――日本は扶桑の財力、活力、軍事力で経済的復興を成し遂げたため、次第に若者たちを中心に『扶桑の恩に報いるべし』という論調が芽生えていった。扶桑の力無しには『バブル崩壊以降、ツキに見放された状態』に光が差し込むことすらなかったからだ。官庁が勝手に不祥事を起こしまくり、極左思想の影響を受けた人々が扶桑の軍事行動を撹乱するなど、政府は醜態を晒しまくるハメとなった。その流れで、プリキュア達の戦闘行為は『扶桑軍人である』故に合法とされた。警察が議論に答えを出せぬ内に、先方の軍事組織に先手を打たれた形だが、警察内部の議論が『世代間対立』の有様と成り果ててきたので、政府は内心でこれを歓迎した――
――仮面ライダーやスーパー戦隊、宇宙刑事の活動が世間に知られるようになると、彼らの活動を認める過程で、プリキュア達の活動を彼らと同様に『警備活動』に移す案も出されたが、既に扶桑の軍籍に多くが登録されていたため、なし崩し的に日本政府も承認していった。ダイアナザーデイ後、のぞみが転職を試みたことは結果的にだが、日本国民に『自分達の論理は平行世界では正しいとは限らない』という(至極当然な)事を認識させると同時に、人知れず戦ってきたヒーローやヒロインらに社会全体が報いるべきという論調を台頭させた。その論調が産んだ存在が『ヒーローユニオン』とその協力ネットワークである。のぞみへの損害補償金もその世論の反映で莫大な金額となり、扶桑の要職の給金の数年分にも及んだ。『自分達は魔女の社会的居場所を奪わない』という、日本から扶桑へのせめてもの詫びのメッセージ代わりでもあった――
――日本からなだれ込んだ『科学万能思想』と『異能者への排他意識』は扶桑の社会を少なからずの混乱に陥れた。更に『皇族と華族への侮蔑意識』も流入してしまったため、扶桑の皇族や華族は苦難を強いられる事になり、華族は新規での永世華族が(特権の縮小による名誉階級化の進展により)忌避される事態になった。華族存続の妥協案として『一代華族』が拡大されていき、1950年代以降に華族の地位を得る手段としての主流となっていく。魔女の献身で今日の繁栄があることを自覚する扶桑でさえ、『科学技術の発達により、魔女に頼る必要は薄れた』という論調が生まれたことは『魔女の異能性を疎んじる考えは扶桑でも存在した』という表れであった。農村では『国に労働力も、女も取られる!!』という誤解が蔓延してしまい、魔女となった娘を座敷牢に監禁する例も多く発生。昭和天皇は事態の打開のために『玉音放送』を行った。要は『天皇の権威で農村に蔓延した誤解を解き、魔女を排除する風潮を叩き潰す』意図のある政治声明だが、放送は(地主らが不敬罪を異常に恐れたのもあって)大成功を収めた。だが、今度は『集団就職の魔女は前線で使い物にならない者だらけな上、(家族からの仕打ちが原因で)組織への帰属意識が薄い』という問題が浮上。前線要員は世界からの義勇兵、はたまた、日本でのリクルート活動でスカウトした『金の卵』たちで賄われるという状況の緩和には繋がらなかった。この時期の魔導研究の鈍化は『魔導理論の最初の世代交代に伴う第二世代理論の育成期』であるが、それは『平均魔力は扶桑出身者の平均を数段上回るものの、それを扱う術を知らぬ』日本出身の魔女のために『ストライカーユニットを扱いやすいものとする』ための時間でもあった――
――第二世代宮藤理論は前世代の理論では不可能なことを実現可能とするものだが、その分、以前より『腕が試される』挙動をするストライカーユニットとして生まれた。それは速度の飛躍した空戦ユニットで特に顕著であり、史実でいう『第二世代~第三世代ジェット戦闘機』相当の機体群が第二世代宮藤理論式で設計されていく。しかしながら、この世代は事故率も高くなってしまい、一時は『エースパイロットでなければ、無事故での運用は困難』とさえ詰られてしまう。だが、技術的には無駄ではなく、未来世界でも注目されている『強化服』式にストライカーユニットを飛躍させる上での基礎となった。第二世代型は武装ユニットが本体と接続される構造であった(火器が大型・大重量のものに世代交代したための措置だが、古参兵からものすごく不評であった)が、手持ち武器への回帰を望む声が多かったため、強化服式への進化が研究されていくのである。1949年の盛夏の頃の第二世代式ストライカーユニットの普及率はわずかに20%ほど。これは機種転換の難しさ、練度充分の魔女の多くが旧来式を好み、新型を嫌うことによる――
