――大人りんが聞かされた、のぞみの変容。生物学や医学とは違う観点で『ヒトを超えた』事。それが示された最初の事例。それはB世界の自分をAが救った時のこと――
――翌朝――
「……というわけ。パワーもスピードも、防御力も、そのわたしとは別次元になったからさ…」
「助けられたほうが僻んで、事態がややこしくなったのね?」
「うん。仮面ライダーBLACKの力になれなくて、引け目を感じてたところに、自分が手も足も出ない敵と互角に戦えるスペックの『別の自分』に助けられちゃね。ほら、あたしたちって、コスチュームの変化が起こったくらいに長く戦った最後の代じゃん?」
「確かに」
「それもあると思うんだ」
「確かにね。おまけに、攻撃が通じるっしょ?仮面ライダーブラックを追い詰められるくらいの敵なら、私たちの攻撃じゃ、表皮にダメージもいかないと思う」
「キングストーンあるしね、あいつ」
「賢者の石ってヤツっしょ、それ」
「うん。そう聞いてる。五万年に一度、その継承を賭けて、後継候補の怪人を戦わす。その片割れがブラックだって」
「その若いあんた、そいつがブラックの兄弟同然に育った人が素体だって聞いて、自分の力なら、呪縛を解けるって思ったんじゃ」
「ありえる…。脳改造ばかりはプリキュアの力でも戻せないのに」
「洗脳か何かだと思ったんじゃない?」
「ありえるなぁ。で、ブラックの力になろうとして、却って足を引っ張って、半殺しにされてたからなぁ。あいつ、女子供相手でも容赦しないから、使い物にならないくらいに腕が砕かれる寸前だったよ」
「プリキュアになってて、そこまで重傷なら、変身解いたら」
「使い物にならなくなってたね。慌てて、治療用ナノマテリアル入れてあげたよ」
「泣いてた?」
「意識が朦朧としてたけどね。で、ココが輝煌帝纏って、あたしがストナーを撃って、撤退させた。向こうの私、回復した後、突っかかってきたんだ。自分同士で口論になるなんてね」
「で、あんたはどうしたの?」
「脳改造は不可逆的なもので、プリキュアの力でもどうにもできないってはっきりと言ったよ。光太郎さんに親友を殺させるのかって、胸ぐら掴まれた」
「あんたにしては珍しいわね」
「あたしにとってのりんちゃんを殺すようなものだしね、光太郎さんとシャドームーンは」
「シャドームーンを救う手立てはないってのは、若いあんたは受け入れられなかったんじゃない?そもそもの関係を知っちゃったら、さ」
「若い光太郎さんもかなり苦しんでるからね…。でも、奴は大勢の人たちをさんざ殺してきてる」
「ブラックの光太郎さん、何歳なの?」
「大学二年だけど、まだ19だって言ってた。RXになった世界の光太郎さんは20代に入ってる。服装も灰色が若いほう、白がRXになれるほうだから、わかりやすいよ」
「ブラックの世界でも、シャドームーンとは決着ついてないんだ」
「RXの光太郎さんの話だと、シャドームーンとの一騎打ちには負けるんだけど、味方側の怪人の助けで生き延びて、再戦で勝つらしいんだ。そこまでは同じらしいんだ。その後で分岐があったみたい」
「RXになるきっかけになる出来事がなかったとか」
「それだね。クライシスが来なかったらしいんだ。だから、RXと戦えるくらいのステータスのシャドームーンには劣勢。現役の時のあたしなんて、象とアリだよ」
「そのくらいあるのよね、悔しいけれど」
「だから、あたしを妬んだと思う。ヤツに一太刀浴びせるどころか、真っ向から戦えたから」
「まず、今のアンタなら、同じ技でも、威力がダンチでしょう」
「うん。シューティングスターで防御崩せるからね。向こうのあたしのパワーじゃ、シャドーセイバーに当たった時点で弾かれてるよ」
