ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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オムニバス編です。


第六百三十六話「考察とまとめ」

――後年、日本連邦とキングス・ユニオンのみが成功を収めた理由を探る動きが扶桑の歴史学者の間で起こる。皇室(王室)が崇敬を抱かれているという共通点がまず、挙げられていた。当たり前であるが、魔女の世界では、民主共和制や全体・共産主義の暗部が白日のもとに晒された事(異世界間交流でフランス・ロシアの両革命の行き着いた先と、ロシア革命で成立したソビエト連邦の短命ぶりなどが伝わったため)から、立憲君主制がベターな体制という事になったからだ。ガリア(フランス)は革命の詳細と暗部が日本連邦から逆に伝わった(ガリア本国では、散逸した、あるいは隠蔽された記録も多数あったので)結果、国家のアイデンティティが揺るがされ、日本連邦と敵対する事を選ぶが、それは愚かな選択であったと、はるか後年、国家指導層などに嘆かれる事となった――

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイの時点で、自由ガリアはまともな軍隊を有さず、自力での兵器生産能力も微々たるものであった。ペリーヌが国土復興に全てを費やしたのは、『せめて、ナポレオン三世時代に近い暮らしができるように…』との思いであったと伝えられている。実際、戦争直前の第三共和制ガリアは混迷期であり、国民も政府への信頼を損ねていた。国土が怪異に蹂躙された際に、組織だった疎開が成らなかった点が、その時点の勢力争いの醜悪さの表れだと、後年に更に二度の改編を経た後の『第五共和制』の人々から『愚行』と断じられている。また、第四共和制の時期に、覇道を歩み始めていた日本連邦との敵対を選んだ事は『悲劇』と語り継がれていた。ド・ゴールが独自路線を追求しつつも、日本連邦との直接対決をできるだけ避けた理由は、日本連邦軍の精強ぶりが理由であった。ド・ゴールは元々、陸軍の名高き将軍であった。それ故に、強大な科学力と異能を兼ね備えた日本連邦との直接対決は『ガリア国家の破滅』を意味することを理解していたのだ。ダイ・アナザー・デイ時には『強国としての返り咲き』の野心を持っていたド・ゴールも、ダイ・アナザー・デイでの64Fの孤軍奮闘を目の当たりにしたことで、『彼らはあまりに強大すぎる』と認識したわけだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイは特異な戦であったと、後年の歴史学者の間で議論の対象とされた。連合軍の統制が魔女にまで及んでいないことが白日のもとに晒され、当時の大衆から猛批判を浴びた事、1990年代以降に『ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは同性愛者の傾向があった』ことが明らかになり、彼女の辿った悲劇的経緯からの上層部不信が破滅を招いた事への同情論が生まれた。その頃には、同性愛者への社会的理解が進んだからである。同性愛は魔女かつ、内輪に留めていれば、1940年代時点でも(かなりギリギリだが)許容されていたが、彼女の場合、異性の恋人があえなく戦死してしまった故の変心であったがために、理性による抑えがさほど効かないという難点があり、坂本も後年、『あそこまで感情的になるとは思わんかった』と述懐するほどであった。