――オトナプリキュアの世界の世界の各国が右往左往するだけな中、地球連邦軍は白色彗星帝国の漸減作戦を迎撃する方策で対応し、戦果を挙げていた。当時に実用化された最新兵器『波動カートリッジ弾』も直ちに投入され、砲撃戦での優位性を確立していた。元々、砲撃戦のノウハウが蓄積されていた地球連邦軍は兵器の質さえ伴えば、めっぽう強い。その証明がなされていた――
――現地の日本――
日本を襲った『大戦艦』の群れ。その数は40隻。現地の自衛隊を虐殺するには充分すぎる数であった。現地の自衛隊は衛星軌道よりも上からの砲撃で多くが壊滅。偶々に大規模訓練中で所属基地を離れていた航空部隊が退避してきた基地は大あらわであった。九州と沖縄は(23世紀世界で拠点があった事で)猛攻撃を受けたが、佐世保は運良く難を逃れ、そこに残存艦艇などが集まっていたが、日本は戦後、予備兵力を用意してこなかったのが災いし、九州と沖縄の救援どころではなかった。危うく、九州と沖縄は全滅するところであったが、しゅんらんが僚艦(同型の『カシオペア』、『メネシス』、『ガイア』)を率いて駆けつけ、危機を救った。
「敵艦隊、距離、46000!」
「全艦、波動カートリッジ弾を装填!一発で仕留めろ!」
「装填完了!!」
「発射!!」
改アンドロメダ級の能力は(スペックで言えば)改装を重ねた宇宙戦艦ヤマトを上回る。主砲口径も新式(地球連邦軍の外宇宙用艦艇では最大)の56cm砲に換装・強化されており、対艦戦闘では圧倒的に有利であった。同航戦の格好となったが、地球連邦軍は射程で圧倒的に勝っており、アウトレンジ攻撃で滅多打ちにしていった。40対4にも関わらず、『アンドロメダの娘』達はその本懐を遂げていった。
「各ミサイルランチャーも大盤振る舞いしろ!敵は実体弾に弱い、撃ちまくれ!対空用でも構うな!」
アンドロメダ級の全艦が各部のミサイルを一斉に放つ。対艦・対空の区別無しの一斉発射だ。ミサイルへの妨害手段がない白色彗星帝国艦艇は哀れ、雨あられと飛来するミサイルの餌食となる。ミサイルの掃射で、敵艦隊の陣形に穴が空いたのを確認したアンドロメダ級たちは中央突破を敢行。その威容を見せつける。その模様を地上で目撃していたのが、現地を小説の次回作のための取材で訪れていた現地世界における秋元こまち(キュアミント)であった。この年代においては、29歳前後。彼女もプリキュアでなくなって久しく、白色彗星帝国の襲撃にあたっては、逃げ惑うことで精一杯であった。ある丘で一夜を過ごした直後、偶然にアンドロメダ級と大戦艦の艦隊戦を目撃する事になった。
「一艦たりとも逃がすな、ガトランティスは殲滅あるのみ!」
しゅんらんらの猛攻撃は凄まじく、大戦艦たちは為す術もなく滅多打ちにされ、空中爆発で果てていく。
「提督、残りは一隻です!」
「撃沈だ!いいか、一兵たりとも生きて返すな!」
こうして、最後の一隻がしゅんらんの主砲斉射で轟沈した後、空中で静止した艦隊から、一機の連絡機(コスモシーガル)がこまちのもとに飛来した。
「秋元こまちさんですね?国連軍の者です。夢原氏の要請で、すぐに来てくれと」
「のぞみさんの…!?どういうことですか、国連軍なんて……」
「とにかく、乗ってください。艦に着艦次第、提督自らがあなたに事情を説明なされます」
こまちは手持ちの食料品が尽きていた事もあり、彼らに従い、コスモシーガルに乗り込む。これはあくまでも偶然の出来事であったが、プリキュア達は確実に集まり初めていた。また、宇宙戦艦ヤマトが『オトナプリキュアの世界』における『日向咲』(キュアブルーム/キュアブライト)、『美翔舞』(キュアイーグレット/キュアウィンディ)を発見し、保護したという報も入り、プリキュア達を集めるという、大人のぞみの発案はその端緒についたのであった。
