――扶桑の航空戦力は日本軍義勇兵のお礼参りの頻発による司令~幹部級の病院送りもあり、中央の統制があまり効かない状態となった。これに日本は自衛隊の幹部層に統制をさせる方法で対処した。また、次第に旧軍での将官層を予備役編入させ、佐官級をその後釜に添える人事が行われる一方、史実で不名誉な記録のある者は前線に突っ込ませる懲罰的人事も横行しており、士気は高いとは言えない有様であった。そんな中、64Fの主力から『ハカイダーの復活とその暗躍』が通達されたことで、日本連邦はプロフェッサー・ギルの遺産と言えるものの調査を始める事になった。時代は既にキカイダーの開発者の光明寺博士は亡く、その孫からひ孫の時代に移っており、光明寺博士とその子達がキカイダーやビジンダーのの保守点検などに必要な資料以外を破棄したこともあり、プロフェッサー・ギルの技術を理解できる人間はもはや、『光明寺博士の子孫』しかいないと目されている――
――ハカイダー四人衆の復活と人造人間キカイダーの復活は表裏一体であった。ハカイダーが復活すれば、キカイダーも復活するのだ。ジローは仮面ライダー二号/一文字隼人の再改造のため、ハワイから日本に帰国。一文字隼人の体の内部メカを二度目の再改造を受けた本郷と同等にまで刷新するための助手として招聘され、その作業が進展していた――
「本郷さん、一文字さんの再改造は?」
「内部メカの刷新、改造された骨格と人工筋肉も後の世代のものへ取っ替えるから、長丁場だ。今日は胸部の再改造作業を終えたところだ」
「変身ベルトも?」
「俺の二度目の再改造で設置したものの予備品を使う。元のものは23世紀の博物館に寄贈するよ」
療養生活に入った黒江は、本郷に一文字の再改造の進捗を訪ねた。予想以上の損傷ぶりであった事から、人工筋肉と人工骨格の刷新も行う事が伝えられる。
「分かってると思いますけど、拒絶反応の抑制は?」
「最初に改造された時点で処置済みだよ。無論、念の為に再処置を施すがね」
「こっちの戦いは直に落ち着きます。状況はまた連絡入れます」
「わかった。ゆっくり休め」
「あい」
この戦いが終われば、ブライアンは折を見て、元の生活に戻る。だが、高校卒業と大学入学までのお膳立てはのぞみにしてもらう(自分はサボり癖があるため)という。その事から、ブライアンは高校の単位を取らせる(競走ウマ娘と言えど、高校卒業までの単位取得はきちんとする必要がある)つもりらしい。これに黒江も苦言を呈したが、父親と揉めたり、トレーナーが姿を消した理由の一つは自分の低迷による周囲の誹謗中傷であり、自分を誹謗中傷から守るため、協会の決定に粛々と従ったということを知らされたことのトラウマも作用して、複雑な心境である事から、戦いが終わった後も、しばらくはこのままでいるという。
(ブライアンの奴、内心はトレーナーが去ったこと、親父が自分を酒蔵の後継ぎとしか見ていないことに傷ついている。奴の親父は『ピークアウトで成績の挽回は不可能になったから、晩節を汚さないうちに引退して…』と考えたんだろうが、ブライアンはあくまで走る事を望んだ。たぶん、和解は成るまい。こういうすれ違いは片方が死ぬ時でもないと、お互いに理解はできないだろうしな)
黒江はブライアンとその父親の確執には悲観的な見方であった。自身がその類のものをいくつも見てきたからだ。親兄弟であろうと、一度生じた確執の解消は八割方、望めない。特に金や跡目の問題が絡むと、だ。
「ああいう類のものは片方がいなくなれば、自然と消滅するものだが、しこりが残る。ブライアンもかわいそうに」
ブライアン自身も、それは頭では理解しているだろう。だが、個人の心情というものがある。そのあたりの精神的な整理をつけるため、トレセン学園と今は距離を置きたいのだろう。それも史実で早世している故の悲運であろう……。