――64Fは自分達で独自に異能の情報を集め、それを身につける事で、強大な敵に立ち向かう力を持った。本来であれば、戦いを『少女時代の一時における思い出』として生きていったであろうプリキュア達も、必然的にゲッター線の業である『闘争』に巻き込まれていった。夢原のぞみ、日向咲などの『本来であれば、役目を終えた後は平穏な人生が約束されていた』ことが確認されている者であっても、である。のぞみの転職の失敗はまさにその事の表れであるが、同時に戦後日本の『軍人への蔑視を伴う国防の軽視、経済至上主義』の弊害を浮き彫りにする効果があった。日本は軍事を殆ど他国に任せる事で、戦後の経済的繁栄を築いてきたが、バブル崩壊と冷戦の終結を契機に、経済が没落を始めると、その繁栄を支えていた世代が高齢化するに従い、競争力も低下してきていた。世界情勢の急変が2000年代から起こったが、日本に影響が少ないこともあり、それまでのような暮らしの維持をしようとする思考の維持が是とされた。だが、2010年代に経済的停滞からの打開の手段としての日本連邦が提案されると、若者を中心に容認論が起こり、2016年前後に具体化した。だが、国防を扶桑に丸投げすることの議論も起こり、Gフォースがダイアナザーデイを契機に組織化された。組織の巨大化を官僚は恐れたが、扶桑の連合艦隊や機甲師団は史実の最盛期の日本陸海軍のそれより遥かに大規模であったので、Gフォースの規模はそれより相対的に小規模であった。64Fはその中核と定められたため、装備の豪華さに関する大義名分を得た――
――Gフォースが戦艦まで有することは日本の財務当局の懸念を呼んだが、海上自衛隊\扶桑海軍の人員も大勢含むために不問とされた。Gフォースは高練度の人員を迅速に有事へ投入するための組織であるからだ。特に、21世紀最新鋭の艦艇が『実戦テスト』名目で何隻か編入されていることは扶桑への日本の示威であった。外洋に漕ぎ出し、敵艦隊と真っ向から戦う部隊である都合上、もがみ型護衛艦の配備は見送られ、通常型の護衛艦が配備された。これは継戦能力の都合である。また、扶桑は紀伊型(八八艦隊)が竣工した世界線であるので、紀伊の名が使われていた事にマニアに不満が出ていたが、『今更、改名はできんよ』と扶桑海軍の関係者は述べている。既に戦艦は『超大和型』の時代へ入りつつあり、能力が陳腐化した紀伊型は(紀伊や尾張の名を次代に引き継がせるために)退役が取りざたされた。だが、紀伊の悲運、姉妹艦らのクーデターへの加担もあり、贖罪としての現役継続が決まり、航空戦艦のテスト艦にされていた。Gフォースの海上部隊に所属が移され、コア・ファイターを用いての簡易的な航空戦力の提供のテストという名目で。紀伊型は天城型巡洋戦艦の改良型であるので、防御力に不安があったが、曲がりなりにも戦艦であるので、巡洋艦以下の攻撃にはびくともしない。(怪異のおかげで、雷装が廃れていたため)手っ取り早い妥協案としての正規空母の穴埋め策の一環だが、大戦型空母(大鳳まで)を改装し続けるのは限界があるのも事実。戦後型の竣工までは、鹵獲艦を含めた現有の空母を大事に使わないといけない。その制約がGフォースの強大化を促進させるのである――
――遠征軍は『プリキュア5の世界の自衛隊がインペロを取り逃がした』事を確認すると、海底軍艦『廻天』の出撃を準備し始める。ドリルが収納式になっていたり、ラ號の艦首部の装飾が廃され、通常の艦首になっているなどの違いがある。武装は播磨型と同等の三連装51cm砲を主砲として四基備えており、ラ號(1945年当時)を上回る。ラ號の当初計画を実現させたものと考えていい。格納庫は地球連邦の規格に則った寸法であるので、スーパーロボットの運用も考えられている――
『フライホイール接続、点火!!』
廻天の波動エンジンが唸りを挙げる。ラ號が改装の繰り返しで波動エンジンを手に入れたのに対し、こちらは当初より波動エンジンを主機にしているため、ラ號よりもエンジン始動に必要な時間が短いという利点がある。
『発進!!』