――日本 某地――
日本の某地でランデブーしたヤマト、しゅんらん、そして大人のぞみらを乗せたバルキリー。大人のぞみは山南修提督(デザリアム戦役以降の『太陽系連合艦隊』司令長官)や古代進、真田志郎の助けを借り、かつての仲間達に、現在の状況と自分の事についての説明をした。明らかに、21世紀世界の技術レベルではありえないテクノロジー満載であるため、山南は『自分たちは別の次元の地球から来た者であり、外宇宙技術の入手で飛躍的に科学が進歩した23世紀の世界の地球軍である』と明かし、その次元でののぞみは佐官の階級にある将校であり、大人のぞみはその自分の得たすべてが『インストールされた状態にある』事を伝えた。そして、世界各国を襲った宇宙人が『ガトランティス人』という異星人であり、アンドロメダ銀河を一時は支配した大帝国『白色彗星帝国』の残党である事、ワープ中の事故で流れ着いた者たちが任務を果たすために襲来したのだと説明した。真田志郎が説明用のVTR(白色彗星帝国戦役の映像)を続いて流す。彼らの無慈悲と残虐非道ぶり、それと戦い、ギリギリまで追い詰められる地球、反物質生命『テレサ』の献身的な攻撃による最期。ヤマトに特攻を思い留ませ、反物質生命である自らを犠牲にし、白色彗星帝国を葬った事。地球が『刀折れ矢尽きる』を実際に行った事、宇宙戦艦ヤマトを以ても、実質の敗北を喫した戦いであったという説明だが、ガトランティスの傲慢不遜、暴虐、残虐ぶりを充分に示す映像であった。宇宙戦艦ヤマトがかつての戦艦大和の生まれ変わり(残骸の一部を大まかな構造の資材などに使用した)である事も示された。情報の叩きつけであったが、元々、プリキュアとして『異世界の存在』を知っていたためか、平行世界がある事はすんなりと受け入れた。だが、地球が内戦と星間戦争を同時に行っている状況である事には複雑な気持ちになるメンバーが多かった。また、法的な観点から見れば、厳密には『プリキュアたちが過去に行った戦闘行為は違法行為になる』事、地球連邦軍のある次元ののぞみ自身は『それを避けるための計らいで、軍人として遇されるようになった』と、多少の嘘は入っているが、大まかには正しい事を伝えた。大人のぞみはひょんなことから、その次元の自分のすべてを受け継いだ事も明示された。山南に促され…。
「メタモルフォーゼ!」
大人のぞみは(その証明として)キュアモ無しで変身をしてみせる。しかも、通常フォームではなく、(この場では、スプラッシュスターとプリキュア5の面々しか知らない)かつて、数回のみ変身した最強形態(史実では)のシャイニングドリームへ直接の変身をした。通常フォームを飛ばしての変身、しかも、かつてと違い、変身直後には黄金色のオーラとその周りに奔る紫電の光が一瞬であるが、出現していた。一言で言うなら、何かのバトル漫画のようであった。
「え~!?な、何、今の!?」
「……向こうのわたし、パワーアップを繰り返したみたいで、ミラクルライト無しに、これになれるみたい」
「私と舞が二つの混合フォームになれるようなもの?」
「それに近いね」
大人咲が発言する。実家のパン屋を継いだようで、服装はパン職人としてのものである。
「いいなぁ。あたしはみんなの力を集めないと、パルテノンモードになれないのに」
「昔みたいに、ミラクルライトが使えるわけでもないからね、マナちゃん」
