――プリキュア5の世界の戦いも佳境に入った。ブライアンはキュアドリームに成り代わって、VF-31AXを操縦していた。SV-51との空戦という超絶的に門外漢な事柄であったが、21世紀までの戦闘機より操縦法自体は簡便になっていたり、元々、ブライアンは縁日の射的が得意であったという意外な特技もあり、初心者としては驚異的な技能を見せた――
「ちぃっ!」
ブライアンは対進戦をしつつ、敵に接近すると、機体を横滑りさせ、相手の射線を外すと、ガウォーク形態になり、ビームガンポッドを連射する。(この世代になると、実体弾に代わり、ビーム兵器がVFでも主流になりつつある。だが、ビーム兵器は宇宙国家では防御策が確立されているため、実体弾式も使用可能なようにされている。ガミラス帝国や白色彗星帝国、暗黒星団帝国などとの戦争では、実体弾のほうが良く効果を見せたため)SV-51(正確にはSV-52か)はビームのガンポッドという新兵器に対応できなかったらしく、あっさりと蜂の巣になり、炎上。墜落していった。
「ふう。昔にコンシューマーゲームでやったシミュレーターより楽だな。技術の進歩だな」
ブライアンはレースで名を挙げた後、その当時に担当であったトレーナーに付き合う形で、コンバットフライトシミュレーターをした経験がある。ジョイスティックを用いる本格派のものであったが、可変戦闘機の操縦はそれよりも簡単になっている。
(おそらく、戦争の繰り返しで、軍全体で熟練パイロットが減っていったせいだろう。民間軍事会社も栄えているようだしな。最も、『じゃじゃ馬』は残っているようだが)
その推測は当たっている。デザリアム戦役の後の時期になると、連邦軍は人手不足の有様であり、特定の部隊のみに熟練パイロットが集中する有様であった。白色彗星帝国との戦争で熟練パイロットの多くが戦死した傷が癒えぬうちにデザリアム戦役に突入したせいであった。コスモタイガーが急速にブラックタイガーを淘汰し、癖のあるコスモ・ゼロを退け、主力機の地位に収まった理由も、その万能性故だ。とはいえ、熟練パイロットは『じゃじゃ馬』を好む傾向も強いので、VF-19などが人気なのも事実だ。
(異星人と戦いながら、第二次大戦以来の因縁が続くというのも因果だな。ヒトラーも何かの指示で動いていたというのが自然だな)
未来世界では、かつての枢軸国の姿が巡り巡って、ジオン公国を生み出した。結局、ドイツ第三帝国の『対ソ戦勝利後の構想』(日本と対決するというもの)が帝国の滅亡後に実現してしまう形となり、日本連邦は組織と公然と対決するようになった。ナチスの負の影響は同位国である帝政カールスラントを滅亡の瀬戸際に追い込んでしまうことになった他、似た体制のコロニー国家を未来世界で生み出すという皮肉な結果を生んでいる。ナチスの生き残りが元同盟国の日本と対決の道を歩むのは、ヒトラーが生前に抱いていた未来予想に基づくものとされるが、晩年期のヒトラーは日本に親しみを強めていた上、もう一つの同盟国のイタリアが当てにならなかった故の変節であるので、残党はヒトラーの生前の方針では動いていない。
(ヒトラーの手から離れた後の残党の手綱を握る首領は『神の一柱』だというが……俄には信じられんな)
ショッカー首領の正体や、ジオンを産むに至る影響力に身震いするブライアン。とはいえ、敗戦後に三国同盟の内情が暴かれたのもあり、日本連邦がカールスラントに冷酷に接する原因になっていることも聞いている。ヒトラーと国家滅亡後の組織を糾合し、大戦時の構成員が減り始めるであろう時代にまで存続させた手腕を持つ『首領』の存在が謎を呼ぶのである。
「お、あれがそうか!」
その大きさ故か、そこからでもインペロの姿がよく見えた。空中を推進器(波動エンジン)でかっ飛んでいる以外はまさしく、旧イタリア王国海軍最新最強のリットリオ級である。細かい艤装品を自衛隊の攻撃で破壊されたか、ところどころで黒煙を吐いている。バイタルパートは抜かれていないが、艤装品(副砲や高射砲など)は一部が失われている。