ミーナ本来の人格はその孫娘が伝え聞いた話によれば、『1979年までの30年間で消えた』とのことで、1979年までは元の人格が従人格として存在した事がわかる。上層部不信は同期や先輩たちから同情論が出ており、『ヤツは生え抜きの軍人ではないからなぁ』という同情の声が表に出始めたのは、1970年代頃。カールスラントの戦災からの復興がその頃に進んだことで、人々の心に余裕が生じる時代にあたる。それは彼女の同期や先輩たちが社会の中枢に入り始める時期と重なっており、なんだかんだで軍人が社会を動かす『軍事国家』であった名残りの強さが窺える話であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その彼女の悲運と併せて語られるのが、『七勇士への無知』であった。坂本がインタビューで度々語ったように、彼女の手元に指揮権が残る手筈であったのは本当である。元々、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの運営手腕は高く評価されており、連合軍の上層部も楽観的であった。だが、その無知が白日のもとに晒され、扶桑とカールスラントとで外交問題になりかけていたこともあり、彼女は更迭され、隊自体が64Fに呑み込まれる事になった。その際に、殆どの統合戦闘航空団の人員が取り上げられたが、歴代プリキュアの登場で、日本連邦の名声を(却って)響き渡たせる事になってしまった事は欧州諸国の政治的・軍事的誤算であったと、後世の人々に断じられている。64Fが統合戦闘航空団であった名残りは時間の経過で薄れ、サーニャが1946年頃に名誉昇進の後に退役(公には、父母と暮らすためとされた)、エイラ、ルッキーニの転属なども重なり、人的損失もかなりであったが、セラの加入やのぞみ、マナの台頭で補われた。最も、エイラは年齢的に(通常なら)引退する年頃となっていた事、サーニャは扶桑への両親の亡命が要因であった。のぞみとマナはプリキュアの中でも、とりわけ戦いに縁があったので、幹部に取り立てられるのは当然であった。エイラは駐在武官という形で軍籍は残ったが、事実上、第一線を退いた形となった。サーニャは退役後、ピアニストに転向したと公表されており、ナイトウィッチの時代は彼女の退役と共に終わったとされる(ナイトウィッチの優位性が後から発達した全天候魔法航法の開発と普及で薄れてしまった事、他の有力者が軒並み、1946~8年に第一線を退いた事が複合した)。501の古参隊員であった二人が去った穴埋めは懸念されたが、歴代プリキュアの増加であっさり埋まった。(サーニャは実際は別人として残留しているが)そのため、1947年以降も(表立って)残留している501統合戦闘航空団の元隊員はエーリカ、シャーリー、バルクホルンの三名のみとされている。エーリカとバルクホルンは教官を兼任しており、マルセイユは魔弾隊の中核を担うが、統合戦闘航空団の出身者ではない。なまじっか、開戦初期から戦果を挙げたことで、(政情の変化で)本国から疎んじられたエーリカとバルクホルンは扶桑に実質的に移民した。バルクホルンは生き残っていた家族を南洋に呼び寄せており、エーリカも両親と妹を扶桑に移民させている。本国にいられなくなったからで、カールスラント軍最大の損失と、後世のカールスラント人達は泣く事になる――

