ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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考察とまとめを兼ねた回の第三回です。


第六百三十九話「考察とまとめ 3」

――結局、太平洋戦争の趨勢を動かすには、反応兵器で主要工業地帯を全滅か、あるいは機能不全に陥るようにする他ないという意見が強まっていた。いくらティターンズに反感があると言っても、潜在的なアジアへの差別と恐怖意識があるかぎり、通常兵器では埒が明かないという理屈である。核兵器の研究自体が停滞している世界なので、ティターンズの炸裂させた分を合わせれば、反応兵器は既に二発叩き込まれていたが、西海岸に二発程度では屁でもない事はわかった。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――皮肉なことに、日本側は核兵器の定義を21世紀の常識で定めていたので、それから世代の進んだ『対消滅反応を利用した弾頭』を規制する術はなかった。扶桑の世論を鑑み、報復措置のため、極秘裏に保有することになり、1949年夏の時点で、数百の反応弾頭が地下秘密基地に蓄えられていた。一発で21世紀基準の大都市を消し飛ばせる威力のものだ。日本は扶桑の軍事力を弱体化させた事を連合国から責められたが、彼らの言い分は『外地をあんたらが引き受けてくれれば……!』と恨み節であった。だが、魔女の世界では、広大な領地を誇ったはずの明朝が瞬く間に滅ぼされた歴史があったので、扶桑も主要な外地を手放すわけにはいかないのである。日本は結局、このあたりの事情を鑑み、扶桑軍の軍事力の規制を予定より緩めるしかなくなった。魔女の諸権利の法律への明記も行うしかなく、日本人は次第に扶桑の統治への参加の興味が薄れていく。面倒だと思ったからだろう。だが、工業規格は戦後世界基準の高精度なものに革新され、産油技術も後世のものになりつつも、省エネ思想に基づく効率の向上、発電設備の更新が行われた結果、扶桑は空前の好景気に湧いていた。その一方で、軍部はすぐの育成が困難な参謀や中堅層の軍人の不足に悩まされていた。クーデターでの大量リストラと粛清人事、一時の公職追放でそれらの多くが失われ、一部の局限された人員に負担を強いる構造と化してしまった。魔女たちは期限付きの雇用形態が過半数であり、引退後に幕僚になるのは、士官になり、なおかつ軍学校を出ている者。だが、彼女らは対怪異特化の教育で育っているため、対人戦での幕僚には不向きであった。例外と言える黒江達は現場の要であり、幕僚とする事は人事局の中でも、議論すらタブーであった――

 

 

 

――統合士官学校の新規教育に馴染んだ世代が任務につくには、あと数年の時間がかかる。だが、近代軍に参謀は必須。自衛隊は損害補償の一環で大量の幕僚要員を派遣し、戦争指導に当たらせた。近代戦を理解し、なおかつ兵站の意味を正確に知る者は高度な教育を受けた幹部自衛官をおいて、他にいない。それを大義名分に、扶桑の戦争指導に自衛隊は関わった。プリキュアでありながら、幕僚を兼任するのは(現役時の年齢が年長であった)キュアムーンライトとキュアマカロンであった。キュアマーメイドは(プリキュアとしての現役時の年齢が若めであったので)現場のまとめ役としての役目が優先された。プリキュア達が将校として軍隊に籍を置いている以上は役割の分担は軍隊の職責に見合うものであった。日本連邦では(海保の圧力で)海軍の特務士官と兵科将校の区別が名実ともに廃されたが、軍歴と現場の都合で、若い兵科将校がお飾りになりがちになる問題が起こるなど、人事的混乱も極大であった。軍隊でプリキュア達に万能選手ぶりが求められたのは、転生の素体になった人物が『統合戦闘航空団在籍経験のある俊英たち』であるケースが続出したからであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――64Fの組織の肥大化はダイ・アナザー・デイ当時、統合戦闘航空団からの改組という形が当初取られていたためである。また、デザリアム戦役のきっかけを期に、現役時代と隔絶した戦闘力に至ったキュアドリームの変化の調査も進められたが、生物学的変化は僅か(治癒能力の増大など)であるが、普段の時点で現役初期の変身と同等の身体能力に飛躍していたり、フルパワーを発揮すると、可視化したオーラとスパークを纏うという『バトル漫画じみた』特徴を得ていた。ZERO由来の力でマジンガー、ゲッター線由来の力でゲッターの武器を扱えるようになっている。そのハードウェアを、ブライアンは上手く扱えたわけである(素体が身体能力に優れ、草薙流古武術の継承候補者であった事により、基礎能力が現役時代より上である)。のぞみ自身は騒動の後は腹が決まり、軍に骨を埋めることにした。損害補償の一環で自由勤務権を保証されたのと、軍服での勤務を止めるように要請された(騒動の後、日本側の要請でプリキュア変身者は変身後の姿での勤務を義務づけられた)ため、変身後の姿で勤務している。これは騒動の際に厚生省が『プリキュアの変身者なら、そう言ってよぉ…』とボヤいたためで、その兼ね合いであった。結局、初期を除いたプリキュア変身者が軍に加わっていったため、全プリキュアに適応される運びになったのだ。――