――プリキュア達のブロマイドはプリキュア達の副収入ともなっている。64Fの資金繰りがいい理由の一つでもあり、日本で高値で売買されている。扶桑では(時代的に、フリフリの服装に嫌悪感を覚える者もいるので)意外に売れていない。当時は時代的に、扶桑は軍事を有事に際して、何よりも優先する風潮が残っていたためでもあるが、都会ではそれは(事変の教訓で)薄れてきていた。農村地域も(旧時代の風習が通じなくなってきたため)次第に世間体を気にし、年頃の娘達の洋装に寛容になっていく。また、魔女の社会的優遇は縮小されたが、金銭面の優遇は継続される事が確定した事から、地主達も(世間体が守れる事から)魔女かつ軍人になった者には寛容になっていく。この虫の良さが農村地域の衰退の原因の一つになるわけである。1949年には小規模農村の廃村が次第に始まっており、戦争はそれを加速させる一つのきっかけとなったのである。後世の歴史家がその原因を探っていくと、(当時から見れば、バリバリの洋装である)プリキュアらのブロマイドの売上増大が絡んでいたのだ――
――プリキュア達は魔女の世界に現れた後は『変身した姿』のほうが(却って)プライベートタイムを確保できるという逆説的な事態となった。日本経由で、変身者の情報が『まるっとお見通し』だったからだ。ダイ・アナザー・デイ時点で、それは大問題であった。前世がその変身者であっても、現世では別人として生きている者も多いからだ。だが、軍事より政治と文民の都合が優先される時代を迎えたため、彼女らはプライベートもあったものではない事態に陥った。『それは有名税だ』と宣う野党の大物議員も出たからだ。その解決策が『変身したままで日常を過ごせ』というものであった。精神の平静を有事でも保てるようにする目的も兼ねてのものであった。のぞみは騒動に巻き込まれた後、日本の総理大臣や当局の上層部との面会の際、正装代わりを兼ねて、キュアドリームの姿で面会した。それが始まりとなり、他のプリキュア達も(プライベート時間を持つため)次第に追従していった。もっとも手間取ったのは、キュアメロディ(シャーリー)であった。クロエ・フォン・アインツベルンになりきる事を決める過程にあったフランチェスカ・ルッキーニにぐずられた(プリキュア化すると、胸のサイズが縮小するためで、シャーリー本人はぶーたれたが、ルッキーニにとって『おっぱいは母性の象徴』なのだ)のだ。結局、シャーリーがキュアメロディの姿でプライベートを過ごせる時間は(シャーリー自身が自由リベリオン空軍で最強の撃墜王であった事から)相対的に短めであったが、その立場上、仕方がない事であった――
――対照的に、ペリーヌ・クロステルマンとしての仕事を休んでいたキュアスカーレット(紅城トワ)のほうが見かける機会が多めであった。扶桑のさる華族の令嬢という方便で過ごしているが、トワは一国の王女であったので、あながち嘘ではない。扶桑の鎌倉(日本でも、戦前の鎌倉は華族の避暑地/別荘地であった)に居を構え、ペリーヌ・クロステルマンとしてより、むしろ裕福な暮らしを満喫している。同邸宅はY委員会の会合の開催地にもなっており、キュアスカーレットの転生後の出自のバックグラウンド(方便として)に説得力を与えている。キュアマーメイド/海藤みなみも直に祖父から『竹井醇子として、竹井家を継ぐ』立場にあるため、意外に転生後のバックグラウンドとして、名家の出であるプリキュアは多い。のぞみは転生後において、士族の出であるが、草薙流古武術の継承家である都合、士族としての家格は黒江家より上の扱いであった。扶桑は安土時代以降も外征が続いていたので、本来の家格をさほど気にしないで済む『実力主義』が魔女の間に根付いており、黒江や圭子のような中級以下の士族出身の将校が『上級華族の令嬢』の黒田を指揮することも、大衆や部内で(最初から)受け入れられている。ノブリス・オブリージュの精神が国情的に根付いていた故で、そこが扶桑独自のアイデンティティの一つであったし、プリキュアらが扶桑の大衆に受け入れられた理由であった――
――ガリアが扶桑との対決へひた走ってしまった理由は『近世に至るまで、武士団に騎士団が蹂躙されたり、近世の軍隊の一個連隊が殲滅された』過去の記憶による恐怖による。魔女の世界では、扶桑の武闘派武士団が傭兵として、欧州の軍事力を蹂躙していった歴史があり、それを拠り所に、リベリオンも黎明期に扶桑移民の瑞穂国を滅ぼす際、一部の騎兵隊が虐殺を行っている。その報復を望んだ『瑞穂国の生き残りの末裔』達は多くがティターンズ政権樹立に貢献。ティターンズの延命の立役者となる。元は白人至上主義であったティターンズの延命に有色人種が貢献するのも、ティターンズという存在からすれば、痛烈な皮肉であった。その彼らと裏で結んだのが、ガリアの英雄とされる『シャルル・ド・ゴール』であった点で、ガリアの悲運は決定づけられたのだった――