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑空軍は亡命カールスラント軍人らの教導で、一挙に組織の体裁を整えつつあった。近代空軍の基礎は英独が築きあげたので、ある意味では当然であった。そこに米空軍と自衛隊の持つノウハウが追加されたため、なおさら最強となった。とはいえ、機材の消耗を新品で補う傾向があったため、1949年盛夏に入る頃には、F-15Eが配備されるに至った。戦闘爆撃機もF-4EJ改とF-15Eが主力に収まるなど、急速に近代化が進んだ。レシプロ機を駆逐し、ジェット機化を進めた兼ね合いで、レシプロ機前提の前線飛行場を閉鎖、もしくは民間用に転用を予定したため、空軍の航空機は空中給油と宇宙空母による艦上補給が推奨された。この施策は流石に批判が大きく、閉鎖作業前の前線飛行場の内、比較的に大規模なものをジェット機対応に仕立て直すことで妥協された。このように、扶桑空軍は基地の新規設営すらも苦労する羽目となった。主に日本の財務当局の強い締めつけによるものだったが、彼らの感覚は平時のものであったので、有事にそぐわなかった。結局、特別会計という形で、現場に配慮した予算を配分せねばならなくなったため、彼らの面子は丸潰れであった。また、現地企業を日本の同位企業(後身の企業含む)が吸収合併し、経営危機を救わなくてはならぬ事態にもなっていたため、扶桑軍の工廠に食料品製造分野が正式に増やされ、食料品の安定供給が図られた。時代的に、レトルト食品を民間は作れないからである。二人の芳佳はこの報に、個別の感想を抱いた。2000年代以降の料理感覚を持つAは理解を示したが、Bは『自分で作ったほうがおいしいのに……』と不満を見せた。Bは洋風の高カロリー食を好まないからだが、Aは『食事を気をつけていても、(病気に)なる時はなる』と割り切っている。その違いが環境の違いでの考えの相違と言えた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――結局、金鵄勲章(扶桑)は日本の都合だけで廃止できないため、妥協的に『日本での佩用は禁じられていないが、公の場では瑞宝章か、防衛記念章のメダルで代用する』という事とされた。野党が評議会の議決の直前で巻き返したためだが、日本での金鵄勲章の佩用自体はバブル期に解禁されていたので、野党も主張を完全に通すのは(高齢者層に配慮した)諦めたのだ。そのため、日本国内では『危険業務従事者叙勲に組み込む』とされたが、若い軍人に授与する事に、壮年以上の年齢層から反対が生じた(定年退官時に授与すべしとの論調)。だが、外国では当たり前であるため、押し黙った。また、扶桑軍部は万博と五輪に反対していた軍人(士官層)の尽くが開戦後に懲罰的に最前線送りとされたことで、人材不足が顕著になった。この人材不足が軍部が64Fへの依存を深くする要因であった。そのため、以後の時代、自分の信条を軍人が公の場で口にする事自体がタブーとなっていく。日本が扶桑を押し切って、多数の青壮年層の将校を最前線に送り込んで、意図的に死なせたからである。そのため、立場が政治的に保証された64Fへの配属を望む軍人が増加していく事になる。結局、懲罰への恐怖で手綱を握ろうとしたら、組織自体が却って、ズタズタになった事の実例となってしまったわけだ。憲兵の縮小改編による人員整理の問題もあり、64Fは軍内の治安維持任務までも背負わされた形になり、幹部には、軍内の規律引き締めのための権限すら付与された。そのため、プリキュア達が扶桑陸海空軍の末端の兵士や下士官の狼藉を止める光景は当たり前であった。彼らもプリキュア達が佐官~将官という『雲の上の位』にある事は存じており、どんなに粗暴な者でも平謝りになる。また、普通の憲兵と違い、大衆に横柄/高圧的でない事が扶桑の大衆の好感を呼んだ。その事から、この措置は継続とされた。キュアエトワールは研修の際に、この手の任務についており、実戦に回ったのは、扶桑空軍の警務隊が正式に発足してからであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ガリアは日本連邦のもたらした革命期の残虐行為の情報と、ド・ゴールの失策で国自体の統制が乱れ、内乱寸前であった。ノーブルウィッチーズの『民主共和制の騎手が旧時代の権威にすがった』という矛盾点の露呈は国土の荒廃で乱れた人心を更に荒らす事となった。さらに、革命の際のヴァンデーの反乱やランバル公妃マリー・ルイーズの悲惨な最期、ルイ17世の目に余る死の情報はガリアの労働者層に多大な衝撃を与え、ド・ゴールとて、動揺を押さえつけるのが精一杯であった。ティターンズはこれを『フランス相当の国家に混乱をもたらす機会』として利用。その結果、ペリーヌのいなくなったガリアは『破綻しないのが不思議である』という有様に落ちぶれた。革命が『恐怖政治と帝政の芽を蒔いただけ』という結果とされる事で『ガリアのここ200年のアイデンティティ』は崩壊の危機』にあったのである。故に、国内で暴発しそうな『悪意』を日本連邦へ向けるしか方法がなかったのである。だが、それはガリア第四共和制崩壊の序曲であった。後のアルジェリア戦争でガリアは敗戦する事になり、その際に第四共和制は第五共和制に取って代わられる事になるのだ。それがシャルル・ド・ゴールの威光頼りの同国の窮状の表れと、内外に揶揄される事になる――

