ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

605 / 788
前々回の続きです。


第五百三十七話「大人のぞみ、大人りんを迎えにいく」

――歴代のヒーロー達の内、とりわけ昭和ライダーとの出会いはのぞみAに多大な影響を与え、デザリアム戦役を境に、強靭な精神力を身につけるきっかけを得た。キュアドリームとしての力を維持し続けた世界線の存在なので、元から一定程度の精神力は持っていたが、デザリアム戦役での過酷な経験がそれを完成の域に到達させたと言える。大人のぞみはその記憶を得た事で、成人後に悩んできたすべてがバカらしくなった――

 

 

 

 

「のぞみちゃん、急にトレーニングルームに行くようになったの?体壊さないでよ?」

 

「一応は20の後半で、まだ若い部類には入るけど、向こうの私と違って、正規の戦闘訓練は受けてないからね。学校も今回の戦争で休校になったから、戦いに専念できる。体を基礎から鍛え直さないと……」

 

ゆいは2022年時点の14歳、のぞみはその時点で26歳前後。大人のぞみは戦闘時のパワーこそ向上したが、普段の肉体は『疲れた社会人』のそれでしかない。かれんに『落差が大きすぎて、体を逆に壊すわよ?』と指摘され、基礎能力値を(肉体的に全盛期である)別の自分にできるだけ近づけようと思い立ったのである。

 

「ゆいちゃんは若いからいいけど、こっちはアラサーだからさ。酒も辞めたし……」

 

「肝臓の数値でも悪かったの?」

 

「それが巡りに巡って、何十年か後に健康を損なった世界の自分の記憶持っちゃうとねぇ。20を超えた辺りからの六年で、かなり飲んだ自覚あるし」

 

「そういえば、私を含めてのここ二代は体力おばけって、先輩たちに言われてるんだっけ……」

 

ゆいの後を継ぐ事になる『ソラ・ハレワタール』は異世界人であるので、純粋な地球人のプリキュア戦士の中で高位の基礎体力を持つ、チームの中心戦士が『夏海まなつ』と『和実ゆい』である。のぞみも現役時代であれば、ゆいやまなつにかなり近い体力を誇っていたが、現役を退いて久しい時代では『プリキュア戦士であった恩恵により、同年代より若々しい風貌を持つ』程度に落ち着いている。実際、大人のぞみも髪型と服装を変えれば、『高校生くらいに見える』風貌は保っているため、髪型を若き日のものに近めのものに調整すれば、パッと見は17歳ほどに見える。(卑弥呼の力で肉体が調整された恩恵で、本当に肉体年齢も高校生くらいにまで若返っていたが)

 

「教師は他人には勧められない仕事さ。体と心が強くないと、やってられない。同期の子の何人かは辞めていったからね。軍人してる別の自分のほうが気楽に過ごしてるってのは、教師のブラックさを改めて痛感してるよ」

 

大人のぞみは私立学校の教師だが、責任の割に補償も少なく、いざという時に責任をおっかぶせられる教師の実情が知れ渡った近年には、実家の両親から転職を勧められた事もあると話す。

 

「先生、ここ最近はブラックだからって、定員割れ起こしたって言うしねぇ」

 

「もう手遅れさ。はっきり言ってね」

 

教師という仕事で精神を磨り潰してきたからか、教師という職業を取り巻く環境そのものには諦感に至っているようだ。

 

「近ごろは特にね。だから、教師に権威が残ってた1940年代で教師になろうとした、別の自分は正解だと思う」

 

1940年代時点では、教師という職業に権威があり、社会的に難門を突破したエリートと認識されていた。(師範学校などの旧制高等教育機関)戦後はそれが外的要因で崩れ、様々な要因もあり、『しがない職業』に落ちぶれた。大人のぞみはまだ幸せなほうだ。

 

「その時点なら、やりやすいからね。モンペアなんて影も形もないし。親も口を挟まない。だけど、それを潰された。その時の『別の私』……どんな心境だったのかな…?」

 

 

別の自分は、自分ではどうしようがない次元での問題で軍から離れられず、骨を埋める事になった。さらに言えば、B世界における若い自分は『プリキュアになっても到底及ばない敵(シャドームーン)に半殺しにされ、そこを仮面ライダーBLACKに助けられ、そのBLACKの助けになれず、更にRXの助太刀が入った』という『戦力外』という屈辱を味わい、そのせいで鬱屈した気持ちに陥っている。そのため、仕事が(表面上だが)うまく行っていた自分は幸せなほうだと実感している。