話を聞くと、のぞみBはシャドームーンに『プリキュア・シューティングスター』でダメージを与えようとしたが、剣に触れた途端に、エネルギーごと弾かれ、致命的な隙を晒してしまい、改造人間の圧倒的なパワーで腕の骨を砕かれそうになった上、胸元に何度も蹴りを入れられ、痛みで無様にのたうち回る羽目に陥ったという。ついには、守ろうとしたブラックが重傷を負ってしまうという有様。
――足手まといがいては、この俺と戦えんか、仮面ライダーブラック。いや、ブラックサン……無様なものよ――
シャドームーンには敵とすら認識されておらず、『その辺を這いずり回る虫』同然に扱われたのぞみB。ブラックが自分を庇い、傷を負い、ついにはマスク越しに吐血する。その時、のぞみBは自分の無力さがたまらなく悔しく、そして、無様に倒れ伏す自分への怒り、シャドームーンへの恐怖。それらが綯い交ぜになった感情が爆発し、ブラックに『ごめんなさい……』ということしかできなかった。ブラックは無言でのぞみBを守り続け、ついにはダメージの蓄積で膝をついてしまう。とどめを刺さんと、シャドーセイバーがブラックの首元を狙った瞬間、RXが颯爽と駆けつけたのである。シャドーセイバーをリボルケインで弾いた上で。
「RXが来なければ、向こうのあたし、首が飛んでたね。ブラックも動けなくなってたし、シャドーセイバーはブラックの強化皮膚を簡単に斬れるからね」
「で、その後にきたってヤツ?」
「いや、殆ど同時。向こうのあたしをお姫様抱っこで助けて、ココが二刀流でRXの右隣りに。輝煌帝を着てね」
「あんたは?」
「その時は休暇だったけど、午前中は勤務だったから、転生先の日本軍の軍服だったんだ。それからキュアモ使わずに、シャイニングドリームに変身した。パワーアップした後だったからね」
「それから?」
「それからは反撃さ。アトミックサンダーボルトやライトニングプラズマ、ギャラクシアンエクスプロージョンは撃ったよ。で、ヤツがギャラクシアンエクスプロージョンの爆炎から出てきた後は三人でチャンバラ。RXさんはバイオライダーになってた。で、超弾動双炎斬とストナーサンシャインで決めて、撤退させた。あっという間だったから、向こうのみんなが来た時には、戦闘終わってた」
「で、向こうのアンタは?」
「あたしが代わりに授業出て、ナッツハウスに作った壁紙秘密基地で療養させた。ドラえもんがあいにく、オーバーホールで帰ってて、連絡とれなかったんだ。数ヶ月は誤魔化したな。腕が使い物にならない寸前で、足にも傷が入ってたからね。迂闊にプリキュアの状態を解かせるわけにいかなかった。特にひどかった最初の二週は鎮静剤で寝かせてたくらいさ」
「いつの事?」
「えーと、シャドームーンが来た三回目くらいだったかな。ブラックさんがあたしらを巻き込まないようにしてたから…。で、かれんさんとこまちさんはデザリアム戦役の時に、分身置いていってたからいいんだけど、あたし自身が苦労したね。気づかれないようにしろって。実家に帰るのに緊張したの、高校と大学の合格発表の時以来だったね~…」
「あのさ。ドラえもんいないなら、ドラミちゃんを……」
「あ、あーーーーー!!」
「やっぱり気づいてなかったのね……」
「その時のあたし、テンパってたし…」
りんに言われ、ハッとするのぞみ。成長しても、やはりどこかで抜けているらしい。
「数ヶ月もごまかす必要なかったじゃない。ドラミちゃんを呼べば……」
「りんちゃん、その時に言ってよ~!」
「そのあたし、あたし自身じゃないしー…。あんた、つか、パワーアップした世界線のあんただけど…。やっぱ変わってないわー。ドラえもんズだって、いるじゃないの」
「ドラミちゃんとは滅多に会えないから、連絡先、交換してなかった……」