 

 

 

 

 

 

 

――ガリアはこうして、日本連邦から『ガリアの栄光を守る』という仮初の目的で破滅への道を(知らずに)ひた走る事になる。ガリアはフランス同様に誇りが強いが、それが孤立と破滅への道の塗装となっていた。ペリーヌはそれを避けさせようとしたが、結局はガリアは自らの手で、史実通りに『アルジェリア戦争の敗北』を引き起こすのである。太平洋戦争にほとんど関心を持たなかったことで生じた『兵器の格差』はガリア軍の予測を遥かに超えていたのだ。だが、日本連邦もアルジェリアの『日本連邦の保護領』になりたいという要請に困惑。魔女の世界では『魔女の輩出数と土地との結びつき』で民族の生存率が決まるという事実の証左となり、儒教が中華系国家と共に滅んでしまった理由に合点がいった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――10代の少女が一般兵士から理不尽な扱いを受けないようにする必要があった事から、魔女は優遇されていたが、ダイ・アナザー・デイで世代間の情報の断絶や若さ故の問題点が噴出した事から、一般の魔女の優遇措置は金銭面の優遇を残し、次第に緩められた。『年齢に関わらず、社会の理不尽を味あわせたほうが転職などの時に良い』という判断であった。だが、若年の内から軍務についた者に『転職』は極めて難しいと言わざるを得ず、実際に、1945年八月時点で13歳以上であった魔女の大半は定年まで軍務を勤め上げるのである。扶桑の魔女は特にその傾向が強く、前線の人材不足もあり、事変世代が前線を支えながら、次世代の若者を導くという光景も当たり前であった。64Fの手練れ達のみが有事でありながらも、自由な生活態度を社会的に許されている。これは事変、ないしはプリキュアとしての現役時代の名声で『滅私奉公』を尊ぶ扶桑の国民を納得させていたからである。この風潮により、太平洋戦争中は後方任務で冷や飯を食わされた者であっても、軍を辞めない理由が生じていた。良くも悪くも、扶桑の社会風土は武士の時代の名残りがまだあったのだ――

 

 

 

 

 

――太平洋戦争の長期化は日本の意向が強かった。扶桑は短期決戦で西海岸までの侵攻を構想していたが、日本側は『机上の空論』と一蹴。結局は硫黄島よろしくの『後退配備・沿岸撃滅』の防衛を強要。扶桑の軍備整備計画を破綻させた。しかしながら、その戦略でリベリオンは早々に魔女部隊の機能が失われ、以後の整備計画が半ば放棄されるに至る。一般魔女達の懸念は開戦初期の『潜水艦狩り』でのリベリオン魔女部隊の壊滅で杞憂となっており、戦場が64Fとその補助部隊の独壇場的な様相となったのは、一般魔女の部隊の予測と裏腹に、魔女同士の戦闘は起こらず、怪異も時たま現れるのみという状況となったからだ。また、通常兵器がダイ・アナザー・デイ末期以来の傾向として、一撃でティーガーストライカーを行動不能に陥らせられる火力の戦車が続々と現れていき、陸戦ストライカーの世代交代が起こったのも、この時期であった。各国で共通の基本シャーシー(フレーム)を持ち、見かけは軽装だが、装備は小型化された重火器を持ち、魔導理論の革新で防御力も旧来式の数倍というコンセプトで開発されていたその新型の雛形となったのは、自由リベリオンに持ち込まれていた試作中陸戦ストライカー『T26E3』(後のM26)とブリタニアの『センチュリオン』であった。扶桑陸軍は当初、このコンセプトに嫌悪感を持ったが、戦車が加速度的に大型・重火力・重装甲になってしまった現状を認識し、結局は容認した。扶桑空軍は先立って、試験的に異世界の装備(パワードスーツ)をいくつか試用した後、未来の子孫からプレゼントされた第三世代型空戦ストライカーを極秘裏に運用することで、魔導理論の研究者らの溜飲を下げた。何故か?ダイ・アナザー・デイ以降、異世界の超科学の生み出したパワードスーツが活躍する報がクローズアップされ、ストライカーを装備した魔女が超人らにねじ伏せられたという悲報が舞い込む事が増え、研究者はショックのあまりに研究を放棄する者さえいたのだから――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ストライカーの装甲服風のパワードスーツ状への進化はダイ・アナザー・デイ以降のデータの蓄積によるものであった。一応だが、黒江は異世界の技術データの調査と記録が64F赴任以前の任務であり、シンフォギアを得たという偶然による幸運もあったが、ともかくも、異世界の技術情報はダイ・アナザー・デイからの戦間期に技術者にもたらされた。その役目を終えた(地球連邦軍などから技術がもたらされたため)黒江だが、日本などで有名になった影響を鑑み、元の姿で過ごす事はめっきり減り(たまの帰省のみ)、ダイ・アナザー・デイ以降はいくつかの姿を使い分ける形で過ごしていた。最も多いのが、月読(別名義で月詠)調の容姿でいる場合。この場合は瞳の色(帰還後だが)と背丈、言葉づかいで違いを見極められる。シンフォギア世界でその姿だった故の名残りだ。シンフォギアも普通に持っているのだが、身体保護目的でのみ使用している――