 

 

 

 

 

 

 

――日本が対応を誤った最大の人事はこの一件であった。普通に承認していれば、のそみは有事に召集はされても、普段は教師になれたのである。現場の官僚が暴走したために、外交問題になりかけ、危うく、日本の東京は戦艦大和と戦艦武蔵に砲撃されるところであった。日本側が必死に平謝りしたことで、その事態は避けたが、のぞみに多額の損害補償をせねばならなくなったり、扶桑皇室に外務大臣、厚生労働大臣、文部科学大臣が土下座謝罪をする羽目になるなど、現場の暴走の尻拭いに苦労した。同様に巻き込まれた予備士官らへの『口封じ』的な人事も行われたが、それで現場の中堅将校が不足するという事態となった。予備士官は現場で働いた後に予備役になり、別の職についていたり、高学歴であった故に、なにかかしらの制度で将校(士官)に任ぜられていたからである。経験不足の若手将校に前線指揮は荷が重いと言わざるを得ないが、彼らにそれを託すしかない有様であった。更に、扶桑軍の持っていた元からの防空支援組織が有無を言わさずに『10代の少女が多い』という理由で解体させられ、空軍がそれを一から立て直さなくてはならなくなるなど、日本の思い込みが現地を混乱に陥れるケースは相次いだ。日本側の言い訳は決まって、『我々は雇用形態を変えろと言っただけだ!そこまでやれとは……』で、扶桑のみならず、連合国からも白い目で見られる羽目となった。結局、扶桑の防空部隊は重い責任を更に重くさせられたようなもので、士気は崩壊寸前に陥った。日本側はこの様に困惑。結局、『人員の努力は認めるし、支援組織も復活させたから…。我々は銃後と軍事を切り離したかっただけで……』と政治家が詫びる事態となり、のぞみの騒動は日扶戦争の一歩手前まで深刻な状況となっていたのだ――

 

 

 

 

 

 

 

