ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第四百九十六話「キュアスカーレットとキュアエトワールと…」

――日本連邦の鬼気迫る戦いぶりは『魔女の世界』の各国を恐れさせた。日本義勇兵の特攻、自爆攻撃の実行などで恐慌状態に陥ったリベリオン魔女の部隊が虐殺や捕虜の虐待を行ってしまうなどの結果をもたらし、結局はリベリオンは自らの愚行で魔女の人口を減らすことになった。日本義勇兵は元々が『家族にも疎んじられているようなようヨボヨボ老人だったが、軍人としての死に場所を得られた』と喜ぶ者も多く、その効果は絶大。ダイ・アナザー・デイでの連合国の戦線を支える一助となった。彼らの奮戦は結果として、魔女たちに『戦争の現実』を突きつける形となったため、1945年当時の中堅層の年齢の魔女は精神的に耐えられずに軍を去っていくほうが多かった。その穴埋めに使われたのが、本来は後方で教官を務めているような高齢(19歳以上)の魔女たちであったため、事変後第一世代~第三世代の魔女の大半は世間に対し、一生下ろせない十字架を背負うことになった――

 

 

 

 

 

――扶桑はせっかく育ってきた『45年当時の中堅層』の多くが軍を集団で辞めていくことに頭を抱えた。その次の世代が育つのには十年単位の時間が必要だが、戦局が切迫していたこともあり、ドラえもんが持ち込んだ超テクノロジーにすがった。それを以て、軍に居残る『黄金世代の魔女』を復帰させていったわけである。武子は『親友への償い』もあり、この動きを容認し、ルーデルの説得により、64戦隊長の任についた。着任時は大尉であったが、異例の措置により、瞬く間に将官に昇進。ダイ・アナザー・デイを指揮し始める段階では准将の地位にあった。当時はエディタ・ノイマンの失脚、ガランドの『近い将来の退役』の表明で連合軍そのものがガタガタであった上、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが事もあろうに不祥事を起こしてしまい、連合国体制の崩壊も現実味を帯びてしまった時期であった。カールスラント中心の体制が加速度的・連鎖的に崩壊した連合軍は比較的に国力が健在な扶桑皇国を矢面に立たせ、カールスラントの代役に添えた。扶桑皇国の支援についた勢力のバックアップを欲したからである。それは大成功となったが、カールスラントの衰退で欧州に返り咲けると目論んでいた『ガリアのタカ派勢力』は日本連邦の台頭を疎んじ、ダイ・アナザー・デイの連合国の敗北を前提に動いていたが、日本連邦が諸勢力の支援でダイ・アナザー・デイを戦い抜くと、政治・軍事的地位の喪失ヘの強迫観念を持つようになり、『軍事的復興』を優先するあまり、それを諫めるペリーヌ・クロステルマンの暗殺を何度も企図したのだ――

 

 

 

 

 

――ペリーヌ・クロステルマンはその身に宿った別人格の持つ力と幸運により、暗殺の試みの悉くを跳ね除けた。1946年の厳冬頃に『しばらく静養する』のを名目に、扶桑に渡航。以後は散発的に『現地での慈善事業に性を出す』姿が報じられるのみとなった。しかし、実際にはその頃より『紅城トワ』として日本連邦に従軍し、太平洋戦争に参戦していた――

 

 

 

 

――紅城トワというのは便宜的な名で、本来は地球とは別世界の王女という身分を持つ。だが、転生後に複数の魂が混じり合う際、彼女が持っていた『プリキュアの力』の作用により、ペリーヌ・クロステルマンの内に眠る別人格の一つとして存在が保たれ、夢原のぞみの覚醒に伴って、連鎖的に彼女の人格も覚醒めた。更に別の人格になる英霊・モードレッドとも肉体を共有する事から、状況に応じて、お互いの持つ技能を使い合う事となり、紅城トワは(キュアスカーレットである事もあって)モードレッドの持っている宝具の本来のポテンシャルを発揮。キュアスカーレットとして『姫騎士』属性も得ていた――

 

 