この次元においては、妖精たちの来訪もある時期から縮小したためか、ミラクルライトによる奇跡も望めなくなったらしい。大人マナは羨ましがる。最強フォームへの変身は自己意志ではできないからだ。
「敵は死体も生き返らせて、人間爆弾に変えられる技術すら持っている。水無月かれん君の勤務する病院が酷い被害なのは、彼らがそれを起爆させたからだ」
「かれん、本当なの?」
「……ええ。たぶん、ラブの制止がなければ、怒りに呑まれて戦ったと思うわ。……人間爆弾なんて……」
大人かれんはガトランティスの人間爆弾の起爆で、多くの同僚が死ぬ光景を目の当たりにする事で、戦士に戻る選択を最終的に選んだらしい。救急医療病棟や入院病棟が爆破され、かれんの勤務先の病院は機能不全に陥った。かれんは幸い、いた場所の関係で難を逃れたらしい。
「私はそれで、戦う事にしたのよ」
「かれん……」
医者であるがために、負傷者が送られるのを承知した上で、その機能を奪う行為に怒りが限界を超えたのも、迷いを振り切った理由だという。
「我々は人間爆弾を『蘇生体』と呼んでいる。死体の臓器を入れ替え、彼ら独自の技術で自我意識含めた全てを復活させられるが、任意で爆弾の機能を起動させられる。我々の技術でも、識別は極めて困難だ」
「蘇生体……」
「我々が戦った国家の中でも、恐るべき技術だ。ただし、国家元首の意向で、純粋に蘇生のみが行われた例があるが、これは例外だ」
それはデスラーのことだ。おそらくはズォーダーの意向で純粋に復活のみに留められた唯一無二の男になる。その際にガミラス人の体質改善の技術が伝わったかは定かではない。ガルマン・ガミラス人は普通に地球型惑星で生存できている。デスラー自身も地球型惑星に赴けるようになっているので、白色彗星帝国の医療技術で自身の体質を改善しようとしていたが、真田志郎の技術が決定打になったのだろう。そのため、ガルマン・ガミラス人は真田志郎のおかげで、地球型惑星に移民が可能となったことになる。
「彼らの大元であった『白色彗星』がこれだ。先程の映像でもあったが、防護膜は波動砲の複数による攻撃を防ぎきれるほどだった」
白色彗星帝国の往時の威容がプリキュア経験者らに示された。そして、超巨大戦艦がヤマトを蹂躙し、月の一角を火の海にする様…。そして、ヤマト第一世代クルーによる決死隊の突入…。古代と真田を帰還させた瞬間に事切れる加藤三郎、蜂の巣になりながらも、真田を守り抜き、爆弾を起爆させた空間騎兵隊の斎藤…。いずれも、悲壮な最期であった。彼らが決死隊となったのを嘲笑うように出現する超巨大戦艦…。ヤマトは瞬く間に満身創痍に追い詰められる。その模様は息を呑むもの。特に、加藤と斎藤の最期はかなり衝撃的だったようだ。満足気な顔で、操縦席で事切れていた加藤三郎の姿は戦争というものの真実と、そうまでしてでも守り通したい『なにか』を示していた。
「どうして、そこまで……」
絞り出すように、大人咲が声を出す。加藤三郎の壮絶な最期はまさに、戦闘機乗りの本懐であったが、なぜ、彼が致命傷を負っていたのかは不明である、
「そうまでしなければ、地球を守れなかったからだ。勝ち目が薄いとわかってても、私達はこれを実行した。クルーの八割を死なせたのは、この私だ…」
古代は第一世代クルーの大半を死なせた悔恨を引きずっている旨を口にする。古代は引責も検討されたが、白色彗星帝国が相手では仕方がないことだという擁護が藤堂平九郎軍令部総長からなされたため、古代は免責された。地球連邦軍の本国軍がほぼ壊滅したほどの戦であるので、古代に非はないという論法であった。
「艦(フネ)が残った、クルーも残ってる、だから私の首も繋がってるんだがな…」
