース艦の倍以上に拡大されていた。無論、完成時より改装が繰り返されたためだが、完成時の時点でブラックタイガーを40機以上積んでいたため、巷に出回るデータは欺瞞であることがわかる――
――補給母艦『飛鳥』の甲板上――
「ドリーム、みんなには?」
「あなたの仲間達には、ヤマトの人たちが使者に行ったよ。あたしも、他のチームにいくつかあたってみたけど、いくつかは断られたよ。力を失ってるからねぇ……」
この時代、プリキュア達の複数が戦士としては引退状態である事から、ドリームの要請といえど、断られるのはままあった。その兼ね合い上、いくつかは『別の世界に集まっている現役時代のプリキュア達』で補うしかないというのは、山南からも言われている事だ。今回の敵は怪物ではない。侵略しか頭にない宇宙人なのだ。そのため、断られることはある程度は想定内だと、司令部より通達されている。
「ドリームはどうするの?」
「戦うさ。相手は話し合いの余地がない宇宙人だもの。根本から考えが相容れない、ね。普段は教師してるから、教え子が戦禍に倒れるのは嫌だし、話し合いの余地のない宇宙人に地球を好き勝手されるわけにはいかないからね」
プレシャスにそう明言する。とはいえ、プレシャスからすれば、謎である。教師であることを明確にしていながら、軍隊の階級である『少佐』と呼ばれているからだ。これは別の世界にいる自分の身分を使っているのが理由である。軍隊関連の知識に疎いプレシャスでも、佐官は原則的に職業軍人となった者しか到達できない階級(戦前の日本陸軍は違うが)であることは知っている。なにかの理由があるのだろう。
「今度の敵はなんなの?」
「別の世界のアンドロメダ銀河に覇を唱えてた帝国の生き残り。あたしも宇宙戦艦ヤマトにある資料でしか見たことないんだけど……」
白色彗星帝国の事を解説するドリーム。(Aの記憶と宇宙戦艦ヤマトに残されている資料がソースだが)白色彗星帝国の由来は、また別の大帝国(イルミダス)を放逐された優秀な科学者と彼を信奉する一団が人工的に住む場所を作ったのが始まりだという。それが年月を経て、星間国家に成長し、22世紀の終わりにはアンドロメダ銀河を征服するまでに成長し、銀河系に魔手を伸ばし、ちょうど銀河系に進出を目論んだガミラスが倒された直後であった事、銀河系を統制する銀河連邦が20世紀後期の戦乱で衰退していた事により、侵攻を決意。銀河連邦の父祖の地と言われる『地球』を狙ったのだと。折しも、地球は戦乱期に入り、内乱続きであった事、宇宙戦艦ヤマトやマクロスなどの登場により、宇宙開拓時代の幕が開かれようとしていた事などの要因で白色彗星帝国の軍事力自体は撃滅したものの、帝国本体の圧倒的な力の前に降伏やむなしとなりかけていたのを、宇宙戦艦ヤマトの戦闘班長(現・艦長代理)の古代進の一言で徹底抗戦となった事。
『どうだ、わかっただろう。宇宙の絶対者は唯一人、この全能なる私なのだ!命あるものはその血の一滴まで私のものだ。宇宙は全て我が意志のままにある。私が宇宙の法だ、宇宙の秩序だ。よって当然、地球もこの私のものだ。ムハハハハ、アハハハハハハ!!』
傲慢不遜という言葉では言い表わせられない、ズォーダー大帝の豪語。更に続く。
「愛だ。愛ゆえに人は死に、星は壊れ、宇宙は滅びる。そう。お前の艦もガミラスへしてきたことだ。古代進。お前はこれまでに多くの大事なものを失ってきた。だから人一倍恐れている。愛する者が、死にゆくことを!そうだろう?フハハ……」
ズォーダー大帝も、ヤマトの自己犠牲精神に敬意を持っており、古代を名指しして呼んだ。彼の美学に適ったのだろう。
「ヤマトよ、よく見るがいい。地球がこの私の裁きを受け、木っ端微塵になる様をな……」