――白人至上主義、あるいは優位主義を捨てざるをえない状況に置かれた自由リベリオンの将兵は実質的に日本連邦の弾除けであったが、黙々と任務に従事した。日本連邦の信頼を得るしか、彼らに生きる道はなかったのだから、当然であった。リベリオン本国軍より練度が高かった幸運はあるが、組織立っての作戦行動は(予備人員の確保が困難であったため)未だ不可能であった。シャーリーは組織拡大のためのプロパガンダ要員扱いであったわけだが、本人は(当然ながら)不満たらたら。プリキュアでいることで、地上待機を避けたわけだ。シャーリーは前世の姿でも有名なので、プリキュア化することで、逆説的に取材その他を避けたわけだ。気性はガサツになってはいるが、比較的に転生後の気質が残っているので、人当たりがいいほうであったのも功を奏し、彼女は遠征終了後に大佐に昇進の予定であった――
――地球連邦軍からの支援で戦闘ヘリコプターなどの新兵器を得た扶桑軍は攻勢を計画していたが、日本の政治的抗争の余波でまたも中止されてしまった。日本も数で互角に持ち込めないのは分かっており、必要最低限の防衛線の維持に専念させたかったが、自分たちが旧式兵器を(軍縮という大義名分で)処分させ、それすら難しくさせた事実を突きつけられ、何も言えなくなった。結局、扶桑は兵器の鹵獲とそのままの運用を推進しており、敵味方で同じ兵器を使うことも日常であった。MSについては、連邦軍からの援助でジェガンなどの供給を受けており、ティターンズよりは年式の新しい機体を持つに至った。ティターンズは良くて、グリプス戦役時の高級機。第二次ネオ・ジオン戦争すらもずいぶんと経った時期においては『数世代は旧型』である。ダイ・アナザー・デイの後、プリベンターによる査察でティターンズ派のシンパが多く摘発されたため、新型機の補充が難しくなった。その一方で、横流しでハイザックやマラサイの供給がなされたため、『魔女の世界』にチタン合金セラミック複合材やガンダリウム合金が出回ることになったが、1940年代の工作機械では再利用も不可能であるため、扶桑のみがそれを有効活用できる状況にあった。チタン合金セラミック複合材でさえ、1940年代という時代からは『未知の金属』であったので、ガンダリウム合金はなおさらであった。入手できた資材はMSなどの補修などに使用されたが、扶桑の自力生産用の研究サンプルとされたものもある。連合国では扶桑しか、それを加工して資材にする術を持たないので、当然である。扶桑は1945年から宇宙進出のための研究を国家ぐるみで始めていったが、それは怪異と戦闘が続けば、鉱物資源が星から無くなってしまう危険が年を追うごとに増大するからであった――
――扶桑は太平洋戦争を乗り切った暁には、月面探査と着陸を済ませ、資源確保への第一歩を刻む予定であった。アステロイドベルト帯から小惑星を運搬し、資源衛星にする計画も決定済みであり、扶桑の目は地球を離れ、宇宙に向けられていた。つまり、既に地球連邦政府の力による樹立も視野に入っていた事になる。つまり、魔女の世界は『地域ブロックごとに列強諸国が治める』時代から『超大国が世界全体を統べていく』へ歩みを進めつつあった事になる。だが、それ以前に、太平洋戦争は長期化していた。扶桑は短期攻勢による早期決着を企図していたが、日本がちゃぶ台返しで『持久戦と少数精鋭部隊のゲリラ戦』をさせたことで、彼らは扶桑軍部隊の練度のバラツキの大きさ、人員の政治思想の統制に悩む事になった。日本は硫黄島と沖縄の戦訓から、後方の拠点に引きこもっての持久戦、ペリリュー島とサイパン島の戦訓で、ゲリラ戦を信奉する者が多かったが、扶桑は大半の兵が正規戦想定の訓練しか積んでいなかった。従って、ゲリラ戦を知り、実践可能な者に依存するしかなくなり、64Fの負担は極大であった。また、魔女達はゲリラ・コマンド攻撃への耐性が無きに等しかったので、向いてそうなのに、それを非難する有様であった。プリキュア達が扶桑で英雄とされたのは、魔女達が拒絶したそれらを引き受け、成果を挙げたからである。ストライカーユニットそのものの生産枠が縮小傾向になったのは、魔女を使うことの費用対効果が『見合わない』と判断されたからである。まさに魔女の存在意義が大きく揺らいだ時期である――