――もし、扶桑が日本と戦争になれば、在日米軍は内戦と見なし、静観するのは目に見えていたし、異能を排除してきた日本と、有力軍人に異能者が多い扶桑では、勝負以前の問題であった。更に、64Fが『グレートマジンガーとゲッターロボGを有している』事がダイ・アナザー・デイ時にプロパガンダされていたことも、日本が扶桑に精神的に屈する理由であった。マジンガーZとゲッターロボの正統後継機であり、その何倍も強力なスーパーロボット。そのインパクトは日本の内閣総理大臣をして『君等はスーパーロボットの前に、自衛隊の総軍を生贄に捧げたいのかね?』と投げかけるほどであった。自衛隊は秘匿兵器を以ても、ゲッターロボGやグレートマジンガーを正面から倒せる戦力はない(マジンガーZの時点で、その戦力値はアメリカ海軍の空母戦闘群と同等である)からだ。更に、裏に地球連邦軍がついており、彼らが武器を与えれば、自分たちの優位性はいっぺんに霧散してしまうという事実も、総理大臣の決断に大きく作用した。その時に在任していた総理大臣の辞任の一因はこの騒動の心労で、持病が悪化したせいだと、囁かれたという。結局、扶桑は黒江達が独自に(ツテで)調達した超兵器の数々と歴代プリキュアのおかげで、日本の居丈高な態度を打ち砕けたのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――かくして、扶桑軍は旧式兵器を40パーほど処分されたところで太平洋戦争の戦争準備に入った。日本側が防空・防衛装備に傾倒し、銃器の更新を遅らせた。自衛隊の余剰品を提供するつもりであったらしいが、扶桑陸軍の兵力は自衛隊の何倍もあるので、とても需要は満たせない。結局、扶桑にラインを設ける手間などもあり、装備はバラバラの状態となった。64Fは21世紀以降の水準の歩兵装備を揃えているが、これは幹部らの個人的ツテによるもの。他の部隊は時代相応の九九式小銃と銃剣、九九式軽機であったりした。自衛隊も流石にこれには目を回す羽目となった。64Fは自分たちと遜色ないレベルであるが、他は時代より遅れていると言わざるをえない装備であったからだ。一言で言うなら、20式小銃と三八式歩兵銃が同時に現役であるようなものだ。これは扶桑が量産間近であった五式自動小銃が『M1ガーランドの劣化コピー』(実際は完全コピー品)として破棄されたからで、結局、日本の軍需産業は損害補償のため、扶桑への銃器供給量が自衛隊のそれより遥かに多い(明治期の村田銃さえ残っていた関係)状態となる事になった。この影響で、まやかし戦争に等しい状態がしばらく続いたのである。また、航空無線も戦後基準かつ、M粒子への対応タイプに革新し、搭載される航空機自体がジェット機に革新したため、必要とされる工業技術が扶桑の町工場の出せる精度を超えてしまっただけでなく、大手企業でも、すぐには生産不可能と言える精度になった。それも生産品の歩留まりの悪化を招いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――戦争が激しくなると、前線では鹵獲された銃器が員数外装備の扱いで重宝された。M1カービンは日本軍義勇兵を中心に重宝され、ダイ・アナザー・デイ以降、多くが鹵獲され、扶桑の制式装備と化していた。これは銃器の更新が延びていたのに、戦争が始まったためで、歩兵火力の不足が深刻であったのだ。扶桑は『精鋭部隊から五式の配備を始めるつもりだったのに…』と苦情を伝え、日本側は『前線の激戦地に自衛隊の現有装備品を送るから……』となだめるしかなかった。64Fは異能持ちの幹部が揃うが、一般隊員もいるにはいるので、20式5.56mm小銃が優先供給された他、その補助部隊に配備が進められ、元の海軍陸戦隊、史実で勇戦した事が記録にある陸軍の師団が優先供給先であった。また、牽引式の対戦車砲が廃止された代わりに、カールスラントの放出した『ヤークトティーガー』を投入した戦車連隊も存在した。史実と異なり、扶桑は対戦車火器は事欠かなかった。放出されたカールスラントの1943~45年式装備を再整備して使用できたからで、リベリオン本国では、依然として『M4中戦車が好まれていた』ためもあり(日本からは『早晩に旧式になるのに…』と呆れられていたが)、余裕でM4中戦車程度はスクラップにできた。特に、M26であろうと、余裕で撃破せしめる『12.8 cm PaK44』は重宝された。ダイ・アナザー・デイで大量に遺棄されたヤークトティーガー(戦車砲型が主砲)は大量の新品の弾薬などと共に扶桑の南洋島へ運ばれ、そこで再整備を受けた後、太平洋戦争で使われ、本来の目的を果たした。カールスラント最強の戦車砲は伊達ではなく、戦争勃発時点で旧式のM4どころか、新鋭のM48すら正面から撃破せしめる火力を見せた。ブリタニアのコンカラーの120ミリ砲共々、扶桑の機甲・砲兵部隊の切り札として君臨。気を良くしたカールスラントで扶桑向けに生産が再開されるに至る――

 

 

 

 

 

 

 