 

 

 

 

 

 

――ウマ娘たちとの出会いから幾分かの時間が経過していたある日――

 

 

「あんたは元の姿は取らねぇのか?」

 

「声がガキの頃の甲高い奴…今の声だが…に戻っちまってるから、声帯を操作せにゃならんから、ちと手間がいるんだ。それに、故郷(クニ)じゃ偉人扱いになってるから、色々と三人の兄貴に迷惑かけちまうしな」

 

「あんた、末っ子だったのか。ガラじゃなさそうだけど」

 

「おふくろからは嫌われてたが、兄貴らからは可愛がられたほうだと思ってるよ。一番上の兄貴とは15歳近く離れてるから、五十路間近だしな。それに、ガキの時分はガキ大将だったんだよ、俺」

 

「その姿で勤務か」

 

「調には色々させてるからな。普段は俺が使わせてもらってる。あいつ自身、元の世界の日本じゃ死人扱いだったんだそうだ」

 

「なんでだ?」

 

「アメリカのある組織に赤ん坊か、二、三歳の頃に拉致されたんだ。それは俺が調べて、それらしい親子の死亡事故があったのを確認した。アメリカのどっかの組織が非人道的な方法で拉致を実行したらしい」

 

ゴルシは遠征前の時点で、(裏で)協力する旨を伝えており、その関係で、64Fの裏事情も聞いていた。調と切歌はおそらく、(フィーネが動かした)アメリカの組織の手で拉致された孤児である事、黒江が行った先の世界では、調のパーソナリティデータが(黒江が偽装のために)作ったものにすり替わっていたことで、切歌がパニックに陥った末に暴走してしまい、『大罪人として裁かれた』関係上、切歌はシンフォギア世界にいられなくなった事を話す。

 

「あのパツキンのガキンチョ、そんな事になったのか」

 

「元は俺のせいだから、沙織さん(城戸沙織)の財団に預けたんだ、数年前に。小山羊座に任ぜられたって知らせは聞いてる」

 

「調も、あんたが色々とやった後に収まるのは無理があるから、あんたが引き取ったのか?」

 

「向こうの世界にいた奴の手引だが、のび太んちが引き取った。その時にシンフォギアも持ってきてたから、あいつも好きに使ってる。俺が今使ってんのは、俺の自前の能力でコピーした個体だ」

 

「あんたからすりゃ、それは拘束具に近いだろ?」

 

「常に聖衣を使えるわけじゃないからな。持っとくには越したこたぁない。いくら聖闘士でも、身体的には普通の人間どころか、ヒョロガリだったケースもあるくらいだ」

 

黒江は身体を鍛えた上で聖闘士になったが、それでも、物理的に身体保護が必要な事は多いので、シンフォギアを使用している。聖闘士であれば、シンフォギアの諸条件を気にする必要はない。聖衣が『完全聖遺物』のようなものであるからだ。また、ギアは宝具を模した『前史分明期の超兵器の残骸』をコアにしているため、宝具の最たるものたる聖衣に及ばない点があるのは仕方がないことだ。

 

「問題もあった。俺はこれが元あった世界からすりゃ、チートもいいところの無敵モードみたいなもんだから、行った先で面倒起こしちまったことだ。で、アニメからだいぶ流れが変わったのと、本人が戻って来た後、あいつも、俺が立ち位置を変えた後に、自分が収まるのを良しとしなかった。それが奴とのわだかまりになったな。本人との」

 

「まぁ、別世界から帰ってみたら、立ち位置が全然違ってたんじゃ、気が引けるってのはわかるぜ。単純に元鞘に収まろうって言って、収まった話はないしな。ブライアンの個人トレーナーもそうだ。クビにされた後、ルドルフが八方手を尽くして探したらしいんだが、奴の力でも、見つけられなかった。それもあって、奴は不振に陥った。おそらくはピークアウトがそれをきっかけに、知らないうちに起こってたんだろう」