と、地球の表面(大陸)が炎に包まれていく。もはや、この時点で地球連邦軍の手駒は尽きており、為す術もなかった。ドリームも記録映像に残るズォーダー大帝の高笑いと自信、それを裏付ける超巨大戦艦(日本列島に匹敵する)の威容に息を呑んだと話す。
「……それでどうなったの…!?」
「その後……」
――『お前にはまだ武器が残されているではないか、戦うための武器が。命だよ。お前にはまだ命が残っているじゃないか。なぁ古代。人間の命だけが、邪悪な暴力に立ち向かえる最後の武器なのだ。素手でどうやって勝てる?死んでしまって何になる?誰もがそう考えるだろう。わしもそう思う。なぁ古代。男はそういう時でも立ち向かっていかねばならない時もある。そうしてこそ初めて不可能が可能になってくるのだよ。古代。お前はまだ生きている。生きているじゃないか。ヤマトの命を生かすのは、お前の使命なんだ。命ある限り戦え!わかるな、古代……』――
それは追い詰められた古代進が聞いた幻聴だったのか、何かかしらの手段で沖田十三が本当にそう言ったのか。定かではない。だが、地球連邦軍が必死に残存戦力をかき集めていた、まさにその時のできごとであったという。
『世の中には、現実の世界に生きて、熱い血潮の通う幸せを作り出すものもいなければならん。君たちは、生き抜いて地球へ帰ってくれ。そして俺たちの戦いを、永遠に語り継ぎ、明日の素晴らしい地球を作ってくれ。生き残ることは、時として死を選ぶより辛いこともある。だが、命ある限り、生きて、生きて、生き抜くこともまた、人間の道じゃないのか?』
古代はこの時、死を決意していたのだろうと、島大介以下のヤマト古参クルーは述べている。そして。地球連邦の人間たちが徹底抗戦を決意した伝説の名文句。
『違うっ!!断じて違う!!宇宙は母なのだ。そこで生まれた生命は、全て平等でなければならない!それが宇宙の真理であり、宇宙の愛だ!!お前は間違っている!それでは、宇宙の自由と平和を消してしまうものなのだ!俺たちは戦う!断固として戦うッ!!』
どうして、そこまで言えるのか。彼女も疑問に思った。だが、地球が滅ぼされ、生き残った地球人を奴隷にするつもりである白色彗星帝国の独裁者に屈するのなら、闘って、地球人の名誉と地球への愛を貫く方がいいということは理解できた。苦楽を共にしてきたクルー達の8割方を、自分の命で死地に追い込んだ責任を取る意味合いもあったのだろう。ドリームはそう考えていた。平和な時代に生きてきた自分たちにはわからないものが彼らにあるにしろ、もし、同じ状況になれば、自分もそうする。自分を犠牲にしてでも、守らなくてはならないもの。大人になり、誰かを守る立場にある身になった今なら、古代の決意を理解できる。現役時代なら、躍起になって自己犠牲を否定していただろうが、誰かが犠牲になる事も、時には必要なことだと理解できる。
「……そんな事が別の世界で?」
「一例だけど、何があるか、予測なんてできないって事だよ」
大人のぞみは同位体から引き継いだ記憶により、力を持った者の宿命を理解し、別の自分がそうしたように、『プリキュアとして戦い、地球人類を守り続ける』事を既に選んでいた。
「別の世界とはいえ……地球が危機に晒されて、何かから地球を守るために大勢の血が流されてるのを知っちゃうと……いたたまれない気持ちになるよ。だから、あたしは『戻った』事を嬉しく思った。歳食ったからかもしれないけどね、こんな気持ちになるのは」
自分が本来は『直に30代を迎える』年齢に達している事(本人曰く、お肌の曲がり角とのこと)を自覚しているため、肉体的に全盛期に戻っても、精神面は『年代相応になっている面もあれば、若い頃と変わらない面もある』状態。プリキュアに戻り、若い頃の熱さを取り戻せた事を受け入れているので、心の何処かで、プリキュアである事に誇りを感じていたのだろう。
「みんなは応えてくれるかな?」