――1949年の夏の時点では、ヤークトティーガー、ヤークトパンターも旧式と見なされていたが、火力はまだまだ通用するため(新式機甲装備の配備遅延もあり)、前線で重宝された。同種と言っていい、国産の五式砲戦車の配備数は少なく、かといって、三式砲戦車以前の車両は旧式もいいところ。カールスラントの遺棄装備は扶桑の機甲部隊(M動乱でその力をよく認識したため)に有難がられ、国産の次世代車が配備された後も、戦争中は使われ続けたという。予備部品が大量にマーケットに流れ、扶桑がそれを尽く買い付けていたという幸運もあったが、(当時としては)高品質の徹甲弾は余裕で、M26系統の正面装甲をぶち抜けた。それが好評の理由だ。その一方で、新鋭の軽戦車である『ウォーカーブルドック』は敵味方を問わずに愛用。扶桑本土では(インフラの更新が遅れていたのもあり)1970年代頃まで使用されたという。人型ロボットを扱える部隊はエリート/百戦錬磨の最精鋭の部隊である事が多いので、一般的な機甲装備は(当たり前だが)戦車であった。数では絶対に勝てないため、扶桑は最精鋭部隊とエリート部隊には異世界由来の人型ロボット兵器を与える事にしたが、一応は一般的な部隊の装備も更新に努力を払っていたのである――

 

 

 

 

 

 

 