「インペロを視認した。繰り返す……」
と、報告を入れる。鉄の城という形容がふさわしい同艦だが、万全ではない。その事は司令部に残念がられたという。とはいえ、自衛隊が対艦ミサイルと榴弾砲で数時間も猛攻撃を加えていたにも関わず、重要部の装甲は無傷であるなど、戦艦の装甲を見せつけている。副砲は後部の二基が使用不能にされており、高射砲はかなりが破壊されている。自衛隊がそこに猛攻を加えた事がわかるが、ミサイル程度では、戦艦の装甲は撃ち抜けなかったようで、不発になった対艦ミサイルが突き刺さっている箇所がある。
「よし、今からコスモハウンドで殴り込みをかける。飛行甲板をクリーンにしとけ。クレーンはなぎ倒して構わん」
「分かった。味方の戦闘機は?」
「あと数分で合流する。扶桑の司令部に報告しとけ」
「了解」
黒江はコスモハウンドを発艦させる。自分が操縦して。同時に、ガイアから伝わった『機動甲冑』も試作品を纏った空間騎兵隊(同乗していた)が使う形で同行する。
「それと、空間騎兵隊も同行するから、奴らに雑魚を任せる」
「シーガルとハウンドを使うのか?」
「そうだ。ラ級はでかいから、ハウンドとシーガルの二機は楽に着艦できる。お前も制空権を確保したら、合流しろ」
「了解」
仮面ライダーとプリキュアプラスαはシーガル、コスモハウンドには空間騎兵隊が一個分隊ほど同乗している。空間騎兵隊は機動甲冑の隊員も含めれば、分隊より多少多い程度だ。なお、スカイライダーは自力で飛んでいたりする。そして、それを捕捉していたインペロでは。
「ふふふ……来るがいい」
律儀に飛行甲板に仁王立ちの仮面ライダー四号。三号と違い、脳改造済みなせいか、組織に忠実な兵士である。飛行服を着ているようなデザインのボディを持ち、明確に『口』があるマスクをかぶるなど、本来の四号であるライダーマンに近い印象を与える。彼の素体になった男は大道克己。正史では『仮面ライダーエターナル』になっているはずの男であった。脳改造をされた事で、完全な極悪非道かつ、残忍な振る舞いになっており、三号からは『所詮は人形』と見下されている。脳改造で倫理が完全にぶっ飛んでいたからだろう。三号は首領の『お気に入り』であるが故に、改造前の人格を保つが、四号は戦闘マシーンでしかない。そこが四号という存在の穴であった。
「大元帥。四号に好きにさせて良いのか」
「奴の量産計画も進んでいる。奴のビーグルもな。試作品には試作品にふさわしい死に様をしてもらおう。」
マシーン大元帥も、ヨロイ騎士の質問にそう返す。四号は捨て駒だと。インペロの艦橋で指揮を取る彼の狙いは、以前からの宿敵である城茂と風見志郎である。
「主砲の装填は?」
「させておけ。学生や教諭共への見せしめに、地上にかませるようにな」
だが、この時に対艦用徹甲弾を装填しなかったことが仇となるのだ。その上空でブライアンは味方を待ちつつも、コックピットの中で、軽いウォーミングアップを始めるのだった。
――インペロとの交戦の報告がなされた扶桑の軍司令部では、ヒーローユニオンの活躍により、地下に幽閉されていた旧503の隊員の一部が救出され、処置が終わった(1949年まで幽閉されていたので、年齢的に20代に入っている)ため、64Fへの転属が決議されていた。その隊員こそ、503の旧隊員であった『川口文代』大尉である。(二階級特進。戦死扱いであったため)ヒーローユニオンの『光戦隊マスクマン』の活躍で救出されたのだが、地下に幽閉されていたためか、彼女は時間感覚を失っていた。教導部隊が彼女を欲しがったが、日本の介入で変な辞令が出るのを嫌った前線司令官らの判断で、64Fに配属されることとされた。当時、事変以来の軍歴持ちの魔女が前線で減少していた故の判断であった――