「やっぱり~…。ったく、どこの世界でも、あんたはあんたね。安心したわ」
「ちょっとー!」
「でも、どうだった?久しぶりの中学は?」
「昔に戻ったみたいで、懐かしかったね。だけど、職業病がね」
「サイレン聞いたら、反射的に走るとか?」
「参ったね。そういう仕事だからさ」
のぞみAの体験ではあるが、今なら、自分も同じようなことを反射的にしてしまうという確信があるからだろう。サイレンが響くと、反射的に格納庫へ走る。魔女として、パイロットとして、骨の髄まで叩き込まれた動作だからだ。
「職業病ねぇ……」
「教師生活でも、そういうのでちゃうんだから、軍人してる世界の私なら、三分前行動で動いてると思うんだ。旧日本軍、そういう軍規は厳しかったから。後は…時間を軍隊用語で表す癖がでちゃうところかなぁ」
「で、向こうのあんた、職業軍人っていうけど、時代的に時計持ってるの?」
「パイロット仕様のやつをね。わざわざ、別の世界行って、そこで買ったみたい。時代的に、その手の有名な時計出てないから」
「第二次世界大戦の頃だっけ」
「うん。隊の先輩の薦めで、別の世界の別の時間軸で買ったみたい。そのほうが確実に証明されてるからって」
「その先輩、道楽者ね」
「うん。休暇になると、レースとかに出てるような人。年齢もあるけど、所帯持ちだから、時計の一つや二つはもっとけって、その人に勧められてさ…」
意外な事だが、64Fの面々はそうした細かな点に殆どが無頓着であり、自衛隊で勤務経験のある黒江、元がレーサーであるシャーリーくらいしか腕時計は持っていなかった。だが、今後は必要なため、黒江は隊員達に購入を勧め、のぞみにも時計をプレゼントした。仕事で必要であるからだ。
「で、今のアンタは?」
「ごく普通のやつ。親父が就職記念に買ってくれた、ごくありふれたやつさ。これからは戦いだし、今度、ヤマトの酒保で買うとするよ。あたしのIDだと、所属部隊の関係で三割引なんだって」
「どういう部隊よ」
「ロンド・ベル」
「あんた、どういう関係で……」
「うちの隊、実質的にロンド・ベルの一分署でね。地球連邦軍の軍籍もあるんだ。あたしや先輩の指導官、アムロ・レイだもの」
「……何よ、それ」
「あたしに聞かないでよー!」
ロンド・ベル所属であるというのは、地球連邦軍の中では『はみだしものながらも、実戦肌の精鋭』であることを示す。特に、のぞみはデザリアム戦役の後期以降、書類上はアムロの直率中隊の一員になっていた。また、アムロの上官はロイ・フォッカーであるので、位置的に結構な大役を担っているのだ。
「ガンダムの主人公の部下してんの、あんた」
「ガンダム乗りだしねぇ。たぶん、りんちゃんの弟くんが聞いたら、狂喜乱舞だと思うよ」
「ん?すると、地球連邦の首都はどこよ」
「行政機能は月に移転しておる」
「佐渡先生」
「ザンスカール帝国の時には移っておったよ。それまでは東京とロンドンで落ち着いておったんじゃが」
「首都機能は何度も移転しての。始めは宇宙ステーションに、次にダカールに置かれていたんじゃが、そこからコロコロ変わっての」
地球連邦の首都機能は安定せず、最大都市が首都ではない時期も長かった。最近はフォン・ブラウンが事実上の首都である。
「東京とロンドンは?」
「バックアップじゃよ。月がやられた場合の。宇宙移民の過激派はグラナダへの遷都を要求しておるがな」
「東京ハ一年戦争デ、新宿ナドドに大損害を受ケ、一時ハ死ノ街デシタが、復旧され、横浜ト合併シテ『メガロポリス市』に改名サレテイマスガ、皆、東京ト呼ンデイマス』
「一年戦争の際の災害は酷くてのぉ。アジア最高の街と言われもした東京が、一時は半ば見捨てられておったのだから。しかし、戦後に復興して、メガロポリスなる新しい名を得たんじゃ」