 

 

――キュアエトワールがやってきた後は(プリキュアとしての世代の近さもあり)彼女の教育係となっていた。その際に、キュアドリームが体を他人に貸していることも伝えていた――

 

「いいんですか?体をそんな、ホイホイと」

 

「先方のたっての願いでしたし、私自身も『間借り』しているも同然の身ですので、それは今更かと」

 

「それはそうですけど、変身した状態で喫茶店というのは……」

 

「仕事着だと思えば、どうということはありませんわ。私たちは実質的に『プリキュアの変身が正装』ですのよ?」

 

「うーん……」

 

気恥ずかしいキュアエトワール。すっかり慣れて、コーヒーを優雅に飲むキュアスカーレット。

 

「前から聞こうと思ってたけど、みらいのところのはーちゃんが最初に?」

 

「ええ。あの子達のいた世界が滅ぼされた時、辛うじて、キュアフェリーチェのみは助け出されていたのですが、みらいたちが倒され、モフルンも彼女をかばって……。それで精神不安定に陥り、ショックが大きすぎたのか、プリキュアの変身が解けなくなっていたのです。野比氏のご実家にそれで世話になっていたそうです」

 

キュアスカーレットは事のあらましをエトワールに改めて教えた。キュアフェリーチェが精神的な落ち着きを取り戻すまでの経緯、更にはのび太の世界の日本と『魔女の世界』の扶桑皇国は軍への認識と扱いに(日本の政治家の少なからずは史実の戦争末期の惨禍、戦後の複数の在日米軍にまつわる事件の影響で反軍思想を持つ)大きな隔たりがあり、日本の政権与党も民主主義の建前上、上から抑えるのは不可能であるといいわけをするばかり。結局、現地が混乱するのを目のあたりにした大衆が自主的に手を引くのを待つしかないといい、扶桑に忍従を強いるという日本の左派の強権的振る舞いが収まるには、ドイツが強く『指導した』カールスラントの実質的な崩壊、転生後に軍にいたプリキュア達への非難が止むのは、キュアドリームの転職の失敗が政治問題として認知される必要があったと述べた。

 

「別の世界になんで、自分たちと同じ目に合わせようと?」

 

「日本の特殊な歴史が理由でしょう」

 

「歴史?」

 

「日本は元々、五大国の一角を占めるとまで言われたほどの大国であり、負けた相手が比較的に寛大なアメリカ合衆国だった事で、それまでの体制の存続が奇跡的に許された。それ故に、負けた事で戦前以上の繁栄を築いたという成功体験を絶対視するようになった。それ故に、『軍部と華族を失墜させる』ためには、戦争に負かすしかないと考えている輩が多いんですのよ。負けた相手の庇護のもとでの繁栄が訪れるのを本気で信じているんですのよ」

 

戦後の日本は奇跡的な巡りあわせで大国に返り咲いたが、普通はそうはならない。現に、アメリカ合衆国が体験したいくつかの戦争の当事国の中には『米軍がいなくなった後に旧体制が復活し、却って酷くなった』国すら存在する。その事を顧みないことも、日本の大衆心理の愚かさを象徴していた。

 

 

「自分たちの歴史や心理こそが正しく、高尚であると信じて疑わない。それこそが日本の罪なのですよ、この世界への」

 

「それで、その後は?」

 

「日本国内の良識派がこの世界の状況や、敵の黒幕がなんであるかを大衆に知らせたのです。アメリカ合衆国にあたる国が『抑圧的な旧体制(日本国に対する大日本帝国)からの解放者』ではなく、ナチスのような選民思想に取り憑かれた者達の傀儡国家に落ちている事、扶桑はその黒幕への抵抗の最後の砦であると。そうでなければ、リベリオン軍の有志が扶桑軍の指揮下に入る事はないというのに」

 