「無理強いはしないさ。それもその子達なりの生き方だからね」
キュアプレシャスはドリームの言動から、どことなく『危うさ』を感じたらしく、現役かつ若い自分が先陣を切らなくては……と感じ、このまま、白色彗星帝国との戦いに身を投じる。更に、後で『戦線に加わる』事を確約するのであった。
――『オトナプリキュアの世界』で生活する『プリキュア経験者』達は少なくとも、70人を超える。だが、多くは既に力を失い、市井で普通の生活を送っている。オールスターズ華やかりし時代は既に終わり、多くは普通の生活に戻っている。だが、平和が仮初めであったのを示すかのように、白色彗星帝国は各地で残虐行為を働いた。TVでは、日本各地の被害、ろくに応戦できずに壊滅した陸自のいくつかの基地、奮戦した空自と海自、そして、プリキュア達の戦いが繰り返し報道されていた。国連は緊急で一致団結を呼びかけたが、目に見えての侵略にも一枚岩になれぬ有様を晒すのみであった。相手が宇宙戦艦を有し、地球のいかなる場所も自由に爆撃できる事は誰の目にも明らかであったため、軍事力で対抗するという結論に達した国々は多いが、日本のように、優柔不断ぶりを露呈し、プリキュアに国家が期待を寄せるという事態であった。『宇宙戦艦を造れるような科学力を持つ敵に地球の核兵器は有用なのか?』という疑問も生じ、世界的な防衛体制の構築すらままならない有様であった。そのため、日本はなし崩し的にプリキュア達に重荷を背負わす事となった。ただし、地球連邦軍が国連の名義で要請したため、空自の防空体制は戦時体制のものに移行できた。政治家たちも『爆撃がもう一回起これば、政権が転覆する』と認識していたからだ。結局、なし崩し的に世界的な戦時体制に移行せざるを得なくなった現地世界。だが、ドラえもん世界がそうであるように、実態は政府の優柔不断と右往左往する国民がいるだけであった。日本はそれが顕著であった。だが、目に見える脅威の存在は『元・プリキュア』達に危機感を認識させるのに役立った。フレッシュプリキュアが最初に動き出し、次にハピネスチャージプリキュア、その次にドキドキプリキュアといった具合である。海外に滞在中であれば、日本への帰国の途についていく。また、地球そのものの危機なためか、次元を超えて危機の知らせが届いた異世界出身の元・プリキュア達も続々と日本へ向かった。銀河連邦も、宇宙刑事ギャバン、宇宙刑事シャイダー、時空戦士スピルバンを直ちに急派。共同戦線を張ると連邦軍に通告。そして、ナグモー提督が派遣した第二陣が宇宙戦艦ヤマト率いる艦隊と接触したのは、ドリームが一通り話し終えたあたりであった。
――総員戦闘配置!!艦載機隊は直ちに発進せよ、繰り返す!直ちに――
放送が流れ、艦隊の動きが慌ただしくなる。
「あ、ドリーム!」
「プレシャスは艦の中に入ってて!あたしは仕事をしてくる!」
ドリームは甲板員に理由を言い、整備が完了していた手近な機体に乗り込む。それはリ・ガズィ・カスタムであった。BWS形態で発艦態勢にあったが、パイロットの決まっていない予備機であった。
「別のあたし、こんなのを扱ってるのか……。記憶と経験がインストールされてなきゃ、さっぱりだなぁ……えーと。こういう時は……。夢原のぞみ、リ・ガズィ・カスタムで出ます!」
同位体がそうするように、お約束の台詞を管制官向けに言い、発艦する。リ・ガズィ・カスタムはデザリアム戦役の後からは(初期のZプラス系列の老朽化もあって)正式な量産ラインに載せられ、この時期にはかなりが配備されていた。リゼルの性能では色々な不満が生じたり、Zプラス系の初期製造機の老朽化という現実問題から、エースや隊長専用機という制約はあれど、制式採用の運びとなった。ドリーム(大人のぞみ)が乗るように促されたように、准ガンダムタイプである故、元のリ・ガズィよりコストは増しているが、エースや隊長格用のチューニングが『吊るし』の時点で施されている分、性能はより高次元である。