――扶桑の統合参謀本部――
「先輩たちの名代で、あなたへの辞令を伝えるわ。64Fへの配属を命ズ、よ」
「セラ、あなたが大佐だなんて」
「対外的には大尉よ」
「なんで、階級を詐称しているの?」
「源田司令の意向よ。うちの部隊、佐官が多いから」
セラは尉官を装っているが、実際は大佐の階級にある。これは源田が『佐官を独占している』という批判に配慮したためだが、尉官を遥かに超えた権限を持つことから、情報部の所属を疑われていた。しかし、実際には単に大佐である魔女を『大尉』として申告していたからで、源田の策であった。『大戦初期からの魔女は64Fで集中管理し、運用する』方針は批判も大きかったが、軍に残留する希少な精鋭魔女の真価を発揮させる手段であるため、表だっての異論を唱える者はいない。今次大戦が終われば、魔女の運用は縮小へ向かう。それは目に見えているからだ。第二世代理論による技術革新はあれど、空戦魔女の存在意義が薄れたのは否めない。日本としても、さほど魅力を感じない異能であるのは事実だからだ。故に、あらゆる『似た異能』を魔女の枠組みに組み込んでいる。
「あなたも聞かされたわね?64Fのことは」
「ええ……。でも、なんで、あたしが隠者扱いなのよ」
「戦死扱いで数年経って、家族のもとに戻れると思うの?無用なトラブルが起きるわよ」
それはセラの言う通り。史実の敗戦国では『戦死は誤認で、戦後に必死に帰って来たら、妻が別の男と結婚していた』なんて事は多く発生していた。妻側も『今更、戻って来られても……』と困惑した末に、お互いの関係が崩壊したケースは多い。そのため、隠者として64Fに属する方がマシである。特に、統合戦闘航空団に属していた魔女は遺族年金も膨大になる。家族としても、生計をそれで立てていると思われるので、戻って来られても困るのだ。
「親には知らせないわ。兄弟がいれば、その子たちが成人した段階で真実を知らせる。知らないほうが幸せなこともある」
「確かに。でも、統合戦闘航空団が廃されたというのは?」
「本当よ。506が政治的過ぎたのもあってね。501だけ存続させるのも問題だからと、一律で廃止されたのよ。その代わり、メンバーの少なからずは64Fに配属された」
セラは嘘はついていない。統合戦闘航空団は506での政治面の暗闘が問題になり、64Fの結成と引き換えに枠組みが解消された。ヒスパニアなどの国々はこれでエースを引き揚げたが、ダイ・アナザー・デイの戦いで結果的に日本連邦の影響力が増大し、連合国の中で主導権を握り始めたので、中小国は軍事的に意見を言える立場では無くなった。
「あたしが手筈は整えてある。次の定期便で南洋に発ちなさい」
セラは彼女をこうして、南洋に送り出す。統合戦闘航空団の旧隊員の多くは戦死扱いであり、その役割の多くは既に歴代のプリキュアらが担っている(中には、旧隊員がプリキュア化したケースもある)が、本来の魔女、とりわけ空戦分野での衰勢は拭えない。川口のような『大口径砲好き』は少数派であり、携行弾数の多さを理由に、多くは12ミリ~15ミリ機銃を好んでいる。だが、リベリオンという強大な補給を絶たれた連合国は対重爆の観点もあり、20ミリ~30ミリ砲への刷新を進めている。これはジェット戦闘機はごく初期のもの以外は20ミリ砲を持つからで、補給の観点からは合理的であった。また、対人戦への移行に伴い、相手が重防御の米軍機になったことも大きい。
「待って、敵は怪異じゃないの?」
「怪異はもう、さほどの脅威じゃないわ。敵は連中の手に落ちたリベリオンよ」
