ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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五百三十三話の続きです。


第五百三十六話「行間その二」

――結局、魔女の世界の艦艇開発は(必要性もあり)戦前からの傾向が一部は存続した。戦艦は開発が(日本連邦とリベリオンの果てない大艦巨砲主義により)縮小、各国は安価な重巡洋艦に傾倒し始めた。ミサイル装備さえあれば、重巡洋艦でも、戦艦並の戦力になるという見込みがあったからだ。この時点で怪異は各国の軍隊の仮想敵から外れ始め、対人戦が想定されだした事がわかる。だが、重巡洋艦は物理的限界があるため、結局は戦艦を二隻前後は稼働させている国々は多かった。大国の軍事的条件も『戦艦を五隻は常に稼働させられる財力を持つこと』とされた。核兵器の開発が進まず(扶桑は極秘裏に持つが)、潜水艦に軍事的意義があまり見出されなかった世界では、戦艦が最大最強の火力投射をこなせる乗り物であり続けた。扶桑は超甲巡洋艦が政治的理由で『巡洋戦艦』にカテゴライズし直されたため、改めての巡洋艦の新規開発をせねばならなくなった――

 

 

 

 

 

 

――デモイン級の高性能がこれでもかと宣伝され、国民からせっつかれた扶桑海軍は結局、航空巡洋艦の開発を差止め、重巡洋艦の開発を再開した。利根型はこうして、ヘリコプターの登場と水上機そのものの陳腐化で早期に陳腐化し、退役の運びとなった。その代艦の予定であった超甲巡は戦艦の枠に入れられてしまったため、新規に重巡洋艦を開発せねばならなくなった。伊吹型の更に次級の重巡洋艦はそんな政治的理由で生まれた。1949年の夏の段階では基本ベースを高雄型にするか、最上型にするかで艦政本部は大揉めであった。日本型は基本的に偵察や水雷突撃を前提に作られていたため、デモインのような『旧世代の戦艦に匹敵しうるバケモノ巡洋艦』には無力も同然と断じられてしまった。それに怒り狂った艦政本部はヤケクソのように、高雄型をベースにした新鋭重巡洋艦を開発した。何故、最上型でないのか。それは『8インチ砲の搭載を設計段階で考えてないじゃん!』という政治的理由によるもの。実際は換装前提であるのだが、純然たる一等巡洋艦として建造された最後の艦型であったのが決め手であった。最も、魔女の世界での高雄型は改装で仕様が二転三転した艦型であるが、史実通りの『水雷装備完備の図面』が参考にされた。(M動乱で『水雷装備など、とうに外されている』ことを通告したら、日本側に『バカ!』、『ノータリン!』、『オタンチン!!』などと散々に罵られ、実際に多くの駆逐艦がUボートの餌食にされた事から)扶桑はM動乱以降、『装備をとにかく盛る!航続距離は機関の換装や給油艦などの随伴でどうにかすればいい』という、史実寄りの建造・運用ドクトリンを選択。その関係で、居住スペースが既存艦では、却って手狭に逆戻りしたため、大いに不評であった。その関係で、駆逐艦に至るまでの大型化が急激に進展していったのである――

 

 

 

 

 

 

 