プリキュア5が現役時代に拠点としていた『ナッツハウス』近くの湖から浮上する形で、廻天は出現する。大和型戦艦のそれと同じ形の塔型艦橋(サイズは拡大されている)の第一艦橋で指揮官代理になった黒江が地球連邦宇宙軍の『太陽系連合艦隊』(アースフリート。外宇宙への遠征能力を持つ艦隊で、波動エンジン搭載艦の大元の所属先)の艦長服(沖田十三や土方竜が着ていたデザインのもの)を羽織り、号令を発する。宇宙戦艦ヤマトと同様の『波動エンジンが持つ独特のエンジン音』を轟かせながら、廻天は威風堂々と浮上し、発進する。マストには日本海軍伝統のZ旗と軍艦旗がはためいており、原型艦の元の所属先であった『大日本帝国海軍』の風習の名残りを感じさせる。
――廻天 第一艦橋――
「いいのか、扶桑の旧国旗と元の軍艦旗でなくて、日本海軍のものを掲げて」
「扶桑も旭日旗と日の丸を制定したから、問題はないぞ、ブライアン。信号旗は日本海軍と同じだったから、Z旗は既製のものが倉庫にあった。旭日旗と日の丸は取り寄せたがな」
扶桑皇国は日本連邦の旗揚げ以降、国旗を『白地と赤い日食』のデザインから『日の丸』に、国章も桜花紋から菊花紋章に改定し、軍用機の国籍マークも『太陽と月』から『赤い丸』に変更され、日本との政治的一体化を自ら選択している。
「日本との一体化を示すために、こっちから変えてやったんだよ。M動乱から。あれでわかりにくいって批判があったから、日本と同じにしようとなった。古株の海軍の将校は反対したが、お上の意向だって布告して、従わせた」
「それが戦前期の天皇の権威か」
「不敬罪があるし、明確に国家元首としての役目を背負ってるから、戦前期の日本に近いな。戦後は日本の戦前と戦後の連続性を示すための存在になってる嫌いがあるがな。日本の皇室」
日本の人々が忘れていることだが、近代日本の国家元首は天皇であった。扶桑は1940年代にしては『リベラルな傾向が強い国家』であるが、軍の最終指揮権は皇室にあった。日本では『最上の外交の道具であり、現政府の統治の正統性を示すための存在』と考えられている節がある皇室だが、扶桑では正真正銘、国家を統べる存在である。その認識の齟齬により、日本の人々は『想定外のトラブルと反応』に驚く羽目となってきた。扶桑皇国憲法の改正として『軍隊の指揮権は皇室ではなく、内閣にある』としようとしたら、古株の軍人らから猛反発に遭い、クーデター後に『皇室から内閣に指揮権を委譲するが、有事の際の調停の権利は維持する』という文面に直さないと同意が得られなかったり、華族階級や内務省の存廃などの議論で手を引く羽目になるなど、日本側の『敗北』は多い。だが、逆に言えば『天皇を味方にすれば、自動的に扶桑の手綱を握れる』事でもあるので、扶桑の体制を『穏便に近代化させたい』日本の穏健派たちはその手法を現地の改革派と協力する形で駆使している。彼らは『巨大な軍、華族、皇室の政治権威が残る状態での近代化を認めない』左派と対立しているのは言うまでもない。
「野比氏の故郷の世界の日本だが、何故、戦中の遺産の存在を知らなかった?」
「旧軍の将校達と技術者が関係書類を焼き払った上で、松代大本営跡にすべてを隠したからだ。戦後の自衛隊も『公にできない研究の産物』を松代大本営に隠した。公式記録にない区画にな。日本軍の魔女に関する記録もな。戦後まで生きた魔女達には恩給が極秘裏に支払られてた。表向きは旦那、ないしは血縁者の従軍って体裁でな。政府が把握したのは、2017年以降だ。多分、東條英機が魔女を集めたから、彼の私兵と解釈されるのを恐れたんだろうな。それが戦後日本も驚きの『大日本帝国の秘密』だ」
日本にも魔女はおり、大日本帝国は本土決戦の際の重要戦力と見做し、東條英機の指令で、あ号作戦の失敗の直後に部隊編成の内示があり、大戦終結まで『部隊』があった。軍の解体時に『東條英機の私兵』という批判が起こるのが恐れられ、すべての記録は破棄されていたが、隊員の手記が発掘されたこと、松代大本営跡にその部隊用の試験装備(大日本帝国のストライカーユニットとでもいうべきか)が隠されており、黒江の調査で『ストライカーユニットと似た原理で駆動する強化装甲服』だと判明した。1945年当時の日本では作れないと思わせるほどの先進的な外観であり、つまるところの『オーパーツ』と判断される代物。