それを明言するセラ。当時は既にジェット機が普及しつつあり、レシプロ機の時代のような野戦飛行場は用を為さなくなった。アスファルト造の長大な滑走路を持つ飛行場が当たり前となって、軍事的な意義が薄れた航空ストライカーユニットの運用も縮小されつつあった。その救世主と目されていた『第二世代理論式』は高価であり、当時は整備要領が確立されていないことから、本土防空部隊への配備が優先されていたため、64Fにもごく少数のみしかなく、実戦運用は困難であった。当時は機械化航空歩兵(空戦魔女)の存在意義が大きく揺らいでいたため、第二世代理論式ユニットの普及は急務であったが、魔導ジェットエンジンの再燃焼装置の装備とその熟成に手間取っていたためもあり、配備計画は既に破綻していた。メタ情報の伝搬で、山本五十六や井上成美などの海軍左派の提督達の実務能力が疑問視されてしまうばかりか、旧来の航空主兵論が力を失っていた背景もあり、扶桑皇国は(空母機動部隊の高額化もあり)『ネオ大艦巨砲主義』と揶揄される『艦艇の大型化』が進んでいた。これは『どうせ、長期戦になれば勝てないんだし、数回の決戦で完勝するしか道はない』という日本側の悲観論者らが主導しての軍備整備であった。扶桑が南洋に資源を依存していた故の彼らが扶桑に選択を迫った結果でもある。
「セラ大佐!」
「どうした?」
「ハッ。敵艦隊がハワイに集結を始めた模様です!」
「来たわね……。来ると思ってたけど。64Fの主力が不在の時を狙って来たか」
セラに知らせを持ってきた、参謀本部の兵士は続ける。
「ハッ。その艦隊の旗艦はモンタナの発展型の模様!」
「数ヶ月前に返り討ちにしたのは、小手調べってことね。こっちの戦艦は尽くがドック入りしてんのに。……潜水艦隊で足止めをするしかないわね。司令部に具申して。山本閣下の名を出していい!」
「ハッ!!」
「川口、あなたは荷造りを急いで。艦隊はこっちでどうにかする」
「わ、分かったわ」
セラは本来の階級の権限を以て、指示を飛ばす。敵は連合艦隊主力がドック入りした隙を突いてきたのだ。この窮状を救う救世主を目されていたのが、当時に海上自衛隊から派遣されていた『そうりゅう型潜水艦』であった。同級は扶桑の潜水艦隊が陣容を刷新するまでの繋ぎを務めており、ダイ・アナザー・デイで殊勲を挙げている。21世紀日本での新鋭潜水艦であったため、リベリオン海軍の装備では手出しできない性能を誇っていた。それはこの時期でも同様であった。リベリオン駆逐艦は『ヘッジホッグ』も装備していない(ブリタニア開発の兵器であった上、対潜兵器の開発が停滞していたため、リベリオンには存在しない)有様であったため、そうりゅう型潜水艦は鯱の如くの『海の狩人』として君臨していた。海自としては(旧型装備が相手とはいえ)実戦証明が必要と判断し、ローテーションで扶桑へ派遣していた。彼らは扶桑の潜水艦隊が伊号潜水艦から戦後型へ刷新されるまでの軍事的な繋ぎの役目も果たしていた。日本は喜々として、おやしお型潜水艦も派遣し、その実力を誇示し、49年までに多くの護衛空母や中小艦艇を血祭りに挙げてきている。扶桑が海上戦力の近代化途上にも関わず、戦線を支えられている原動力が彼らである。そのため、実はダイ・アナザー・デイで金鵄勲章を授与された自衛官は潜水艦の乗員が最初であった。
「自衛隊から、機雷をサンフランシスコに撒く作戦も提案されておりますが」
「採用よ。Gフォースの対潜哨戒機に連絡、全力出撃で太平洋艦隊の足止めをさせると」
「ハッ!」
「前進泊地の艦は三河と水戸に叩かせる。64Fの第二大隊を出撃させて」
改大和型戦艦で唯一、稼働中の『三河』と水戸型戦艦『水戸』を組ませ、南洋近くの泊地を叩くように付け加える。当時の連合艦隊で稼働中の戦艦はその二隻のみ。秋になれば、水戸型の姉妹艦が竣工していくが、それは数ヶ月も先のことだ。
――かくして、64F第二大隊(留守部隊)は上空直掩のため、改ラー・カイラム級へ改造されたラー・カイラムを出撃させる。随伴はGフォースの新装備である『ウルトラホーク一号』と『マットアロー一号』であった。