と、自虐する古代。この頃には加齢が進んだのと、立場が提督でもいいくらいの地位になっていたため、以前より理知的な物言いになっていた。
「彼の言う通り、地球そのものが滅亡の淵にあった戦だった。その大帝国の生き残りが今まさに、君たちのいる、この世界の地球を襲っているのだ」
「我々はあくまで要請をするのみだ。選択権は君たちにある」
真田志郎と山南が続ける。ヤマトがそこまでの犠牲を払っても戦った相手と戦う。選択は自由だと。だが、プリキュア経験者たちはそんな事を知らされて、座して死を受け入れるような質ではない。皆が協力を約束する。
「でも、私や舞とかは力がもう……」
「それは問題ない。彼女にお出まし願っている」
「彼女?」
「お連れしました、提督」
「うむ……どうぞ」
兵士に伴われ、作戦室に入ってきた人物は古代日本の巫女装束に身を包んだ二〇代前半ほどの女性であった。
「度々のお出ましは大変に恐縮ですが……」
「これも我が務め、気づかいは無用です」
その女性こそ、邪馬台国の女王にして、かつての1000年女王の一人『卑弥呼』。その魂が顕現した姿であった。魂の力は衰えておらず、生前の最盛期の容姿(史実では、かなり長生きしたらしい)で顕現できるほどであった。
「あなたは?」
「我が名は卑弥呼。貴方方の知る邪馬台国を治めていた者です」
「えぇーーーー!?ひ、ひ、卑弥呼!?」
咲は素っ頓狂な声と共にずっこける。流石にスケールが大きくなったからだ。
「貴方が今、望む物を顕現させましょう」
卑弥呼が祈りを捧げると、咲と舞の姿が現役時代のそれに戻り、次いで、キュアブルームとキュアイーグレットに変身していた。
「ど、どういう事ですか……?」
「私達は妖精がいないと、変身できないはずなのに……!?」
咲と舞はいきなりの結果に困惑する。妖精の力無しで変身した上、往年の姿に若返っているからだ。
「時の理に触れて、力ある時を呼んで宿したのです」
「???」
咲はその意味が分からず、?である。舞は理解したようだった。
「プリキュアを記録しているアカシックレコードの君たちの『力』に直接アクセスし、君らに与えたのだ。卑弥呼女王の力であれば、そんなことは容易にできる」
「今の時が求め、そなたらが求める限り力は失われぬだろう、絶望はせぬことですよ」
「??」
「咲ちゃん、相変わらずだね……」
「だって、あたし、中学出てからは調理学校だったし、パン職人だし……」
と、頭脳面は往時からあまり変化がないようで、のぞみも苦笑いであった。のぞみは現役時代は少年のび太と似たりよったりの有様であったが、高校入学後にメキメキと向上、教育学部を経て、教師になっているので、頭脳面は咲と逆転している。
「貴女が求める様に振る舞えば良いのですよ」
と、微笑む卑弥呼。
「貴方はなぜ、現世に舞い戻ったのですか?」
「この世界の危機に際し、地球そのものが我らを呼び覚ましたのです。既に貴方方の仲間には、クレオパトラ様が、楊貴妃が接触しているはずです」
舞の質問に答える。
「クレオパトラはわかるのですが、なぜ、楊貴妃なのでしょうか。彼女は玄宗皇帝の妃でしたが、国を治めるほどの地位ではなかったはず…」
と、至極当然の疑問をぶつける。楊貴妃は『貴妃』という位が示すように、後宮で第二位の地位にある妃であって、『女王ではない』からだ。
「彼女は私の後継候補だったのです。地球を裏で治める『1000年女王』としての」