日本は皮肉にも、ドイツの失敗から『迂闊に手出しし、元に戻せなくなるまで引っ掻き回す』事の怖さを学び、扶桑の国政などへの口出しを控え、現地の改革派にゆっくりとシステムを近代化させる選択を選び、成功した。のぞみへの補償が手厚かった理由の一つも『扶桑軍を敵に回したら、米軍は内乱扱いで座視し、軍事力に差がある日本は逆に扶桑の植民地にされるのでは?』という危機意識が政権で共有されていたからだというのは、プリキュア側にリークされている。つまりは扶桑に身勝手な振る舞いを糾弾されるのを恐れた政治家や官僚、大衆による『自己保身』の一環であると。

 

「それが政治ですか?」

 

「世界が違う国相手には、自分たちの理屈は通じないと学んだ。それが成果ですわね。扶桑は科学技術などと引き換えに、生きの良い人材と多額の資金を提供し、日本は先進技術と軍事ノウハウの提供、日本の国防のダーティーなものの多くを扶桑に肩代わりさせるのと引き換えに、バブル期以来の経済復興を味わうという取引。それを成立させる一助がのぞみさんの存在だったのです」

 

この件にアメリカ合衆国は関わっていない。『同じ国だから、自分たちで話しあえ』というのが彼らの言い分だ。とはいえ、戦前日本と戦後日本が話し合うのと同義であるため、当然ながら、意見の取りまとめにも、日本側は難儀した。結局、のぞみという明確な『被害者』が生じない限り、日本国内の問題への政治的意見は扶桑軍を悪役にする論調に染まっていただろうという意見もあった。その通り、一介の大尉だと思われていた人物が『プリキュアの主人公と同一人物』であったことは、日本にとっては『総理経験者のスキャンダル』と同レベルと見なされるほどのショックであった。更に『皇室の許可までとって、軍を離れようとしたのに、それを厚生労働省が一笑に付して潰した』構図は最悪の一言。防衛省、厚生労働省、外務省を巻き込んでの大騒動に発展。結局、その三つの省庁のトップ3までの役職に類が及び、皇室の鶴の一声を当局が追認した扶桑を批判した議員も最終的には辞職に追い込まれた。現場は大助かりであったが、日本にとっては政権の転覆級のスキャンダルであり、公に報じられた事自体が予想外であった。のぞみ以外にも、大勢の予備士官の教職への復帰、ないしは転職が妨害されたため、結局は厚生労働大臣が『我々には扶桑の予備役制度を混乱させる意図はなく、あくまで一官僚の独断であり……』と言い訳じみた声明を出し、騒動の当事者になった予備士官らへの補償を検討したが、対象人数が多すぎたために『予備役願いは出されておらず、問題は存在していない』ということにするしか対処が不可能であった。金銭では解決不可能な問題も含まれているからだった。

 

 

 

「日本は問題がのぞみさん一人の問題に収まらないことに気がつきましたが、既に扶桑の予備役制度そのものに大ダメージを与えてしまっていた。その余波で、当分は軍学校もまともに機能しない(教職への復帰、ないしは転職志望の将校が大量に、問題の口封じ代わりに教諭として押し込まれたため)でしょうし、予備役制度も再編を余儀なくされる。その割を食うのが、いつも現場の人間なのです。だから、私達のような転移者や転生者をなりふり構わずにヘッドハンティングしているのです」

 

「違う世界の国同士の付き合いは例がないとはいえ、同じ立ち位置、同じ文化の国同士で混乱するなんて」

 

「歴史が互いに異なる上、戦後の日本と戦前の日本が別に存在するようなものですから。その尻拭いを私たちは強いられているのですよ」

 

「だから、軍人といっても、自由業に近い事を?」

 

「成果さえ出せば、日本は私たちがやることに口を挟まないそうですので。もっとも、参謀たちからは睨まれていますが」

 