 

「かれんさんに頼んで、卑弥呼さんから能力を与えられた今の状態での肉体年齢をこの艦の機械で測ってもらったら……17歳前後って出てさ。ガチで高校生で通じる年齢に若返ったみたい」

 

「え~!?」

 

「16からというものの、教師になるために邁進したから、青春を謳歌したって言えなかったし、まさに天の恵みだよ、これ」

 

大人のぞみは17歳前後の肉体年齢に本当に戻っていたのである。実年齢は26~7歳なので、マイナス10歳前後ほどである。教師になるために多くを犠牲にしたからか、本当に若返ったのを本気で嬉しがっている。若返った肉体に精神が引っ張られたのも、髪型を学生時代に近めのモノに戻した理由だろう。

 

「それでごきげんなんだね」

 

「まーね。ゆいちゃんもやる?」

 

「ごめん。あたし……素で縄を自力で引きちぎれるんだ」

 

「なぁ!?なにそれーーー!?」

 

「だよねぇ~…」

 

ゆいは素で縄を引きちぎるほどの怪力を誇る。見かけと反比例して筋肉量が同年代の平均よりあり、身体能力が歴代でも特にぶっちぎりなのだ。

 

「14だよね、まだ?!」

 

「……うん。なんかごめん」

 

14歳。身体的には成長期であり、伸びしろがある年齢であると同時に、前途に希望を無条件に持っていても、まだ許される年頃である。ゆいは歴代でも恵まれた環境ながら、体力の基礎などは歴代随一を誇る。定食屋の後継ぎとして、仕事を手伝っていたおかげだろう。

 

「んじゃ、ちょっとだけ」

 

と、ゆいがチャレンジした結果の数値はいずれも、23世紀世界でも超人の域に入りかけの領域で、一文字號並の基礎能力を持っていた。ガンダムファイターや聖闘士用に調整された機器での計測はいずれも、橘翔や一文字號に匹敵するもので、大人かれんを驚かせた。ゆいはまだ14歳。ちゃんと鍛えれば、歴代でも上位に行くであろう潜在能力を示唆しているからだ。なお、17歳前後に若返った大人のぞみも、(体力が低下傾向にあった)26歳の肉体では不可能である数値を記録しており、真に若返りが確認された。

 

「うぅ。体力には自信あったんだけどなぁ。やっぱり、正規の戦闘訓練積んでる向こうには見劣りするかぁ」

 

「それに、向こうのあなたは超人なんだから、若返っただけで近い数値を出せるのも、才能よ」

 

 

大人かれんがいう。こちらも18歳ほどの肉体に戻っていたが、元から大人びた風貌であったため、あまり変化はない。(現在とデビュー当時であまり変化がない )剣鉄也と同類であろうと、大人のぞみは目星をつけた。

 

「それはそうと、かれんさんはあまり変わりませんね」

 

「よく言われるわ。これでも、18歳相当に戻ったのだけど。私は27歳だったし、ちょうどいいわ」

 

かれんも『お肌の曲がり角』と言われる年頃を迎え、美容を気にするようになっていたようだが、10代後半の若々しい肉体に戻ったのは素で嬉しいようだ。

 

「体力落ちてましたからね、お互いに。でも、りんちゃんになんていおう?高校の頃に戻ったのと同義だし、アイテム無しでも変身できる身になってるし」

 

「りんの居所は?」

 

「アクセサリーのデザインのアイデア探しに行ってたみたいで、今、嚮導駆逐艦にスキャンさせてます。咲ちゃんと舞ちゃんに会った後に出かけたみたいで」

 

「他のプリキュアの子らの了承を得るほうが早い、か。くるみは私がいるってわかったら、二つ返事で……」

 

「相変わらずだなぁ」

 

 

この世界では、お世話役のスキルアップのためか、のぞみたちと同じように大学に進学し、卒業。派遣社員となり、秘書業を仕事に選んだらしい美々野くるみ(ミルク)。かれんの仕事先の惨状と決意を知らされた後は身辺整理を済ませるべく、今は派遣先で仕事を済ませに行っている。なお、秋元こまちはフリーの小説家であったので、のぞみとかれんの力になるべく、即座に参戦を明言。春日野うららは『演技力不足』を理由に舞台の役を降板させられ、意気消沈していたところに、ラブが接触。こちらものぞみを慕っていた故に、参戦を確約している。