――ミサイル装備が大型艦では当たり前になり始めた関係で、日本連邦軍の戦艦は大和を範にする重戦艦、超甲巡が分類しなおされた『巡洋戦艦』に大別されていった。大和型以前の戦艦が自然淘汰されたため、必然的に重戦艦=大和以降の大型戦艦、巡洋戦艦=旧・超甲巡となった。各国の戦艦部隊が解隊されていったため、日本連邦軍は必然的にその穴を埋めるため、戦艦を二桁で保有し続けなくてはならなくなった。カールスラントの戦艦部隊の解体はその象徴とされた。だが、カールスラントは水上艦隊が有名無実化した事で、リベリオン(ティターンズ)に歯牙にもかけられない有様となった。カールスラントを元の軍事大国にしたくなかったNATOは『コントロールしやすい国』である日本連邦に魔女の世界での安全保障の多くを背負わせ、自分たちの普段の苦労を思い知らせるという、実に回りくどい手段で日本に真の安全保障を覚えさせる方法を取った。これは当時のNATOの仮想敵国に中国が加わりつつあったためで、日本を防波堤として再利用しようとしたのだ。それは成功しつつあった。長年の戦争に各国が疲れ始め、軍備を急激に縮小し始めたからだ。日本連邦が兵力不足に喘いでいる理由は、各戦線に必要最低限の兵力を置く必要が政治的ポーズの観点からあったからであるが、他国が急激に軍縮を始めた故の多正面作戦状態も理由であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――高雄型重巡洋艦は結局、大半が日本で記念艦となった。建造から30年が経過しようとしており、扶桑にとっては外貨獲得の手段として、最後のご奉公となった。だが、人気のある艦型であったため、扶桑国民から猛反対が起こり、4年ほどは旧母港に放置される有様で、代艦も竣工し終えた後にようやく売却が認められたのである。史実で高雄を接収した英国(ブリタニア)は(史実で高雄を海没処分した事もあり)『下手な事をすると、大使館が焼き討ちされるから、我関せずを決め込もう!』と決め込んだが、哀れ、史実の最期を知り、義憤に駆られた扶桑人の壮年男性(高雄の元乗員)にブリタニアの大使が銃撃(一時は瀕死に陥ったが、一命は取り留めた)される事態になり、結局、日本への高雄の売却が緊急で進められる理由付けに使われ、ブリタニアも記念艦としての整備費を負担することで、お互いに手打ちになった。その代艦が二転三転した結果、高雄型の正統な発展型たる新巡洋艦が収まる事で決着を見た。ミサイル巡洋艦の登場で、砲熕装備程度でしか区別がつかない、巡洋艦の旧来の区分は陳腐化しつつあったが、ミサイルが怪異には完全な有効足り得ない事から、開発が続く事になった。超甲巡が『巡洋戦艦扱い』になったため、重巡洋艦の開発が続くのは、扶桑にとっては皮肉な出来事であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ブリタニアは財政健全化を掲げる者達が1946年以降の選挙で勝利したものの、政治的に主導権は持ち続けたかったためか、相対的に維持費のかかる空母機動部隊と戦艦部隊の縮小と空軍の近代化を実行された。この関係で、日本連邦軍が大規模な空母機動部隊を(否応なしに)持たされたのである。ブリタニアの戦艦部隊の大半は一次大戦期~戦間期に造った旧型艦であったため、その整理を図ったのである。ブリタニアは必死に、ライオンやクイーンエリザベスⅡ級を整備したものの、超大和型が時代の寵児になっており、大和型に並ぶ程度の戦艦では、相対的に見劣りするものでしかなかった。また、ラッキーヒットで艦橋が被弾した場合に起こる被害の懸念が事実上、的中した事から、艦橋の司令塔の重装甲化に回帰した事も、ブリタニア海軍のメンツが丸つぶれとなった理由であった。