日本は扶桑の社会制度の複数を機能不全に陥らせてしまった。その尻拭いを強いられる筆頭が64Fである。64Fが戦果を常に求められるのは、46年からの混乱が与えたダメージが大きく、軍部の中の分断が進んでしまった上、通常編成の部隊を臨戦態勢に切り替えることが政治的に困難に陥ったため、64Fを特別編成と称してダイ・アナザー・デイ後も存続させ、災害を含めての有事の矢面に立たせるしかなくなった面が大きく、日本の当事者達は『自分たちは意見しただけで、強要はしていない。お前らが混乱を起こして、勝手に右往左往しているだけだ』と保身目的の言い訳しかせず、関係の悪化も懸念された。日本の政権与党は『扶桑との関係を維持することこそ、我が国の経済復興の要である。そのためには、先方が納得するだけのあらゆる意味での献身が必要である』という方針を固め、扶桑に大規模な国際イベントを開催させて、扶桑国民の関心を政治から逸らさせる内に、日本連邦の組織の完成を急いでいたが、のぞみの一件はその施策に目処が経ち始めた矢先に起こった。それから更に数年後の太平洋戦争でも、その混乱は続いている。64Fの基地の周囲にだだっ広い空き地が広がっているのは、元は軍都計画の一環で一帯が整備されるはずであり、日本の市民団体が計画を強引に潰すように仕向けたため、その再利用に目処が立たぬままに演習場と化したためである。流石に日本もこのことは『自分たちに非がある』と認め、一帯の再整備に乗り出した。扶桑はこの事を教訓に、軍施設の地下化を強力に進めているが、今度は商売の当てが外れた日本の土建屋から嫌味を言われる有様。なお、それらの政治問題の兼ね合いで、『64Fの隊員は自由勤務権を有する』と軍規に明記されたのも、のぞみの一件が報じられて以降になる。山本五十六が参謀本部の参謀たちの暴挙を止めさせたのは1948年頃。完全に司令部直轄として編成が固まったのも、その頃だ。連合艦隊も『扶桑の国民感情に配慮する』という大義名分で存続した(任務部隊化は真似でしかないと扶桑国民に批判されたが、海自も導入済みであるために、妥協的に自衛艦隊方式という大義名分で導入したが、連合艦隊旗艦も存続した)。

 

「参謀?」

 

「軍隊で最も政治的に嫌われ者のポジション。それが参謀ですわ。特に、日本では言葉の言い換えをしなければ、存在を許されないほどに。本来は指揮官の助言役、知恵袋なのですが――」

 

キュアスカーレットは続けた。日本が過去の戦争で『明治以降の全てを失う』敗北を喫した原因の一つと見なされ、最も大衆の憎まれ役になっている軍の職責こそが参謀という職であると。彼女がそう言ったとおり、日本の防衛省は扶桑軍の参謀を『史実で有能だったか』で選別し、ふるいにかけ、8割方を予備役に追い込むつもりであった。とはいえ、元の参謀で、史実で戦後に三自衛隊の要職を務めた者も大勢いるのも事実。

 

「本来、近代的な軍隊は分業化が進んでいるものですが、日本という国はとかく、『一つの器に多くを求めがち』なのです。武士の時代の名残りなのか……」

 

「スカーレット。あなたの口から『武士』って単語が飛び出すなんて」

 

「私が元は異世界出身なのは、知っていましたわね」

 

「ええ。前に、あなたのところのフローラから」

 

二人は比較的に近い世代のプリキュアだが、この時にはお互いに社会人になっている事から、キュアエトワールはスカーレットに敬語を使っている。

 

「でも、この世界だと、騒がれないんですか?私たちがこうしてるのに」

 

「変身しているほうが公務中と見なされて、遠慮されるものなのですよ、この世界では」

 

「現役時代は変身してると、何かと注目されてたから、妙な感じですよ。それに、私はフィギュアスケートをしてましたから」

 

輝木ほまれは実はフィギュアスケート選手であったが、身長の急成長でジャンプのタイミングがわからなくなってしまったことなどが原因で挫折しており、競技から離れていた。

 

「そういえば、あなた……」

 

「ええ。だから、ドリームが挫折を引きずってた気持ち、わかるんです。だけど、どんな暗闇でも出口はある。それを後輩として示せなかったっていうのは……彼女の故郷にもいただろう、別の私の落ち度かもしれない」

 