それが表に出た事により、第二世代宮藤理論の熟成の進展、装甲服に発達する『第三世代宮藤理論』の基礎理論の構築に貢献する。日本はこうした意外な事実の判明により、魔女を無下にできなくなっていく。『現地の風習と慣習を考慮し……』という内部文章で魔女への配慮が明記されたのは、その部隊の存在の発覚から数年後、敗戦の半年前の日付の軍の公文書に存在がはっきり記されていたことが確認された事による。とはいえ、ダイアナザーデイとクーデターでの高慢はきちんと裁く必要があったのも事実。皮肉なことだが、魔女の存在に配慮がされるようになった時には『純軍事的価値の低下』が明確になっていたのである。
「俺たちがこの戦に勝ったところで、魔女の立場が良くなることはないだろう。数年前の戦で、俺たちと司令部直属の連中しか戦わなかったのもあって、扶桑でもバッシングが生まれてな。科学の発展で空戦魔女のメリットの多くが縮小したことが示されたのもあって、社会的地位が揺らいでる。俺たちは常に最前線にいた上、司令部もこれでもかと宣伝しまくってたからいいが、その他の連中は勲章と記章を見せないと、故郷で石を投げられるようになったそうだ」
「あんたらを孤立無援にした報いというヤツか?」
「それもあるが、ガキのいじめみたいなことをしといて、いざ自分達が戦ったら、怪異どころか、米軍のプロペラ機にすら手も足も出ない有様だったのが、ある従軍記者の手で白日の下に晒されたんだよ。ブリタニア秘蔵の精鋭部隊って触れ込みの部隊が、たった一回の交戦で半壊する時の写真と一緒に」
黒江の言う『精鋭』とは『グローリアスウィッチーズ』の事で、司令部が64Fの援護にと、ブリタニアで待機していたのを送り込んだ『ブリタニア秘蔵の精鋭』のはずであった。だが、投入時には『設立時の精鋭は既に多くが去り、設立時の若手\新人が主力になっていた』、『根本的な出動経験の不足』が隠れており、ダイアナザーデイで白日の下に晒された。部隊はたった一回の戦闘で、あっけなく半壊、後送。現地でこの事の口止めがされたが、事情をつゆ知らぬ『扶桑のある従軍記者』が善意で新聞に発表した事により、連合軍司令部は猛批判を浴びてしまい、グローリアスウィッチーズとブリタニア空軍の魔女兵科の威信はガタ落ちとなった。64Fは『物見遊山に何ができるか』と、彼女らへ冷ややかであったが、こうした事態を予期していたからだ。ブリタニアが『Her Majesty`s Witch(女王陛下の魔女)』と宣伝しまくっていたはずの秘蔵っ子部隊が64Fの足を引っ張るだけに終わった事は『魔女は口だけ番長』という認識を生んでしまった。司令部直属の精鋭とされてきた部隊が『足手まといにしかならなかった』という『事実』は魔女の社会的立場を大きく揺るがせるのみならず、ブリタニア空軍の器量の小ささも世間に露呈させる結果となったわけだ。
「で、世代を超えたオールスターっていう宣伝用の部隊って世間に思われてた俺達が孤軍奮闘、顔面蒼白のブリタニアと対照的に、ウチの国は『世代を超えたオールスター部隊を持ってる』って鼻高々になった。それ以降は優遇されてるが、こうした事態には、いの一番に突っ込ませられる。海兵隊の代わりだな。その代わりに、凡百の魔女からすりゃ、生きにくい世の中になったがな」
クーデターは『レアスキル持ちで、一騎当千の強者でなければ、軍にいる権利はないとでもいうのか!?』という反発も一因であったが、『皇室に物申す』という目的のもとにクーデターを起こした事は『軍国主義』と解釈されても仕方がなく、日本連邦は『魔女であろうと、極刑に処した』。だが、それが社会的混乱を助長してしまい、64Fと肩を並べる部隊の設立はますます夢物語となった。『64Fを強くする』という手段を認める事は逆説的に『彼女らほどの力を持つ者は、全世界を見回してもいない』ことの表れであった。こうして、64Fに勝利が常に求められるようになってしまったわけだ。
「日本は俺たちのような異能持ちが当たり前だと思ってるが、実際はそうでもない。魔女のスキルはせいぜい、属性の違いによる能力特性の違いだ。俺たちは魔力と別の能力を組み合わしてるが、そんなの、上の連中には分かるわきゃない。俺たちの世界では、体系だった魔法も確立されてないしな」
「ゲームや漫画でよく見る『タイプ別の魔法』の区分、あんたらの世界にはないのか?」