楊貴妃は卑弥呼の後継候補かつ、その補佐として派遣された存在。卑弥呼亡き後、玄宗皇帝の治世にあった唐王朝に現れ、貴妃の位にまで登りつめた。その後は史実で知られる、非業の死を遂げた。その後に正式に1000年女王となったのが、『雪野弥生』。後に、かの機械帝国の冷酷非情の支配者『プロメシューム』に変貌してしまう悲劇の女王であり、あのメーテルとクイーン・エメラルダスの実母である。人間であった頃は1000年女王にふさわしい人物であり、地球を愛していたのだが、機械化人に変貌してからは冷酷非情の独裁者に堕ち果てるのである。それは23世紀からも更に遥かな未来でのことだが、世が世なら、メーテルは1000年女王を母から継いでいた可能性が高い人物である証左である。なお、プロメシュームの長女のクイーン・エメラルダスは母の若かりし頃の性格はあまり継いでおらず、プロメシュームの戦死した妹(おば)のセレンの面影を強く継いでいるという。(隔世遺伝か)
「1000年女王?」
「ここからは私が説明しよう。そもそも、我々の世界の地球は…」
真田が説明を買って出る。総合的に地球最高の頭脳は紛れもなく彼の一族だからだ。
「我々の世界では、地球は2つ存在するのだ」
「ふ、2つ?」
大人六花が驚く。SFで聞いたような話だからだ。
「うむ。我々も実在を確認したのは、割に最近のことなのだが、一方はいつからか、異次元に存在していた。故に観測できなかったのだ」
「それって、SFで手垢がついてる……」
大人こまちが指摘すると。
「うむ。反地球。大昔から仮想された惑星だが、我々の次元には存在していた。我々は便宜的に『ガイア』とのコードネームで呼んでいる。昔の予想通りのラグランジュポイントに存在するが、しばらく異次元に飛ばされ、戻ってきた際の影響で、強力な電磁雲が発生するようになっていて、我々とはいささか異なる文明を持った」
Xネブラという電磁雲の影響で、ガイアはその電磁波に耐えうる電子機器が最近まで作れず、兵器もその環境に適応していた。その対策が済んだのは最近の事だ。ダグラムなどはその産物だが、現地の芹沢虎徹参謀が人型ロボット軽視論者であり、アースにパテントを売り払う愚行を犯したのは有名な出来事だ。野比財団がそれらを安価で買い取り、アース側で直ちに採用され、ゲリラ戦で戦果を挙げたのは、いい皮肉だろう。コンバットアーマーはガイアで軽視され、アースで真逆に大量生産されるのは、環境の違いもあるが、人型ロボットへの信頼度の高さも理由だ。
「我々が現地の優れた兵器を安価で買い取れた理由だがね」
真田はガイアの軍首脳と真逆に、人型ロボットの可能性を見出し、一族で連邦軍に貢献してきた(相棒もアナライザーである)からか、ダグラムに高評価を与えているようだ。のび太もいくつかの戦役で使用している。
「それと、のぞみくんがインストールされた力の出どころについても触れよう。我々の次元では……」
大人のぞみが得た力の出どころもちゃんと説明する真田。のぞみAの存在が前提条件であるからだ。のぞみAの出自、プリキュアとは別に持っていた草薙流古武術なども説明がされる。複数の世界にまたがって戦っている、若いのぞみがいて、そののぞみはもはや普通のプリキュア、いや、ヒトですら無くなっている事が要点をかいつまんで説明される。
「つまり、その若いあたし、なんて言おうか、もうヒトを超えたなにかに進化しちゃってるみたいなんだ……あ、あはは……」
と、大人のぞみは乾いた笑いしか出ない。超が二個ついてもいいくらいの超人になり、全てが自分の全盛期を軽く上回るからだ。
「あたしもその力を得ちゃったらしいんだ。試しに、この宇宙戦艦の装甲板のサンプルに手刀をしてみたら、真っ二つに切っちゃってさ~…」