(連邦の解体を恐れた政治家達の圧力による)ブリタニア海軍は財政健全化を大義名分にした軍縮で急激に規模を縮小し始めたため、日本連邦軍が相対的に世界最大の海軍を持つ結果に繋がった。とはいえ、リベリオン本国軍への牽制の必要から、戦艦は七隻が実働状態であり続けた。その七隻を後世の人々は『黄金の七隻』と呼び、斜陽のブリタニア連邦の威厳を守った騎士と称えるのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――この流れで、魔女の世界での海上覇権は日本連邦軍のものになり始めた。超大和型と超大型正規空母を複数保有しているからだ。これに憤慨していたシャルル・ド・ゴールは仮想敵国を日本連邦と定め、身の丈に合わぬ軍備再建を非合法的手段込みで着手した。だが、鋼材の入手を非合法的手段主体で(怪異に金属資源を食われた)しか迅速に入手し難くなった事から、手元に残された『アルザス級戦艦の未成船体』の工事再開は極めて難航し、結局はリシュリュー級が長らく、ガリアの象徴として君臨する事となる。性能の陳腐化はすでに明らかであったが、ガリアには代艦を造れる余力がなかったからだ。ペリーヌ・クロステルマンは公式にはこの時期、『軍備再建は後回しにし、国土を復興した上で行うべし』という論調で国民の支持を集めていたが、元々、自尊心の高い国柄であったガリア国民の変心までは見抜けず、そのショックで慈善活動に傾倒し、政治から遠ざかっていった』と記録されている。それは表向きの事で、実際には『キュアスカーレット』として、日本連邦軍に従軍している。彼女はオトナプリキュアの世界に緊急で呼ばれ、事実上はキュアエトワールの指導官となっていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――プリキュア達はこうして、複数の次元世界に跨り、戦いを繰り広げる事となったわけだが、法的問題をクリアするためとはいえ、公的機関に籍を置かせるのは議論の的である状況が続いた。元々、プリキュア活動は一種の自警活動ともとれるため、厳密に法を適応した場合は『限りなく黒に近い灰色』である。21世紀世界(ドラえもんのいる世界の21世紀)の日本では、警察内部でそうした議論が堂々巡りと化してしまっていた。また、近ごろの超重犯罪には完全に無力であるため、ヒーローユニオンの存在を容認せざるを得なかったのが日本警察の醜態であった。かつての機動刑事ジバンやレスキューポリスが既に失われていたからである。かの『正木俊介』(ウインスペクターなどの創立者)の退官後、超重犯罪対策の施策を続けなかったことのツケが2020年代になって回ってきたのだ。プリキュアの出現後、世間の女性層の多くは『プリキュアが何故、公的機関に籍を置く必要があるのか!!』とヒステリックに喚き散らしたが、ドキドキプリキュアの剣崎真琴には『トランプ王国の近衛兵であった』前歴がある現実がある。また、出現した変身者の複数が『既に、連合軍で戦功を立てていた将校であった』事、無理に軍を退役させるのは『職業選択の自由に反する』ため、自主的な退役が望ましかった。だが、彼女らは自分でむざむざと、政治的な最大のチャンスであった『夢原のぞみの転職活動』を潰してしまう形になり、結局、プリキュア達の活動を『法的な特別許可による自警活動』に衣替えさせる唯一のチャンスをフイにしてしまった。のぞみの転職活動を潰した事は結局、『連合軍にプリキュア達の身分保護をする大義名分を改めて与えた』格好になった。彼女達はこの騒動では、責任のなすりつけあいに終始し、当のプリキュアらになんら恩恵を齎さなかった。それどころか、害をもたらす事になり、その尻拭いを日本政府と自衛隊はやらされる事になった――