連邦も政治的な課題が多く、ネオコロニーに高度な自治を与える一方、旧来のコロニーを直接的な施政下に置いていることなどで批判が大きいが、各サイドも地球連邦の資金なくば、コロニーの保守もままならない。宇宙開拓時代の到来がスペースコロニーの脆さを浮き彫りにする形になった。
「宇宙開拓時代、いろんな星に行けるようにはなりよったが、地球に残りたい者も大勢おる。その妥協の産物がコロニーの大量建造じゃ」
「地球に住まわせることはできないんですか?」
「生粋の宇宙出身者は、管理されていない環境に精神的に慣れなくてのぉ。本当は統合戦争以来の被災地を復興させるための人手が必要なんじゃが……」
「サラニ、地球ハアナタガタの時代ヨリ気候が安定シナクナッテイマス。日本デサエ、北海道以外はカツテトハ二変貌シテイマス」
「自分達で星を傷つけておいて、何がエレズムか、ジオニズムか……」
と、ジオニズムの高慢で地球環境が却って悪化したところに、遊星爆弾やらコスモリバースならの応酬でコロコロと地球全体の気候が操作され、シッチャカメッチャカな地球。
「今は江戸時代頃の気候で落ち着いとるが、そのうちに21世紀頃の気候に戻るかもしれん。東京周辺はビルの山になりよったからのぉ」
「シッチャカメッチャカじゃないですか」
「そうじゃ。まぁ、江戸時代のように、四季がはっきりしていて、ワシは好きじゃがね。そうじゃ、おまいさん達、肝臓の数値を気にしておったが、若返った影響で正常値に戻っとるぞ」
「ホッ」
「酒は楽しむのもいいが、肝臓をやってしまっては元も子もないわい」
「はーい~…」
「これからは付き合い程度にしとくべきじゃぞ。おなごは特にのぉ」
「佐渡先生、一升瓶抱えて、いう台詞ですか?」
「ワシはいいんじゃよ。元々、名は体を表すで、酒豪の一族じゃから」
バッカスの化身では?と揶揄されがちの佐渡だが、意外と仕事とプライベートは分けており、のぞみとりんに『過度な飲酒』を戒める一言を言う。名は体を表すとはよく言ったもので、常に一升瓶を傍らに置いているが、他人の飲酒へは医療関係者らしい一言を言う。
「あ。そうだ。アナライザー?今度、あたしたちになにかしたら……」
「頭だけじゃ済まないわよ?」
「ミナサン、ゴカイデス!!先程ノアレはジコデス、ジコ!」
二人もとうとう、アナライザーの洗礼を受けたようだ。変身した状態で受けたわけだが、アナライザーも意図したわけではない。とは言え、かなりの重さであるアナライザーの頭部をぶっ飛ばせるあたりは面目躍如だが、アナライザーはかなり頑丈にできている上、もっとも頑強な頭部をぶん殴ったため、二人は殴った直後に拳が痛くなる有様になり、佐渡に呆れられている。
「何で出来てるんんですか、こいつ」
「アナライザーは硬化テクタイトでできておる。いくらおまいさんらでも、頭はやめとき。変身した状態でも突き指するぞい」
「どうりで痛かったはずだぁ……」
「おまいさんらはあの大きさの超合金をぶん殴ったも同然じゃ。アナライザーは何大抵のことでは壊れんよ。おおよその外的な衝撃ではな」
「そうそう。アナライザーは頑丈だからな。お前、昔から雪さんの……」
「ナ、南部サン!!」
「お前、こんな子供にまで興味あるのか?」
「アア、大田サンマデ!」
医務室に入院した大田と南部はこの反応だ。
「うぅ。プリキュアの状態だと、ガチで14歳くらいの外見だからなぁ……」
大田の一言が地味に効いているのぞみ。
「いいじゃないか。俺たちなんて、近頃は白髪が出るわ、腹は出るわ……」
「そうそう。近頃は本当……。古代さんがよく艦載機で出ちゃうから、俺なんて、艦の戦闘指揮やるの多いんだぜ?」