「はぁ!?」
「彼女は聖剣エクスカリバーの力を与えられたからね…。オリンポス十二神から」
「こ、今度はオリンポス十二神!?何なのよーー!?」
菱川六花はすっかり、夏木りんの後継ぎになったようで、ツッコミ屋化している。とはいえ、それは本当だ。
「つまるところ、彼女は戦闘力でいえば、美墨なぎさ君……キュアブラックすらも凌駕する存在になったのだ。単純な戦闘力では、右に出るプリキュアは殆どいまい」
「らしいんだよねぇ……」
大人のぞみは実感がないようだが、また別の世界で若のぞみと入れ替わり、バダンと戦闘中のナリタブライアンのほうがそれを実感しているのである。
「その実証と言える映像だが……また別の世界で戦っている若いのぞみ君の映像だ。送られて来たばかりのものだが」
真田が再生すると。
『ゲッタァァァ・シャイィィィィンッ!!』
インペロで仮面ライダー四号相手にゲッターシャインを発動する勇姿だ。漆黒の光を発する特殊なシャインスパークである。
「な、何!?あの動き!?」
「あんな動きで体が持つの!?」
俗に言うゲッター機動の凄まじさに殆どのメンバーが瞠目する。慣性の法則をまるで無視する機動だからだ。これはのぞみAが闇落ちしかけの経験がある事、入れ替わっているナリタブライアンの能力の属性が闇である事での共鳴により、余計に相反するエネルギーの制御を容易にしていた。そのエネルギーを解放し、一気に光弾として放つその技は。
『ズワルト・シャイィィンスパァァァク!!』
仮面ライダー四号を一撃で屠る威力を見せ、漆黒に染まったコスチュームはダークプリキュアを思わせるが、正義のプリキュアのコスチュームが単純に黒く染まっているだけである。翼も黒くなっているので、なにかの背徳感がある。
「こ、これって……。」
「ある意味、シューティングスターの系統の究極の技だよ。シャインスパーク。元は有名なゲッターロボGの技なんだけど」
「ゲッターロボG……」
かつては不滅のマシンと讃えられたスーパーロボット。その実在の証明と言わんばかりのシャインスパーク。インパクトは絶大である。
「なんか二次創作のサキュバスみてぇな外見だって、そのゲッターチームの人から言われたみたい。向こうの私、闇落ちしかけたみたいで、立ち直っても、属性を操作することで、翼の形を変えられるみたい…」
「え~~!?」
翼の形状も属性によって変えられるようであるが、何よりも『任意で形態操作ができる』点は他のプリキュアにはない力である。普通に滑らかな形状(射手座の神聖衣のような)の翼も出せるのであるが、コウモリ状の翼はハッタリが効くというので、ナリタブライアンはもっぱらそれだ。また、ブライアンが入れ替わっている場合は目つきがいつもより鋭く、口調がぶっきらぼう、好みが肉食に染まるなどの特徴が出る。
『なにそれぇ!?』
一同から一斉に大合唱だが……。
「これはまだ序の口だ。花海ことはくんなど……」
と、今度はキュアフェリーチェに振れる真田。映像はストナーサンシャインを初使用した時のもので、のび太提供のものだ。
『ストナァァァァ・サァァァンシャイィィンッ!!』
完全に魔法関係なしの攻撃、しかも、明らかに辺り一帯を消し飛ばすほどの超高エネルギー弾を生成し、それを放つ。魔法つかいのまの字も関係なしの大技である。しかも、フェリーチェ本来の柔和さのまったくない『殺る気満々』な一撃。よく見てみると、体の各部位にゲッターロボの顔や胸のモールドと同じ模様が浮かび上がっている。
「ねぇ?これ魔法なの……?みらいちゃんたちが使ってた……」