――年長組はその傾向に強く危機感を覚え、ゲリラ・コマンド教育に志願していった。太平洋戦争こそ、魔女そのものの今後を占う分水嶺。その自覚を持った者が多かったからだ。つまり、『下手をすれば、社会から排除・隔離されてしまう』。それは未来世界におけるニュータイプの例で証明されている。過去の七勇士の強さは『魔力だけに依存しない鍛錬の賜物』。それがダイ・アナザー・デイとデザリアム戦役で認知され、太平洋戦争で実証されると、『魔女の未来を切り拓くために』というスローガンを掲げ、それまで『汚れ仕事』扱いされていた任務に従事するようになり始めていた。B世界の魔女たちを隔離したのは、その流れに水を差しかねない思考と言動の者が多い事を鑑みての処置であった――
――実際に、芳佳BはA世界の現状を顧みない(当然だが……)言動を繰り返し、仲間内でさえ顰蹙を買う有様であったので、処置は正しかったという他なかった。芳佳Bは人同士の戦争を極端に嫌う一方で、引退済みの魔女にまで『動くことを強要する言動をした』事を咎められ、実質的に謹慎処分の身の上となっていた。ワーカーホリックさが自分の首を締めてしまったのだ。引退し、既に戦えぬ身の上のB世界の黒江と智子を蔑み、罵倒するという愚行は彼女自身の人物評価を落ち込ませる事となり、彼女は針の筵の有様となっていた。名誉挽回のために戦おうにも、相手は怪異でなし。別の自分は戦士としても、医者としても成功し、家庭を持っている状況。芳佳Bは自分の置かれた状況に遅まきながら気づき、愕然とした。のぞみはそんな芳佳Bを正し、引退済みの魔女の気持ちをわからせるため、自分が教育係を引き受け、リーネB共々に、自分の教え子として鍛え直した。これがのぞみにとって、転生後では初めての教育者としての仕事となった。罵られたほうの二人はカウンセリングを受けさせながら、ブロマイドなどの撮影に関わるなど、裏方の仕事に関わせることで、経過観察となった。芳佳Bの正式な謝罪はその決定後であった。これは無知が招いた事態でもあるので、後年に至るまで(ミーナと併せて)『無知の怖さ』として語り継がれる事となった――
――芳佳Bの一件はB世界の魔女達には『恥』であった。ミーナが物分りがいい代わりに、芳佳の頑固さが際立った形であり、それに同調したリーネも針の筵であった。自分たちの世界の理屈の通用しない状況は、若い魔女達にはキツすぎたのである。さらに言えば、自分達が(A世界では)まったく異なる状況にあることも。黒江と智子が現役バリバリのトップエースである時点で、B世界とは理自体が異なるのがわかるはずだが、二人の童顔(特にAは魔女である上、転生者であるので、10代で外見上の加齢はなくなったし、B側も童顔である)もあって、芳佳Bは同年代か、坂本くらいの年齢と早合点していたが、実際は坂本よりも、4~5歳は上の年齢であった。芳佳Bは『童顔にも限度ありますって!?』と驚いたのは言うまでもない。結局、芳佳Bは別の自分にも迷惑をかけた形になったが、なんとか許され、顔を隠しての医療業務に邁進し、リーネBは別の自分の影武者を務め、両親や兄弟姉妹への対応を引き受けた。リーネはA世界では表向き、『経歴を買われ、情報部に転属し、王室直々の特務についている』とされているからである。そうした取り繕いなどに無頓着なルッキーニBなどは強く反発したが、『首を突っ込んで、この世界に迷惑をかけるな』と坂本Bが言い含めたため、どうにかだが、世間へのごまかしは成功している。芳佳Bは誤魔化し(色々な理由で公にできない身の上の者もいるためだが)に塗れていると批判したが、坂本Bは叱りつけた。『それぞれの理由で近況をごまかすしかない者もいるんだ。下手に公にして、騒ぎになったところでどうする?腹を切れるか?以後は口を慎め』と。実際、情報部などの任務などに理解のある者は理由を知っても、それを口にしない。情報部などへの礼儀作法であるからだ。そういった事に無知か、機密保持に無頓着な『子供』が多いのも、坂本BとミーナBの頭痛の種であった――