 

 

 

 

 

――のぞみは複数の世界でモラトリアム期の面影を残したままで成人する事が確定したわけだが、それがプリキュアの資格を維持、または取り戻す原動力であろうことは容易に考察できた。Aは外見的な加齢が起きなくなったため、現役時代の髪型を通している。これはそれが『キュアドリームである』事を示す格好のアイコンになっていたからでもある。彼女はダイ・アナザー・デイ終了後は転生先の実家『中島家』に帰りづらくなってしまい、のび太とことはの誘いで、2010年代末の野比家で普段は暮らしていた。また、騒動以降は顔が知られた事もあり、(開き直って)キュアドリームの姿で過ごしていた。中島小鷹(転生先での実姉。江藤敏子の同期で、元は大佐)に薦められ、正式に草薙流古武術を継承したのは、騒動の直後の事であった。Aはそのメンタリティに中島錦の影響が色濃く、大人のぞみと比べると、好戦的な印象である。一人称も複数があり、完全にキレた時には『俺』になり、言葉づかいが荒くなるなど、錦の残した影響が窺える。デザリアム戦役で明らかになったのだが、黒江たちは『無理に現役時代に口調を近くする必要はない』と諭し、そのままにさせた。とはいえ、大人のぞみとほぼ同じ『現役時代からの延長線上の口調も問題なく使える』ため、ある意味では『錦の置き土産である』のだろうと、本人も考察していた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイでの『戦功第一』とされ、金鵄勲章を授与(当初は欺瞞のために、中島錦の名義で授与されたが、騒動以降は『夢原のぞみ』名義に変更された)されたのぞみ。その授与の場で、昭和天皇に『教師への転職を望んでいる』と述べ、昭和天皇も関係部署に了解を取り付け、正式に許可を下した。扶桑においては完全に合法な手続きであった。だが、日本の一官僚が『昭和天皇は三権分立を弁えていない阿呆のようだな!!』と吐き捨て、のぞみをも『歩兵上がりの分際で!!』と罵った。だが、のぞみは実際には航空部隊のエースパイロット。その中でも、トップエリートに分類される軍人であった上、扶桑皇室肝いりの推薦であったため、『彼』は外交問題が戦争にもつれる事を恐れた政府の意向で、すぐに『依願退職』をする羽目になった。皮肉な事に、扶桑はこの騒動で、日本に対して『借りを作ってやった』という外交上の優位を確立。のぞみ本人には『涙を呑んでもらう』ことにはなったが、これで日本を軍事的意味で『否応なしに関わらせられる』大義名分を得たのだ。実際に多くの不利益が扶桑に出ていたのも事実だからだ――

 

 

 

 

 

 

 

――遠征前 野比家――

 

「新居に正式な入居は戦争が終わってからにしてくれ、だって?」

 

「うん。軍の防空司令部からそう要請されて。直に遠征だから、あたしとココの家財道具を移そうって思ったんだけど……」

 

「B公やヤーボが跳梁跋扈してるからね、君の世界の南洋島」

 

「防空部隊は何してんのって、文句言いたくなったね」

 

「仕方ないさ。防空部隊の連中の全部が厚木空や史実のパレンバン油田の連中、あるいは『かわせみ部隊』(47F)みたいなエリートであるわけじゃないからね。B17やB25レベルの爆撃機すらも、ほとんど想定した訓練がされてないのに、いきなり『超空の要塞』レベル、ひいては『子孫』って言える新鋭機とドンパチしろったって、連中は尻込みしちゃうよ」

 

「まったく……飛行実験部の怠慢だなぁ。もうないけど」

 

キュアドリームA(大人のぞみや、のぞみBの変身との区別のため)は陸軍航空総監部の在りし頃、対重爆迎撃想定のマニュアルを作成してなかった有様を『怠慢』だとなじらずにはいられないようだ。

 

「空自や米軍からマニュアルを取り寄せないといけないってのはねぇ」

 

「連中の苦労はわかってやりな。怪異へは過去のデータの蓄積で、対応策がある程度はわかっているけど、近代的な航空戦力同士の戦争のデータは君らにはあっても、連中にはないんだし。B公の迎撃行動のノウハウは日本軍の生き残り連中が頼りなんだし」

 

この頃、扶桑空軍はクーデター以降に『部隊間の横の繋がりがほとんど機能しなくなった』事による『組織的な戦闘がこなせない』という組織の機能不全が問題になっていた。南洋の防空を担う部隊が『片手で数える程度である』現実は『魔女の部隊が主力であった』ことの弊害であった。怪異相手では問題なかった措置でも、人同士の戦争では大問題であった。扶桑軍上層部は『本土の部隊を出征させれば、数の問題はない』と考えていたが、日本側の大物政治家の横槍で、本土の部隊の配置転換が困難に陥ってしまい、結局は64Fを始めとする少数の精鋭部隊が酷使されるという状況に陥っている。この惨状は『扶桑が交代要員を確保もしていないのが悪い』という日本の政治側の指摘に『魔女主体から切り替えの途中なんだ!!』と反論する扶桑とで議論が紛糾する事態になっていた。