「魔法にしか見えない、進んだ科学の産物だ。もはや、魔法と思っても良いんじゃないか?我々も全容は明らかにできていないエネルギーの為せる業だよ」
大人こまちに真田が答える。そして。
「ああ、最後に一つ。のぞみくんとことは君は我々の次元では姻戚関係にある」
『えーーーーーーーーーーーーー!?』
「真田さん!ご、ごかい招きますよぉ!?」
「つまり、我々の世界でのことは君はある家の養子に入ったんだが、その家の次男坊……彼も養子だが……戸籍上は甥に当たる……とのぞみくんが結婚したからだ」
山南が〆る。つまり、血縁関係はないが、戸籍上はそういう関係である。みらいとリコには復活後に知らされ、のぞみがコージと結婚した時点で姻戚関係が成立した。みらいは蚊帳の外であったため、ことはの親代わりを自認していたため、野比家の養子になっていた事は事後承諾になってしまったことに大いに不満があった。それも喧嘩を仕掛けた一つの理由だ。
「おかげで、みらいちゃんと一戦交えちゃったみたいでさ。みらいちゃん、向こうの私にその不満もぶつけて、向こうの私もカチンときた。それで大喧嘩に……さ」
「ある意味、伝説を作ったな。月のクレーターが30個も増えたとか?」
「ちょっとまってください、のぞみとみらいが月で大喧嘩を?」
古代も呆れ気味に話し、大人かれんが食いつく。連邦の名だたる英雄たちも呆れる大喧嘩が月を舞台に巻き起こった。たまたま、月面方面軍の偵察機が捉えた観測映像では。
「はーちゃんはうちのだぁぁぁ!!」
「そんな事、あたしに言われても困るんだけどぉぉ!!」
と、イサム・ダイソンが過去に行った痴話喧嘩レベルの叫びが月に木霊する。同時に地形が変わるレベルの大技がぶつかり合う。
「地図の差し替えがそれこそ数十年ぶりに全面改訂版が出たくらいだから、ルナハイウェイ月面高速道の1/4くらいは敷き直しだったのは確実だな。大技を打ちまくったようだから」
古代がいう。映像で痴話喧嘩と同時に、最大技をぶつけ合う二人。みらいは金魔法を詠唱なしで、のぞみAはアトミックサンダーボルトやライトニング・ボルトを放ち、ぶつけ合っている。そこに割り込んできたネオ・ジオンの戦艦(グワンバン級)であったが。
『人の!!』
『勝負に!!』
『水を差すんじゃねぇぇぇーーー!!』
と、二人が同時に反対方向から正拳突きをフルパワーでぶつけると。グワンバンはなんと、衝撃で竜骨が逝ったのか、綺麗さっぱりと真っふたつにへし折れ、月面に墜落する。その直後に仮面ライダースーパー1が駆けつけ、スーパー1に『何をやっているんだ!』と絞られる。二人はこの後、こってりと沖一也(スーパー1)に絞られ、罰として、スーパー1とハーロックの采配で、アルカディア号(クジラ型)の甲板掃除を命じられたのだ。アルカディア号はヤマトの更に倍はあろうかという巨艦であり、素の姿では無理であるので、プリキュア化しての掃除が許可されたが、二人は責任のなすりつけあいを始めてしまい、更に主砲と食堂の掃除が追加されてしまったのである。ハーロックはデザリアム戦役後のしばらくは23世紀に滞在したのだが、その理由の半分はこれだったりする。
「……真田さん、そこまで撮影しなくても……」
「ドラえもんくんに文句は言ってくれ。私は感知しとらんよ」
と、コミカルなやり取りの真田と大人のぞみ。地球連邦軍の英雄や、卑弥呼などの錚々たる面々がいる中、別の自分の失態が映像になってしまい、思いっきり恥ずかしいのぞみ。半分はそれを楽しむ真田。科学者畑を歩んできた真田にも、意外なコミカルな面があることの証拠であった。(元は絵描き志望であったので、感性は豊かであろう)