挫折を味わった経験がある故か、のぞみの『過去』における出来事のことに察しがついたのか、後輩としての自分の不甲斐なさを悔やんだ。

 

「彼女は家庭人としての幸せを得られず、戦士としての自分を拠り所にすることでしか、精神バランスを保てなくなっていた。それに気づけなかった全員に非がある。無論、この私も含めて」

 

キュアスカーレットは『のぞみの故郷の世界』での自分達の不甲斐なさをなじりたい心境だと告白し、コーヒーを再び口にする。彼女はノーブル学園在籍時(現役時代)は紅茶を嗜みとしていたが、転生後は身分を取り繕う(紅城トワという扶桑人をでっち上げるため)必要がある事から、コーヒーを飲むようになったという。

 

「あれ、コーヒーなんですね?」

 

「私は色々とややこしい身の上なので、取り繕う必要があるのですよ、エトワール」

 

そこで、エトワールが頼んでいた『チョコパフェ』が運ばれてくる。1940年代にしてはハイカラだが、扶桑では原型となるものが既にあり、21世紀からの情報により、扶桑の大都市圏に瞬く間に浸透したが、この当時は経費がかかる兼ね合いか、高額のメニューであり、21世紀と同じ感覚では食べられないといえる。しかし、彼女らは高給取りの士官なので、その心配はない。ウェイターもデザートを頼んだ主がプリキュアであることを知ると、納得したようである。

 

「この時代、ずいぶん値段安いですね?」

 

「『銭』が現役ですから。田舎の人達にはまだ『高嶺の花』と言えますね、このような凝ったデザートは」

 

「そうか、この時代は本当なら、私達のひいじいさんたちが」

 

「ええ。ですが、扶桑は都市部に限れば、史実の60年代の高度経済成長期に相当する暮らしになりつつありますよ。電化製品の『三種の神器』が売り出され始めてますから」

 

「えーと、歴史の授業で聞いたような……」

 

「出たてだった頃の電化製品を歴代の天皇が有していた神器に例えたものですわ。白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫……時代が進むと変わりますが」

 

異世界出身であったはずのキュアスカーレットのほうが地球の歴史に関心があったためか、昭和期に起こった文明の進歩をエトワールに説明する。

 

「エトワール?本来なら、あなたが私に説明する側ですのよ?」

 

「す、すみません。スポーツ特待科にいたんで……。それと授業はサボってたんで……」

 

「やれやれ」

 

エトワールは現役時代の学業成績は不明な点も多い。競技に挫折してからは、授業のサボり魔化していたため、実は転移した時点で、意外と穴がある。難しい競技であるフィギュアスケートをこなせるため、地頭力は歴代でも高いはずだが、肝心の学業成績は転移した時点では『いい方ではない』。スカーレットに諌められ、しょげるのだった。

 

 

「こんなところにいたのですね」

 

「ジャンヌ嬢…。上層部からの呼び出しですか?」

 

「ええ。貴方方と私で捜索に参加しろとのご達しです」

 

休暇中を呼び出されたのか、私服姿のジャンヌが姿を見せる。

 

「スカーレット。この人は?」

 

「のぞみさんと同じく、蘇った英雄の一人です。フランスの誇る『ジャンヌ・ダルク』。その人ですわ」

 

「じ、ジャンヌ・ダルクゥゥ!?あ、あの……魔女裁判で火あぶりの刑に処されたっていう、100年戦争の……?」

 

「ええ。訂正を入れると、今はフランスに属しているわけではありませんし、私は後世でいうところの聖女ではありませんよ?」

 

 

ジャンヌ・ダルク。ルナマリア・ホークを素体に顕現した、仏の英霊である。生前の愛国心は(最期もあって)薄れている、ルナマリア・ホークという職業軍人を素体に顕現し、世俗に染まって過ごしてきた影響か、生前のような清廉潔白さだけでは、世の中『やっていけない』と実感していたり、超常の力を持ったままとはいえ、一応は『一介の生者に戻った』影響か、思考が以前より柔軟性を増している。生前の無学も、ルナマリア・ホークとの融合で克服済みである。現状の彼女は『ジャンヌ・ダルクでありつつ、ルナマリア・ホークでもある』が故か、英霊由来の力を用いない場合でも、『ルナマリア・ホーク由来の身体能力の高さ』を持つ。(なお、のび太はジャンヌの思考の柔軟性が増した理由を『人格の融合で『オルタ』の要素が入ってるかもね』と評している)