 

「問題は……りんね」

 

「ええ。りんちゃん、仕事がうまくいってないみたいで……」

 

「ジュエリーデザインの仕事は難しいというけれど……あの子、昔はあなたを守るためなら、体を張れたのに」

 

「りんちゃんは別の私にも、そうしてくれました。だけど、ここだと……どうなんだろう」

 

大人のぞみの不安はりんの年月の経過による変心であった。りんAはヌーベルエゥーゴのテロを体を張って阻止し、それと引き換えに、一時的に記憶を失ったが、本能的にのぞみへの思いで動くのは変わらず、結果として、エターニティドリーム開眼のきっかけを与えるなど、大車輪の活躍であった。だが、大人りんは良くも悪くも『現役時代の情熱を失いかけていた』。

 

「あなたでも分からないの?」

 

「仕事のことは断片的にしか。私にも知られたくないようで…。私もお互い様なんですけどね、ココとのことで」

 

「あなた……」

 

大人のぞみはりんの事情を察しつつも、自分も皆へ隠し事をしていた事を公にした。大学を出た後はココと会えていなかったのだ。大人のぞみにとっては少なからずのショックな事実であり、口にはしたくなかった事柄である。少なくとも四年。だが、『一回は悲恋に終わっても、転生した事でそれを覆した』世界の存在を知った事で希望を見出したのか、口にしたのだ。

 

「だから、なんとなく、昔と同じような気がするんです。向こうの世界じゃ、記憶が消えるような大怪我しても、私へのプレゼントを離さなかったんですから。それが向こうの私に覚悟を決めさせたんですけど」

 

「……あなた達が羨ましいわ」

 

「私とりんちゃんは子供の頃からの付き合いですから」

 

大人のぞみは別世界の自分が闇落ちしかけたきっかけ、それを踏みとどまれた理由などから、自分が信じた人たちへ全幅の信頼を寄せているようだった。ある意味では、のぞみはその記憶のおかげで『幾星霜の年月でも変えられない、揺るぎない絆』を信じるようになれたと言える。

 

「若い子達には、私達とは違う結果になってほしいわね」

 

「ええ。大人になるってのは、つらいことが多いですからね」

 

自分たちが大人である故か、精神的に若く、みずみずしさを持つゆいが心底から羨ましい二人。ゆいはキョトン顔だが、彼女がプリキュアとしての役目を終えた後に、二人の会話の意味を悟るのであった。

 

 

 

 

 

 

――大人になった5勢がそれぞれの仕事を片付け、参戦への準備を始める中、のぞみが最も信頼する夏木りん(キュアルージュ)はジュエリーデザインのアイデア探しのための旅行に出かけており、攻撃の影響で携帯電話の基地局などが破壊されており、携帯電話(スマートフォン)では連絡がつかなかった。のぞみはパトロール艦『多摩』と『川内』に連絡を取り、両駆逐艦の能力での捜索を依頼した。その能力は『太平洋でメダカを探し出せる』ともされるもので、かつての偵察衛星以上の高彩度の画像でスキャンができる。彼らの力により、りんは東北地方に赴いており、交通手段の麻痺で関東周辺に戻れなくなっていて、途方に暮れている事が判明。のぞみは迎えに行くことにし、ラブとゆいを伴い、飛鳥で増加試作機がテスト中の『コスモハウンド』を借り受け、東北の某地で足止めを食らっているりんを直接、迎えにいった。だが、現地は既に白色彗星帝国の揚陸部隊が揚陸を終え、自衛隊の機動戦闘車部隊と対峙する戦場に変貌していた。多摩と川内の誘導で警戒網を潜り抜けた三人は(大人のぞみが別の自分に発行されている21世紀世界用の自衛隊の身分証を持ち込んだため)自衛隊の警戒の中にも入れた)。

 

 

 

――東北某地の避難所――

 

「あ、いた!りんちゃん~!」

 

「のぞみ、ラブ!!それと……」

 

「あ、そうか。プリキュアの姿じゃないとわかんないか。キュアプレシャスだよ、りんちゃん」

 

「えぇ!?あなたがあの時の……って、のぞみ、ラブ!あんたたちがなんで一緒にいんのよ!?つか、若くなってない!?」

 