――カールスラントは扶桑とのパイプの殆どを強引に断ち切られた結果、外貨獲得の手段の獲得すら困窮するに至った。扶桑の国民感情が親愛から憎しみへ変わってしまったため、扶桑に在住するカールスラント人は肩身の狭い思いをする羽目に陥った。正式な同盟国ではなかったが、ドイツ連邦共和国の意向で賠償をすることになった。賠償への反発が軍人の反乱を招いたが、結局は疎開先の荒廃を招き、最貧国の一つに落ちぶれる有様であった。また、軍も有名無実化。人材派遣センターも同然に落ち果てており、以前からのエース格が扶桑で活躍するのが、軍と国民のせめての慰めであった。兵器開発もそれどころではなくなり、多くのプロジェクトが凍結された。せめてもの救いは、既に一定数が出回っていた『レーヴェ重戦車』や『ヤークトティーガー』が太平洋戦争で戦果を挙げていることで、扶桑向けに再生産が行われ、コンカラーに伍して戦闘をこなしていたという報であった。カールスラントはここに外貨獲得の勝機を見出し、1949年度からのNATO軍政の開始と同時に、扶桑向けに機甲装備の生産を再開。アップデートキットも開発し、扶桑に供給した。その経験が近い将来のカールスラントの中興に大きく貢献するのであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――地球連邦軍はコズミック・イラ世界への介入は片手間であったが、それでも、恒星間文明に成長した後の状態であったため、隔絶した差が(主に艦艇分野で)生じていた。廉価な『主力戦艦』でさえ、オーブ宇宙軍の主力であるイズモ級が『玩具』扱いの性能差である。コズミック・イラで最高の技術を持っていた『ファウンデーション王国』の艦艇と比較しても、『比較にもならない』。そもそも、地球連邦軍のショックカノンやパルサーカノンは恒星間航行艦を一撃で沈められる威力なので、コズミック・イラの艦艇は水雷艇程度の存在でしかない。地球連合軍とザフトが二度の大戦で艦隊の尽くを蹂躙される(拡散波動砲などで塵にされる)結果となったことで、それは証明されている。ファウンデーション王国は彼らなりに戦闘データの分析を急いでいたが、タキオン粒子の存在が実証されていない、(未来世界から見れば)旧式のレーザー核融合炉が最強の動力であった故の技術差が露呈してしまい、まともに進んでいない有様であった。地球連合軍もロゴスの壊滅で、そのバッググラウンドとなる国家の経済がガタガタとなり、地球連合自体が解体の危機にあった事から、構成国の離反も相次いでいる。既に東アジア共和国は地球連邦の庇護を願い、現地の日本列島を提供しているなど、既に地球連合は風前の灯火であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――オーブは地球連邦軍の宇宙戦力の庇護を欲し、ブリュンヒルト級などの新鋭艦を揃えた遠征艦隊の庇護を受けることになった。同艦級は地球連邦軍の中では異端と言える『武装内蔵式』の艦艇だが、ヱルトリウムの小型化版に近い(第五世代推進は倫理上の都合もあり、省かれたが)。そのため、コズミック・イラ歴の核ミサイルだろうが、大量破壊兵器であろうと、船殻に傷もつけられない。人工の単分子で船体ができているからだ。また、地球連合も二度の大戦で宇宙艦隊は壊滅状態にあり、再建も進んでいなかったため、地球連邦軍の戦力はまさに無敵の状態であった。コズミック・イラの諸勢力の艦艇の最大火力である陽電子砲も、地球連邦軍にとっては『通常兵器』である。その関係上、オーブは彼らの庇護下で宇宙艦隊を増強。独自規格ではなく、連邦からの『アイリッシュ級』や『クラップ級巡洋艦』の購入、MS『Zプラス』、『リ・ガズィ』、『リゼル』などのTMSがオーブに好まれた。その一方で、秘匿している『ストライクフリーダムガンダム』の強化改修と『フリーダム系の新型量産機の新開発』を押し進めていた。その過程で、フェイズシフト装甲をフレームと重要部に採用しつつ、ガンダリウムスーパーセラミック複合材で弱点をカバーするという発想に至ったモルゲンレーテ社は双方の装甲を多重空間構造で用いる思想にたどり着き、その新型の量産構想を立て始める。リ・ガズィのような『ガンダムタイプに属しつつも、量産機として開発される』ポジションを狙ったわけである。それまでの繋ぎとして、キラ・ヤマト用に関節部の強化(関節を強化した上で、マグネットコーティングを施された)がなされたリ・ガズィが充てがわれ、試乗を重ねていた。変形がBWSに依存する構造であったり、MS形態での武装がオーソドックス過ぎる(尖った武器がない)事に不満はあれど、未来世界のMS開発の一端を垣間見た(高級量産機である)とコメントし、BWSの簡易変形機構と巡航能力の増強を有用と判断。『次期フリーダム』に取り入れるように要請したのだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ウマ娘達、とりわけ実績のある者達に宿った『競走馬としての記憶』。例として、ナリタブライアンは現役晩年期以降の悲運ぶりの記憶が宿った事と、予てからの『個人トレーナーの解雇、姉の引退表明の衝撃による傷心』が重なった結果、『トレセン学園と距離を置きたいが、ウマ娘としての本能は戦え!!と言う』という矛盾した心理に苦悩していた。プリキュアと入れ替わったのは、違う環境に身を置くことで心機一転を図りたかったのもあるが、全盛期に戻れるのなら……という『藁をも掴む』心境からの選択であった。入れ替わっている期間は決めていないが、のぞみも『ブライアンちゃんが復活したと認知されるまでは』という気持ちでいた。のぞみは(ブライアンがデルザー軍団と戦闘をし始めた時点で)一年近くをトレセン学園で過ごしていた――

 

 

 

 

 

 

 

――そのトレセン学園では、新生・チームスピカが本格的に始動していた。本来の流れと違い、オルフェーヴルとジェンティルドンナが(リギルの解体により)『その時点で最強のチームである』ということで属する事になった他、旧・リギルのメンバーの多くが転属してきた。とはいえ、ジェンティルドンナやオルフェーヴル以外はスピカの既存メンバーと面識がある面子であった。のぞみはナリタブライアンを演じつつも(彼女本来の面倒見の良さもあり)好人物という評判が生まれるに至った。世間一般には『低迷を経たことで、彼女も人間味が出てきた』と評され、そう噂されていた。ブライアン本人も(妹達から見れば)優しいのだが、全盛期に無頼を気取った発言をしていた事で、低迷を迎えた後に世間から見限られたわけである。ブライアン本人はこのことに傷ついていたため、のぞみもそれを踏まえた発言をするように気を使い、人当たりは良くした。つまり、平行世界(別の世界での気質が穏やかな)に近めに振る舞うブライアンという構図となった。グラスワンダーは療養中であったため、その場にはいない。また、史実と違い、キタサンブラックはデビュー前の段階で波紋法を会得。肉体的なピークを引退まで維持できる(ただし、自分の引き際は考えておくとのこと)目処は立っている。(前世でピークアウトしたか。それは不明瞭であったための帳尻合わせだろう)彼女も前世での記憶が宿ったので、むしろ、サトノダイヤモンドとの現在の関係は偶然の産物であったと自覚した。どこかの平行世界と違い、自分が(絶頂期のテイエムオペラオーのような)覇王ポジションである自覚が芽生えたため、逆に言えば、ドゥラメンテ(同期。史実では二冠)やシュヴァルグラン(同期)などしか、太刀打ちできない実力となる事を本人が早期に自覚したことになる。とはいえ、史実の情報を得ていた事から、自身の『本格化』がクラシック戦線の日本ダービーまでには間に合わない事に大きく落胆した。それはドゥラメンテとの対決の機会が(史実を鑑みれば)それが最後になる可能性が大きいからだ。