「マカロン、あなたが指揮を?」
「一応は少将だもの。親父(元・海軍少将)に文句言われてね。将官にふさわしい事はやっておかないとね」
なんと、艦の指揮はキュアマカロンがしていた。現役の海軍少将であるので、当然といえば当然だ。その副官はキュアマーメイドである。二人は転生先が北郷章香と竹井醇子。師弟関係にあった魔女同士であり、竹井は移籍はしたものの、海軍出身である。プリキュアとしては後輩のキュアマカロンだが、魔女としては竹井と坂本の師であるので、そこは師弟関係がものを言ったらしい。
「あなた、大丈夫なの?」
「任せて。魔女としては、私はあなたの師よ、みなみ?」
「ぐぬぬ……プリキュアとしては私の方が先輩なのに」
若干、拗ねているキュアマーメイド。
「坂本の手前、あなたが指揮を取るわけにもいかないでしょ?坂本は昔気質だから」
と、マカロン自身は魔女としての師弟関係は気にしなくなっているらしいが、坂本の手前、以前のとおりに、師として振る舞っている事を明確にする。坂本は生真面目+師弟関係を大事にする質故に、北郷がプリキュアになっても『先生』と呼ぶ。そこはキュアマーメイドになった竹井からは不満がられているが、坂本は『魔女としての筋を通せ』と述べるなど、多少の融通の効かなさと、坂本なりの流儀を見せている。
「あー、ミラクル?あなたのハンドメイドした試作機を使っていいわ。マジカルはラグナメイルで出てもらって」
と、艦内電話でサラッと凄いことを許可する。
「サラッと言ってるけど、凄いことにならない?」
「せっかくの機会なんだし、使わせたら?管理局の放出した魔導炉のデータ取りになる」
「何をスターターにするのよ」
「それ用に確保してある光子力エンジンよ。あれなら、核融合炉よりも高電力を出せるし」
それはビューナスやダイアナンから取り外された旧型の光子力エンジンである。35万馬力程度のものだが、スターターとしては十分な電力を供給できる。核融合炉はスターターとしても『供給力不足』になり始めているのがわかる。
「マカロン、起動終わったよ。そのままカタパルトを使う」
「あー、補助カタパルトを使って。戦闘機用の奴。12mくらいじゃ、この艦の正規のカタパルトは使えないわよ」
「わかったー」
20m級の機動兵器想定のカタパルトは使えないので、戦闘機用の補助を使うみらい。機体の操縦系はMSのそれに彼女独自のアレンジを加えたものであり、彼女の数年来の研究の成果が表れている。
「心配だし、私も出るわ。こっちも補助用を出してもらう」
「サイズがバラバラだものね、あなた達の機体」
「私だって、生き返ったら『焔龍號』を使うなんて思ってもみなかったわよ」
「日本の連中にエロいとか言われる、フェイトよりはマシじゃない?」
「あれはアナハイムの趣味じゃないの?も~」
それはフェイトが乗る『ヴィルキス』のことだが、無駄に再現度が高く、ヴィヴィオからは『ママって、ヴィルキスに乗ると、ストレス発散してない?』と呆れられるほどの再現度である。製造元がアナハイムであること、そのプランを通させたのが、大株主である野比財団(その当主である『ノビ・ノビタダ』というべきか)を考えると、『UC計画』の裏で、マーサ・カーバイン・ビストの傲慢に消されたアナハイムの優秀な技術陣の後継を育てるための『育成プログラム』であることがわかる。
「ビストのあのオバタリアンが技術者を口封じしたもんだから、アナハイムの技術陣の腕が落ちちゃって。その後継ぎを一人前にさせるために、色々なアニメのロボを製造させてるそうよ」
「だからって、ヴィルキスの全仕様を再現する必要あるの?」
「さー。アナハイムの事業部に聞いて、そういう事は」