「その辺はおいおい説明するから。さ、行こう」

 

「行こうって……あんた。どこへ……つって、どうやって入ったのよ」

 

「何、のぞみちゃんがちょっとした工夫をしたんだよ。もちろん、あたしもだけど」

 

ラブは首からぶら下げている身分証を見せる。それはドラえもんの世界で使う、自衛隊員としての身分証であった。ちゃんと三佐と書かれており、のび太が用意していたものである。のび太は政府直属の工作員を兼任しているので、本物の身分証を用意できる。二人は元々、Gフォースとしての身分証は配布されていたが、自衛隊員としての身分証は持っていなかったが、のび太が用意させたのである。

 

「は!?あんた、いつ自衛隊に入ったの!?それもこの階級……防大出てないとなれないような……」

 

「これで通してもらった。もちろん、防衛省にはちゃんと報告がいくように取り計らってあるよ」

 

「つか、なんであんたまで……」

 

「深いわけがあるけど、話したら、一時間じゃ終わんないよ。この避難所の人たちは無事に別の場所に移すように防衛省に直接の連絡入れてあるから、直に命令が下されると思う」

 

「はぁ!?どういう事!?順序立てて説明しなさいよ!」

 

「その暇がないんだって!」

 

と、言い合う内に。

 

「お取り込み中のところを失礼します」

 

「どうした?」

 

「敵の戦車師団が動き出した模様です。私はその連絡を受けました」

 

「分かった。避難誘導は感づかれないようにしろ。味方が持つ内に、君らは近くの基地に向かえ。私たちは防衛省からの特務を言い渡されている身だ」

 

「ハッ…」

 

末端の若い自衛官が話しかけ、のぞみが応対する。ちゃんと幹部自衛官らしく振る舞っており、りんを呆然とさせる演技力であった。

 

「……ふう。疲れる」

 

「ご苦労さま」

 

「つか、あんた……いつから口八丁ができるように!?」

 

「ややこしいんだよね、その辺。特殊技能採用で階級高くしてもらったんだ、プリキュアだと問答無用に士官採用だって」

 

「……へ?」

 

「うん。単独行動を求められるし、その場で判断しなきゃならないからさ」

 

「へ!?つか、のぞみ、あんたは教師っしょ!?ラブもよ!ダンサーはどうしたのよ!?」

 

「国連軍が緊急で兼職認めるように通達したんだよ、人手不足だから、どこの軍隊も」

 

「手榴弾はあるから、乗り物で逃げる時間は稼げる。避難所の裏庭に駐機してあるけど」

 

「て、手榴弾!?」

 

「ブービートラップでも仕掛けておく?」

 

「そうだね、昔のドイツ軍がやった『手垢のついた』トラップだけど」

 

ラブの提案で、現地の陸自に『国連の極秘裏の試作品だ。くれぐれも戦闘で使い切るように』と注釈を入れた上で、コスモハウンドに積まれている歩兵装備を提供する。自身らはブービートラップを隊員らに指導し、避難誘導を陸自が済ませる時間を利用し、ブービートラップを仕掛ける。敵が侵入した瞬間に各入り口などで派手に爆発するように設置させる。専門知識を持つ隊員に協力させた上で。

 

 

「設置を完了いたしました」

 

「ご苦労。君らは直ちに、近くの基地に連絡を試みろ。私達は別の任務がある」

 

「ご無事で」

 

「君らもな」

 

のぞみらに協力してくれた隊員らはいずれも東北方面の師団、ないしは大隊などの生き残りなようで、本来の所属はバラバラであった。りんの話では、戦力が比較的に充実していた東北方面の自衛隊は奮戦したもの、在日米軍の三沢基地の発着機能を麻痺させられた影響で苦しい戦闘が続いたという。とはいえ、予想以上に敢闘できており、現地の部隊の精強さが証明されていた。機動戦闘車を上手く運用できているようで、その動きは見事なものだった。一糸乱れぬ隊列で避難民を乗せたバスを守る姿はある意味、自衛隊の本懐であった。

 

 

「おお、見事な隊列……あの練度の部隊がダイアナザーデイで欲しかったなぁ…」

 