「ほぇ……なんか、拓海が好きそうな、SFアニメみたいな光景だなぁ」
飛行甲板から離れ、ある程度上がった階層のスロープから飛行甲板の様子を観察するキュアプレシャス。次々と艦載機がカタパルトで打ち出されていくわけだが、それが多種多様であり、中には背中に大砲を一門装備し、フライトユニットを背中に持つ機体(ドラグーン)の姿もあった。
「なんで、あんなに色々あるんだろう?」
それは飛鳥の任務の都合もあり、多種多様な機体を積む必要があったからである。さらに言えば、消耗戦が予想された故に、各地の倉庫から引っ張り出した機体もかなりあったからだ。21世紀の兵器運用ドクトリンとはかなり異なり、一年戦争の影響でもあるが、プレシャスは知る由もない。電子戦機も複数の種類があるのは、複数の方法による電子戦の必要があるからである。電子戦機は味方を支援するため、艦の周りや編隊の後方で支援を担当する。艦のレーダーの補助のためだ。完全な空母ではないが、飛鳥の航空艤装はかなりのものであるため、かつてのペガサス級よりも運用可能機に幅がある。それが戦闘空母ベースの艦の強みであった。
「あたしもできることをしなくっちゃ…!」
プレシャスは艦内に戻り、プリキュアの姿のままで厨房に立つ。ドリームがパイロットとして戦うのなら、帰ってきて、ごはんを食べる場所を守る必要もある。そう考えたからだ。これは奇しくも、別の世界で戦うキュアホイップと同じ結論でもあった。(空中戦では、飛行能力がない自分の出番はないことをわかっているからでもある)元々、定食屋の娘であるので、宇宙戦艦の時代になっても、料理の基本は変わらないことは安心らしく、手際は良かった。実家で全てのジャンルの料理の手ほどきを受けていたためもあり、プレシャスは厨房で華麗に料理を仕上げていく。
「プリキュアのお嬢ちゃん、戦闘糧食を作ってやりな」
「戦闘糧食?」
「携帯食だよ。あまり大きなおにぎりにはしないでおくれよ」
料理長の指示に従い、おにぎりを作るキュアプレシャス。戦闘糧食は各部署や空間騎兵隊に配られるもので、パイロット用の携帯食とは別に支給される。パイロットはドラえもんの技術協力により、『チューインガム』ならぬ『チューインピザ』が支給されるようになった。見かけは20世紀からあるお菓子のようだが、味はピザのそれで、適度に腹を膨れさせるという効果を持つ。ただし、まだ、実験段階なため、多くの場合はいなり寿司や海苔巻きをコックピットで食べる者が多い。日本艦では特にそうで、大人のぞみもその例に漏れず、海苔巻きを安定飛行に移ってから、口にしている。
「あの、パイロットの人たちは何を食べてるんですか?」
「コックピットでいなり寿司や海苔巻きだよ。ゼロ戦の時代からそうさ。飲み物も持ち込みが許されてるよ」
MSの時代になっても、第二次世界大戦以来の鉄則は変わらない。特に可変MSなどのパイロットはいなり寿司よりも、海苔巻きを好むという。
「のぞみさん(ゆいも、TPOは弁えている)もそうなんでしょうか」
「あの子は和モノはめったに食わないって、同期から聞いたな。ハンバーガーだとか?」
「大丈夫なんですか?」
「パイロットはカロリーを使うからね。高カロリー食を好むのさ」
大人のぞみの場合は教職(小学校の国語教師)であるため、意外にカロリーを消費する。30代が目前に控える年齢になっても、10代後半時の体形を維持できていたのは、元々が大食いであり、太りにくい体質であったからだ。
「可変機乗りは増加食に羊羹のリクエスト多いな。それも一竿要求されてる。作れるかい」
「はいっ。これでも、家が定食屋なもので。死んだ祖母から教わった事があるんです」