 

「あいつは無頼気取ってる割に、心根の性根は臆病なままだからなぁ。だから、支えが失われた時に脆い。俺も昔にそうだったから、わかる。だから、のぞみと入れ替わりたいって言い出したんだろうな」

 

「のぞみはOKしたのか?」

 

「した。次の休暇で入れ替わりをするそうだ。急な話だが、ブライアンは本気だな…」

 

「いなくなったトレーナーの夢を叶えたいんだろ。オフレコにしてくれよ?」

 

「わーってる。そのトレーナーに懐いてたのか?」

 

「ああ。だから、自分の怪我と不振で切られた時、すんげ荒れ狂ってよ。あたしとナカジマが二人がかりで抑えられなくくて、ジョーダンとヘリオス、パーマーに助太刀頼んだくらいだ。完全に協会にカチコミしそうになってたからな。で、怪我が思ったよりも深刻で、自暴自棄になってたんだ、あいつ。だから、全盛期の力が戻せるのがわかった時、あいつ、こうつぶやいたんだ。私は『終わり』なのか……?自力では戻れないというのか……』ってな。」

 

「他力本願は嫌だが、種族の宿命の前では、チートにすがるしかないってヤツか」

 

「そうだ。それに、あいつ、口には出さないが、今度、ブライアンの妹が足跡を追ってくるだろう?」

 

「ああ、あいつの下の妹ったら……ビワタケヒデだろ?やっぱいるのか」

 

「そいつにいいとこ見せたいからって、現役を続けてるのよな」

 

「本当かよ」

 

「ああ。目に入れても痛くないくらいに可愛がってんだよ、タケヒデのこと。一時はショックで、『私はどうすればいいの、教えてよ、ねーちゃん!!』ってうわ言が出るくらいに参ってたのに」

 

ブライアンの再起の理由に、自身の妹であるビワタケヒデが入学してきたことが関係していると、ゴルシはいう。タケヒデは次姉の再起を純真に信じており、ブライアンはそれを裏切れないという気持ちが沸々と燃え上がることで、再起を誓った。再起を果たせれば、元のトレーナーとどこかで再会できるきっかけになるだろうと信じて。

 

「ほの字だったのか?」

 

「……だろうな。あいつの個人トレーナーはあたしから見ても、テンプレな熱血漢だった。それ故に責任感が強くてなぁ。それで、協会の勧告にすんなり従っちまった。自分の責任だと言ってな。ブライアンはあいつがいつの間にか、学園を去った時、膝から崩れ落ちて、放心状態に陥った。それからだな、自暴自棄になったのは。だから、父親とも揉めちまったんだと思うぜ。のび太はブライアンを受け入れるって?」

 

「このマンションには、Gフォースの関係者しかいないからな。あいつはリギルのチームメイトとつるんでなかったのか?」

 

「全盛期の頃は孤高・一匹狼を気取ってたとこあるからな。今の様子は信じられないくらいだって、グラスが言ってるぞ」

 

「寂しいのかね?」

 

「大切な誰かが自分のせいでいなくなる。そんな事態の耐性なんて、ヤツにはない。だから、態度と口に出さないだけで、本当は誰かにすがりついて泣きたいんだろう。立場を考えなければ、な」

 

「全盛期に王者だった故に、守るべきものが多いのも、ブライアンの不幸だな」

 

「そうだな……あいつはそれを背負っていかなきゃならねぇ立場にあるのも、良し悪しだな」

 

黒江とゴルシの考察。それはブライアンが色々な理由でひた隠しにするしかない本心を的確に当てていた。ある意味、ブライアンが王者であった故の柵が彼女自身を狂わし、ブライアンが王者であった事で生ずる影響で、実妹が希望を持って生きてきているという『陽と陰』。ブライアンに自覚はないが、『ハヤヒデと同じような事』を思っている。守るべきものは姉よりむしろ多いのだ。それを本人に先駆けて、ゴルシと黒江は知ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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