大田と南部もそれなりに優秀だが、上役がより優秀か、あるいは戦闘機乗り気質により、艦載機での指揮を好むために苦労も多い南部、アナライザーとよく組む大田は言うなれば、中間管理職である。二人は古代と島を長年支えてきた、いぶし銀の幹部だが、デザリアム戦役後には、二人も白髪が出始める年齢になりつつある(アラサー)のだ。
「二人共、腹痛のわりには元気じゃな」
「何、珍しいお客のおかげですよ」
「アナライザー、佐渡先生とミーくんだけじゃ、殺風景ですからね」
医務室にはマスコット代わりに、佐渡の飼い猫『ミーくん』がいる。本来は雪も看護師を兼任しているが、普段はレーダー手である上、炊事班も掛け持ちしているため、医務室に呼ばれる時は滅多にない。
「ニャ~」
そのミーくんが珍しい客に気づき、挨拶にやってきた。猫なので、自由気ままに艦内をうろつく『ヤマトのマスコット』である。
「きゃわわ~!」
ミーくんはのぞみのそばにやってきた途端に、大欠伸で昼寝をしだす。その愛くるしい姿に、のぞみはメロメロだ。
「お、ミーくんお得意の……」
ミーくんは好みの女性に出くわすと、そばで丸くなるという『特技』を持つ。現役時代には、猫に出くわすと『シャー!!』とされるか、無視される事が多かったのぞみは初めての体験に、年甲斐も無く嬉しがる。
「ミーくんめ、あの子を落としにかかったぞ」
と、南部が「やれやれ」といわんばかりの声をだす。
「ミーくん、一世一代の大博打だな」
ミーくんは猫であるが、意外に人間臭く、連邦軍の敬礼が(猫なのに)できる姿を見せる。現役時代は猫と相性が悪かった(本人は好きなのだが)ので、たまらなく幸せであった。
「ねぇ。幸せな気分に浸るのはいいとして、昔と違って、日常でも変身していいなんて、現役時代のあたしらが聞いたら、腰抜かすわよ」
「しかも、体も高校くらいに若返るおまけ付き」
「どういう原理なのよ」
「サイコフレームで戻ったのなら、わかんないと思う。作った人たちでも、原理わかんないっていうし」
「は?」
「本当だって」
大人りんはサイコフレームの力で高校時代にまで若返ったようである。ガンダムXに積まれたのは、νガンダムとほぼ同量。そのサイコフレームのエネルギーがフラッシュシステムを増幅させた事で起こったので、原理は当のアナハイム・エレクトロニクスにもわからない。
「そんなオカルトチックなのをよく……」
「偶然にできたそうだから。そんな事言ってたら、ゲッターロボのほうが、よっぽどオカルトだよ。ゲッタードラゴンが真ゲッタードラゴンになるし」
「映像見たけど……あれもすごいわよね。でも、あんたも大概だと思うわよ。魔力を持ったからって、レーザーブレードのマネ……」
「いいじゃん~!かっちょいいじゃん、宇宙刑事のあれ~!」
「若いあんたの一人が僻んだの、わかる気がするわ」
「あ、アハハ……」
のぞみAがBを助ける際、スターライトフルーレをレーザーブレードを発動させる際のモーションで発光させ、擬似的なレーザーブレードにして、チャンバラをした事がある。その中でも『最もケレン味のある』宇宙刑事シャリバンがレーザーブレードを構える際のアクションを真似したのだ。相手へのハッタリも効くため、宇宙刑事たちが指導している。
「あんた、一応は戦闘機乗りって事になってんでしょ?仕事は大丈夫なの?」
「向こうのわたしの技能が引き継がれてるから、ゼロ戦からジェットまでまんべんなく動かせるよ」
「……なにそれ」
「いや、本当なんだって。転生先の世界で日本軍にいるから。陸軍航空隊だったけど、空軍に統合されたから、今は空軍」
「陸軍っていうと……隼?」
「うん。新兵時代に使ったきりだけど、あれは。その後続の機体のテストパイロットになったから」
「で、ジェットはどこで?」