キュアプレシャスは自身の特性と実家の境遇などが作用し、デザート系も心得があった。和物中心であるが、宇宙戦艦時代の調理器具は迅速に羊羹すらも製造できるため、ゆいには助けになった。
「君の先輩のキュアホイップは洋物中心だが、君は和物なんだな」
「ホイップ先輩は本職のパティシエですから。あたしは普通の定食屋なので……」
と、謙遜する。とは言え、キュアプレシャスも和洋中のいずれにも対応できる高いスキルがある。よく、おにぎりを食べているため、和物中心だと認識されるが、実際は洋食も作れるのだ。
「ん?なんですか、このパイロット厳禁メニューって?」
「それはパイロットに出すと縁起が悪い料理の一覧だよ。新米とかに注意喚起するためのものだ」
地球連邦軍では、長年の戦乱で『食べたら凶事が起こる』メニューが都市伝説化して語られており、VF乗り達が『パインステーキ』を避けたり、『パインサラダ』を整備班が避けるなど、昔の日本の風習の名残りである事から『験担ぎ』と言われている類のものだ。その一方で、日本艦では、カツ丼が宇宙戦艦の時代にも、一種の『験担ぎ』でパイロットたちに出されるなどの慣習も残っている。
「宇宙戦艦の時代でも、そういう風習、残ってるんですね?」
「うむ。一種の験担ぎみたいなもんんさ。昔は塩や砂糖を自給自足できなかったから、補給線を断たれた状態で備蓄がなくなると、大変なことになったもんだ」
「そうですよね。宇宙戦艦で自給自足は…」
「外宇宙にいくようになってからは、ほとんど心配はなくなったがね。結構使うもんだよ」
艦内工場が当たり前になると、その手の物資は自給自足が可能になったが、軍艦というのはかなりの食料品を一日で消費する。そのため、遠征時には多めに積み込んでおくののである。
「あらよっと」
「わぁ。久しぶりに見ました、そういうチャーハンの作り方」
「5年ほど前まで、有名な中華料理店でコックをしていたんだが、戦争のご時世、連邦軍も人手不足だからね。令状が来る前に、炊事班で志願したんだ」
「え、中華料理店ですか?」
「宇宙時代の一大チェーンでね。私はその内の大きな近隣の移民星の店で働いていたんだ」
彼が以前に働いていた中華料理の店は『娘々』。23世紀現在では、中華料理の味を伝える、地球圏最大の中華料理関連のチェーンに成長している。彼はエデン支店長の経験者であった。
「宇宙時代でもあるんですね」
「あるさ。支店長にまでいったんだが、戦争が激しい時代、令状が来ることも多いんだ。白色彗星帝国との戦争で、コックも人手不足に陥ったからね」
彼からコックも戦争の影響を受ける事、軍隊でも、食事を作ることは自分たちの誇りであるのだと述べる。
「あたし……頑張ります!」
鼻息が荒くなるキュアプレシャス。食事を司るプリキュアであるからだろう。
「よし、まずは基本からだな」
キュアプレシャスは彼との交流で『ごはんを作る事への誇り』を自覚していくわけである。彼女がごはんづくりに燃え始めた頃、先輩であるキュアドリームはというと。
「全機、攻撃開始!空母を潰せ!!」
こちらは少佐である立場上、成り行きで飛行大隊の指揮を任され、ぶっつけ本番で攻撃隊の指揮を取る羽目になった。幸い、同位体の記憶と経験が引き継がれているので、号令その他の問題はなかった。白色彗星帝国の艦艇特有の無砲身回転砲塔の猛攻を潜り抜け、敵艦に一撃を与える。空母への攻撃は実体弾が好まれる。誘爆を起こしやすいからだ。
「シールドのグレネードを……行けっ!!」
リ・ガズィ系統は巡航形態でシールドにグレネードを備え付ける。ビーム兵器だけでは、攻撃の選択肢が狭まるからだ。他のZ系統のウェーブライダーも主翼などにミサイルを携行している。高度なビームコーティングがされていても、実体弾に脆いのが、宇宙文明の宇宙戦艦のお約束のようなものであるからだ。ミサイルはコスモタイガーやブラックタイガーのものと同じ規格のもので、その威力は凄まじく、空母であれば、ガミラスの新鋭空母を一撃で大破せしめる。フェーベ航空戦の開幕を飾った攻撃でもある。