ラブはりんに聞かれないように呟く。ダイアナザーデイでの機動戦闘車の醜態は『見るに耐えない』ものだったので、泣きたくなったらしい。最も、ダイアナザーデイでの機動戦闘車は錬成途上の人員を無理に送ったり、扶桑の譲渡先の部隊が無茶な運用を行ったのが醜態の理由なので、既に熟れてきている時間軸の自衛隊と比べるのは酷だ。

 

「……『あの時』は連中のヘマをリカバリーさせられるのも多かったもんねぇ」

 

と、大人のぞみも記憶があるので、そっと同意し、頷く。ゆいは苦労を察し、苦笑する。そんなこんなで、コスモハウンドにたどりつく。

 

「な、なにこれ!?爆撃機!?」

 

「細かい説明は後!乗って!」

 

「誰が動かすのよ、こんな飛行機!」

 

「あたし!」

 

「……あんたが?何の冗談?」

 

「そういうのいいからー!」

 

と、りんのツッコミを返しながら、コスモハウンドのエンジンを起動させる。

 

「さ、いっくよ!」

 

「無線連絡はあたしがしとくから」

 

「お願い!」

 

「ち、ちょっとー!?もしもし~!?」

 

と、りんは反射的にシートのベルトを締める。コスモハウンドは昔の爆撃機相当の大きさなので、ヤマトでの運用では、艦内の改修が必須であった。単艦任務が多いヤマト故の改修であった。艦載機規格ではないからだ。そのコスモハウンドが離陸する直前、のぞみとラブの服の襟元に輝く『ウイングマーク』が見えた。

 

「……へ??」

 

そのマークの意味をりんは知っている。パイロットの証であり、航空関係の軍隊、はたまた民間航空での花形たる職業である事を示す、映えあるもの。

 

「えぇーーーー!?」

 

りんの叫びが木霊する。26歳にして初めての情報の嵐に困惑し、叫びたくなる。だが、状況はそれを許さない。

 

「ヤマトからだ。横須賀で拾うって」

 

「分かった。返事しといて」

 

コスモハウンドが上空に達し、安全飛行に移った瞬間、りんは『航空無線用語を操り、どこかと連絡を取るラブ』と『大型機を軽々しく操るのぞみ』の姿に困惑し、ゆいに説明を求めた。みっともなく。

 

「誰か、説明してぇ~~!!」

 

虚しい叫びであった。シートに座るのぞみとラブはそれどころではないが、表情は明らかにりんに同情していた。

 

「のぞみちゃん、着艦は?」

 

「こいつは難しいね。左舷にしかハッチないから、上手くやんないと、ボカチンだなぁ」

 

「これ、艦載機規格どころか、爆撃機の規格だもんねぇ」

 

と、ラブと話すのぞみ。

 

「何がいったい……!?」

 

りんが座る席の窓からはいい景色が見えたが、それどころではない。そして、ヤマトから派遣された誘導機が来たのだが、なんと、古代が予備機として持つ旧式のコスモ・ゼロであった。古代進の専用機であることを示す塗装などがしてある。

 

「こちら、アルファ1」

 

「古代艦長代理が自らお出ましですか?」

 

「偶には飛んでおかんと、しゅんらんにいる兄にどやされるんでな」

 

古代守は帰還後は参謀職を経た後、しゅんらんの副長の任にあった。貴重なガミラス帝国戦役の生き残りだが、パイロット出身かつ、元は駆逐艦の戦隊指揮官を歴任した『海の男』だ。その関係上、弟の進とはよく顔を合わせる。共に同じような道を歩むが、進は元々、ガミラス帝国戦役で繰り上がり卒業をした世代の軍人なので、前線指揮で真価を発揮する。一方、兄の守はガミラス帝国戦役で駆逐艦の戦隊指揮官を担った若手士官層の世代なので、参謀としての勤務をこなせる。なお、守の血筋は後にハーロック家と交わり、ハーロック家に血脈を伝え、進の血筋は代々の宇宙戦艦ヤマトの戦闘班長、ないしは艦長を継承してゆく。

 

「ハウンドは後方からのアプローチ、基本はゼロの着艦と同じだ、誘導のチャンネルは5番だ。受信したらメインに指示が出る。」

 

「了解。シミュレーターでしかしたことないんですよ、ゼロは」

 

「そうか、君が関わる頃には、ゼロの配備は絞られていたな?」

 

「ええ」

 

「まぁいい。体で覚えろ。私もそうした」

 

のぞみは別の世界での体験が口をついて出るのに驚く。ごく自然に出たからだろう。

 