 

「まったく…。その手の訓練くらい、ちゃんとしとけっての」

 

開戦以来、昼夜を問わずに迎撃任務に関わってきた故か、扶桑軍の一般部隊の『守る意識の薄さ』にムカつきが収まらないキュアドリーム。

 

「日本の軍隊は全体的に攻撃は得意だけど、防衛は自衛隊の頃にならないと、平均が良くなんなかったからね。仕方ないことさ。高射砲だって、電探や計算機周りを近代化した『五式一五cm高射砲』を各所に回し終えつつあるだけでもマシさ。ミサイルは高いからね」

 

「三式一二cmは?」

 

「射高が心許ないからね、あれは。とはいえ、ダイアナザーデイん時にあった古いのよりは全然マシだけど」

 

当時、扶桑軍は数合わせもあり、依然として高射砲を多数使用していた。三式12cm高射砲はその中でも比較的に新しいものであったが、B-29やB-36相手では心許ないという事で、陣地高射砲の主力は早々に運用システム周りが近代化された『五式十五糎高射砲・改』に移行することになった。その威力は(危害半径に入っていれば)『250メートル四方の敵機を撃墜させる威力』とも評され、この時点の扶桑製高射砲では最強を誇る。

 

 

「ダイアナザーデイからこっち、連中の迎撃しまくったからなぁ。なんで、防空部隊の連中は尻込みすんのさ」

 

のび太に愚痴りまくりのキュアドリームA。ダイアナザーデイでは、プリキュアの姿で五式戦に乗り、迎撃した事も多々あったからか、扶桑の一般パイロット部隊の怠慢に不満を顕にしている。

 

「照準器から機体がはみ出るだろ、B公の大きさだと。それで連中はブルるんだよ。僕や君は実戦を何度も経験したけど、連中は素人が大半だ。日本軍の生き残り連中と、自衛隊の義勇兵のほうが宛にできるってのは問題だよ?」

 

「だよねぇ」

 

Aは仕事が軍人であり、素体の思考を引き継いだ箇所も多いため、大人のぞみが持ってしまった『心の弱さ』はりんのこと以外はなく、それもデザリアム戦役で克服している。いる時代が時代なだけに、敢闘精神が旺盛なのだ。

 

「どこかには、普通に先生やれてる世界もあるんだろうなぁ。だけど、戦いからは逃れられない。そんな気がする」

 

「君はそういう星の下に生まれたんだよ。後輩の子らと違ってね」

 

のび太は次元世界を旅する仕事をしているため、のぞみが戦いから逃れられない宿命な事をそう確信し、本人に話す。とはいえ、のぞみAは大人のぞみと違い、一貫してプリキュア戦士であり続けていた世界線からの転生であるなので、どこかで何かが違っているのも事実である。ココと悲恋に終わっても、一縷の望みを拠り所に生きたが、全てが裏目に出た世界、一見して順風満帆でも、どこか言いようのない不安を抱えて生きる世界。どちらものぞみが辿った、あるいは、どこかでそうなるかもしれない。しかし、共通しているのは、戦いから逃れられないという事実。

 

「スタートゥインクルやプリンセス、HUGっとは『役目を終えた』ら、完全に引退だもんなぁ。そこは羨ましいって感じた事もあったけど、自分を求める声があるのは……悪い気はしない」

 

「仮面ライダー達だって、時代が求める限り、蘇るって言ってたろ?そういう事さ」

 