「大まかにはあるが、経験則によるもので、同じ魔法でも、その個人差まではわからん。メタ情報はアニメとかで判明してる分にしか使えないしな」
黒江はメタ情報で理不尽に叩かれた結果、教育に携わる事そのものを控えるようになってしまった『エディータ・ロスマン』の例を知っているため、結局の所、魔女の新人教育の縮小傾向の拡大は必然であったと言える。(運悪く、ロスマンはコンドル軍団の生き残りであった)
「さて、行くぞ。ブライアンは空いてる席に座ってろ。総員、戦闘配置!」
廻天の要員はそのまま戦闘配置につく。戦闘艦橋(大和型元来の配置では司令部相当の位置)に火が入れられ、攻撃兵装の確認が行われる。
「戦闘に入れば、戦闘艦橋に入る。お前はそうなったら、そこのドアから艦載機要員用の待機室に行けるから、そこで待機してろ」
「分かった。今回は何に乗ればいい?」
「最新のバルキリーが入ったから、それを使え。空中じゃ可変戦闘機のほうが自由に飛べるからな」
黒江からの指示に従うブライアン。キュアドリームの姿であるのは、彼女ら特有の事情による。ブライアン本来の姿は晒せないので、キュアドリームと入れかえロープで心だけを入れ替え、参加しているのである。入れ替わっている状態では、目つきがキュアドリーム本来のものより鋭く、ブライアンの闘争心を反映し、強い威圧感を醸し出している。のぞみBとの識別は容易である。りんBら曰く、『のぞみは本当は国宝級のドジだけど、ブライアンさんはスケバンっぽいから、すぐに分かる』とのこと。
「しかし、この世界のミルキィローズだが、参加させなくていいのか」
「妖精たちを守らせるのも仕事だよ。それに、この世界のプリキュアに、俺たちがこれからしようとしてる仕事は酷だ。ナチが生んだ吸血鬼やサイボーグと戦争するんだからな」
「確かにな…」
ブライアンは開いている副長席に座り、席のコンソールを操作し、艦内通路の間取りを確認する。
「中将、通信を傍受しました。海自と空自はインペロを見失った模様です」
「弾薬を補充するか、増援を待つうちに撒かれたな。偵察のサンダーシーカー(偵察型装備のVF-11。既に装備・性能共に旧式の可変偵察機だが、運用の熟れた機体であり、稼働率もいいので、敢えて搭載された)に打電しろ。敵艦の捜索範囲を広げるように」
「ハッ」
「格納庫の艦載機の整備はどうか」
「あと数十分あまりで完了します」
「インペロが自衛隊にどの程度、痛めつけられたか、だな。整備を急がせろ」
廻天の艦載機の多くは搬入間もなく、実戦装備を改めてしなければならず、その作業中である。その中には、デザリアム戦役後の世界での最新鋭可変戦闘機『VF-31AX』も含まれている。廻天の内部は地球連邦軍の規格に則った作りであるため、地球連邦軍の波動エンジン搭載艦とほぼ同じ作りである。外見は(ドリル以外は)大和型に近いが、中身は『ヤマト型宇宙戦艦』なのだ。
「高度を上げ、25000mでM粒子を散布。人工衛星に捉えられないようにしろ」
「了解」
廻天は上昇。一気に高度を上げ、25000mに陣取る。ここまで来ると、衛星軌道の衛星以外に目撃される心配はない。念のため、M粒子を散布しておく。
「この高度でしばらく待機。早期警戒機の情報を待つ」
「了解」
早期警戒機の情報を待ちつつ、飛行機では到達不能な高度で待機する彼ら。インペロを早期警戒機が捕捉した時こそが勝負の時。それがクルー一同の総意である。戦艦リットリオ、戦艦ローマの『忘れられた姉妹艦』と日本最新最強の戦艦の末妹。本当なら共闘してもおかしくない『枢軸国軍』であった国々の軍艦同士の対決となる。
「司令部に例の一文を」
「ハッ」
司令部向けにお誂えの報告を入れるように黒江は指令を発する。内容は以下の通り。
――敵艦見ユトノ警報ニ接シ、我ガ海底軍艦廻天号ハ直チニ出動、コレヲ撃滅セントス。本日天気晴朗ナレドモ浪髙シ――
と、史実の日露戦争で連合艦隊が打電した文章をアレンジしたものを打電させる。司令部は敵の決戦兵器である海底軍艦の無力化を狙っており、廻天はその任務をも負っている。自衛隊がどこまでダメージを与えてくれたのか?38cm砲の威力はどうか?イタリア軍にもデータがないため、連合軍は手探り状態でインペロと戦う事になった。