 

 

「貴方方に、上層部からの指令を伝えに参りました。これがその指令です」

 

「あなたほどの人を使者にするとは。仮にも仏の……」

 

「昔の事ですよ」

 

その指令とは『組織』の幹部を捜索し、倒すことであった。その目標はテラーマクロ。かつてのドグマ王国の首魁であり、赤心少林拳の一派を率いていたこともある大幹部の一人である。一度、プリキュア達と交戦し、その拳法で圧倒したが、以後は行方をくらませている。

 

「地球人に変装して、わざわざ拳法の流派を率いることまでするなんて……」

 

 

「悪の組織というのは、時たま回りくどい手段を取るものでして。のび太さんの街にも、組織の雇われ者が現れたと報告がありまして」

 

「雇われ者ですか?」

 

「ええ。これがまた大物でして……」

 

ハカイダーの存在にも触れられ、連合軍は組織とも本格的に抗争状態に入った事、かつて存在したヒーロー達に倒された悪の組織の遺産がバダンに流れ、その効果で戦力を充実してきている事から、捜索を担当してきた諜報部の手に負えないと判断したと説明するジャンヌ。ハカイダーが率いる『ハカイダー四人衆』が諜報部の人員を消してまわっている事、対処手段が諜報部の部員にはないため、自分達にお鉢が回ってきたと説明するジャンヌ。

 

「何者なんですか?」

 

「ハカイダー。その昔に悪のマッドサイエンティストが人造人間キカイダーを倒すために作った存在。その三体の同型機と合わせて、ハカイダー四人衆と呼ばれていたのです」

 

実際には、その時期のハカイダーの思考能力がサブローであった当時より低下していた(ギルハカイダー)こともあり、さほどの脅威ではなかったが、復活後はサブローであった頃の鋭敏さが戻ったと思われるので、諜報部は複数の人員を消されてしまい、任務に支障をきたすレベルの損害を被った事が伝えられる。自分達が駆り出されたのは、諜報部からの要請であると。私服姿であるが、英霊であった故のカリスマ性は自然と発揮されており、周囲の視線が彼女に向き始めていた。ある意味では、ものすごい光景である。片や、フランス史上に燦然と輝く名声を誇る『聖女』。片や、日本が世界に誇るスーパーヒロイン。考えようによっては『歴史を作りそうな』面子であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――この頃、連合艦隊は建艦計画の混乱が続いたことや航空隊の組織が右往左往していた事により、戦艦部隊が散発的にゲリラ攻撃を行う程度の活動であった。M動乱の最中に『大和型三番艦と四番艦の空母改装』が中止され、大鳳の量産も頓挫。魔女の海上での軍事的な意義もその前後に大きく低下。スーパーキャリアによる少数精鋭化の志向による空母機動部隊の再編の混乱、機種の矢継ぎ早な更新もあり、要員の教育がまったく追いつかなくなった。特に、大型空母に積む新鋭機は価格も高いために『拙速の投入は厳禁』とされたことも、空母が港の肥やしにされる理由であった。艦載機更新の途上を理由に訓練航海も控えられたため、連合艦隊は史実と逆に、戦艦部隊が過労寸前の有様であった。近代化改修済みの戦艦は単艦での突撃を課されるなど、日本特有の『個艦優越主義』の行きつくところまできた感が強調されていた。それと同時期の扶桑陸軍は史実の戦時動物処分にまつわる咎を政治的意味合いで受けさせられ、余計に混乱を起こし、警備担当の猟友会もエタヒニン並の非難を受けて精神を病み、一家心中を起こす者が続出。当時の東京都長官(後世における都知事職の前身)も動物愛護の関係から非難を浴び、辞任に追い込まれるなど、混乱が混乱を呼ぶ有様だった。扶桑皇国はこの大混乱の損害補償を日本に嘆願。日本も地下都市への退避を推奨したり、日本への避難を助けるなどの助力を行い、かつての自らの行為への贖罪を行った。一連の扶桑の大混乱は大衆心理にも大きく影響したため、プリキュア達の活躍を派手に報道することで、政治にがらんじめにされ、組織だっての作戦行動を取れない軍の実情を隠した。中央の指揮下にない『司令部直属』の部隊を増やす事でしか、日本が強く求めるシビリアンコントロールの穴を突く手段が無い事から、扶桑は『こちらは有事なのだから、必要な人員を本土から引き抜いて、戦線に送り出す事を認めてほしい。64Fに手柄が集中するのは、軍全体の士気に関わる』と要請。64Fの突出を好ましざると考える隊長・参謀級の魔女、あるいは魔女出身の参謀は尚も大勢いたわけで、他の部隊のメンツに関わるためでもあった。しかし、日本の政治家は(関東軍の教訓から)現場の独断専行を恐れており、扶桑の現場の要請がそうである事にかなり困った。本土に残ったベテランの多くは軍学校の教諭たちで、(1946年からの流れで、中堅層が壊滅状態に近く、後はダイ・アナザー・デイ後の志願の世代か、教官級の古参しか残っていない)それを前線に配置することによる教育精度の低下が恐れられたからだが、教官を前線に関わせることでの『現場の引き締め』の効果もあるため、(111、112Fの失敗の件もあって)交代で少数の選抜した教官を前線配置の部隊へ派遣し、実戦の経験を積ませるという結論となった。これはエースの魔女の8割方が64Fの所属者である事への、他部隊の世間体との兼ね合いであり、軍に残る魔女の多くは右も左も分からぬ新人たちである一方で、前線で戦う魔女は『事変か、大戦初期からの古参である』という両極化が進んだため、その緩和を図りたかったのである――