「何、多少の誤差は甲板員やコンピュータが補正してくれる。君は安心して、アプローチすればいい」

 

「わかりました」

 

「あれが誘導機?」

 

「うん。ゼロ戦の遠い子孫」

 

「へー、アレが…」

 

コスモ・ゼロは量産が企図されていたので、制式名も宇宙艦上戦闘機である。だが、試作品が積まれていた事、コスモ・ゼロの機材周りが高コストであったのも、量産が大規模にされなかった理由である。ゆいは珍妙にも消える戦闘機が、かのゼロ戦の子孫だと言われ、思わず納得したらしい。塗装が何かで見た『零式艦上戦闘機二一型』を思わせたからだ。(なお、最末期型は五二型のような塗装となったという)

 

「ハウンド格納庫はキャッチアームで掴んで貰えるから、指示通りアプローチしたら良いだけだ、アームの信号が来たら、それに切り替えて終わりだ」

 

「了解。新コスモゼロはどうしたんです?」

 

「ああ、エンジン交換で、メイン格納庫でバラされてるところだ」

 

古代はコスモ・ゼロと縁深く、同機の系統で最も有名なパイロットとなって久しい。その縁か、彼の子孫たちも代々、コスモ・ゼロの子孫らを愛機とする伝統が出来上がっていったという。

 

「いいんですか、本当なら、空母機動部隊の司令官に推される経歴でしょうに」

 

「婚約者を待たせてる身だし、ヤマトを最も良く知るのは私だからね」

 

古代進は本来、空母機動部隊の司令官に推されるくらいの華々しい戦果を経歴に持つ。あのフェーベ航空決戦の将なので、本当ならそうなるべき経歴であった。

 

「ああ、君に言っておくが、正式に艦長就任の要請が来たよ」

 

「おめでとうございます」

 

「私は若輩者だし、白色彗星帝国との戦闘で大勢を死なせているからね。正直なところ、困るんだがね」

 

「またまた」

 

「それに、私が機動部隊司令だと空戦指揮が出来るやつが居ないからな、山本、坂本、加藤の弟の三人が育つまでは現状維持さ」(この場合の山本は『山本明』である)

 

「上は死なせた分の責任とって来いってつもりの人事なんだろうな、仕方あるまい」

 

「まぁまぁ。雪さんとやっと、大手を振って『くっつける』じゃないですか」

 

「そうなんだがねぇ。独身貴族が長かったからな、私は」

 

のぞみに雪との長年の関係を茶化されるが、古代は苦笑で済ます。若い頃であれば、不機嫌になっただろう。古代自身もかなり成長しており、直情的であった若き日と違い、上層部に皮肉を返すような成熟した人間性になっている。そのため、生き残ってきた同期のメンバーからは、かなりからかわれたというが、人間性が磨かれてきた証だろう。沖田十三や土方竜の薫陶を受け、デスラーとの奇妙な友情…。それらが彼を成熟させたのかもしれない。

 

「着艦したら、ヤマトのバーでコーヒーでもどうだね」

 

「お願いしますよ」

 

ヤマトはその手の施設が非常に充実しており、他艦にはない特徴となっている。士官(幹部層)専用の施設もかなり多く、特においしい。それは宮藤芳佳も言っていた。なお、普段は紅茶党だが、この時はのぞみの好みを聞いたのか、コーヒーと口にする。その注文を聞いた生活班班長の『平田』は『どういう風の吹き回しだ?』と大笑いであった。(大人のぞみは職業柄、コーヒーを飲むらしい)ヤマトのレストランやバーには士官専用の施設が別にある構造で、地球連邦軍の中では古風と言われる構造である。居住スペースに余裕がある故の構造だが、ヤマトが移民船であった出自も関係している。普段は雪に下手な入れ方のコーヒーを否応なしに飲まされたため、いつの間にか、重度の紅茶党になっているという古代だが、気を回したのだろう。のぞみもよくよく考えてみれば、芳佳が『古代さんは紅茶党だよ』と言っていたのをふと、思い出したが、自分に合わせてくれたのだろうと思い至ったのだった。(後で、島大介が言うには『若い頃から、彼女にまずいコーヒーを飲ませられれば、否応なしに紅茶好きになるだろうさ』とのこと。これは子々孫々も同じ。古代の代々の子孫らの苦労や如何に。)

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。