 

「ブライアンさん、私の本格化は……多分、私達の代のダービーまでには…」

 

「お前はそういう運命(さだめ)だ。だが、そうなるとも限らん。ドゥラメンテが根性で再起すれば、戦える機会は得られる。幸い、お前は現役期間が(近年の代では)比較的に長いことになる。引退までにもう数回はやれるだろうよ」

 

「ドゥラちゃん頼りですか」

 

「お前がいくら願おうとも、奴の心が折れ、引退を表明してしまえば、いっぺんで叶わぬ夢になる。それを阻止するには、お前がオペラオーの後継ぎになり、同世代の覇王になり、奴の心に灯を灯すしかあるまい。オグリさんの引退レースが私の拠り所であるように」

 

キタサンブラックは前世(競走馬時代)の記憶を得たからか、ドゥラメンテと対決し、前世の意趣返しをしたいと気持ちを持っているようであった。それをグラウンドでブライアン(のぞみ)に吐露した。のぞみはキタサンのやるべき事をはっきりと述べた。ブライアンのキャラを崩さないように。

 

「キタサンブラック。お前はオペラオーの跡継ぎになれ」

 

「つまるところ、世代の覇王になれと?」

 

「そうだ。お前なら、それができる。お前自身はルドルフと同等の戦績を収め、倅は世界最強と評された。ドゥラメンテに戻ってきてほしいのなら、オペラオーのように、世代の覇王として君臨し、奴の闘争本能を刺激するしか手はあるまい。期待されてはいたが、私はルドルフの跡継ぎになるつもりはなかったからな。無論、今も毛頭ないが」

 

「……分かりました。あの子(史実の実子であるイクイノックスのこと)に将来、いい顔したいですし、覇王の跡継ぎになるってのも……悪くないかな」

 

キタサンブラックは以後、体を波紋法で鍛えていく。彼女の不断の努力により、いずれはドゥラメンテから世代の主役の座を奪い、第二代の『覇王』となる大器に成長するのである。メタ情報を持った故に、悠然と構えられるようになっているのか、どこか晴れやかですらあった。

 

「ただ、ダイヤちゃんのことが…。あたしの記憶が正しければ……」

 

「わかっているだろう。だが、奴には記憶がない。それに、奴の一族の悲願だからな…。止められはしない。だが、怪我の程度を軽くする事はできるはずだ。マックイーンに話をしておく」

 

「お願いします」

 

親友のサトノダイヤモンドのたどる『確定している未来』の事が気がかりなようで、彼女の運命を変えるため、あらかじめ、一手を打っておきたいようであった。サトノダイヤモンドの一族の悲願や凱旋門賞への思いは尊重したいが、凱旋門賞への挑戦は彼女から『輝かしい競技生活』を奪う可能性は高い。キタサンブラックは自身が絶頂期を迎えた後に『数度は戦いたい』ようだが、サトノダイヤモンドは凱旋門賞に挑戦してしまうと、怪我で全盛期の輝きを失ってしまう可能性が高い。本人はそんな事は露知らずだが、その情報を知る者としては『手を打っておきたい』らしい。前世では接点は殆どなかったが、今は幼なじみかつ親友である間柄。それ故の老婆心であった。

 

 

 

 

 

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