――A世界の進歩した戦闘方法はB世界の魔女にも多大なメリットがあった。若手がいくら吠えようと、震電やP-51Hでも対応不能な高速型怪異はB世界にも『いずれは現れる』からだ。在来型ユニットで互角に戦える可能性を持つ魔女は世界トップ3クラスのみ。それとて、初見では落とされる可能性がある(事実、『史実』でハルトマンは初見で撃墜されている)。坂本Bはそれを予見し、A世界で培われた高速戦闘の術を来訪からの数年、必死に頭に叩き込んだ。B世界の技術力では不可能なモノもあるが、『技術はいずれ追いつく』とポジティブであった)坂本Bは自分の隠している一つの本心以外は『任務に忠実』であった。それが彼女の美点であろう。また、彼女個人の予測として、『怪異が撃滅された未来、人は同士討ちを始めるだろう』というものがあり、A世界との接触で、その確信を得たのである――
――ある時、キュアメロディとキュアスカーレットは『シャーリーとペリーヌ』という正体を告げた上で、坂本Bと会話をする機会を設けた。坂本Bは芳佳BとリーネBの行いを『自分の教育が至らなかったためだ』と最初に詫びた――
「まさか、ここではプリキュアという戦士に転じていたとはな」
「偶然と宿命に導かれた結果だよ、少佐」
「ええ。私もそうですわ。前世の能力と記憶が蘇った。そうとしかご説明をすることができないのです」
キュアスカーレットはペリーヌの人格が表層化している状態であるが、トワと口調がほとんど違わないため、メロディからは『わかんねぇよ!』と愚痴られている。どちらも高貴な身分(ペリーヌは革命前に領主であった家柄の出で、元の貴族。トワは一国の王女)であった関係だ。
「お前は何になっても変わらんな、シャーリー」
「よく言われるよ。で、どうなんだ?」
「黒江達には話したが、元の世界の上層部を粛清する。無論、責任は自分で取るつもりだ」
「やっぱ、そう考えたか。ウォーロックが効いたのか?」
「それだけではないよ。事変の時の遺恨もある」
「まさか、北郷さんの……?」
「そうだ。お前らの世界では黒江たちが止めたようだがな。私の世界では、それは起こった。故に、私は心に決めたのだ。いずれ、なにかかしらの手段で報復するとな。」
「するとしても、どうやって」
「事変のことを不満に思う『魔女出身の将校』は多い。彼女らを大和に乗り込ませ、大和を乗っ取る。そうした上で、日吉の艦隊司令部を吹き飛ばす」
「意外にガチだな…。あんたのことだから、参謀本部や軍令部に一人で斬り込むかと」
「たいそれた事をするのだ。仲間は多いほうがいい。無論、首謀者の名は末端には伝えんがな」
「やはり、少佐は…?」
「こちらでは歴然たる事実だ。そして、怪異化研究は許せん。日吉と陸軍参謀本部を消し飛ばして、開発責任者を土下座させたいくらいだ」
「やる候補なんだな?」
「そうだ」
と、坂本BはB世界の軍部の上層部をまとめて粛清する計画を立てており、転移時点でかなりの同志を集めていたらしい事を告白した。
「自分が混乱の火種になるおつもりですの?」
「いや、これは我々の個人的な復讐だ。事後に皆、靖国に入る腹づもりでな。宮藤には、赴任途中の飛行機事故で殉職したと偽るつもりだよ。無論、土方や軍令部の人事課の人員は抱え込んである」
「それで、宮藤さんが納得すると?」
「ペリーヌ、私の立場を考えてみろ。普通は何が何でも助けようとする。土方には酷だが……大事の前の小事だよ、私の世俗での生死など」
坂本Bは事が成れば、どこかの場所で自刃。表向きは『任地に赴任途中、飛行機事故であえなく死んだ』とし、遺髪を宮藤に渡させるつもりであった。どの道、生存しても『大罪人』となり、いずれは家族に類が及ぶ。そうなる前に『黒幕は誰?』という謎だけを現世に残したいようだった。
「そううまくいくか?」
「やってみなければわからん。もっとも、帰れば、の話だがな」
坂本Bは死に場所を既に定めたのか、どこか厭世的ですらあった。B世界の過去に何があったのか?それを二人は探る事にする。
「お話になられないのですか?その……そう決めた理由を」
「そうだな。折角の機会だ。話しておこう。あれは我々の世界での1937年、あるいはその1年後のことだ……日付が曖昧なのは許してくれ。なにぶん、あの時は子供だったのでな……」
坂本Bは二人に自分の恨みの根源を話し始める。A世界では、転生者と艦娘の力で防がれたが、B世界ではそうではなかった出来事を。豪放磊落と思われた坂本にも、心情的に許せない出来事の1つや2つはあるのだ。この後、二人は坂本から上手く話を聞き出し、64Fの最高幹部らに報告。坂本Bの本音を伝えるのだった。