「ミサイルを撃ち尽くしたら、飛行甲板を狙え。一機も飛び出させるなよ!」
自身は実体弾を使い尽くすと、MS形態でエンジンノズルを狙い撃ったりし、一撃離脱に徹したのぞみ。MSの利点は艦橋に接近した後の選択肢が高いことだが、白色彗星帝国が相手だと、交渉の余地はない。艦橋にサーベルを突き立てたり、BWSのメイン・キャノンをメガランチャー代わりにするなど、リ・ガズィ・カスタム第二期生産タイプの能力をフルに発揮する。他にも、Z系の編隊が一撃離脱の要領で大型ミサイルを一斉に発射、護衛艦ごと複数の空母を轟沈させる戦果を上げる
「各分隊長は残弾を知らせ。帰りがけの駄賃だ。あと10隻は藻屑にしてやれ!」
本人も場の空気に乗せられたか、すっかり同位体と同様に戦場の指揮に慣れていた。
「少佐、司令部より入電。本隊は空母不足である。数隻は捕獲せよと」
「面倒な事を。トリモチランチャーを装備している機はあたしに続け。司令部からのお達しだ。二、三隻は持ち帰るぞ!」
と、高速中型空母は地球規格の艦載機なら、大型空母並の機数を載せられるため、地球連邦は発見次第、数隻は鹵獲を命じている。この決戦においても適応されるため、大人のぞみ率いる編隊は空母を鹵獲する難題に挑戦。艦長が自爆ボタンを押しそこねた艦に限るが、手に入れることに成功する。
『ロメオ8からコントロール、敵艦と接触事故、相手艦橋に衝突した物の損害軽微、艦橋壁面の強度極めて脆弱でマニピュレーターが刺さったので、トリモチを敵艦橋に打ち込んだところ、行動阻止に成功、各機に弾切れの場合は艦橋にに取り付いて内部にトリモチ打ち込めと指示頼む』
『了解』
Z系の編隊の一機から要請が入り、司令部もそれを承認。多くの艦がトリモチランチャーの脅威により、自爆装置の発動に失敗、6隻あまりが鹵獲され、駆逐艦に曳航されていく。新米のパイロットが接触事故を起こした事からの瓢箪から駒であった。のぞみは曳航作業の監督やら、捕虜になった人員のボディチェックなどの指揮で帰還が遅れ、帰れたのは、なんと、更に四時間後のことである。
――食堂に帰ってきたときには、プリキュア化しているにも関わず、完全に疲労困憊の有様であった。料理ができるまで、だらしなく寝ていたほどだった――
「まいった。これじゃ、変身を解けないよ」
「一気に来るから、辞めたほうがいいぞ。こっちの君と違って、実際の年齢が30近いのなら、プリキュア化を解いた時に一気に負荷が来て、翌朝は動けなくなって、医務室行きだよ」
「アラサーだからなぁ、実際は……ありがとうございます…」
「追加の羊羹だよ」
「わぁ~~!!いきででよがっだぁぁ~!!」
羊羹にかじりつき、幸せといった表情かつ、声に濁点つきまくりでたいあげるキュアドリーム。実際の年齢がプリキュア時からはかけ離れた『アラサー』であると、色々と肉体的な負荷を気にするようになるのだ。
「プリキュアのままで寝るといい。プリキュアの状態であれば、10代半ば相当の回復力だと聞いてるからね」
「そうします。風呂は入れないな……」
「その疲労で入ったら溺れるよ」
「はぁーい……」
大人のぞみはキュアドリームの状態を解かず、そのまま充てがわれた部屋に行き、ベットの目の前で力尽きる。プリキュア化していても、肉体と精神の双方の疲労には勝てなかったのである。翌朝、ゆいが起こしに行ったところ、学生時代の寝癖が出たのか、掛け布団が落っこちてきたのか、あられもない姿で寝こけているキュアドリームの姿を目の当たりにすることになった。ゆいはこの『疲労困憊の大人感ありあり』の先輩の姿に『社会人の苦労』を感じ、さっそく、滋養強壮効果のある食品を調べ始めるのだった。