キュアドリームAは大人のぞみと違い、法的に成人扱いになっていても、職業柄、酒はほとんど飲まない。ノンアル飲料で気分だけ味わうのが最近の楽しみだ。

 

「君、別の世界線じゃ酒飲みだったんだろ?いいのかい?」

 

「前世で充分に飲んだから、酒は。それに職業が職業だしね」

 

と、前世の死因に『酒の飲み過ぎが絡んでいる』事を匂わせる。おそらく、付き合いで飲む内に肝臓を患ったのだろう。その反省らしい。

 

「お、お二人さん、珍しいな」

 

「ゴルシちゃん、今日はバイトの帰り?」

 

「おう。二つ先の駅の前で出し物があったから、テキ屋やってきたぜ」

 

ゴルシがやってきた。野比家に滞在中の遊興費はバイトで稼いでいるらしい。また、この時点では、のぞみAとかなり親しい関係のようである。

 

「出し物で、戦艦のプラモ当たったから、坊主に渡しといてくれ」

 

「分かった」

 

ゴルシは居間のテーブルに、大スケールの『航空戦艦伊勢』のプラモを置いていく。明らかに、子供には無理難題なパーツ数のキットだ。

 

「うーん。倅には作れないな。変なとこがボクに似たし」

 

「しゃーない。あたしが暇だし、作っとくよ。こういうキット、前世での『下の子』が凝ってたんだよね…」

 

「君、作れたんだ」

 

「昔取った杵柄さ。前世はシングルマザーだったからさ」

 

「あ、エッチングパーツはテキ屋にのおっちゃんがオマケしてくれたぜ?」

 

「艦艇プラモって、敷居高いからねぇ。それにしても……マニアックぅ…。伊勢かぁ」

 

「君の世界だと、航空戦艦になった?」

 

「もっと大きい紀伊型や武蔵の改装のテストで使われたよ。今は退役して、映画の撮影とかに使われてる」

 

魔女の世界でも、魔女の多数運用を目的に『航空戦艦』化改装を受けたようであるが、結局は実験艦として退役したらしい伊勢型。航行も可能であるので、最も状態のいい記念艦と言える。

 

「一ヶ月くらいかな。遠征行く前に渡してあげたいけど」

 

「なのはちゃんに手伝わせる?」

 

「連絡しといて。あの子…。確か、プラモ部だよね、学生時代」

 

「うん。後でぼくから連絡入れるよ」

 

なのはは学生時代、史実と異なり、プラモ部に在籍していた。その都合上、手先が器用である。呑んだくれになっているので、良いアルバイト兼気晴らしになるだろう。のぞみも前世でプラモと縁があったためか、制作に乗り気であった。折りしも、彼女は竜馬の道場で稽古に付き合わされているので、まさに天の助け。二人は仕事と稽古の合間に、そのプラモデルを制作。エッチングパーツもふんだんに用いたその大スケールの伊勢は後日、完成後、出来栄えに感動した商店街のプラモ店の店主に頼まれ、ノビスケの了承を得た上で寄贈。『夢原のぞみ氏、高町なのは氏の共同制作』と書かれたポップが作られ、ショーケースに鎮座。そのプラモデル店の中興に貢献したという。

 

 

 

 

 

 

――かくして、のぞみAはその出来事のすぐ後に出征。『プリキュア5の世界』(B世界)を守るために動く事になる。オトナプリキュアの世界の発見はその最中の出来事であった。大人のぞみはかくして、『転生しても、キュアドリームの力をずっと持ち続けている世界線の自分』と『自分の現役時代と多少違う経緯があった世界の自分』の存在を認識する事になり、『彼女』自身もまた、戦いの海に漕ぎ出す事になる。ある意味で『英雄の三代目』という宿命がそうさせるため、のぞみは風見志郎と同様に、『ヒーロー(ヒロイン)になった事自体が、それ以降の時代における自らの存在意義を左右する』という因果な立ち位置にあったのかもしれない――

 

 

 

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