「時代的に、メッサーシュミットは飛んでたけど、うち、異世界と交流あるから、先輩が持ってきたんだ。それで覚えた。コスモタイガーも実戦で使った」
「いいの?」
「ドイツが技術料をぼったくってたからね。ジェットで。徹底的に時代遅れにしてやったって、方面軍の参謀がバカ笑いしてたくらいだしね」
錦は新兵時代にキ43を使用したが、キャリアの大半でキ44系統を愛用し、重戦傾向はのぞみにも引き継がれたが、技術の発展で万能化が進展したのと、日本軍機の最大の長所である『機動力を押し出して戦え』という方針が決められた事もあり、キ84(疾風)は史実より悲運な顛末となった。日本軍義勇兵は皆、キ100を選び、64Fにはキ100が優先配備されたので、史実通りの武装を備えた型が生産された頃には『F8F』と『F2G』の登場で、性能が陳腐化していたという悲惨ぶりであった。日本連邦上層部は『次世代の翼』たる、ジェット機に傾倒し、レシプロの開発継続に興味がなかった。無論、キ87の計画を統合し、完成させる案もあり、そちらが結局、最終的に採用された。ジェットはレシプロより高価な兵器である上、ジェットは使用する燃料も違うので、現場はレシプロを求めるための兼ね合いで、『繋ぎ』目的での採用であった。疾風の系譜は(現地の事情もあり)キ87の少数生産で終了となった。キ87は疾風の性能向上型という触れ込みで登場し、一定期間は高高度迎撃に活動した。(計画段階では爆弾を詰めたが、ロケット弾に変更)これはキ44Ⅲの頓挫で、遠隔地に残るキ44とキ61に代わるレシプロ要撃機が必要となっていたからだ。日本側はこれを『疾風の排気タービン搭載モデル』と見なしたため、2022年の段階では混合されていた。また、Me262はもう初飛行を済ませていた時代なので、最高機密扱いであったのに、日本側が正確なスペックを把握していたばかりか、すぐに自由リベリオンが『F-86』を完成させ、全世界にライセンスを開放したので、瞬く間に時代遅れになった(実際に同機は『魔女の世界』では実戦に使用されなかった)。
「ああ、格納庫にあった……」
「旧型のブラックタイガーよりは現用機に近いよ。操縦自体は簡単にできるけど、ドンパチするのはコツが居るね」
「宇宙用でしょ?」
「いや、大気圏内外の両用。うららんとこにいくのにも使ったよ。高機動バーニアを併用するのが空戦の前提。元は月軌道の迎撃機にする予定が、ブラックタイガーの後継機種にされたせいみたい」
真田志郎いわく、コスモタイガーは元々、月面方面軍が独自に開発していた『月軌道迎撃機』がその祖にあたるといい、コスモ・ゼロまでを代替する主力機にする予定はなかったそうである。ところが、ブラックタイガーとコスモ・ゼロの代わりになる主力機としての需要により、改良が施された上で生産されたという。
「ブラックタイガーはミサイルをあんまり積めない、コスモ・ゼロは癖が強いと来たから……中庸な機体が必要ってなったんだって」
「中庸ねぇ……」
「世の中、そういうもんさ。車だってそうじゃん?」
「あんた、運転免許ないっしょ」
「向こうじゃ、船舶免許もあるんだけどねぇ。こっちじゃ、運転免許取ってないんだよなぁ。高校出た時に、身分証明書代わりに取っとくべきだったなぁ。自動二輪も取るだけ取るかなぁ…」
と、オトナプリキュアの世界では、運転免許を未取得であった(咲は家のキッチンカーを運転する必要から、既に取得済みという)のぞみ。Aは(任務で必要であるので)船舶免許、無線通信士の資格までも取らされたが、自分は教員免許以外は取得していない。そのため、今後は(身分証明書代わりに)乗り物の運転免許や無線通信士の資格を必要最小限(操縦士免許含めて)は取ろうと決意するのだった。