 

 

 

 

 

 

 

――この時期(1949年前後)の新人たちの多くは日本で発掘された『魔導への予備知識のない者』たちで、魔女としての初歩訓練も積んでいないが、扶桑生え抜きの者達より強大な魔力がある上、体質的も『魔導師寄り』という利点もあった。折しも、扶桑の魔女の覚醒が『休眠期』に入っていた時期であるので、彼女たちは『ダイヤの原石』も同然。その育成に熱を上げる様になっていた。また、転生を重ねた黒江らでも、その習得に時間をかけた『ミッドチルダ/ベルカ式の魔法』を彼女たちは(現代人なので、魔女の世界での魔女のセオリーと常識が通じないためか)容易に習得できた。このように、日本からの義勇魔女らは扶桑の『魔女育成』に新風を起こし、貴重な『若い世代の魔女』として、太平洋戦争の戦力として奮戦していく。その彼女たちの憧れは歴代のプリキュア達であり、扶桑軍がクーデター後に必死に(彼女たちを使って)作ったCMやポスター、求人募集が功を奏したわけだ。そのポスターやCMの多くに起用されていたのが、扶桑生え抜きの軍人を素体に転生してきたキュアドリーム/夢原のぞみであるが、別バージョンとして、日本と扶桑の架け橋となるのを期待されているキュアフェリーチェ/花海ことはの出演するバージョンもある。のぞみの場合は転生した先の都合もあり、魔女の『戦士としての側面』が強調されているが、フェリーチェの場合は『魔女の未来を護るのは……』というトーンのものであり、二人のスタンスの違いを反映したものである。二人が私生活で姻戚関係になった(ことははのび太の義妹、のぞみはのび太の養子であるコージの妻であるので、義理の叔母と姪にあたる)ことは大ニュース。そのニュースがプリキュアファン界隈の議論を呼んだのもあり、扶桑は日本での求人募集に力を入れ、自衛隊もそれに便乗し、募集を拡大。それは2023年/1949年の夏のことである――

 

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