と、世知辛い事情が話された後、二機が順番に射出される。反対側のカタパルトからは、ガイアガンダムとガンダムスローネドライが射出される。こちらは通常のカタパルトでの射出だ。ガイアはコズミック・イラ世界からの鹵獲品に改造を加えたもので、MA形態への変形は運用環境の都合もあり、封印されている。その代わりに、武器は未来世界のガンダムタイプ用の規格品に改良されており、火力面での心配はない。スローネドライについては、元々がサポート用なので、武器は他の機体のモノが流用されており、機動兵器サイズの斬艦刀を扱うためか、駆動系がダイ・アナザー・デイ当時より強化されている。
「マカロン、刀を持たせろって言いましたが、斬艦刀は大きすぎなような」
「日本刀は慣れてるでしょ?別ラインで用意された五大剣(ヴァイサーガ用のものを再現)は西洋の剣だから、勝手が違うもの」
キュアエースは愚痴るが、スローネツヴァイなどのバスターソードではイメージが悪いと言うのは知っていたので、妥協したようだ。
「しかし、こんな長大なものを振り回せたものですね…」
「示現流の使い手なら、当然のことよ。長巻に近い扱いでいいわよ」
「さすが、剣道の有段者……」
「事変の時は軍神の渾名持ってたもの」
と、何気に昔とった杵柄をアピールするキュアマカロン。北郷としては二刀流の剣士で通ったため、実は刀を持たせると、事変世代の魔女では最高位に近い実力がある。プリキュアとしてのイメージを守るためか、最近は刀を持っていないが、持たせれば、S級の達人である。
「プリキュアに戻ってからは、刀の腕を見せる機会がなくて、実に残念だわ。今でも、穴拭くんくらいは軽くのせるのだけど」
「恐ろしいですわ…」
智子を『軽くのす』ことができると明言するマカロン。七勇士の剣技ナンバーツーは伊達ではないと言わんばかりだ。
「こればかりは転生先での経験だから」
「ぐぬぬ……私もそれなりに腕があると……」
「メロンパン、用意しとくわよ」
「~~~!」
口から『どこかで聞いたような台詞』が出るのを必死に堪えるキュアエース。プリキュアとしての現役時代での年齢の差がここで出たというべきだろう。機体越しでも、顔から火が出る勢いで赤面するのが丸わかりである。
「マカロン、エースをあまりからかわない。まだ若いんだし」
「軽い冗談よ。エース、後でなのはの様子を伝えるわ」
「こういう時にいいますの!?全く……」
完全に遊ばれているエース。仕方がないが、エースは転生先での『アリサ・バニングス』としても20代前半。親の会社で重役をしてはいるが、まだまだ青二才の年齢。マカロンは既に北郷としての30年ほどの人生を送っているので、年の功は大きい。現役時代にプリキュアになった時の年齢も差があるので、エースは先輩風を吹かせるところではなかった。確かに(アリサとして)なのはと長い付き合いであるが、なのはがミッドチルダに行ってからは『ダイ・アナザー・デイ』まで絡む機会がなく、『フェイトよりも古い付き合い』の利点を活かせなかった。最近はなのはのことが気になっているが、色々な都合で戦友たちに任せるしかないのが歯がゆいらしい。
――かくして、一同は敵艦隊泊地への攻撃準備に入る。かたや、海底軍艦を鹵獲し、仮面ライダー四号を倒し、『プリキュア5の世界』の解放を目指して。もう一方は連合艦隊のドック入りという扶桑海軍の窮地を救うため。二つの世界で共通している事は『大和型戦艦の血統を継ぐ者が敵方の最強戦艦に挑む』構図だろう。64Fの機動兵器が乱舞する空の眼下では、扶桑海軍の最新鋭戦艦『水戸』がその勇姿を見せている。殴り込み先はジョンストン島。かのミッドウェイ島の近隣エリアである(約1000kmの距離はあるが)。ミッドウェイ島に立ち入る事を日本の政治家などは恐れているが、扶桑としては、旧・太平洋共和国領に近いため、前進拠点としての占領を意図している。その小手調べも兼ねていた。プリキュア5の世界での決戦と、魔女の世界での強行偵察。双方で今後の情勢を占う闘いの幕が上がる……――